地域とともにある学校の在り方に関する作業部会(第4回)・学校地域協働部会(第4回)合同会議 議事録

1.日時

平成27年7月24日(金曜日)15時~17時30分

2.場所

文部科学省 3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 委員からの意見発表
  2. 自由討議
  3. その他

4.出席者

委員

明石委員、浅原委員、天笠委員、飯塚委員、生重委員、井出委員、浦崎委員、貝ノ瀬委員、加治佐委員、熊谷委員、黒瀬委員、貞広委員、佐藤委員、関委員、竹原委員、田崎委員、永山委員、早川委員、藤田大輔委員、藤田裕之委員、牧野委員、松浦委員、松田委員、山野委員、若江委員

文部科学省

河村生涯学習政策局長、徳久大臣官房総括審議官、中岡大臣官房審議官、徳田大臣官房審議官、浅田総務課長、里見政策課長、谷合社会教育課長、塩崎参事官、鍋島地域・学校支援推進室長、水畑社会奉仕活動推進企画官、藤原学校運営支援企画官、他

5.議事録

中央教育審議会
生涯学習分科会「学校地域協働部会(第4回)」
初等中等教育分科会「地域とともにある学校の在り方に関する作業部会(第4回)」
合同会議

平成27年7月24日

【明石部会長】
  定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会生涯学習分科会「学校地域協働部会」と初等中等教育分科会「地域とともにある学校の在り方に関する作業部会」の合同会議を開催いたします。本日は、お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。合同会議は今回で2回目の開催となりますが、今回は私が議事進行を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
  では、鍋島室長より配付資料の確認と委員の出欠について御報告をお願いいたします。

【鍋島地域・学校支援推進室長】
  皆さん、こんにちは。本日もどうぞよろしくお願いいたします。明石部会長からお話いただきましたように、本日は合同部会ということで多くの委員の皆様に御出席いただきまして、ありがとうございます。初等中等教育局の参事官と分担して事務を進めてまいりたいと思います。
  配付資料ですけれども、お手元に議事次第、座席表、資料1-1、1-2、1-3がチームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会の中間まとめ、資料2がコミュニティ・スクールと学校支援地域本部等の一体的推進に関する検討の視点、資料3が生重委員の発表資料、資料4が、熊谷委員の発表資料、資料5が、今後のスケジュールです。
  参考資料1が審議体制、参考資料2が両部会での検討事項(例)、参考資料3がコミュニティ・スクールと学校支援地域本部等の一体的な推進に関する参考資料、参考資料4が前回の学校地域協働部会における主な意見、参考資料5が前回の地域とともにある学校の在り方に関する作業部会における主な意見、参考資料6が学校地域協働部会・生涯学習分科会における今までの主な意見です。最後に佐藤委員から学校運営協議会の権限外(派生)活動と成果認識の資料です。
  資料は以上でございます。過不足がありましたら、事務局までお話いただければと思います。それから、本日は学校地域協働部会の飯塚委員、平岩委員、地域とともにある学校の在り方に関する作業部会の宗岡委員が欠席でございます。以上でございます。

【明石部会長】
  資料の方はよろしいでしょうか。
  では、次に7月16日に初等中等教育分科会「チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会」から出されました、チームとしての学校の在り方と今後の改善方策についての中間まとめが提出されております。これについて、事務局より説明がありますので、初等中等教育企画課の福島補佐、よろしくお願いします。

【福島課長補佐】 
  初等中等教育企画課の課長補佐の福島です。本日は「チームとしての学校」、それから「教職員の在り方に関する作業部会」の中間まとめについて、資料1-1と1-2を使って報告をさせていただきます。
  まず、資料1-1、チームとしての学校が求められる背景というところです。丸で二つ書いていますが、多様化・複雑化する子供の状況への対応ということで、生徒指導上の課題、それから特別支援教育の充実。これは、特別支援教育の理解が高まっていることによって、例えば、医療的ケアの問題ですとか、いろいろな充実に向けた対応が求められています。そのような形で子供を取り巻く環境が複雑化、困難化しているということ。それから、貧困問題への対応、あるいは地域活動など、学校に求められる役割も拡大をしています。
  もう一つは、学校教育の質的充実に対する社会的要請の高まりです。これについては、今、教育課程部会で議論が進んでいます。次の指導要領改訂に向けて、授業の内容、それから授業の指導方法、評価方法を一体的に変えていくということが議論されていますが、このようなアクティブ・ラーニングやカリキュラムマネジメントといったことを学校で実現をしていくために、教員が自らの専門性を高める時間、研修、研究等の時間が求められています。
  一方で、我が国の教職員の現状というところです。まず、下のぽつからいきますが、昨年OECDの調査結果にも出ましたが、授業以外に日本の先生方は、幅広く総合的な指導を行っており、授業等に必ずしも専念できていないという現状があります。それと併せまして、我が国の学校は諸外国と比較した場合に、教員以外の専門スタッフの割合が決して高くはないという現状があります。
  このような学校、教職員の現状を踏まえ、どのように社会の変化、それから学校を取り巻く状況等の変化に対応していくか。二重囲みの部分ですが、教員の専門性だけでは対応が困難になっているということで、教員の専門性の向上を図ることと併せて、教員に加えて多様な専門スタッフを配置し、連携、分担をして、チームとして職務を担う体制を整備していく必要があるのではないかということです。
  このイメージですが、資料1-2を御覧ください。7ページ、横に図が入っています。これは若干ステレオタイプな形で、分かりやすさということでまとめています。従来の学校、それから現在の学校、それからチームとしての学校ということで整理をさせていただきました。チームとしての学校というところの下に、多様な専門人材が責任を伴って学校に参画をして、教員はより教育指導に専念をする。併せて学校マネジメントが組織的に行われる体制、それからチームとしての学校と地域の連携の強化ということで書いております。
  資料1-1に戻りますが、こういうイメージのチームとしての学校を実現していくための視点ということで、視点1、2、3三つを掲げています。一つ目は専門性に基づくチーム体制の構築。ここは、多様な専門スタッフが子供への指導に関わり、教員のみが子供の指導に関わる現在の学校の状況を変えていくというところです。
  視点2は、そういう形で専門性に関わるスタッフに入っていただくのはいいのですが、では、学校のマネジメントはどうするかという課題がありますので、多様な専門スタッフを一つのチームとしてまとめるために、これまで以上に校長のマネジメントの在り方、それから、校長のマネジメントを支える体制の在り方を変えていく必要があります。
  視点3です。学校の組織の在り方、それからマネジメントの在り方を変えていくことに伴い、先生方の働き方の部分についても変えていく必要があります。一人一人が力を発揮できる環境の整備と書いていますが、業務改善とか、あるいは人事評価の話、それから教育委員会の学校に対する支援について書いています。
  本日の会議に係る部分としては、特にこの視点1のところです。制度関連の三つ目の丸にありますが、地域との連携の推進を担当する地域連携担当教職員を法令上明確化してはどうかという部分です。
  作業部会におきましては、第11回に栃木県の教育委員会から、例えば、社会教育主事を持っている方が活躍するための条件整備として、どのようなことが求められるかを御発表いただきました。その中で、資格者を動かす校務分掌の整備とか、職員の意識の問題等を発表していただきました。
  そのようなことも踏まえ、この視点1の中で地域との連携の推進ということを明確化してはどうか、という提案をさせていただいているところです。
  24ページ1-2(1)の丸3にありますので、後ほど御覧いただければと思います。
  この作業部会は今、中間まとめというところで、この後の関係団体のヒアリング、それから引き続き審議を行い、年内に最終的なまとめという形で取りまとめていきたいと考えています。

【明石部会長】
  ありがとうございました。それでは、皆さん、参考資料1ですけれども、この合同部会は左の初等中等教育分科会と、右の生涯学習分科会で、この点線をまとめたところで、右の方から学校地域協働部会と地域とともにある学校の在り方に関する作業部会がお互いが歩み寄っていくということを頭に置きながら議事を進めていきたいと思います。
  では、続きまして、議事に入る前に、本日のテーマであるコミュニティ・スクールと学校支援地域本部等の一体化推進に関して、事務局より資料の説明がございます。鍋島室長、廣田補佐、よろしくお願いします。

【鍋島地域・学校支援推進室長】
  まず資料2を御覧いただければと思います。コミュニティ・スクールと学校支援地域本部等の一体的な推進に関して(検討の視点)ということで、これは、参考資料2を更に詳しく書かせていただいたものです。コミュニティ・スクール及び学校支援地域本部の拡大・充実のための推進方策として、有効と考えられる方策の一つである両者の一体的な推進に関しまして、以下の視点から検討をしてみたらどうかという提案であります。
  一つ目としまして、コミュニティ・スクールと学校支援地域本部等の学校支援の取組との一体的な推進をどのように図っていくか。学校支援の方からコミュニティ・スクールの方に発展するケースもありますし、逆に、竹原委員のところのように、コミュニティ・スクールの方になってから学校支援の方に移っていくようなものであったり、様々な自治体としての体制や一体的な予算の施策だったり、様々なものが考えられるかと思います。両者の一体的な推進を通じまして、学校と地域の教育活動がもたらす地域振興の方へ行くような話もあるかと思いますので、そのようなところも視野に入れていただければと思います。
  また、二つ目としまして、学校と地域の連携・協働体制の強化のための、学校運営協議会と学校支援地域本部が連携した組織体制の在り方をどう考えるのかということです。学校支援地域本部のコーディネーターが学校運営協議会の方に参画するなど、両方の方々がうまく相互作用、入り繰りができるような仕組みが良いのではないかという議論も、初等中等教育分科会の作業部会の会議でありました。協議と活動をつなげていくような両輪型というようなやり方もあるでしょうし、学校運営協議会の大きな組織の下で、学校支援地域本部を中心としたいろいろな部会を設けるような部会型のようなものもあるかと思いますし、地域や学校区の実情に応じた多様な形態があるのではないかと思いますので、是非アイデアを頂ければと思います。
  三つ目としまして、学校運営に対する地域住民等の理解・協力等の促進に向けて、学校運営協議会の機能として、「学校支援の総合的な企画・立案」等を制度上どのように位置付けるのかという論点もあろうかと思います。こちらにつきましては、後ほど廣田補佐からお話があるかと思いますけれども、学校運営協議会の機能をどのようにしたらいいのかということが初等中等教育分科会の作業部会の会議でもありましたので、また御紹介をいただければと思います。
  それから、参考資料3ですけれども、今申しましたような論点に係るようなもので補助的な資料がございますので、御覧いただければと思います。
  1ページ目ですが、学校運営協議会(コミュニティ・スクール)や学校支援地域本部が全ての学校に設置されているわけではありませんので、現在、どのような状況かという図です。コミュニティ・スクールは、今年度でいうと2,400という状況かと思いますし、学校支援地域本部は小中学校の約9,000校、約30%のような状況です。ただ、自治体によりますと、特にこの学校支援地域本部であれば、文部科学省の補助金事業を活用せずに、同じような活動をしているというところも、この倍の約60%はあるのではないかということも言われておりますので、様々な形態があると思います。両方の相互の持ち合いという学校、地域も非常に多いかと思いますので、そのような状況も御承知おきいただければと思います。
  2ページ目以降は、学校支援地域本部はどのくらいあるのか。特に高等学校、特別支援学校のあたりは若干通学区域も広いということもあり、まだまだこれからですが、この数年、少しずつ伸びてきた状況でもあります。
  また、3ページには、コミュニティ・スクールと学校支援地域本部等が一体的に推進していくためにはどうしたらいいのかということで、初等中等教育分科会の作業部会で様々御議論いただきましたものがありますので、後ほど御紹介いただければと思います。
  5ページには、学校支援地域本部からコミュニティ・スクールへの展開や、逆にコミュニティ・スクールから学校支援地域本部へ展開するような、例として奈良市と横浜市の事例を示しております。
  6ページには杉並区立第一小学校の事例等がございます。また、関係する文書の例も後ろの方に付けておりますので、後ほど、御覧いただければと思います。私の方からは以上です。

【廣田参事官補佐】 
  続きまして、初中局参事官付の廣田より追加で御説明させていただきます。お手元の資料2と参考資料3に基づいて補足したいと思います。本日は合同部会ということで、両部会の委員には一体的な推進というところを集中的に御議論いただきたいと思います。なぜこの一体的推進ということがテーマになっているのかということについて、補足をさせていただきます。
  第1回のそれぞれの部会で、私からコミュニティ・スクールの推進に関する調査研究協力者会議について御説明させていただきました。お忘れの部分もあるかと思いますので、かいつまんでお話をさせていただきます。特に資料2の3点目です。学校運営協議会の機能として、学校支援の総合的な企画・立案等を制度上どのように位置付けるかとあります。やや唐突感を持って御覧になられている方もいらっしゃるのではないかと思いますので、補足させていただきます。
  お手元の参考資料の3ですが、先ほど鍋島室長からお話がありましたように、1ページ目に学校運営に参画する協議体を置く学校、そして、学校支援活動を実施する学校、その関係を示しています。学校支援に取り組んでいるところと、学校運営協議会などを置き、学校運営に参画していくという取組は、それぞれ関係性を持って取り組まれているところが多いというのが真ん中です。コミュニティ・スクールのうち約7割が学校支援活動を企画・実施しており、約4割が学校支援地域本部を設置しているということが、この数字から見ても明らかであろうと思っています。
  3ページに学校運営協議会と学校支援地域本部の関係性が示されている資料があります。これが、今年の3月に協力者会議でまとめた方向性の中で示されたイメージ図です。学校運営協議会ですが、「学校運営の基本方針を承認する」と、「学校運営に関する意見を述べることができる」、「教職員の任用に関する意見を述べることができる」という、この三つが学校運営協議会の制度に定められた権限です。いずれも学校運営に関して参画をする、学校のガバナンスを強化するということにおける機能と捉えていただければと思います。つまり、協議する機能を持ち合わせているのが学校運営協議会です。
  一方、地域コーディネーターなどが主体となって、PTAや地域人材の参画を得ながら学校を支援する取組をしていただいている、これが学校支援地域本部です。言ってみれば、実働的な機能を持っているのがこの学校支援地域本部です。保護者、地域住民それぞれの力を得ながら学校を支援する、あるいは、学校に参画するという取組をばらばらに動かしていくということではなくて、一体的な方向性を持って動かしていくことがとても大切であるというのが、この協力者会議で整理をされたことです。
  9ページ、これがその会議で出された提言の抜粋です。コミュニティ・スクールの拡大・充実のための推進方策ということで、一体的な推進と書かれてある一つ目の丸ですが、4行目に、「すなわち」とあります。学校・家庭・地域が、共通の課題意識や目標等を共有するだけでなく、設定した目標の達成に向かって共に前進し行動している実感が、当事者意識やモチベーションの向上につながり、学校はより良く発展していくということで、両者が一体的に推進していくことの必要性をここで整理しています。
  その三つ目の丸ですが、学校運営協議会が法律上有している役割の重要性を踏まえた上で、両者の仕組みを有している地域においては、強みを生かしながら、そして、それぞれ持っているところについては、発展していくことにより一体的な取組を推進するということがここで示されているわけです。
  本日は、これを更に具体化していくことについて、御意見を頂ければと思っています。
  14ページを御覧いただければと思います。資料2の3点目の論点に示されていましたが、学校運営協議会の制度としての在り方に関して提言されています。14ページから15ページにかけて、学校支援に係る機能の明確化とあります。14ページ、一番下の2行、現行制度において学校運営協議会が有する権限は、学校のガバナンス強化のための権限となっていますが、学校・家庭・地域の信頼関係や協力関係を築いていくことが学校運営協議会の取組を充実していく鍵となります。
  実際に学校運営協議会の機能として、支援活動を実施していくことによって、成果認識に結び付きやすい傾向もあるということが示されています。本日、佐藤委員からも、その旨に関しての御意見を頂けると思います。
  15ページの一番下、検討の方向性ということで、学校運営協議会が学校に対する地域の人々の理解や協力、参画を促し、学校を支える基盤であるという観点を明確化していくことが必要である、とあります。16ページに、学校運営協議会の機能の一つとして、学校支援活動等の総合的な企画・調整の機能の明確化を検討すると示されています。あくまでも方向性を示したということで、検討することになっていますので、この中教審における場をもって、具体的な御意見を頂きたいと思っています。
  背景について御説明させていただきました。なお、6ページ、7ページ、8ページと、様々な一体的推進の姿があります。7ページには、学校運営協議会と学園支援ボランティア会議ということで、支援の組織をそれぞれ別々に設けながら、お互いに関係性を持っている、協議の機能と協働の機能をそれぞれ持っているというような例。そして、8ページに三鷹市の事例がありますが、これはコミュニティ・スクール委員会の下に学園支援部というのを設け、学校支援の取組を進めているという事例です。
  本日、2人の御発表の中でも、このような様々なスタイルについて御意見があると思いますので、それらを踏まえた御意見を頂ければと思っています。以上です。

【明石部会長】
  ありがとうございました。それでは、早速本日の議題に入りたいと思います。
  本日は、コミュニティ・スクールと学校支援地域本部等の一体的な推進に関し、連携の在り方や効果、課題について、まず生重委員、次に熊谷委員から、それぞれ20分程度で発表を頂きたいと思います。質疑応答の時間はお二人の発表が終わった後に、まとめてとりたいと思います。
  それでは、生重委員、よろしくお願いします。

【生重委員】 
  皆様のお手元にこちらの冊子が置いてあると思います。昨年度、学校と地域の新たな協働体制の構築推進委員会ということで、研究費を文科省から頂き、全国にヒアリングに行ってまいりました。文科省の事例に載せていただけていない杉並区の特色ある事例を持ってまいりましたので、お話を聞いていただきながらめくっていただけると有り難いと思います。
  この地域の特性を生かした学校運営協議会の作り方という研究ですが、私自身が様々な研修会で全国を歩きました。それぞれ、地域の特性が生かされない限り、持続可能な取組になっていかないということを、きちんとした形で研究としてまとめてみたいと思い、この冊子にさせていただきました。
  私たち杉並区は学校支援地域本部から始め、それからコミュニティ・スクール、学校運営に入っていきましたが、大切なのは、地域の特色を生かすこと、地域とともに考えること、そして、みんなが主体者になるということだと思っています。お開きいただきまして、コミュニティ・スクールの一体的推進の図を示してあります。これは、長いことこのテーマについて協議をしてきている委員の先生方なので当たり前のことですが、この学校運営協議会がやるべきことと、支援機能というのは明確に特色が違ってきます。
  学校運営協議会は、校長先生が作成する学校運営の基本方針の承認をし、承認した以上は共に行動し、共に責任をとる体制が重要なのではないかと思っています。ここに載せてあります人事のことについては、よく話題になるかと思いますが、私が10年間関わってきている中では、校長先生が学校の1年間の運営方針を御発表になって、その体制についてこういう人事体制でいきたいとか、実は力のある先生たちだが、異動時期に来ているからこういうことになりますとか、そういう人事についての御発言を我々も受けています。
  それとは別に、運営方針に従った形で学校経営者がきちんと述べていただくことに対しては、そんなに違和感を抱いたことは一度もありません。それに対して、いたずらなうわさに振り回されて、「いや、これは違うのではないか。」というような、そういう発言に結び付いたことは一度もございません。そういう人材を学校運営協議会委員にするということの方が違っている。運営委員を選ぶ際に、そういうことをきちんと考えられていくのが一番大事なのではないか。何事も最初が肝腎だと思っています。
  学校支援機能を持つことにより、コミュニティ・スクールがより一層生きていくことは事実です。次の4ページをお開きください。例1で、学校支援機能包括型コミュニティ・スクールと名付けさせていただきました。これは、京都のある学校の実践事例です。この包括的に校長先生のお考えの下に、子供たちの置かれている状況、困難を打破するために、どういう体制を作ることが大事かということを学校長がきちんと明確になされた。だからこそ、こういう体制が引けたという例ではないかと思ってヒアリングをしてきました。
  6ページが山口県の事例です。こちらは、コミュニティ・スクールから始めているのですが、体制づくりの段階で、きちんと心の教育、学力向上、体力づくりと部会が成立されていて、学校の教員が明確にこの部会の中に入り、全てに教育的な価値付けがなされているということが特徴なのではないかと思います。
  どの事例においてもそうですが、教員が言葉を選ばずに言うと、おっくうだとか、何でまた新しいことを始めるのだとか、そのように思っている段階では、かなり打開されない部分があります。ただ、価値を見つけて、そこに自分たちの教育者としての情熱を傾けたときに、本当にすばらしい結果が生み出されていくというのを、この2事例を通じて学ばせていただきました。
  次の8ページが、私が委員をやっている天沼の小学校の実践事例です。こちらは学校支援機能を中心に、このようなことまで支援しているのというぐらい、1年生から6年生の全ての教育課程や、中学校との連携を行っています。9年間の小・中一貫教育を研究したものもお手元に回していただいています。杉並区の研究指定を受け、アルプス9という、9年間の教育ということで、先生たちが小中の壁を越え、職員会議を行ったことにすごく意義がありました。
  その中で、お互いに教育の違いを分かり合えて、共にコミュニティ・スクールとして何ができるかということをやっていったおかげで、教育課程にがっちり組み込んだ支援体制が引けるようになっている。それは、教員と一体型で、教員がこう描くから望んだことが実現できる体制づくりになっています。
  この中で、私自身も委員をやっていて、地域から上がってきたり、保護者から上がってきたり、様々な課題を受ける体制づくりのようなものも、実はしっかりコミュニティ・スクールの中に作っています。そのときの対応としては、必ず当事者を交えた特別委員会を作る。そして、当事者の意見も尊重した上で、問題や課題解決に当たる。今までですと、天沼小学校では芝生の問題、学校開放の問題、放置自転車対策の問題、全てこれが問題だと持ち込んできた方を取り込んだ形で特別委員会を作り、みんなで課題を共有化しながら解決に向かうということに取り組んできました。
  次のページをめくっていただきまして、こちらも山口県の事例です。1月5日から南下してまいりまして、別府もまだ1年目なんですが、別府のコミュニティ・スクールの1年間の研修をやった後に、コミュニティ・スクールになり、今まで評価者であったり、評論家であった地域の方たちが、「自分たちがそれに向けて何ができるか。」というアクションを起こすようになりました。
  一番象徴的だったのが、虫歯の未処置率が非常に低いこと。8割の子が虫歯である。それについて、養護の先生から課題として提案がありました。それをグループワークで熟議しました。すると、今までは「何でも学校がやらなければいけないだろう。」とおっしゃっていたような立場の地域の偉い方たちが、「いや、僕は生まれたときからここに住んでいて、歯医者をやっている人は全員僕の知り合いだ。」と。「子供を受け入れてくれる歯医者は僕がリスト化できるだろう。」と。そして、「子供が見やすいように、自分の地域の歯医者を紹介できるようなことを僕がやりましょう。」と、70代後半の男性から御提案いただきました。
  すると、その回りにいたPTA関係者やPTAのOGのお母様方が、「一人にそういうことをしていただくというわけにはいかないから、私たちも一緒に活動して、まとめを作るときには私たちも一緒に子供たちのために活動していきましょう。」という話につながりました。最初は、「コミュニティ・スクールって何だ、今までとどう違うんだ、なぜ自分たちが責任をとらないといけないのだ。」というところから始めていったのに、最終的にはそこまで自分たちがアクションを起こすというところまで意見が出ました。それも、70代後半の方から出たというのは、1年間付き合ってきて相当感動したシーンでした。
  10ページ、11ページは、公民館タイアップ型のコミュニティ・スクールになっています。このエリアは同じ山口県でも、やっぱり個性が違っているということがすごく分かりやすい事例かと思います。公民館がしっかり地域の中で役割を担っていて、そして、学校運営協議会の方にコーディネーターとして公民館館長が入り、学校の授業、その他周辺についても全て支援活動をしています。学校支援活動を、公民館が主体的に担っているという事例になります。
  12ページ、NPO協働型のコミュニティ・スクールとなっています。京都の郊外の事例になります。自分の置かれている学校の地域課題をしっかり捉えていらっしゃる、すばらしい校長先生でした。貧困率が高く、保護者の目が向かない。地域もなかなか一枚岩になれない。そういう状況を打開するために、歴史のある子供劇場を前身とした30代半ばの若い方が代表をなさっているNPOが主体となり、子供たちにスポーツの活動であるとか、ときには朝食を提供する活動を行っています。
  なぜNPOと学校が連携するようになったかというと、そこのスクールソーシャルワーカーがその学校の課題を校長先生と共有化し、月1回、職員とスクールソーシャルワーカーのミーティングが行われています。その中からこの体制はどうだろうかという提案に、相談に乗ってくれたのがそのNPOの代表であり、自分の育った地域であるこのエリアを、若手の男性が何とか未来を担う子供たちのために解決していくための全てをやってみたいということでした。
  私たちがインタビューに伺った際には、その代表者と校長先生で御回答いただいたんですが、次はせっかく小学校で大切に育てたので、中学校に同じ仕組みを入れて、子供たちが義務教育下において健やかに学習できる環境を作っていきたいと力強く述べていたのが印象的でございました。お手元にこのペーパーを裏表で置いているのは、私の総体的なまとめであります。とにかく全ての各地のコミュニティ・スクール、学校支援体制を見てまいりまして、何が一番大事なのか。
  最初に申し上げましたが、新しいことがやって来て、それを押し付けられているという意識をいかに捨てるか。自分の勤務している学校、自分の子供が通っている学校がいかに良い環境に置かれて、子供たちの健全育成ができる状況が作れるか。それは、学校だけに責任があるわけでもなく、家庭教育だけに全ての責任を押し付けるのではなく、社会総掛かりでやっていく必要がある。そのためには互いの立場を乗り越えて、とにかく「熟議のススメ」とさせていただきました。
  教員同士による熟議、それから地域、保護者による熟議、それから教員、地域、保護者による三者の熟議というのが絶対に必要なんだと。PDCAサイクルを回すために、中学校のアンケート、学校長の経営ビジョンにのっとって、それをどう評価されているかということを春の段階で示します。こういう体制で校長先生、学校が経営ビジョンを打ち立てているのだというのを読んでいただき、それに対して、こういう目線で学校に参画してください。このようなアンケートが秋頃に配られますので、どういう目線でこのようなことをやっているかということを理解した上で、アンケートにお答えくださいと。
  「どちらでもない」をなるべくなくすために、保護者、地域に対する理解をきちんと示していただくアンケートを、今制作中です。
  そのようなことをトータルで考えると、私が一番大事だと思うのは、間をつなぐコーディネーターが必要だということ。それから、立場を越えて、何度も何度も話し合うということがお互いの理解を進める。愚直な話ですが、それしか課題解決の方法はない、便利で合理的なところには真の理解は生まれないと思います。
  この夏8月の末は私も天沼ウイークで、中、小、小と3校で合同の学校運営協議会で熟議をしますし、次の日は、中学校の全教職員と、PTAと、学校支援地域本部の人間と、コミュニティ・スクール運営委員のメンバーと、全員でサマーワークショップをします。次の日は、小学校でまたサマーワークショップをします。
  3校合同、中学校、小学校と、1週間のうち3回地域のサマーワークショップを実践いたします。そのような形で、あらゆる方を巻き込んでいくということが重要なのではないかと思います。7月15日に岩国商工会議所青年部のお招きで、山口県岩国市に行ってまいりました。実は、PTAの研修会を岩国でさせていただいた際に、PTA会長が商工会青年部の会員である方たちが多く、これからは地域の教育を支える子供たちのキャリア教育も含め、PTAも、それから商工会も積極的に関わるべきだ。だから、勉強会を開きたいので来ていただけませんかというお招きを受けて、お話をしてまいりました。
  実は今日、函館のPTAの方と打合せをして、函館でも前日に産業界や経済界の方向けの学習会をやって、次の日は函館市P連の講演会をいたします。親の理解、そして学校がどう次世代を育てるかという校長先生の経営ビジョン、その下に教員がどういう立ち位置で子供たちの教育を行うのかということを地域や保護者が理解せずして、よき学校というものは生まれません。そのためには、コミュニティ・スクールと学校支援体制の両輪こそが、次世代のための健全な学校経営ということになっていくということを、今回御発表に提出させていただきましたこの冊子にまとめてあります。簡単ではありますが、私からは以上です。

【明石部会長】
  どうもありがとうございました。では、続きまして、熊谷委員、よろしくお願いします。

【熊谷委員】
  岡山大学の熊谷です。資料4の発表資料を見ていただけたらと思います。
  まず1番、コミュニティ・スクールと学校支援地域本部の連携の必要性ということですけれども、以前発表させてもらったときに、学校・家庭・地域の連携は漢方薬だというふうに例えさせてもらいました。漢方薬だからこそ、意図的、計画的、継続的な取組が大切だと。その意図的、計画的、継続的な取組を進めるためには、連携推進母体というものが必要なんだと。だから、連携のファーストステップは組織づくりだという話をさせてもらいました。その連携推進母体として、これまでコミュニティ・スクールと学校支援地域本部に着目してきました。まず、学校支援地域本部は、これは先ほど発表いただいたように、何と言っても地域コーディネーターの役割が非常に大きいということは過言ではありません。どこの地域に行っても、コーディネーターがよくやってくれるということをおっしゃってくれます。
  しかし、個人の働きに依存しがちであって、その人が辞めてしまったり、キーパーソンが変わってしまうと取組が傾いてしまうという事例も少なくありません。そういう意味で、学校支援地域本部事業は事業の運営の継続性や安定性に課題を持っていると言えます。それに比べて、コミュニティ・スクールは制度ですから、制度としての強みを持つんですが、学校運営協議会で決めたことを実行に移していくには、今度は学校支援地域本部の地域コーディネーターや実行組織という力が必要になってくると。ただ、コミュニティ・スクールが学校支援の活動に偏り過ぎると、これはコミュニティ・スクールが地域本部化してしまうという課題が出てくるというわけです。
  このように、学校支援地域本部事業とコミュニティ・スクールの双方に潜む長所と短所の問題を乗り越えるためには、お互いの弱みを補って、それぞれの強みを生かして、両者を連携させていく取組がツールとして、コミュニティ・スクールと地域本部の二本立てというのが効果的ではないかということで研究を進めてまいりました。
  この二つのコミュニティ・スクールと学校支援地域本部の連携は何も珍しいタイプではなくて、コミュニティ・スクールの指定校のうち40%にも上っています。そういう意味で決して目新しい連携のタイプではないわけです。そこでこうした学校支援地域本部事業とコミュニティ・スクール、両方やっている学校を全国調査やアンケート、あるいはインタビュー調査をこれまで実施してきました。
  2のところですけれども、平成26年度の文部科学省の委託事業の調査の結果の概要版をこの発表資料の後ろの方に載せておきましたので、その概要版を基に説明させてもらいたいと思います。
  概要版の2ページ目を開けていただけたらと思います。下に2ページと書いてあるところです。この学校運営協議会と学校支援事業を二つの方式を連携させる、まず成果とかメリットについて伺ったところ、図表1の連携のメリットにありますように、1番は、学校支援活動が組織的に行われるという点を挙げているところが一番多かったわけです。
  つまり、こうした2馬力でやることによって、組織面での効果が発揮されると。このようにメリットはいろいろ挙げているわけです。では、今度はデメリットはどうかというと、デメリットで唯一半数を超えた項目は、これは校長等の管理職や担当教員の負担が増えるというのをデメリットで挙げる場合が非常に多かったわけです。これは、学校運営協議会と学校支援事業、二つ行うわけですから、管理職等の負担が増えるというデメリットが一番に上がってくるのも納得がいくことなのではないかと思います。
  もう少し負担が増えるというところに着目して調べてみますと、次の3ページ目の図表2を見てもらえたらと思うんですが、図表の2は、今度は、それでは学校支援地域本部の企画を地域住民が中心となって行うか、あるいは教員が、学校が中心となって行うかということによって負担感を調べたところ、学校の先生、教員が中心となって企画をすればするほど、校長先生の負担感がかえって増えていくという結果が出てきました。
  スリム化を図って学校主導で進めていこうということになると、かえって逆に校長の負担が増えるという傾向が、こういう図表からうかがわれます。では、一体どうすればいいかということで着目したのが、その次の協働活動です。協働活動というのは、教員と地域住民が企画運営を協働で行っていくという取組です。この協働活動を行っている方が、様々な面において成果やメリットを上げているという結果が出てきました。つまり、教員や地域住民や保護者が活動の企画・運営を協働で行っている、この協働活動というものが非常に鍵を握るということが明らかになってきました。
  余り時間がありませんので、その概要版の最後の9ページの成果と課題のところを見てもらいたいんですが、まず「おわりに」のところの成果と課題と挙げたところで、一番上のところに学校運営協議会と学校支援地域本部が連携した運営体制はとりわけ組織面で有効な運営体制と言えることが明らかになりましたと。ただし、学校運営協議会と学校支援地域本部事業とを同時に導入した学校では、運営上の混乱も生まれ、連携の効果が発揮できにくい傾向がありました。
  つまり、コミュニティ・スクールが先か、地域本部事業が先かというパターンで見ると、コミュニティ・スクールと本部一遍に導入したという学校は、これは運営上の混乱で効果が認識しにくいという傾向が見られたわけです。これは、学校運営協議会も学校支援地域本部も、地域とともにある学校づくりを推進するツールにほかならないことを踏まえて、それぞれの特性をしっかり理解しながら運営体制を整えていく必要があると。両方効果的だからといって一遍に導入するのではなくて、学校運営協議会や学校支援事業のツールとしての特性をしっかり理解した上で取り組んでいかないと、かえって混乱するという結果が見られました。
  それから、その丸の6番目のところには、「協働活動」を行っている学校の方が、先ほど言ったように様々な面においてメリットや成果を実感できていると。ファーストステップ、先ほど組織づくりと言いましたけれども、セカンドステップとして、協働活動というものが重要になってくるということが明らかになりました。
  続きまして、最後の10ページの課題のところを少し紹介させてもらいたいなと。今後の課題としてはということですけれども、協働活動というのが重要なんだということなんですけれども、協働活動の質を高めていく方策を検討していく必要があると考えています。その際、学校に関わる大人同士がチームで協働できる場の確保が肝要になってきます。確かに学校運営協議会は重要な場であることは疑いないのですが、ここでの学校運営協議会だけでの協議によるトップダウン型の運営体制では、協働を育むということが難しいと思われます。それより、有名なミドルアップダウンマネジメントをヒントにして考えると、トップである学校運営協議会と第一線の地域住民や保護者を結び付ける架け橋となるような、学校に関わる大人同士の協議の場である中間組織、これは仮に付けてみましたけれども、そういう中間組織の存在こそが必要であり、この方が協働を育みやすいということが言えるのではないかと思います。
  しかし、本調査結果を見る限り、学校運営協議会と学校支援地域本部を連携させた運営体制においては、学校支援地域本部における協議の場である地域協議会をやめて、学校運営協議会にその機能を一元化させて組織のスリム化を図っているという傾向が見られたのも事実です。これは、先ほどの御発表の中にも、学校運営協議会の権限を一元化して集中させてしまうと、こういうやり方が多く見られるんですけれども、ここに少し課題も見られるのではないかなと。こういうことを考えると、運営体制の在り方については、更に検討する必要があるのではないかと思います。そのほか、協働活動を高める一つの方法として、サービスラーニングという手法というのは非常に効果を上げるのではないかということを、概要のまとめとして挙げさせてもらいました。
  そこで、レジュメの方の提言や意見というところに戻りたいと思います。資料の1ページ目の3.提言・意見のところに戻っていただけたらと思います。
  まず、コミュニティ・スクールに学校支援機能を付加することについて、一つ目の星のところ、コミュニティ・スクールと学校支援地域本部の理想的な関係は、これは私どもも共同研究でいろいろなケース、タイプを調べていったわけですけれども、両者が別組織で機能を分けつつ連携していくスタイルと、これがやはり理想的なタイプだと。先ほどの御発表で言えば、学校支援地域本部を分離設置型のコミュニティ・スクール、杉並区の天沼小学校、これもインタビューさせてもらいましたけれども、そういう別組織で機能させている。ここが研究上は理想的だということは言えます。とはいえ、現実的には、学校運営協議会に学校支援機能を一元化させて、つまり地域協議会はなしで実施しているスタイル、これが主流を占めています。その点では、コミュニティ・スクールに学校支援機能を位置付けることは現実的に意味があると思われます。
  ただし、学校運営協議会に機能が集中し、トップダウン型で展開されたり、先ほど申しましたように、学校主導で行っていけばかえって課題が出てくるというのは既に見たとおりであります。学校運営協議会以外の場、先ほど中間組織と言いましたけれども、そういう場を確保し、教師を含めた学校に係る大人同士の学びを活性化させて、協働活動を展開していくことが学校にとっても地域にとっても効果を上げることにつながっていきます。
  このように見ますと、私はコミュニティ・スクールには単なる学校支援機能を加えるというのではなくて、学校と地域を協働させる。支援機能ではなくて、協働機能を付加させるべきではないかなと思っています。それが提言の1です。
  提言の2としまして、前回の会議でも話題になっておりましたけれども、やはり教育プラットフォームというものの構築を目指していくということが大切になってくるのではないかなと。そのプラットフォームについては2ページをめくった後ろに載っていまして、そのプラットフォームの図等を見ながら聞いていただきたいんですが、まず、この教育プラットフォームの教育は、これは当たり前のことですけれども、学校教育だけではなくて、家庭教育、地域社会、社会教育、さらには、前回、山野委員から御指摘があったように、子供の貧困ということを考えると、福祉を含んで総合的にプラットフォームとして捉えていくということが、まず1点、大切な点ではないかと思います。
  ただ、そのプラットフォームの範囲はやはり中学校区。それはなぜかというと、小中連携の重要性を考えると、中学校区で想定するという方がいいのではないかと。そして、図の中学校は、A、B、Cの三つの小中学校から成っています。Aの中学校は、これはコミュニティ・スクールと学校支援地域本部事業、二つやっているわけですけれども、学校運営協議会に一元化されたケースです。一元化されたケースですが、その場合でも学校運営協議会以外の中間組織を確保して、それが拡大地域協議会につながっているということが重要になってくる。Bの小学校は、これはコミュニティ・スクールはしていません。学校支援地域本部事業のみを行っているタイプです。それから、Cの小学校、これはコミュニティ・スクールプラス地域本部で、地域協議会が学校運営協議会とは別組織で存在する。先ほど言いましたように、これは研究上は理想的なタイプだと言えると思います。
  しかし、現実はいろいろなタイプがあるということは先ほどの発表でもありました。そういうA、B、Cの小学校を含めながら、中学校区でのプラットフォームが構築されていると。その今度はプラットフォームの中身ですけれども、プラットフォームを機能させるためには、それぞれの地域協議会等とつながった中間支援組織としての拡大地域教育協議会、これは飽くまで仮称ですけれども、そういう中間支援組織が重要になってきます。
  ただ、地域によっては、もう青少年育成協議会というのはうちの地域にはあるという場合には、その協議会をリニューアルしていくということも可能なのではないかと思います。そこの協議会を切り盛りしていくのは、いわばコーディネーターのコーディネーターのような総括コーディネーターの存在が鍵を握ることになっていきます。それぞれ、A中学校、B小学校、C小学校にも地域コーディネーターはいるわけなんですけれども、そのコーディネーターという総括コーディネーター、これにはできれば社会教育主事。難しければ、社会教育主事の有資格者という者を充てていくと。
  最後の星のところを見ていただくと、組織づくりという点では、例えば学校内の中間組織のような存在を教育プラットフォームの機能を担える組織、中学校区に発展的に再構築するということを促していったり、今度は逆に山口県のように地域教育ネットのように地域にプラットフォームを作って、個々の学校もその中に参画する一員としての在り方を探っていくなど、学校内という閉じられた組織で捉えている考え方を脱却していく必要があると考えられます。
  さらに、それは各学校における地域とともにある学校づくり、これはA中学校、B小学校、C小学校、それぞれ地域とともにある学校づくりを進めていく必要があるんですけれども、それだけではなくて、今度は中学校区で学校とともにある地域づくりという視点も含めた、両視点からの検討が必要であると。この地域とともにある学校づくりと、中学校区での学校とともにある地域づくりをつなぐのが地域教育協議会だと。それが図のピンクの線になっていますけれども、それが連結させてつないでいるというところが、このプラットフォームのみそだというふうに作っています。
  それから、最後、提言3ということで、教員の養成・研修に関してということです。前回の発表させていただいた中でも、こうした学校・家庭・地域の連携を進めていくためには、教員の意識が非常に大切だという話をさせてもらいました。その際、学校に関わる地域の大人たちを新しい同僚と。サポーターではなくて、パートナー、同僚と理解するということが必要だということも話させてもらいました。これはチーム学校という視点からも言えることなのではないかと思います。同僚は学校の中だけではなくて、学校の外にも新しい同僚がいるんだということを理解していくことが大切なのではないかなと思っています。
  そのように捉えたときに、これは教師の職能成長というものを山で捉えてみました。その次のページ、3ページ目を見ていただくと、教師の職能という山を築くという点なんですけれども、これまで教師の職能というと山の高さ、個としての発達ですけれども、これは授業力だったり、学級指導力だったりという目に見える高さ、専門性をいかに高い山を築いていくかということが注目されてきました。
  しかし、山を築いていくためには山の裾野や地盤というものがやっぱり大切になってくると。その裾野の広がりが人間関係を構築する力なのではないかなと。チームアプローチ力とか言われていますけれども、こうした力が大切になってくるのではないかと。
  そこで調査研究をしたところ、3ページの星のところですが、同僚性の高い教師は、同時に学校・家庭・地域の連携協力にも積極的に取り組んでいるという結果が見られました。つまり、学校内でチームで同僚性を発揮している教員は学校外ともうまく連携させている。また、反対のことも言えると思います。これは相関ですので、学校・家庭・地域の連携を進めていくことによって、学校内の同僚性を高めるということもできると。
  このように、こうした人間関係がつながるというのは、外と内がつながっているというふうに捉えます。こういうことを高めていくと、教師の世代性という成熟性も得点が高いという結果が見られました。このように見ますと、下の矢印のところですけれども、教師にとって同僚教師や学校外の新しい同僚との間に同僚性を育むということが、彼らの関わりの中の発達や世代性の成熟を支え、ひいては教員として職能発達も促されると言うことができると思います。
  これまで教師の職能というと、山の高さという専門性が非常に重視されてきましたが、やはりその山を裾野のところの人間関係を構築する力、それは学校内と学校外。そういう力を育んでいくということが、教師の職能発達という点でも意味があるということが言えるのではないかなと思います。
  このように見ると、前回、従来の学校間の変容もということが話題になりましたけれども、教師の意識変容としては二つ考えられると思います。一つは、取組を通した変容。活動をしながら地域の人や保護者の人と汗をかきながら変容していくということもあるでしょうし、それから学習、研修による変容という二つの面からの変容が出てくるのではないかなと思います。そういう意味では、新任教頭、校長研修における研修内容として、地域とともにある学校づくりの位置付けということが管理職には必要になってきますし、今度は大学の教員養成段階においては、やはり学校・家庭・地域の連携という、こういう横のつながりという、チームアプローチの力という、これも大切なんですけれども、と同時に、生涯学習教育の縦の統合という学び続ける教員像という点から言うと、横だけではなく縦の二つの点から教員の学びということが必要になってくると。これは手前みそになって申し訳ないんですが、生涯学習の理念というものがやはり教員養成において非常に重要になってくるのではないかなと思っております。以上で発表を終わります。

【明石部会長】
  はい、ありがとうございました。お二人の発表をお聞きしますと、非常に問題が整理されつつあるかと思います。したがいまして、お二人の発表について御質問、御意見がありましたらお願いいたします。

【黒瀬委員】 
  高知県で中学校の校長をしています黒瀬といいます。今、3校目のコミュニティ・スクールの立ち上げに関わっていますが、前任校のときに熊谷委員に来ていただいて、ヒアリングをしていただきました。そのときは、学校運営協議会と学校支援地域本部は別々に動いていましたが、統合して一元化してやるのがいいのではないかという話をさせていただきました。
  その後、去年1年間掛けて両者の代表に出てもらい、どのように統合するかという検討をした上で、この4月から一本化し、統合しています。学校の立場から言うと、二つの組織が別々に動くのは負担増になります。結局同じことをやっているような気がすることもあり、一元化した方がいいのではないかと、自分としては思っています。
  ただ、熊谷委員も懸念されているように、そうしてしまうとトップダウン型になってしまい、上からの押し付けになるのではないか、という懸念はあります。それを回避するためにも、熊谷委員も言っておられるように協働活動を行うことが大事だと思っています。前任校では部会と言っていましたが、全教職員も入って部会をすることによって、地域住民、保護者と一緒に何か汗をかいて動くことで、それを回避してきたという経緯があります。
  学校運営協議会と学校支援地域本部が別々に動くのが理念としてはいいのかもしれませんが、学校の立場からいうと一元化するのがいいのではないかと考えています。

【明石部会長】
  ほかに御意見ありますか。はい、浅原委員。

【浅原委員】 
  山口県教育委員会の浅原です。今日のテーマは、コミュニティ・スクールと学校支援地域本部の一体的な推進ということですが、そのベースとなるコミュニティ・スクールについて、生重委員にお尋ねします。先ほど、学校運営協議会の委員を選ぶときの留意点であるとか、教員の参画について、大変分かりやすいお話をしていただきました。
  実際、私どももコミュニティ・スクールの取組について頑張っていますが、設置率は向上したにせよ、各コミュニティ・スクールの温度差というか、熟度の差というか、これが今大きな一つの課題です。先ほどお話があったように、コーディネーターが大変重要だとか、あるいは何度もしっかりと話し合うことが大切だということをおっしゃいました。いろいろな地域を見て回られて、コミュニティ・スクールの熟度を上げるという意味で、こういう取組は大変効果がありそうだということがもしありましたら、参考までにお聞かせいただくと幸せです。

【明石部会長】
  どうぞ、お願いします。

【生重委員】 
  一番早いというのはおかしいですが、理解が進むのは、子供たちがすごく前のめりに、身を乗り出して熱中できるような外部と連携した授業を見せるというのが、私は地域や保護者の納得度を上げていく、一番になっていくような気はいたします。
  高知の校長先生が発言されていましたが、私、最初の頃に学校支援地域本部をお作りになった高知の、「土佐の一本釣り」の町、香美郡の小中学校の事例を見せていただきました。大学も連携して、小学校5年生と中学校2年生が地域の水辺の生態系や自然について学び、データ分析を大学に頼んでいて、山を守る方と、川を守る方と、海を守る方が入って、1年生が発表の場に呼んでいただきました。
  中学校1年生と小学校1年生が保育園、幼稚園児を呼んで、中学校1年生の指導の下で小1がペープサートや大型絵本を作りました。校長先生にお伺いしたら、子供自体が少なく、自尊感情が非常に低い。でも、その中で異年齢を超えての活動で、すごく小さな小学校1年生や5年生が、中学生をリスペクトするようになることで、自尊感情の高まりがあるというお話でした。
  それを、ほとんどの地域の方たちが見に来られています。それをやることは、本当に理解が進むということの第一歩だなというのを、ほかの地域でも見せていただいたものの、象徴的だったなと思うのが、須崎の例だったような気がいたします。
  そのように、これからの21世紀型の学びって、アクティブ・ラーニングだとか横文字で言っても、保護者も地域も「何だろう。」となります。自分たちの地域課題にどう応えて、子供が学習の面でどう生かして、どんな成果を発表して、そして地域に発信するのかという姿を見せていくことこそが、やはり地域で運営する学校になっていくということの最初の第一歩のような気がいたします。
  そのためには学校長の研修が重要かと思います。校長先生のまず率先したリーダーシップと、描きがない限り、現場の動きはないと私は思います。以上です。

【明石部会長】
  はい、井出委員。

【井出委員】
  先ほどのコミュニティ・スクールの成熟度ということでいろいろ議論がされているんですが、私はコミュニティ・スクールを評価する立場にいますので、幾つかお話をしたいのですが、杉並区の場合には、コミュニティ・スクールにかわったのが64校中29校で、あと五、六年掛けて全校をコミュニティ・スクール化していく。これは推進計画の中に位置付けているんですが、方向性としては学校支援本部が成熟していく中でコミュニティ・スクールに移行していくような、つまりコミュニティ・スクールを維持していく体力を培って、コミュニティ・スクールに移行していってくれればいいと思っていますから余り慌てないんですが、既にコミュニティ・スクール化しているところをどう評価しているかと。
  それは、その大体30校が四つぐらいのグレードに分かれるんです。一つは、完全に学校長のいわば支配下から離れることができるような、コミュニティ・スクール自身が校長と経営の方向性を一致させながら、自立的に活動していくことができるところまで来ているところ。それから、2番目は、それに近づきつつあって、まだまだコミュニティ・スクール自身の力も十分ではないし、校長のコミュニティ・スクールに対する理解とか、期待とか、あるいは自分の力も伸び切っていないところ。Cは、校長がまだ学校経営に限界を感じていないところなんです。
  私は校長会でいつも、校長の経営力の限界を学校の教育活動の限界にしないでくれというのは常に言っているんです。つまり、教師の指導力の限界が子供の学びの限界になっては困るので、それをどう克服していくかというのが最大のテーマなんですけれども、校長の学校経営の能力がその学校の教育活動全般のレベルになるようでは、これはまた困る話で、我々は常に校長の経営能力を超えたものを期待しているわけですから、それをどういうふうに補?していったらいいか。
  そうしたら、それは二つしかないので、一つは、校長自身が力を伸ばしていくということと、もう一つは、足らないものを外から調達してくること。新しい経営資源を外から集めてきてもらいたい、そのための支援は我々は十分にやりますからということで、ずっとこの間取り組んでいます。
  ですから、Cのところというのはどこかというと、校長がまだ自分の経営の限界を感じていないところなんです。ここを変えていくのがかなり難しいんです。研修では変わりません。大体3学期に全部の校長からヒアリングをするんですが、自分の能力を過信している校長ほど、コミュニティ・スクールなど学校支援本部ということを相手にしない。だけれども、実はよく聞いてみると、その学校がかなり停滞している。いろいろなものの動きが止まっていて、子供の教育に関する活動そのものの質もかなり低下している。ここをどういうふうに変えていったらいいかというのを、我々、教育委員会ですから、サポートしながら次のステージに持ち上げていくような取組をしているところです。
  ですから、コミュニティ・スクール化すればうまくいくとばかりは思っていませんけれども、そのコミュニティ・スクール化していくプロセスの中で校長も成長していくし、我々のサポートの在り方もかなりブラッシュアップされていくのではないかなと思っています。

【明石部会長】
  では、関委員。

【関委員】
  非常に素朴な質問なんですが、地域ではいろいろな活動を今まで、社会教育とか、地域づくりで行ってきて、そこにはやっぱり人がいると思うんです。今までそのような地域の人材がこのコミュニティ・スクールの学校運営協議会であったり、あるいは学校支援地域本部であったり、あるいは場合によったら地域の公民館の運営審議会みたいな組織であったり、いろいろなところで全部違う人材がその中に登用されて動いているところが多いんですか。
  我々の地域でイメージすると、人材的には極めて限られる。その中で全部重複するような形で今は動いてきています。ですから、お互いがぶつかることも基本的には余りないですし、それゆえに波風を立てず、学校をみんなで支えていこうという関係で今動いているんです。
  実際に今こういうふうな組織が動いて、両方が別々に、あるいはくっつくという議論をするときに、そこで活躍する人が全く違う人とイメージしていた方がいいのかどうか、確認させていただけたらと思います。

【生重委員】 
  どこでも金太郎飴(あめ)だと思います。ただ、私はいつもお伝えするときに言葉を選ばないタイプなので、すごい嫌われる場合もあるのですが、要するに、会長とか委員長とか、そのような役だけを受けたくてやっている人は、もう出てこないでという話です。自分から汗をかいてアクションを起こしてくださる方でなければ駄目です。リーダー自らが、例えば何とか部会、何とか部会と作っていったら、そこで自らがアクションを起こさない限り、誰かに命令したり、お茶を入れさせたりするような人が出てきても、変わりません。
  そのためには、諦めずにいろいろな学習会を開いていくと、意外とそれなりに変わっていってくれている例もあります。ただ、やはり地元を大事に思っている方を入れておいた方がいいに決まっています。よそから来る方は、意外と自分の評論とか、自分が今まで学んできたことを押し付けようとなさるんです。外部が入っていることも刺激にはなりますが、しかし、総体的にはやはり金太郎飴でも意識を変えて変わっていかないといけません。
  地域というのは、新しい組織に生まれ変わるというのはなかなかできないのではないでしょうか。何々会というものがありまして、さっきの教育プラットフォームのような形になったとしても、既存の組織があったときには、本当につまらないことになってしまうかもしれません。この図式のとおり行ったらすごくいいのですが、地域は同じ人がやっていて、ずっと同じことをやっていて、餅をつけば地域貢献だと思っている人たちがいて、そういう人たちの頭を変えていかなくちゃいけない。
  餅を食べさせることも大事ですが、今からの子供たちの学びに何があったらもっと魅力的なのだろうか、自分たちの地域をどうやって愛していける、誇りに思う根底を掘り起こすのはどうやっていけばいいだろうか、そのようなことが理解し得る、アクションできる人に生まれ変わってもらうしかありません。
  先ほど、杉並区の井出教育長から、「なかなか校長は研修によっては変わらない。」とありました。本当にそういう人たちが多いのは私も分かっているんですが、諦めたくありません。地域も変わらない人たちがいる、自分たちが何で責任をとらなければならないのだという声も聞くんですよ。でも、自分たちの地域の学校は自分たちでよくするのだという意識になっていただかない限り、変わらないなと思っているので、金太郎飴でも諦めません。
  校長はいずれ退職するから。地域は引っ越さないので、諦めずに、嫌な思いをしても、何をしても我慢して、何とか語り掛けていくことが大事だと思います。

【明石部会長】
  人口が、1万以下と、3万から5万と、7万から10万ぐらいのところと、30万ぐらい、50万によって、この二つの組織の人員がダブる場合と別々にできる場合があるかなということをおっしゃったもので、1万人以下の場合はほとんどダブりがあって協働するのは当たり前ではないかという意見が出ると思ったんですけれども、その辺、協働のことを推進している熊谷委員はどのように考えますか。

【熊谷委員】
  もちろん、人口が少ない地域の小学校とか中学校になってくると、先ほども言ったように委員がダブっているということになります。
  ですから、ただ、そうであっても、教員と協働しているかどうかという方が、教員と地域住民が。その場合、地域住民だが協働している場合と、教員も企画の段階から入っているというところが、この協働活動のメーンなんです。先ほどの山口県の浅江中学校の場合は、コミュニティ・スクールの中の分科会と、それから教員の校内研修の分科会、一緒になっている。そうすると、教員と地域住民とがそこの協働できる組織を作っているわけじゃないですか。だから、幾ら小さくて委員がダブっていても、これ学校の校長先生の中には、今までインタビューに行った中で、こういう校長先生もいらっしゃいました。うちは、コミュニティ・スクールには先生を関わらせない。先生は忙しいので関わらせないんだと。校長がこれをやるんだと。だから、一般の教諭は関わらせないような仕組みを作っているんだと、こういうふうに胸を張っておっしゃる校長先生もいらっしゃいます。
  それだけ学校の先生は多忙なので、こういうコミュニティ・スクールなどは教頭や校長の管理職の仕事だと。だから、切り離している場合があるんです。だけれども、小さくても協働できていないということはいっぱいあります。

【明石部会長】
  はい、牧野委員。

【牧野委員】
  社会教育、生涯学習をやっている者としまして、ちょっと気になることがあります。
  お話を伺っていて、今日はいわゆる学校支援地域本部とコミュニティ・スクールの一体的な推進の在り方ということが、制度論みたいな形で議論されているのだろうと思っていたのですが、制度の中で子供たちがどういう学びを展開するのだろうかと、少しイメージしにくい印象を抱いています。
  それと、もう一つ、先ほどから議論になり始めて、生重委員がおっしゃいましたし、私も現場に入っていますからそういう感覚を強く持っているのですが、地域の住民がそこでどう学びながら、どう変わっていくのだろうかということのイメージもしにくいというのが印象としてあります。
  私は各地の教育委員会に伺ったり、学校に伺ったり、また地域に伺ったりしていろいろ学ばせていただいているのですけれども、やはり先生方が多忙だということは問題であるのですが、もう一つ、例えば学校の中で子供たちをどう学ばせていくのかという課題や、それから不登校がどんどん増えているという課題などを考えますと、親の持つ社会的な資源の問題や格差が子供に反映してしまっていて、そして既に子供たち自身が学ぶ意欲を持てなくなっているという状態の中で、学校も呻吟(しんぎん)していると訴えられる場面によく出くわします。
  さらに、地域社会との関係の中でこうした問題をどうしようかというときに、やはり学校が抱え込んでしまうところがあって、それでなかなかうまくいかない。先生方もある意味で疲弊し切ってしまっているとよくおっしゃいます。学校支援地域本部や、コミュニティ・スクールの在り方を考えた場合、こういう問題はどうしたらいいのだろうかとよく思ったりします。
  もう少し言えば、今、学校に行けていて、きちんと勉強できている子供たちにしても、将来どういう学力を身に付けて、どういう人生を歩んでいくべきなのかといったことを、私たちは決められるのかというと、決められないだろうと思うのです。
  その意味で、彼ら自身も、今回の諮問の中にも入っていると思いますが、社会を生き抜く力ということよりも、むしろ社会を創り出していく力をどう彼らが身に付けていくのか。このことが課題化されるのではないかと思います。子供たちに対して、学校における基礎学力の保障とともに、いろいろな社会経験を積む中で課題解決をしていけるような力を付けていく。しかも、その力とは、親が持っている社会資源と関わりなく、全ての子供たちが同じように身に付けていきながら、自ら自分の人生を切り開いていくものでなければならない。しかも、一人で人生を切り開くわけではなくて、仲間と一緒になって切り開いていくという形で、将来を展望できるような力を付けていく。それこそが、学校が地域社会と一緒になって経営されていくことの核になっていかなければらないことなのではないかと思うのです。
  子供たち自身を地域社会でどう育てるのか。このことは、学校を核にしながら地域社会がどう変わっていくのかといったことと一体化されて、議論されていく必要があるのではないかと思います。この意味で、この場での議論が、もう少し子供ですとか、地域における大人がどのように動きながら地域を創り出していくのか、また、どのように学校を新しくコミュニティ・スクールにしていくのかといったことが、もう少し具体的にイメージできるような議論になっていくといいかと思います。いかがでしょうか。

【明石部会長】
  牧野委員の話は非常に大事なので、この後の自由討議、全体の中で深めていきたいテーマだと思っております。それは頭に置いておきます。浦崎委員。

【浦崎委員】
  お二方の委員に質問させていただきます。地方創生に絡み、地域の持続可能性をいかに向上していくのかという視点、そして、あと熊谷委員がおっしゃった教育プラットフォーム、これはとても魅力的で、これにより広く、より強力な支援が得られることを期待する立場から質問させていただきます。
  1点目。学校でどんな児童生徒を育てるか、これは校長が決めていくことだと思います。では、地域の将来を担う次世代の育成、次世代はどんな人物像なのか、その人物を育てていくためにはどのような取組が必要なのか。これを描くのは誰の仕事なのでしょうか。
  2点目。1点目に関連いたしまして、小中学校段階では描きやすいと思いますが、高校段階では誰の仕事になってくるのでしょうか。この辺りについて御見解を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

【明石部会長】
  かなり大きいテーマですけれども、いいですか。

【生重委員】 
  浦崎委員の正解に行き着くかどうか分かりませんが、校長先生に私たちの地域の子供たちの全てを決めていただきたいと思ってはいません。そのためのコミュニティ・スクールであって、校長がどのような学習展開をしていき、どのような目標で子供を育てるのだというビジョンや、年間を通してのミッションを挙げてきたときに、この視点が足りていないのではないかとか、去年はどのようにその辺りのことが挙がり、どう成果が上がったのですかと。
  どんな人間像になってほしいかというのは、保護者でも、地域でも共通しているものがあります。それが学びの展開の中で、いかに子供たちが自然体で自ら発露できるようになっていけるのかということが一番大事で、子供が見える学び、見えるコミュニティ・スクールでないと、子供が意欲的に学ぶ学校でなかったら、やる必要はないわけです。だから、継続的に続いていく人間力を育成し、定着化させていくためのきちんとした基礎学力と、それに基づいてアクティブ・ラーニング、発展した能力を身につけさせるというところは共有化されているので、校長一人が決めていくということは絶対にあり得ません。
  地域共有の下でそのような観点に立てば、そこには高校がますます重要性を帯びてきます。もっと大きく地域を捉えた中で、高校が地域の小学校や中学校に与える影響力も大きくなっていくわけです。そのようなリーダーシップをとっていける人物像になってほしいとするならば、徒歩圏内の小学校から、もう少し広い範囲の中学校、そしてバス、電車に乗って通う高校のエリアの中で、地域という共有性で、どのような人間像なのかが大切です。だから地域再生であり、これからの新しい地方創生であります。
  自分たちはこの地域に対して何を恩返しができるだろうかとか、自分たちはどういう学びをして持って帰ろうかとか、そういうことをトータルで学びの中に入れていかないと、これからの地方創生という意味においての本来的な学びになっていきません。これから、コミュニティ・スクール化していくのは、絶対的な必然だと思っています。
  もっと広い範囲の中で、高校に対するコミュニティ・スクールの新しい在り方というのが問われなければいけないのではないかと思っています。

【明石部会長】
  では、藤田裕之委員。

【藤田(裕)委員】 
  京都市の藤田です。生重委員の報告の中で、京都市の例を二つも出していただきましてありがとうございました。そのことも含めまして、少し補足的な話にもなるかもしれませんが、意見表明をさせていただきたいと思います。
  このコミュニティ・スクール、学校運営協議会と学校支援地域本部の関わりについて申し上げます。京都市の場合、当初から学校支援地域本部を内包した、包括した形で学校運営協議会、コミュニティ・スクールができてきたといういきさつがあります。その辺りを少しお話しします。
  まず、開かれた学校づくりということを進めていく中で、課題を市民の皆様、保護者の方々と共有するということが大きくなりました。その課題を共有するという意味では、まさに地域の実態を踏まえる。子供の状況を踏まえて、そしてまた地域の強みも生かしていくということで、それぞれの学校の課題をしっかりと浮き彫りにしよう、共有しよう。そのために、情報を共有する、その情報を共有するという中には、まさに開かれた学校という言葉が出てくるわけです。
  教職員の意識、特に悪いことは地域に出さずにいようという、そういう意識も変えていかなければなりません。マイナス情報もしっかりと共有していくということを進めてきたところでした。そして同時に、その次に評価を共有していくという段階になるわけです。地域の皆様に学校評価をお受けし、うちの学校は60点です、隣の学校は80点ですという話になったときに、だから、隣の学校の方がいいですねという比較ではなくて、うちの学校は60点かと。では、残りの40点は地域、保護者で分担するのだなと。どうすれば100点満点にできるのかという評価を、地域の方と、保護者の方と一緒に進めてきました。その延長線上で、では、行動を共にしましょうというのが、特に京都市方式の学校運営協議会だったということになろうかと思います。
  ですから、必然的に、今申し上げたように、マイナスの情報もはっきり出していくが、そのために保護者の皆様、地域の皆さんで一緒にやっていきましょうと。そして、学校を応援してください。まさに先ほどのどんな人間像を共有するのかというお話でしたが、その代わり、学校も皆様と、どんな子供を育てたいのか、熟議をして、情報共有して一緒に行動しようではありませんかということが、京都市での学校運営協議会の原点だったのではないかなと考えています。
  その意味で結論としては、先ほどおっしゃっていただいたような、学校運営協議会と学校支援地域本部、京都の場合は学校支援地域本部という形がないんですが、事実上最初から入っていますし、統合した形が進めやすいのではないかなという意見を持っています。同時に、そのときには学校運営協議会に集約するといっても、今の学校運営協議会でいいのかという部分においては、やはり意識改革、内容の改革というのを十分していける条件づくりも必要なのではないかと思っています。
  それから、もう一つだけ付け加えたいのですが、その中で地域の活性化も視野に入れていく必要があるわけです。例の5で出していただいた、NPOが関わったという事例は、率直なところ、地域のコミュニティ力が非常に弱い地域です。地域のリーダーが余りおられないところなので、そこにいわゆる地縁組織は弱いが、志でつながっているNPOが立ち上がってきてくれたということです。恐らくそういうメンバーが次の地域を担っていける形で育ってくれるのではないかということも期待しながら、そこの学校独自の課題として取り組んだ方式になるかと思います。
  最後に、文科省にもお願いしたいのですが、社会教育主事講習の資格の話、熊谷委員の御指摘にもあったんですが、社会教育主事講習を教職員に受けさせていく、取得をさせていく、あるいは地域の方に取っていただくということは非常に大事だと思いますが、その中に、学校運営協議会とかコミュニティ・スクールのことがどのくらい入っているのでしょうか。私の10年ぐらい前の記憶では、もちろんまだこういうものはありませんでしたので、今の段階で入れていただいているとは思いますが、しっかりと社会教育主事講習の中でも、学校運営協議会のことを強力に入れていただきたいということを要望させていただきます。
  長くなりましたが、以上です。

【明石部会長】
  竹原委員に発言を頂く前に、こちらの司会のミスなんですけれども、お二人の非常に貴重な発表を頂き、御質問を頂きました。
  今日、佐藤委員がいらしておりまして、佐藤委員は、かなり学校運営協議会のことを詳しく調べております。その成果を踏まえて自由討議に行きたいなと思っております。
  それで、先ほどの牧野委員の御意見も含めて議論を深めていきたいと思いますので、佐藤委員、話題提供をお願いいたします。

【佐藤委員】 
  では、短時間に話題提供ということで報告いたします。今日お配りしたプリントで、A4判1枚の学校運営協議会の権限外(派生)活動と成果認識、これは学校運営協議会を設置している学校の校長の認識です。今京都のお話もありましたが、平成16年、コミュニティ・スクールが導入されたとき、私は足立区の五反野小学校に関わっていて、後によく対比されるのが、巻頭はガバナンス型、西の方は学校支援型とか、当初言われたわけです。
  ただ、事実上、学校支援活動を抜きにして学校運営協議会が今考えられない段階になってきています。むしろ、本来の権限の方を弱めて、学校支援に傾斜しているところもなくはないわけです。そこで、私たちが2011年度に文科省の委託の受託により実施した全国調査によりますと、プリントのような結果が出てきました。派生的活動、権限外の活動ですが、この時点で具体的にどういう活動をやっているかということを事例から把握して、項目を幾つか並べました。
  学校運営協議会で、学校支援活動を実施という活動項目があります。これは、今の話でいうと一体化しているところ、あるいは学校支援地域本部を置いていないが、学校支援活動を学校運営協議会で行っているところも含まれています。ですから、いわゆる別組織、学校支援地域本部と学校運営協議会を離したところは、おそらく回答していません。およそ小学校70%、中学校60%の回答になります。これは、校長の成果認識とクロスしています。そして、カイ二乗検定の結果、1%有意のものが二重丸となります。5%有意が一重の丸という関係を表しています。
  成果認識項目は全部で20ありますが、関係あるものをピックアップしてあります。すると、学校支援活動を実施というところは、ここでは全て二重丸になっています。これは相関の問題ですから、因果関係は分かりません。ただ、相当強い関係があると思います。あと、右の列に保護者の苦情に対応というのがあり、これは実施率が7%ぐらいと低いです。したがって、有意差が出にくいわけですが、何か関係がありそうなのが三角になっています。保護者や地域からの苦情は減少、三角で、有意性はないんですが、これは該当する度数が低いということが関係しています。
  あと、右側に学校評価を学校運営協議会で実施して、大体七十七、八%がやっています。これは、学校評価を効果的に実施で、強い相関が見られます。その他は、余り関係ありません。あと、学校運営協議会、地域行事を計画というのがあり、これは、児童生徒の変容に関わっている可能性があります。
  右側に学校行事を計画しているとあります。これは、実施率10%前後です。学校は活性化、地域教育力が向上したというところに強い相関が見られます。5列を見ていただくと、学校支援活動の実施に関しては、校長の成果認識に強い関係があるということが分かりました。
  先ほど熊谷委員の御発表を聞いて参考になったのですが、学校支援地域本部と一体化するときにどうなのか、あるいは、学校支援部門というか、実働組織を置いたときにどのようになってしまうのか。トップダウンになるかどうかという問題。そのとき一つヒントになるのが、学校運営協議会と学校支援部の組織をつなぐ連結ピンを、ほとんどのところが学校運営協議会の委員がやっているということです。場合によっては委員が入っていない場合もあるかと思います。そうしたときに、先ほど生重委員から歯医者の話がありましたが、あのような形で、「学校支援に関する人材を学校運営協議会で探してほしい。」というように、下から上がってくる例も結構見ます。
  あと、もう一つの視点でいうと、黒瀬委員が一体化が望ましいとおっしゃったんですが、一つは、私もそう思う場合があるんです。学校を支援するけれど、学校に物を言えないよりは、学校を支援するから、学校に対して物を言える、そういう考え方も大事なのかなと思います。むしろ、学校運営協議会が絡まないと、学校支援活動が学校からのトップダウンで終わってしまうという可能性もあるので、そういう意味では一体化というのも有効かなと思っています。以上です。

【明石部会長】
  ありがとうございました。以上、3名の方の話題提供といいましょうか、それらを踏まえて、これからは自由討議に入りたいと思います。
  このときに、それぞれの各委員が意見を述べた中のことも念頭に置いていただいて御発言いただければと思っております。では、例によって名札を立てていただくと助かります。竹原委員、お願いします。

【竹原委員】 
  3人のお話を聞きまして、大きくうなずくことが多くありました。私たちのところは、平成17年にコミュニティ・スクールとして開校し、その後、学校支援地域本部というシステムが後からできました。
  委員が重なっていて、つなげるように努力してきました。よく両輪型ということで私は発表させていただいていますが、これはかなり意識しています。PDCAサイクルの中の位置付け、それから機能が違うことは承知していますが、いわゆる下請にならないようにしなければ、様々な地域の方、コーディネーターたちのモチベーションは上がりようがありません。
  承認機関であったり、お伺いを立てたりというスタンスでいけば、それは一番大事にしたい主体性とか、創意工夫とか、チャレンジ性というのがそがれていくのではないかと思っています。それには、常にPDCAサイクルの中の機能としてここにあるということをいつも意識付け、隅々までに伝えていかないと難しくなると思っています。
  部会型も各地であり、熊谷委員もおっしゃっていましたが、トップダウンになることもあり、特に学校支援地域本部が先行して頑張って、更に言えば、地域の学校として地域が応援してきたのにもかかわらず、あるときコミュニティ・スクールというシステムが来て、「何だか、私たちの上に新しい組織ができるみたい。」と、不安を訴えられたコーディネーターたちが各地にいました。
  やはりそうではなくて、パートナーということを常に意識していかないと、仕組みだけを作っていくと、モチベーションが下がったり、離反する方がいたりするのではないかと思っています。
  そして、更にこの一体型の推進の、三つ目の丸のところで危惧していることは、学校支援活動が、佐藤委員がおっしゃったようにとても大事な要素であり、それがコミュニティ・スクールの推進力になるということは納得しますが、それに偏り過ぎると、マネジメントそのものが見えにくくなることがあります。ある学校の学校運営協議会は、夏祭りの準備に3回の学校運営協議会、3か月掛けましたという発表をされたことがあって、そうなってしまったら違うだろうと思います。
  学校運営協議会は、まず校長先生のマネジメントを応援し、アドバイスし応援する機関で、さらに学校支援活動を加味し、包括していった方がいいのではないかと思っています。
  丁寧に一体的に動くというのが一番大事だと思っています。学校支援地域本部事業がコミュニティ・スクール推進のエンジンになるときには、具体的に先生方とカリキュラムを作ったり、活動したりするので、先生方の意識が変化するという効果があります。小さな成功体験を重ねていくことでしか、コミュニティ・スクールへの理解は深まらないとも思います。学校支援地域本部事業でコーディネーターたちを間に挟みながら地域とともに活動すると、先生方が地域と一緒にやって楽しかった、よかった、助かった、子供が成長したという瞬間を持たれると思いますが、それがとても大事だと思います。
  そして、地域住民にとっては、学校に関わることで学校を応援したくなったり、様々な組織がつながったり、まちづくりそのものになり、大人が元気になっていくということがあります。もちろん、子供が多くの大人、多くの体験に出会えるというのは、この本部事業があるからこそだと思いますので、そういう視点で一体的にしていくことを今後考えたらどうかと思っています。

【明石部会長】
  ありがとうございました。貝ノ瀬委員。

【貝ノ瀬委員】 
  ありがとうございます。自由ですね。

【明石部会長】 
  自由です。

【貝ノ瀬委員】 
  先ほどから校長のトップダウンという話が出ています。そこから、少し意見を述べさせていただきたいんですが、コミュニティ・スクールでなくても、トップダウンの校長って世界中、日本中にいっぱいいるんですね。ですから、これは別にコミュニティ・スクールがということではないと思いますね。
  コミュニティ・スクールがそもそも始まったというか、スタートしたのは、開かれた学校づくり、学校をシークレットガーデンにしないこと。子育て、子供を教育することについて、もっとオープンに、第一義的責任がある保護者が、やはりきちんと見える化しなければならないとか、民意を反映しなければならない、そういうことです。
  だから、教育委員会は新しい教育委員会制度になりましたが、話合いのプロセスの中では、教育委員をそのコミュニティ・スクールの委員をやった方々、地域貢献、地域活動をしている人たちを積極的に登用すべきではないか。最終的には、そういうことを文言にきちんと表れませんでしたが、そういう趣旨の議論は相当なされました。やはり民意を反映させる、つまり、学校でいえば校長先生が、トップダウンで物事を決めていくというのではなく、地域とともにある学校づくりを進めるというためのツールとして重要だということを再確認する必要があると思います。
  その上で、例えば熊谷委員が大変重要なことをおっしゃっていましたが、地域とともにある学校づくりだけではなく、学校とともにある地域づくり。学校関係者である私たちは、どうしても地域の関係機関というのは、何か学校のためにあると思っているかもしれませんが、公民館や図書館は別に学校のためにあるわけではありません。福祉施設もそうです。それぞれの設置目的があって動いているわけです。
  でも、そういう地域資源がいっぱいある、それをネットワーク化して、山口のように地域協育ネットのように、それを学校支援の方に持っていきたい。そして、学校の質を上げていくのだと。つまり、だから何のためにコミュニティ・スクールをやるのかという原点に返ったときに、子供たちをよりよく育てていく。そのために学校の質を上げていく。経営も運営も改善させていくために、地域市民の代表や地域の関係機関の人たちがそこを応援する。単に応援するのではなくて、地域の人たちの力で学校をよりよくしていくということがあったと思います。
  そのようなことを考えたときに、やはり地域の機関のネットワーク化というのは、企業なども全部含めて、コーディネートする人が必要です。これは、いわゆる地域とともにある学校づくりということで、コミュニティ・スクールをやっていく中で、力のある校長は、地域づくりまで踏み込むわけです。地域の人たちを開拓して、それから、行政機関にも、いろいろなコミットをして、青年会議所とか商工会を取り込んで、そして学校のために全部顔を向かせるという、そういう校長もいます。
  でも、それを全ての校長に期待できない。その地域の方にコーディネートして、力を尽くしてくれるような人もやはり担保しておかなければいけない。そのときに、私は学校支援地域本部事業の人たちの力が大きく物を言うと思います。そういう意味では、せっかく学校支援地域本部事業があるところは、その力をこの地域のいろいろな関係機関をネットワーク化して、コーディネートして、そして学校も地域の中の一員だということで、学校の質を上げていくように応援してもらうようにすべきです。
  山口のように、これは学校支援地域本部事業と地域協育ネットとがある程度重なっていますので、特段学校支援地域本部事業というのは表に出てきません。三鷹もあまり学校支援地域本部事業というのは表に出てきません。しかし、同じような働きをしているわけです。ですから、黒瀬委員がおっしゃったように、この一体化ということでなくても、一体的に運営するというような仕組みを作った方が、学校をコミュニティ・スクールに移行していくという意味ではやりやすいのではないかと思います。
  そのようにしないと、校長先生によっては、そこまでやり切れない、多忙だとか、負担だということになってきます。学校づくりで頑張っている校長を応援するためには、地域づくりに力を尽くしてくれる人が必要だということは言えると思います。そこをうまく一体的に機能していくことが大事です。学校をよくしていくというのですから、当然、学校が責任を持っていかなければならないわけです。だから、どうしても核にならざるを得ません。そこで、学校運営協議会が核になって、総合的に企画したり、調整したりしながら、学校支援地域本部事業の皆さんにもコーディネートしてもらい、質を上げていくということが必要です。
  同時に、地域社会の皆さんも、そのようなプロセスの中で自立していくという働きが結果として出てくるだろうと思います。ですから、関係者がウィン・ウィンになるような、総合的な企画や運営が大事になってくるのではないかと思います。

【明石部会長】
  ありがとうございました。では、田崎委員。

【田崎委員】 
  熊本県の教育長の田崎です。私も少し意見を述べさせていただきたいと思っています。熊本県が今回こういう形で入らせていただいたのは、決して京都市や山口県のようにコミュニティ・スクールが進んでいるわけではなく、逆にまだその途中、過度期にあるということで選ばれているだろうと、私自身は思っています。
  現状として、今、各市町村とやりとりをする中で、地域とともにある学校づくりの中で、例えば、放課後子供教室、学校支援地域本部事業、今年度から始めた地域未来塾、コミュニティ・スクール、いろいろな施策がある中で、県としてもそのようなことは市町村教育委員会に取り組んでもらうように働きかけをしています。
  それぞれの市町村からは、「自分のところは学校支援地域本部事業もやっているから、コミュニティ・スクールまでは考えていません。」という話が出てきます。全く何も取り組んでいないところもありますので、熊本県では、「いや、そうではなくて。」と話をしながら、地域の寺子屋推進事業という、学校の退職校長で学校支援体制に精通した方3人を選び、いろいろ市町村の教育長、あるいは学校の校長先生に直接それぞれの事業について説明し、どれかに取り組んでもらうような進め方をしています。
  その一つとして、熊本版のコミュニティ・スクールということにも触れ、少しずつですが、取組が進んでいるという状況です。
  貝ノ瀬委員もおっしゃいましたが、今、地域、市町村、人口がどんどん減っている中で、やっぱりよりどころ、拠点というのが小中学校、高校がそういう過疎地域にとっての拠点、よりどころになっています。そのような意味で、そこが拠点になっていくという前提で言うなら、コミュニティ・スクールは、私は必然だろうと思っています。そのようなことに取り組んでもらい、コミュニティ・スクールによる地域づくりをやってもらうのだと思っています。
  今回は作業部会の中に入れていただきました。それぞれの地域づくりという観点から、コミュニティ・スクールを入れていくのだという前提の中で、今日もいろいろお話がありましたが、学校支援地域本部との両輪でいくのか、部会形式でいくのか、地域によって差はあると思いますが、そのような意味で、今後議論が進んでいくといいなと思います。
  今、子供の貧困問題で、子供総合プランというのを、各都道府県も市町村も作らなければいけなくなっています。その一つとして、放課後児童クラブを学校に作るという国の施策もあると思います。そのようなものを進めていくためには、やはりどうしてもコミュニティ・スクールで地域の人が中に入り、そのような組織がないと、私はうまく進んでいかないと思っています。
  そのような意味で、私の意見ということで申し上げさせていただきましたが、是非コミュニティ・スクールを各学校に入れていくという前提での進め方が、今後御意見としていろいろ出てくれば有り難いと思っているところです。以上です。

【明石部会長】
  ありがとうございました。では、藤田大輔委員。

【藤田(大)委員】 
  大阪教育大学の藤田です。私が関わっている、いわゆる安全支援の観点ということになるわけですが、今回3人の先生方の御発表いただいた中で、キーワードになってきたのが評価の観点をどのように持っていくのかということになるかと思います。近年、よくエビデンスに基づいた成果を共有していくことが言われているわけですが、そのような中で、要するに教員であり、また子供たちであり、保護者であり、地域の人々が、学校、コミュニティ・スクールの活動であったり、地域の活動支援に関わる方々が、どのような観点でその成果というものを共有できるのか。
  私が関わった、例えば学校安全の領域でいえば、学校安全委員会というようなものがあり、実際の学校内におけるけがの問題であったり、登下校の防犯であったり、防災であったり、地域の活動であったり、そのようなものに対する子供たちの意欲であったり。また関心であったり、それに対する保護者の参加態度であったり、そのようないろいろな指標があるかと思います。そのような指標を見せることによって、やはり子供たち、また教員たちが参加意欲を高めていくという傾向があります。このような中で、コミュニティ・スクールという、今回はいろいろなところで取組がなされていて、それぞれいろいろな評価が報告がされているわけです。
  そのような中で、当然独自の評価というものと、それと先ほど話があったように、共有する、つながって共存するような地区体系というものもあるかと思います。その辺りの評価根拠というものを明確にしていくことによって、要するに近隣校との連携とか、また、お互いに高め合うような関係というものが作られていくのではないか。それが、結局その活動の広がりにつながっていくのではないかと思います。
  そのような中で、いろいろなところで取組が進められているわけですから、その辺りのエビデンスとなるような評価観点の整理というものが、今後、早急に進められることがこの活動のさらなる一層の発展につながるのではないかと思います。以上です。

【明石部会長】
  ありがとうございました。では、若江委員。

【若江委員】
  キャリアリンクの若江でございます。教育コーディネーターとしての活動を民間企業としてやっております。
  今日いろいろ御発表いただいた中で、熊谷委員からのまさにいろいろな方から御指摘がありました、地域とともにある学校づくりではなく、やっぱり中学校区での学校とともにある地域づくりというところ、非常に感銘を受けましたし、コーディネーターのコーディネーター、つまり統括コーディネーター的な役割が必要だということも、まさにそうです。今、私たちは、そういう役割を担いたいんだなと思って活動しているんだなということを確認をさせていただいた次第です。
  生重委員がおっしゃるように、子供たちに必要な学びを提供するために、いろいろな活動だとか仕組みが今議論されていて、私たちは民間ではありますが、そういうことを支援しようとする企業が連合を組んで、学校の先生方に活用いただけるプログラムを提供しているんです。
  そのときに今、プログラムをお届けするために小学校にお伺いしたりだとか、中学校にお伺いしたりだとかするんです。やはり1校ではどうしようもないので、私たちは、現場にお伺いすると、この小学校だけではなくて、少々連携をおやりになる必要がありますよとか、中学校に接点を持たせていただくきっかけがありますと、その校区で何かをしていただく必要がありますよとかいうことを働きかけながら、校区での教員向けの校内研修を働き掛けたりだとか。あとは、教員だけではなくて、地域の人たちを巻き込んだことをしましょう。だから、おたくには学校支援地域本部がおありですかとか、コミュニティ・スクール、学校運営協議会はおありですかというように、どちらかというと、自分たちはボトムダウンで一つ一つのブロックを積み上げていっていたんだなという気がいたしました。
  そのときに、今日のテーマにありますコミュニティ・スクールと学校支援地域本部の一体的な推進について、私は一つの案になるのではないかと思っていますのは、やっぱり教育委員会の働きだと思うんです。
  いろいろな現場を回っていますと、学校によっては、ああ、教員団はすごく土壌が整っているな、地域の土壌も整っているな、それから、校長先生もいいなという、このベクトルがきちっと合えば、この推進というのは非常にうまくいくんです。でも、やっぱりどこかが欠けているんです。
  でも、お話の中にあるように、校長のリーダーシップということが非常に有効なファクターであるということだとするならば、いつも私は疑問に思うんですが、これだけ教員の意欲も高くて、地域の力も高いところに、なぜ今この時期にこの校長先生が配置されたのかと。本当にそういうことがあるんです。
  でも、それって本当に教育委員会がもっと効率よく考えたとするならば、地域の状態と教員団の状態も分かっておられるわけですから、今ここが弱ければ、こういう校長をとかいうふうな、もっと失礼な言い方ですが、戦略的なアプローチが必要ではないかと常々思っております。
  藤田(裕)委員からお話からもありましたように、学校とその地域の動機付けをうまくしていくというエンジンは、やっぱり校長先生なんですけれども、私は究極的には教育委員会の戦略だと思っています。それがうまく機能していけば、コミュニティ・スクール3,000校、学校支援地域本部9,000校がやはりもっともっと加速度的に増えるのではないかなというふうに思っています。校長先生の配置の仕方は非常に疑問に思っております。以上です。

【明石部会長】
  非常に貴重な御意見、ありがとうございました。それで、校長先生を経験している永山委員、いかがでしょう。次、山野委員、それから井出委員。

【永山委員】
  今のお話、大変興味を持ちました。校長とすれば、私自身が何でこの学校に来たんだろうなと、校長同士でよく話はします。
  私は、現場として、今とても困っていることがありまして、それが、このコミュニティ・スクールとの関係で、今後うまくいけばいいなと思っていることがあるんですが、それは、特別支援なんです。事業支援とか学習支援、読書活動とか行事への支援は、1回波に乗れば、毎年どんどんうまくいくんですけれども、特別支援への配慮というのは毎回違っています。また、個人情報的なところもあるので、これはなかなか地域に発信することができないんです。
  やはり、本校の場合は、子供が1,080人おりまして、児童数の6.5%から7%は何らかの障害を持っていると言われているんです。そうすると、本校では70人の子供がそれに該当するわけです。しかし、区からの何らかの支援が付いているのは、本校の場合にはたったの6名なんです。重度の子から付けていきますから、朝から帰りまでぴったり付いていると、1週間に何時間という配当が数名の子供で全部終わってしまうんです。残りの60名は、担任、若しくはほかの教員、又は管理職が面倒を見ているんですけれども、それが特に大規模では学校の最重要課題なんです。
  私でいえば、私のエネルギーの半分はそこに注(そそ)いでいます。コミュニティ・スクールになってからすごくよかったことがあって、それはコミュニティ・スクールのメンバーは守秘義務があるんです。準公務員の立場ですので、学校側は同じメンバーとして全部さらけ出して相談することができる。個人名を出して、今こういうふうに困っているんだけれども、どういうことが考えられるでしょうねというような、そういう話題もできることがとても現場では助かっています。ただ、そのような場合は最終的には人を付けるということで、最後は人になってしまうんです。ゲストティーチャーのように、地域の方にその子に付いてもらうという、そう簡単にはいかないんです。保護者の了承も得なければいけないし、相性の問題もありますから。私の学校の近隣校は全部大規模校なんです。校長会で集まると、そのような話題が多いです。
  このコミュニティ・スクールと、又は学校支援地域本部というような組織の中で、この特別支援に関することがどのように今後、組み入れていくことができるかというのが、これからの課題になるだろうと思っています。今、インクルーシブ教育と言われていますので、今後ますますこういう傾向が増えていくので、このような話題がどんどん出て、いい方向に向かっていけばいいなと思っております。

【明石部会長】
  貴重な提案、ありがとうございました。では、山野委員。

【山野委員】 
  今日は貴重な御報告、ありがとうございました。先ほどから話題になっているところで、「協働する」というワードとか、「ネットワーク」というワードとかも出ていたと思います。それぞれの立場で、例えばコミュニティ・スクールと学校支援地域本部と、私も数が少なく、勉強しないといけないと思い、コミュニティ・スクールを何か所か、ここにいらっしゃる先生方にもお世話になって見に行かせてもらいました。その数少ない経験の中でも、やはり後からコミュニティ・スクールができたことで、明らかにうまくいっていないのではないかなと危惧するところもありました、先ほどの竹原委員のお話にもありましたが。
  だから、一体的推進というところで、無理やり一つにしていくというところの懸念もあるでしょう。今日、御提示いただいた、いろいろなパターンと、いろいろな方法があり、チョイスできるというのがすごくいいと思いました。
  それから今、家庭教育の方でも、アウトリーチをどのようにしていくかということも議論していますが、それぞれ、つくづく見ているところが違う。立場が違うので、見える部分が違っている。学校支援地域本部とコミュニティ・スクールからも、もしかしたら見える部分が違っていたり、先ほどから話題になっている、校長の話も出ていましたが、学校と地域から見える部分が違っていたりする。私も何度かお話しさせてもらったスクール・ソーシャルワークという新しい資源を学校に入れるというところでも、その点で非常に苦労しています。
  先ほどから、おっくうなという御意見がありましたが、新しいものを入れるということで非常に苦労しています。何が言いたいかというと、それぞれが見えるもの、見え方が違うし、見ているところが違うという、全体像、それぞれが家庭教育とか、学校支援地域本部とか、コミュニティ・スクールとか、それぞれ学校に入っているいろいろな支援が、どこを見ていて、どのように見ているのかという全体構造が一つ、明らかに共有できる、見える化していけたらいいなと思いました。
  その中には、先ほど牧野委員がおっしゃった、価値とか、子供たちがどんな学びになっていくのかとか、全体像を見える化しながら、共通基盤を作っていくという、たくさんある中の一つの一体化の話なのではないかなと思いました。
  もう一点だけ。熊谷委員のおっしゃっていた教職課程の中に入れていくということを、やはり当たり前にしないといけないと思います。いろいろな福祉的な視点だとか、生涯教育だとかが視野に入ることが重要であり、学校教育、学校だけではないということが当たり前になる。いつも頭の中に全体像が見える化されたときに、初めて教員の中にいつも地域というものが頭に入るということになるわけですから、やはり教職課程の中に入れていくというのはすごく大きい。当たり前にするということをしない限り、やはり校長によって違うとか、先生によって違うということがどうしても、いつまでもなるのではないかと。
  そうすると、チーム学校のお話が最初にありましたが、川崎事件のように、使い方が分からないから使われていかないということや、いろいろな資源が当たり前になっていないから正しく使われない、そのようなことが生じてくると思うので、是非、ここは教職課程の項目の中に、少し違った学校を応援する福祉や社会教育、地域などいろいろなものがあるのだということを形として入れていくべきではないかなと思いました。以上です。

【明石部会長】
  ありがとうございました。ちょっと発言の順番を整理いたします。
  まず、井出委員、それから、貞広委員、浅原委員、藤田裕之委員、牧野委員でお願いします。では、井出委員。

【井出委員】
  実は、前回の単独の会議のときに、コミュニティ・スクールの10年間の評価を報告させていただいて、今年はちょうど杉並区は学校支援本部の10年目になるわけです。コミュニティ・スクールが10年の評価をしたのにあわせて、学校支援本部の10年の評価を今やっているんです。その二つを重ねながら、次の10年間はどうしていくのかなと、基本的な戦略を考えようと思っているところなんです。
  この間の、皆さんの意見を伺っていて、個人的にはかなりいろいろなネタを仕込むことができて大変有り難いんですが、ゴールは決まっているんです。
  つまり、全校をコミュニティ・スクール化していきたいと。その道のりをどのように設定していくかということと、もう一つ大事なのは、この間議論になっている、そういうことをやることを通して、どんな子供を育てていこうとしているんだと、この共通理解をきちっとしていかないと、入れ物や方法論を幾ら議論しても、肝腎な部分が抜け落ちる。
  これは、この間、私たちも区内教育委員会でよく議論をするところなんです。教育ビジョンを作るときに、新しい教育ビジョンを3年前に作ったんですが、そのときに、幾つかコアになる部分を挙げていって、その一つに関わりとつながりという考えを持ち出したんです。何かというと、今の時代、地域に関わったり、あるいは人と人とつながって、何かをするとかということが非常に弱くなってきている。
  これは地域創生、地域活性化ということを考えたときに大きなキーワードになっていきますし、それから、個人として生きていく上でも一番大事な部分なので、つながりと関わりを意識した教育をしていきたいということで、それをビジョンの中に盛り込みました。それをどういうふうに表現していくかというときに、例えば学校支援地域本部の様々な地域を母体にした活動であったり、あるいはキャリア教育を具体的に展開する中で、自分の生き方を考えていく場面にしていったりと。そういうふうに考えていくと、今の学校が持っている力だけではなかなかそれを満たすことができない。
  それは、私は今日最初の意見で言った学校の限界。つまり、学校のマネジメントなり教育活動の限界を、子供の成長の限界にしてはいけないということ。それから、もう一つは、校長の経営力の限界を学校の教育活動の限界にしてはいけないというところにつながるんです。
  それで、実はつながりと関わりを意識した教育を進めていこうということの裏にあったのは、教育の成果の私物化ということを考えたんです。つまり、教育の成果は、もちろん個人の中に蓄積されていきますけれども、必ず社会に還元されていく、そういう仕組みを作っていかなければいけない。成果を私物化していくということは、結局つながりや関わりを希薄にしていくということになるわけですから、社会的に還元していく。
  社会といっても、そんなに大きな社会でなくていいんです。住んでいる地域に還元していくという、日常化していくということを意識しているんです。その受皿をどういうふうに作っていったらいいかということの一つが、地域運営学校なんです。つまり、コミュニティ・スクールが地域を基盤にして学校を支えていく、あるいは学校教育を進めていくということになれば、当然教育の成果はそこに戻ってこなければいけない。だから、教育の成果の受皿としてのコミュニティ・スクール、これを進めていきたいというふうに今考えて、幾つか具体的に展開をしているところなんです。
  ですから、是非今後コミュニティ・スクール化を進めるに当たって、学校支援地域本部との関係をどうするかということももちろん大事なことですから考えていかなければいけませんし、我々も基本的な戦略を持っているわけですけれども、そういうテクニカルなところに注意をしていかないと、手続論で終わってしまう。ですから、杉並区でも、今後、学校支援本部の評価を踏まえて、今後10年間の我々の仕事の方向性と内容をもう一遍考え直したいと思っています。
  先ほど、人事のことがありました。実は、施策を具体的に表現する方法として、人事はあるんです。人事はメッセージですから、人事を行うことによって、やろうとしていることを具体的に分かってもらうということも私たちはやっています。
  ですから、校長を2年間で替えたりとか、あるいは、これから事業を展開しようと思っている学校に、意図的にそういう校長を任用したりとかということは当然やっています。いわゆる人事異動としてやっているわけではありませんから、それは今後とも充実したものにしていきたいというふうには思っています。

【明石部会長】
  ありがとうございました。では、貞広委員。

【貞広委員】 
  貴重な御報告を頂きまして、それを受けまして3点、意見として申し上げたいと思います。
  まず、1点目です。私は、人口が減少してしまって学校が統廃合されてしまうような小さな地域、小さな学校の調査などをしています。そのようなところを回りますと、学校支援地域本部とか、コミュニティ・スクールという名前が付いていなくても、まさに実態としてそのようなところはたくさんあり、今更そのような新しい名前は要らないという感じです。
  私もあえてそういうところをコミュニティ・スクールと言う必要はないのではないかと、今までは思ってきたんですが、全校をそうするということにするのであれば、既存のものを制度化することによって、若干停滞しがちな面もある既存のものを新規に安定させていくという、そのようなところをアピールしていく必要があります。
  そう思うと同時に、この新しい制度が付いて確実によくなると思うところは、既存の地縁的な取組の中から学校を支えているのはすごくいいのですが、世帯単位での支えです。ですから、家長の人が自治会長のような形で出ていって、学校を支えていく。その家の中には若いお母さんもいれば、若いお兄さん、お姉さんもいます。学校を支えていける個人単位の支えというところに移行していく、有効な制度なのかなと思います。
  かつ、小規模の自治体ですと、小学校だけではなかなか持ちこたえられない部分もあるので、まさに今日御提案いただいたような、中学校単位でのプラットフォームというところに非常に可能性を感じるところです。
  2番目といたしまして、熊谷委員の御発表の中に、コミュニティ・スクールと学校支援地域本部を同時に入れたところには混乱があるというような御報告があり、なるほどと思いました。これは、制度に対する理解不足というだけではなく、学校が地域に、地域が学校に対する知識不足というか、学習不足というか、実態について知らないところがあったからこそ、混乱も非常に大きいと思います。
  今まで、私は学習プロセスがあってこそ、次にコミュニティ・スクールがあるだろうと考えていたので、支援的な試みをした後にコミュニティ・スクールに移行していくという方が、恐らくハードルが低いのではないかと思ってはいたんです。しかし、何人かの委員の方々に、いや、必ずしもそうではないという御意見もありましたので、この辺りはどのようにソフトランディング的に進めていくかというところの判断が難しい、議論しておきたいところだと思いました。
  それと、3点目です。一気にではなくて、少しソフトに広げていかないと、上からのトップダウンで、「さあ、みんな、コミュニティ・スクールになりなさい。」となっていくと思います。そのときに、広げ方として、例えば複数の学校を抱えている自治体で、一気に自治体内の学校をコミュニティ・スクールにするというやり方もあると思うのですが、これは結構リスクがあると思います。
  やはり、人間は成功体験がないと、なかなか、「ああ、いい制度だね。」と動かしていけないので、例えば地域の中の1校をコミュニティ・スクールに指定をして、そこできっちりと成功体験を積んで拡大をしていく。その成功体験のときに、先ほど来、校長先生のお話が出ていますが、やはり教育委員会のサポートで、地域課題を明確に捉えることができて、本人のマネジメントの限界をきちんと把握できるような校長先生をしっかりと配置する。そこで、ここがパイロットスクールという形の地域のコミュニティ・スクールを作っていただいた後に、ああいういい学校ができるのなら、うちの地域でもやってみようという地域の方々の納得性を得られた上で、新しい制度を広げていくという、そのような地域内での広げ方というのもあると思いました。
  以上、3点申し上げました。ありがとうございます。

【明石部会長】
  非常に貴重な御意見、ありがとうございました。では、浅原委員、お願いします。

【浅原委員】 
  はい、今日の視点として、3点ほど示されていますが、全部にコメントするのではなく、最後の3点目についてお話をさせてもらいたいと思います。学校支援の総合的な企画・立案等を制度上どのように位置付けるかという視点についてです。
  制度上位置付けることについては、ハードルが高いと思っています。山口県では、そういう制度上の位置付けはしておりません。県がコミュニティ・スクールの三つの大きな柱を示し、教育委員会にしっかり理解を求めて、その上で学校が実行に移しているという状況です。
  これからのコミュニティ・スクールの機能につきましては、もともとの学校運営という視点に加えて、学校支援、さらには、地域貢献という視点も、是非加える必要があるのではないかと思っています。学校支援の必要性については、今まで議論されてきたとおりだと思います。ただ、学校支援だけを強調しますと、学校は、地域に協力を求めてばかりいるが、地域に対して何かしてくれることはあるのか、あるいは、地域は学校の下請ではないという声が出てくる可能性がないとは言い切れないと思います。そのようなことからも、学校が地域に貢献するという視点も是非この中に含めていきたいと思っています。
  このような話をしますと、学校は大変多忙だ。学力向上も大変だ、学校運営も大変だ、これ以上、地域貢献なんてできるのかという声が上がると思います。地域貢献というと、学校から地域へ出ていくイメージが強いと思います。例えば、子供や教職員が地域活動へ参加するとか、あるいはボランティア活動、これらはもちろん地域貢献です。しかし、それだけではなくて、地域の大人が学校に来て、子供と触れ合うことにより、その地域の高齢者が元気になることとか、あるいは、学校に地域の人の知識や技術を生かす、そういう場ができること、さらには、地域の人が学習する場、趣味や特技で集う場、そういう場を学校に設置するということも立派な地域貢献であろうと考えています。そのような幅広く捉えた地域貢献ということを、是非この視点の中に入れておくべきではないかと思っています。
  今日の視点の3番目に関して、今のことを提案したいと思います。以上です。

【明石部会長】
  非常に貴重な提案、ありがとうございました。では、藤田裕之委員。

【藤田(裕)委員】 
  京都市の藤田です。2回目の発言ですので、簡潔に2点だけ絞って意見表明します。まず一つは、この学校支援という言葉がずっと出てきているわけですが、やはり学校支援の在り方ということについて、これから全校展開していく中で、量的な拡大の中で、質は落とさないという観点をしっかり持つ必要があると思っています。特に、ややもすると、先ほど来お話がありましたが、イベントのお手伝いをする、イベントさえすれば学校の手伝っている支援をしているような錯覚が出てきたりする場合も往々にあるかと思います。  それから、何よりも、学校を支援するというのが、前提的に何もかもその学校に協力するのでは決してないという部分は、やはり最後の学校運営協議会のみそだと思います。子供たちのために学校がベストを尽くしていただいているということが担保されて、だから学校を支援するのであって、学校が別の方向を向いているということであれば、しっかりそのときには物申すというような学校運営協議会、あるいは学校支援地域本部でなければ、量的な拡大をしても効果が出てこないのではということを1点、申し上げておきたいと思います。そういう意味での進行管理、マネジメントが非常に重要だと思います。
  2点目は、先ほど教育委員会の役割は大変重要だというお話が出ておりました。私も、そのとおりだと思いますが、そこで言う教育委員会の役割というのは、学校運営協議会は教育委員会だけの仕事なので、ほかの部局は口を出さないでくれということでは決してないと思います。むしろ教育委員会が果たすべき役割というのは、学校運営協議会において、いわゆる市長部局の地域コミュニティ活性化の部局としっかりと学校をつなぐとか、あるいは教育委員会自らが市長部局、知事部局と学校運営協議会の協力に向けて要請をする、連携、情報共有していく、これが、教育委員会が果たすべき大きな役割だと思います。
  だから、学校が「学校のことは放っておいてくれ、黙っておいてくれ。」ということで、地域から閉鎖されていた延長線上で、教育委員会が学校運営協議会のことは教育委員会のことなので放っておいてくれということをやっている限りは、これもまた同じ二の舞を演じることになると、あえて申し上げておきたいと思います。以上です。

【明石部会長】
  ありがとうございました。では、牧野委員。

【牧野委員】
  一つ、気になることがあります。ここで議論することの課題になっているものが一体何であるかということが、どうもはっきりしない、拡散していってしまうところがあるという印象があります。
  例えば、多分私たちの共通認識としては、学校がずっといろいろな問題を抱えてきたわけですけれども、特にここ30年間くらい、平成に入ってからくらいですけれども、いろいろな改革をやってきても、なかなか思いどおりにいかない。それは、ある意味で社会そのものの構造が変わってくる中で、子供たちもその影響を受けながら、学校の中だけでは対応できない問題がいっぱい出てきたためだろうと思われます。
  それに対して、学校をもう少し地域に開いていくとか、地域を学校に入れるとかと、いろいろな議論をしてきたのですが、多分、今、ここで問題になっていますのは、もっと学校を地域に開き、もっと学校を地域と密着化させて、新しい学校を創っていくにはどうしたらよいのか、ということでしょう。それが、学校支援地域本部ですとか、コミュニティ・スクールという議論になっていると思うのです。
  このようにとらえれば、やはり先ほど来の御議論をくくっていくといいますか、まとめていくような、ある種の抽象度の高い議論が、この場には、必要になってくるのではないかと思います。例えば、先ほど井出委員がおっしゃったように、知識というのは一体何なんだろうか。今までは、例えば知識はある意味で事前に決められていて、それを分配し、所有し、活用するといったことが学校の機能であったわけですけれども、本当にそれでいいのか。こういうことも問い返す必要があるのではないかと思います。
  むしろ、学校には知識を作り出す機能を持たせる必要があるのではないかとか、知識を各個人が所有、つまり私有するのではなくて、共有するとか、循環させるとか、新しい知識観を作り出していく必要があるのではないかと思います。こうしたこととコミュニティ・スクールの在り方とが議論になっていくことが、今後必要になるのではないかと思うのです。
  これらの意味では、私たちがここで議論しなければいけないのは、確かに制度論的なことや実務的なことはたくさんあると思うのですが、もう少し大きく、私たちは一体この社会の在り方をどう考えていて、子供たちにどういう学力をつけてもらいたいと思っているのか、そのとき、知識とは一体何なのかというようなことを、またこの社会は学校を持つ社会であるわけですけれども、学校をすぐになくすわけにはいかないわけですが、それをどう組み換えながら、この社会そのものが、私たちの感覚でいえば、今コミュニティが壊れてきているわけですけれども、それを新しいコミュニティに作り替えていきながら、全ての人々が生き生きと生きられるような、甘いですけれども、そういう社会を創っていくのか、こういうことを考える必要があるのではないかと思います。
  そして、そのためには、学校をどう組み替えたらいいのかという議論ができないかと思います。その意味で、議論を収斂(しゅうれん)させるような、何か共通の認識みたいなものを作るような議論ができるといいと思いますので、是非ともお考えいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【明石部会長】
  大体、用意した時間が近づいてまいりまして、非常に多くの方々の御意見を頂きまして、本当にありがとうございました。
  今日の生重委員、熊谷委員、そして佐藤委員の問題、話題提供、非常に貴重で参考になりました。
  やはり、牧野委員がおっしゃいますように、地域の課題をどう捉え直すかというのは非常に大事で難しい問題。それを、例えば生重委員の言葉を借りれば熟議というか、もう少し丁寧に、丁寧に議論していかないと難しいんだろうなと。この熟議をする場をいかに設けるかというのが、かなりうまくやらないと、一人歩きされて勝手に教育ビジョンが出てきて、仕組みを作って、魂が入っていないような可能性もありますもので、その地域の課題という、貞広委員も言ってくれましたけれども、そういうことをもう少し捉え直していきたいというのが1点。
  もう1点は、今日の生重委員の全国調査の中で五つのパターンがありましたけれども、よりヒントになりました。ザ・コミュニティ・スクールとか、ザ・学校支援地域本部という「ザ」がないんだと。どちらからも、相互に行きやすいもので行った方がいいのではなかろうかなというのがありました。とりわけ京都の大変な地域の中のNPOという発想の学校の協働という営みがあるというのは、非常に参考になりました。
  だから、地域の課題というレベルで捉え直していって、仕組みをどう持っていくかということを深めていければと思っております。
  今日は、本当にありがとうございました。では、次回の予定について事務局からお願いいたします。

【鍋島地域・学校支援推進室長】
  資料5を御覧いただければと思います。次回は、生涯学習分科会の学校地域協働部会は8月11日、火曜日、午前中を予定しております。また、初等中等教育分科会の地域とともにある学校の在り方に関する作業部会は、前日の8月10日、月曜日の午前中を予定しております。

【明石部会長】
  以上をもちまして本会議を終わりたいと思います。どうも、今日はありがとうございました。

――  了  ――

お問合せ先

初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)