資料2-1 これまでの主な意見と検討の方向性(案)

1 時代の変化に伴う学校と地域の在り方について
(1)教育改革、地方創生等の動向から見る学校と地域の連携・協働の必要性
<検討の方向性>
 ○現在、自立した人間として他者と協働しながら、新たな価値を生み出していくために必要な資質・能力を育成する観点から、教育課程の見直しが議論されているとともに、新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革が進められている状況。このほか、小中一貫教育の制度改革、教育委員会制度改革、チームとしての学校の在り方の検討など、様々な改革が進展。
 ○また、地方創生の観点から、これからの子供たちには、地域への愛着や誇り、地域課題を解決していく力が求められている状況。
 ○一方、地域社会のつながりや支え合いの希薄化、家庭の孤立化、子供の貧困など様々な課題に直面し、地域の教育力が弱体化。このような中、学校に様々な対応が求められており、学校が抱える課題は複雑化・困難化している状況。
 ○子供たちが身に付けるべき生きる力は、学校だけで育めるものではなく、多様な人々と関わり、様々な経験を重ねていく中で育まれるもの。学校は地域コミュニティの拠点として、地域の将来の担い手となる人材を育成する役割を果たす一方、地域は実生活・実社会について体験的・探究的に学習できる場として、子供たちの学びを豊かにしていく役割を果たす必要があり、学校との協働による取組を通じ、地域の教育力を再生するとともに、地域住民の学びを起点とした地域振興・再生など、社会的な教育基盤を構築していく必要。このため、学校と地域は相互補完的に連携・協働していく必要。

■作業部会等におけるこれまでの主な御意見
<教育改革、地方創生等との関係>
(学校からの視点)
 ・地域創生の観点からも、学校では地域に目を向けた教育、地域で生きていく確信を持つ教育・学習を行うことが必要であり、地域は課題解決型学習やアクティブ・ラーニングの場となる。
 ・共助の再生について考える際、大学入試改革、人口流出等の課題は待ったなしであることから、高校生、特に普通科の進学校に進む子を積極的に地域に出すべきである。その際、首長部局と教育委員会、高校との連携が鍵になる。高校生を地域に出すことで、地域に対する当事者意識が高まり、地域のために専門性を身につけようと大学へ進学する。
 ・地方創生という流れの中で、今こそ、学校を核とした地域づくりを進めていくチャンス。総合教育会議もできて首長と話すこともできる。首長がつくるビジョンや戦略の中に、学校を核とした地域づくりの視点も入れていく必要がある。
(地域からの視点)
 ・時代の激流、教育改革のうねりの中で、一方的に押しつけられるのではなく、自ら参加し、理解し、自分たちのものとして改革していくしかない。形骸化していかないよう住民同士が模索していくことが必要であり、常にスクラップ&ビルドしていくことが重要である。
 ・社会教育によって、地域に戻ってきた若者の受皿を作っていく必要がある。
 ・子供たちが、地域に関わりながら学ぶために、地域の人たちに学校に入ってきてもらう、あるいは学校から地域に出掛けていって学ぶという機会を増やし、地域の当事者、社会の当事者として、学んだことを将来地域に戻していく、そういう仕組みを成熟させながら、地域全体、社会全体でその必要性について合意形成していくべき
 ・地域の側から子供の個人的な問題が見えてきた時、学校と意思疎通ができていないと、解決に生かすことができない。学校側が本当に困っていると言い出さない限り、ソーシャルワーカーを入れたネットワークというような画期的な仕組みにはたどり着けない。日々子供たちが抱えている課題をいち早く地域全体で何とかしていける状況を作らなければならない
<社会情勢の変化等との関係>
(学校からの視点)
 ・学校を巡る課題が複雑化・困難化している中で、今後の学校運営を考えた時、それらの課題を学校だけで解決するのは困難であり、保護者や地域住民の参画を得て、地域とともにある学校づくりを積極的に進めていくことが必要である。
 ・学校は地域の拠点として、子どものためという認識をもって、コミュニティの担い手を育成する場としての役割を果たす必要がある。
 ・人生の中で学校教育が果たす役割そのもの、生涯学習社会における学校の役割が抜本的に変わってきている。親や地域住民が育っていくこと、卒業してからも学び続け、育ち続けられる子供を育てていくことが学校の役割となってきている。それを進める装置がコミュニティ・スクール
(地域からの視点)
 ・将来的には10 人に1人が要介護となる中、地域社会でどう支えるか、また、要介護の人よりも子供の数が少なくなってくる状況下で、地域コミュニティをどう強くしていくかが課題となる。相対的貧困率が高いといった問題もある中で、子供を育てていく基盤をどうつくるか。地域基盤、生活基盤をしっかりと構築しつつ、将来を想像できる子供たちを育てていかなければならない
 ・学校教育の中で敢えて社会教育を拡充し、大人の学びの場になるように押し出していくべきなのか。弱くなってきている社会教育そのものを強めていくことが今後の方向性ではないか。
 ・かつて地域は学校がなくても次世代を育成する機能をもっていたが、現在は地域の次世代育成機能が弱くなってきており、学校と地域の連携による地域教育力の向上が叫ばれている。共助の考え方の再生をしないと新たな協働はない。それができないと、学校には負担が大きく、公的機関に過度な負担がかかってきてアンバランスとなる。 

(2)これからの学校と地域の連携・協働の在り方
<検討の方向性>
 ○これからの子供たちが、厳しい挑戦の時代を乗り越え、他者と協働しながら未来を創り出し、課題を解決するための生きる力を育むためにも、学校と地域は、お互いの役割を認識しつつ、対等な協働関係を築くことが重要であり、パートナーとして相互に連携・協働していくことが必要であり、地域住民等が学校運営に参画すること等を通じ、子供の教育に対する責任を社会的に分担し、社会総掛かりでの教育の実現を図っていくことが必要。
 ○また、社会総掛かりでの教育の実現を図る上で、全ての学校が、地域の人々と目標を共有し、地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」となることを目指す必要。
 ○また、地域とともにある学校づくりを進めるに当たっては、学校を核とした協働の取組を通じて、地域への愛着や誇りを育み、地域の将来を担う人材の育成を図るとともに、地域の人々のつながりを深め、コミュニティの形成・活性化を図る「学校を核とした地域づくり」を推進していくことが必要。
 ○教育の担い手となることが社会的な文化となっていくためにも、地域の一部の人々だけが参画し協力するのではなく、地域全体で子供たちの学びを展開していく環境を整えていく必要であり、「子供も大人も育ち合う教育支援体制の構築」が必要。
 ○コミュニティ・スクールは、育てたい子供像、目指すべき教育のビジョンを保護者や地域と共有するための有効なツールであり、学校と地域の協働の基盤となるもの。また、学校支援地域本部は、学校の教育活動を組織的に支援する仕組みであるとともに、地域の教育資源を組織化ネットワーク化する仕組みとしても有効であり、地域の課題に向き合い、解決していく住民を育てていく事業でもある。学校と地域がパートナーとして連携・協働するには、ビジョンを共有し、地域と協働で子供が見える学びを展開していくことが重要であり、両者をつなぐコーディネーターを配置する等の仕組みの構築や事業等の一層の促進が不可欠。
 ○首長部局等との協働は、これからの教育改革の大きな柱となるものであり、総合教育会議を活用しつつ、教育委員会と首長部局との協働体制を構築していくことが重要。

■作業部会等におけるこれまでの主な御意見
<学校と地域の協働の在り方について>
 ・学校と地域が連携・協働するにあたってのポイントは、学校と地域がテーマでつながること、学校と地域をコーディネーターがつなぐこと、学校と地域がイコールパートナーであること、学校と地域がプロセスを共有すること等である。
 ・地域住民等が学校に参画するということは、子供の教育に対する責任を社会的に分担するということである。これからの時代に求められるのは、学校運営に責任をもつ地域住民であり、学校運営に参画し、汗をかくことが求められる。それが学校と地域の連携の意味。
 ・時代が変化する中、学校の普遍的な部分は学びを支えている組織であること。学びに対し今の社会は弱くなっており、対応できなくなっている。学ぶことは出会うこと。他者性や異質性がないと学びは成立しないが、最近はそれが同質化してきており、社会教育も異質性がなくなってきている。そのため、連携・協働が求められている。主体性・協働性は、他者性・異質性から出てくるもの。教員と地域というお互いの違いが響き合う形で協働していくことが重要である。
 ・大人も学ばなければならないし、保護者や地域の担い手意識を醸成していく必要がある。大人の学びのコミュニティを形成していくことが重要である。
<地域とともにある学校を通して育てたい子供像、身につけさせたい力>
  ・コミュニティ・スクールを通じて、学校は育てたい子供像を保護者や地域と共有する。ビジョンを共有した上で、地域と協働で子供が見える学びを展開していくことが重要であり、継続的に続いていく人間力を育成し、定着化させていく基礎学力と、発展した能力を身につけさせていくことが重要である。
 ・コミュニティ・スクールにしていくことを通して、子供たちを地域社会でどのように育てるのか、学校を核として地域社会がどう変わり、大人がどう動きながら地域を創り出していくのか、具体的なイメージを持ちながら議論を進める必要がある。
 ・これからの社会を創り出していく力や課題を解決する力を、子供たちにどのようにして身に着けていくのか、全ての子供たちが自らの人生を仲間と一緒になって切り拓いていく、将来を展望できる力を付けていくことが、地域社会と一緒になって学校を経営していくことの核となる。
<学校と地域の連携・協働を推進する仕組みの重要性>
 ・新しい時代の教育や地方創生の実現のためには、学校を核として地域全体で将来を担う子供たちを育成すること、コミュニティ・スクールの取組を地域づくりにつなげていくことが重要である。
 ・コミュニティ・スクールは様々な仕組みの基盤となるものであり、学校現場や教育行政も動きやすい。これからの学校と地域の協働は、コミュニティ・スクールを中核にしていく必要がある。
 ・コミュニティ・スクールは地域住民の参画の究極の仕組みだと考えている。
 ・学校支援地域本部やコミュニティ・スクールをつくり、学校が地域に開かれ、外部の人から子供たちの活動が支持される機会が増えることは、子供たちの自己肯定感の高まりにつながっているとともに、教職員の児童生徒に対する肯定的な評価も高まっている
 ・学校だけではできないことを地域を巻き込んで実現していくことがコミュニティ・スクールの本質になってくるだろう。そういった部分を体系化していくことが必要である。
 ・教職課程においても、教員としての主体性を育成しながら、他を巻き込んで解決を図ることに関する理論を科目として学ぶなど、教員養成の段階で意識を変えていくことも必要。
 ・学校支援地域本部は、学校課題の解決に寄与するだけでなく、同時に地域の課題に向き合い、解決していく住民を増やしていくことにつながるなど、住民の自治能力の向上に寄与する。学校支援地域本部は社会教育の事業である。
 ・コミュニティ・スクールに学校安全の視点をどう位置づけて展開していけばよいか考えたい。
 ・コミュニティ・スクールは、防災教育にも生きてくるし、土曜日や放課後の活動の充実も期待できる。今後は小中一貫教育も進んでいくだろう。
 ・小中一貫はやるが地域連携まではできないという声があるが、これは両方やる必要がある。子供の成長とともに、そこに関わる大人が連携しなければ、うまくいかない。
 ・より多くの人々が学校に足を運び参画する姿が地域とともにある学校の理想的な姿ではないか。どうやったら多くの人が一度でも学校へ足を運んでくれるかを考えなければならない。一度でも学校に足を運ぶと当事者意識が変わってくる。その際、放課後や土曜日を活用することや大人の学びの場として学校を活用することは一つの手。そうした活動を通じて当事者意識をもった人は次へ次へとのってくる。学校を授業時間、放課後、夜間と時間別に活用する視点があるとよい。
 ・仕組みを維持していくための方策を検討する必要がある。取組のエネルギーを属人的な資質に依存すると持続しない。また、事業として捉えると時限となるため金の切れ目が縁の切れ目になる。
一方で、身分と役割を明確化し、制度化した途端に機能しなくなる。
<コミュニティ・スクールを核とした地域づくりの推進>
 ・人口減少が加速している中で、過疎地域の拠り所となる場は学校であり、学校を核とするならば、コミュニティ・スクール化は必然であり、コミュニティ・スクールによる地域づくりを進めていくという前提の中で議論を進めていく必要がある。
 ・今日の教育・地域活性化のキーワードは、つながりとか、かかわりといったもの。教育の成果を私物化するのではなく、地域に還元するという視点を持つことが大事で、コミュニティ・スクールが地域を基盤にして学校を支え、学校教育を進めていくのならば、その成果は地域にも還元されなければならない
 ・人口減少に対しては、コミュニティ・スクール等により、将来地域に貢献したい、住みたいという子供たちを育てることが重要である。
 ・コミュニティ・スクールは地域から支援を受けるだけでなく、学校が地域にどう貢献できるかが重要であり、それが地域に愛着をもつ子供を育てていくことにつながる。
<様々な主体の参画の必要性>
 ・学校、家庭、地域社会、福祉を含んだ総合的な教育プラットフォームを構築していくことが必要である。小中連携の重要性を踏まえ、中学校区に構築していくことが望ましい。
 ・学校の問題解決について、教員だけで解決しようとするのではなく、福祉機関や地域と問題を共有して連携して解決するという意識が必要
 ・地方創生、活力ある地域づくり、人づくりのためには、地域とともにある学校づくりを全県的に推進する必要があり、そのためには、知事部局と教育委員会の連携・協働が重要である。
 ・仕組みが良いものになればなるほど、その仕組みの担い手になれない人々が周辺部分に追いやられてしまう。退職された方や女性という担い手の例が出てきたが、教育の担い手となることが社会的な文化となるためには、担い手になれない人たちが巻き込まれ、達成感が得られる仕組みも必要である。そうでないと社会全体での教育とならないし一部の人々を地域と捉えてはいけない。
 ・保護者の当事者意識を醸成することは重要であり、地域も学校に学ぶ必要がある。学校を理解しながら提案をしたり、協働したりすることができる立場になっていきたい。そこに関わる企業や首長部局も学校とつながること、社会総掛かりで教育に関わることについて学んでほしい。
 ・社会総掛かりで取組を進めるために、学校と地域で熟議を行うことが望ましい。産業界、商工会の協力を得ることや、学校と地域が共通理解の上で協力することが不可欠である。
 ・地域住民は学校をしっかりと理解した上で学校に入る必要があり、そのことにより、地域の教育力も向上していく。
 ・学校運営や教育活動に参画していくためには、その力量の形成のためのトレーニングが必要であり、誰もが参画できるわけではない。そのきっかけとして学校支援ボランティアやPTA がある。
<首長部局との協働の必要性>
 ・首長部局と学校現場をつなげ、学校と行政、地域が連携してトライアングルになっていくことが重要である。
 ・コミュニティ・スクールの活動は学校だけでなく、地域の福祉や防災などとも関連するなど多岐にわたっている。学校運営協議会で協議された内容や活動の情報は、教育行政にとどまらず、市長部局と常に密接に共有されることが必要である。そのための調整役となる組織を市長部局に設置することが望ましい。
 ・福祉の観点等々の色々なものと教育委員会の関係を整理する研修が必要である。教育委員会制度が改革されて、教育委員会も市長部局と協働してやっていかなければならないため、市長部局にも教育について学んでもらう必要がある。教育委員会との共通項を増やしていく研修や、組織的にも変わってきているということの認識の共有が必要である。
 ・子供の貧困等の福祉の観点について、学校(コミュニティ・スクール)を基盤として、福祉部局など首長部局やスクールソーシャルワーカー等と連携したプラットフォームを構築できないか。
 ・市長部局からすると教育への介入は遠慮する部分ではあるが、総合教育会議ができたのを機に、学校運営協議会側、教育委員会側から積極的に市長部局もかかわるべきと発信してほしい。

2 コミュニティ・スクールと学校支援の取組との一体的推進
<検討の方向性>
 ○社会総掛かりでの教育の実現に向けて、学校と地域が教育のビジョンを共有し、地域と協働で子供が見える学びを展開していくことが重要。コミュニティ・スクール(学校運営協議会)の審議機能、学校支援地域本部等の実働機能は、ともに大切な機能であり、両者が相互に補完し高め合う存在として一体的に推進し、両輪となって相乗効果を発揮していくことが必要。
 ○コミュニティ・スクールや学校支援等の推進に当たって重要なことは、地域の特色を生かし、地域とともに考え、地域全体が当事者として参画していくことであり、学校と地域が協働して行う企画運営や活動を大切にしていく必要。
 ○コミュニティ・スクールの在り方、学校支援地域本部の在り方、また両者の一体的な推進の在り方は様々。一体的な推進のパターンとしては、【1】学校支援機能包括型、【2】学校支援を担う専門部会設置型、【3】学校支援地域本部の分離設置型、【4】公民館タイアップ型、【5】NPO 協働型などのパターンが挙げられる。
 ○審議機能と実働機能の有機的な接続の観点や、学校現場における負担等の状況を勘案すると、学校運営協議会と学校支援地域本部の二つの組織を一体化した方がよいとの声もある一方、両者をパートナーとして別々に捉え、連携させた方がよいとの声もあり、当該学校や地域の置かれた実情等を踏まえた体制を構築していくことが重要。

■作業部会等におけるこれまでの主な御意見
<学校運営協議会と学校支援地域本部の一体的推進の必要性>
 ・コミュニティ・スクールについて、地域特性が生かされない限り、持続可能な取組にはなっていかない。大切なことは、地域の特色を生かすこと、地域とともに考えること、みんなが主体者になるということ
 ・学校、地域、家庭の活動がそれぞればらばらに行われていると、それぞれの視点から見えるものもばらばらで共通認識を構築できない。学校運営協議会と学校支援地域本部が一体的に推進されることで、子供たちがどんな学びになっていくのかなど全体の構造を見える化し、共通基盤をつくっていくことが大切である。
 ・学校がどう次世代を育てるかという校長の経営ビジョン、その下に教員がどういう立ち位置で子供たちの教育に行くのかということを地域や保護者が理解せずして、よき学校というものは生まれない。そのためには、コミュニティ・スクールと学校支援体制の両輪こそが、次世代のための健全な学校経営ということになっていく。
 ・学校運営協議会の審議機能と、学校支援地域本部の実働機能は両方とも大切である。地域はパートナーであり学校と双方向な関係にある。その循環がこれからのコミュニティ・スクールの理想。
 ・コミュニティ・スクールと学校支援地域本部の関係は車の両輪であり、ある時は重なり、ある時はそれぞれの強みを生かすといった関係が大切である。
 ・学校支援地域本部は、地域コーディネーター等個人の力に依存しがちであり、安定性や継続性に課題を残す。一方、学校運営協議会は、法律に基づく制度であって安定性を有しているが、実行力が不足している。お互いの弱みを補い合い、強みを生かして連携させていくことが重要である。
 ・地域とともにある学校となるためには、地域の応援が必要であり、地域の関係機関等をネットワーク化していくコーディネーターが必要である。校長が全てを担うことはできないため、学校支援地域本部のコーディネート力を生かし、関係機関をネットワーク化して学校の質を上げていくように応援してもらうことが大切。
<一体的な推進を図る上で大切な視点等>
 ・学校運営協議会と学校支援地域本部を連携させた運営体制の成果として、学校支援活動が組織的に行われることが挙げられる一方、デメリットとして、校長等の管理職や担当教員の負担の増加が挙げられる。
 ・学校支援地域本部の企画について、教員が中心となって企画をすればするほど校長等の負担感が増えていく。一方、教員と地域住民が企画運営を協働で行う「協働活動」を行っている学校の方が、「学校支援活動が地域住民の成果を生かす機会となっている」「地域全体の教育力が向上し、大人も子供も含めた住民の学び合いが活発になった」との肯定的な成果をより実感している。
 ・学校運営協議会と学校支援地域本部を同時に導入した学校では、運営上の混乱が生まれ、連携の効果が発揮できにくい傾向がある。学校運営協議会も学校支援地域本部も、地域とともにある学校づくりを推進するツールにほかならないことを踏まえて、それぞれの特性をしっかり理解しながら運営体制を整えていく必要がある。
 ・学校支援活動は地域に任せておくだけではなく、学校と地域で協働活動を行うことが重要である。そのような協働活動は、司令塔となる学校運営協議会と、実働する主体としての地域の支援者をつなぐ場を確保することで質が高められる。このため、学校に関わる大人同士の協議の場である中間組織の存在が必要である。
<学校運営協議会と学校支援地域本部の組織の在り方>
 ・学校運営協議会の在り方、学校支援地域本部の在り方、また両者の一体的な推進の在り方に「THE」はない。様々な在り方があると認識することが必要である。
 ・コミュニティ・スクールと学校支援の一体的な推進のパターンとして、【1】学校支援機能包括型、【2】学校支援を担う専門部会設置型、【3】学校支援地域本部の分離設置型、【4】公民館タイアップ型、【5】NPO 協働型の5つのパターンが提示できる。
 ・学校の立場から言うと、学校運営協議会と学校支援地域本部の二つの組織が別々に動くのは負担増であり一元化した方がよい。トップ・ダウン型への懸念については、学校支援の部会に全教職員が入り、地域、保護者と一緒に汗をかいて動くことで回避できる。
 ・学校運営協議会と学校支援地域本部の在り方については、両者が一体となることが望ましい。地域が学校を支援するし、地域が学校に対してものを言える双方向の関係性が好ましい。一体とした場合でもトップ・ダウンにしないためには、学校運営協議会と学校支援部の組織をつなぐ連結ピンとなる人材が重要である。
 ・京都市では当初から学校支援機能を包括した形で学校運営協議会を進めており、学校運営協議会と支援本部は統合した形が進めやすいと考える。同時に、学校運営協議会に集約するとしても学校運営協議会に関わる人々の意識改革、内容の改革を十分していける条件づくりも必要である。
 ・学校運営協議会と学校支援地域本部の両輪型が好ましく、両者をパートナーとして捉える必要がある。支援本部を協議会の下請けにはしたくない。協議会ができると学校支援の取組がトップ・ダウン化するのではないかと懸念する。地域の人のモチベーションへの配慮が必要である。
 ・学校運営協議会委員とコーディネーターが重なっている例はある。学校運営協議会の委員の立場で審議したものをコーディネーターの立場として実際に動かしていく、ということがある。
<その他>
 ・学校支援の在り方について、量的拡大の中で、質は落とさないという観点を持つ必要がある。学校支援というと、何かイベントを行えば支援したことになるということではなく、本当の意味での地域ができる学校の支援とは何かを問わなければならない。

3 これからのコミュニティ・スクールの在り方
(1)学校運営協議会の役割と機能の在り方
<検討の方向性>
 ○学校運営協議会は、校長の作成する学校運営の基本方針の承認等を通じ、校長のビジョンを共有し、賛同するとともに、地域が学校とともに責任を負い、ともに行動する体制を構築するもの。学校と地域がビジョンや課題、情報等を共有し、熟議し、意思を形成する場であり、学校と地域が相互に協働していくための基盤。
 ○学校の教育方針の決定や教育活動の実践に地域のニーズを的確かつ機動的に反映させるというガバナンスの視点と併せ、学校運営の最終責任者である校長を支え、応援するという役割を明確化していく必要。
 ○現行制度上の機能の意義や課題等を整理した上で、今後の在り方について整理。
  ・校長の作成する学校運営の基本方針の承認
  ・学校運営に関する教育委員会又は校長に対する意見
  ・教職員の任用に関する教育委員会に対する意見

■作業部会等におけるこれまでの主な御意見
<学校運営協議会の本質的な意義>
 ・コミュニティ・スクールの本質は、地域の代表が校長の基本的方針を承認することを通じ、学校とともに行動し、学校とともに責任を負う点にある。
 ・学校運営協議会の本質は、学校を地域に公開し、地域住民の意見を取り入れること。協議会は、地域とともにある学校づくりを進めるためのツールであり、協議会そのものがトップ・ダウンであるわけではない。
 ・コミュニティ・スクールが校長の後ろ盾、応援団となる方がうまくいく。英国のように最高意思決定機関として校長以上の仕組みを設けることは現実的ではない。
 ・コミュニティ・スクールは学校を監視・評価する仕組みだというスタンスではなく、学校の応援団を作っていくということであれば受け入れられるだろう。
 ・現行の学校運営協議会はスクールガバナンスとして位置付けられているが、校長主体のガバナンスを補完する仕組みとしてとらえていくべきか、整理が必要である。
<学校運営協議会が有する機能の意義・活用>
 ・基本方針の承認の機能によって、保護者や地域の意見を学校運営に生かすことや、校長の学校運営の基本方針を共有し賛同することには、学校を円滑に、そして安心して運営できるという大きな効果が期待できる。
 ・学校運営に関する意見の意義は、特に大きな方針転換を迫られる際に、学校だけで結論を考えるのではなく、保護者や地域と一緒に考えることによって、誰もが納得できる結論を出せること。
 ・教職員の任用に関する意見の権限は、教職員の分限や懲戒ではなく学校の経営方針の共有につながる。人事について校長から語られ、それを学校運営協議会が了承するプロセスは重要である。
 ・教職員の任用について学校運営協議会が意見を言える仕組みが機能している良い例もある。
 ・教職員の任用に関する意見に関して、小さな自治体は、教育長に校長の意見を十分にくみ取ってもらえるため、学校運営協議会の後押しがなくても希望通りの人事が行われている。学校運営協議会から要望があがったことはない。
 ・学校と家庭、地域が連携・協働した取組が充実し、相互の信頼関係が深まれば、任用に関する意見についても混乱を招く事態が発生することは考えにくい。
 ・教職員の任用に関する意見について、抵抗感のある自治体も多いことを踏まえ、任用の意見の申出に際しては、校長の意見を聞くなど校長を経由して意見を述べるようにすべきではないか。
 ・学校運営協議会がもつ3権限に対する校長の重要性認識について、校内に限定される「承認」と「校長に対する意見」については重要と感じている校長が多い。しかし裏を返せば不安の軽い権限ということ。逆に、校外への波及作用のある「教職員の任用に関する意見」や「教育委員会への意見の申出」については校長の不安意識が高い。
 ・校長の不安感を軽減するためには、任用に関する意見と教育委員会への意見をできるだけ校内作用に近づけることである。

(2)学校運営協議会における学校支援の総合的な企画・調整に関する機能の位置づけ
<検討の方向性>
 ○学校運営協議会において、学校支援活動を実施している学校においては、学校運営の改善、児童生徒の変容、教職員の変容など、様々な面で成果認識が有意に出ている状況であり、また、学校運営協議会の機能として支援機能を位置付けている割合は約68%と、実態からも支援機能の必要性が整理。また、承認した基本方針の達成に向かって、地域全体でともに前進し行動していくことは、当事者意識等の向上につながり、学校はよりよく発展していく。
 ○学校運営協議会が法律上有している役割の重要性を踏まえた上で、校長を支え応援するという役割を明確化し、学校の総合力を高め、一層活性化させていくためには、学校運営協議会が、学校に対する地域の人々の理解や協力、参画を促し、学校を支える基盤であるという観点を明確化していくことが必要であり、学校運営協議会の機能の一つとして、学校支援活動等の総合的な企画・調整の機能を位置付けることを検討。
 ○この際、当該機能がトップ・ダウン型で一方的に展開されることなく、学校と地域の協働的な活動が展開されるよう配慮することが必要。また、協働的な活動を通じ、地域づくりに発展していく取組も推進。

 ■作業部会等におけるこれまでの主な御意見
<学校支援の総合的な企画・立案に関する機能の位置付け>
 ・学校運営協議会において、学校支援活動を実施している学校においては、学校運営の改善、児童生徒の変容、教職員の変容など、様々な面で成果認識が有意に出ている。学校支援活動を抜きにして学校運営協議会は考えられないというのが実態。
 ・地域と協働しながら学校をよくしていくためには学校が責任を持っていかなければならず、学校運営協議会が核となり、総合的に企画し調整しながら、学校支援地域本部の方々に地域のネットワーク化のためのコーディネートをしてもらうことで質を上げていくことが大切である。学校運営協議会における総合的な企画・運営の機能が大切になる。
 ・学校運営協議会と学校支援地域本部は別々に存在し、相互に連携していくことが望ましいと考えるが、2つが存在することは学校の負担になるので、学校運営協議会に学校支援機能を位置付けることは現実的には意味がある。ただし、その場合、学校運営協議会に機能が集中し、トップ・ダウン型で展開したり、学校主導で行っていけば、課題が出てくる
 ・学校運営協議会以外の場(中間組織)を確保し、教師を含めた学校に関わる大人同士の学び(取組の企画・立案を含めた協議)を活性化させ、協働活動を展開していくことが、学校にとっても地域にとっても効果を挙げることにつながる。コミュニティ・スクールには、学校と地域の協働を促すような機能を付加すべきではないか
 ・学校運営協議会は、あくまでも校長のマネジメントを支えるものであり、アドバイスし評価する機関でもある。その役割や活動の中身が学校支援に傾きすぎると、本質を失うため、十分に意識しながら学校支援活動を包括していった方がよい。
 ・学校運営協議会に学校支援に関する企画・立案機能を付すにあたり、都道府県がコミュニティ・スクールの柱として当該機能を示し、市町村がそれを汲んで実務に反映することも考えられる。
 ・学校運営協議会の機能として、学校支援に加え、地域貢献の観点も加える必要があるのではないか。学校支援ばかりを強調すると、地域は学校に尽くすが、学校は地域に何をしてくれるのか、という軋轢が生じる。学校が地域に対して何をすることができるか、という視点も重要である。
 ・学校による地域への貢献とは、子供や教職員が地域活動に直接参加したりボランティア活動を実施したりすること以外にも、子供たちと触れ合うことで地域の大人が元気になったり、学校を地域の大人や子供が集まり学ぶ場として役立てることも含め、広く捉えていくことが考えられる。 

(3)学校運営協議会における学校評価等の位置付け
<検討の方向性>
 ○現状としては、各学校・地域の実情等に応じて、学校運営協議会の機能として学校評価の機能を位置付けている割合が約78%に至っている状況。学校運営協議会と学校関係者評価を一体的に推進することで、成果や課題の共有、取組の改善に生かし、学校運営の評価・改善サイクルが充実していく。学校関係者評価の質を高め、より実効性を高める観点から、コミュニティ・スクールの促進の観点からも、すでにある学校関係者評価委員会を学校運営協議会に発展させていくことが有効。
 ○学校運営協議会の機能としての位置付けについては、学校評価の制度体系との関係等を踏まえ、引き続き検討する。
 ○また、学校運営協議会が形骸化しないようにしていくためには、実効性ある運営と併せ、学校運営協議会そのもの取組を適正に評価していくことが必要。

■作業部会等におけるこれまでの主な御意見
<学校運営協議会と学校評価の関係について>
 ・学校評価と学校支援は表裏一体であり、関連する制度は一体化するとよい。
 ・多くの学校が学校運営協議会の場で学校関係者評価を行っているが、法令上の規定がない。学校運営協議会の一つの機能として学校関係者評価を位置づけるべきではないか。
 ・学校の自己評価に学校運営協議会のガバナンスを組み込むとともに、それを学校運営協議会が学校関係者評価として実施してはどうか。
 ・学校支援地域本部や学校関係者評価委員会との一体化は、むしろ校内限定作用であるから校長に抵抗感はさほどなく、むしろ有効である。
 ・地域住民や保護者が参画し当事者意識を持つために、校長がリーダーシップを発揮し、学校評価や目標達成のために協働して取り組む体制を整えることが重要である。
<学校運営協議会に対する評価について>
 ・学校運営協議会が学校ガバナンスの主体になっていくには、学校運営協議会の評価が必要である。
学校運営協議会を評価する関係者評価や第三者評価も重要であり、相対的に評価できる仕組みが将来的には必要ではないか。
 ・学校運営協議会が適切に運用されているのかどうかを評価するシステムが整備されていないという点への目配せが重要である。形式化や形骸化、長期任用の委員のマイナスへの働きなどを考えると、学校評価とのつなぎを検討せざるを得ない。学校運営協議会の運営の適切さについては第三者評価を活用することを考えてもよいのではないか。

(4)校長のリーダーシップの発揮の観点
<検討の方向性>
 ○現行の学校運営協議会の機能下では、校長と学校運営協議会委員が対立しないかという不安を抱く自治体が存在する。大切なのは、校長が、学校運営協議会の委員に対し、どのような生徒をどのような方針で育てていくのかを共有することであり、学校運営協議会は、基本方針を承認した限りは、校長とともに責任を負い、ともに行動する体制を構築していくことが重要。
 ○こうした観点から、多くの教育委員会においては、学校運営協議会の委員の任命に際し、校長の推薦や意見を聴取するなどの工夫をしている状況。これらの状況を踏まえつつ、学校運営協議会委員の任命における取扱いについて検討する。

■作業部会等におけるこれまでの主な御意見
<校長のリーダーシップの発揮について>
 ・校長が地域の力も活かしながら、地域をマネジメントすること、育てることが重要である。
 ・校長が地域に影響力を発揮できないとこれからはやっていけない。校長が地域にやってもらいたいことをはっきりと言えないといけない。
 ・肝は地域に影響力を与えることができる校長か否かということである。校長の任用条件に地域と連携できるか否かを考慮してもよいのではないか。
 ・校長は、ビジョンを明確に示し、話す場を積極的に設けながら、本音で語り、いろいろと訴えていくことが大切。そのために外に発信を重ねたり、生徒を地域に出したりして、見えるようにしていくことも大切である。
 ・校長のリーダーシップについては、校長が孤立しないように、教育委員会に限定しない行政全体の、例えば市長部局、知事部局の人間が校長をバックアップできるような体制が大事。そのためにも、コミュニティ・スクールが、市長・知事部局に認知されることが必要である。
<学校運営協議会委員の任命の在り方>
 ・現行の学校運営協議会の機能下では、校長と学校運営協議会委員が対立しないかという不安を抱く自治体が存在する。大切なのは、どのような生徒をどのような方針で育てていくのかを共有することである。その観点から、学校運営協議会の委員の任命に際しては、校長の推薦や意見の聴取を経た後、教育委員会が任命するものとしてはどうか
 ・学校運営協議会委員は市町村教育委員会が任命することになっているが、校長の推薦制をとることが多く、現状で特に問題があるとは感じていない。
 ・学校運営協議会に入れるべきメンバーは、自分から汗をかいてアクションを起こそうとしてくれる人。なかなか地域にそういう人がいないこともあるが、諦めずに学習会等を開催することで、育ってくる。また、その地域を愛している人が入るのが大事。自分たちの地域の誇りについて真剣に考えないといけないし、そういった点を考えてくれる人を委員に任命することが望ましい。
 ・学び続ける学校運営協議会委員であることが重要であり、委員の人選が大切である。
 ・コミュニティ・スクールの持続発展のためには、委員の刷新も必要となる。学校運営協議会の委員を長くやっている人には、いかに鈴をつけつつ、辞めていただくかという視点も必要である。

(5)小中一貫教育への対応など学校間連携の推進の観点
<検討の方向性>
 ○地域ぐるみで子供たちの義務教育9年間の学びを支える仕組みとして、中学校区の複数の学校が連携した教育支援体制を構築することは重要であり、小中一貫教育とコミュニティ・スクールの一体的な推進が必要。
 ○小中一貫教育を一層推進する観点から、中学校区内の複数の小・中学校における一体的な学校運営協議会の設置を促進するため、中学校区で一つの学校運営協議会を設置できるように現行制度を見直すことが有効。
 ※小規模自治体等における学校運営協議会の取扱いについては追って検討。

■作業部会等におけるこれまでの主な御意見
<学校間連携の推進の観点>
 ・今後、小中複数校での一つの学校運営協議会の設置に関する制度化も必要と考える。
 ・学校間連携を機能の一つとして位置づけると、更に連携が進むのではないか。地域連携が横軸の連携とすると、学校間連携は、縦軸の連携なので、縦横の連携になってはじめて「面」になりえる大事な視点である。

■関連する提言等
 「子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について(答申)」(平成26年12月22日中央教育審議会)より抜粋第1章 第5節3地域ぐるみで子供たちの9年間の学びを支える仕組み作り(前略)このような観点から、先行事例の中には、小中一貫教育とコミュニティ・スクールや学校支援地域本部等を有機的に組み合わせて大きな成果を上げている例も多く見られる。これらを一体的に導入することにより、保護者、地域住民と教職員とが、学校の教育目標や、学校・子供が抱える課題やその解決策等を9年間を見通して共有し、より広い地域からの組織的・継続的な学校支援体制を整えることが可能となる。小中一貫教育と地域と共にある学校作りは親和性が極めて高いものであり、補助事業や教職員加配等を通じて、国としても両者の一体的な導入を積極的に支援していく必要がある。
 小中一貫教育とコミュニティ・スクールを組み合わせて実施するためには、中学校区で一つの学校運営協議会を置くことが有効であるが、学校運営協議会は現行法令では各学校に設けることとなっており、学校ごとに学校運営の基本方針を別々に承認することとなり、9年間を通じた方針・目標等の共有がしにくいという課題がある。このため、小・中学校の学校運営協議会をリンクさせるために学校運営協議会委員全員を関係する全ての学校の委員として併任させたり、各学校に運営協議会を設けた上で、更にその上に小中合同の会議を開催したりするなどの工夫を講じている例もあるが、委員や事務局となる学校の大きな負担につながっている。
このため、特に小中一貫型小学校・中学校(仮称)の取組の充実を図る観点からは、中学校区で一つの学校運営協議会を設置できるように現行制度を見直すことも有効な方策であると考える。国は、こうした点も踏まえつつ、中学校区内の小・中学校における一体的な学校運営協議会の設置を促進する必要がある。その際、第3節で述べた9年間一貫した教育目標や教育課程等の基本方針の承認のほか、9年間一貫した学校運営に対する意見の聴取、9年間を通じた学校支援や学校関係者評価の実施など、そのメリットを最大限生かした運営がなされるとともに、負担軽減策も含め、より効果的かつ効率的な運営がなされるよう配慮していくことが求められる。

4 コミュニティ・スクールの総合的な推進方策について
(1)コミュニティ・スクールの拡大・充実のための推進方策
<検討の方向性>
 ○コミュニティ・スクールを核として地域とともにある学校づくりを一層推進するためには、地域との関係を構築し、地域の人々と一体となった取組を進めることができるマネジメント力を備える必要があり、学校が組織としてのマネジメント力を最大限発揮できるよう、体制整備を図っていく必要。このため、教員養成課程や管理職等の研修において、地域とともにある学校づくりの視点を明確に位置付けるなど教職員の意識の醸成を図る必要。また、学校と地域との連携・協働の中核を担う教職員を法令上
明確化し、校内体制の整備を図る必要。
 ○一方、学校運営協議会が実効力をもって機能するためには、学校運営協議会委員の当事者意識を高めるとともに、一定の質を確保する必要があり、委員に求められる資質能力の明確化と育成システムの整備が必要。
 ○このほか、地域全体で子供たちの学びを展開していくために、地域の人々や保護者、関係機関・団体等多様な主体の参画を促進するとともに、学校と地域の連携・協働の意義や必要性、成果等の普及・啓発を推進。

■作業部会等におけるこれまでの主な御意見
<地域とともにある学校における教職員の育成の推進>
 ・教員養成段階や、新任教頭・校長研修の中でも、地域とともにある学校づくりを明確にカリキュラムの一部として位置付ける必要がある。
 ・地域との連携・協働に関して理解している教職員の養成が重要である。学校に入ってきた段階で、その点が当然の意識となっているようにすべきである。
 ・大人も学ぶ必要があり、異なった文化、キャリア・価値観の異なる人々がそれぞれの強みを生かすとともに、自分を変容させ、新しい価値を受け入れていくことが重要である。従来の教員養成段階では、地域とともにある学校づくりは履修してこなかったが、これは新しい学びである。
 ・初任者や10年経験教員研修に加え、事務職員やミドルリーダー等を対象とした研修で、地域連携に係る講座や熟議の演習を実施していくことが必要である。
 ・管理職研修による地域連携等に係るマネジメント力の向上が必要である。
 ・学校運営協議会が置かれる学校におけるリーダーの在り方とその養成に関する意見があったが、採用・養成・研修については、教員養成部会のテーマにしてもらってもよいかもしれない。
 ・教師の指導力の限界を子供の学びの限界にしてはいけないのと同様、校長のマネジメント能力の限界を学校経営の限界にしてはいけない。校長の限界を超えて学校を伸ばすための制度として学校運営協議会があるが、自分の限界をわかっていない校長が、協議会を蔑ろにしているケースがある。校長にも育ってもらう必要があり、教育委員会のサポートも重要である。
 ・教員が地域に目を向けるようになり、子供と地域に関して学習する機会が増えたという事例がある。これは地元に残る、戻る人材の育成につながる。
<連携・協働を推進するコーディネート人材の必要性>
 ・学校と地域の連携の核となるエンジンは、人をつなぐという意味で「コーディネーター」が重要である。また、特に「校長の意識」も重要である。
 ・学校支援をすればするほど、まちづくりに目を向けざるを得ない。学校は地域を映す鏡であり。地域をよくしないと、学校はよくならない。地域コーディネーターはそのことに気づいており、地域コーディネーターや地域連携担当教員等の媒介する人材が必要である。
 ・栃木県、岡山県、仙台市などに見られるように、国として、地域連携担当教職員の仕組みを設け、明確な位置付けを促進していくことが必要である。
 ・教員に社会教育主事の資格取得を奨励する必要があるのではないか。教員が地域・地元に目が向く契機となるし、地域住民谷ボランティアの視点を確保できる。
 ・コーディネーターは教育委員会サイドの人材・存在であるが、そうした人材の育成や役割の認知、活躍の場づくりに知事部局がどのように関わっていくのか議論が必要である。
 ・コーディネーターも複数人いるところは継続性がある。コーディネーターを担える人を次々発掘していくことも必要である。
 ・教員の思いとコーディネーターの思いが違うと連携が苦痛になるため、コーディネーターとしては、学校の内情に詳しく、現場をよく理解している人が必要である。管理職も、教員が少しでも地域にかかわっているということを地域にアピールしていく必要がある。
 ・学校における教員の多忙化は重要な課題である。地域連携担当として校務分掌に位置づける場合は、教員の加配措置、体制整備での対応をお願いしたい。
 ・社会教育主事講習の内容にコミュニティ・スクールのことがどのくらいきちんと入っているのか。
しっかりと社会教育主事講習の中に学校運営協議会のことを強力に盛り込むべきである。
<学校運営協議会委員等の資質向上>
 ・役割を十分に理解していないまま学校運営協議会委員に任命されている委員がいる。委員任命の際に研修を義務づける必要があるのではないか。
 ・校長も現場の教職員も保護者も地域住民も、学校運営協議会に対する理解が十分でない。もともとの研修のところから、もっと丁寧に進めてほしい。
 ・学校運営協議会委員に求められる資質能力の明確化と育成システムの整備(研修)が重要である。
 ・コミュニティ・スクールでうまくいっていないところを変革していくのは難しいと思う。一つは研修とあったが、共同研修(市長部局、学校、運営協議会)といった仕組みが必要ではないか。
 ・学校運営協議会の委員の研修について、実際にそうした研修を教員のようにやりきることができるのか。校長がOJT的に委員を機能させていくことが重要であり、管理職の資質を研修で高めていくことが必要である。
 ・委員も学び続けていかないといけない。また次の世代を育てるということも重要である。
<様々な主体の参画の必要性>(再掲)
 ・学校、家庭、地域社会、福祉を含んだ総合的な教育プラットフォームを構築していくことが必要である。小中連携の重要性を踏まえ、中学校区に構築していくことが望ましい。
 ・仕組みが良いものになればなるほど、その仕組みの担い手になれない人々が周辺部分に追いやられてしまう。退職された方や女性という担い手の例が出てきたが、教育の担い手となることが社会的な文化となるためには、担い手になれない人たちが巻き込まれ、達成感が得られる仕組みも必要である。そうでないと社会全体での教育とならないし一部の人々を地域と捉えてはいけない。
 ・保護者の当事者意識を醸成することは重要であり、地域も学校に学ぶ必要がある。学校を理解しながら提案をしたり、協働したりすることができる立場になっていきたい。そこに関わる企業や首長部局も学校とつながること、社会総掛かりで教育に関わることについて学んでほしい。
 ・社会総掛かりで取組を進めるために、学校と地域で熟議を行うことが望ましい。産業界、商工会の協力を得ることや、学校と地域が共通理解の上で協力することが不可欠である。
 ・学校運営や教育活動に参画していくためには、その力量の形成のためのトレーニングが必要であり、誰もが参画できるわけではない。そのきっかけとして学校支援ボランティアやPTA がある。
<普及・啓発>
 ・どのようにコミュニティ・スクールの本質を理解させるのか、つないでいくのかが重要である。理解させていくためのプロセスにパワーを注ぐべきである。 

(2)都道府県・市区町村の推進方策
<検討の方向性>
 ○コミュニティ・スクールを核に地域とともにある学校づくりを一層推進していくためには、国、都道府県、市区町村における学校教育部局と社会教育部局の連携強化が不可欠であり、両者の連携・協働による取組の推進が必要。また、総合教育会議の活用等を通じた首長部局とのパートナーシップの構築も必要。
 ○都道府県教育委員会として、ビジョンの明確化、教育支援体制の構築、全県的な推進体制の構築、研修機会の充実、計画的な人材育成を推進。
 ○市区町村教育委員会として、ビジョンの明確化、コミュニティ・スクール未指定の学校における導入の推進、学校関係者、保護者、地域関係者等に対する積極的な普及・啓発等を推進。

■作業部会等におけるこれまでの主な御意見
 ・国・都道府県・市区町村それぞれのコミュニティ・スクール担当の学校教育行政と学校支援地域本部担当の社会教育行政が連携・協働することが教育効果を上げるうえで不可欠である。
 ・公立小・中学校のコミュニティ・スクールは市区町村教委が指定することから、都道府県教委はコミュニティ・スクールの重要性や推進に向けた思いを市区町村教委としっかりと共有することが重要である。
 ・都道府県や市区町村の役割として、教育振興基本計画等でどのような学校づくりを目指していくのかということを明確に示すこと、幼保・小・中、高校や大学、地域の団体等と連携した教育支援体制の構築、都道府県と市区町村におけるコミュニティ・スクール推進協議会等の設置による全県的な推進体制の構築、研修機会の充実、計画的な人材育成等が重要である。
 ・コミュニティ・スクールの推進にあたり、国の支援策としては、学校教育行政と社会教育行政の連携強化に合わせた財政支援制度の一本化とその支援の充実が求められる。
 ・多忙化等の理由で教職員はコミュニティ・スクールに対して疑問符だらけであり、理解されない。学校に対する援助が十分とは言えず、教育委員会による学校を支援する体制が重要である。
 ・地方創生、活力ある地域づくり、人づくりのためには、地域とともにある学校づくりを全県的に推進する必要があり、そのためには、知事部局と教育委員会の連携・協働が重要である。

(3)コミュニティ・スクールの仕組みの必置の検討と条件整備について
<検討の方向性>
(第6~8回において集中的に議論)

■作業部会等におけるこれまでの主な御意見
<必置の是非の検討と条件整備の推進>
 ・必置の是非については、バランスのとれた議論をしていく必要がある。
 ・全ての学校にコミュニティ・スクールの仕組みを入れるのであれば、そのハードルを下げていかなければならないし、難しい仕組みにしてはいけない。
 ・全校をコミュニティ・スクール化するというゴールは共有されているが、その道のりをどのように設定していくかということと、そのことを通じて、どのような子供を育てるのかという共通理解が必要である。制度という外側だけを作るのではなく、その中で何をするのかが重要である。
 ・全校をコミュニティ・スクール化するにしても、トップダウンで一気にやるのはリスクがあるのではないか。まずは、一自治体に一校ずつという形で指定し、成功体験を積ませた上で、モデル・ケース化していくような、地域の方々の納得性を得られた形で新しい制度を広げていくというソフトな広げ方もある。
 ・小規模の自治体では小学校だけではなかなか持ちこたえられない部分もあるため、中学校区単位でのプラットフォームに可能性を感じる。
 ・コミュニティ・スクールは学校と地域に様々なポジティブな影響を与える可能性があることから、コミュニティ・スクールは必置にすることが望ましい。ただし、必置に対して慎重になる学校関係者もおり、その主な懸念は教職員の任用に対する意見の規定にあることから、任用についての意見申出の権限については、任命権者に意見を述べるのではなく、市区町村に意見を述べることができるとするとともに、尊重規定を削除してもよいのではないか。
 ・教職員の任用に関する意見申出について、事前に校長の意見聴取をするという形式をとる自治体は西日本に多い。(当該権限について)条件付けを行うということは考えられるかもしれない。
 ・学校支援と教職員の任用に関する意見の権限は切り離さない方がよい。例えば、採用前の大学生等が学校支援の活動に取り組むことで、地域との協働感情が生まれる。また、地域側からも、そういった学生を自校に迎え入れたいといった地域の思いにつながる。学校支援の機能と任用に関する意見は連動していくことが大切ではないか。
<地域の実情を踏まえた柔軟な在り方(類似の仕組みとの関係)について>
 ・学校の統廃合が議論されている地域では、コミュニティ・スクールの類似の取組が行われているところもある。全ての学校をコミュニティ・スクール化するなら、既存の取組を制度化することで、停滞しがちな面もある既存の取組を安定させていくという面をアピールしていく必要がある。
 ・必置とした場合、○○版コミュニティ・スクールも一つの形ではないか。○○版で実践を重ねてから、国のコミュニティ・スクールに発展していくことが考えられる。
 ・国の施策にあわせようとすると大変だが、それを(地域の実情にあわせた)自己流にあつらえ直すことが重要である。
 ・コミュニティ・スクールは学校と地域の連携を見直す仕組みであり、国の意図も踏まえつつ、そのエッセンスを県や市、学校で意志を伝えていくことは、地域の主体性を喚起することになる。
<学校種の特性を踏まえた検討>
 ・高校のコミュニティ・スクール化は絶対に必要である。高校は都道府県全体から生徒が集まるので、地域が見えにくいという意見もあるが、都道府県全体を地域として捉えればよい。地方創生の観点から、高校の広いエリアの中で、地域という共有性でどんな人間を創造していくか、どんな学びをして自分たちの育った地域に持って帰ろうかと考えることができる人材の育成が必要であり、そうした視点を学びの中に入れていく必要がある。
 ・教育段階が上がるにつれて教育の専門性も高まっていくため、コミュニティ・スクールの導入は難しいのでは。教職員の任用や教育内容に第三者が関与することに慎重な声も出るだろう。

(4)その他

■作業部会等におけるこれまでの主な御意見
 ・特別支援教育をどのように行っていくかということは、昨今の各学校において重要な問題になっている。その点、学校運営協議会委員には守秘義務があるため、すべてをさらけ出して相談できることがたいへん助かっている。学校運営協議会や学校支援地域本部を通じて、特別支援教育にどのような効果をもたらすことができるかについて検討を行うべき。

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初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付 運営支援企画係

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