コミュニティ・スクールの総合的な推進方策に関する論点(検討の視点)に関する参考資料(3/4)

コミュニティ・スクールの拡大・充実のための推進方策(提言)

1 国における推進方策

~途中省略~

(2)学校の組織としての総合的なマネジメント力の強化
 ○コミュニティ・スクールをはじめ、地域とともにある学校づくりを一層推進していくためには、各学校が地域の人々や保護者等に対する説明責任を果たし、地域の人々から一層信頼される学校運営を進めていく必要がある。
 ○一方、校長をはじめ、教職員は異動していくため、教職員全体にコミュニティ・スクールに対する理解・意識が行き渡らず、学校間に意識の差があるといった指摘があった。実際に、コミュニティ・スクールに指定されている学校における運営上の課題として、「学校運営協議会に対する一般教職員の関心が低い」との回答は約59%と高い状況にある。
 ○地域とともにある学校では、学校内の組織運営を管理することにとどまらず、地域との関係を構築し、地域の人々と一体となった取組を進め、成果を挙げることができる力を学校が備えるべき「マネジメント力」と捉え、このことについて関係者の意識改革を図るとともに、学校が組織としての力を最大限発揮していけるよう、総合的なマネジメント力が強化される体制整備を進めていく必要がある。
 ○とりわけ、学校運営の責任者である管理職には、地域の人々や教職員の声をくみ取った意思決定を行い、具体的な目標設定とその実施状況の評価に基づいて行動する強いリーダーシップが期待される。ある県では、校長の学校経営の基準としてコミュニティ・スクールの視点を位置付け、新任から3年目までの県内小中学の校長にコミュニティ・スクール運営に関する研修への参加を義務づけ、先進校における成果等の共有や学校運営協議会委員との協議を行うなど、地域とともにある学校としてのマネジメント力をもった管理職等の育成を図っている。こうした取組を含め、積極的な取組の広がりが期待される 。
 ○また、コミュニティ・スクールを拡大し、取組を充実していくためには、コミュニティ・スクールが、教職員の意識やチームとしての学校の総合力を高め、学校を一層活性化させるための基盤となることを、現場の教職員全体の共通認識としていく必要がある。すなわち、学校運営が個人の能力に依存するのではなく、学校が組織として力を発揮していけるよう、教職員の負担軽減の視点を持ちながらも、コミュニティ・スクールに教職員全体が関わるという意識を醸成するとともに、教職員に対する研修内容の充実が求められる。
 ○教職大学院では地域とともにある学校づくりを必ず授業で取り扱うものとしており 、例えば、学校と地域との連携をテーマとする実習・課題研究を行う学生の実習校としてコミュニティ・スクールを充てたり、現職教員学生の勤務校における開かれた学校づくりに向けたプラン作成を授業科目として設けたりしているところである。こうした取組を通じて、地域との連携のためのマネジメント力を持つ教員の養成を一層進めていくことが重要であり、教職大学院をはじめ、大学との連携・協働により教員養成段階からそのような意識づけを行っていくことが求められる。
 ○継続的な取組や多くの地域の人々の参画を促していくためには、学校と地域の人々が全体として目標を共有し、役割分担を進めながら、取組にふさわしい組織的な体制を構築していく必要があり、学校組織の中で学校と地域の人々をつなぐ役割を担うコーディネート機能の充実が重要となる。学校内の体制整備の事例として、学校と地域の連携に関する職務を担当する教職員を置く例や校務分掌に位置づける例、事務職員をコミュニティ・スクールの運営の中心的役割に位置付けている例、地域人材をコーディネーターとして校内に配置する例がある 。また、社会教育主事有資格者の教員を地域連携担当に位置付けることを積極的に推進している県もある。こうした学校では、地域との協働による授業や体験活動等の調整が円滑に行われ、地域連携に関する情報の発信が積極的に行われるなど効果を発揮しており、チームとしての学校の力を発揮する観点からも有効である。
 ○その際、教員が子供と向き合う時間を確保する観点や教職員がチームとして学校運営に関わるという観点等から、学校の教員と事務職員等が果たすべき役割の明確化を図った上で、事務職員等が学校運営に積極的に関わっていく視点が求められる。

【推進のための具体的方策】
 ◇国は、地域とともにある学校の組織としての総合的なマネジメント力の強化を図るため、以下の取組を一層推進する。なお、これらの視点については、中央教育審議会における教員養成部会の審議や、チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会の審議に接続していくことが期待される。
<教職員の研修機会・内容の充実>
 ◇独立行政法人教員研修センターが実施するマネジメント力向上のための研修プログラムの充実(管理職層、ミドルリーダー層、学校事務職員)を図る。また、各都道府県教育委員会等が実施する管理職等研修や推進フォーラム等において、地域とともにある学校づくりの視点を位置づけた研修機会の充実を促すとともに、必要な支援を行う。
<教員養成段階における意識づけ>
 ◇教員が地域とともにある学校づくりへの理解を深めるためにも、教員養成課程の「教職実践演習」における地域との連携・協働によるフィールドワーク等の位置づけの明確化や、大学が独自に設定する科目等における地域との連携・協働についての講義等の位置づけの明確化を促進する。
<地域連携を担当する教職員の明確化等教職員体制の整備>
 ◇コミュニティ・スクール未導入地域を中心として、教職員等体制の整備充実のための支援を推進する。
 ◇また、全ての学校において、地域との連携・協働の機能を校務分掌で明確に位置づけ、地域との連携・協働の中核となる教職員の配置を促したり、地域人材を地域連携推進員 として校内に配置するなど、地域とともにある学校としての組織的・継続的な体制強化を促すこととし、そのために必要な制度面の検討も行う。その際、社会教育主事有資格者の活用も促す。
 ◇さらに、学校の教員と事務職員が果たすべき役割・標準職務の明確化を促進するとともに、学校事務の共同実施等を通じて、事務機能の強化を促進する。その際、事務職員の研究・研修団体等と連携し、研修プログラムモデルの開発・普及を行うなど、事務職員の育成を促す。

(3)地域の人々や保護者等多様な主体の参画の促進
 ○コミュニティ・スクールをはじめ、地域とともにある学校づくりを一層推進していくためには、地域の人々や保護者の側にも、自らが学校の運営に積極的に参画することによって、自分たちの力で学校をよりよいものにしていくという当事者意識を高め、学校と地域の人々や保護者が力を合わせて学校の運営に取り組むことが重要である。すなわち、保護者は家庭教育の責任者として、地域の人々は地域教育の担い手として、それぞれの責任があり、当事者として、学校や子供たちがどのような課題を抱えているのかという実態や、地域でどのような子供を育てていくのかというビジョンを共有し、それぞれの持ち場で積極的に関わっていくことが重要である。
 ○例えば、幼児期から中学校卒業程度までの子供たちの育ちや学びを地域ぐるみで見守り、支援するための仕組みを県全体に促進するなど、学校を核として、地域の様々な人材や資源を結びつける動きが各地で広がっている。地域のボランティアや保護者等個人としての関わりにとどまらず、自治会やPTA、おやじの会等の地域の団体や、企業、大学、NPO等、地域の多様な主体との連携を深めることにより、地域とともにある学校づくりに対し、参加から参画へ、協力から協働へと、具体的な行動を働きかけていくことが求められる。
 ○また、中央教育審議会生涯学習分科会「今後の放課後等の教育支援の在り方に関するワーキンググループ」がまとめた提言 では、子供たちの豊かな学びを実現するための様々な方策が示されており、社会総掛かりでの教育を充実するという大きな理念の下、上記提言で示された推進方策も含め、学校・家庭・地域の連携・協働を推進する各種の取組を総合的に展開していくことが求められる。
 ○さらに、コミュニティ・スクールが継続的・安定的に発展し活性化していくためには、関係者間で思いや課題意識を共有し、コミュニティ・スクールの文化を地域に定着させていくことが重要であり、学校関係者や保護者、地域の関係者がともに学び合い、教育の当事者としての意識を醸成する研修等の機会や熟議の場の充実が求められる。
 ○このほか、地域の人々が日常的に学校に関わる状態をつくるという視点から、様々な地域で、学校内に、地域交流室やコミュニティハウス、ふれあいサロンといった地域やNPOが運営する公設民営的な空間を設ける動きもある。学校を地域活動の「場」とすることで、情報と人が集まり、そこから学校への参画が広がることも期待されることから、既存の学校施設において、学校と地域が共用できるスペースを設けたり、学校施設と他の公共施設等とを複合化することも有効な方策である。
 ○なお、多様な主体の学校運営への参画を促進していく際、より実効性あるものとなるよう、網羅的・総花的な取組とするのではなく、学校が伸ばそうとする特色や解決を目指す課題に応じて精選するなど、取組の重点化を図っていく視点も求められる。そのためにも、目指すべきビジョンの共有化が重要である。

【推進のための具体的方策】
 ◇国は、学校・家庭・地域の関係者を広く集めた地域とともにある学校づくりフォーラム等を開催し、普及・啓発を図るとともに、先進的な取組事例や成果等を積極的に収集・分析し、発信する。また、各都道府県教育委員会等における学校の教職員や学校運営協議会委員、地域コーディネーター等の関係者による研修機会・内容の充実を促すとともに、必要な支援を行う。
 ◇コミュニティ・スクールと一体で、学校支援地域本部など学校・家庭・地域が協働で教育支援に取り組む仕組みづくりを促進するとともに、学校と地域をつなぐコーディネーターの育成・機能強化を図る。また、学校・家庭・地域の連携協働の中核となる人材育成プログラムを開発する。
 ◇既存の学校施設において、学校と地域が共用できるスペースを設けたり、学校施設と他の公共施設を複合化する取組を促すとともに、必要な支援を行う。

(4)協働による学校を核とした地域づくりの促進
 ○1で述べたとおり、学校を取り巻く環境は複雑化・困難化しているとともに、子供たちを取り巻く地域や家庭の状況も大きな課題に直面している。
 ○このような困難な状況に直面した時こそ、学校は地域の人々や保護者と直面している課題を共有し、力を結集して課題解決に取り組んでいくことが重要であり、学校運営協議会を通じ、関係者が課題意識を共有した上で、地域でどのように解決していくか熟議を重ね、学校・家庭・地域の協働により課題解決に向けた取組を推進していくことが求められる。
 ○このため、コミュニティ・スクールをはじめ、学校・家庭・地域の協働による取組の発展の形として、地域のボランティアや保護者等個人としての連携・協働にとどまらず、専門的な機関や企業・団体、大学等、多様な主体が参画することにより、学校や地域等の抱える課題の解決に向けた取組をより効果的なものとすることが重要である。また、首長部局等との協働は、これからの教育改革の大きな柱となるものであり、新たな教育委員会制度において設けられる総合教育会議を活用しつつ、教育委員会と首長部局との協働による課題解決の取組を推進していくことが期待される。
<教育とまちづくり部局等との連携・協働>
 ○人口減少克服・地方創生を成し遂げていくことが喫緊の課題となっている中、学校を地域コミュニティの核として、子供との関わりの中で、大人も学びを深め、地域の力を高めていく動きをつくっていくことが求められている。
 ○具体例として、コミュニティ・スクールをベースとし、ふるさとの未来を託せる人材の育成を目標に、学校と地域が協議を重ね、村役場や農協等の関係機関等との連携を図りながら、村の特産物生産の体験学習や、村の課題を知り探求する学習等を取り入れている事例がある。また、子供たちが夢と希望を抱けるまちを目指して、学校の代表や保護者のほか、町役場や農協、漁協、森林組合、商工会等の各種団体等が参画した協議会を設け、地域の愛着を育む取組や子供の想いを実現する取組、農村つながり体験等の取組を展開している事例もある 。
 ○さらに、高等学校において、学校運営協議会を基盤に地元自治体との協働関係を築き、地元企業やNPO、町役場等との協働による課題解決型学習「自立創造型課題解決学習プログラム」を実践し、地域の課題解決や活性化に大きく寄与している事例もある。中には、島ぐるみで高校の魅力化を果たすことで、全国から多彩な意欲・能力のある生徒が集まり、入学希望者増、ひいては、人口増を実現している事例もある。
 ○このような事例やまち・ひと・しごと創生総合戦略等を踏まえると、人口減少等による地域コミュニティの衰退という待ったなしの課題に対して、教育委員会・学校と首長部局のまちづくりや商工労働部局等の関係者が、地域と地域の将来を担う子供たちの将来像を共有した上で、協働により、地域の愛着を育む学習や地域課題解決型の実践的なキャリア教育を企画・実施していくことなどにより、活力ある学校づくりと地域の活性化を図っていくことが重要である。その際、小中学校における取組にとどまらず、高等学校においても、地元自治体や地元企業・団体等とのつながりを深め、地域課題の解決に貢献する取組を促進することで、小中学校で育まれた地域への愛着や興味・関心を更に発展させ、地域を担う人材へと成長していくことが期待される。
<教育と福祉部局等との連携・協働> 
 ○具体例として、コミュニティ・スクールをベースとし、不登校の課題について学校と地域が協議を重ね、福祉部局やスクールソーシャルワーカー等との連携を図りながら、不登校の子供の居場所づくりが進められてきた事例がある。また、生徒指導上の課題の解決のために、スクールソーシャルワーカーが中心になりながら、医療機関、児童相談所、警察、要保護児童対策地域協議会など、地域を巻き込んだ支援を展開している取組や、家庭教育支援チームによる訪問型アウトリーチ支援などの支援を届けていく取組が広がっており、そうした取組とコミュニティ・スクールとの連携も期待される。さらに、学校を子供の貧困対策のプラットフォームと位置付け 、福祉関連機関等とも連携し、総合的な対策を推進することも期待されている。
 ○このため、例えば、学校が抱える課題や推進する目標に応じて、学校運営協議会に、福祉部局等や関係機関の職員、スクールソーシャルワーカー、家庭教育支援チーム等の関係者の参画を得ることで、より実践的な意見を得るとともに、各々の役割分担を意識した形で課題解決に向けた連携・協働の道筋を拓くことで、総合的な支援につなげることが期待される。なお、個別具体的な課題について協議する際には、児童生徒等のプライバシーに十分配慮することが求められる。

【推進のための具体的方策】
 ◇国は、学校を核とした地域づくりを促進していくという視点をもって、コミュニティ・スクールの取組内容の充実を促すとともに、必要な支援を行う。また、学校を核として地域づくりや地域の活性化を実現しているコミュニティ・スクールの好事例を収集し、全国への発信等を行う。
 ◇首長部局等との協働による課題解決学校モデルを構築するための実証研究等を行い、その成果の普及と全国への発信等を行う。その際、多様な機関・団体等との協働による課題別・地域別の取組事例の収集・普及を図る。
 ◇学校を核とした地域づくりに先進的に取り組む実践家等を「学校・地域協働コンシェルジュ(仮称)」として派遣する仕組みの構築を検討する。

(5)コミュニティ・スクール等の多様性と裾野の拡大
 ○子供たちの豊かな育ちを保障するためには、全ての学校が、地域の人々と目標を共有した上で、地域と一体となって子どもたちを育む地域とともにある学校となることが重要であり、地域の人々や保護者等が学校運営に参画し、地域との連携・協働体制を構築するコミュニティ・スクールに発展していくことが期待される。
 ○一方、法律に基づく学校運営協議会を置くコミュニティ・スクールのほかにも、学校支援地域本部や学校評議員、学校関係者評価など、地域の人々による学校運営への関わり方には様々な形がある中、類似の仕組みの導入により、コミュニティ・スクールへの不要感を指摘する声もある。また、独自に類似の仕組みを取り入れている地域においては、学校・家庭・地域の協働関係・信頼関係の土台ができてきている面もある。このことから、学校や地域の実情等に応じて、地域の人々による学校運営への関わり方には様々な形があるとの前提に立ち、多様性をもったコミュニティ・スクールの体制構築を進めるべきとの考えもある。
 ○地域独自の取組も含め、類似の仕組みは様々な形式があり一概に比較することはできないが、類似の仕組みからコミュニティ・スクールに発展することによる主な魅力・メリットは以下のように整理することができる。
  ・事業としての類似の仕組みから、法に基づく学校運営協議会を置くコミュニティ・スクールに発展することで、学校・家庭・地域の組織的・継続的な連携・協働体制の確立が可能となる(学校の人事異動に左右されない学校教育の実現)
  ・学校運営の当事者として、より重い責任を有する学校運営協議会委員の意見が学校運営に反映されることで学校運営の改善・充実が図られる
  ・学校・家庭・地域において、共通したビジョンをもった取組の展開が可能となる(一方的な支援にとどまらない、主体的・能動的な取組の展開)
  ・コミュニティ・スクールの機能である基本方針の承認を通じて、地域の人々や保護者に対する説明責任の意識が向上するとともに、地域の人々や保護者の理解・協力を得た風通しのよい学校運営が可能となる
  ・コミュニティ・スクールの機能である学校運営や教職員の任用に関する意見の申し出を通じて、教職員の意識の向上、学校の組織としての意識や力の向上につながりやすい
  ・類似の仕組みには、地域の人々や保護者の支援のみを求める例が見られるが、コミュニティ・スクールの場合には多様な人材の英知を結集することができるため、学校運営の改善を果たすより確かなPDCAサイクルを確立しやすくなる
 ○これらの状況も踏まえ、コミュニティ・スクールの一層の推進に当たっては、学校運営協議会制度によらずに地域の人々や保護者等が学校運営に参画する仕組みを構築している取組についても、一つの段階的な姿として捉え推進していくことが重要である。そして、取組の充実・発展を促す中で、地域における成熟を踏まえつつ、最終的な姿として、学校運営協議会を置くコミュニティ・スクールへの移行を促進することが重要である。
 ○なお、多様性の検討に当たっては、学校運営協議会の機能として、学校運営の基本方針の承認や学校運営に関する意見等の機能を有していることや、教育委員会が学校運営協議会を置く学校を指定していること等を踏まえた整理とする。
<段階的な姿のイメージ>
 ・地域の人々や保護者等が学校運営や教育活動について協議し意見を述べる会議体※が設置されている学校。
 ※教育委員会の規則や教育委員会の方針等に基づき学校が作成する要綱等により設置されている会議体で、校長の求めに応じた意見聴取にとどまらず、主体的に学校運営や教育活動について協議し、意見を述べることができる会議体(任用等に関する意見を主活動として位置づけていない協議会も含む。)
(例)・学校評議員の発展型(会議体を形成し、学校運営全般に参画等)
   ・学校支援地域本部の発展型(会議体を形成し、学校支援にとどまらず、学校運営全般にも参画等)
   ・学校関係者評価委員会の発展型(評価にとどまらず、学校運営全般にも参画等)

【推進のための具体的方策】
 ◇国は、コミュニティ・スクールに対する不要感・抵抗感等を指摘する声に対し、同制度の付加価値や成果等について丁寧に説明し理解を促すとともに、以下の取組を推進する。
  ・類似の取組からコミュニティ・スクールに移行する際の財政支援
  ・学校運営協議会によらない形で地域の人々や保護者等が学校運営に参画する体制を構築しているケースの把握・整理
  ・コミュニティ・スクール設置の手引きの改訂・普及(再掲)

(6)幅広い普及・啓発と戦略的な広報
 ○「コミュニティ・スクールの課題」にも挙げたとおり、コミュニティ・スクールの導入に対する強い警戒感・抵抗感により、導入に消極的である都道府県・市町村が存在する。このため、コミュニティ・スクールの促進に当たっては、制度の意義や成果等に対する理解を促すとともに、これらの課題意識を解消し、不要感を必要感に変えるための効果的な働きかけ、戦略的な広報に力を入れていく必要がある。
 ○特に、コミュニティ・スクール指定の決め手として「教育委員会からの働きかけ」を指摘する学校は約8割と、教育委員会のスタンス、とりわけ、教育長のスタンスが鍵となる。コミュニティ・スクールは、地域の人々や保護者の参画によって、組織としての学校の意識・力を高め、学校運営の改善等を果たす有効な仕組みであること、学力の向上や不登校の減少、家庭における学習・生活習慣の定着など様々な課題の解決に生きてくる仕組みであることを、教育長の意識にこそ働きかけていく必要がある。
 ○さらに、町村の深刻な課題は、人口減少により地域コミュニティが成立しなくなりつつあることであり、そうした地域でコミュニティ・スクールを導入することで、コミュニティの再生、地域おこしにもつながることから、市民参画の有効なツールとして、首長にも働きかけ、首長と教育委員会が一緒に進めていくという視点が求められる。

【推進のための具体的方策】
 ◇国は、都道府県教育委員会に対し、域内市町村の教育長のための研修の充実を促すなど、教育長への働きかけを促進する。
 ◇また、全国コミュニティ・スクール連絡協議会に加入している教育長等を「CS応援団」と位置付け、隣接市町村教育長等への積極的な働きかけを要請するとともに、全国都道府県教育委員会連合会や全国市町村教育委員会連合会、全国都市教育長協議会、中核市教育長会、全国町村教育長会などの関係団体と連携し、コミュニティ・スクールを推進する運動のネットワーク化を促進する。
 ◇学校を核とした地域づくりの視点からも、関係団体等との連携により首長への働きかけを促進するとともに、総合教育会議の活用を積極的に促す。
 ◇このほか、学校支援地域本部や放課後子供教室の取組など、既に学校・家庭・地域の協働体制を構築している学校に対し、コミュニティ・スクールへの発展の必要性や効果等を発信するため、以下の取組を推進する。
  ・学校教育・社会教育の組織横断による全国フォーラム等の開催
  ・各都道府県教育委員会等の開催する推進フォーラム等への財政的支援(組織横断による開催を促進)
  ・CSマイスターによるコミュニティ・スクール未導入地域に対する伴走型支援

(7)魅力(インセンティブ)の提供
 ○コミュニティ・スクールの導入に際しては、会議の開催そのものの業務のほか、学校運営協議会委員との連絡調整や協議事項等の調整など、運営に係る様々な業務が生じる。同制度を導入することによって、教職員が子供と向き合う時間が増えたという成果認識の声がある一方、管理職や教職員の勤務負担が増えるという課題認識も多く、導入への足かせになっている。また、活動費や委員謝礼の支弁が困難だとの課題認識もある。
 ○コミュニティ・スクールの促進に当たっては、教職員の勤務負担を軽減し、継続的・安定的な運営を可能とするためのインセンティブが必要であり、教職員等体制の整備などの人材面や財政面での支援を講じていく必要がある。導入の状況には地域差もあることから、とりわけ、未導入の地域を中心とした支援を着実に推進するとともに、導入して間もない地域についても支援策を講じていくことが必要である。
 ○また、具体例として、学校運営協議会の運営に係る様々な業務を専ら担う地域人材(当該事例では「CSコーディネーター」という名称)を置くことで、学校の教職員の負担を軽減し、持続可能な体制づくりを進めている事例もある。人材面での支援策の一環として、こうした人材の配置も検討していく必要がある。
 ○このほか、コミュニティ・スクールを円滑に運営し継続性を確保するため、学校運営協議会の下に、協議事項の調整や議事録の作成等の運営に係る業務を担う運営部会を設けたり、一部の委員に負担が生じないよう、委員全員で業務を分担したりするといった工夫も考えられる。

【推進のための具体的方策】
 ◇国は、コミュニティ・スクールの仕組みの導入に伴う体制面・財政面等の負担の解消に向け、以下の取組を推進する。
  ・教員が子供に向き合う時間を確保するための教職員等体制の整備充実
(事務の共同実施の促進など事務機能の強化や、コミュニティ・スクールへの教員や事務職員の加配措置等)(再掲)
 ・地域との連携・協働の中核となる人材の配置(教職員の校務分掌として位置づけることや地域人材の活用を促進するための仕組みの整備、社会教育主事有資格者の積極的な活用)(再掲)
 ・コミュニティ・スクールの運営や学校種間の調整、分野横断的な活動の総合調整など統括的な立場で調整等を行うCSディレクターの配置促進
 ・コミュニティ・スクールの継続的・安定的発展を支援するための財政的な措置(コミュニティ・スクール導入を目指す地域における運営体制づくりの支援、コミュニティ・スクールの取組の充実を図るための支援の充実)
 ・学校支援地域本部や放課後子供教室などの取組に対する支援の充実
 ・学校裁量の拡大のための好事例の普及等(教員公募制等人事面での裁量拡大、使途を特定しない裁量的経費等予算面での学校裁量の拡大)

(8)コミュニティ・スクール推進実行プラン(仮称)の策定
 ○現在、第2期教育振興基本計画に基づき、コミュニティ・スクールを全公立小中学校の1割に拡大するという推進目標の下、コミュニティ・スクールの設置が促進されている。平成26年4月現在、全国1,919校(4道県187市区町村の教育委員会)がコミュニティ・スクールに指定され、公立小中学校では、1,805校が指定(全公立小中学校の約6%、推進目標に対する進捗率は約60%)されており、全国的な取組は着実に進んでいるものの、取組状況に地域差が見られるなど、必ずしも十分とは言えない状況にある。
 ○今後、教育再生実行会議の提言等も踏まえ、全ての学校が、地域とともにある学校として、コミュニティ・スクール化を図っていくことを目指すべきであり、国は、全校での実施に向け、3,000校のその先を見据えたビジョン等を示す必要がある。その際、学校を核とした地域活性化の観点からも、高等学校等における地域との協働の促進が重要であること、多様性をもったコミュニティ・スクールの体制構築を進めることが重要であること等も踏まえたものとすべきである。

【推進のための具体的方策】
 ◇国は、3,000校の推進目標を着実に達成するとともに、その先のビジョンと併せ、コミュニティ・スクールの促進のための制度面・施策面・財政面等の具体策やスケジュールを示したアクションプラン「コミュニティ・スクール推進実行プラン(仮称)」を策定・公表し、強力に推進する。

2 都道府県・市町村の役割と推進方策
 ~教育長や校長の力強いリーダーシップの発揮を~ 
 ○コミュニティ・スクールは、学校・家庭・地域の協働により、学校の組織としての意識や力を高め、学校運営の改善・充実や地域コミュニティの活性化等につながるものであり、今後、各地方公共団体は、全ての学校においてコミュニティ・スクール化を図ることを目指し、一層の拡大・充実が必要との認識に立って、積極的な姿勢で取組を推進していくことが求められる。
 ○そのためには、教育長をはじめとする教育委員会関係者や学校の管理職こそが、コミュニティ・スクールとして地域の参画を得ることが学校運営の改善、教育改革の実現のための大きな力となるというビジョンを自らの言葉で語り、学校や地域の理解を得るためにリーダーシップを発揮することを期待したい。コミュニティ・スクールに対する不要感や不安感等の課題認識は、指定により一定程度解消され、その先に新しい学校の姿を見いだすことができる。課題認識を乗り越え、未来に視点を持って一歩を踏み出すことを期待したい。その際、総合教育会議の活用等を通じ、教育委員会と首長とのパートナーシップにより、学校を核とした地域づくりを推進していくことも期待したい。
 ○なお、各教育委員会及び校長においては、コミュニティ・スクールの取組が学校運営の改善・充実に生かされ、子供たちの成長につながっていくよう、実効性のある運営に力を尽くすことが必要である。

(1)都道府県の役割と推進方策
 ○都道府県教育委員会(以下、本項目において「都道府県」という。)においては、広域人事など市町村間の調整や小規模市町村に対する支援にその役割を重点化し、市町村の自主性を尊重しつつ、義務教育の質の保証・向上に責任を果たしていくことが求められる。
 ○その前提の上で、都道府県の中には、教育の振興に関する基本計画にコミュニティ・スクールの推進目標を掲げ、県下100%の指定を目指し、域内市町の教育委員会を積極的に支援しているところもある。また、域内市町村の教育委員会や学校関係者等を対象とした協議会を開催したり、学校経営の基準として、コミュニティ・スクールの視点を位置付け、新任校長の研修等の充実を図るなど、コミュニティ・スクールの設置を積極的に推進しているところがあるが、そうした取組は一部にとどまっている。
 ○一方、学校支援地域本部や放課後子供教室等の取組を推進する「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」では、都道府県等(政令市・中核市を含む。)に対し、域内の教育支援活動等の総合的な在り方の検討を行うための推進委員会の設置や、コーディネーター等の資質向上や情報交換等を図るための研修等を行い、教育支援活動等の総合的な推進を図ることを求めている。このことから、都道府県においては、コーディネーターや教員、行政職員を対象にコーディネートのスキルアップ研修を実施したり、企業・大学、NPO等と連携した「教育支援コーディネーター・フォーラム」を開催したりするなど、積極的な研修が行われている。
 ○今後、都道府県においては、コミュニティ・スクールをはじめ、地域とともにある学校づくりを一層推進するため、域内市町村の教育長等への研修の充実を図るとともに、「地域とともにある学校づくり推進フォーラム」(仮称)等の開催により、域内市町村の教育委員会や学校・家庭・地域の関係者等に対し、広くコミュニティ・スクール等への理解促進を図ることが求められる。また、学校の管理職等への研修会の企画・実施、マネジメント力をもった管理職・教職員の育成及び配置とその積極的な評価などを推進することが求められる。
 ○さらに、自治体内の学校教育担当者と社会教育担当者との連携を密にしながら、コミュニティ・スクールと学校支援地域本部等の一体的な取組を促すとともに、地域コーディネーター等地域関係者と学校運営協議会委員等の研修を合同で開催するなど、関係者がともに学び合い、課題や目標等を共有し、ネットワークを深めることができる機会を充実していくことが求められる。 

【推進のための方策】
 ◇コミュニティ・スクールと学校支援地域本部等の促進とその一体的な推進に向けた自治体内のチームとしての連携・協働体制の強化(指導主事と社会教育主事等の意識の向上と連携の強化)
 ◇都道府県としてのコミュニティ・スクールの推進の在り方等を協議する「コミュニティ・スクール等推進協議会」(仮称)の教育委員会内への設置
 ※学校支援地域本部等に係る推進委員会を活用することが有効
 ◇域内市町村の教育長のための研修の充実と、学校単位の指定から市町村全域への指定の促進
 ◇域内市町村におけるコミュニティ・スクールの導入の促進や取組の充実のための財政的な支援
 ◇都道府県立学校におけるコミュニティ・スクールの導入の推進
 ◇域内市町村教育委員会や学校関係者等に対する積極的な普及・啓発
 (域内市町村教育委員会や教職員等の学校関係者、地域関係者等を対象とした「地域とともにある学校づくり推進フォーラム」(仮称)の開催、国の制度等活用説明会の積極的活用など)
 ◇学校運営協議会委員や学校関係者、地域関係者等の研修機会・内容の充実
 ※地域コーディネーター等の研修との合同開催も有効
 ◇管理職等のマネジメント力向上のための研修機会・内容の充実

(2)市町村の役割と推進方策
 ○子供たちに最も身近なところで教育活動を担っているのは学校であり、市町村である。市町村の教育委員会(特別区を含む。以下、本項目において「市町村」という。)においては、自身の設置している学校の将来像を校長と共有するとともに、保護者・地域との連携・協働が進んでいない学校に対し、コミュニティ・スクールの設置を促し支援することが求められる。地域の人々や保護者に対しても、取組の必要性や成果を広く周知するなど、学校への理解と参画を促す環境づくりが重要である。
 ○また、都道府県と同様、自治体内の学校教育担当者と社会教育担当者との連携を密にしながら、まずは学校支援地域本部や放課後子供教室等、学校・家庭・地域の協働体制の構築から始め、学校運営への参画に発展していく、あるいは、学校評議員を機能化・活性化し学校運営への参画に発展していくなど、コミュニティ・スクールをはじめ、地域とともにある学校づくりを推進していくことが求められる。
 ○このため、保護者・地域との連携・協働が進んでいない学校においては、国による実践研究の支援を積極的に活用するなどにより、教職員と地域の人々、保護者との熟議を重ね、校内及び地域の協働体制づくりを進めることが求められる。
 ○今後の少子化の更なる進行に伴い、学校統合や小規模校の存続など、活力ある学校づくりを目指した市町村の主体的な検討がなされることとなるが、コミュニティ・スクールを導入し、学校と地域のより密接な協働関係を構築することは、魅力ある学校と地域づくりの推進につながる大きな契機となり得る。また、学校と地域が連携・協働した取組や地域資源を生かした教育活動を進めること等により、地域に誇りを持つ人材の育成を図ることも求められる。
 ○なお、中学校区内の複数の学校が連携した運営体制は、地域とともにある学校の運営体制としてふさわしいものと考えられる。このため、コミュニティ・スクールの推進に当たっては、中学校区を運営単位として捉え、複数の小中学校間の連携・接続に留意した運営体制づくりを進めていくことが期待される。

【推進のための方策】
 ◇コミュニティ・スクールと学校支援地域本部等の促進とその一体的な推進に向けた自治体内のチームとしての連携・協働体制の強化(指導主事と社会教育主事等の意識の向上と連携の強化)
 ◇教職員等の学校関係者、保護者、地域関係者等に対する積極的な普及・啓発(国の制度等活用説明会も活用したフォーラムや研修会等の開催、学校・家庭・地域の協働体制の構築に向けた熟議の場づくりなど)
 ◇コミュニティ・スクール未指定の地域・学校における導入の推進
(国の支援事業の積極的活用による学校・家庭・地域の協働体制づくりの推進、事務機能の強化など教員の負担軽減も含めた効果的・効率的な校内体制の整備等)
 ◇複数の小中学校間の連携・接続に留意した運営体制づくりの推進
 ◇管理職等のマネジメント力向上のための研修機会・内容の充実
 ◇学校を核とした地域づくりの視点によるコミュニティ・スクールの展開
(例:地域の魅力を発見する体験活動、地域の課題を知り探求する学習、児童生徒とともに活動する場の提供など)
 ◇学校施設の積極的な開放等による地域の学び・集いの場づくりの推進
 ◇地域人材や保護者等の参画促進、関係機関・団体等の連携・協働の促進
(自治会、PTA、婦人会、青少年団体、NPOなど地域組織との連携)
 ◇コミュニティ・スクールとしての取組の充実を図るための、学校裁量で支出できる運営経費の措置

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初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付 運営支援企画係

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付 運営支援企画係)