地域とともにある学校の在り方に関する作業部会(第9回)資料1ー1

新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について
審議のまとめ(案)

はじめに

第1章 時代の変化に伴う学校と地域の在り方について
 第1節 教育改革、地方創生等の動向から見る学校と地域の連携・協働の必要性
 1.社会の動向と子供たちの教育環境を取り巻く状況等
 2.学校と地域の連携・協働の必要性

 第2節 これからの学校と地域の連携・協働の在り方
 1.これからの学校と地域の連携・協働の姿  
 2.学校と地域の連携・協働を推進するための組織的・継続的な仕組みの構築
 3.学校と地域の連携・協働を推進するための体制整備

第2章 これからのコミュニティ・スクールの在り方と総合的な推進方策について
 第1節 コミュニティ・スクールの意義・理念等
 1.コミュニティ・スクールの意義・理念
 2.コミュニティ・スクールの現状等

 第2節 これからのコミュニティ・スクールの仕組みの在り方について
 1.コミュニティ・スクールの仕組みの基本的方向性
 2.コミュニティ・スクールの仕組みの必置の検討について

 第3節 コミュニティ・スクールの総合的な推進方策について
 1.コミュニティ・スクールの拡大・充実のための推進方策
 2.都道府県・市町村の役割と推進方策

第3章 地域の教育力の充実とそのための地域における学校との協働体制の在り方について
 第1節 地域における学校との連携・協働の意義について
 1.地域の教育力に関する課題
 2.地域の教育力の充実のために学校と連携・協働することの意義

 第2節 地域における学校との連携・協働の現状等について
 1.これまでの地域における学校との連携・協働の現状
 2.地域における学校との連携・協働の課題

 第3節 地域における学校との協働体制の今後の方向性について
 1.地域における学校との協働体制の目指す姿
 2.地域における学校との協働体制の整備の方向性

 第4節 地域における学校との協働のための取組の推進について
 1.地域における学校との協働のための体制の整備
 2.地域における学校との協働による活動の充実

 第5節 国、都道府県、市町村による推進方策について

第4章 コミュニティ・スクールと地域における学校との協働体制の効果的な連携・協働の在り方について

はじめに

○平成27年4月14日に文部科学大臣より中央教育審議会に対し、「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方について」の諮問が行われた。諮問においては、社会情勢の変化や教育改革の動向等を踏まえた、今後のコミュニティ・スクールの在り方や、今後全ての学校がコミュニティ・スクール化に取り組み、地域と相互に連携・協働した活動を展開するための総合的な方策、学校と地域をつなぐコーディネーターの配置のための方策、地域の人的ネットワークが地域課題解決や地域振興の主体となる仕組みづくり等について審議が要請された。
○これらのうち、コミュニティ・スクールに関わる事項に関して専門的な審議を深めるため、初等中等教育分科会の下に「地域とともにある学校の在り方に関する作業部会」が設置され、地域における学校との協働体制の在り方に関わる事項に関して専門的な審議を深めるため、生涯学習分科会の下に「学校地域協働部会」が設置された。
○両部会は、平成27年4月に設置されて以来、文部科学省が実施した実態調査の結果の分析や関係者からのヒアリングを踏まえつつ、必要に応じて合同審議を行うなど緊密な連携を図りながら、学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策に関し、集中的な審議を行ってきた。
○この審議のまとめ(案)は、諮問事項のうち各部会の所掌に属する事柄について、これまでに出された意見や各種データその他審議の参考となった資料等をもとに、初等中等教育分科会及び生涯学習分科会への報告案としてまとめるものである。
 ※第1章及び第4章は両部会で審議、第2章は地域とともにある学校の在り方に関する作業部会、第3章は学校地域協働部会で審議した内容を整理(パブリック・コメントは、第1章から第4章まで統括した上で実施)

第1章 時代の変化に伴う学校と地域の在り方について

第1節 教育改革、地方創生等の動向から見る学校と地域の連携・協働の必要性
1.社会の動向と子供たちの教育環境を取り巻く状況等
(1)社会の動向
 ○我が国は、現在、急激な少子化・高齢化の中にあり、2030年には、65歳以上の割合は総人口の3分の1に達し、そうなると生産年齢人口は総人口の約58%にまで減少すると見込まれている。日本全体として、人口減少を克服し、地方創生を成し遂げるため、人口、経済、地域社会の課題に一体的に取り組むことが求められている。
 ○また、グローバル化や情報化が進展する社会の中で、多様な主体が速いスピードで相互に影響し合い、一つの出来事が広範囲かつ複雑に伝播し、先を見通すことが一層困難になっている。
 ○さらに、都市化、過疎化の進行や家族形態の変容、価値観やライフスタイルの多様化等を背景とした地域社会等のつながりや支え合いの希薄化によって、「地域の学校」「地域で育てる子供」という考え方が次第に失われてきたことが指摘されている。教育は、言うまでもなく、単に学校だけで行われるものではない。家庭や地域社会が、教育の場として十分な機能を発揮することなしに、子供の健やかな成長はあり得ない。家庭教育が困難なケースの増加や地域社会の教育力の低下に伴い、子供の教育に関する当事者意識も失われていくことで、学校だけに様々な課題や責任が課される事態になっていないだろうか。家庭や地域社会での教育の充実を図るとともに、社会の幅広い教育機能を活性化していくことは、喫緊の課題となっていると言わなければならない。また、特に地域を巡る状況は、上述の現代的事情を背景に、国や社会よりも個人生活の充実など個人個人の利益を大切にする傾向にあり、そのため、互助・共助の意識も希薄なことから、貴重な学びや成長の機会・場が失われ、地域社会の停滞につながる一因となっている。これまで活躍してきた社会教育団体も、活動への参加者が十分集まらず、その役割を十分に果たせていないケースが見られる。
 ○その一方で、各種の取組を通じて、保護者や地域住民の側に、自ら子供たちに積極的に関わり支援することによって、自分たちの手で学校をより良くし、子供たちを育てていこうとする意識や志が生まれつつある。また、いくつかの地域では、子供も大人も自らが主体となって地域を活性化する取組に挑戦し、学校を核に、地域全体を「学びの場」と捉え、まち全体の元気を取り戻しつつある。こうした意識の高まりを的確に受け止め、あるいは、一層醸成していくこと等を通じ、かつての地縁を再生するという視点にとどまることなく、新たに地域コミュニティを創り出すという視点に立って、学校と地域の人々、保護者等が力を合わせて子供たちの学びや育ちを支援する地域基盤を再構築していくこと、さらには、こうした取組を広げ、常に社会全体で互いの幸せについて考え、そのために何ができるかを問い、学び続ける社会の形成を進めていくことが課題となっている。
 ○家庭を巡る状況としては、核家族やひとり親家庭、共働き世帯の増加など、家族形態の変容やつながりの希薄化等を背景に、生活保護世帯の増加に見られる貧困問題の深刻化、子育ての不安や問題を抱え孤立する保護者の増加、児童虐待相談対応件数の増加など、家庭教育が困難な現状が指摘されており、決してこれらは一部の特別な家庭の問題ではない。
 ○このほか、昨今、子供が被害者や加害者となる様々な事件が発生しており、地域で家庭や子供を見守り支えることの必要性が指摘されている。こうした観点からも、学校と地域の連携・協働を一層進めることの重要性が増している。

(2)子供たちの教育環境を取り巻く状況
 ○現在、児童生徒数の減少や多様化・複雑化する社会状況の変化等を背景に、小中学校の統廃合や、高等学校の再編・統合が進んでいる。今後少子化の更なる進行により、学校の小規模化に伴う教育上のデメリットの顕在化や、学校がなくなることによる地域コミュニティの衰退が懸念されており、各市町村の実情に応じた活力ある学校づくりの推進が求められている。
 ○また、地域社会や家庭を巡る問題が深刻化している中、多様な価値観を持った人々との交流や体験の減少などを背景として、子供たちの規範意識や社会性、自尊意識等に対する課題、生活習慣の乱れによる学習意欲や体力・気力の低下の課題等が指摘されている。その一方で、社会貢献への高い意欲や、柔軟で豊かな感性と国際性を備えている一面も見受けられるなど、子供たちは、未来をつくっていく主役として大きな可能性に満ちており、その可能性を最大限引き出し、開花させていくことが求められている。
 ○学校を取り巻く環境に目を転じると、いじめや暴力行為等の問題行動の発生、不登校児童生徒数、特別支援学級・特別支援学校に在籍する児童生徒数等の増加等、多様な児童生徒への対応が必要な状況となっているなど、その環境は複雑化・困難化を極めており、教員だけで対応することが、質的な面でも量的な面でも難しくなってきている。また、子供が自ら課題を発見し、解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習の充実など、授業革新を図っていくことが求められている。
 ○このような中、中学校等の教員を対象としたOECD国際教員指導環境調査(TALIS)において、我が国の教員は、課外活動の指導や事務作業に多くの時間を費やし、調査参加国中で勤務時間が最も長いという結果が出るなど、教員の勤務負担の軽減が課題となっている。教員が新たな教育課題に的確に対応し、教員としての本来の職務を着実に遂行していくためには、教員が子供と向き合える時間を確保するとともに、教員一人一人が持っている力を高め、発揮できる環境を整えていくことが急務となっている。

(3)教育改革、地方創生等の動向
(学習指導要領の改訂について)
 ○学習指導要領の改訂については、その基本的な方向性について教育課程企画特別部会で審議が進められ、本年8月に「論点整理」がとりまとめられたところである。ここでは、社会の加速度的な変化の中でも、社会的・職業的に自立した人間として、伝統や文化に立脚し、高い志や意欲を持って、蓄積された知識を礎としながら、膨大な情報から何が重要かを主体的に判断し、自ら問いを立ててその解決を目指し、他者と協働しながら新たな価値を生み出していくことが求められるとしている。
 ○同部会の論点整理では、これからの教育課程には、社会の変化に開かれ、教育が普遍的に目指す根幹を堅持しつつ、社会の変化を柔軟に受け止めていく「社会に開かれた教育課程」としての役割が期待されている。
このような「社会に開かれた教育課程」としては、次の点が重要になる。
  [1]社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。
  [2]これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自らの人生を切り拓(ひら)いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと。
  [3]教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。
 ○また、各学校には、学習指導要領等を受け止めつつ、子供たちの姿や地域の実情等を踏まえて、各学校が設定する教育目標を実現するために、学習指導要領等に基づきどのような教育課程を編成し、どのようにそれを実施・評価し改善していくのかという「カリキュラム・マネジメント」の確立が求められている。「社会に開かれた教育課程」という観点からは、教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせるなどして、学校内だけではなく、保護者や地域の人々等を巻き込んだ「カリキュラム・マネジメント」を確立していくことが重要であるとされている。
 ○さらに、アクティブ・ラーニングの視点に立った学びを推進するためにも、実社会や実生活に関連した課題などを通じて動機付けを行い、子供たちの学びへの興味と努力し続ける意志を喚起することが重要であるとされている。
(高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革)
 ○高等学校教育及び大学教育において、義務教育までの成果を確実につなぎ、それぞれの学校段階において「生きる力」「確かな学力」を確実に育み、初等中等教育から高等教育まで一貫した形で、一人ひとりに育まれた力を更に発展・向上させる観点から、「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」(平成26年12月22日中央教育審議会答申)を踏まえ、平成27年1月「高大接続改革実行プラン」が公表された。現在、同プランに基づき、高大接続改革の実現に向けた具体的な方策が検討されている。
 ○高校生を地域の活動に積極的に参画させ、地域課題の解決に取り組む学習は、「確かな学力」を構成する思考力・判断力・表現力等の育成に寄与するとともに、学びへの興味と努力し続ける意志を喚起することにつながると期待される。
 (高等学校の特性を踏まえた在り方については第2章第2節2(3)参照)
(チームとしての学校の在り方の検討)
 ○従来よりも複雑化・多様化している学校の課題に対応し、学校組織全体の総合力を一層高めていく必要性から、「チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会」において、これからの学校教育を担う教職員やチームとしての学校の在り方について審議が進められている。同作業部会が平成27年7月に取りまとめた中間まとめでは、学校は、複雑化・困難化した課題に対応し、子供たちに求められる力を身に付けさせるため、教職員が心理や福祉などの専門家や関係機関、地域と連携し、チームとして課題解決に取り組むことが必要とされている。また、学校と地域の連携を推進するため、学校内において地域との連携の推進を担当する教職員を地域連携担当教職員(仮称)として法令上明確化することを検討するとされている。
(これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上に関する検討)
 ○現在、教員養成部会において、これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について審議が進められている。同部会が平成27年7月に取りまとめた中間まとめでは、学校は、「チーム学校」の考え方のもと、学校現場以外での様々な専門性を持つ地域の人々と効果的に連携しつつ、教員とこれらの者がチームを組んで組織的に諸課題に対応するとともに、保護者や地域の力を学校運営に生かしていくことが必要であること、また、新たな教育的課題に対応していくためには、保護者や地域の力を学校運営に生かしていく視点も必要であり、学校が地域づくりの中核を担うという意識を持ち、学校教育と社会教育の連携の視点から、学校と地域の連携・協働を円滑に行うための資質を養成していくことも重要であるとされている。
(小中一貫教育の制度化)
 ○平成27年6月、「学校教育法等の一部を改正する法律(平成27年法律第46号)」が公布され、28年4月から施行される。本改正は、学校教育制度の多様化及び弾力化を推進するため、小中一貫教育を実施する義務教育学校の制度を創設するものである。組織上独立した小学校及び中学校が義務教育学校に準じた形で一貫した教育を施す小中一貫型小学校・中学校(仮称)についても、今後、省令改正により制度化される。
 ○これらの制度改正の基本的な考え方は、平成26年12月、中央教育審議会答申「子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について」にまとめられているが、同答申では、小中一貫教育の総合的な推進方策として、地域ぐるみで子供たちの9年間の学びを支える仕組みとして、小中一貫教育とコミュニティ・スクールを組み合わせて実施することが有効であり、中学校区内の小中学校における一体的な学校運営協議会の設置を促進する必要がある旨、提言されている。
(教育委員会制度の改革)
 ○平成27年4月、教育委員会制度改革を柱とする「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第76号)」が施行された。新たな制度では、全ての地方公共団体に、首長と教育委員会を構成員とする総合教育会議を設けることとなり、同会議においては、教育を行うための諸条件の整備その他の地域の実情に応じた教育等の振興を図るための重点施策等について協議を行うこととなる。
 ○今後、総合教育会議の活用をはじめ、首長と教育委員会がともに手を取りながら、子供たちの豊かな学びと成長を一層支援していくことが重要視されており、両者のパートナーシップの構築は、学校と地域の連携・協働を推進していく力となる。
(まち・ひと・しごと創生総合戦略等の決定)
 ○人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を生かした自律的で持続的な社会を創生できるよう、平成26年11月、地方創生の理念等を定めた「まち・ひと・しごと創生法」が公布・施行され、同年12月には、同法に基づき、今後目指すべき将来の方向を提示した「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」と、これを実現するための目標や施策等を提示した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定された。同戦略の中には、学校を核とした地域活性化及び地域に誇りを持つ教育を推進するとともに、公立小中学校の適正規模化、小規模校の活性化、休校した学校の再開支援を行う旨が盛り込まれた。
 ○これに基づき、平成27年1月に策定された「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」においては、地域コミュニティの核としての学校の役割を重視しつつ活力ある学校づくりを実現する観点から、市町村が、[1]学校統合を検討する場合の魅力ある学校づくりの一環として、統合検討プロセスから対象校に学校運営協議会を設置し、地域の意見を最大限反映させることや、[2]小規模校を存続させる場合の小規模デメリットの緩和策として、コミュニティ・スクールの導入を契機として学校教育活動への地域人材の効果的な参画を促すなどの工夫が盛り込まれている。
 ○また、平成27年6月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」では、学校を核とした地域力強化の観点から、全公立小・中学校において、学校と地域が連携・協働する体制を構築するために、コミュニティ・スクールや学校支援地域本部等の取組を一層促進する旨が示されている。地方創生の実現という観点からも、これからの子供たちには、地域への愛着や誇り、地域課題を解決していく力が求められるとともに、生涯にわたる学習能力の育成の視点から学校教育を捉えていく必要がある。

2.学校と地域の連携・協働の必要性
 ○教育は、地域社会を動かしていくエンジンの役割を担っており、教育により、子供たちの一人一人の潜在能力を最大限に引き出し、全ての子供たちが幸福に、より良く生きられるようにすることが求められている。
 ○学校は、全ての子供が自立して社会で生き、個人として豊かな人生を送ることができるよう、その基礎となる力を培う場であり、子供たちの豊かな学びと成長を保障する場としての役割のみならず、地域コミュニティの拠点として、地域の将来の担い手となる人材を育成する役割を果たしていかなければならない。一方、地域は実生活・実社会について体験的・探究的に学習できる場として、子供たちの学びを豊かにしていく役割を果たす必要がある。
 ○今なぜ、学校と地域の連携・協働が必要なのか。それは、これからの子供たちには、厳しい挑戦の時代を乗り越え、高い志や意欲を持つ自立した人間として、他者と協働しながら未来を創り出し、課題を解決する力が求められているからである。子供たちの生きる力は、学校だけで育めるものではなく、多様な人々と関わり、様々な経験を重ねていく中で育まれるものであり、地域社会とのつながりや信頼できる大人との多くの関わりを通して、子供たちは豊かでたくましく成長し、心も育っていく。
 ○次に、学校が抱える課題が複雑化・困難化している状況の中、困難な課題を解決していくためには、より一層地域に開かれ、地域と積極的に向き合うことで、地域に信頼される学校づくりを進めていく必要がある。保護者や地域住民が学校運営に積極的に参画することで、学校をより良いものにしていこうという当事者意識を高め、子供の教育に対する責任を社会的に分担していくことができる。
 ○さらに、課題を抱えた保護者や子供の孤立化に対応する観点から、保健福祉部局等との連携を図りながら、全ての子供たちを守り、支える地域社会の在り方が問われている。個人や個々の機関だけでは対応が困難な課題についても、学校と地域の連携・協働により保護者や子供に必要な支援を行うことで、家庭や子供の変化をもたらすことにつながる。
 ○地域の未来を担う子供たちの成長は、その地域に住む人々の希望である。地域社会を構成する一人一人が当事者としての役割と責任を自覚し、主体的・自主的に子供たちの学びに関わり、支えていく中で、地域住民の学びを起点に地域の教育力を再生・向上し、ふるさとに根付く子供たちを育てるとともに、地域振興・再生につなげるためにも、社会的な教育基盤を構築していく必要がある。
 ○こうした観点から、学校と地域は相互補完的に連携・協働していく必要がある。すなわち、学校と地域は、お互いの役割を認識しつつ、対等な協働関係を築くことが重要であり、パートナーとして相互に連携・協働していくことを通じて、社会総掛かりでの教育の実現を図っていくことが必要である。

第2節 これからの学校と地域の連携・協働の在り方
1.これからの学校と地域の連携・協働の姿  
(1)地域とともにある学校への転換
 ○社会総掛かりでの教育の実現を図る上で、学校は、地域社会の中でその役割を果たし、地域とともに発展していくことが重要であり、とりわけ、これからの公立学校は、開かれた学校から更に一歩踏み出し、地域の人々と目標やビジョンを共有し、地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」へと転換していくことを目指して、取組を推進していくことが必要である。すなわち、学校運営に地域の人々や保護者が参画することを通じて、学校・家庭・地域の関係者が目標や課題を共有し、学校の教育方針の決定や教育活動の実践に、地域のニーズを的確かつ機動的に反映させるとともに、地域ならではの創意や工夫を生かした特色ある学校づくりを進めていくことが求められる。
 ○これまでの提言 では、地域とともにある学校の運営に備えるべき機能として「熟議」「協働」「マネジメント」の三つが挙げられており、これらはこれからの学校運営に欠かせない機能として、再認識していく必要がある。
 ◆地域とともにある学校の運営に備えるべき機能
 [1]関係者がみな当事者意識を持ち、子供たちがどのような課題を抱えているのかという実態を共有するとともに、地域でどのような子供を育てていくのか、何を実現していくのかという目標・ビジョンを共有するために「熟議(熟慮と議論)」を重ねること。
 [2]学校と地域の信頼関係の基礎を構築した上で、学校運営に地域の人々が「参画」し、共有した目標に向かってともに「協働」して活動していくこと。
 [3]その中核となる学校は、校長のリーダーシップのもと教職員全体がチームとして力を発揮できるよう、組織としての「マネジメント」力を強化すること。

(2)子供も大人も育ち合う教育体制の構築
 ○教育の担い手となることが社会的な文化となっていくためにも、地域の一部の人々だけが参画し協力するのではなく、地域全体で子供たちの学びを展開していく環境を整えていくことが必要であり、子供との関わりの中で、大人もともに学び合い育ち合う教育支援体制の構築が必要である。
 ○地域には、学校、教育機関、首長部局等の行政機関、社会教育施設、PTA、NPO・民間団体、企業・経済団体など、様々な機関や団体等がある。また、個人として学校支援ボランティアに関わっている地域の人々もいる。子供や学校の抱える様々な課題に対応していくためにも、子供たちの生命や安全を守っていくためにも、子供を中心に据え、様々な関係機関や団体等がネットワーク化を図り、子供を支える一体的な教育体制を構築していくことが重要である。学校と地域が連携・協働するだけでなく、子供を中心に据えながら、地域社会にある様々な機関や団体等がつながることで、大人同士の絆が深まり、学びも深まっていく。
 ○家庭教育の支援の観点からも、家庭教育の支援を視野に入れた地域と学校の連携が進むことで、課題を抱えた保護者に対する支援の充実につながるとともに、孤立感を抱えた保護者を含む多くの保護者に対し、学校との協働による活動に参画していく機会をつくることにつながる。

(3)学校を核とした地域づくりの推進
 ○地方創生の観点からも、地域とともにある学校づくりを進めるに当たっては、学校を核とした協働の取組を通じて、地域への愛着や誇りを育み、地域の将来を担う人材の育成を図るとともに、地域の人々のつながりを深め、コミュニティの形成・活性化を図る「学校を核とした地域づくり」を推進していく視点も持つことが重要である。成熟した地域が創られていくことは、子供の豊かな成長にもつながり、人づくりと地域づくりの好循環を生み出すことにもつながっていく。
 ○すなわち、一方的に、地域が学校・子供たちを応援・支援するという関係ではなく、学校と地域が膝を突き合わせて、互いに意見を出し合い、学び合う中で、地域も成熟化していくとともに、子供たちも総合的な学習の時間や、放課後・土曜日等の教育活動等を通じて地域に出向き、地域で学ぶ、あるいは、地域課題の解決に向けて学校・子供たちが積極的に貢献するなど、学校と地域の双方向の関係づくりが期待される。

2.学校と地域の連携・協働を推進するための組織的・継続的な仕組みの構築
 ○本節1.で示した「これからの学校と地域の連携・協働の姿」を具現化していくためには、学校と地域の双方で連携・協働を推進するための組織的・継続的な仕組みを構築していく必要がある。まず、学校においては、地域とともにある学校に転換していくための持続可能な仕組みを導入していく必要がある。また、地域においても、地域社会にある様々な機関や団体等がネットワーク化を図り、子供を支える一体的な教育体制とするとともに、学校を核とした地域づくりを推進していくための仕組みを構築していく必要がある。
 ○現在、学校と地域の連携・協働を推進する仕組みとして、コミュニティ・スクール (学校運営協議会制度)や「学校支援地域本部」による様々な教育活動、「放課後子供教室」の体験活動等を行う既存の体制 がある。
 ○コミュニティ・スクールは、地域の住民や保護者が学校運営に参画する仕組みとして、育てたい子供像、目指すべき教育のビジョンを保護者や地域と共有するための有効な仕組みであり、学校と地域の協働の基盤となるものである。
 ○また、上記の地域の側の体制は、学校や地域の教育力を双方協働して高めるなどの目的で置かれ、地域の教育資源を組織化・ネットワーク化するとともに、様々な教育活動等を組織的に支援する有効な仕組みであり、地域の課題に向き合い解決していく住民を育てることにもつながるものである。
 ○学校と地域がパートナーとして連携・協働するには、両者がビジョンを共有し、協働して子供が見える学びを展開していくことが重要であり、上記の既存の体制による取組を一層推進していくとともに、地域における様々な体制等をつなぐコーディネーターを配置する等の仕組みの構築や、既存の仕組みの更なる工夫が不可欠である。
 ○このような視点に立ち、「これからの学校と地域の連携・協働の姿」を踏まえながら、地域とともにある学校の在り方に関する作業部会では、これからのコミュニティ・スクールの在り方を、学校地域連携協働部会では、地域における様々な体制等の在り方を中心に審議した。(コミュニティ・スクールの在り方については第2章、地域における様々な体制等の在り方については第3章で言及)

3.学校と地域の連携・協働を推進するための体制整備 
 ○学校と地域の連携・協働を一層推進していくためには、教育委員会内において、コミュニティ・スクールや学校運営改善施策を担当する学校教育担当部局と、学校支援地域本部や放課後子ども教室などの施策を担当する社会教育担当部局との連携・協働体制の構築が不可欠である。
 ○また、首長部局等との協働は、これからの教育改革の大きな柱となるものであり、学校と地域の協働による取組は、地域のまちづくりや青少年健全育成、福祉、防災等の分野とも関連するものである。協働による取組を円滑かつ効果的に進めていくためにも、総合教育会議を積極的に活用しつつ、教育委員会と首長部局との協働体制として、部局横断で子供の育ちを総合的・一体的に支援する体制を構築していくことが重要である。
 ○さらに、学校と地域の双方に、連携・協働を推進する窓口となる人材を配置することで、相互の役割分担を進めながら、連携・協働体制を構築・強化していくことが必要である。(地域連携を担当する教職員は第2章、地域コーディネーターは第3章で言及)

第2章 これからのコミュニティ・スクールの在り方と総合的な推進方策について

 ○地域とともにある学校の在り方に関する作業部会では、第1章第2節1の「これからの学校と地域の連携・協働の姿」を踏まえつつ、学校と地域の連携・協働を推進するための組織的・継続的な仕組みの一つとして、コミュニティ・スクールの在り方等について審議を重ねた。審議に当たっては、平成27年3月に取りまとめられた「コミュニティ・スクールの推進等に関する調査研究協力者会議」の提言を土台にしている。

第1節 コミュニティ・スクールの意義・理念等
1.コミュニティ・スクールの意義・理念
 ○学校運営の状況が保護者や地域住民等に分かりにくく、学校の閉鎖性や画一性などの指摘がある中、時代の変化に応じて、保護者や地域住民等から、学校教育に対する多様かつ高度な要請や、開かれた学校運営を求める声が寄せられるようになっていること等を背景とし、平成16年に地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)が改正され、学校運営協議会制度が導入された。これは、平成12年の学校評議員制度による学校と地域との連携を更に一段階進め、地域の力を学校運営そのものに生かす発想からくるものである。
 ○学校運営協議会は、保護者や地域住民の側に、自らが学校の運営に積極的に参画することによって、自分たちの力で学校をより良いものにしていこうとする意識の高まりを的確に受け止め、学校と保護者や地域住民が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる仕組みとして意義を持つ。国は、制度導入後、学校運営協議会を設置する学校をコミュニティ・スクールと呼び、第2期教育振興基本計画(平成25年6月閣議決定)において、コミュニティ・スクールを全公立小中学校の1割に拡大することを成果指標と定め、その設置促進を図ってきた。
 ○第1章で述べたように、様々な教育改革や地方創生等の動向を踏まえながら、学校と地域は一体となって協働体制を築いていく必要がある。コミュニティ・スクールの仕組みについても、制度導入から10年余が経過した今、新しい時代における学校と地域の連携・協働の姿を見つめながら、その実現にふさわしい仕組みへと創り上げていく必要がある。このため、改めてコミュニティ・スクールの意義や成果、課題等を検証した上で、制度面の改善や財政面の措置も含めた方策について審議した。

2.コミュニティ・スクールの現状等
(1)コミュニティ・スクールの現状と成果
 ○平成27年4月現在、全国2,389校(全国5道県235市区町村の教育委員会)がコミュニティ・スクールに指定されており、幼稚園95園、小学校1,564校、中学校707校、高等学校13校、特別支援学校10校と、小中学校を中心に指定校の数は増加してきている。
 ○平成27年度に実施したコミュニティ・スクールに関する実態調査(以下「27年度調査」という。)によると、コミュニティ・スクールに指定した理由(教育委員会が回答)として、以下の理由が挙げられている。
  ・学校を中心としたコミュニティづくりに有効だと考えたから
  ・学校支援活動の活性化に有効と考えたから
  ・学校改善に有効と考えたから
  ・教職員の意識改革に有効と考えたから
  ・学校評価の充実に有効と考えたから
  ・教育課程の改善・充実に有効と考えたから
  ・生徒指導上の課題解決に有効だと考えたから
  ※回答数の多かった上位7項目を記載
 ○また、同調査によると、コミュニティ・スクールに指定された学校(校長が回答)において、以下のような成果認識が明らかとなっている。
  ・学校と地域が情報を共有するようになった
  ・地域が学校に協力的になった
  ・特色ある学校づくりが進んだ
  ・学校関係者が効果的に行えるようになった
  ・地域と連携した取組が組織的に行えるようになった
  ・子供の安全・安心な環境が確保された
  ・管理職の異動があっても継続的な学校運営がなされている
  ・学校が活性化した
  ・保護者・地域による学校支援活動が活発になった
  ・学校に対する保護者や地域の理解が深まった
  ・校長・園長のリーダーシップが向上した
  ※成果認識が7割を超えるものについて割合順に記載
 ○さらに、同調査によると、地域との連携により学校運営の改善が図られる中で、教職員の意識改革や、学力や学習意欲の向上、生徒指導上の課題の解決等の成果認識があるほか、学校を核とした協働活動が行われることに伴って、地域の教育力の向上や地域の活性化などの成果認識も明らかとなっている。
 ○同様に、教育委員会に対しても、コミュニティ・スクールの導入による成果を調査したところ、概ね同様の項目において、成果認識が高いことが明らかとなっている。 

(2)コミュニティ・スクールの課題
 ○コミュニティ・スクールの導入・運営に当たっての課題認識として、平成23年度に実施したコミュニティ・スクールに関する実態調査によると、指定校(校長が回答)において、以下の課題認識が示されている。
  ・学校運営協議会に対する一般教員の関心が低い
  ・学校運営協議会の存在や活動が保護者・地域にあまり知られていない
  ・会議の日程調整・準備に苦労する
  ・管理職や担当教職員の勤務負担が大きい
  ・委員謝礼や活動費などの資金が十分でない
  ・適切な委員の確保・選定に苦労する
  ※課題認識が5割を超えるものについて割合順に記載
 ○また、27年度調査によると、コミュニティ・スクール未指定の教育委員会において、導入していない理由として、以下のような理由が挙げられている。
  ・学校評議員制度や類似制度があるから
  ・地域連携がうまく行われているから
  ・すでに保護者や地域の意見が反映されているから
  ・コミュニティ・スクールの成果が明確でないから
  ・学校支援地域本部等が設置されているから
 ○このほか、少数であるものの、管理職や教職員の負担が大きくなる、学校運営協議会委員の人材がいないといった理由や、任命権者の人事権が制約される、特定の委員の発言で学校運営が混乱するといった理由が挙げられている。
 ○なお、コミュニティ・スクールに対する課題認識について、平成25年度調査において指定前後の課題に対する認識の変化を調査(校長が回答)したところ、課題認識の多くは、指定によって一定程度解消される傾向が見られる。
 ○制度面の改善や財政面の措置も含めた方策の検討に当たっては、こうした課題認識も踏まえた検討を進めていく必要がある。 

第2節 これからのコミュニティ・スクールの仕組みの在り方について
【提言のポイント】
<コミュニティ・スクールの仕組みとしての学校運営協議会制度の基本的方向性>
 ○学校運営協議会の目的として、学校を応援し、地域の実情を踏まえた特色ある学校づくりを進めていく役割を明確化する必要。
 ○現行の学校運営協議会の機能は引き続き備えることとした上で、教職員の任用に関する意見に関しては、柔軟な運用を可能とする仕組みを検討。
 ○地域の人々の理解や協力、参画等が促進されるよう、学校支援の総合的な企画・立案を行える仕組みとする必要。
 ○校長のリーダーシップの発揮の観点から、学校運営協議会委員の任命において、校長の意見を聴取する仕組みとする必要。
 ○小中一貫教育など学校間の教育の円滑な接続に資するため、複数校で一つの学校運営協議会を設置できる仕組みとする必要。

<制度的位置付けに関する検討>
 ○全ての公立学校がコミュニティ・スクールを目指すべきであり、学校運営協議会の制度的位置付けの見直しも含めた方策が必要。その際、基本的には学校又は教育委員会の自発的な意志による設置が望ましいこと等を勘案。

1.コミュニティ・スクールの仕組みの基本的方向性
(1)コミュニティ・スクールの仕組みとしての学校運営協議会の役割と現行の機能の取扱い
 ○コミュニティ・スクールの仕組みとしての学校運営協議会は、校長の作成する学校運営の基本方針の承認等を通じ、校長のビジョンを共有し、賛同するとともに、地域が学校とともに一定の責任を分かち合い、ともに行動する体制を構築するものである。すなわち、学校と地域がビジョンや課題、情報等を共有し、熟議し、意思を形成する場であり、学校と地域が相互に協働していくための基盤となる。
 ○学校運営協議会を導入していない教育委員会や学校の課題認識として、地域連携がうまく行われている、すでに保護者や地域の意見が反映されているといった認識があるが、学校運営協議会の仕組みを導入することによって、学校において、地域との連携・協働体制が組織的・継続的に確立され、協働の基盤が確固たるものとなる。
 ○一方、現行制度における学校運営協議会は、学校の教育方針の決定や教育活動の実践に地域住民や保護者のニーズを的確かつ機動的に反映させることで、学校の管理運営の改善を図るというガバナンス強化を目的として導入されたものであることから、ややもすれば、学校が地域住民や保護者の批判の的となるのではないかといった印象を持たれてしまうことがある。同制度は、各学校の運営に保護者や地域住民が参画することを通じて、地域ならではの創意や工夫を生かした特色ある学校づくりが進むことが期待されるものであり、そうした理念の適切な浸透を図っていく必要がある。
 ○このため、学校が抱える課題の解決を図り、子供たちの教育活動等を一層充実していく観点から、学校運営協議会制度について、これまでの役割を重視しつつ、学校運営の最終責任者である校長を支え、応援することで、地域の実情を踏まえた特色ある学校づくりを推進するという役割を明確化していく必要がある。 

 ○次に、現行制度上の機能の意義や課題等について、以下に整理する。
  [1]校長の作成する学校運営の基本方針の承認
  ・現行制度において、指定学校の校長は、当該指定学校の運営に関する基本的な方針(以下「学校運営に関する基本方針」という。)を作成し、学校運営協議会の承認を得なければならないとされている。
  ・これは、学校運営協議会が、校長とともに学校運営に責任を負っているという自覚と意識を高めるとともに、校長が作成する学校運営に関する基本方針に地域の人々や保護者等の意向を反映させることを目的としたものである。学校運営に関する基本方針の承認を通じ、育てたい子供像や目指す学校像を共有した上で、協働して教育の充実に取り組む目的意識や当事者意識の向上、役割の分担につながることから、重要な意義を持つ。
  ・27年度調査において、学校運営協議会の機能の意義に関して調査(校長が回答、指定・未指定問わず)したところ、承認の意義としては、学校・家庭・地域で目指す子供像・学校像を共有するためとの回答が最も多く、保護者・地域住民の学校運営に関する当事者意識を高めるため、保護者・地域住民の学校理解を得るため、保護者・地域住民の意向を学校運営に反映するため、との回答が続いている。
  ・一方、未指定の教育委員会や校長からは、学校の自律性が損なわれるのではないかといった指摘がある。これについては、指定学校の校長は、承認された学校運営に関する基本方針に沿い、その権限と責任において教育課程の編成等の具体的な学校運営を行うことが求められるものの、個々の具体的な権限の行使の在り方や内容について、学校運営協議会の指示や承認を受けるものではなく、校長の学校運営の権限が制約されたり代替されたりするものではない。
  (校長のリーダーシップの発揮の観点については本節1(4)に記載)

  [2]学校運営に関する教育委員会又は校長に対する意見
  ・現行制度において、学校運営協議会は、当該指定学校の運営に関する事項について、教育委員会又は校長に対して、意見を述べることができるとされている。
  ・これは、学校運営協議会が、学校運営に関して協議する機関として設置されるものであることから、基本方針の承認にとどまらず、当該学校の運営全般について、広く保護者や地域住民等の意見を反映させる観点から意見を申し出ることができる旨を明確にしたものである。学校運営に関する意見を通じ、地域の人々や保護者等とともに考え行動することで、学校運営の改善につながるなどの意義がある。
  ・前述の学校運営協議会の機能の意義に関する調査によると、教育委員会に対する意見の意義としては、学校の教育課題の解決を図るためとの回答が最も多く、保護者・地域住民の意向を学校運営に反映するため、保護者・地域住民の学校運営に関する当事者意識を高めるため、との回答が続いている。また、校長に対する意見の意義としては、保護者・地域住民の意向を学校運営に反映するためとの回答が最も多く、保護者・地域住民の学校運営に関する当事者意識を高めるため、学校運営の点検と見直しを図るため、学校の教育課題の解決を図るため、との回答が続いている。
  ・さらに、同調査によると、学校運営協議会の意見によって実現した具体的事項として、地域人材が活用されるようになったとの回答が最も多く、生徒指導の創意工夫が図られた、施設・設備の整備が図られた、学習指導の創意工夫が図られた、新たな教育活動の時間が生まれたなどの回答が続いている。

  [3]教職員の任用に関する教育委員会に対する意見
  ・現行制度では、学校運営協議会は、当該指定学校の職員の採用その他の任用に関する事項について、任命権者に対して意見を述べることができるとされている。
  ・これは、当該学校の運営の基本方針を踏まえて実現しようとする教育目標・内容等に適った教職員の配置を求める観点から、教職員の任用に関しても意見を申し出ることができる旨を明確にしたものである。教職員の任用に関する意見を通じ、学校の抱える課題の解決や教育の充実のために必要な校内体制の整備充実が図られるなどの意義がある。
  ・前述の学校運営協議会の機能の意義に関する調査によると、教職員の任用に関する意見の意義としては、教職員体制を改善するためとの回答が最も多く、教職員の意識改革を進めるため、との回答が続いている。
  ・また、25年度調査によると、実際に教職員の任用について意見が出された学校の割合は、指定校の約16%であり、意見の内容としては、教職員人事に関する一般的要望が約64%を占めている。
  ・一方、未指定の教育委員会や校長からは、任用の意見の申し出で人事が混乱するのではないか、学校運営協議会と都道府県教育委員会、市町村教育委員会(特別区を含む。以下同じ。)、校長の権限関係が曖昧であり不安であるといった指摘がある。
  ・これについて、法律上、教職員の任用に関する意見については、任命権者に対し、学校運営協議会から指定学校の職員の任用について意見が示された場合、当該職員の任用に当たり、意見を尊重する旨の規定があり、任命権者は学校運営協議会の意見を尊重し、その内容を実現するよう努める必要があるが、これによって、任命権者の任命権(地教行法第37条)の行使そのものを拘束するものではない。また、学校運営協議会を設置する学校であっても、市町村教育委員会の内申権(地教行法第38条)、校長の意見具申権(地教行法第39条)そのものに変更が生ずるものではない。さらに、採用その他の任用に関する事項とは、採用、昇任、転任であり、分限(免職、休職、降任、降級)、懲戒(免職、停職、減給、戒告)、勤務条件(給与、勤務時間の決定)等は意見の対象とならないものとされている。
  ・実際に、25年度調査において、指定前後の課題に対する認識の変化を調査(校長が回答)したところ、「任用の意見の申し出で人事が混乱しないか」といった課題意識について、指定前に約23%であった割合が、指定後には約1%に低減されており、指定により課題は解消される傾向にある。
  ・このため、改めて、教育委員会等に対し上記も含めた周知徹底を図り、適切な理解を促すことが求められる。一方、依然として教職員の任用に関する意見に対する抵抗感が強く、学校運営協議会設置の足かせとなっている実態も存在することから、教職員の任用に関する意見については、柔軟な仕組みの在り方を求める声が強い。

 ○現行の学校運営協議会制度は、「地域とともにある学校」の理念を実現させるための有効な仕組みであり、地域の人々や保護者が学校の運営に真に参画し、協働することを保障するために、少なくとも同協議会が具備すべきとされた機能が現行法に規定されている三つの機能である。現行制度が有する意義や成果等を踏まえると、学校運営協議会は、法律上の機能である「学校運営の基本方針の承認」、「学校運営に関する意見」及び「教職員の任用に関する意見」の三つの機能を備えるべきである。その上で、教職員の任用に関する意見については、柔軟な運用を確保する仕組みとしていくことも検討すべきである。

(2)学校支援の総合的な企画・立案の観点
 ○現行制度において学校運営協議会が有する機能は、既述のとおり、学校のガバナンス強化のための機能となっているが、学校・家庭・地域の信頼関係や協力関係を築いていくことが、学校運営協議会の取組を充実していく鍵である。
 ○23年度調査によると、学校運営協議会を設置し、学校支援活動を実施している学校では、学校の活性化や学校関係者の効果的な実施などの「学校運営の改善」、児童生徒の学習意欲の向上や生徒指導上の課題解決などの「児童生徒の変容」、教職員の意識改革や教職員の子供と向き合う時間の増加などの「教職員の変容」、学校に対する保護者や地域の理解の深まりや保護者や地域からの苦情の減少などの「保護者・地域連携の変容」、家庭や地域の教育力の向上などの「学校外の変容」といった様々な面で成果認識が有意に出ている。承認した基本方針の達成に向かって、地域全体でともに前進し行動していくことは、当事者意識等の向上につながり、学校はよりよく発展していく。
 ○学校が抱える課題の解決を図り、子供たちの教育活動等を一層充実していく観点からも、地域住民等による学校の教育活動等を支援する機能は欠かせないものとなっており、学校運営協議会の機能として支援機能を位置付けている割合は約68%と、実態からも支援機能の必要性が整理できる。ある教育委員会では、学校運営協議会に、よりよい学校づくりのために協議する機能に加え、より質の高い学校教育を支援する機能を持たせた上で、承認した教育目標の実現に向けて、学校、家庭、地域、そして子供たち自身が熟議を行い、それぞれの立場でできることを具体的に示した行動指針(パワーアップアクションプラン)を策定しており、各々の組織・場で主体的な取組を実践することで、より質の高い学校教育の実現につながっている。
 ○このように、協議会において学校運営の方向を協議し支援を行うという構造を取ることで、学校運営の基本方針を踏まえた教育支援活動が展開できる、学校・家庭・地域が課題や情報等を共有することで地域の人々や保護者による学校支援が活性化されるなどの意義がある。
 ○27年度調査によると、指定校(校長が回答)において、学校運営協議会が学校支援に関わることによる成果として、以下のような成果認識が明らかとなっている。
  ・より特色ある学校づくりを展開することができた
  ・学校運営協議会の意見等によって学校のニーズにより的確に対応した支援を受けた
  ・学校支援組織の人材を確保しやすくなった
  ・より持続可能な学校支援活動を受けることができた
  ・学校支援活動が活性化した
  ・より組織的かつ計画的に学校支援活動を受けることができた
  ・学校運営協議会の活動自体が活性化した
  ・学校運営協議会の意見等によって、保護者・地域のニーズにより的確に対応した支援を受けた
  ・学校運営のより確実なPDCAサイクルの確立につながった
  ・保護者や地域住民等の学校運営への参画の機運が高まった
  ・学校支援ボランティア等が教育目標などを共有することによって保護者・地域の当事者意識が高まった
  ※成果認識が7割を超えるものについて割合順に記載
 ○こうした意義や成果等を踏まえ、学校運営協議会が法律上有している役割の重要性を押さえた上で、学校の総合力を高め、一層活性化させていくためには、学校運営協議会が、学校に対する地域の人々の理解や協力、参画を促し、学校を支える基盤であるという観点を明確化していくことが必要であり、学校運営協議会において、地域等による学校支援に関する総合的な企画・立案を行える仕組みとしていく必要がある。
 ○この際、こうした仕組みを検討するに当たっては、当該機能がトップ・ダウン型で一方的に展開されることなく、地域住民と教職員とが協働で企画したり活動を実施するなど、学校と地域の協働的な活動が展開されるよう配慮することが必要であり、また、子供の学びを中心に据えた協働的な活動を通じ、地域づくりに発展していく取組を推進していく視点も有効であることに留意する。 

(3)学校評価との一体的な推進の観点
 ○現状としては、各学校・地域の実情等に応じて、学校運営協議会の機能として学校評価の機能を位置付けている割合が約78%に至っている状況であり、学校関係者評価委員を学校運営協議会委員が兼務し、学校運営協議会の機能の一つとして学校関係者評価を実施している、学校運営協議会で評価結果と併せて、改善に向けた支援策を協議し実施しているなどの実態が見られる。
 ○学校運営協議会と学校関係者評価を一体的に推進することで、成果や課題の共有、取組の改善に生かし、学校運営の評価・改善サイクルが充実していくなどの意義がある。また、学校運営協議会において学校評価を行うことで、様々な課題が共有され、そのための具体的な対策を協議会で協議し、具体的な改善にもつながっている、次年度の学校運営の基本方針等に着実に生かされており、学校運営協議会委員の参画意識の向上につながっているなどの成果も指摘されている。
 ○学校関係者評価の質を高め、より実効性を高める観点から、学校運営協議会の設置促進の観点からも、すでにある学校関係者評価委員会をベースに学校運営協議会を導入していくことが有効であることから、学校教育法体系上位置付けられている学校関係者評価について、学校運営協議会と有機的に組み合わせ、両者を一体的に運用していくことを積極的に推進する。その際、教育委員会規則において、学校評価の部会などを設置できる規定を盛り込む等により、学校運営協議会の機能として、効果的な学校評価を実施していくことが有効である。
 ○一方、学校運営協議会が形骸化しないためには、実効性ある運営と併せ、学校運営協議会の取組そのものも適正に評価される必要があることから、教育委員会における定期的な点検・評価の実施を一層推進していくことが必要である。その際、教育委員会にとどまらず、第三者も含めた点検・評価を実施することも有効である。 

(4)校長のリーダーシップの発揮の観点
 ○学校における一切の事柄の責任と権限は、最終的には教育委員会が有するものであるが、「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する」(学校教育法第37条第4項)ものとされており、日常的な学校運営は、校長の責任と権限に基づいて処理される。
 ○未指定の教育委員会や校長からは、現行の学校運営協議会の仕組みにおいて、校長と学校運営協議会委員が対立しないか、特定委員の発言で学校運営が混乱するのではないかという不安感を抱く声があるが、既述のとおり、学校運営協議会が設置された場合であっても、学校運営の責任者として教育活動等を実施する権限と責任は校長が有するものであり、学校運営協議会が校長に替わり学校運営を決定、実施する権限を持つものではない。
 ○大切なのは、校長が、学校運営協議会の委員に対し、子供たちをどのような方針で育てていくのか、学校の教育ビジョンを示し、意識や取組の方向性の共有を図ることであり、学校運営協議会は、基本方針を承認した限りは、校長とともに責任感をもって行動する体制を構築していくことが重要である。
 ○複雑化・多様化した課題を抱える学校を変え、学校の教育力を向上させていくためには、校長のリーダーシップが一層発揮される環境を整備するとともに、学校運営協議会の委員として、自らが学校の運営に積極的に参画することによって、学校をよりよいものにしていくという当事者意識と意欲を持ち、学校とともに行動していける人材を確保していく必要がある。
 ○多くの教育委員会においては、学校運営協議会の委員の任命に際し、校長の推薦を得たり意見を聴取するなどの工夫をしている状況も踏まえ、校長のリーダーシップの発揮の観点から、学校運営協議会委員の任命において、校長の意見を反映する仕組みとしていく必要がある。なお、校長のリーダーシップの発揮の観点からも、本節1(2)の学校支援の総合的な企画・立案を行える仕組みとしていくことが望ましい。 

(5)小中一貫教育への対応など学校間連携の推進の観点
 ○地域ぐるみで子供たちの義務教育9年間の学びを支える仕組みとして、中学校区の複数の学校が連携した教育支援体制を構築することは重要であり、小中一貫教育とコミュニティ・スクールを有機的に組み合わせて大きな成果を上げている例も多く見られる。これらの一体的な導入により、保護者、地域住民と教職員とが、学校の教育目標や、学校・子供が抱える課題やその解決策等を9年間を見通して共有し、より広い地域からの組織的・継続的な学校支援体制を整えることが可能となる。特に小中一貫教育をこれから導入しようという地域においては、導入前から関係の小学校・中学校に学校運営協議会を合同で設置し、学区の保護者や地域住民の意見を反映させながら、新たなカリキュラムや学校施設の在り方等を具体的に構想していく工夫も考えられる。
 ○また、今後制度化される小中一貫型小学校・中学校(仮称)においては、一貫教育の実質を適切に担保する観点から、学校間の意思決定の調整システムを整備することが要件として定められる予定であるが、具体的なシステムとしては、学校間の総合調整を担う校長を定めることや、あるいは、一体的なマネジメントを可能とする観点から小学校・中学校の校長を併任させることに加え、学校運営協議会を関係校に合同で設置し、一体的な教育課程の編成に関する基本的な方針を承認する手続を明確にしておくことなどが想定されている。
 ○小中一貫教育とコミュニティ・スクールを組み合わせて実施するためには、中学校区で一つの学校運営協議会を置くことが有効であるが、現行の地教行法では学校運営協議会は各学校に設けることとなっていることから、学校ごとに学校運営の基本方針を別々に承認することとなり、9年間を通じた方針・目標等の共有がしにくいという課題がある。このため、小・中学校の学校運営協議会をリンクさせるために学校運営協議会委員全員を関係する全ての学校の委員として併任させたり、各学校に協議会を設けた上で、更にその上に小中合同の会議を開催したりするなどの工夫を講じている例もあるが、委員や事務局となる学校の大きな負担につながっている。
 ○一方、27年度調査によると、複数校まとめた学校運営協議会を設置できるようにすることを希望(校長が回答、指定・未指定問わず)する割合は約64%にのぼる。
 ○このため、小中一貫教育を一層推進する上でも、中学校区内の複数の小・中学校における一体的な学校運営協議会の設置を促進することが有効であり、学校運営協議会を学校ごとに設置することを基本としつつ、小中一貫教育など学校間の教育の円滑な接続に資する観点から、複数校で一つの学校運営協議会を設置できる仕組みとしていく必要がある。
 ○この際、9年間一貫した教育目標や教育課程等の基本方針の承認のほか、保護者や地域住民のニーズを踏まえた、小中一貫教育の軸となる独自教科の検討、9年間一貫した学校運営に対する意見の聴取、9年間を通じた学校支援や学校関係者評価の実施など、そのメリットを最大限生かした運営がなされるとともに、負担軽減策も含め、より効果的かつ効率的な運営がなされるよう配慮していくことが求められる。 

2.コミュニティ・スクールの仕組みの必置の検討について
 ○教育再生実行会議が平成27年3月に取りまとめた第六次提言「「学び続ける」社会、全員参加型社会、地方創生を実現する教育の在り方について」において、教育がエンジンとなって地方創生を実現することが必要であるという理念の下、地域を担う子供を育て、生きがい、誇りを育むために、全ての学校において地域住民や保護者等が学校運営に参画するコミュニティ・スクール化を図り、地域との連携・協働体制を構築し、学校を核とした地域づくり(スクール・コミュニティ)への発展を目指すことが重要であると提言された。また、そのために、国は、コミュニティ・スクールの取組が遅れている地域の存在を解消し、一層の拡大を加速するための制度面の改善や財政面の措置も含め、全ての学校がコミュニティ・スクール化に取り組み、地域と相互に連携・協働した活動を展開するための抜本的な方策を講じるとともに、コミュニティ・スクールの仕組みの必置について検討を進めることが提言された。
 ○このことを受け、本作業部会では、学校運営協議会制度の基本的方向性を踏まえた上で、以下の観点も含めて、コミュニティ・スクールの仕組みの必置について審議した。
  ・学校や地域の状況
  ・市町村や学校の規模との関係
  ・幼稚園、高等学校、特別支援学校の特性を踏まえた在り方
  ・小規模自治体における教育委員会と学校運営協議会との関係の取扱い

(1)学校や地域の状況
 ○現在、学校と地域の連携・協働体制の一環として、法律に基づく学校運営協議会を置くコミュニティ・スクールのほかにも、学校評議員をはじめ、地域による学校運営への関わり方には様々な形がある中、類似の仕組みの導入により、コミュニティ・スクールへの不要感を指摘する声がある。
 ○学校評議員は、地域の人々の学校運営への参画の仕組みを制度的に位置付けるものとして、平成12年に導入された制度であり、平成24年3月現在で公立学校は80.2%の設置率となっている。同制度は、校長の求めに応じ、学校運営に関し、地域の人々や保護者の意向を把握し反映することができる仕組みであるものの、
  ・会合開催数が少なく、学校評議員が学校の実態を十分に把握しておらず、議論が活発化しない、
  ・地域の名誉職が評議員となるため、地域のご意見番という性格が強く、組織的ではなく個人的な動きになりやすい、
  ・建設的な意見がなく、形式的で学校が一方的に報告する会議となっている、
  ・様々な助言はもらえるものの、課題解決のアクションを起こすのが学校だけではオーバーワークで機能しない
  など、実質的な制度の形骸化等について指摘がある。25年度調査によると、調査に回答した半数以上の学校の校長は学校評議員制度が形骸化していると認識している。
 ○また、27年度調査によると、学校運営協議会の設置に伴い、学校評議員又は類似制度を廃止又は停止している学校の割合は約77%という状況であり、そのうち、「学校評議員を学校運営協議会委員とし、さらに新たな人材も委員に加えた」が約50%、「学校評議員のうち一部を学校運営協議会委員に移行させた」が約29%という状況である。
 ○同調査によると、「学校運営協議会の設置によって、学校支援活動や学校評価などの活動が積極的に展開できている」との回答が約67%、「学校運営協議会委員は学校評議員等よりも当事者意識が高い」との回答が約62%、「学校運営協議会は学校評議員等よりも活発に意見を出してくれる」との回答が約60%という状況である。
 ○一方、中には、○○型コミュニティ・スクールといった名称で、法律に基づかないものの、独自に学校運営協議会類似の仕組みを取り入れ、地域の人々や保護者等が活発に学校運営に参画している地域もある。そうした地域においては、学校と地域の協働関係・信頼関係の土台ができている面もあり、教育長・校長の声として、類似の仕組みも含めた多様なコミュニティ・スクールの在り方を求める声もある。
 ○既述のとおり、学校運営協議会は、育てたい子供像、目指すべき教育のビジョンを保護者や地域と共有し、目標の実現に向けてともに協働していく仕組みであり、類似の仕組みから法に基づく学校運営協議会に発展することで、学校において地域との連携・協働体制が組織的・継続的に確立されるという魅力・メリットが存在する。学校と地域の連携・協働体制を一時的なものとせず、持続可能な仕組みとして発展・充実していく上で、制度的な位置付けの意義は大きい。また、学校と地域において共通したビジョンをもった取組の展開が可能となる、学校運営の基本方針の承認を通じて、地域の人々や保護者に対する説明責任の意識が向上するとともに、地域の人々や保護者の理解・協力を得た風通しのよい学校運営が可能となる魅力・メリットもある。
 ○このため、国は、学校評議員制度からコミュニティ・スクールへの移行を積極的に促すとともに、○○型コミュニティ・スクールなど、学校運営協議会制度によらずに地域の人々や保護者等が学校運営に参画する仕組みを構築している取組についても、コミュニティ・スクールへの過渡的な段階の姿として捉え、コミュニティ・スクールへの移行を促進していくことが重要である。

(2)市町村や学校の規模との関係
 ○27年度調査によると、コミュニティ・スクールの指定を行っていない理由について、自治体規模別に見ると、小規模自治体においては、地域連携がうまく行われている、すでに保護者や地域の意見が反映されているといった回答のほか、学校運営協議会委員の人材がいないといった回答が有意に高い状況であった。本調査からもわかるように、小規模な自治体では学校運営協議会の委員の確保が難しい側面があり、また、小中一貫教育以外の学校間連携のネットワークも必要となることが多い。
 ○また、同調査によると、「学校ごとではなく複数校まとめた学校運営協議会を設置できるようにすることが望ましい」との回答(校長が回答、指定・未指定問わず)について、自治体規模別(区市町村別)に見ると、小規模自治体であるほど回答が高い傾向がある。また、学校規模別に見ても、小規模学校であるほど回答が高い傾向がある。
 ○こうした実態や、小規模の学校においては多様な教育環境が十分に確保できていない現実があることを鑑みると、小規模の学校のネットワークをガバナンスの面から支える観点から、複数校における学校運営協議会の設置は有効である。
 ○その際、単に小規模だから一つにまとめるという物理的な要件のみを設定するのではなく、学校間のネットワーク化を通じて子供をどう育てていくかというグランドデザインや、教育課程上の接続を図るなど、異なる学校の間における教育の円滑な接続や連携を図る観点等を要件として設定していくことが求められる。
 ○なお、小規模な自治体においても、学校運営協議会、教育委員会、学校が適切に連携・協力して運用がなされることにより、各学校の運営の改善にとどまらず、教育行政全体の活性化の面、まちづくりや地域活性化の面での効果も期待される。 

(3)幼稚園、高等学校、特別支援学校の特性を踏まえた在り方
 ○全国的に見ると、コミュニティ・スクールは小中学校を中心に指定校が増加しており、幼稚園は95園、高等学校は13校、特別支援学校は10校とごく一部にとどまっている。このため、本作業部会では、幼稚園、高等学校及び特別支援学校の特性を踏まえたコミュニティ・スクールの在り方についても審議した。
 ○子供たちの生きる力は学校だけで育むものではなく、地域や社会の多様な人々と関わり、育まれるものであることは、どの段階においても変わるものではない。地域・社会を支える子供たちを育成していくためにも、学校種の特性を生かしつつ、幼児・児童・生徒の発達段階等に応じて、地域・社会との協働体制を構築していく必要がある。 
<幼稚園の特性を踏まえた在り方>
 ○幼児期に家庭や地域の人々など、様々な人に愛情をもって関わってもらうことが、幼児期の豊かな体験となり、地域への愛着や誇りを持つ基盤となる。子供が地域で活躍する活動や場をつくることで、自己肯定感も育つ。
 ○また、子供たちの健やかな成長のためにも、幼稚園、家庭、地域がそれぞれの役割と責任を自覚し、地域全体で教育に取り組む体制を構築していく必要がある。
 ○具体的には、学校運営協議会を地域において幼児期から子供の育ちを一体的に考える場とし、卒園児の保護者や区域の小学校や保育所の関係者等の協力を得ることで、小学校との円滑な接続や保育所との円滑な連携の推進等が期待される。 
<高等学校の特性を踏まえた在り方>
 ○高等学校は、全日制・定時制・通信制、普通科・専門学科・総合学科など、様々な課程や学科等があり、それぞれに特有の学校運営の在り方などの特性が存在している。
 ○また、義務教育諸学校とは異なり、生徒の選択により入学する学校種であるため、通学区域が広範囲に渡ることにも留意する必要があり、広く社会との関わり・連携を深めていく視点が求められる。
 ○高等学校においては、広く地域や社会の意向を反映することは、学校運営の改善につながり、学校の個性化や特色づくりに資するものである。具体的には、これまで培われた地域や社会との関係を生かして、学校運営協議会を通じ、学校が所在する地域の住民や近隣の大学の教員、地元の商店街、企業関係者等の協力を得ることで、
  ・地域の差し迫った課題を高校生自らが地域と協働して解決していく地域課題解決型学習を実施したり、町おこしイベント等の企画・実施を通じて地域の活性化を図るなど、高校、地域の双方向的な魅力を発信したり、
  ・キャリア教育を推進する観点から、当該高校の周辺地域の企業等と連携協力してインターンシップなどを実施したり、
  ・専門高校などにおいて、地域産業と連携し、職場で実践的な技術研修を実施したり、特別非常勤講師などとして招聘して授業を実施するなど、
  学校の活性化や教育の質の向上に資するとともに、地方創生の観点からも、地域の課題解決、地域活性化に資することが期待される。
<特別支援学校の特性を踏まえた在り方>
 ○これからは、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会である「共生社会」を目指す必要がある。
 ○このため、障害のある子供が、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加することができるよう、医療、保健、福祉、労働等の連携を強化し、社会全体の様々な機能を活用して、十分な教育が受けられるよう、地域住民との連携・協働を一層推進し、障害のある子供の教育の充実を図ることが重要である。
 ○障害者に対する理解を推進することにより、周囲の人々が障害のある人や子供とともに学び合い生きる中で、公平性を確保しつつ社会の構成員としての基礎をつくっていくことが重要であり、コミュニティ・スクールを通じて、学校と地域が協働しながらこうした環境を醸成していくことは、共生社会の構築につながる。
 ○具体的には、学校運営協議会を通じて、地域の人々や保護者に加え、医療、保健、福祉等の代表等の協力を得ることで、子供たちが自立し社会参加できる環境の充実を図るほか、地元の職業センター等の代表の協力を得て、地場産業への就労を目指す教育課程の工夫や地域の特産品を活用した作業製品の開発・販売を進めるなどにより、学校の活性化や教育の質の向上、さらには、共生社会の実現に資することが期待される。

(4)小規模自治体における教育委員会と学校運営協議会との関係の取扱い
 ○小規模自治体の場合、学校運営協議会と教育委員会の関係について、両者の機能・権限や委員が重なるのではないかといった課題が指摘される。
 ○学校運営協議会は地教行法第47条の5に基づき、校長の定める基本方針を承認する機能等を有する。一方、教育委員会は地教行法第21条に基づき、学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関する管理・執行権限等を有する。
 ○両者の法律上の機能・権限は異なるものであり、一体として捉えることはできないものであるが、教育委員には、単に一般的な識見があるというだけではなく、教育に対する深い関心や熱意が求められることから、例えば、PTAや地域の関係者、コミュニティ・スクールにおける学校運営協議会の委員などを選任することは有効である。 

(5)これからの学校運営協議会の制度的位置付けの検討
 ○学校運営協議会の設置については、公立学校を設置・管理する権限を有する自治体の教育委員会において、学校や地域の実態などを十分に踏まえて、学校ごとに判断されることが望ましいとされ、現行制度上、任意設置とされている。
 ○本作業部会では、現在の学校や子供たちが抱える課題等を解決し、学校が組織としての力を発揮していくために、全ての学校が、地域とともにある学校としてコミュニティ・スクール化を図り、学校と地域の連携・協働体制を構築していくことを目指すべきとの視点に立ちながら、コミュニティ・スクールの仕組みの必置に係る検討の一環として、学校運営協議会の制度的位置付けについて審議を行った。
 ○学校運営協議会の制度的位置付けの見直しを求める意見としては、以下のような意見が挙げられる。
  ・学校運営協議会は学校と地域に様々なポジティブな影響を与える可能性があること  から、仕組みを必置とすることが望ましい。
  ・徹底した理解を図り、人の配置や予算面での支援などにより誘導を図っていくことで、必置ということも無理ではない。
  ・全ての学校をコミュニティ・スクール化するならば、既存の様々な取組を制度に位置付けることで、停滞しがちな面もある既存の取組を安定させ持続可能な取組としていけるといった面をアピールしていく必要がある。
  ・地方創生の実現の観点からも、開かれた学校にとどまるのではなく、地域とともにある学校に転換する必要があり、責任を持って地域が学校運営に参画していく仕組みとして、学校運営協議会の仕組みを必置として考えていく必要がある。
  ・人口減少が加速している中、学校を核にするならば、コミュニティ・スクール化は必然である。類似の仕組みにとどまることなく、法令に基づいて設置される学校運営協議会に一定の権限と責任を担保させることが重要である。
 ○一方、学校や地域の実情を踏まえた在り方を求める意見としては、以下のような意見が挙げられる。
  ・実態に合った取り組みができるよう段階的仕組みとすべきである。
  ・小中学校は地域との関連性が深いことから必置とすることが望ましいが、それ以外の学校種は通学区域が広域で一律必置は難しく、取組を検証しながら導入を促進していくことが望ましい。
  ・全ての学校にコミュニティ・スクールの仕組みを取り入れるのであれば、そのハードルを下げていかなければならないし、難しい仕組みにしてはいけない。
  ・今の学校運営協議会の仕組みを必置として押しつけることは得策でない。
  ・全校をコミュニティ・スクール化するにしても、トップ・ダウンで一気に進めていくのではなく、各自治体にモデル校を指定し、成功体験を積ませた上で、モデルケース化していくような地域の納得性を得られた形で制度を広げていく方法もある。

 ○また、本作業部会では、教育委員会・教育長関係団体や校長・園長会からも意見聴取を行った。意見の多くは、これからの学校運営に当たっては、地域との連携・協働は不可欠であり、学校・地域の連携・協働を推進するツールとして、コミュニティ・スクールの仕組みの意義や設置の促進の必要性を認識しつつも、一律に導入を促すのではなく、学校や地域の実情等を踏まえた柔軟な在り方が望ましいといったものである。以下、主な意見を挙げる。
  ・法定の学校運営協議会を設置していなくとも、類似の取組を行うなど、実質的に同等の活動を展開し地域との連携を図っている学校も少なからずある。こうした中、全ての学校に現行の学校運営協議会を必置とすることは実現が困難であると考える。このため、顕在化している課題にしっかりと対応した情報発信の改革と支援措置の拡充を図るとともに、学校や地域の実情に応じて一部の機能のみを有する学校運営協議会を置くことができるなど、弾力的な制度設計とすべきである。
  ・学校評議員制度、学校支援地域本部、学校関係者評価など、様々な仕組みに、更に学校運営協議会も設置することにより学校の負担となることは避けるべきである。全国的にコミュニティ・スクール化を推進するに当たっては、実態に合った取組ができるよう段階的仕組みとすべきであり、財政確保と人材確保の保障が必要である。
  ・地域とともにある学校を目指すために学校運営協議会を導入していく方向性は妥当である。一方、全国的に広めていくためには、地域性を考慮の上、柔軟な形態と多様性を認め、拙速な実施にならないよう配慮するとともに、国として予算的な裏付けを継続的に保障すべきである。

 ○現在学校が直面している様々な課題を解決し、学校が組織としての力を発揮していくためにも、地域とともにある学校へと転換し、地域との連携・協働体制を持続可能なものとしていくことが不可欠であり、今後、全ての公立学校において、地域住民や保護者等が学校運営に参画する仕組みとして、学校運営協議会制度を導入した学校(コミュニティ・スクール)を目指すべきである。
 ○このため、各教育委員会が、コミュニティ・スクールの設置の推進を図っていくよう、学校運営協議会の制度的位置付けの見直しも含めた方策を講じていくことが必要である。その際、
  ・学校運営協議会を有効に機能させるためには、学校と地域の信頼関係の構築が基盤となることから、基本的には学校又は教育委員会の自発的な意志によって設置されることが望ましいこと、
  ・現在の学校運営協議会の設置率は全公立学校の7%程度という実態を踏まえる必要があること、
  ・学校運営協議会が学校運営に混乱をもたらしかねないといった懸念・不安に基づく制度導入に対する拒否反応を丁寧に払拭していく必要があること、
  ・学校や学校を取り巻く地域の状況は多様であること
  等の点を勘案しつつ、制度的位置付けを検討すべきである。
 ○法律に基づかない自治体類似の仕組みについても、コミュニティ・スクールへの過渡的な段階(コミュニティ・スクール化)の姿として捉え推進していくことが重要であり、取組の充実・発展を促す中で、最終的にはコミュニティ・スクールとなることを目指して推進していくことが重要である。
 ○また、国においては、コミュニティ・スクールの仕組みがより魅力的な仕組みとなるよう、本節1.に示した基本的方向性の実現を図り、学校や教育委員会の主体性を大切にしながら設置を促していく必要がある。そのためにも、制度の趣旨や目的をはじめ、個々の機能の持つ意義や成果等に対する正しい理解が得られるよう周知を図るとともに、コミュニティ・スクールの設置を促進するための施策面・財政面等における総合的な推進方策を講じていくべきである。

第3節 コミュニティ・スクールの総合的な推進方策について
 ○作業部会では、第2節の制度的な見直しに加え、コミュニティ・スクールの設置を促進するための総合的な推進方策について審議を重ねた。
 ○全ての公立学校をコミュニティ・スクールとしていくことは容易ではない。教育委員会や学校から発せられる不要感や不安感、負担感など、様々な課題に対して、真摯に向き合い、解決に向けた働きかけや支援を行っていくとともに、社会総掛かりでの教育の実現に向けた大きなうねりを巻き起こしていく必要がある。
 ○なぜコミュニティ・スクールとしていく必要があるのか、どんなメリットがあり、導入によって、子供たちがどう変わっていくのか。教育委員会や学校が動くための糸口は「共感」を得ることであり、関係者が熟議を重ね、仕組みの導入によって、子供たちが変わり、学校が変わっていくという成功体験を積み重ねていくことが重要である。
 ○コミュニティ・スクールをはじめとした地域とともにある学校づくりに関わる当事者にとって、それぞれの立場から関わる魅力は、以下のように整理することができる。

◆コミュニティ・スクールをはじめとした地域とともにある学校づくりの魅力
(子供にとっての魅力)
 ・学校に多様な人々が関わっていくことで、多くの大人の専門性や地域の力を生かした教育活動等が実施され、学校での学びがより豊かに、広がりをもったものとなり、子供の学びが充実する。
 ・信頼できる大人と多くの関わりを持ち、愛情を注がれることにより、自己肯定感や他人を思いやる心など豊かな心が育まれる。
 ・地域の人々に支えられ学んでいくことで、地域への愛着が芽生え、地域の担い手としての自覚が育まれる。
 ・防災・防犯等の観点からも、平素からの学校と地域の人々との関係づくりが、子供たちの命や安全を守ることにつながる。
(教職員にとっての魅力)
 ・(特に管理職にとって)自ら定めた学校運営の基本方針の承認等を通じ、地域の人々や保護者の理解・協力を得た風通しのよい学校運営が実現する。
 ・地域の人々や保護者が学校の状況を理解し賛同してくれているという後押しを得られることで、安心して仕事ができる環境が得られる。
 ・相互理解に努め、ともに成功体験を重ねるなど信頼関係を構築していくことで、地域の人々が学校の応援団となってくれている実感が得られる。
 ・地域の人々との交わりで得られる多様な経験を通じ、教師としての意欲が高まり、豊かな指導力の発揮につながる。
 ・教育や子供の成長に対する責任を分かち合い、学校がやるべきこと、家庭がやるべきこと、地域がやるべきことの役割分担が図られることで、教職員が子供と向き合う時間の確保につながる。
(保護者にとっての魅力)
 ・学校への関わりを通して学校や地域への理解が深まることで、子供が地域の中で育てられているとの安心感が生まれる。
 ・保護者が学校に関わっていくことで、保護者同士のつながりや地域の人々とのつながりが生まれる。
(地域の人々にとっての魅力)
 ・学校運営や教育活動等への参画を通じ、子供たちと触れ合い、これまで学び培ってきたことを生かす機会が得られることで、自己有用感や生きがいにつながる。
 ・学校運営や教育活動等への参画を通じ、地域の人々が集うことで、学校が、社会的なつながりが得られる場となり、地域のよりどころとなる。
 ・地域のネットワークが形成されることで、地域づくりの輪が広がっていく。
 ・学校を中心につながった絆(きずな)は、地域の力を高め、地域の人々に安心と生きがいを与える。
 ・防災・防犯等の観点からも、平素からの学校と地域の人々との関係づくりが、地域の安全を守ることにつながる。
 ・企業やNPO、大学等が教育活動等に参画することで、その専門性を生かす機会を得ることができるとともに、社会的な信頼の向上につながる。

 ○コミュニティ・スクールの拡大・充実のための推進方策として、有効と考えられる方策は以下のとおりであり、国は、以下の推進方策を着実に実行するとともに、各学校設置者等においても、これらの方策を踏まえた積極的な取組が進むことを期待する。

1.コミュニティ・スクールの拡大・充実のための推進方策
【提言のポイント】
 ○国として、コミュニティ・スクールの一層の推進を図るため、財政的支援を含めた条件整備や質の向上を図るための方策を総合的に講じていく必要。
 ○具体的には、以下のような方策が求められる。
  ・様々な類似の取組を取り込んだコミュニティ・スクールの裾野の拡大
  ・学校の組織としての総合的なマネジメント力の強化
  ・学校運営協議会委員に求められる資質能力の明確化と育成システムの整備
  ・地域の人々や保護者等多様な主体の参画の促進
  ・コミュニティ・スクールの導入に伴う体制面・財政面等の支援
  ・幅広い普及・啓発の推進

(1)コミュニティ・スクールの裾野の拡大
 ○コミュニティ・スクール未指定の教育委員会において、導入していない理由の多くが、学校評議員制度や類似制度があるから、地域連携がうまく行われているからといったコミュニティ・スクールに対する不要感である。
 ○学校支援等の取組や学校評議員、学校関係者評価、その他自治体独自の類似の仕組みは、学校と地域の協働関係・信頼関係の土台となる大切な取組である。学校支援等の取組や学校評議員、類似の仕組みをベースとし段階的にコミュニティ・スクールに発展していくことで、組織的・継続的な体制が構築され、従来の取組も一層充実していく。また、コミュニティ・スクールの機能として学校評価の機能を位置付け、学校運営協議会と学校関係者評価を一体的に推進することは、学校運営の評価・改善サイクルの充実につながる。このように、コミュニティ・スクールの設置促進に当たっては、これまで各学校が培ってきた実践の内容や方法、組織を効果的・効率的に生かしていく視点が必要である。
 ○地域独自の取組も含め、類似の仕組みは様々な形式があり一概に比較することはできないが、類似の仕組みからコミュニティ・スクールに発展することによる主な魅力・メリットは以下のように整理することができる。
  ・事業としての類似の仕組みから、法に基づく学校運営協議会を置くコミュニティ・スクールに発展することで、学校・家庭・地域の組織的・継続的な連携・協働体制の確立が可能となる(学校の人事異動に左右されない学校教育の実現)
  ・学校運営の当事者意識を有した委員の意見が得られることで、学校運営の改善・充実が図られる
  ・学校・家庭・地域において、共通したビジョンをもった取組の展開が可能となり、一方的な支援にとどまらない、主体的・協働的な取組が展開される
  ・コミュニティ・スクールの機能である基本方針の承認を通じて、地域の人々や保護者に対する説明責任の意識が向上するとともに、地域の人々や保護者の理解・協力を得た風通しのよい学校運営が可能となる
  ・コミュニティ・スクールの機能である学校運営や教職員の任用に関する意見を通じて、教職員の意識の向上、学校の組織としての意識や力の向上につながりやすい
  ・類似の仕組みには、地域の人々や保護者の支援のみを求める例が見られるが、コミュニティ・スクールの場合には多様な人材の英知を結集することができるため、学校運営の改善を果たすより確かなPDCAサイクルを確立しやすくなる
  ・学校関係者評価の仕組みを生かしたコミュニティ・スクールにしていくことで、学校・家庭・地域の関係者がともに成果や課題を共有し、取組の改善に生かしていく学校運営のPDCAサイクルが有機的に機能していく

 ○学校や教育委員会が自らコミュニティ・スクールの道を選ぶことが最も大切なことである。ある県では、コミュニティ・スクールの導入に当たって、各学校が学校支援等の取組を通じ、家庭や地域と連携・協働しながら地域に開かれた学校づくりの推進に努めている現状を踏まえ、まずは、コミュニティ・スクールに指定されていない学校が主体的に保護者や地域住民等が参画する協議会を設置し、協議を通じて教育課題を共有し、その課題の解決に向けて一体となって教育に当たる仕組みを設け、段階的にコミュニティ・スクールへの移行につなげている。こうした学校の自主的・自律的な動きを後押ししていくなど、学校や教育委員会の主体的な環境整備を促していくことが必要であり、類似の仕組みを有している地域において、持続可能な仕組みとして、コミュニティ・スクールの設置が進むよう、財政面での支援を行っていくことが有効である。

【推進のための具体的方策】
 ◇国は、コミュニティ・スクールに対する不要感・抵抗感等を指摘する声に対し、同制度の付加価値や成果等について丁寧に説明し理解を促すとともに、以下の取組を推進する。
  ・「学校を核とした地域力強化プラン」を通じた、コミュニティ・スクールと地域本部等の一体的な取組に対する重点的な支援
  ・学校評議員や類似の仕組みからコミュニティ・スクールに段階的に発展していく取組に対する財政的な支援
  ・学校関係者評価委員会を生かしたコミュニティ・スクールに対する財政的な支援
  ・学校運営協議会によらない形で地域の人々や保護者等が学校運営に参画する体制を構築している取組の収集と積極的な発信、段階的な発展プロセスの可視化

(2)学校の組織としての総合的なマネジメント力の強化
 ○コミュニティ・スクールを核として地域とともにある学校づくりを一層推進するためには、各学校が地域の人々や保護者等に対する説明責任を果たし、地域の人々から一層信頼される学校運営を進めていく必要がある。そのためには、これからの学校は、地域との関係を構築し、地域の人々と一体となった取組を進めることができるマネジメント力 を備える必要があり、学校が組織としてのマネジメント力を最大限発揮できるよう、体制整備を図っていく必要がある。
 ○とりわけ、校長は、学校運営の最終責任者として、リーダーシップを発揮するために、まず、子供や地域の実態を踏まえ、学校の教育ビジョンを策定し、教職員のみならず、地域の人々や保護者等に対して、意識や取組の方向性の共有を図ることが重要である。その上で、校長は、子供の育ちを中心に据え、地域の力を学校運営に生かし、地域との連携・協働を推進していく意識と能力を備えていくことが重要である。
 ○また、コミュニティ・スクールを通じ、保護者や地域の力を学校運営に生かしていくことが、子供たちの学びを豊かにし、学校の組織としての力を高め、学校を一層活性化していく基盤となることを、現場の教職員全体の共通認識としていく必要がある。すなわち、学校運営が個人の能力に依存するのではなく、学校が組織として力を発揮していけるよう、教職員の負担軽減の視点を持ちながらも、コミュニティ・スクールに教職員全体が関わるという意識を醸成するとともに、教職員に対する研修内容の充実が求められる。
 ○一方、学校と地域の人々が全体として目標を共有し、役割分担を進めながら、取組にふさわしい組織的な体制を構築していく必要があり、学校組織の中で学校と地域をつなぐ役割を担うコーディネート機能の充実が重要となる。学校内の体制整備の事例として、学校と地域の連携に関する職務を担当する教職員を置く例や校務分掌に位置付ける例、事務職員をコミュニティ・スクールの運営の中心的役割に位置付けている例、社会教育主事有資格者の教員を地域連携担当に位置付けることを積極的に推進している県もある。こうした学校では、地域との協働による授業や体験活動等の調整が円滑に行われ、地域連携に関する情報発信が積極的に行われるなど効果を発揮している。また、教職員がチームとして学校運営に関わるという観点等から、事務職員が学校運営に積極的に関わっていく視点が求められる。

【推進のための具体的方策】
 ◇国は、地域とともにある学校の組織としての総合的なマネジメント力の強化を図るため、以下の取組を一層推進する。
 <教職員の養成・研修段階における方策>
 ◇教員養成課程や教員の研修(初任者研修、十年経験者研修、管理職研修等)において、地域とともにある学校づくりの視点が適切に反映されるよう、大学と教育委員会との連携・協働の下で、学校と地域の連携・協働を円滑に行うための資質を養成していく。また、独立行政法人教員研修センターが実施するマネジメント力向上のための研修プログラムの充実(管理職層、ミドルリーダー層、学校事務職員)を図る。このことについては、現在、教員養成部会において、これからの教育を担う教員の在り方について審議がなされており、今後の検討に当たっては、同部会の審議との接続に留意する必要がある。
 <地域連携を担当する教職員の明確化等教職員体制の整備>
 ◇国は、学校と地域の信頼関係を構築し、地域の力を生かした学校教育の充実や、学校全体の負担軽減、マネジメント力の向上を図るため、学校内において地域との連携の推進を担当する教職員を法令上明確化し、校内体制の整備を図る。この際、社会教育主事有資格者の活用を図ることも検討する。また、事務職員については、学校運営事務に関する専門性を生かし、学校の事務体制を充実させるため、職務内容の見直し等を検討する。これらのことについては、現在、チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会において審議がなされており、今後の検討に当たっては、同部会の審議との接続に留意する必要がある。
 ◇国立教育政策研究所や事務職員の研究・研修団体等と連携し、研修プログラムモデルの開発・普及を行うなど、地域連携を担当する教職員や事務職員の育成を促す。

(3)学校運営協議会委員となる人材の確保と資質の向上
 ○コミュニティ・スクールが実効力をもって機能するためには、学校運営協議会委員として、自らが学校の運営に積極的に参画することによって、学校をよりよいものにしていくという当事者意識と意欲を持ち、学校とともに行動していける人材を確保していく必要がある。
 ○小規模自治体等においては、学校運営協議会委員の確保が難しいという声や、地域の会議に出てくる人はいつも固定化されているといった話が聞かれる。学校運営協議会が活力をもち、持続的に運営されていくためには、協議会委員の流動性を確保しつつ、継続的に人材を確保していく仕組みを構築することが必要である。
 ○学校運営協議会委員としての資質を備えた人材を最初から求めることは難しいが、地域には学校に協力的で、子供たちとの関わりに熱心な人材は少なからず存在する。そうした人材を将来の学校運営協議会の委員候補として熟議や研修等を通じて資質の向上を図ることにより、育てることができる。例えば、学校行事に積極的に参加・協力している者や、地域イベントの実施に携わり子供たちの育ちを見守る者、PTAの役員などを協議会の委員候補としていくことで、人材を確保することなども有効である。
 ○取組が継続的・安定的に発展し活性化していくためには、関係者間で思いや課題意識を共有し、その地域の特色を生かしたコミュニティ・スクールの文化を地域に定着させていくことが重要であり、学校運営協議会委員が、学校関係者や保護者、地域の関係者等とともに学び合い、教育の当事者としての意識を醸成する研修等の機会や熟議の場の充実が必要である。

【推進のための具体的方策】
 ◇国は、学校運営協議会委員に求められる資質能力の明確化と育成システムの整備を促進する。また、各都道府県教育委員会等における学校運営協議会委員等に対する研修機会・内容や熟議の場の充実を促すとともに、必要な支援を行う。

(4)地域の人々や保護者等の多様な人々の参画の促進
 ○コミュニティ・スクールを核に、地域とともにある学校づくりを一層推進していくためには、学校運営協議会委員のみならず、地域の人々や保護者にも、自らが学校の運営に積極的に参画することによって、自分たちの力で学校をよりよいものにしていくという当事者意識を高め、学校と地域の人々や保護者が力を合わせて学校の運営に取り組むことが重要である。
 ○コミュニティ・スクールの導入・運営に当たっての課題認識の一つに「学校運営協議会の存在や活動が保護者・地域にあまり知られていない」といった課題がある。また、学校支援ボランティアなど地域人材による参画も一部の人々に限られており、必ずしも地域全体の動きに発展していない状況もある。地域の一部の人々だけが参画し協力するのではなく、地域全体で子供たちの学びを展開していくために、地域の人々や保護者、関係機関・団体等多様な主体の参画を促進していくとともに、当事者意識の醸成を促していくことが必要である。
 ○例えば、幼児期から中学校卒業程度までの子供たちの育ちや学びを地域ぐるみで見守り、支援するための仕組みを県全体に促進するなど、学校を核として、地域の様々な人材や資源を結びつける動きが各地で広がっている。地域のボランティアや保護者等個人としての関わりにとどまらず、自治会やPTA、おやじの会等の地域の団体や、企業、大学、NPO、地域人材を中心として構成する家庭教育支援チーム 等、地域の多様な主体との連携を深めることにより、地域とともにある学校づくりに対し、参加から参画へ、協力から協働へと、具体的な行動を働きかけていくことが求められる。
 ○また、コミュニティ・スクールの取組は、学校運営の改善のみならず、地域コミュニティを持続的に発展していく観点からも有効である。例えば、コミュニティ・スクールをベースとし、ふるさとの未来を託せる人材の育成を目標に、村役場や農協等の関係機関等との連携を図りながら、村の特産物生産の体験学習や、村の課題を知り探求する学習等を取り入れている事例や、高等学校において、コミュニティ・スクールを基盤に地元自治体との協働関係を築き、地元企業やNPO、町役場等との協働による課題解決型学習を実践し、地域の課題解決や活性化に大きく寄与している事例もある。
 ○地方創生という課題をはじめ、教育委員会・学校と首長部局等の関係者が、地域と地域の将来を担う子供たちの将来像を共有した上で、協働により課題解決の取組を推進していくことで、活力ある学校づくりと地域の活性化を図っていくことも重要である。

【推進のための具体的方策】
 ◇国は、コミュニティ・スクールと一体で、地域本部など学校と地域が協働で教育支援に取り組む仕組みづくりを促進するとともに、学校と地域をつなぐコーディネーターの育成・機能強化を促進する(学校支援地域本部や地域コーディネーターの在り方については第3章参照)。
 ◇また、学校・家庭・地域の関係者を広く集めた地域とともにある学校づくり推進フォーラム等を開催し、普及・啓発を図るとともに、各都道府県教育委員会等において、地域の人々や保護者等の多様な人々の参画を促進するための研修や熟議、フォーラム等に対する支援を行う。
 ◇首長部局等との協働による課題解決学校モデルを構築し、その成果の普及と全国への発信等を行う。

(5)体制面・財政面における支援の充実
 ○既述のとおり、コミュニティ・スクールの導入・運営に当たっての課題認識として、管理職や担当教職員の勤務負担が大きい、委員謝礼や活動費などの資金が十分でないなどの課題が示されている。学校運営協議会の設置に伴い、会議の開催そのものの業務のほか、委員との連絡調整や協議事項等の調整など、運営に係る様々な業務が生じることから、課題を踏まえた適切な支援が求められる。
 ○コミュニティ・スクールの促進に当たり、継続的・安定的な運営を可能とするためには、教職員の勤務負担の軽減も含め、教職員体制の整備などの人材面や財政面での支援の充実を図っていく必要がある。導入の状況には地域差もあることから、とりわけ、未導入の地域を中心とした支援を着実に推進することが必要である。また、継続的・安定的な取組を保障するための財政支援の仕組みが必要である。
 ○学校組織の中で学校と地域の人々をつなぐ役割を担うコーディネート機能として、教職員を地域連携担当として校務分掌に位置づける事例以外にも、地域人材をコーディネーターとして校内に配置する例や、学校支援地域本部の地域コーディネーターを学校運営協議会委員と位置付け、両者の橋渡し役を担うだけでなく、運営の中核も担っている例もある。こうした学校では、地域との協働が円滑に行われるだけでなく、教員が子供と向き合う時間を確保する観点でも有効性を感じており、こうした取組も含め、体制面での支援の充実を図っていく必要がある。平成27年度予算から、学校運営協議会の運営に係る様々な業務を担う地域人材として、CSディレクターの仕組みを創設したところであり、積極的な活用を一層促進する必要がある。
 ○このほか、コミュニティ・スクールの運営をより効果的なものとするためには、学校の創意工夫を生かした様々な取組が可能となるよう、特色ある学校づくりに関する予算や校長裁量予算の拡大等の校長の裁量権を拡大することが重要である。 

【推進のための具体的方策】 
 ◇国は、コミュニティ・スクールの導入に伴う体制面・財政面等の負担解消に向け、以下の取組を推進する。
  ・コミュニティ・スクールの仕組みの導入に伴う教職員の負担を軽減し、子供と向き合う時間を確保するための体制の整備充実(事務の共同実施の促進など事務機能の強化や、コミュニティ・スクール導入に伴う教職員の加配措置等)
  ・コミュニティ・スクールの運営や分野横断的な活動の総合調整など総括的な立場で調整等を行うCSディレクターの配置促進
  ・学校と地域の連携・協働の中核となる地域コーディネーターの配置促進
  ・コミュニティ・スクールの導入等に伴う財政的な措置の充実(コミュニティ・スクール導入を目指す地域における運営体制づくりの支援、コミュニティ・スクールの取組の充実を図るための支援の充実)
  ・高等学校や特別支援学校等の特性を踏まえたコミュニティ・スクールの実証研究に対する支援
  ・学校裁量の拡大のための好事例の普及等(教員公募制等人事面での裁量拡大、使途を特定しない裁量的経費等予算面での学校裁量の拡大)

(6)幅広い普及・啓発の推進
 ○既述のとおり、コミュニティ・スクール未指定の教育委員会において、導入していない理由として、コミュニティ・スクールに対する不要感や、任命権者の人事権が制約される、特定の委員の発言で学校運営が混乱するといった不安感を挙げる声がある。
 ○こうした指摘に対し、コミュニティ・スクールが学校と地域との連携・協働体制を持続可能にする仕組みとして有効な手段であるという意義のみならず、校長がリーダーシップを一層発揮し、特色ある学校づくりを進めていく上でも有効な手段であることなど、その付加価値や成果、運営上の課題に対する工夫等について丁寧に説明し理解を促していく必要がある。
 ○特に、コミュニティ・スクール指定の決め手として「教育委員会からの働きかけ」を指摘する学校は約8割と、教育委員会のスタンス、とりわけ、教育長のスタンスが鍵となる。コミュニティ・スクールは、地域の人々や保護者の参画によって学校の意識・力を高め、組織的・継続的に学校運営の改善等を果たす有効な仕組みであり、子供たちや学校の抱える様々な課題の解決に生きてくる仕組みであるということを、教育長の意識にこそ働きかけていく必要がある。
 ○さらに、コミュニティ・スクールは、地域コミュニティの再生、まちづくりにもつながる取組であり、市民参画の有効なツールとして、首長にも働きかけていくことが求められる。
 ○このほか、コミュニティ・スクールの更なる発展のためには、子供たち、教職員、保護者、地域の変容等の観点から、各校の取組を客観的に評価し、その結果を共有・発信する必要がある。

【推進のための具体的方策】 
 ◇国は、コミュニティ・スクールの普及・啓発を図るため、以下の取組を推進する。
  ・都道府県教育委員会に対し、域内市町村の教育長のための研修と熟議の充実を促すなど、教育長への働きかけの促進
  ・全国都道府県教育委員会連合会や全国市町村教育委員会連合会、全国都市教育長協議会、中核市教育長会、全国町村教育長会、各種校長会・園長会などの関係団体と連携した、コミュニティ・スクールを推進する運動のネットワーク化を促進
  ・関係団体等との連携により首長への働きかけを促進し、総合教育会議の活用を促進
  ・地域とともにある学校づくり推進フォーラム等の開催
  ・各都道府県教育委員会等の開催する推進フォーラム等への財政的支援
  ・コミュニティ・スクール推進員(CSマイスター)の配置充実と未導入地域に対する重点的な支援、各都道府県におけるコミュニティ・スクール普及のための体制構築を支援
  ・コミュニティ・スクールの成果検証や導入に当たっての阻害要因の解消に向けた取組に関する実証的研究を支援

2.都道府県・市町村の役割と推進方策
 ○これまでの提言を踏まえ、今後、各地方公共団体は、全ての学校においてコミュニティ・スクール化を図ることを目指し、一層の拡大・充実が必要との認識に立って、積極的な姿勢で取組を推進していくことが求められる。
 ○そのためには、教育長をはじめとする教育委員会関係者や校長の意識が重要である。地域の人々や保護者の参画を得ることが学校運営の改善、教育改革の実現のための大きな力となるというビジョンと、学校や地域の理解を得るためのリーダーシップの発揮が不可欠である。
 ○コミュニティ・スクールに対する不要感や不安感等の課題認識は、指定により一定程度解消され、その先に新しい学校の姿を見いだすことができる。課題認識を乗り越え、未来に視点を持って一歩を踏み出すことを期待したい。踏み出さなければ、何も変わらない。
 ○コミュニティ・スクールを核に地域とともにある学校づくりを一層推進していくためには、都道府県、市町村における学校教育部局と社会教育部局の連携強化が不可欠であり、両者の連携・協働による取組の推進が必要となるとともに、総合教育会議の活用等を通じた首長部局とのパートナーシップを構築していくことも重要である。
 ○なお、各教育委員会及び校長においては、コミュニティ・スクールの取組が学校運営の改善・充実に生かされ、子供たちの成長につながっていくよう、実効性のある運営に力を尽くすことが必要である。

(1)都道府県の役割と推進方策
 ○都道府県教育委員会(以下、本項目において「都道府県」という。)においては、広域人事など市町村間の調整や小規模市町村に対する支援にその役割を重点化し、市町村の自主性を尊重しつつ、義務教育の質の保証・向上に責任を果たしていくことが求められる。
 ○その前提の上で、都道府県の中には、教育の振興に関する基本計画にコミュニティ・スクールの推進目標を掲げ、県下100%の指定を目指し、域内市町の教育委員会を積極的に支援しているところもある。また、まずは学校と地域との信頼関係の構築から始めるために、学校主体の類似の仕組みを設けつつ、コミュニティ・スクールへの移行を促すなど、段階的な取組を進めているところもある。さらに、域内市町村の教育委員会や学校関係者等を対象とした協議会を開催したり、学校経営の基準として、コミュニティ・スクールの視点を位置付け、新任校長の研修等の充実を図るなど、コミュニティ・スクールの設置を積極的に推進しているところがあるが、そうした取組は一部にとどまっている。
 ○今後、都道府県においては、コミュニティ・スクールをはじめ、地域とともにある学校づくりを一層推進するため、域内市町村の教育長等への研修の充実を図るとともに、「地域とともにある学校づくり推進フォーラム」(仮称)等の開催により、域内市町村の教育委員会や学校・家庭・地域の関係者等に対し、広くコミュニティ・スクール等への理解促進を図ることが求められる。また、学校の管理職等への研修会の企画・実施、マネジメント力をもった管理職・教職員の育成及び配置とその積極的な評価などを推進することが求められる。
 ○さらに、自治体内の学校教育担当者と社会教育担当者との連携を密にしながら、コミュニティ・スクールと地域本部等の一体的な取組を促すとともに、地域コーディネーター等地域関係者と学校運営協議会委員等の研修を合同で開催するなど、関係者がともに学び合い、課題や目標等を共有し、ネットワークを深めることができる機会を充実していくことが求められる。

【推進のための方策】
 ◇コミュニティ・スクールの設置促進についての都道府県教育振興基本計画への位置づけなど教育委員会としてのビジョンの明確化と推進目標の明示
 ◇知事部局と連携・協働した施策の策定・実施
 ◇コミュニティ・スクールと地域本部等の促進とその一体的な推進に向けた自治体内のチームとしての連携・協働体制の強化
 ◇指導主事や社会教育主事の意識の向上と連携強化のための研修と熟議の充実
 ◇都道府県としてのコミュニティ・スクールの推進の在り方等を協議する「コミュニティ・スクール等推進協議会」(仮称)の教育委員会内への設置
  ※学校支援地域本部等に係る推進委員会を活用することが有効
 ◇域内市町村の教育長及び教育委員のための研修と熟議の充実と、学校単位の指定から市町村全域への指定の促進
 ◇域内市町村教育委員会や学校関係者等に対する研修と熟議の充実
 ◇域内市町村におけるコミュニティ・スクールの導入の促進や取組の充実のための財政的な支援
 ◇都道府県立学校におけるコミュニティ・スクールの導入の推進
 ◇域内市町村教育委員会や学校関係者等に対する積極的な普及・啓発
 (域内市町村教育委員会や教職員等の学校関係者、地域関係者等を対象とした「地域とともにある学校づくり推進フォーラム」(仮称)の開催、国の制度等活用説明会の積極的活用など)
 ◇学校運営協議会委員や学校関係者、地域関係者等の研修機会・内容や熟議の場の充実
  ※地域コーディネーター等の研修との合同開催も有効
 ◇教職員のマネジメント力向上等のための研修機会・内容の充実
 (初任者研修、十年経験者研修、事務職員やミドルリーダー等研修における地域との協働に係る講座や熟議等の演習の実施、地域協働に係るマネジメント力の向上のための管理職研修の充実)

(2)市町村の役割と推進方策
 ○子供たちに最も身近なところで教育活動を担っているのは学校であり、市町村である。市町村の教育委員会(特別区を含む。以下、本項目において「市町村」という。)においては、自身の設置している学校の将来像を校長と共有するとともに、保護者・地域との連携・協働が進んでいない学校に対し、コミュニティ・スクールの設置を促し支援することが求められる。地域の人々や保護者に対しても、取組の必要性や成果を広く周知するなど、学校への理解と参画を促す環境づくりが重要である。
 ○また、都道府県と同様、自治体内の学校教育担当者と社会教育担当者との連携を密にしながら、まずは地域住民による学校支援、学校・家庭・地域の協働体制の構築から始め、学校運営への参画に発展していく、あるいは、学校評議員を機能化・活性化し学校運営への参画に発展していくなど、コミュニティ・スクールをはじめ、地域とともにある学校づくりを推進していくことが求められる。
 ○このため、保護者・地域との連携・協働が進んでいない学校においては、国による実践研究の支援を積極的に活用するなどにより、教職員と地域の人々、保護者との熟議を重ね、校内及び地域の協働体制づくりを進めることが求められる。
 ○今後の少子化の更なる進行に伴い、学校統合や小規模校の存続など、活力ある学校づくりを目指した市町村の主体的な検討がなされることとなるが、コミュニティ・スクールを導入し、学校と地域のより密接な協働関係を構築することは、魅力ある学校と地域づくりの推進につながる大きな契機となり得る。また、学校と地域が連携・協働した取組や地域資源を生かした教育活動を進めること等により、地域に誇りを持つ人材の育成を図ることも求められる。
 ○なお、中学校区内の複数の学校が連携した運営体制は、地域とともにある学校の運営体制としてふさわしいものと考えられる。このため、コミュニティ・スクールの推進に当たっては、中学校区を運営単位として捉え、複数の小中学校間の連携・接続に留意した運営体制づくりを進めていくことが期待される。

【推進のための方策】
 ◇コミュニティ・スクールの設置促進についての市町村教育振興基本計画への位置づけなど教育委員会としてのビジョンの明確化と推進目標の明示
 ◇首長部局と連携・協働した施策の策定・実施
 ◇コミュニティ・スクールと地域本部等の促進とその一体的な推進に向けた自治体内のチームとしての連携・協働体制の強化
 ◇指導主事や社会教育主事の意識の向上と連携強化のための研修と熟議の充実
 ◇教職員等の学校関係者、保護者、地域関係者等に対する積極的な普及・啓発(国の制度等活用説明会も活用したフォーラムや研修会等の開催、学校・家庭・地域の協働体制の構築に向けた熟議の場づくりなど)
 ◇コミュニティ・スクール未指定の地域・学校における導入の推進
 (国の支援事業の積極的活用による学校・家庭・地域の協働体制づくりの推進、事務機能の強化など教員の負担軽減も含めた効果的・効率的な校内体制の整備等)
 ◇複数の小中学校間の連携・接続に留意した運営体制づくりの推進
 ◇管理職等のマネジメント力向上のための研修機会・内容の充実
 ◇学校を核とした地域づくりの視点によるコミュニティ・スクールの展開
 (例:地域の魅力を発見する体験活動、地域の課題を知り探求する学習、児童生徒とともに活動する場の提供など)
 ◇学校施設の積極的な開放等による地域の学び・集いの場づくりの推進
 ◇地域人材や保護者等の参画促進、関係機関・団体等の連携・協働の促進
 (自治会、PTA、婦人会、青少年団体、NPO、家庭教育支援チームなど地域組織との連携)
 ◇コミュニティ・スクールとしての取組の充実を図るための、学校裁量で支出できる運営経費の措置

第4章 コミュニティ・スクールと地域における学校との協働体制の効果的な連携・協働の在り方について 

 ○ここまで、第1章では、今後の教育改革や地方創生の動向等や学校と地域の連携・協働の必要性とともに、これからの学校と地域の連携・協働の姿を示した。そして、その理想的な姿を実現していくための組織的・継続的な仕組みとして、第2章では、コミュニティ・スクールの在り方について、第3章では、地域における学校との協働体制の在り方について、それぞれ、今後期待される方向性などについて論じてきた。
 ○本章では、第2章及び第3章で提言したそれぞれの仕組みについて、今後の取組における連携強化や一体的な推進の姿について提言する。
 ○第2章で述べたとおり、コミュニティ・スクールは「地域とともにある学校」へと転換していくために有効な仕組みであり、学校を応援し、地域の実情を踏まえた特色ある学校づくりを推進していく役割を明確化するとともに、その役割を具現化する機能として、地域等による学校支援に関する総合的な企画・立案を行える仕組みとしていくことが提言されている。地域とともにある学校として、より多くの地域の人々が学校運営に参画し、協働による取組を展開していくためにも、学校支援地域本部等の地域における学校との協働体制との連携を強化していくことが有効である。
 ○また、第3章で述べた学校と地域の協働体制については、「地域がきっかけを作ることで、子供たちが学習を進化させることがあり、大人と子供が一緒になって地域課題について語り合える場を創ることが重要」という声もあり、社会教育の実践の場の充実を実現する体制でもある。特に、これから望まれる地域における学校との協働体制(「学校協働地域本部(仮称)」)が、コミュニティ・スクールとも連携・協働することにより、学校教育を含めた子供たちの教育の質を格段に向上させることなども期待される。
 ○このように、子供たちのために、また、地方創生の実現のために、コミュニティ・スクールの機能、「学校協働地域本部(仮称)」の機能のそれぞれを大切にしつつ、両者が相互に補完し高め合う存在として効果的に連携・協働し、両輪となって相乗効果を発揮していくことが必要であり、こうした動きが進むことにより、コミュニティ・スクールと「学校協働地域本部(仮称)」の相互の体制整備が進むことにつながる。
 ○さらに、コミュニティ・スクールや学校協働地域本部(仮称)の推進に当たって重要なことは、学校と地域の特色を生かし、学校と地域がともに考え、地域全体が当事者として参画していくことであり、学校と地域が協働して行う企画運営や活動を大切にしていくことである。
 ○そのための方策としては、例えば、それぞれの活動の企画等の段階から、双方の運営方針や取組計画等を共有したり、互いの取組の充実や重複を避けるための提案をしたり、しっかりと「普段からの情報共有」を行うことが有効である。
 ○また、地域における学校との協働体制において中核となる地域コーディネーターが、学校運営協議会の委員も同時に務めて、地域における学校支援や学校運営に関する協議に参画したり、学校運営協議会の運営の中核を担ったりする一方、学校運営協議会の委員が、地域における学校との協働体制における企画調整担当も同時に務めて、社会教育における地域貢献活動の企画運営やその実施に参画するなど、それぞれの経験や考え方を、お互いの発展のために活かす「人的配置の工夫」も有効である。
 ○また、ある自治体では、市内の全中学校区に青少年の健全育成と地域の教育力の向上を図ることを目的とした会議(地域青少年育成会議)を、市内全校に学校運営協議会を設けた上で、両者が目指す子供像を共有し、両輪となって活動する工夫として、地域青少年育成会議の事務局が学校運営協議会の事務局も兼ねる工夫を行っている。このように、両者の緊密な連携による効果的な運営の観点から、例えば、「学校協働地域本部(仮称)」の事務局と学校運営協議会の事務局を兼ねるようにすることも考えられる。
 ○特に、「学校協働地域本部(仮称)」において中核を担う地域コーディネーターについては、第2章で触れた学校側の窓口である「地域連携の推進を担当する教職員」との連携の強化を図ることが重要である。
 ○また、第1章では「チームとしての学校の在り方の検討」が進められていることについて触れたが、「チーム学校」を支える観点からも、「学校協働地域本部(仮称)」の整備を促進するとともに、地域における学校と連携・協働による取組を総合的に進めていく必要がある。
 ○なお、これらの今後の整備・発展が望まれる様々な体制における効果的な連携・協働を推進する上で重要なのは、「地域でどのような子供を育てていくのか、どのような地域をつくっていくのか」というビジョンであり、それを創り上げていくプロセスである。
 ○これには、コミュニティ・スクールや「学校協働地域本部(仮称)」といった特定の体制における連携・協働の視点だけでなく、そのような体制を包含する「学校と地域」がどのように連携・協働していくか、という大きな視点が欠かせない。
 ○その上で、このような視点に立って、学校と地域がビジョンを共有した上で、協働による取組を積み重ね、大人も子供も学び続ける社会を共に創っていく必要がある。
 ○そして、主体性を持った社会の担い手育成と、あらゆる世代が一体となった地域活性化の両立を目指していくことにより、地域住民の主体的な参画による、子供たちの生きる力の育成と地方創生の実現につなげていく必要がある。

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初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)