教育課程部会 高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チーム(第1回) 議事録

1.日時

平成27年11月12日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

合同庁舎第7号館東館 文部科学省3階 講堂
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 高等学校の地理歴史科及び公民科に置く新科目の内容構成の考え方について
  2. その他

4.議事録

【梶山主任視学官】  それでは,定刻となりましたので,ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チームを開催したします。
開会に当たりまして,文部科学省初等中等教育局長の小松親次郎より,御挨拶申し上げます。

【小松初等中等教育局長】  皆様,おはようございます。
今回,中教審の初等中等教育分科会教育課程部会の新しい組織といたしまして,高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チーム,このチームでございますけれども,立ち上げさせていただきましたところ,御多忙の中を委員をお引き受けいただき,また本日も御出席を賜りまして,誠にありがとうございます。
それで,初回で御挨拶ということでございますが,時間も限られておりますので,ごく簡単に趣旨の御説明だけさせていただいて,御挨拶に代えさせていただきます。
まず,文部科学省でこの学習指導要領の改訂,教育課程の基準等の在り方についてということで,中教審総会で諮問させていただいたのが,昨年11月でございます。それで,この教育課程を検討する際に,全体としての考え方をまず整理していこうということで,そのための企画特別部会を立ち上げて,今年の8月に論点整理をまとめていただいて,この夏でございます。これまでに14回のその会議が行われております。
これを基にいたしまして,この秋,すなわち今でございますけれども,から,今度はその論点整理を基盤としながら,各学校段階,各教科等における改訂の基本的な方向性に沿って,具体的な議論を進めていかなければいけないという段階に差し掛かっております。
そこで,このチームも立ち上げさせていただきまして,そしてその議論といたしましては論点整理で新設ということが示されております「歴史総合(仮称)」,「地理総合(仮称)」,「公共(仮称)」,これはいずれも仮称でございますが,そういった内容・構成などについて御検討を頂くということが一つ。
それと共に,高等学校の地理・歴史科,公民科の科目の在り方そのものについても,今との関連で併せて御検討いただくと,こういうことをお願いしたいというふうに考えております。
その経過や結果を社会科全般について検討を行うこととしております,「社会・地理歴史・公民ワーキンググループ」の場で,更に今度は細部を詰めていただくというような形にしたいと思っているわけでございます。
これがこのチームの位置付けとしてお願いしたいところでございますが,スケジュール的なことを少し申し上げますと,この特別チームの議論は,今年度末くらいまで,ですから来年の春くらいまでに数回,四,五回くらいの開催で,一定の方向性をお示しいただきたいというふうに考えております。その結果,先ほど申し上げましたように,詳細を詰めながら教育課程部会での全体としての議論を踏まえ,最終的には中教審として答申にまとめていただく中に反映させていただきたい。この中教審の答申につきましては,昨年の秋の諮問の際に平成28年度中にというふうに大臣がお願いしていますので,そういたしますと今年度,つまり来年の春くらいまでに大体方向性をまとめていただいて,更に詰めていって,全体を反映して,その来年度の終わりまでに答申にまとまっていくと,こういうような位置付けを考えております。
委員の皆様方におかれましては,是非,それぞれの御知見や御経験を踏まえて,様々な観点から率直に忌たんのない御意見を頂ければ大変有り難く存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【梶山主任視学官】  議事に先立ちまして,本部会の主査及び主査代理について御報告いたします。
資料2の初等中等教育分科会教育課程部会の運営規則に基づいて,本特別チームについては,教育課程部会の決定により設置されており,主査及び主査代理は,教育課程部会長が指名することとされております。
部会長と御相談し,田中愛治委員を主査に,土井真一委員を主査代理にお願いしておりますので,よろしくお願い申し上げます。
それでは,次に,委員の皆様を御紹介いたします。資料1を御覧ください。こちらに本特別チームの名簿を配付させていただいておりますので,名簿順に御紹介させていただきます。
まず,先ほど御紹介した田中愛治主査でございます。

【田中主査】  よろしくお願いいたします。田中愛治でございます。

【梶山主任視学官】  磯谷正行委員でございます。

【磯谷委員】  磯谷でございます。よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  井田仁康委員でございます。

【井田委員】  井田です。よろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  一ノ瀬正樹委員でございます。

【一ノ瀬委員】  一ノ瀬です。よろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  今村久美委員でございます。

【今村委員】  よろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  大石学委員でございます。

【大石委員】  よろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  大村敦志委員でございます。

【大村委員】  大村でございます。よろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  川上和久委員でございます。

【川上委員】  川上でございます。よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  黒崎洋介委員でございます。

【黒崎委員】  黒崎です。よろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  権丈英子委員でございます。

【権丈委員】  権丈でございます。よろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  白石隆委員でございます。

【白石委員】  白石です。よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  高木優委員でございます。

【高木委員】  高木です。よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  辻中豊委員でございます。

【辻中委員】  辻中です。よろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  土井真一委員でございます。

【土井主査代理】  よろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  中家健委員でございます。

【中家委員】  中家です。よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  橋本都委員でございます。

【橋本委員】  橋本でございます。よろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  羽田正委員でございます。

【羽田委員】  羽田です。よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  本日は御欠席でございますが,井上寿一委員,大竹文雄委員,古城佳子委員,諸富徹委員,若江眞紀委員が,本特別チームの委員に就任されていらっしゃいます。
また,本日は,教育課程企画特別部会の委員の池野範男委員にもオブザーバーとして後ほど御出席いただく予定でございます。
  委員の御紹介は以上でございます。
次に,文科省の関係者を御紹介させていただきます。
先ほど御挨拶申し上げました文部科学省初等中等教育局長の小松でございます。

【小松初等中等教育局長】  どうぞよろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  大臣官房審議官(初等中等教育担当)の伯井でございます。

【伯井大臣官房審議官】  よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  初等中等教育局教育課程課長の合田でございます。

【合田教育課程課長】  どうぞよろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  教育課程企画室長の大杉でございます。

【大杉教育課程企画室長】  よろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  学校教育官の大内でございます。

【大内学校教育官】  よろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  視学官の中尾でございます。

【中尾視学官】  よろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  教育課程企画室専門官の小野でございます。

【小野教育課程企画室専門官】  よろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  また,私は,初等中等教育主任視学官の梶山でございます。よろしくお願い申し上げます。
それでは,議事に入ります前に,田中主査,土井主査代理から一言ずつ御挨拶いただければと思います。

【田中主査】  皆様,おはようございます。早稲田大学の田中でございます。よろしくお願い申し上げます。
今回,この特別チームの主査に指名していただきまして,大変僭越に存じております。私の専門は政治学でございまして,地理・歴史・公民という,その初等中等教育局における教育課程の専門家ではございませんので,どれだけお役に立てるかと思いながらも,ただいまちょうど世界政治学会(International Political Science Association)という世界の政治学をまとめる学術団体の会長をしておりまして,世界中の政治学者とお付き合いがございますが,そういう視点から,今後の我が国の若い方たちをグローバルな人材に育てるという視点で何かお役に立てればと存じております。
そう申します私自身は,小・中・高・大と全て日本で育ちまして,その後,大学院教育は全てアメリカでございましたので,和洋折衷というふうに考えておりますけれども,微力ながらお役に立てればと存じております。よろしくお願い申し上げます。

【土井主査代理】  座長代理を仰せつかりました土井でございます。今回の地歴・歴史の新科目につきましては,生徒の皆さんに何を学んでいただくかという学習内容の面におきましても,あるいは「アクティブ・ラーニング」をはじめとするどのように学んでいただくかという学習方法におきましても,大変重要な課題だというふうに思っております。
誠に微力でございますが,田中座長をお助けして,委員の皆様に充実した協議を行っていただくよう努めたいと思っております。どうかよろしくお願いいたします。

【梶山主任視学官】  ありがとうございました。
それでは,本部会の進行は,これより田中主査にお願いいたします。

【田中主査】  かしこまりました。それでは,諮問,教育課程企画特別部会論点整理,改訂の検討体制,今後のスケジュールについて,事務局から御説明いただきたいと思います。

【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。それでは,私の方から資料5,資料6,それからお手元にある緑色の論点整理の冊子がございます。

【田中主査】  ちょっとすみません。失礼いたしました。大杉室長,ちょっと私が飛ばしましたので,もう少し丁寧に議事について御説明する必要がございましたので,先に議事について御説明させていただきます。大変失礼しました。
これより議事に入りますが,初めに,本部会の審議等につきましては,初等中等教育局分科会教育課程部会運営規則第3条に基づき,原則公開により議事を進めさせていただきます。第6条に基づき,議事録を作成し,原則公開するものとして取り扱うこととさせていただきますので,よろしくお願いします。大変失礼しました。
なお,本日は,報道関係者より,会議の撮影及び録音の申し出がございまして,これを許可しておりますので,御承知おきください。なお,テレビカメラによる撮影につきましては,申し訳ございませんが,ここまでとさせていただきたいと存じます。どうも失礼いたしました。
それでは,事務局より配付資料の確認をお願い申し上げます。

【梶山主任視学官】  それでは,配付資料の確認をさせていただきます。本日は,議事次第に記載しておりますとおり,資料1から9,その他机上に参考資料を配付させていただいております。不足等がございましたら,事務局にお申し付けください。
なお,机上にタブレット端末を置いておりますが,その中には本特別チームの審議に当たり,参考となる指導要領の解説や関係する審議会の答申などをデータで入れておりますので,こちらも適宜御活用いただければと思います。
また,今回の設置に係り,新たに分科会の委員になられた先生方におかれましては,机上に事例をお入れした封筒を置かせていただいておりますので,御確認をお願いします。
以上でございます。

【田中主査】  ありがとうございました。
それでは,先ほどに戻りまして,諮問,教育課程企画特別部会論点整理,改訂の検討体制,今後のスケジュールについて,事務局から御説明お願い申し上げます。

【大杉教育課程企画室長】  大変失礼いたしました。改めまして,資料5,資料6,それからお手元の緑色の冊子をお出しいただければと存じます。
まず資料5でございます。「学校段階等別部会及び教科等別ワーキンググループ等の設置について」という資料5を御覧いただければと存じます。資料5を1枚おめくりいただきますと,次期学習指導要領改訂に向けた検討体制ということで図が載ってございますけれども,今回,論点整理をおまとめいただきました教育課程企画特別部会,それから全体の議論をおまとめいただきます教育課程部会のもとに,22の専門部会を設置させていただいてございます。本特別チームでございますが,左から6番目のところに,本チームの位置付けがございます。社会・地理歴史・公民ワーキンググループというのが別途設置されてございますけれども,本特別チームにおきましては,後ほど御説明させていただきます検討事項,新科目の内容でございますとか,公民科・地歴科全体の科目間の整理,それから小・中・高の系統性の大きな方向性,その他必要な事項ということに絞って御議論いただきまして,少々全体の専門的な議論ということはワーキングにさせていただく,そういった役割分担で進めさせていただきたいと考えております。
また,今回,論点整理にもございますけれども,教科だけに閉じずに教科横断的な教育課程全体の視点で,どういった力を育てていくのかということも大変重要という御指摘を頂いておりまして,そういった点につきましては,一番左側にございます総則・評価特別部会,ここにおきまして各ワーキング・特別チーム等の御議論をつながせていただくということをさせていただきたいというふうに考えております。
スケジュールでございますけれども,資料6の方を御覧いただければと存じます。昨年11月に大臣諮問ということでございまして,それから論点整理を8月におまとめいただき,それを踏まえた御議論を正にこれから学校段階等別・教科等別に,先ほど御覧いただいた検討体制で進めていくという段階でございます。
これを年度内,若しくは年度明けを目途におまとめいただき,平成28年というところにございますけれども,教育課程部会又は企画特別部会において議論の審議のまとめということをしていただく,それを踏まえて28年度内には中教審として答申という流れでございます。
一部,小学校の授業時数の在り方については,少し,これは小学校部会における別の議論になりますけれども,年内から年明けの別途の整理ということでございます。
そして,こうしたスケジュールを踏まえました場合,下にございますように,幼稚園は周知を経て平成30年から,小・中・高につきましては,小学校が32年,中学校33年,高校34年から年次進行という形で,新しい学習指導要領が実施されるという予定を考えているところでございます。
御覧のとおり,本特別チームにおきましては高校の新科目の在り方を中心的に御議論いただくわけでございますけれども,その高校の科目の在り方が小・中の教育内容にかなり影響を与える部分もあるかと存じます。実施の順序といたしましては小・中が先ということで,高校自体はまだ時間はあるわけでございますけれども,小・中の議論にも影響があるということで,そういった観点からも議論のスケジュールということを少し前倒しして考えていく必要があると考えているところでございます。
それでは,緑色の冊子の方をお出しいただければと存じます。時間の許す範囲内で,本特別チームに関連する部分を中心に論点整理の概要を御説明申し上げたいと存じます。
緑色の冊子をおめくりいただきますと,1枚目,目次がございまして,そこから本文が53ページまで続いております。53ページまでおめくりいただきますと,その後ろに企画特別部会の委員名簿が付いてございまして,その後,緑色のページを1枚おめくりいただきますと,企画特別部会におけます14回にわたる審議の経過が記してございます。その後,緑色のページを1枚おめくりいただきますと,諮問文がございます。次のページに諮問理由ということが書かれてございます。
お時間の関係で簡単にでございますが,これから社会で活躍する子供たちが社会で活躍する頃の時代の変化ということも描きながら,これからの子供たちにどのような力が求められるのか,そしてそういった力を育むための教育の在り方ということを描きながら,指導要領の在り方を検討していただきたいということ。
現行学習指導要領,確かな学力をバランスよく育てていくということでありますとか,教科を超えて言語活動というものを重視していくという現行学習指導要領を踏まえまして,学校現場では真摯な取組が重ねられてきております。その成果の一端が近年の学力調査の成果ということも言えると考えておりますけれども,一方で,例えば社会参画への意欲でありますとか,判断の根拠や理由を示しながら自分の考えを述べていくことなどについては,引き続き子供たちの課題が指摘されているという状況でございます。
こうしたことも踏まえながら,次のページの上でございますけれども,一人一人の可能性を一層伸ばし,新しい時代にふさわしい指導要領の在り方を検討していく必要があるのではないかということ。ESDなどをはじめとする様々な新しい教育の取組の成果などを踏まえながら,子供たちに何を教えるかという知識の質や量の改善はもちろんのこと,どのように学ぶか,そしてどのような力が身に付いたかという観点から,学習指導要領の改善を図っていく必要があるのではないかということでございます。
具体的にはということで,そのページの下から三つの柱が掲げられてございますけれども,一つ目が教育目標・内容と学習・指導方法,学習評価の在り方を一体として捉えた新しい時代にふさわしい学習指導要領の基本的な考え方ということでございまして,この基本的な考え方につきましては,この緑色の本冊子に論点整理として方向性をおまとめいただいたというところでございます。
そして第2にというところで,育成すべき資質・能力を踏まえた教科・科目等の在り方ということで,これは正にこれから各ワーキング・特別チーム等で御議論いただくというところでございます。特に,そのページの下にございますように,高等学校教育について高大接続改革に関する議論や,これまでのキャリア教育答申などなども踏まえつつ,次のページにありますような,18歳に選挙権年齢が引き下げられるということも踏まえまして,18歳までに必要な力ということを見据えながら,どのような新しい科目が求められるのか,地歴の科目の見直しの在り方などなどが諮問されているところでございます。
また,一番下の部分でございますけれども,第3にということで,こうした理念を実現するために必要なカリキュラム・マネジメントでありますとか,学習・指導方法及び評価方法の改善,様々な条件整備ということで,指導要領の在り方にとどまらず,こういった点につきましても包括的に御議論いただくということが諮問内容でございます。
これを受けまして,基本的な考え方をおまとめいただいた論点整理でございますけれども,冒頭にお戻りいただきまして論点整理,目次をおめくりいただきますと,1ページ目から2030年の社会と子供たちの未来ということでございます。
先ほどスケジュールで申し上げましたように,小学校におきましては平成32年,2020年から新学習指導要領の実施ということが予定されているわけでございますけれども,おおむね10年ごとに学習指導要領の改訂が行われているということを踏まえますと,2030年頃まで新しい学習指導要領がその役割を担っていくということになりますので,2030年の社会,またその先の未来ということも見据えながら,学習指導要領の在り方を検討していくという方向性もおまとめいただいているところでございます。
特に,教科や学校種を超えた教育課程全体として目指していくべき理念として,3ページ目にございますように,社会に開かれた教育課程ということをおまとめいただいております。社会に開かれた教育課程としてはということで,3ページ目の一番下でございますけれども,社会や世界の状況を幅広く視野に入れ,よりよい学校教育を通じてよりよい社会をつくっていくという目標を社会と共有しながら実現していく教育課程ということ。
それから4ページ目冒頭でございますけれども,社会に出て行く子供たちに求められる資質・能力をしっかり育んでいく教育課程ということ。それから3番目でございますけれども,教育課程や学校教育を学校内に閉じずに,目指すところを社会と共有しながら,地域の人的・物的資源も活用するなどして,社会と共に理念を実現させていく教育課程ということといったことを理念としておまとめいただいているところでございます。
こうしたことを踏まえて,5ページ目,前回改訂の成果と次期改訂に向けた課題ということでございますけれども,平成20年・21年に行われた改訂に基づく現行の学習指導要領,子供たちの生きる力の育成をより一層重視するという観点,特に学力の3要素,「知識・技能」,「思考力,判断力,表現力」,「主体的に学習に取り組む態度」のこの3要素をバランスよく育むということを目指し,また,教科を超えて話合いや説明などの言語活動ということをしっかり重視していくなどが取り入れられているところでございます。
こうした成果として,学力調査の改善傾向など,様々な成果が現れていると考えられますところ,下にございますように,こうした学力の3要素のバランスのとれた育成や言語活動等の重視ということは成果を受け継ぎ,しっかりとつなげていくということが重要であるという考え方でございます。
次のページに,次期改訂に向けての課題ということでございますけれども,一方で諮問文にもございましたように,自己肯定感でありますとか,社会参画の意欲,子供たちが自らの力を育み,能力を引き出し,主体的に判断し行動するという観点からは,まだまだ課題があるのではないかということ。確かな学力のとどまらず,生きる力を育むという全体の理念につきまして,教育活動あるいは授業への浸透や具体化ということを図っていく必要があるのではないかということ。
一番下にございますように,教育課程の全体像を念頭に置いた教育活動の展開という観点から,一層の浸透や具体化を図る,そうした観点からのさらなる見直しを考える必要があるのではないかということでございます。
そうした観点から,7ページ目,新しい学習指導要領の在り方でございますけれども,一番下にございますように,何ができるようになるのかという観点から,次のページにありますように,8ページ目冒頭の何を学ぶのか,どのように学ぶのかという姿を考えながら構成していくということ。その際,学ぶとはどのようなことか,知識とは何かといった知見の蓄積を活用していく必要があるのではないかということでございます。
育成すべき資質・能力についての考え方でございますけれども,12ページ目に論点整理でおまとめいただきました。将来の予測が困難な複雑で変化の激しい社会,あるいはグローバル化が進展する社会の中でどのような力が求められるのか,12ページ目にございますように,変化の中に生きる社会的存在として,様々な情報などを受けとめ,主体的に判断しながら社会をどう描くか,他者と一緒に生き,課題を解決していく力,平和で民主的な国家及び社会の形成者として求められる力をはじめ,生産や消費などの経済的主体等として求められる力や,安全な生活や社会作りに必要な資質・能力,情報活用能力,クリティカル・シンキング,統計的な分析に基づき判断する力などなど。
また,次のページには,グローバル化する社会の中でということがございますけれども,グローバル化する中で世界と向き合うことが求められている我が国においては,言語や文化に対する理解を深め,表現したり,自国文化を理解して語り,継承していったり,異文化を理解して協働していくことなど。また,日本のこととグローバルなことの双方を相互的に捉えながら課題を発見解決していくことができるよう,広い視野から歴史の展開を考える力,思想や思考の多様性の理解,地球規模の諸課題や地域課題を解決し持続可能な社会づくりにつながる素養を身に付けていく必要があるのではないかということ,こうしたことをおまとめいただいているところでございます。
こうした資質・能力があまたあるところでございますけれども,これを学習指導要領に具体化・浸透化させていくという観点からは一定の構造化が必要ではないかということで,こうした資質・能力に共通する3本の柱ということをおまとめいただいているところでございます。本論点整理後半に補足資料というカラー刷りのページが付けてございまして,その補足資料部分の27というスライドを御覧いただければと存じます。大体冊子の真ん中辺りになりますけれども,カラー刷りの補足資料部分のスライドの27というところでございます。
御覧いただきますと,「育成すべき資質・能力の三つの柱」ということで,論点整理でおまとめいただいた三つの柱でございますけれども,「何を知っているか,何ができるか」,そして「知っていること・できることをどう使うか」,そして「どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか」,この三つの柱で育成すべき力を捉えていくということ。今後この三つの柱に沿って,各教科ワーキングにおいても教科の在り方ということを議論するということになっているところでございます。
本文の方にお戻りいただきまして,こうした三つの柱を捉えながら,14ページでございますけれども,幼児教育から高等学校までを通じた見通しを持って,しっかりと系統的に育んでいくということ,また,15ページの一番下にございますけれども,各教科の文脈の中で育まれる力ということと,それらを相対的観点から教育過程の構造の中で実社会で生きる力に育てていくという工夫,その両方が必要になってくるのではないかということ。
16ページ目にございますように,各教科を学ぶ本質的な意義ということと,教科で育成される力の間の関連付けや体系化を図り全体像を整理していく,教科の意義と教育課程全体の意義ということの双方を整理していく必要があるのではないかということでございます。
また,こうした三つの柱に基づく資質・能力ということを育成するためには,学習活動の在り方ということについても目を向ける必要があるということで,17ページ目から「アクティブ・ラーニング」の意義等ということでまとめられてございますけれども,本論点整理におきましては,必ず「アクティブ・ラーニング」の視点ということでおまとめいただいているところでございます。
18ページ目にございますように,特定の型に基づく指導ということを普及させるということではなくて,18ページ目にございますような知識の習得も含めた習得・活用・探究というプロセスの中で「深い学び」の過程ということを実現する,また,他者との交流の中で自分の考えを広げ深める「対話的な学び」を実現する,また,自分の学習を見通しを持って振り返るという「主体的な学び」の過程を実現する,この三つの観点から,学習や指導の在り方を常に改善していくという視点として,お示しいただいているところでございます。
これのほうを各教科におけるこの三つの視点の在り方ということを各ワーキングで深めていくという段階でございます。
その後,19ページ目から学習評価の在り方についてでございまして,20ページ目にございますように三つの観点,「知識・技能」,「思考・判断・表現」,「主体的に学習に取り組む態度」を踏まえて再整理をしていくということ,また,これから求められる力にふさわしい多面的な評価の在り方ということを今後考えていくということでございます。
また,22ページ目からはカリキュラム・マネジメントや教員の養成・採用・研修,また,ICTなどを含めた様々な条件整備について必要な点をおまとめいただいているところでございます。
ここまでが総論でございまして,26ページ目から改訂の具体的な方向性ということで学校種別・教科別のまとめでございます。27ページ目から幼児教育,小学校,中学校,高校とございますけれども,今回,高校部分だけ御説明をさせていただきたいと存じます。31ページ目,高等学校でございます。高等学校,高大接続改革の方向性なども踏まえながら,高校生に共通に身に付ける「共通性の確保」という観点,それから進路に応じた「多様性化への対応」,その両方への対応が必要であるということでございます。
「共通性の確保」という観点からは,本特別チームで御議論いただく地歴・公民はじめ国語科・外国語科・情報科における必須履修科目の在り方を見直していくということでございます。また32ページ,「多様化への対応」ということでは,今回,数理探究なども含めた科目の在り方や,また見直しなども含めた多様化への対応の観点を実現していくということでございます。
それから,おめくりいただきまして,社会・地歴・公民につきまして36ページでございます。36ページ目マル3,社会・地歴・公民についてでございますけれども,これまで現行に基づく充実が図られてきているところでございますけれども,主体的に社会の形成に参画しようとする態度の育成,資料から読み取った情報を基にして考察・表現することなどについてはさらなる充実が求められるということ,次期改訂に向けては幼児期に育まれたた力もベースしながら,また,生活科をはじめとする低学年の学習もベースにしながら,小・中・高を通じて育成すべき資質・能力を明確化して育んでいくということでございます。
そして,特に高等学校教育におきましては,社会参画の意識ということでは国際比較でもかなり低いということ,また,先哲の考え方を手掛かりとしながら自己の生き方・考え方を磨いていくということに課題があることなど,また近現代に関する学習の定着状況が低い,課題解決的な学習の展開という面で不十分であるなどの指摘があるところでございます。
こうしたこと,それから前半に触れさせていただきました資質・能力などを踏まえますと,国家・社会の形成者として必要な力を育んでいくこと,自国の動向とグローバルな動向を横断的・相互的に捉えて考えていくということ,持続可能な社会づくりの観点から地球規模の諸課題・地域課題を解決していく力ということを共通に育んでいくことが必要ではないかということ。
これを踏まえまして,地理歴史科においては「世界史」の必修を見直し,共通必履修科目として,我が国の伝統と向かい合いながら,自国のこと,グローバルなことの双方の関係を近現代を中心に学ぶ「歴史総合(仮称)」と,持続可能な社会づくりに向けて必要な地理的な見方や考え方を育む「地理総合(仮称)」の設置を検討すること。
また,37ページ目にございますように,公民科におきましては「公共(仮称)」というふうにございますけれども,様々な課題を捉え考察する基となる概念・理論や先哲の多様な思想を学び,課題を解決していく力というようなことを,他教科との関連を図りながら考えていく。こうした中で,キャリア教育の在り方やインターンシップの在り方なども併せて考えていく必要があるということでございます。
また,用語の在り方,小・中との関連についても,御覧のとおりまとめられているところでございます。
いずれにいたしましても,48ページ目,今後のスケジュール等ということでございますように,各教科や学校段階に閉じた議論ではなく,カリキュラム全体としてどのような力を育成すべきか,先ほど申し上げたように,総則・評価特別部会でもそうした議論をつながせていただきながら検討を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
大変長くなりましたが,論点整理につきましては以上でございます。

【田中主査】  大杉室長,どうもありがとうございました。
それでは,今までの説明について,何か御質問がありましたらいただければと思います。よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
特に御質問がございませんでしたら,引き続きまして,本特別チームにおける検討事項,新科目の内容構成の考え方等について,事務局から御説明いただきたいと思います。

【梶山主任視学官】  それでは,私の方から御説明させていただければと思います。
まず資料の方から御覧いただければと思いますが,資料7-1というものから御説明させていただければと思います。先ほど,大杉室長の方からもお話がありましたけれども,新しい科目というものを設置するということが,今回方向性ということで論点整理でまとめられたところでございますが,そちらにつきましては,前回の答申においても,宿題となっていた長い話でございます。
現在どうなっているかと,いま一度,おさらいさせていただきますと,資料7-2を御覧いただければと思います。地歴科・公民科におきましては,こちらにありますように,世界史・日本史・地理,それからそれぞれにつきまして2単位・4単位の科目があるところでございます。その中で世界史一つを必修に,それで日本史・地理,四つの中から1科目をとってくださいという,このようなことになっております。
公民科につきましては,「現代社会」の2単位の科目,若しくは「倫理」,「政治・経済」合わせて4単位となるもの,どちらかをとってくださいということになっているところでございまして,歴史的な経緯につきましては後ろにあるわけでございますが,平成元年以来,世界史を必修というような形でなってきたところでございます。
資料8-1も御覧いただければと思います。後ほど,お帰りいただいて御覧いただければというふうに思いますが,こちらは先ほどの論点整理を行いました企画特別部会で配付した資料でございます。今までの経緯でありましたり,履修をどのようにされているか,それから子供たちがどれくらい資質・能力を育んでいるかという調査を行っておりますが,その調査の状況,それから諸外国の比較というようなことに関しましてペーパーをまとめております。こちらにつきましては,後ほどお戻りいただいて御覧いただければというふうに思っております。
また,8-2につきましては,先ほど御説明したところとかぶりますので,割愛させていただければと思います。
9-1以降を御覧いただければと思います。こちらが本日の本題ということで,これから先生方の方で御検討いただきたいテーマというふうになっております。よろしゅうございましょうか。
9-1,それからそれ以降の資料も使わせていただきますが,まず9-1を御覧ください。本チームにおいては検討事項として大きく四つをお願いしたいと思っております。先ほど来,申し上げているところでございますが,1.として新たに置かれます新科目の内容の検討というものを行っていただきたいと思っております。こちらの内容につきましては,後ほど御説明いたします。
それから,2.でございますが,新しい新科目が置かれるわけでございますが,それとほかにも置かれる科目が当然出てくるものですが,その科目間の関係の整理ということにつきましても御検討いただきたいと思っております。
それから,3.でございますが,高等学校のことを考えるに当たって,やはり小・中学校との内容の系統性についても御検討いただく必要があるだろうということ,こちらについてもお願いできればと思っております。
最後にその他といたしまして,適切な指導がされるための様々な条件・要件などが出てくるのだと思っております。周知・広報・研修など,特に「歴史総合(仮称)」に関しましては,日本史・世界史を融合していくというようなところ,こういうところに関してどのようにやっていけばいいのかと。それから今後の指導の在り方というものに関して,先ほど来申し上げているように,非常に新しいものを取り入れていく必要があるのではないかというところ,そういうところに関してどのようにしていけばいいのかということも御検討いただければと思っております。
それでは中身について,1.のところにつきまして,まず歴史に関して教科ごとに御説明できればと思います。9-2を御覧いただければと思います。先ほど,それぞれのところで,9-1でまとめたものを,「歴史ではこういうことを」ということをまとめたものが9-2でございます。
まず,1番目でございますけれども,当該科目,新しい科目を通じて育むべき資質や能力について,特にどのような思考力・判断力・表現力を育むかということ,これについて御検討いただく必要がまずあるのではないかと思います。新しい科目であり,必履修科目として,こちらについて説明していくということが求められるものとして非常に重要なところであるというように考えております。
なお,その際,どのような思考力・判断力・表現力を育むかといったときの,指導に当たって歴史的な事象を捉える教科・科目の特有の視点や考え方というもの,こういうことを重視し,明確化することが必要になっていくのだというふうに考えております。こちらにつきましては,資料の2枚目を御覧いただければと思いますが,こちらは先ほど大杉の方から御説明申し上げた論点整理の後ろにそれぞれの科目の今後の在り方についてということで検討素案ということで大きな方向性を企画特別部会の方でお示しいただいているところでございます。
こちらの新科目のイメージというところを御覧いただければと思いますが,その2.目のところで,こちらは近現代のことをやっていくわけでございますが,その近現代につきましては歴史の転換等を捉えた学習を中心とするというようなことが言われているわけでございますが,そちらを捉えるに当たって,その次のポツでございますが,その転換の様子を捉える「継続と変化」,それから因果関係を捉える「原因と結果」,それから特色を捉える「類似と差異」,このような歴史的な考察を促す概念というものをきちんと整理して,これを重視した指導を行っていくことが重要であるということが言われているわけでございます。
このような概念について,ここに挙げられているものだけでいいのかどうかと,それで具体的にはどうなのかということにつきまして,そちらを御検討いただければというふうに思っているところでございます。
それから,前のページに戻っていただきまして,マル2でございます。先ほど,近現代を捉えるに当たっての非常に大きな考え方として,歴史の転換等を捉えると,こういうことが企画特別部会の方でいただいているところでございます。こちらの「転換」というものが,では具体的にどういうことなのかということ,これについても御検討いただきたいというふうに思っております。こちらで例を示させていただいておりますが,現在の高等学校の日本史と世界史の学習指導要領におきまして,近現代について歴史が転換,変化していくというようなときに関しまして,いわゆる「○○化」というようなことを書いているところがございます。
具体的に申し上げますと,産業社会と国民国家を形成する方向に社会が大きく変化していくことを示すような「近代化」というところ,それから科学技術の発達というものを背景として,人々の多くが社会の在り方を規定するようになったということを示す「大衆化」というところ,それから人・物・金・情報等が国境を超えて一層流動するような時代,こちらへの変化を示すような「グローバル化」などが,現行の学習指導要領などにおいても「転換」のフレーズとして挙げられているところでございます。
このことにつきまして,どのようなところでこの「転換」というものを考えていけばいいのかということについても御検討いただければというふうに思っております。
なお,その際,先ほど来こちらの科目につきましては「近現代」ということに着目してということを申し上げているところでございますが,大まかではございますが,学習対象となる時代とか歴史事象をどのように考えるかということについても,検討が必要であろうかと思っております。
この1枚目の下のところを御覧いただければと思いますが,現行の学習指導要領におきましては,世界史で言えば近代というものをおおむね18世紀の後半,市民革命・産業革命などから始めているところでございます。日本史におきましては,19世紀後半の開国前後,ここら辺から始めているところでございまして,現代についてもそれぞれ少し考え方が違っております。大まかに,どの時代から対象とするということについても御検討いただく必要があるのではないかと思っております。
なお,当然ではございますけれども,取扱い時代がより短くなればなるほど,詳細な指導であったり,正に主題解決的な学習というものが行うことができることにはなるとは考えますが,その前提となるような知識のところと含めて,どのように取り扱っていくかということ,こういうことも勘案する必要があると思っておりますし,中学校までにおける学習を踏まえた円滑な学習ということも,御検討の視点としてあるのではないかと考えているところでございます。
さらに,すみません。恐縮でございますが,9-2の括弧内のマル3に戻っていただいて,今回の新科目につきましては,検討素案にありますように日本の動向と世界の動きを関連付けて捉えていくこということが必要であると示されているところでございます。世界における日本の位置付けなどについて,どのように考えるか,この点について御検討いただければというふうに思っております。
また,こちら,4以降というところに関しましては,9-1で言いますと,2.以降のところでございますが,こちらについても,こちらのペーパーで御説明させていただきたいと思います。
まず,マル4で「地理総合(仮称)」との関係ということになります。こちらでございますが,両方,地歴科という同じ教科の中で置かれる科目でございますが,グローバルな時間・空間認識の育成であったり,そのようなところで共通するようなところがあると思いますけれども,そちらをどう有機的に結び付けていくのかということ,こういうことについても御検討いただきたいというふうに思っております。
それからマル5でございますが,高校生として共通に求められる資質や能力を確実に育む必履修科目の設計と,生徒の興味・関心や進路に応じた選択科目の設計。要するに,いわゆる共通必履修の科目とそれ以外の選択科目の関係について,どういうふうに考えていくかということ。これにつきまして,高大接続の観点を含めて検討していく必要があるのではないかというふうに思っております。
また,マル6にありますように,先ほど大杉室長の方からも御紹介しましたが,小・中学校の社会科の歴史分野の学習との関係をどうしていくか。それから先ほど申し上げましたその他の指導が適切になされるための条件・要件につきましても,御検討いただきたいと思っております。
次に,資料9-3を御覧いただければと思います。9-3が地理でございます。地理に関しましては,基本的には先ほどと構成は一緒でございますが,マル1で当該科目を通じて育むべき資質や能力について,特にどのような思考力・判断力・表現力などを育むかということ。これについて御検討いただきたいと思っております。
なお,その際,先ほど申し上げましたが,指導に当たって地理的な事象を捉える教科・科目特有の視点,考え方などを重視し,明確にしていくことが求められていくのだというように考えております。
こちらにつきましては,資料の2ページ目を,また御覧いただければと思います。こちらが先ほど御紹介申し上げました地理の検討素案において書かれているところでございますが,新科目のイメージとして,その二つ目のところでございますけれども,「位置と分布,場所,地域」,こういうような概念を捉える地理的な考え方・見方の育成が重要だということも,こちらの方で示しているところでございます。
この分布・場所というものに関しましては,すみません。3ページ目を御覧いただければと思いますが,インターナショナルな地理学会において地理教育振興のためのガイドラインというものがまとまっておりまして,そのときの中心的な概念として挙げられております,この五つの概念というものがあります。それを基に踏まえて,参考にありますように,現在学習指導要領において地理的な見方や考え方というものが示されているところでございます。aにありますように,どこに,どのようなものが,どのように広がっているかとか,例えばcにあります,なぜそこでそのように見られるのかと,なぜそのように分布したり移り変わったりしているかと。先ほどの下の概念というものを促す視点や方法として,地理的な見方・考え方というものを現行の学習指導要領の中で,これは解説の中でございますが,示しているところでございまして,そういう状況を踏まえまして,このような点について御勘案・御検討いただければと思っております。
併せて, 9-4を御覧いただければと思います。実践事例を付けている資料で恐縮でございますが,掲載事例といたしまして五つあります。先ほどの右のところを御覧いただければと思いますが,地理的な見方や考え方ということで,どこに,どのようなものが,どのように広がっているかということ,これを使って「問い」としていまして,「なぜ出生率と人口増加率は一致しないのだろう」というところを授業で指導しているという例がございます。
1ページめくっていただいて,左のところにありますが,「GISに関わる取組事例」ということで,GISでその出生率と人口増加率のものを重ね合わせまして,どのように分布しているかというものに関して考えていくような例。そのほか様々な見方・考え方というものを使って「問い」というものを立てて,そこで概念の定着を図っていくというような授業が行われているところでございますので,このようなところも参考にして検討していく必要があるのではないかと思っているところでございます。
それから,恐縮でございますが,9-3に戻っていただいて,マル3以降は先ほどとほぼ同様でございます。「地理総合(仮称)」から見た「歴史総合(仮称)」との関係,それからマル4として全体の地理の中でどうしていくかという話,それから小・中学校との関係,それからマル6というのがあるかと思います。このようなところを思っているところでございます。
それから,次に「公共(仮称)」でございます。9-5を御覧いただければと思います。9-5でございますが,こちらもマル1に関しては,歴史や地理で御説明したものと同趣旨でございますが,資質や能力,特に思考力・判断力等をどのような力を育んでいくかということが重要かと思っております。
その際,事象というところ,先ほどの話でございますけれども,論点整理の2枚目のところを御覧いただければと思います。こちらに先ほどの素案の中があるわけでございますが,資質・能力のところにマル2番目のところがあると思います。それを御覧いただければと思いますが,「様々な課題を捉え,考察するための基準となる概念や理論を,古今東西の知的蓄積を通して習得する力」と,こういうところが重要なのではないかというところが示されているところでございます。ここにありますような基準となる概念として,どのようなものを位置付けて,どのように考えていくかということが重要かと思っております。
なお,この点につきましては,恐縮でございますが,1ページ目に戻っていただいて,現行の学習指導要領の「現代社会」におきましては,現代社会における諸課題を扱う中で,社会の在り方を考察する基盤として,幸福・正義・公正,こういうことなどについて理解させると,このような内容になっているところでございます。このようなことも踏まえまして御検討いただければというふうに思っております。
それから,マル2でございます。公民教育に求められる今日的課題への対応ということで,こちら,様々ないわゆる課題というものに対して,どのようなところを検討していく必要があるかというところでございますが,こちらも次のページを御覧いただければと思いますが,このお花みたいなところがあるわけですが,真ん中の力というものを育むために,この花びらのいろいろ主体となることというものに関して,そこの検討・指導を行うということが言われているわけでございますが,具体的にどのような内容についてこちらで指導していくのかということについても,より突っ込んだ議論が必要ではないかと思っております。
併せまして,その内容としては,本教科につきましてはキャリア教育の中核となる時間として位置付けることを検討するということが,先ほどの論点整理もあるところでございまして,その内容も踏まえた御検討を頂ければと思っております。
すみません。1点飛ばしてしまいまして,恐縮でございます。「地理総合(仮称)」のところへお戻りいただいてよろしゅうございますか。「地理総合(仮称)」のところのマル2を飛ばしてしまいました。大変申し訳ございません。
先ほど,「公共(仮称)」におきましても書かれていましたように,地理教育に求められる今日的要請というものをどう考えていくかというところがあろうかと思います。次のページ,2枚目を御覧いただければと思いますが,技法としての実践的にいろいろなことを考えるためのGISの活用でありましたり,ESD,持続可能な教育と呼ばれるところでございますが,そのようなこと,それからグローバル化,それから防災など,このようなところも含めて,論点整理,それから諮問などに書かれているところでございます,そのような今日的な要請,どのようなところに対応していくかというところも含めて御検討いただければと思っているところでございます。
長くなりましたが,御検討いただきたい内容9-1を中心に,それぞれのところにおきまして簡単に御説明をさせていただきました。以上でございます。

【田中主査】  梶山主任視学官,どうもありがとうございました。
それでは,ここで少し自由に意見交換をさせていただきますけれども,その前に整理をさせていただきながら進めさせていただきたいと思います。先ほどの大杉室長と梶山視学官からの御説明がありましたけれども,資料5のところにございますように,資料5を1ページめくっていただきますと,我々の位置付けというものがございまして,中央教育審議会の教育課程部会の中の教育課程企画特別部会,その下に幾つもの分科会に分かれるわけですけれども,その中で「高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チーム」が,我々の本チームでございますが,その連携をしてお仕事していただきますのが,「社会・地理歴史・公民ワーキンググループ」で,先ほど大杉室長からもお話がありましたように,実際の学習指導要領の具体的な部分は,このワーキンググループの方にお願いする。我々の方は,ある程度考え方とか,その方向性を議論していくというのが主な役割だと存じております。
そして,土井主査代理が,このワーキンググループの方の座長でいらっしゃいますので,その意味では非常に連携がうまくとれると思いますので,今後の連携をとらせていただきながら進めさせていただければと思っております。我々の役割というものを自覚しながらお話を進めなければと思っている次第でございます。
それでは,今回は初めての顔合わせでもございますので,なるべく皆様から御自由に意見を頂きたいと思っております。とはいえ,主題は先ほど御説明いただきましたように,教育課程企画特別部会論点整理を踏まえて,本特別チームにおける検討事項,特に新科目の在り方,具体的内容についての意見交換というものをお願いしたいと思っております。
ここをお願いしたいのですが,もちろん先生方の御専門がございますので,特に検討事項に関連して日ごろからお考えのこととか,こういうことが大事であるとか,御主張もおありになると思いますので,その取り組んでこられました取組のアイデアなどもありますので,そういうことも含めて,少し御自由に意見交換していただければと存じております。
ただ,本日議論しなくてはならないのは,新科目で言えば「歴史総合(仮称)」,「地理総合(仮称)」,また,新しい形での「公共(仮称)」という,この三つについては御議論いただきたいのです。そうしますと,時間配分を考えますと,あと65分でございますので,大まかに申し上げると,「歴史総合(仮称)」というのは日本史と世界史両方にまたがりまして,どうしても長くなろうかと思いますので,恐らく25分程度,それから「地理総合(仮称)」で15分から20分程度,「公共(仮称)」でも15分から20分程度で,おおむね60分強かと思います。その中で少し意見交換もあると思いますので,最後の時間も5分程度余裕を見ると,多分,25分・15分・15分くらいが目安かと思います。
それから,御意見のある方は名札を立てていただきまして,発言が終わりましたら,名札をもとに戻していただくと,このように名札を立てていただくと議論がスムーズに進むかと存じております。また,限られた時間でございますからお一人約3分程度でコメントや御意見の内容を絞って御発言いただければと存じます。
よろしくお願いいたします。
では,まず少し整理してまいりますので,「歴史総合(仮称)」について,歴史の考え方について,資料9-2が主なものでございますけれども,御意見があれば伺いたいと思います。よろしくお願いします。
羽田先生。

【羽田委員】  これは歴史だけではなくて,今,御説明があったあらゆることに関係することなのですけれども,もう1度確認をさせていただきたいのです。
「グローバルなこと」とか,「グローバル化」のように,「グローバル」という言葉が非常にたくさん出てまいります。これが例えば歴史のところですと,「自国のこと,グローバルなことが影響しあったり,つながったりする歴史の諸相」と書かれていたり,「自国のこと,グローバルなことを横断的・相互的に捉える力」というように二項対立的に捉えられているように思われます。しかし,グローバルなことは自国の中にも入り込んできており,自国とグローバルは必ずしも対立するものではないと思います。
もともと日本で生まれ,今日グローバル企業と呼ばれる企業を思い浮かべてみるとよく分かります。これらの企業は,日本に拠点を持っており日本企業のようにみえるかもしれませんが,実は外国でも様々な活動を行い,全体として利益をあげているのです。この例のように,グローバル化とは,国の境目が絶対ではなくなるということです。従って,ここで使われている「グローバル」には,読んでいて違和感がありました。
地理のところでも,「グローバルな視点からの地域理解」ですとか,「グローバルな時・空間認識の育成」といった言葉が使われています。グローバルという意味が今一つよく分からないというのが正直なところです。もう少し具体的に御説明いただくと,とても有り難く思います。

【田中主査】  わかりました。今の御指摘で,そうしますと,まず「歴史総合(仮称)」に入る前に全体,三つの教科を通して,考え方として共通する考え方でございますが,グローバルというものをどのように捉えるかということがあるかと思います。
私も,ちょっと気がついておりましたのは,非常によくまとめていただいている,この緑の冊子の論点整理,今年の8月26日に出た論点整理の中の9ページ目から10ページ目にかけて,育成すべき資質・能力についての基本的な考え方というところをまとめていただいていまして,ここの「現代的な課題」の中の大きなマルの下に黒ポツが三つございますが,その黒ポツの一番上のところに「社会的・職業的に自立した人間として,郷土や我が国が育んできた伝統や文化に立脚した広い視野と深い知識を持ち,理想を実現しようとする高い志」ということ,それからまた,次のところでは「他者に対して自分の考え等を根拠と共に明確に説明しながら,対話や議論を通して多様な相手の考え方を理解し」,自分の考え方も広げる,多様な人々との協働という,そういうことが述べられていて,羽田先生がおっしゃるとおりだと思うのですが,グローバルと自国というのは対立するものではなく,グローバルと日本の伝統というものがシームレスにボーダーレスにつながっているという認識が大事だと思っておりました。
そこについて,少し補足していただければと思います。

【大杉教育課程企画室長】  はい。正にそういう認識で今後検討していく必要があるという論点整理をおまとめいただいたと思います。
少し歴史の部分が,そうした少し対立的な表現になってしまっておりますのは,正に今の日本史と世界史,それぞれ科目がございまして,これを融合して捉えていこうということを表現するために,少しそのような表現になってしまっておりますけれども,方向性としては主査に御指摘いただいたとおりかと思います。

【田中主査】  ありがとうございます。よろしいでしょうか。
今のような全体にわたることです。議論に入る前に少し確認ということがあれば,御意見を伺えればと思いますが。
羽田先生,非常に大事な御指摘をありがとうございます。そのような,また大杉室長からもお答えがありましたように,そこはシームレスに,非常に大きな視野で日本を捉える,世界の中の日本を捉えるという形で,歴史も地理も「公共(仮称)」も見ていただければと思っております。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは,時間もございますので,「歴史総合(仮称)」について少し意見交換をさせていただければと存じますが,いかがでしょうか。

【磯谷委員】  愛知県立岡崎高校教頭,磯谷でございます。35年間,愛知県の高校で世界史を中心に地理,日本史,あるいは「現代社会」といったものを教えてまいりました。
今まで25年間,30年近く,世界史が高校では必修だと,その相方として小・中学校では日本史を中心に教えていくと,それで高校では世界史が必修だということがあったわけですけれども,これらのやはり高校では,中学から高校へ上がってくるときに世界史の知識がほとんどないまま高校へ来て,さあ,覚えて,入試を世界史で受けていくと,こういったような現実がありまして,世界史必修というのがどうもうまくグローバル化のための教科・科目として十分機能してこなかったかなというふうに思っております。
そういうものを踏まえまして,今回,高校で「歴史総合(仮称)」と,日本史と世界史を両方混ぜて新しく科目を作るということは大変いいことだと思っております。
しかしながら,今,やはりグローバル化と言いますか,世界史的知識は非常に必要なわけですので,やはり高校で世界史を教えてきた実績というか,それは中学にも少し分けていくといいますか,今まで全く中学の方が日本史中心で世界史がなかったものですから,そこを高校の世界史を中学の方へ少し移動すると言いますか,それである程度中学歴史分野でも世界史的内容をやってきて,そして高校でもまた「歴史総合(仮称)」で世界史的内容を学んでいくと。そうすれば,「地理総合(仮称)」「歴史総合(仮称)」の次の選択が,日本史とか世界史とか地理とか,発展的な選択の科目があるわけですが,そこが選択しやすくなるのかなというふうに思っております。ですから,是非,世界史的な基礎・基本は,やはり小・中・高のトータルで育成していくということを,私としてはお願いしたいというふうに思っております。
それから,高校で「歴史総合(仮称)」と「地理総合(仮称)」が2単位ずつ入ってきます。それであと,例えば大学入試ではやはり2科目要求してくるという,例えば東京大学とか,現行あるわけです。そうしますと,「2単位+2単位+日本史を4単位+世界史を4単位」と,合計12単位を高校でとらないと,東京大学を受けられないということになってしまいます。それはもう無理な,高校のサイドから言うと,そんな地歴・公民科だけの理屈ではだめなんだということが出てしまいますので,これは少し課題かなと思っております。
それから,2単位の「歴史総合(仮称)」の中身なのですが,資料9-2のところに,どこから近代を始めるかということで,世界史と日本史で少し時期が違うということがあるわけですけれども,やはりこれからの生徒は,今2015年ですが,2030年とか,あるいは2050年というスパンで生きていく高校生にとって,どういう区切りで歴史を考えていったらいいのかといったときに,やはり日本中心の時代区分ではなくて,グローバルというか,世界で共通の尺度で時代区分した,そういう教え方の方が応用が効くと思います。先ほど資料の方で見させていただいたのですが,2050年になると世界のGDPに占める日本のGDPの割合が1.9%に低下するというような恐ろしい数字が出ていまして,日本の世界的な地位が下がっていくかなというようなことも感じております。
そうしたときに,日本の時代区分で歴史を話すのではなくて,中国人とか,あるいはアメリカの方とか,マレーシアの方とか,いろいろな方と歴史の話をするときに,世界標準の時代区分という区切りでやっていった方がいいのかなと,大きく歴史を捉えていくということが必要なのかなと思っております。
それから「歴史総合(仮称)」の中身ですが,今までどうしても事項を教え過ぎると言いますか,たくさん言葉が入っているということがあったのですが,これからは資料批判,クリティカル・シンキングという言葉もありましたが,やはり大きく捉えて,生徒が調べたり,資料に基づいて議論したり,そういった科目にしていただけると有り難いと思っております。
以上であります。

【田中主査】  ありがとうございました。
4点,御指摘いただいておりますけれども,特に高大接続,大学入試との関連,それから小・中・高との教育の在り方というのは,一つ教育の現場として大事だと思うのですが,もう一つ,この中身の方で,2点御指摘いただいていて,近代と現代の区切りが日本史と世界史で異なるということについて,どう考えるかという非常に重要な問題,それから国際的にどのようにほかの国の方と視点を共有するかということで,少し中身の方を先に御意見があれば伺いながら,また,現場との関係でいうところの高大接続などに踏み込まればと思いますが,少し中身について御議論を頂ければと思いますけれども。
特に最後に御指摘の,近代が日本史では19世紀後半,開国前後から,世界史では18世紀後半からと。現代は世界史では19世紀後半,帝国主義が出てくるところ,そして日本史では20世紀半ば,第二次世界大戦前後という形になっている。
この考え方が,先ほどの御説明にもありましたけれども,近代化,近代社会の形成というもの,それから大衆社会の出現,そして今日のグローバル社会の出現というふうに,「○○化」という現象と,この時代というのは当然対応しているわけです。
この辺りは,御専門の先生と申し上げたところです。白石先生,御意見があれば。

【白石委員】  どうも。
一つ,まず確認ですが,要するにどこから始めるのかという話で,これで見ると「参考」に近代,現代となっているので,ここから始めるというふうに想定されているのかなと思ったのですが,何となく私はこの前の議論のときには,15世紀・16世紀辺りから始めるという案もあったのかなと思ったので,これはどちらにするのか。私はどちらでもいいと思いますが,その確認が1点です。
それから2点目は,歴史の転換ということで,ここの転換の時期の例となっているのは,これはもう全て,ある意味では歴史を動かしていく原動力,エンジンのようなものをどうつかまえるかという判断だと思いまして,近代化と言えばいいのか,産業化と言えばいいのか,私は産業化の方がよくわかるのではないかなと思いますし,大衆化というのは,多分政治参加の拡大ということだろうと思いますし,グローバル化というのは,時間と距離が物すごく圧縮されるということだろうと思うのですが,こういう,これはこれで一つの捉え方としていいのですが,同時に,世界史を見ても,日本史を見てもはっきりしていることは,歴史が非常に大きく変わるときと,それからかなり比較的安定しているときがあるわけです。特に安定している時期ということを一つの時代としてつかまえるときには,やはり世界システム的な考え方が要るのではないだろうかと。
具体的に申しますと,例えばこの近代で世界史で18世紀の後半以降,これは確かに1770年くらいからナポレオン戦争が終わるくらいまで,大変な激動の時期ですが,その後,ナポレオン戦争の後から第一次大戦が起こるまでは比較的安定しているわけです。第一次大戦から第二次大戦のところでまた物すごく大きく変わって,冷戦の時代は安定していて,多分今はもう一遍変化していると。
だから,そういう歴史の物すごく変わるときと,安定しているときで,それにも関わらずどういう力が働いているか,この二つの発想法が要るのではないでしょうかというのが,一つ申し上げたいことです。
それからもう一つは,「地理総合(仮称)」,更には「政治・経済(仮称)」との連関で申しますと,私はやはりいろいろな形で,どうしても教えるテクニックというか,基礎的に例えば歴史ですと,一次資料と年表というのは必須なわけですね。それから地理の場合,地図がもう絶対ですし,それから「政治・経済」ですと,例えば統計だとか,あるいは一次資料にもつながりますけれども,政治家の演説だとか,こういうものが必ずこの歴史の中に常に入り込んでいて,そこで歴史と地理と政治・経済なんかが引っ掛かってくるという,そういうことをやはり具体的に教科書の中に入れ込むことで,関係というのがよく生徒にもわかるのではないだろうかという,この3点を申し上げたい。

【田中主査】  ありがとうございました。
非常に御意見が多岐にわたりますから,余り私がコントロールしようとせずに,御意見を自由に伺った方がよろしいかというふうに考え直しました。
先ほどの磯谷先生と白井先生の御指摘で,特に歴史の転換点ということが今御議論でありますが,白石先生がちょっと今おっしゃっていた前回というのは,私どもが少数の人数でインフォーマルなワーキングを作っていたときが,今年ございまして,その中での意見交換では,近代の初めを大航海時代までさかのぼるかという,15,6世紀くらいまで見るかというところと,産業革命のところくらいから見るかという,見方があるということなのです。
ただ,これも,少し御議論いただければと思いますが,余り丁寧に戻ると時間がなくなって,最終的に現代をほとんど触れずに終わるというようなことになると,現場の要請もあると思います。ですから,やはり現実の今日の世界まで教えることができるような取組も必要だと思いますので,ということは,多分ウェートが変わるのだろうと思います。
どこまでさかのぼるかということと,どのウェートで,だんだんにウェートが重くなる,これだけは外せないというような歴史の転換点を御指摘いただきながら,少し御専門の視点から御指摘いただきながら,その方向性だけを我々で議論できればと思っているのですけれども,その辺りについて,少し意見交換ができればと思いますが,いかがでしょうか。
それでは橋本委員。

【橋本委員】  ありがとうございます。
先ほど,三つが始まる前に伺えばよかったのですが,私は昔,教育委員会におりまして,中学校とか,高校とか,全体を見てまいりました。今回,中学校の三つの分野につながるということで,大変いい方向だというふうに考えておりますが,今回示されました「歴史総合(仮称)」とか,「地理総合(仮称)」とか,「公共(仮称)」とかいうのができ,また更に深く学ぶ科目ができるわけです。
実は,高等学校に進学する生徒が98%を超えるというような状況の中では,本当に公民として,全ての子供たちでこのエポックというか,どの内容を学ぶということを共通にするのかという絞り込みというようなことでないと,大変難しいと思うのですが。
  そういう全体的な構造がなかなか今の時点ではつかめないので,その辺の議論に関わってくるのかなというふうには思っております。

【田中主査】  ありがとうございます。御指摘の点も,検討させていただきたいと思います。
では,池野先生。

【池野委員】  遅れて来ました。すみません。企画特別部会に参加しておりました池野なのですが,ちょっと三つほどお願いというか,企画特別部会に参加した人間からお願いしたいことがあります。
一つは,教科や科目の構成というか,在り方の問題です。先ほど,大杉さんがこの論点整理の中の27ページのところで,三角形の図のようなものを示されました。これはある面,教育そのものがこういう三角形になるし,それから地理・歴史科も,公民科もそうなるし,今,ほか検討されようとしている「歴史総合(仮称)」,「地理総合(仮称)」,「公共(仮称)」もこの三角形になるという前提のもとで考えられているということになるわけです。
ですから,この三角形は教育的に言えば目標と内容と方法と,言い直せばそういう三角形に組み替えられるのですが,ある内容とある方法を使ってある目的にする,と。これは社会科や地理歴史科は,その国家社会の形成者なり,公民的資質と言われるものを目指してきた,と。だけど高校はどうしても日本史や世界史や政治や経済の内容を教えてくることが中心で,その内容を通して何を身に付けてくるかということが,なかなかやはり目指されない,と。内容中心に授業ができていて,それも先生中心にやっている,と。それを克服したいというのが,この三角形の図だったと思うし,企画特別部会もそういう方向でならないかと,高校の授業がそういう形にならないかということで言われているのだということを,念頭に置いていただきたいというのが一つです。
二つ目は内容の構成です。どうしても,今例えば「歴史総合(仮称)」の話になると,いつからいつまで歴史を全体的に近代や現代を見るか,どこまでどういうことを教えるかという内容をどこまで選択するかということを示すかということが,どうしても議論になりやすいのですが,それも一つの例だと思うのです。けれども,やはり歴史の学び方や地理の学び方が,それが社会の中でどういうふうに生きてくるか,成人になって社会人になったときに,それがどのように生きてくるかをやってほしい,身に付けてほしいと思うのです。
例えば,小学校では6年生では人物学習になって,いろいろな人物,たとえば,聖徳太子,今は聖徳太子は余り中学校では言わないのですが,聖徳太子を教えるとか,聖武天皇を教えるとかいって,人物を歴史の中心に置いて,やはり歴史を動かした側面を強調して理解できるようにするわけです。けれども,これが中学になると,少し出るけれども,高等学校になるとだんだんそれが消えてきて,全体のことを教えてしまう。
そうすると,やはり歴史の面白さというのが消えていって,歴史全体はわかるけれども,動いたことだとか,歴史がどういうようにあったかとか,どういうように進んできたかの非常にダイナミックな部分が消えてしまって,非常に構造的な部分だとか,システム的な部分はよくわかるけれども,個人が役割を果たした部分だとか,いろいろな特殊な集団が果たした役割なんかは見えにくくなってくる。そういう側面で,やはり1人の人物なり,我々個々人がどういう働きが歴史に対して行われるか,あるいはその空間に対して働けるかというようなことが大事ではないかと思うのです。
だから内容の選択も確かに,歴史の場合ですと近現代の中から一定程度何かを選んでこないといけないことは確かなのですが,その内容を理解するためだけではなくて,その目的と言いますか,それを通して何を子供たちに身に付けさせたいのかを考えていただきたいと思うのです。
だから世界システムを理解することによって,子供たちが今のグローバル化社会がどのように見えるのか,例えば南北問題だとか,そういうものと結び付いて見えて,いろいろな形のものが見えてくるようになればいいのですが,その場限りの帝国主義の時代のある一定の構造はわかるけれども,それはなかなかほかのところには転移しないというか,理解はできないというのは,やはり少し困ったものだと思うので,その点を2番目として考えていただきたい。
それから3番目ですが,やはり高等学校の授業はどうしても,私なんかよく見るのですが,先生が講義されることが多いのです。どうしても先生がレクチャーする。大学もそうなのですが,レクチャーしてしまうのですけれども,レクチャーも一定程度必要だと思うのですが,やはり子供たちが調べたり,いろいろな形で疑問を出したりして一定の何かをつかんでくる,学んでくることがもう一つ大事なことではないかと思います。これは地理でも一緒でしょうし,「公共(仮称)」の側面でもそうだと思います。「公共(仮称)」の側面はもっといわゆるアクティブ性と言いますか,活動性がもっと必要ではないかと思ったりしますけれども,そういう側面がやはりある。
だから,この三角形のうちはある面,その内容をここでは主に議論するのですが,方法の部分だとか,目標の部分と連関しているということを,是非理解していただきたいと思います。
以上です。

【田中主査】  ありがとうございました。
では,続けて辻中先生,お願いいたします。

【辻中委員】  すみません。今,池野先生の御意見に全く賛成ですが,少し違うようなことを言います。
先ほど白石先生が言われたことに関連して三つほど言いたいのですが,一つはやはりこの出発点の問題で,現在を作っている近現代の初期条件と言いますか,そこがやはり重要なので,日本の200年というような本を書いている人もいますけれども,250年,300年……,250年くらいではないかと思うのですが,いわゆる近代が始まる以前の初期条件から今までを見るという視点が必要ではないかというのが一つです。
もう一つは,グローバル化というのを確かに境目がなくなることと捉えると,1980年代からITだとか,いろいろなものが進んできますから,進んでいるのですが,常にシルクロードの時代からではないですが,地域間相互作用がずっとあったわけで,特に近隣との地域間相互作用の視点を常にこの中では入れていってほしいなというのが2点目。
3点目は,どうしても構造的に捉えると,世界史の部分は,そこのときの先進的部分の国だけが注目されて,我々で言うと,この後でも出てきますが,イギリスとか,フランスとか,ドイツ,アメリカばかり参照点にしているわけですが,そうではなくて,常に,先ほどマレーシアという話も出ましたが,マレーシアが例えばその時期にどうだったのかとか,太平洋の島々はどうだったのかとか,アフリカはどうだったかという,その250年の中にも存在していたわけなので,そういう先進国だけが,先進的な転換を,ドライビングフォースだけが世界史のイナイズではなくて,そのときにもそれぞれ人々が住んでいたと,そういう視点も世界史の中に入れていっていただけるといいかなと思います。
以上です。

【田中主査】  ありがとうございます。
様々な視点が出ておりますけれども,かなり相互に関連しておりますので,もうあと5分くらい,この議論を続けさせていただきますので,では,今村先生。

【今村委員】  NPOカタリバの今村と申します。私は高校の教科の指導を行っていないということと,一つ一つの教科を議論する上での必要な最低限の知識もない立場からの申し上げることになりますので,もしかしたらピントがずれていたら,もう切っていただいても構わないと思っています。
私の立場は,特に中間層くらいの子供,高校生たちよりも下の子たちを中心に関わってきて,15年間,NPO法人を高校の教育内容を支えるという立場で行ってまいりました。
その立場から,この議論のもっと内容そのものではなくて,議論していく上でのスタンスとしてなのですが,高校生たちを見ていて,この資料等でも指摘されているのですが,非常に意欲自体がないわけなので,どんなに何を教えるのかということを充実させていっても,その意欲をどう引き出すかの部分が一番大切だなと思っている中で,この社会科の科目というのは,彼らがこれから生きていく上でとても大切な,特に歴史の転換点を学ぶということは,彼ら自身が何かを変えていくという力を,特に18歳選挙権の件も含めて,自分が社会をこれから変えていく当事者なのだということを自覚するために,希望を持てるすごく重要な教科なのではないかと思っております。
その中で,どうかこの議論を何を盛り込むかもなのですけれども,先生方が何をしなくてもいいということも観点に入れられないかなと思っていまして,一つの科目の中で,ここの部分は絶対に日本中の子供たちに伝えようと,でも,ここの部分は学校の進度によって,生徒の状態によって選択しなくてもいいみたいなことを定義することは,この議論において難しいのかどうかを教えていただきたく,できれば生徒自身が探究していくという時間,余白を作っていくということを方針自体に盛り込んで,特に中学校までは,社会科の科目で総合的に学んできたと思うのですけれども,この高校での学びについては,AO入試で実際にマニアックに何かを調べ抜いたという経験がある子が,やはり評価されるという入試になってきている面もありますので,ここについては自分はすごく詳しいという部分を子供たちが一つでも持てるような,そんな教科になったらなということを発言させていただきました。
以上です。

【田中主査】  ありがとうございます。
幾つかの視点が出てきておりますけれども,そろそろ地理の方にも移らなければいけないので,少し御意見をまとめさせていただきながら,またそれについて何か補足があれば伺います。
教えるべき範囲をどうするかということ,それからどこまで戻るかということについて議論するべきという御意見がございまして,それからその方法について,今の今村委員の御意見も先ほどの池野委員の御意見も実は共通しているところがございまして,ただ単に内容・知識を提供するだけでは,やはり社会科の教育というものは無味乾燥になるということ。特に子供たちの意欲をかき立てる教育方法が必要だろうと,それが「アクティブ・ラーニング」ということになるのでしょうけれども,単なる「アクティブ・ラーニング」と言うよりも,何のために,どういう意欲を,どのようにかき立てるかということを議論するべきだという御指摘だったと思います。それを受けて考えなければと思いますが。
それから,グローバルということに関しても,先ほど辻中委員からも御意見がございましたけれども,主要国からだけ見たような世界史ではなく,日本からだけ見たようなアジアではなく,近隣諸国との相互作用というものを見る必要があると。いわゆる現在言われているグローバルヒストリーというような考え方かと思うのですが,欧米からだけ見たものの見方ではない,アジアからも,グローバルの世界のどの地域からも視点を展開できるようなものの見方という,そういう非常に我々が目指すところはアンビション,高い,非常に大きな課題でございますけれども,そういうものを視野に入れながら,どこまでさかのぼるか,そしてどの程度スコープ,地理的な空間をどのくらい広げるか,視点もどのように固定しないかということ,そして方法論的にも子供たちが自ら学び,自ら何かを掘り起こして探究するような余裕を与えるような教育という,非常に大きな課題なのですが,そういうものを目指すということが先生方から今頂いているかと思います。
ここで,少し地理の方に移る前に御意見があればと思っていますけれども,どうぞ。

【大石委員】  大石です。東京学芸大学で近世史,江戸時代を専門に研究・教育しています。3点ほどあります。一つは時代区分の問題です。近代,前近代に区分するとき幾つかの説があると言いながら,もし,近代の始点を開国以前か,あるいは100年さかのぼり18世紀後半に求めるか,いずれにしても近世史あるいは江戸時代が,二つに切られる形になります。
そうすると,今までの小・中で学んできた江戸時代という時代概念と違うスケールで捕えていくことになります。その点の教育的配慮が気になります。そもそも小・中学校の,
  特に現在の小学校の時代区分には大きな問題があると私は思うのですが,そこは置いておいても,前近代と近代の時代区分の問題は,配慮が必要だと思います。
その際,近代を改めて考えたとき,今,議論が出ていたように西洋基準にもとづく見方,要するに黒船来航から日本の近代だという近代像でいいのか,改めて検討する必要があると思います。
二つ目は変革の問題,転換への注目が言われているのですが,最近の学生の意識は,東日本大震災以降,転換よりも,むしろ日常の大事さや変わらないことの大事さに,価値を置いてようです。私も,例えば江戸時代に2食が3食に変わった。今はこれがいつからか分からないのですが,その方が実は,将軍が代わったことよりも私たちにとって大きな意味をもつかもしれない。建物の建て方が変わった方が大きいかもしれない。お正月を家族で祝うようになった方が大きいかもしれない。そういう生活文化で見たときの,私たちの今日を形成してきた形成史のような視点こそむしろ大切なのではないか。そうした視点の弱さが気になりました。
それから三つ目は,歴史以外,いろいろな科学がそうですが,実証,証明,原理などというレベルにさかのぼって考えるさい,やはり手続,手段というのが必要で,そうしたときに今,世界遺産が関心を高めていますが,文化財や地域の地名などの歴史的遺産への配慮というのが欠けている気がします。文化財,資料を含めて,もう少し広い視野から,歴史をトータルに扱うことも必要かと思います。
以上です。

【田中主査】  ありがとうございます。
今の御指摘も非常に重要なところだと思います。今日はとてもすぐに結論が出るとは思いませんけれども,先ほどの近代をどこから始めるかということに関して,今の御指摘も私も思っていたことでしたが,政治的な区切りだけ,江戸時代とか,そういう政治体制の区切りだけで時代を区切ることに難しい面があると思いまして,例えば世界史と日本史の近代のずれというのは,恐らく政治区分と経済史の区分がずれているせいだろうと思うのです。
例えば江戸時代でも,あるところからは貨幣経済が始まるとか,堂島でのコメの流通が貨幣経済を促すというようなこともあって,それは実はグローバルな流れと対応している可能性もあるかと思うので,小・中までは恐らく江戸時代・明治時代という時代区分は学んでいると思うので,高校からの歴史に関して,特に「歴史総合(仮称)」に関しては,少しグローバルな視点での,経済史,それから今御指摘の文化史でありますとか,そういった視点からの大きな転換点というものも見る,教えることも必要ではないかという気がいたしました。
そのくらい柔軟に見ないと,一貫した形で近代の始まりとか,現代への移行というものを捉えられないかもしれないという気がしまして,この辺りは本日はまだ頭出しでございますけれども,先生方,委員の方々には少しそこら辺をお考えいただきながら,またコメントを頂ければと思っております。
はい,一ノ瀬委員,どうぞ。

【一ノ瀬委員】  時間がありませんので,1点だけコメントを。私は歴史の専門家ではなくて,哲学・倫理の研究者なのですが,この資料9-2のマル1のところで,継続と変化,原因と結果,類似と差異というのが出ていて,これは非常に哲学的な問題でありまして,例えば原因と結果ということを考えたときに,先ほど田中主査先生の方から視点を固定しないという話が出ましたけれども,何かの現象が起こったときに,それの原因を指定するというのは非常に難しいことですよね。
例えば1例を挙げると,荘園が崩壊していくということを挙げたときに,例えば守護・地頭が鎌倉幕府によって設定されたからと説明しても,それは一つの説明であって,それ以外に荘園制度内部に何か要因があるかもしれないし,技術の革新が何か要因であったかもしれないし,いろいろな可能性があるので,一応こういうことが原因となってこういうことが起こったと言うときには,それは一つの物語,一つの語り方で,学術的にハイリー・プロバブルなものとして認定されているという,でもそれは断定できるようなものではないのだという,その学問の今後の展開可能性みたいなものもあるということも,実は視点を固定しないというところに大きく関わっていると思うのです。
ただ,そのことを高校生に求めるというのは無理かもしれませんが,ただ,やはり断定できない,蓋然的,非常に高い蓋然的にこう考えられているという,その辺りをしっかり伝えることも必要なのではないかと,ちょっと哲学の研究者として思いました。

【田中主査】  ありがとうございます。重要な御指摘を頂き,大変ありがとうございます。私も実はこれに歴史だけではないのですけれども,地理でも「公共(仮称)」でも同じだと思いますが,この地歴のところの資料9-2では2ページ目の右側の黒ポツ四つのうちの3番目にございますけれども,「継続と変化」,「原因と結果」,それから「類似と差異」などの歴史の考察を促す概念を重視するということで,これは歴史だけではなくて「公共(仮称)」でも同じで,政治学でもそうですし,経済学でも重要視されているところですが,その因果関係ということが重要だろうと思います。
御指摘のとおり,これが原因だと断定はできない,いわゆるそれは1仮説にすぎず,その検証は人類がたゆまず続けていくので,どれが真の原因かは実は答えはないというのが,大学生が学ぶところです。高校生にはなかなかそこまで難しいとしても,一つの見方だけが決定的な真実ではないという,その検証が必要な仮説なのであるということが重要だろうと思います。そういう哲学とも関連する,そしてこれは3教科全てに関係すると思っておりますので,重要な御指摘を頂いたと思っております。
時間が押してまいりましたので,恐縮ですが,ここで「地理総合(仮称)」について,少し御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
それでは,御専門の井田先生に,まず指名させていただきます。

【井田委員】  地理の方なのですが,地理は当然,地理だけでいろいろなことができるわけではなくて,全てのものに対しての基礎を養うということで,小・中・高で学べるということは非常にいいのではないかということが一つです。
それを踏まえて4点ほど指摘させていただきますけれども,まず先ほどのグローバルとローカルという問題がありましたが,地理で言うと,そこはスケールという言葉で言い直せるかなというふうに感じます。スケールの違いによって見方が変わってくる,つまり日本のスケールで見れば稲作が非常に一般的ですが,今度は世界レベルで見たら,稲作は一般的ではないと。そのようにスケールを変えることによって,いろいろなものの見方が違う,つまり多様な見方がそこでできるだろうというようなことで,地理では扱っているというふうに考えています。
それから,地理では先ほど地図が非常に重要だということで,地図に関して2点ほど指摘させていただきます。まず,地図の活用も,それから地図を使ってどう考えていくかということもそうなのですが,今の段階だと小学校・中学校・高校でどのレベルまで達すればいいのかという,そういう基準が今のところはない。そういう意味では,このスキルに関して,能力もそうですが,スキルに関しては小学校低学年・高学年,中学校,高校でどこまで達成されると,そのレベルまで達したか,その上は幾らでも行っていいと思うのですが,そういうものがやはり必要かなと。それでないと,小学校でも地図の読み方,中学校でも地図の読み方,高校でも地図の読み方という,どこまでやっていいのか分からないというのが,やはり出てきているというふうに感じています。
それから,それに関して3点目になってきますけれども,GISという言葉が出てきて,やはりこれがある意味,今の技術だとか,進歩性だとかを取り入れているというところになりますけれども,ただ,この進歩性を取り上げる半面,多くの,これは多分必修になってくると,歴史の先生も教えなければいけないし,場合によっては公民科の先生も教えなければいけない,そこがかなりネックになるのですが,GISは技術そのものを言っているといいうよりも,地理の場合はやはり古い地図と新しい地図を見比べて,そこからどういう変化が見られるのかというようなことが重要で,それがまずGISの考え方の一つ,それがたまたまコンピューターに入って,何年のものが自由に取れる,何年のものが自由に取れるということになれば,それはかなり完璧なGISですけれども,もともとはそこから始まっているということなので,そういう基本的なところをまず,いろいろな先生方に広報できたり,周知できたりすると,このGISというのも,それほど抵抗なく入っていけるかなというふうには考えています。
それから4番目なのですが,先ほど「アクティブ・ラーニング」と関連したり,生徒がどうやって自ら学んでいけるかということで考えていくと,やはり最初に基礎的な知識があって,それから活用,探究があるというふうに考えられていますけれども,では,その探究の先に何があるかと考えたときに,いわゆる能力の育成,思考力だとか判断力というものがそこに育成されるだろうということが一つあるのですが,今,イギリスはかなりそちらの方に走っていたのだけれども,今揺り戻しがあって,やはり知識をもう1回見直そうということが出てきているようなのです。
その知識の見直しというのはもともとの知識の見直しというよりも,その過程を通してできたもので,結局探究の後に出てきたものが概念的知識として子供たちが位置付けられると。その概念的知識を持つことによって,実践力だとか,応用力だとか,ほかの教科との関わりというものを反映していくと。そういう意味では,そこの能力,地理プラス,そういう過程を通して子供たちが得られる概念的知識を地理でどういうふうに育成していくかというのが課題かなというふうには考えています。
以上です。

【田中主査】  ありがとうございました。
井田先生が御専門の点から御指摘いただいていますけれども,地理について,資料9-3のところでGIS,ESD,グローバル化,防災などが載っていて,GISは非常に新しい形だと思うのですが,これはある意味では方法論であって,研究の方法論であると同時に,教育の方法論でもあると思います。そして「アクティブ・ラーニング」も方法論であろうと思うのですが,そのグローバル化とか,防災は,ある意味ではトピックですね。ですからここに来ているトピックをどのように子供たちに教えるか,これが恐らく「アクティブ・ラーニング」と関係があって,その学びの動機付けをもたらすテーマ,特に防災とか,大震災というようなことは非常に大きな意味を子供たちにも持つと思うのですが,それをどのように学ぶかという意義付け,そしてそれをどのように客観的に見ていくかということ。それで,その方法として「アクティブ・ラーニング」があり,更に科学的にはGISのような新しい方法が用いられると。
そういうふうに伺っていくと,やはり空間的な広がりと時代によって変化があるという御指摘がございましたから,時系列の変化がある。これが先ほどの歴史の方でも御議論されていた,一つの国の歴史を通じて見るのから,世界の中の日本というような,グローバルなスペース,空間的広がりと時系列の流れ,縦軸と横軸のつながりという御指摘とつながると思うので,地理と歴史とが実は同じような見方をそれぞれ,地理というのは空間的で,歴史は縦軸の時系列だと我々は思ってきたわけですが,子供たちもそう思っていると思うのですが,それが実は双方に縦軸・横軸が重なっているということを理解してもらうことが必要だというのが先生の御指摘かと受けとめておりますけれども,よろしいでしょうか。

【井田委員】  はい。

【田中主査】  では,辻中委員。

【辻中委員】  すみません。地理が専門でもないのですが,地図が昔から好きなもので,非常に関心を持って聞かせていただきましたが,先ほど,高校生がそもそもやる気をなくしてしまっているから,何とかしなくてはいけないというのは,歴史もそうだし,地理もそうだし,本当はどれを見ても疑問が一杯わいてくるタイプの科目のはずなのですが,それがそうでないのは何とかしなければいけないと思います。
そこで,今,出てきた空間的な見方ということで,かなりいろいろなところで使われていますけれども,よく出てくる逆さま地図ではないですが,地図というのは相当様々な形が出てきていますね。南半球地図から,海からの地図から,いろいろな地図がございますが,そこの視点によって地図の形というのはすごくあるわけで,そういう多元的な地図を使いながら教育するというのが,一つの考え方としてあるのではないかと。
それから,単に今の地図は,普通欧米の場合だったらイギリスが中心になっていますし,日本の場合は日本が中心になっていますけれども,こういうことをふだん気が付かないのだけれども,そういうことを,多面的な地図を使うことによって明らかにするということが一つと,それから要素の入った地図ってありますね。人口で作ったら,何か中国とか日本はそれなりに大きいとか,要素の入った地図。これもたくさんありますから,そういう地図を作ってみるとか,それから距離の地図。これはグローバル化を説明するときに,すごくよく使われるものだと思うのですが,昔はこんなにあったのが,今はこういうふうに近づきましたよというような地図がございますが,そういういろいろな地図をうまく使うと,今の若者にも何となくビジュアルに地理教育ができ,かつ現代,自分が今いるところはどういうことなのかということにもちょっと関心を持ってもらえるのではないかと思いますので,何かそういう工夫を考えたらどうかと思いました。

【田中主査】  ありがとうございます。
まだ御発言いただいていない委員の方々もいらっしゃいますので,少し積極的に御意見を頂ければと思いますが,少し皆様の御意見を頂くということも考えながら,全体を見回していくと,ここで「公共(仮称)」について少し御議論も頂きながら,また,御発言のない先生方も,少し戻っても結構ですので,ここは何か一言言っておきたいということがあれば,手を上げていただければと存じますので,「公共(仮称)」の方に入りながら御意見のない方から中心に。
では,大村委員。

【大村委員】  ありがとうございます。「公共(仮称)」についてということで,3点述べさせていただきたいと思います。
まず一つは,歴史あるいは地理とも関わることなのですが,今日の御議論の最初からグローバルという言葉が出てきているわけなのです。「公共(仮称)」は,見たところ,グローバルという視点が余り前面に押し出されていないように思われるわけです。
国民国家の単位で考えて,その中でどのような責任を負うのかという視点は,それは非常に重要だと思いますけれども,しかし他方で,国際的な公共性というのも当然あるわけですから,そのことについてもう少し強調して,ほかの科目との連続性を図ることを考えた方がいいのではないかと思いました。
それから第2に,資料9-5の2ページ目に,花びらのような形をした新科目「公共(仮称)」のイメージ図がございます。これはイメージとしてはわかりますし,御苦労いただいて取りまとめていただいたものだと思うのですが,それぞれの花びらの部分がどのようにつながるのかということについて,やはり一定の見通しが必要なのではないかと思います。
私の専門は法学でして,民法という法律を研究しておりますけれども,この花びらの中に「法的主体となること」というのがあります。私の教えている法律は,ほかの花びら,たとえば,経済のインフラに関わるものであり,また家族関係ですとか,消費生活ですとか,情報ですとか,そういうことにも関わるのです。経済や家族,消費や情報,それらはそれぞれの領域の話であって,法学的なものというのはそれらを除いたものだとすると,いったい何が残るのだろうと思わざるをえません。
もちろん法的思考様式というものがあるのですけれども,法的思考様式だけを取り出して独立に教えるというのではなくて,この花びらのほかの部分と関連するような形で,高校生に勉強してもらいたいと思っております。
この花びらの部分を一方で概念的に関連付けることが必要かと思いますけれども,他方で複数の領域にまたがるような形で学習できるような教材を,選んでいくということが必要だろうと思います。以上が第2点でございます。
それから第3点でございますが,この資料9-5の1ページ目の②に,「公民教育に求められる今日的課題への対応」というものが挙がっております。これもいろいろな課題が指摘されていたところですので,それらがここに例として挙がっているということなのだろうと思います。ただ,その中を見ていますと,それは「課題」でもあるけれども,同時に「基本原理」でもあるというようなものがかなりの数含まれているように思います。
私の専門に即して申しますと,例えば契約というのが出てまいりますけれども,契約に関わる様々なトラブルに高校生も巻き込まれることがありますし,一般に世の中にはそうしたことはたくさんあるわけで,それらが「課題」だといえば確かに課題であるわけです。しかし同時に,契約というのは我々の社会を構成している一つの考え方,「原理」でもある。社会契約論が代表例もですが,社会の成立をどのように説明するかということ自体が契約と関わります。また,出来上がった社会を我々はどのように動かしていくのかということについて見ても,かつての身分社会とは違って,今日では契約によっている。我々は契約によって具体的な社会関係を作り出していく。そういう社会になっています。
こうしたことを踏まえた上で,契約に関わる問題というのを考えてほしいと思います。情報ですとか,雇用ですとか,金融ですとか,多分同様な問題がほかにもあるのではないかと思いますので,「課題」というものと,それの前提にある基本的な考え方,「原理」の結び付きにも留意していくことが必要であろうと思います。
取りあえず以上3点でございます。

【田中主査】  ありがとうございます。
時間も押しておりますから,余り「公共(仮称)」にこだわらなくても結構ですけれども,ここで御意見ということがあれば伺います。
では,まず川上委員。

【川上委員】  川上でございます。今,大村委員に引き続いて花びらのある図のところでポイントを絞って私の要望をお伝えしたいと思います。
今,18歳選挙権ということで,私も「常時啓発事業の在り方等」に関する研究会の中でずっと主張していたことなのですけれども,18歳選挙権で主権者教育をどう展開するかということで,例えば福島民報の調査がありまして,主権者教育を担当している個々の先生方へのアンケートなのですが,非常に不安・戸惑いを持っているという現実がありまして,その中でどういうふうにして解決していったらいいかという中で,その調査では,やはり第1には客観的な評価というか,自らが評価するということではなくて,新聞を利用すると。ここにも出ていますけれども,NIEを利用した教育を強化していくことで主権者教育ができるのではないかという,一番比率が高いのです。
2番目が模擬投票のわけですけれども,こういった「公共(仮称)」の課題についてはこういう関係機関と連携できるということを,少し事例も基にきちんと洗い出しをして,そして全国に教科化された場合に,こういう社会的課題に対してはこういうところと連携しましょうということを少し整理をしていただきたいと思っています。
それは,実はお互いに連携するわけで,弁護士と書いてありますけれども,弁護士会が法律だけを扱うわけではなくて,例えばこれは福岡ですが,弁護士会が中心となって主権者教育の法律ということだけではなくて,様々な選挙に関しても,そういう課題について主権者教育の先生方と意見交換をしているという事例がありますから,その関係する専門家・機関同士とどういうふうに連携をして,どういう課題について解決をしていくことができるのかということについて事例を集めて,交通整理をしていただきたいというふうに思っています。
私からは以上です。

【田中主査】  ありがとうございます。
では,続いて黒崎委員,お願いします。

【黒崎委員】  神奈川県立湘南台高校の黒崎と申します。まだまだ駆け出しの教員でして,現場では,多くの先生方に御指導いただきながら教育活動に取り組んでいます。今回も,少しでも現場の先生方の声を反映できたらいいなと思っております。
私は神奈川県で平成23年度より全県でシチズンシップ教育を行うということに基づいて,その研究指定校であります湘南台高校で,模擬投票や模擬議会といった教育活動に取り組んでまいりました。
そこでは,政治を制度としてだけ捉えるのではなくて,政治を多様な利害関係の調整と捉えて,争点といったものに重きを置いて学習するということに取り組んできました。ここでは教員が多様な論点を提示して,生徒が主体的に判断をしていくという教育活動になります。この度18歳選挙権といったものが実現しまして,まさしく学校現場が18歳を市民にしていく,公共的な役割というものが再定義されたのかなと考えております。
そこで,私も微力ながら関わらせていただきましたが,文部科学省と総務省が連携しまして,このような『私たちが拓く日本の未来』という政治参加に関わる副教材を作成してまいりました。これで主権者教育といったものが全国の高校生に保障される素地ができたのかなと,すごく前向きに捉えております。ここで行われた議論なども,是非次の学習指導要領に向けて入れていけたらいいなと考えております。
ここで,私から4点,お願いさせていただきたいのですが,まず現場のお願いとして,やはり「アクティブ・ラーニング」といったことに現場の先生方は非常に熱心に取り組まれて,更に悩みながら行っています。今回,その「アクティブ・ラーニング」とか,どのように学ぶかといったところがかなり,内容もそうですけれども,それ以上に必要になってきているのかなと思いますので,そういったところのイメージ図を描けたらいいなと考えております。
参考となるのが,この副教材の中にもありますけれども,国家・社会の形成者として求められる力を育むための学習方法として,正解が一つに定まらない問いに取り組む学びですとか,学習したことを活用して解決策を考える学びですとか,他者との対話や議論により考えを深めていく学びというふうな「アクティブ・ラーニング」型の学習方法が明示されております。これは主権者教育,すなわち政治分野に関わらず,経済でも倫理でも,そういった部分が活用できるのかなと考えております。
さらに,2点目ですけれども,やはり「アクティブ・ラーニング」型の授業をするとなったときに,どうしても現場の先生方が悩んでいるのが時間の問題なのです。現行でも,「現代社会」は2単位といった中で,どのようにその時間を確保していくか,湘南台高校では総合的な学習の時間と有機的に連携をしながら取り組んでおりますが,そういったこともやはり考えていかなければいけないだろうということ。
そして3点目として,これはやはり一番現場の先生方の悩みだと思いますけれども,中立性の問題といったところで,過度に中立性が意識されてしまう,その中立性を意識してしまうがために,逆にそういった主権者教育といった,いい意味での政治的教養を育む教育というのが敬遠されてしまう,そのようなことがないようにしていきたいというところです。
最後に,これは個人的な見解になってしまうかもしれませんが,キャリア教育の中核となる時間ということを書かれておりますので,やはり社会といったものを公共的な領域と私的な領域とに分けたときに,前者に対応するのが主権者教育とか,シチズンシップ教育であって,後者の部分がキャリア教育なのかなと,個人的には考えております。そういったものが有機的に結び付きまして,全国の高校生に共通して保障される,そのような科目にできたらいいなと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

【田中主査】  ありがとうございました。
先ほどから立っていらしてので,橋本委員,今村委員が立っていらっしゃるから,橋本委員,今村委員,一ノ瀬委員の順で,お願いいたします。少し短くお願いできればと思います。

【橋本委員】  ありがとうございます。
「公共(仮称)」が今回示されたこと,大変これを是非とも充実させて成功させなければいけないというふうに思っております。そのためには,先ほどから何人かの委員の方がおっしゃったように内容,何を学ぶかということもさることながら,やはり今回,学び方というか,「アクティブ・ラーニング」的なこともきちんと位置付けた新しい「公共(仮称)」という科目のイメージというのを打ち出して,それを皆さんで取り組むということが非常に重要だと思っています。
そういうふうな観点からすると,内容というのはやはり時間の関係もありますので,「公共(仮称)」だけでやるわけではなく,先ほどから出ているキャリア教育にしても,今は学校教育全体,総合的な学習の時間や特別活動や,様々な教科の中でも扱われているわけであります。ですから中核的な科目として,学習指導要領に内容が記されて,「公共(仮称)」でももちろん扱うけれども,このことが成功するというのは,やはり全体的な学校のカリキュラム・マネジメントが機能するかというふうな問題もあります。
ですから,その辺,道徳教育でもそうですし,教科科目でも,関連する内容というところをどのように整理をするかということを,少し充実して検討する必要があるのではないかと感じております。

【田中主査】  ありがとうございます。
それでは,今村委員,お願いします。

【今村委員】  キャリア教育の中核となる時間の設定ということで,今回,全体的な改革の中で,この公民科目というのはすごく重要だと私も捉えております。その中で,この先ほど一ノ瀬委員がおっしゃっていた原因は一つではなくて,それは一つの見方であるというのは私もそういうことを教えてもらえれば,もっと社会科を楽しめたのだなということを思いながら伺ったのですけれども,正にこの「公共(仮称)」科目の指導の方法は,そのスタンスの立つべき科目かなということを思っておりまして,今,私の周りにボランティアスタッフが5,000人ほど登録しているNPO団体を経営しているのですが,本当に多くの大学生たちが正解主義的なキャリア教育的な発想をすごく持っているのです。
自分はこの会社に行きたいということだとか,職業選択をかなり早期の段階でするとか,この仕事に自分が就くということが自分の夢であるということを,幼少期の段階から求められてきたことが訓練され過ぎているが余り,大学生が卒業するときに,その仕事に就けなかったときの就活自殺みたいなことも騒がれているわけなのですが,どうか,この,それは一つの観点であって,どんな幅広い社会の中で自分が生きているのかということを捉えられるような教科でありたいので,正解主義的な指導ではないものにしていきたいなということだけ付け加えさせていただきました。
以上です。

【田中主査】  ありがとうございました。
では,一ノ瀬委員。

【一ノ瀬委員】  私は哲学・倫理なので,この「公共(仮称)」,あるいは公民の倫理ということについて,ちょっと一言コメントをさせていただきたいと思います。
今までの倫理科目というのは基本的に先哲の考え方に学び,それをどう自分の生活に生かしていくかということだったのですけれども,どうも大学と高校では違うと思うのですが,私の教育に携わった経験,拙い経験からしますと,どうもなかなかそういう歴史的な,あるいは文献学的なものだと,受講者というものの関心がなかなか持続しないということで,やはり倫理の問題というのは生きた問題ですので,もう既に大部分実行されているとは思うのですが,いわゆる応用倫理と呼ばれる分野の,例えば生命倫理,環境倫理ですが,そうした分野の比重というのを更に重くしていただいて,先ほど「アクティブ・ラーニング」とか,ディベートとか出ましたけれども,それを充実させていくということが,今後やはり求められるのではないかというふうにずっと実感しております。そしてそれを切り口として,先哲が展開した原理的な考え方の指導へと導いていく,というのが効果的だと思うのです。
生命倫理,あるいは環境倫理ということですと,高校生に直接関わりますね。例えば生殖に関する倫理,あるいは安楽死とか,そういうことの倫理というのは高校生にそんなに遠いものではありません。更には技術者倫理とか,あるいは研究者倫理とか,直接高校生の現状には関わらないとしても多分近い未来に関わっていくような問題について,このキャリア教育ということも踏まえて,是非科目の内容の中に盛り込んでいただいて,そしてディベート,あるいは「アクティブ・ラーニング」という形で考えていただく。
例えば1例,先ほど挙げたように,応用倫理の核心をなす生命倫理では,安楽死というのを認めるかどうかというのは相当多様な意見があって,死刑を存置するかどうかなんていうのも同じだと思うのですが,その辺り,自分の頭で考えてもらうということが関心を呼ぶという意味でも非常に,私の経験からしても関心を持っていただけるので,もっと比重を上げていただければというふうに思います。そしてそれを踏まえて,倫理の伝統的な立場である義務論や功利主義の考え方の理解へと導いていただきたい。
ただ1点,そういうふうにやったときの問題として考えられるのは,科目として成立するためには評価を下さなければいけないので,つまり成績をつけなければいけないので,それをどんなふうにするのかということは,ちょっと今のところ私に明確なビジョンはありませんが,そういう問題を意識しつつ,是非比重を重くしていただきたいというふうに思っております。

【田中主査】  まだまだ御議論が続くかと思うのですけれども,お時間がまいりまして,司会の不手際もございまして,全ての委員の先生方の御意見を伺うことができませんでした。
本日は初回ですので,かなり自由に意見を言っていただきましたので,これを事務局におまとめいただきながら,また次回と結び付けたいと思います。
私の不手際もありまして,土井先生,権丈先生,高木先生,中家先生には御発言を頂く機会を差し上げず,大変失礼いたしました。次回には是非御意見いただければと思います。
引き続きまして,今後のことを少し伺っていきたいと思います。本日のお出しいただきました御意見は,事務局の方で論点ごとにその趣旨を整理していただくようにお願いしたいと思います。
なお,限られた時間の討議でございましたので,御意見をペーパーなどにして事務局にお送りいただければ,メールでも添付ファイルでも結構ですが,御意見を頂ければ,またそれも反映させていただけると思いますので,本日の御議論はここまでとさせていただきたいと思います。大変恐縮でございました。
では最後に,次回以降の日程などについて,事務局より御説明いただければと思います。お願いします。

【梶山主任視学官】  ありがとうございました。
次回につきましては,日程調整の上,追って御連絡させていただきたいと思います。主査からお話がありましたように,ペーパーによる御意見というのも,是非頂ければというふうに思っております。ファクス,メールなどで結構でございますので,頂ければと思っております。
また,本日の配付資料でございますが,机上に置いていただければ,後ほど郵送させていただきますので,郵送を御希望の方は置いておいていただければと思っております。
以上でございます。

【田中主査】  ありがとうございます。
それでは,本日の高等学校の地歴・公民科科目新設に関する特別チームを終了させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――


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電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2073)