第7回総則・評価特別部会における主な意見

1.理科ワーキンググループにおける検討状況について

(事務局から資料1に基づいて説明の後、大島理科ワーキンググループ主査より下記の通りコメント)
○ 理科という教科を学ぶ本質的な意義から、資質・能力の育成のために重視すべき理科の学習過程等について、活発な議論が展開されている。理科の学習を通じて児童生徒に身に付けさせるべき資質・能力について、例えば自然の仕組みや自然の中に隠れている原理、法則性などを科学の法則に従って自分で見つけていく教科だということを、観察や実験を通して気付かせるとともに、問題解決や探究する能力の育成に結び付く学習指導要領にしていくことが重要であるという議論がなされている。また、科学的な課題だけではなく、社会問題や日常生活の中での問題になるようなことも含めて、科学的に思考、判断できるという資質・能力を身に付けさせていくことも理科に託されているという意見が出ている。そして理科を通じて、自然の事実、現象について問題を見出し、解決する力を育てるとともに、科学的な見方や考え方を養うことを念頭に、現在検討を進めているところ。

○ 理科の各領域における特徴的な見方・考え方については、理科の4領域を学ぶことによって身に付けさせるべき資質・能力とは何かということについて議論がなされてきた。理科の各領域の物の見方の違いについて明確にすることが重要である一方、理科の教科として共通性、それぞれの領域の固有性、多様性を考え、それらをうまく融合していくことも必要ではないかという意見が出ている。これらのことを踏まえて、高等学校理科の履修科目はどうあるべきかについて議論をした。現行の科目構成については、基本的に維持していくことが望ましいのではないかということが意見として共有されている。

○ 育成すべき資質・能力の検討等については、小学校、中学校、高等学校のそれぞれの課程で身に付けるべき資質・能力が発達段階に応じて、徐々に高まっていくような形で示すことが重要であるということ。自分が得た能力を使う場面を作り、そしてそれを使っているということを子供たちに認識させることも大事であるということで、付けた力を別の単元や上の学年で活用したりすることも必要ではないかという指摘がある。また、資質・能力の系統を意識したものが学校現場に伝わるように工夫することも重要であるという指摘もある。高等学校までの資質・能力の系統性を整理し、有機的につなげていくことや身に付けた資質・能力を段階ごとに活用すべきであるということについての意見が出され、現在検討を進めているところ。

○ 三つの柱に沿った資質・能力の整理については、資質・能力と目標等をリンクさせながら検討することが重要である。学力の三要素のうち、高校の現場で教えられているのは、知識や技能中心となっており、学習指導要領のバランスはよいのだけれども、教科書と現場がそうなっていないので、教科書のバランスがよくなるように、学習要領を作っていかなければならないという意見が出されている。

○ 資質・能力の育成のために重視すべき学習過程や指導等の改善方策について。アクティブ・ラーニングという言葉に引きずられて、見た目の学習形態だけにとらわれないようにすることが重要。問題解決や探究能力を育成するという理科の本質に迫るような指導の手だても明確に示していくことが大切。子供たちが探究的に学習していく場合、どういうふうに探究すればよいのかわからないし、教員も伝え切れないということが現状としてある。子供たちに科学的な探究活動をさせながら、教員自身が論理的に考えるとはどういう活動なのかということを押さえていかなければいけないという意見などが出されている。

○ 今後は本ワーキンググループでは、総則・評価特別部会からお示しいただいたこと及び特別支援教育の観点から必要な支援も含め、算数・数学ワーキンググループと連携しながら、専門学科である理科教育における育成すべき資質・能力について議論していくとともに、他ワーキンググループの審議状況なども踏まえて議論を進めてまいりたい。

(以下のとおり、総則・評価特別部会委員等との意見交換)
○ 理科教育において、変えるべき変数と一定に保つべき変数が今回の報告にきちんと出てきているので大変素晴らしい。これが教科書等にもきちんと反映できるような形を取っていただきたい。

○ 諸外国も含め、高等学校まで粒子概念で物質の成り立ちを説明することになっているが、現在必ずしも、粒子概念だけで最終的な物理の説明はなされていない。果たしてこの粒子概念を、高校までずっとやってよいのかどうかについては検討の余地がある。
→ 四領域でものの見方を整理していこうというときに、それぞれこれだけでその領域全部をカバーできる概念でないというのは承知の上で、端的にこの四つの違いを表すとしたら、どういうキーワードが考えられるかというところでやらせていただいたもので、もちろんこの粒子分野のところについても、この粒子だけで全部説明できると思って書いているわけではない。この四分野の違いをクリアに示すためにどうしたらいいかということで考えさせていただいたものである。(事務局より回答)

○ 評価の観点について、科学的な探究の仕方を身に付けさせたいという観点からは、果たして思考・判断・表現という観点の名前で、現場の教員が、ここの部分で科学的な探究をする資質や能力を育てると意識ができるのか。今回はこれでよいと思うが、今後検討の余地があろう。

○ 資質・能力の表については、現場の先生がハンドリングできる量かというと、網羅的すぎる、細かすぎるという印象。例えば小学校、中学校、高等学校を通して態度のところだけを縦に並べたときに、同じ態度項目だけれども少しレベルが上がるということが分かるような書き方をする等、もう少しこれをコンパクトに概念化したものが見えてこないと、扱い切れないのではないか。
→ 態度については、小・中・高と上がるに従って、できるだけ発達段階が分かるように書き分けたい。例えば小学校だと、自然に親しむ態度、これが中学校に行くと、自然を敬い、自然の事物・事象に進んで関わる態度、そして高校になると、自然の事物・事象に対する畏敬の念という形で、少しずつレベルが異なるように書かせていただいた。本日頂いた御意見も踏まえ、ワーキングへ持ち帰って検討させていただければと思う。(事務局より回答)

○ 理科教育のイメージという資料(資料1の2ページ)について、小・中・高それぞれ、マル1、マル2、マル3というのがあり、これが、学びに向かう力、思考力・判断力・表現力、個別の知識や技能に当たるものだということであった。そうすると、他の教科等とは1、2、3が逆の順になっている。これはどのように理解したらよいのか。
→ 確かに他の教科等の順序が異なっているが、今の段階では理科ワーキンググループの中で、態度が一番重要なので、まずそれを強調すべきではないかという意見が強かったことを受け、こういう整理をしている。いずれ全体の横並びを取る上で、順番としては知識や技能から書くべきではないかという整理がなされたら、それに合わせていくという作業になろうかと思う。(事務局より回答)

2.国語ワーキンググループにおける検討状況について

(事務局から資料2に基づいて説明の後、髙木国語ワーキンググループ主査代理より下記の通りコメント)
○ 国語ワーキンググループにおいては、次の時代を生きる子供たちに身に付けてもらいたい国語の学力について議論を重ねてきている。これまでの国語教育では、何の作品を取り上げたかという、題材に依存した授業になってしまっていたという反省があり、これからはどのような資質・能力を身に付けるかという方向に転換しなければならないと考えている。特に国語科は、理解したり、表現したり、考えたりといった、他教科の学習や日常生活に必要な言語能力の育成の中心となる教科である。各教科等における言語活動を充実するためにも、その基礎となる力を国語で育成する必要がり、カリキュラム・マネジメントの観点からも重要な役割を担っていると考えている。

○ 育成すべき資質・能力については、言語能力の向上に関する特別チームでの議論も踏まえ、言語能力に「創造的、論理的思考の側面」、「感性・情緒の側面」、「他者とのコミュニケーションの側面」という三つの側面を位置付けて、資質・能力の三つの柱やプロセスを議論してきた。三つの柱の整理においては、これまで知識や技能においては、言葉の特徴やきまりに関する知識や書写の技能などが位置付けられてきたが、それらに加えて、話したり、聞いたり、書いたり、読んだりする技能などもあるのではないかという議論を行ってきている。また、思考力・判断力・表現力等では、これからの子供たちに必要な力として、情報を多角的、多面的に精査し、構造化する力や考えを形成、深化する力などがこれまで以上に必要とされるとともに、自分の感情をコントロールすることにつながる感情や想像を言葉にする力や他者との協働につながる言葉を通じて伝え会う力など、三つの側面がバランスよく育成されることが必要ではないかといった議論がされてきている。

○ 学びのプロセスにおいては、現行の学習指導要領に示されている学習課程をさらに整理し、学習活動の要素として図示し、それぞれの学習活動の中で、三つの柱で整理した資質・能力が、どのように働いているのかを明確化しようとしているところ。ただ活動するだけの学習ではなく、活動を通じて、どのような資質・能力を育成するのかということを明らかにして示すことが重要だと考えている。

○ これらの議論を踏まえ、高等学校においては科目構成の大幅な見直しを検討している。共通必履修科目については、現代の実社会・実生活に必要な国語の能力という観点と、現代の言葉も昔から継承されてきたものであるという言語の文化的な視点から、それぞれ現代の国語、言語文化の2科目を検討しております。選択科目におきましては、思考力・判断力・表現力等の主に創造的、論理的思考の側面に対応する論理国語、主に感性・情緒の側面に対する文学国語、主に他者とのコミュニケーションに対応する国語表現と、ジャンルとしての古典を特出した古典探究の4科目を検討している。

○ 国語と外国語との連携についても、言語能力の向上に関する特別チームの議論を受け、国語科として、どのようなことが考えられるのかを議論している。言葉の働きや仕組みについて、現行の学習指導要領においても指導事項として位置付けられてはいるが、実際の学習指導の場面では、日頃無意識に使っている日本語について、子供たちが言葉の働きや仕組みに気付くことは大変難しい。このことは、教員にとっても、どのように教えればいいのか悩んでいるところ。言語能力の向上という観点からも、まずは国語科において、言葉の働きや仕組みについて理解を図り、それを外国語の学習に生かすとともに、外国語との比較を通じて国語の学習に生かすことができるのではないかといった議論をしているところ。

○ 今後、指導の充実・改善に向けて、アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善や学習評価について議論を深めてまいりたいと考えている。

(以下のとおり、総則・評価特別部会委員等との意見交換)
○ 国語科について、実際の授業は国語の解釈がほとんどである。実際に書くこと、話すことを、特に高等学校にやってもらうためには相当の工夫が要るのではないか。

○ 国語について。資料2の11ページに「認知から思考へ」という文言がある。「認知」という言葉は狭い意味から広い意味まで使われる言葉だが、今は広い意味で使われることが多く、思考や表現も含んだ人間の知的活動全体を指すことがある。認知科学や、認知心理学はそのような意味で「認知」という言葉を冠している。この「認知から思考へ」の右にある「思考」については、自分なりの整合性のとれた考えを形成するという意味においては、まさに認知そのものになる。認知というのを狭い意味でとると、知識や認識といった、この図の左側にあるようなもの指すようになる。ここで「認知から思考へ」といってしまうと、むしろ「認知」という言葉を狭い意味に限定したようにとられてしまうので、どちらかというと「知識から思考へ」とか「認識から思考へ」とかいうふうに限定された言葉を使っていただく方がよいかと思う。

3.外国語ワーキンググループにおける検討状況について

(事務局から資料3に基づいて説明の後、酒井外国語ワーキンググループ委員より下記の通りコメント)
○ 外国語ワーキングにおいては、これまで平成26年9月に取りまとめられた英語教育の在り方に関する有識者会議の報告、中教審教育課程企画特別部会論点整理を踏まえて、資料の外国語ワーキンググループにおける検討事項に従って、今後の方向性について議論を行っている。各学校段階での指導改善による成果が認められているものの、児童生徒の学習意欲に関する課題、学校種間の接続が十分とは言えず、進学後にそれまでの学習内容を発展的に生かすことができていない状況が見られること、中学校、高等学校において、特に話すこと及び書くことなどの言語活動が十分に行われていないことや、伝える相手、目的・状況に応じて表現することなどの課題が指摘されている。これまでの成果と課題、それから言語能力向上の観点を踏まえ、小・中・高等学校を通じて育成すべき3つの資質・能力を整理しつつ、各学校段階の学びを接続させること、外国語を使って何ができるようになるかという観点から一貫した教育目標の設定について、四技能に関わる具体的な指標の形式の目標を含めて、検討を行ってきている。


○ 外国語教育における育成すべき資質・能力については、言語能力向上の観点から、小・中・高等学校を通じて外国語で他者とコミュニケーションを図る基盤を形成するため、四技能のバランスの取れた育成を踏まえつつ、また、言語や文化に対する理解を深め、他者を尊重し、聞き手、読み手、話し手、書き手に配慮しながら、外国語でコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、併せて身近な話題や幅広い話題について理解したり、情報や考えなどを伝え合ったりすることができるコミュニケーション能力を養うため、目標、指導内容、学習指導方法、学習課程、学習評価等の在り方について、一体的に検討を進めている。

○ 外国語教育における学習プロセスと見方や考え方について。資料3の32ページ、外国語教育における見方や考え方を働かせた資質・能力と学習プロセスのイメージを示して検討を行っている。これまで検討を行ってきた小・中・高一貫した目標に基づき、発達段階に応じた学習プロセスを経ることによって、思考力や判断力の深まり、外国語による表現力の向上、主体的・自律的に学習する態度の育成などを通じ、的確に理解し適切に伝え合うコミュニケーション能力を育成する方向性をイメージしたもの。33ページでは、外国語教育における資質・能力に沿って、目的に応じたコミュニケーションのプロセスとして、目的の設定・理解、目的に応じた発信までの方向性の決定・言語活動等の見通し、目的達成のための言語活動、まとめと振り返りというプロセスを整理している。

○ 43ページでは、学習評価の三つの観点を踏まえて、外国語教育における評価の観点の方向性、次の44ページではICTの活用の方向性について検討を行っている。また、小学校段階では、中学年の外国語活動、高学年の教科の在り方について、これまでの外国語活動に関する調査結果とともに、文部科学省で新たな補助教材を開発し、先行して5・6年生の教科等が実施されている研究校などの取組を踏まえた方向性について、資料34ページ、35ページのとおり、具体的な年間指導計画のイメージを提示して検討を行った。高校については、26年度から2年間実施された英語力調査の結果も踏まえ、36ページのとおり、科目全体の見直しに関する方向性を示して検討を行った。

○ 後の予定としては、ワーキングとしてのまとめに向け、総則・評価特別部会における議論を踏まえ、次期学習指導要領改訂に向けて必要となる養成・研修、教材開発などの条件整備等も含め、全体にわたって議論をしていく予定。

(以下のとおり、総則・評価特別部会委員等との意見交換)
○ 外国語ワーキンググループ資料3の43ページ、「主体的に学習に取り組む態度」については、評価はかなり難しいなということを改めて思った。「図ろうとしている」という、この「ろうとしている」ものが最終的に体現化されたものが思考・判断・表現の「表現している」と考えると、見える行動は外に表れた行動しかない。そうした場合に見えないものをどう評価していくものか。ポートフォリオなどをうまく活用していくということが一つのヒントになっていくのだろうかということを思った。CEFRなどを参照した評価基準というのは非常に明確だし、それらは知識・技能、思考・判断・表現に応用できるにしても、この三本目の柱をどう評価していくのかというのが大きな課題だということを改めて認識した次第。

○ 現在の学習指導要領における高学年の実際の授業現場、私が見た少ない例では、指導法と子供たちの発達の段階が合っていないようなケースが散見された。例えば、母語で英語を話している国では3歳、4歳の子供たちが楽しむような身体的なゲームを、思春期に差しかかった5年生や6年生がやっている。日本語は、子音も母音も乏しい言語だが、英語のそれらが日本語に換言されることが問題とされていないなど少し不安になることがあった。アジア各国での実践の状況などを踏まえながら、どういった方向で改善していくのかということをお聞かせいただきたい。
→ 小学校の外国語活動については、ワーキンググループの中では、発達段階の課題も多々あり、5・6年生に適した系統的な学習も必要になってくるということで、5・6年生の書くこと、読むことを含めた教科化ということを議論した。(酒井委員より回答)

○ 英語のリスニングの題材については、日常の簡単な会話よりも、時事的な題材を扱った方が、日本語のニュース等と合わさって、大変おもしろく聞けるのではないか。今のやり方では、高校生段階ではあまりおもしろくないのではないかと思う。
→ 高校のリスクニングについては、小・中・高等学校を通じた一貫した教育目標の設定についての議論の中で、目標をより達成し、成果を上げていくためには、今まで抽象的だった目標をより明確にする必要があるということで、実際のコミュニケーションで必要となる4技能を具体的に指標形式で目標設定する、すなわち、指標形式の目標設定からCAN-DOの形の目標設定について議論し、小・中・高一貫して段階的に発展するようにと考えている。高校生にふさわしい内容が指標形式の目標に従って具体化されることを期待している。(酒井委員より回答)

○ 外国語の評価の観点について、表現の能力と理解の能力というふうになっていて、国語と大きくずれている。同じ言語でこのように違っていいのかどうか、検討の余地がある。
→ 外国語では話すことと書くことは発信技能として、指導の内容、活動との関連性がとても強いということで一つにまとめて考える考え方がある。受信についても同様。これについて、話すことと聞くことをまとめて、小学校では組み合わせ方としてあるということも議論したが、小・中・高、四技能を扱う、さらには読んだことに基づいて話す、あるいは読んだことに基づいて書くといった技能の統合性についても考えたとき、四技能をそれぞれ位置付けることと、さらに4技能の統合を考えていくということを外国語ワーキングでは考えている。(酒井委員より回答)

4.家庭・技術家庭ワーキンググループにおける検討状況について

(事務局から資料4に基づいて説明の後、橋本家庭・技術家庭ワーキンググループ主査より下記の通りコメント)
○ これまでの6回にわたる検討で、家庭科、技術・家庭科の教科としての意味の再確認につながる充実した議論が展開された。育成すべき資質・能力、教科固有の見方や考え方、学習プロセスといった点について、多くの御意見をいただいている。

(家庭科及び家庭分野の検討状況)
○ 育成すべき資質・能力について、小・中・高を通じて生活に必要な知識及び技術、生活を創造する能力、生活を創造しようとする実践的な態度といった育成すべき資質・能力の観点から、家族、家庭生活、それから衣・食・住、消費・環境といった内容で、小・中・高の系統性を考慮して体系的な整理を試みている。また、小学校から高等学校にかけて、空間軸として、家庭、地域、社会へ、それから時間軸として、現在までの生活、これからの生活、生涯を見通した生活へと、それぞれ広がりを持たせながら検討しているところ。

○ 教科の特性に根ざした見方・考え方については、小・中・高を貫く考え方として、自立し、共に生きる生活の創造ということを置いている。また、四つの視点(協力・協働、健康・快適・安全、生活文化の継承・創造、持続可能な社会の構築)から解決すべき問題を捉えて、よりよい生活の実現に向けて考察することと整理した。四つの視点と内容領域である家族・家庭生活や衣・食・住の生活、消費・環境といった内容とが必ずしも一対一の対応ではなく、題材構成によっては様々な視点の組み合わせが考えられるが、ここでは主として、家族・家庭生活では協力・協働の視点、衣・食・住では健康・快適・安全と生活文化の継承・創造の視点、消費・環境では持続可能な社会の構築の視点に重点を置いて整理した。一方で、指導する題材によって視点が様々変わることから、示し方にも配慮が必要ではないかというような御意見もいただいているところであり、引き続き検討をしていきたい。

(技術分野の検討状況)
○ 技術・家庭科(技術分野)においては、技術に関わる知識と技能、技術を評価し、改良、応用したりする能力、技術を工夫し創造していこうとする態度といった育成すべき資質・能力の観点から、生活範囲から社会全体を対象として内容の整理を試みた。その際、技術分野は、中学校しかないことも踏まえて、小学校の生活科や図画工作科、高等学校の情報科や職業に関する各教科・科目との接続も念頭に置き、検討を行った。なお、家庭分野も小学校高学年から始まることから、他教科等との連携を十分図る必要がある。

○ 見方や考え方については、生活や社会で利用されている技術、内容としては、材料と加工、生物育成、エネルギー変換、情報という技術であるが、これらを対象としてそれぞれの特性に着目し、問題を解決するに当たり、倫理観、安全性、社会からの要求、環境負荷、費用等からの見方や考え方を踏まえつつ扱う技術を評価し、最適なものとなるように選択、管理・運用したり、改良、応用したりするために思考・判断していくものとして整理をした。

○ 学習プロセスについては、両分野とも課題解決に向け、まず問題を発見するという段階が難しいが重要であるという御指摘をいただいている。また、解決策を設計・計画・立案していく第2フェーズが、思考し判断する力を育成する上で大変重要であるという御指摘もいただいている。

○ 家庭科及び家庭分野では、実生活で活用する力を重視するということで、教科内で家庭・地域での実践を検討しているが、既に高等学校ではホームプロジェクトや学校、家庭、クラブ活動の実践、中学校では生活の課題と実践の成果が見られているところでもあり、小学校においても同様の実践を検討している。また、技術分野においては3年生で統合的な問題を取り扱うことを検討している。

○ 中学校の技術・家庭科については、社会的な課題の解決に向けて技術の工夫を重視する技術分野と、自立した生活を営む力を身に付けさせることを重視する家庭分野で、教科として目指すところをめぐって集中的に意見交換が行われ、学習課題を捉える際の生徒の認識の広がりを考慮し、技術分野において取り扱う技術の範囲を生活や社会におけるというふうな表現の方向で整理がなされたところ。

○ 今後の検討課題については、これらの議論を踏まえて家庭科、技術・家庭科の改善の方向性を検討し、ワーキングとしてのまとめに向けて、総則・評価特別部会からお示しいただいたことを踏まえて、学習評価の在り方について検討を進めてまいりたい。また、実践的な学習活動には他教科等との連携が必要であり、地域社会、関係機関の協力が大変必要となるが、そのような教育充実のための必要な支援、助言、整備等についても今後議論を進めてまいりたい。

○ 高等学校家庭科については、全ての高校生が自立した生活者となるための基礎的な学習機会として社会からの期待が大変高まってきていることを踏まえ、丁寧な問題解決学習を実施するため、授業時間と内容のバランスとを十分検討しなければならないと考えている。

(以下のとおり、総則・評価特別部会委員との意見交換)
○ 「知識及び技能」という表現と「知識及び技術」という表現が混在している。ワーキングで議論され、何か背景があって、こうした使い分けをしているのか、お聞きしたい。体育においても技術と技能に関しての議論があり、その中の一つとして、客観的なものは技術と呼んで、それが人の能力として身に付いたときに技能と呼ぶというような捉え方もある。いずれにしても、今回整理をされていくのかどうか、それぞれの教科特有の考えでいいのかということを考える必要があろうかと思う。
→ その点についてはまだ検討が進んでいない。これまでは、小学校は知識と技能、中学校、高等学校が知識と技術としてきたが、これは専門教科との関連もあり、これまでずっとそのようになっている。前々回改訂時の指導要領から家庭分野と技術分野の分野別の目標を定めて分けており、その段階では知識と技術ということで整理をしていたが、今回、技能と技術、習得ということはどういうことなのか、どこを目標としてねらうのか、また、評価の観点としてはこれまでも育成すべき資質・能力としての技能で定めていたが、それとの関係をどう捉えるのか、もう少し様々な検討をして整理をしなければならないと考えている。(橋本主査より回答)

○ 技術・家庭の家庭分野については、各中学校における裁量が非常に大きくて、それぞれ学校ごとに工夫されたカリキュラムで授業展開されているかと思うが、授業時間のバランスが非常に重要だということを最後にコメントなさったことから、現状での授業時間のバランスについてどのように把握されていて、今後、どのような方向性を持っていらっしゃるのかということについてお尋ね申し上げたい。今後は、調理実習や被服実習のような実習だけではなくて、違った意味での座学を中心とした議論、討論、あるいは調べ物を中心としたアクティブ・ラーニング、そういったものを軸とした学びもこれからより厚みをもって必要になってくるかというふうに理解している。ただ、ややもすると、実習に多くの時間が割かれているのではないかということを感じることもあったので、現状の把握と今後の授業時間バランスについてのお考えについてお聞かせいただきたい。

○ 今後の学習指導要領の中で学びの系統性ということを考えたときに、技術・家庭分野、特に技術も含めて、産業教育の8教科とどのようにつながっていくのかということが具体的に分かるような、そういった教科書ないしは授業の展開が必要になってくるかと思う。例えば技術分野だと、材料、加工、エネルギー変換、生物、それから情報と、大きく四つあるだが、この四つの学びが産業教育の中で豊かに展開し、それがアクチュアルに私たちの生活を支えているという現実が、進路指導やキャリア教育の一環としても必要なわけだが、教科の学びの中でこの学びが高校の産業教育にこうつながっていくんだというような発想を持った授業が期待されるのではないか。
→ 物づくりなどの実習以外に、調査、観察や交流活動等、大変多様な学習活動を通して課題に気付き、問題を捉え、そして、その問題を解決していくというところを重要視していこうということになると、時間的にも余裕が必要ということになる。また、外に出かけるということになると、本当にたくさんの時間も必要になるということなので、例えば子供との触れ合いといっても、お子さんに学校に来ていただくというのはなかなか難しいことで、近くの保育園とかそういうところに出かけるということになると、どこまでできるかということは、育成すべき資質・能力がきちんと育つようにということを考えながらの内容量ということになろうかと思うので、これも検討してまいりたい。また、学びの系統性については、今後また技術分野の検討の中でも深めてまいりたい。(橋本主査より回答)

○ 中学校の技術・家庭は、小学校、高等学校とのつながりや、技術領域と家庭領域のそれぞれの任務、子供が市民として、あるいは職業人として生きていくときどんな意味が教育課程全体の中であるかと考えたときに、随分違う領域のように思えるが、それが今、教科目としては同じ中の分野ということになっている。中長期的に展望したときに、教育課程の全体構造の中で、家庭分野と技術分野がほかの領域との関係でどういう位置付けになるのか、一つの教科の2分野でいいのかというようなことを思っている。つまり、今回、全体の議論の中では、教育課程全体の構造、まさにそれが子供にとってどんな意味があるかという中で、各教科等がどんな役割を果たし、どんな意義があるかということを相互関係の中で議論していると思うのだが、そういった中で、技術・家庭科のこの在り方はどのように考えたらよいのか。技術領域は、一つは産業領域とつながるのだろうが、知識基盤社会における技術ということを考えたときに、職業高校ではない、普通科の方に行く子たちにとっても中学校の技術科というのはすごく意味があるんだろうと思う。その位置付けをどう考えるのか。中学校の技術・家庭科は、二つの分野がどんな関係構造で一つの教科として存立し得るのかということが、中長期的には議論する必要があろうかと思う。
→ 例えば見る範囲については、今回、生活や社会というふうに捉えたが、基本的には物づくりを大事にし、手の巧緻性、あるいは社会へつながる生活の土台の感性とか、そういうものを非常に大事にしてきた教科である。それらは大事にしながらも社会の変化にどう対応して、全体の教科枠の中でどういうふうに技術・家庭という教科が位置付くのかということについて、もう一度見直すということが今後必要かもしれないと思いながら、全体枠はこれでという中で進めているのが現状。(橋本主査より回答)

5.情報ワーキンググループにおける検討状況について

(事務局から資料5に基づいて説明の後、堀田情報ワーキンググループ主査より下記の通りコメント)
○ 情報ワーキングでは、6回の審議のうち前半3回を、小・中・高全体を通して各教科等で学んでいただく情報に関わる資質・能力ついて検討をしてきた。第4回から6回にかけて、とりわけ高等学校の教科情報の改善について検討を進めてきた。

○ 資料5の2ページ、左側が全ての生徒に培う能力。これは、三つの柱で整理しており、一番上の知識・技能については、情報はそもそもどういうものかについてよく知る、情報手段について知る、アナログとデジタルについて知る、また、情報手段の仕組み、情報社会への影響、法律の問題、そういうようなことの基礎的な知識・技能を知った上で、思考力・判断力・表現力のところでは様々な情報を収集する、複数の情報を基に判断する、比較・検討する、計画を立てて実行する、協働で行う、相手の状況を踏まえて伝えるということをやる。それを通して、情報に対する評価や価値や責任といったような、主体的な関わり方の態度の育成となっている。これらを、小・中・高については各教科等で、とりわけ中学校の技術分野では取り出して、高等学校では教科として必修と選択があるという形になっている。

○ 小・中あるいは中学校の技術分野で子供たちが体験的に学んできたことを、教科として今一度しっかりと見直して整理し直して体系化するものが教科「情報」。ものの見方・考え方としては、世の中にある色々なものを、情報とそしてそれらの結び付きによって動いていると捉える捉え方と、それをもとに情報及び情報技術の特性を踏まえて何度も試行錯誤しながらよりよい形に最適化していく見通しを持った試行錯誤を行うということ。見通しを持った試行錯誤は簡単な段階では簡単なICTを用いながらやっていけばいいわけだが、レベルが上がってくると、例えばプログラムを組んでシミュレーションしていく、あるいは情報デザインを基に何かウエブページを作って誰かに評価してもらって試行錯誤するということを高等学校では学んでいくようにしたい。

○ アクティブ・ラーニングとの関係では、様々な情報を、情報技術を用いて取り込んで、それを基に試行錯誤しながら解決していくということは、学び直しが起こり、深い学びにつながりやすい。それを協働で行うことをしばしば情報科では行うので、他の人の考えがそこに入ってきて、対話的な学びになりやすい。主体的な学びについては、試行錯誤を通すという点で、プロセスがメタ認知になりやすいという部分がある。

○ 高等学校の情報科においては、必履修科目と選択科目で情報Ⅰ、情報Ⅱと分けている。情報Ⅰについては、まず世の中全般の情報社会の問題解決ということで、全体の総論を語った上で、要素技術の基本的な部分を必履修として学んでもらう。情報Ⅱについては、それをより今日的な、より未来的な形で進めていくという形となる。

○ 情報活用能力は、それが一旦学び取られると、子供たちの思考に影響するので、その後の各教科等の学びの深まりに非常に貢献することができるだろうと考えている。学び方の一つとしての情報活用という考え方で進んでいく部分と、それを経験的に高等学校になって体系化し直すという教科の性質というふうに議論を分けることができる。

6.特別活動に関するワーキンググループにおける検討状況について

(事務局から資料6に基づいて説明の後、貝ノ瀬特別活動ワーキンググループ主査より下記の通りコメント)
○ 特別活動において育成すべき資質・能力は何かということを議論する前提として、これまでの特別活動の目標や大切にしてきたことなどを基に、人間関係形成、社会参画、自己実現、この三つの視点があるのではないかと整理をした。資料6の2ページは、特別活動において育成すべき資質・能力を整理した表である。今後、他のワーキンググループの検討状況を踏まえ、特に思考力・判断力・表現力の書きぶりが、学びに向かう力、人間性等に寄ってしまっているところがあるので、今一度整理をしていきたい。

○ 特別活動における各活動の整理について。特別活動においては、小学校で四つの活動、中・高等学校では三つの活動を示している。これらの活動の関係性はどのようになっているのか、また、これらは発達の段階に応じてどう広がりが深まっていくのかということについて検討を行った。学級活動が特別活動の基盤になるという整理の下に、学級活動で育成された資質・能力を様々な切り口で構成される集団活動の中で活用することによって、より自分のものとして獲得することができると整理をした。学級活動は同年齢の身近な集団、児童会(生徒会)活動は異年齢により構成する役割を共有する集団、クラブ活動は同好の集団、学校行事は学年や学校という大規模な集団ということで整理している。こうした構造の下に、学級活動で育成した資質・能力を様々な切り口から構成される集団における活動を通して、さらに深めてより確かなものにすることができると考えている。また、学級活動で育んだ資質・能力を確かなものにするだけではなくて、それぞれの活動ごとにも育成される固有の資質・能力があると考えている。あわせて、それぞれの集団の意義や役割、機能、そして、その中で個人が果たすべき役割も学んでいくことになる。

○ キャリア教育の視点を踏まえた特別活動の推進についても検討を行った。11ページでは、キャリア教育において育成すべき資質・能力について、三本柱で整理している。キャリア教育は全教科を通じて行うべきものであるが、特別活動との関わりは大きいということがお分かりいただけると思う。本ワーキンググループでは、特別活動がキャリア教育の中核としての役割があるのではないかと御議論をいただいた。また、特別活動において、これまでの学びを振り返り、評価するためのツールとしてポートフォリオの導入についても御意見をいただいた。

○ 今後、総則・評価特別部会で示されたものの見方や考え方に関する議論などについても検討を進めてまいりたい。また、特別活動において育成すべき資質・能力は、他の教科等にも関わる内容が多くあるので、他のワーキンググループの検討状況も踏まえて、さらに検討を進めていきたい。

(以下のとおり、総則・評価特別部会委員等との意見交換)
○ キャリア教育が今回は特別活動の資料の中に綴じ込まれて、特に中核的な時間としての重要性があるという貝ノ瀬主査からの御説明があった。全教科を通して行うべきものであるのだが、本来的には特活が中核的な役割も果たしている。各教科の中に散りばめられているキャリア教育の要素と、それら教科間の関連性や中核にある時間としての特別活動との往還関係を示す全体の構造を視覚的に各学校に示していかないと、それぞれのよさが生きないのではないか。例えば、算数・数学ワーキンググループの資料4ページなどを見ると、数学を学ぶにしても、その活用、意味付けの中で現実の世界との接点が見えてくる。一方では、算数・数学の世界の中における特有の事象というものが統合・発展・体系化していかなくてはいけない。そういったそれぞれの教科・科目の見方・考え方に応じて、こういった往還関係、重複関係というものに関しながら、全体を整理するようなことが今後求められてくる。
→ 日本の教育における、清掃活動、給食指導や学級会などの活動が子供たちの成長に非常に大きな影響を与えていると思うので是非自国の教育にも取り入れたいと海外の反応を示す報道があった。日本の教育を、教科というよりも、特別活動の分野に属することを向こうの学校にもっと取り入れたい、日本的な学校を幾つか実験的に作って、それを核にしながらいいところは広めていきたいと聞くにつれ、特別活動の問題を発見して、みんなで協働して解決を図っていくという実践のプロセスは全ての教科に通用することではないかと思う。各教科と密接に関係ある、なおかつ世界的に評価の高いこの特別活動について、もっとアピールしていった方がいい。日本の先生方も、自分たちのやっていることに自信が持てない雰囲気があるので、今まで先生方が取り組んできた取組というのは決して間違っていないと、誇れるものもたくさんあり、それらをアピールしていくという意味においても、学習指導要領というか教育課程にしっかり位置付けていくことがあっていいのではないか。例えば、総則を構造化して、特別活動をきちんと位置付け、加えて、先ほど竹原委員がおっしゃったような地域との連携、地域学校協働本部やコミュニティスクールなどを位置付けても良いのではないか。(貝ノ瀬主査より回答)

7.産業教育に関するワーキンググループにおける検討状況について

(事務局から資料7に基づいて説明の後、浦野産業教育ワーキンググループ主査より下記の通りコメント)
○ 産業教育は農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉の8教科がある。各職業分野に従事することを希望する生徒を対象として、その職業分野に必要な基礎的・基本的な資質や能力を育むことを主たる目標としてきた。これまでの議論では、8教科それぞれにおいて求められるもの、そして共通に求められるものという視点から議論を行い、産業界から求められる資質や能力、それぞれ個別の職業分野でどういった資質・能力が必要なのかということについて、企業や大学、高校等からのヒアリングも交えながら議論を行ってきた。

○ 資料7の2ページ、上段は各分野に共通して求められる、育成すべき資質・能力を示している。これらの中には、従来から学習指導要領等において職業に関する教科の目標として明示してきた要素もあり、例えば、職業人としての倫理観については、昨今、産業界では社会問題化した例もあるので、「職業人としての」という文言を追加して、より強めた表現になっている。また、「合理的かつ創造的に解決」といった、合理的という言葉については、各産業においては、経済性、有限な社会資源、環境への影響等、色々な制約条件を考慮しなければいけないことを含意している。今回改めて明確にしたいということで強調した視点もある。一つは、よりよい社会の構築を目指して自ら学ぶというチャレンジ精神。それから社会貢献。これは自分たちが学んできた技術・技能を地域・社会の中で総合的に応用して活用していこうといった視点。さらに、協働的に取り組むという、チームで働く、そしてチームで知恵を出し合うことによってコミュニケーションを図りながら業務の進展を図っていくことが重要であるという認識の下、日頃の学習においてもチーム学習を重視する必要があると考えている。

○ 産業教育においては、従来から産業界等と連携した実験・実習などの実践的・体験的な学習活動を重視してきたが、こうした活動を通して、各職業分野の本質に根ざした見方や考え方を働かせながら、各職業分野で求められる資質や能力を獲得していくような深い学びの実現に向けて引き続き検討してまいりたい。

(以下のとおり、総則・評価特別部会委員との意見交換)
○ 「知識及び技能」という表現と「知識及び技術」という表現が混在している。ワーキングで議論され、何か背景があって、こうした使い分けをしているのか、お聞きしたい。体育・保健体育WGでも技術と技能に関しての議論があり、その中の一つとして、客観的なものは技術と呼んで、それが人の能力として身に付いたときに技能と呼ぶというような捉え方もある。いずれにしても、今回整理をされていくのかどうか、それぞれの教科特有の考えでいいのかということを考える必要があろうかと思う。
→ 小・中学校までは技能という言葉を使っているが、専門教科では知識・技術という形で。どちらがレベルが上という意味ではなくて、科学的・体系的に整理されたものを技術という形で整理している。(浦野主査より回答)

8.算数・数学ワーキンググループにおける検討状況について

(事務局から資料5に基づいて説明の後、小谷算数・数学ワーキンググループ主査より下記の通りコメント)
○ 身に付けるべき知識・技能等は小・中・高と次第に高まっていく。これらを一体的な考え方により統一し認識し教育するということがとても大切で、学校段階を分けるのではなく、全体を通した視点で改訂に向けた議論を行っている。育成すべき資質・能力の整理については、資料8の2ページ目、3ページ目に示している。これまでの学習指導要領では、発達に応じて知識・技能を確実に身に付け、数学的な思考力や表現力を育てることに重点が置かれていた。しかしながら今回の議論では、育成すべき資質・能力の三本柱の視点で検討を行った。各学校段階でどのような人を育成するのか、身に付けた知識・技能を活用してどのような力や態度を養うのかを明確にすべく、活発な議論を展開してきた結果、小・中・高を通じての算数・数学教育のイメージや三つの柱に沿った資質・能力についてワーキンググループとして一定の共通認識が得られた。例えば、既習の内容を基にして数量や図形の性質を見出すなど、統合的・発展的に考える力や、問題解決において粘り強く考え抜き、その過程を振り返り、考察を深めたり評価・改善する態度を育成したりすることが重要であるということなど。そのことにより、数学的な見方や考え方のよさ、数学の実用性を理解し、様々な事象の考察や問題解決に積極的に数学を活用するような人間を育てることを目指している。

○ アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた学習のプロセスについては4ページ目、5ページ目で整理をしている。算数・数学においては二つの異なるプロセスがあり、これらが一体的に相互作用することは大変重要。一つ目のプロセスは現実の世界、日常の生活や社会の現象をいかに数学的な問題として表現をし、解決していくかという数学科のプロセス。もう一つのプロセスは算数・数学の世界で出てきた課題を数学の概念として総合的・発展的に考えて数学化し、数学的に解決していくということ。例えば日常生活や社会の現象というのは、物質の運動を記述し、その速さを比べたり、金利や保険について調べたりするなどをイメージしている。また、数学の事象というのは、例えば様々な図形の面積の出し方や連立方程式の解き方を考察するなど数学的な構造・概念を理解することを目的としている。この二つのプロセスを経て出てきた結果を実生活に生かしていくことや、学びのプロセスにおけるあらゆる場面で振り返り改善を図っていくことの重要性、学びのプロセスを振り返ることで新たな概念の獲得や数学的な見方の考えを広げていくことの重要性が議論された。素朴な数学の問題が、教科を横断するような問題解決のプロセスにつながる汎用的な見方・考え方を育成し、ものごとを統合的・体系的に捉えることができる人間を形成していくことを目的としている。

○ 統計的な内容については、教育課程企画特別部会の論点整理の中で議題として明言されている。統計は日常生活や社会の活動の様々な場面で利用されるものであるにもかかわらず、統計活用能力の獲得という面では現在の指導要領では十分ではないという認識の下、限られた授業時間の中で小・中・高を通してどのように充実を図り、統計活用能力を育成していくのかを議論しているところ。今後、統計的な内容の充実のほか、評価の在り方、情報科などの他教科との関連について議論を進めていくことを目指している。

(以下のとおり、総則・評価特別部会委員等との意見交換)
○ 数学に関して、資料8の4ページの真ん中に「焦点化」という単語がある。この部分は、何に対して焦点を当てるのかということが分かるような書き方をしてもらうと、もう少しイメージが持てるかと思う。日常生活、社会の事象に数学を当てはめるというイメージについては、これまで見てきた授業では、そういったことをしながらも一つの答えがあるような類のものが多かった。数学の知識を、商店街に人がどれぐらい来るかということのシミュレーションに当てはめるときに、どうモデル化するかとか、どういうふうにシミュレーションするかによって答えは色々あって、そこに正解はない。そういったイメージが見えてくるような表現にすると、数学の多様性というものが楽しめるように思う。評価という点で考えると、ペーパーテストで測定できないようなことを要求するのだろうと思う。大学入試での一発評価というよりも、大量の評価資料を担任がきちんと評価をするということがもっと全面に出てきて、そのことの正当性が高まり市民権を得るということがどこかで描かれる必要がある。
→ 資料8の4ページ目に算数・数学の世界と現実の世界というのがあり、数学的に表現した問題、焦点化された問題という流れになっている。算数・数学は、論理的に物を考えるという観点から答えが一つに定まるというふうに世間でよく言われているが、そうではない。現実社会の問題や数学の事象それぞれに対して、それをいかに数学化するかというところで様々な解釈があり、それを数学的に表現する段階で様々な個性や独自性が出てくるし、ここは算数・数学にとって一番大切なところであるということを分かっていただくためにこの資料を用意した。それを焦点化された問題にするというところで数学的に表現し、また、それを具体的に算数・数学の技術に落とし込むということで、ここからロジックの話になる。現実の世界と算数・数学の世界を相互作用的にとらえることが大切であるということがまずこの資料で表されている。さらに、自分たちが算数・数学化したものをいかにして算数・数学の言葉を使って相手に分かってもらうかという説得力のところに重点を置いている。必ずしも一つの答えではなく、他の人と違う答えを持ってきたときに、ロジックを用いてちゃんと説明できるというところが算数・数学のよさ。(小谷主査より回答)

○ 資料の最後、発展的な問題発見という一連の流れの中で、素朴の問題解決プロセスから次第に発展していって、一番上のところに教科横断の問題解決プロセスというものがあるが、どういう経緯、議論の中からこういう整理の仕方が出てきたのかということをお聞きしたい。教科横断という今回の大きなテーマに対する、算数・数学ワーキンググループからの一つの応答と考えているが、他のワーキンググループでは、他の教科との関連ということについてはどういう議論がなされたのか、これからそれについては展開していこうとしているのかお聞きしたい。この点について、どういう視点で、どういうふうな議論の詰め方をしていくと一つの方向性・在り方というのが出てくるのか考える必要がある。
→ 資料8の6ページは、数学のよさ、数学の見方や考え方のよさ、そして実用化について積極的に算数・数学を活用していく人間を育てたいということを示している。ただ、現場を見ると教えなくてはいけない技能・技術・知識が多くて、なかなかそこまで取り組めないという時間的な制限もあるかと思うので、数理探求においてもいてもそういうことに取り組んでいただければと思っている。(小谷主査より回答)

9.高等学校の数学・理科にわたる探究的科目の在り方に関する特別チームにおける検討状況について

(事務局から資料9に基づいて説明の後、岡本特別チーム主査より下記の通りコメント)
○ SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の成果や取組の状況、課題などを踏まえた上で、新しい科目の構造について検討を進めている。数理探求という科目は新しい科目なので、科目固有の原理を明らかにすることが必要。基本原理についてまずは検討している。具体的には、教科・科目の枠にとらわれない自由な視点で事象を捉えるということ、また、数学的なものの見方・考え方や科学的なものの見方・考え方を柔軟な発想で活用したり組み合わせたりするということ。さらに、探求的な学習を行い、それを通じて、新たな価値の創造に向けて粘り強く挑戦する力の基礎を培うという案を基に審議を進めている。この基本原理に関しては、自由な視点で事象を捉えるということが重要であり、これをどのように評価するのかということを考えなければならないという意見や、自由な視点や柔軟な発想などについて学校現場が十分理解できるように具体的に説明していくことが必要ではないかという意見があった。

○ 新しい科目を通して培われる資質・能力については、資料9の6ページに示している。新しい科目で身に付けようとする知識・技能としては、探求を実践するために必要となる知識・技能としており、特に、生命倫理を含む研究倫理をしっかり身に付けておくことは、大学等で研究等に携わるためにも非常に意義があるという意見が強くあった。思考力・判断力・表現力としては、課題を設定する力、議論等を積極的に行い多面的に思考する力、課題解決を実現するための力を挙げている。情意、態度としては、課題や事象に徹底的に向き合い、考え抜いて行動する態度や、新たな価値の創造に向けて積極的に挑戦しようとする態度を挙げている。

○ 科目の構造については、探求を実施するための基礎を学ぶ段階と、実際にみずから課題を見出して探求を実施する段階に分けて実施することが効果的ではないかと考えている。実際にSSHで行われている取組でもこのようなやり方をとっている学校がしばしばある。新しい科目の実施に当たっては、生徒たちが失敗を恐れず取り組むこと、また、探求した成果の質よりも探求の過程で試行錯誤したり失敗したりすること自体に意味があるという意見が出ている。また、実施の環境を整備することも重要であるという意見もある。探求的な活動を指導することができる教員の養成、効果的に指導できる教員の体制の確保、生徒が実施する探求に必要な経費の確保等がなされなければ、効果的な探求的な活動を実施することは難しいと考えられるので、SSH等の事例を踏まえながら必要とされる諸条件について検討を進めていきたいと考えている。

(以下のとおり、総則・評価特別部会委員等との意見交換)
○ 数理探究の評価については、ポートフォリオのように、生徒の研究結果をまとめておくような評価の仕方が必要だと思っている。そして、大学の選抜等でもそれらが生かされるということでないと、そもそもこの選択科目が選択されないというおそれがある。
→ 評価の在り方については、なかなか難しい問題で、失敗をするといいといっても、失敗を評価することは難しいし、何か新しい形の評価というのを考えていかなければいけないと思っている。(岡本主査より回答)

○ 数理探求について、資料9の7ページに基礎の習得段階と探求を深める段階があって、この基礎の習得が必要であるという話を出していただいていることはすごく大事。ただ、この基礎の習得段階は、ほかの教科、例えば数学や理科とどう関わっているのか。数学や理科でこの基礎の習得段階ということをやるべきなのか、数理探求という科目の中でこの基礎の習得段階もやることなのかをもう少し明確にしてくださるといい。個人的には、これは両方あるのだろうと思う。各教科の中でやるべき基礎的な知識・技能の習得と、探求活動に直結した基礎、例えば実験計画を立てるとか、その結果をデータ解析するとかいう意味での基礎は数理探求という科目の中での基礎としてやるということ。そして、それをもとに探求を深める段階に進んでいく。それから、探求を深める段階でも知識・技能というのが出てくる。課題をやるための内容に関する知識とか、その課題を解決するための技能、つまりより課題に直結したスペシフィックな知識・技能は、課題が決まってから、むしろ必要に応じてやっていくということ。課題を追求しながら必要に応じてこういう知識・技能を身に付けてもらいたいということ。こういうふうに理解しているが、それでよいかということをお聞きしたい。
→ ご指摘の通り。基礎には二つの意味があり、数学や理科できちんと勉強するものを持ってないと何もできないという基礎と、探求活動というときの基礎。例えば研究するときのモラルというものや、数学においては一つモデルを作ってその中でやっていくということの基本的な理解、こういったものは探求活動をやるときの基本になるだろうと思う。(岡本主査より回答)

○ 修得の修について、学修の修も高等教育では「修」になっていて、どこがどう違うのかという疑問がある。「習」と「修」両方あり得ると思うが、あえて「修」を使われたことに意味があるのか気になった。

10.その他、全体に関わる議論について

○ 「社会に開かれた教育課程」という理念の下で、教育課程を介して社会・世界とつながるということがあるが、各教科の記述の中に、ではどうやったらそういう関連性を持たせられるかといったようなことを、具体的に例示をしたり活用例を入れたりしていかないと、現場はどうしたらいいか分からないということがあるのではないかと思う。

○ 外国語におけるICTの活用についてという最終ページのたたき台のように、こういう形で各教科における地域との関連や社会とのつながりを図るのだということが分かるようなものが1ページでもあれば、イメージが膨らみやすい。学校運営協議会や地域学校協働本部の仕組みを活用することにも言及があれば、それらと新しい教育課程の方向性が関連するのだということが分かるかと思う。

○ 評価に関して、多面的な評価という言葉と多角的な評価という言葉が混ざっている。これらは使い分けしているのか。もししていないのであれば、全部多面的でそろえてしまう方が分かりやすいのではないか。

○ 現行では、幼・6・3・3制、が一つの枠組みになっているかと思うが、今は義務教育学校ということで9・3という仕組みもあり、あるいは、中等教育学校等を考えれば6・6ということもあるので、必ずしも現行の小学校、中学校、高等学校というところが区切りにならないケースがあり得る。こういったケースをどういうふうに考えればいいのか。その点についても少しご留意いただければ幸いである。

○ 問題発見、解決のプロセスがこれだけ入ってくると、表現は思考・判断・表現という言葉でよいかもしれないが、実際の観点としては思考・判断・表現というのでは分かりにくい評価が出てくると思う。特に、社会における社会的な探求や、理科における科学的な探求活動といったような観点で表現した方がいいのではないかと今思っている。

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