総則・評価特別部会、小学校部会、中学校部会、高等学校部会における議論の取りまとめ(案)

1.「社会に開かれた教育課程」の実現と、総則を軸とした教育課程の総体的構造の可視化

○ これからの社会の在り方について、情報化やグローバル化といった社会的な変化が加速度的となり、社会や産業の構造が急速に変化していくとの指摘がなされている。「論点整理」でも述べられているように、グローバル化は社会に多様性をもたらし、急速な情報化や技術革新は、人間生活を質的にも変化させつつある。
○ 「論点整理」後の状況として、とりわけ最近では、「第4次産業革命」ともいわれる、進化した人工知能が様々な判断を行ったり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されたりする時代の到来が、社会や生活を大きく変えていくとの予測もなされている。こうした変化は、様々な課題に新たな解決策を見いだし、新たな価値を創造していく人間の活動を活性化するものであり、私たちの生活に便利さや豊かさをもたらすものになると考えられる。
○ その一方で、“人工知能の進化により人間が活躍できる職業はなくなるのではないか”“今学校で教えていることは時代が変化したら通用しなくなるのではないか”といった不安の声もあり、それを裏付けるような未来予測も多く発表されている。教育界には、変化が激しく将来の予測が困難な時代にあっても、子供たちが自信を持って自分の人生を切り拓き、よりよい社会を創り出していくことができるよう、必要な資質・能力をしっかりと育んでいくことが求められている。
○ 学校教育が目指す子供たちの姿と、社会が求める人材像の関係については、長年議論が続けられてきた。現在、社会や産業の構造が変化していく中で、私たち人間に求められるのは、定められた手続を効率的にこなしていくことにとどまらず、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかを考え、自分なりに試行錯誤し新たな価値を生み出していくことであるということ、そのためには生きて働く知識を含む、これからの時代に求められる資質・能力を学校教育で育成していくことが重要であるということを、学校と社会とが共通の認識として持つことができる好機にある。
○ こうした資質・能力の育成は、学校教育が長年目指してきたことでもある。現在、教育課程がどのような力の育成を目指しているのかを可視化し、それを社会と共有し連携・協働しながら育成していこうという、「社会に開かれた教育課程」の実現に向けた検討を進めているところである。これは、よりよい学校教育を通じてよりよい社会づくりを目指すという目標を社会と共有しながら、学校教育を通じて子供たちにどのような資質・能力を育成するのかを教育課程において明確にし、社会と連携・協働しながら育んでいこうとするものである。
○ この理念を実現するため、すべての教科等において育成を目指す資質・能力を明確化し、それに基づき、教育目標や指導内容の構造が整理されている。こうした構造化は、初等中等教育全体を見通して作業が進められており、学校段階間のつながりや、初等中等教育全体を通じて育成すべき資質・能力の在り方なども、各教科等の構造の中で明確にしていくことが検討されている。こうした整理を通じて、“この教科を学ぶことで何が身につくのか”という、各教科等を学ぶ意義が明らかにされていくことになる。
○ 一方で、これからの時代に求められる資質・能力は、情報活用能力や課題解決能力なども含め、特定の教科等だけではなく、すべての教科等のつながりの中で育まれるものである。教科等を越えた視点で教育課程を見渡し、教育課程全体としての効果が発揮できているかどうか、教科等間の関係性を深めることでより効果を発揮できる場面がないかどうか、といった検討・改善を行っていくことが重要になる。
○ 学習指導要領においては、「総則」を要としながら、こうした教科等を越えた視点を実現していくことが求められる。教育課程の総体的構造を、新しい「総則」の在り方や各教科等を学ぶ意義の明確化等を通じて可視化し、各学校における教育課程を軸とした学校教育の改善・充実の好循環につなげていくことが求められている。

2.学校教育の改善・充実の好循環を生み出す「カリキュラム・マネジメント」の実現

○ 「社会に開かれた教育課程」の理念のもと、子供たちが未来の創り手となるために求められる資質・能力を育んでいくためには、各学校が「カリキュラム・マネジメント」を通じて、子供たちが「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」を組み立て、家庭・地域と連携・協働しながら実施し、子供たちの姿を踏まえながら不断の見直しを図ることが求められる。次期改訂に向けた議論は、各学校が学習指導要領を手掛かりに、こうした「カリキュラム・マネジメント」を実現し、学校教育の改善・充実の好循環を生み出していくことを目指すものである。
○ 各学校の「カリキュラム・マネジメント」の実施に資するため、学習指導要領の「総則」の構造を刷新し、以下の観点を踏まえた章立てとする。
  ・「何ができるようになるか」(教育目標と育成すべき資質・能力の明確化)
  ・「何を学ぶか」(各教科等を学ぶ意義と教科等横断的な視点を踏まえた教育課程の編成)
  ・「どのように学ぶか」(各教科等の指導計画の作成と実施、学習・指導の改善・充実)
  ・「何が身に付いたか」(学習評価の充実)
  ・「子供の発達をどのように支援するか」(学習活動の基盤作り、キャリア教育、特別な配慮を必要とする児童への指導等)
  ・「実施するために何が必要か」(家庭・地域との連携・協働、チーム学校等)
○ 「カリキュラム・マネジメント」は、教職員が全員参加で、学校の特色を構築していく営みであり、園長・校長のリーダーシップのもと、全ての教職員が参加することが重要である。各学校が地域や社会の変化を受け止めながら、学校教育目標や学校として育成を目指す資質・能力を明確にし、その実現に向けて、各教科等がどのような役割を果たせるのかという視点を持つことが重要である。
○ 「カリキュラム・マネジメント」は、管理職や教務主任のみならず、生徒指導主事や進路指導主事なども含めた全ての教職員の意識を、教育課程を軸に一本化し、全ての校務分掌の意義を、子供たちの資質・能力の育成という観点から捉え直すことにもつながる。また、家庭・地域とも目標を共有し、学校内外の多様な教育活動が目標の実現にどのような役割を果たせるのかという視点を持つことも重要になる。
○ 高等学校においては、教科・科目選択の幅の広さを生かしながら、生徒に育成する資質・能力を明らかにし、具体的な教育課程を編成していくことが求められる。義務教育段階の学習内容の学び直しなど、生徒の多様な学習課題を踏まえながら、学校設定教科・科目を柔軟に活用していくことも求められる。3.何ができるようになるか(教育目標と育成すべき資質・能力の明確化)

【1】 資質・能力と「生きる力」との関係
○ 現在、各学校段階及び全ての教科等について、次の三つの柱に基づき育成すべき資質・能力を明確にすることが議論されている。
(1)何を知っているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)
(2)知っていること、できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)
(3)どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)
○ この三つの柱は、学校教育を通じて育む「生きる力」の要素を資質・能力の視点から整理したものであると言える。学力の三要素が「確かな学力」の要素を捉えたものであるのに対して、資質・能力の三つの柱は、「確かな学力」「健やかな体」「豊かな心」の知・徳・体を総合的に捉えて構造化することを目指すものである。
○ こうした資質・能力の三つの柱は、2030年に向けた教育の在り方に関するOECDにおける理念的枠組みや、本年5月に開催されたG7倉敷教育大臣会合における共同宣言に盛り込まれるなど、国際的にも共有されているところである。
○ この資質・能力の三つの柱に基づき構造化された学習指導要領を手掛かりに、各学校が、学校教育目標や学校として育成を目指す資質・能力の明確化を図ることが重要である。特に「学びに向かう力・人間性等」については、各学校が子供の姿や地域の実情を踏まえて明確化していくことが求められる。

【2】「知識」とは何か、コンテンツとコンピテンシーの関係
○ 現在議論されている「知識」とは、個別の事実的な知識のみを指すものではなく、学びの過程を通じて、既に持っている知識や経験と新しい知識とが結びつき、自分の中で構造化され、様々な場面で活用できるものとして習得される、いわゆる概念的な知識を含むものである。例えば、“何年にこうした出来事が起きた”という歴史上の事実的な知識は、“その出来事はなぜおこったのか”や“その出来事がどのような影響を及ぼしたのか”を追究する学習の過程を通じて、当時の社会や現代に持つ意味などを含めた概念的な知識として習得されていく。子供一人一人の中で構造化され活用されるようになることが重要であるが、教員がそのプロセスに関わることにより、知識としての客観性も保たれたものとなる 。
○ また、「技能」についても、一定の手順や段階を追って身に付く個別の技能のみならず、変化する状況や課題に応じて主体的に活用できる技能の習熟・熟達に向かうことが重要である。例えば、走り幅跳びにおける走る・跳ぶ・着地するなど種目特有の基本的な技能は、それらを段階的に習得してつなげるようにするのみならず、類似の動きへの変換や他種目の動きにつなげることができるような気付きを促すことにより、生涯にわたる豊かなスポーツライフの中で主体的に活用できる習熟した技能として習得されることになる。
○ 概念的な知識や習熟した技能は、思考・判断・表現を通じて獲得されたり、その過程で活用されたりするものであり、また、社会との関わりや人生の見通しの基盤ともなる。このように、資質・能力の三つの柱は相互に関係し合いながら育成されるものである。知識というコンテンツと能力というコンピテンシーは相互に関係しあうものであり、資質・能力の育成のためには知識の量も重要となる。

【3】初等中等教育全体や、各学校段階を通じて育成すべき資質・能力
○ 現在、各教科等においては、資質・能力の三つの柱に基づく教育目標や指導内容の構造化が進められている。各学校段階において育成される資質・能力をつないだり、教科横断的な視点で資質・能力をつないだりしていくためには、初等中等教育全体や各学校段階を通じて育成すべき資質・能力の全体像を、三つの柱に沿って整理していくことが求められる。
○ こうした全体像とは、教育基本法及び学校教育法に規定する教育の目的及び目標を実現し、子供たちに生きる力を育むため、後述する各教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせた学習過程を通じて、各学校段階において求められる次のような資質・能力を育成することであると考えられる。
1)発達の段階に応じた生活の範囲や領域に関わる物事について理解し、生活や学習に必要な技能を身に付けるようにする。
ここでいう物事については、様々な領域に関わる事物、現象、営為等(自然の事物・現象や社会的事象、衣食住などの生活に関わる事象、数学化されたり言語化されたりイメージ化されたりした事象、身体の動き、人間や社会の在り方、心と体の関わり、道徳的価値等に関する知識)や、知識の構造化を支えるもの(言語の働きや非言語的表現の働き、情報活用に関する知識など)、各領域における人間の営みの社会的・文化的価値(言語文化、芸術やスポーツ、科学、学習等の意義や価値)等が含まれるものと考えられる。
2)情報を捉えて多面的・多角的に吟味したり、問題を見いだし他者と協働しながら解決したり、自分の考えを形成し伝え合ったり、思いや考えを基に創造したりするために必要な思考力・判断力・表現力等を育成する。
各教科等の学習過程には、大きく分類して以下の三つの要素が含まれているものと考えられる。
  ・物事の中から問題を見いだし解決していくプロセス
  ・吟味した情報を基に自分の考えを形成したり、目的・場面・状況に応じて伝え合ったり、伝え合ったことを基に集団の考えを形成していくプロセス
  ・思いや考えを基に構想し創造していくプロセス
3)伝統や文化に立脚した広い視野を持ち、感性を豊かに働かせながら、よりよい社会や人生の在り方について考え、学んだことを主体的に生かしながら、多様な人々と協働して新たな価値を創造していこうとする学びに向かう力や人間性を涵養する。
これからの社会の在り方を考えれば、一人一人が人間としての強みを生かしながら可能性を最大限に発揮していけるようにすることが重要である。感性を豊かに働かせながら、よりよい社会や人生の在り方について考え、学んだことをそうした社会や人生の在り方に生かそうとしたり、伝統や文化に立脚した広い視野を持ち、様々な考えを受け止めながら自分の考えを形成し、多様な人々と協働しながら実現していこうとすることなどが求められる。
○ こうした三つの柱の全体像を、学校段階別に整理し、各学校等がこれらを基にしながら、自校の教育目標や育成すべき資質・能力を明確にしていけるようにすることが求められる。

【4】現代的な課題に対応した資質・能力と、時代を越えて求められる資質・能力
○ 例えば情報活用能力や健康・安全に関わる資質・能力、グローバル化への対応や多様性の尊重に関わる資質・能力、主権者として求められる資質・能力、我が国の伝統・文化や地域の創生を支える資質・能力、創造性など、現代的な課題に対応し教科等横断的に育まれる資質・能力については、各学校における充実が図られるよう、学習指導要領の構造化と併せて、教科等横断的に育まれる資質・能力と各教科等の関係性について整理し共有していくことが求められる。
○ なお、こうした現代的な課題への対応の前提として、言語能力の育成や各教科等における思考力の育成など、全ての教育の基盤として長年重視されてきている資質・能力の重要性もますます高まるものであると考えられる。現代的な課題へ対応できる能力として求められる資質・能力の要素も、これまでにないような全く新しい力ということではなく、従来からも重視されてきている読解力や論理的・創造的に思考する力、問題を発見・解決するために求められる力、豊かな人間性等について、加速度的に変化する社会の文脈の中での意義を改めて捉え直し、しっかりと発揮できるようにすることであると考えられる。
○ 特に、複雑な情報を読み解くために必要な読解力は、時代を超えて常に重要なものであり、これからの時代においてもその重要性が変わることはない。スマートフォンの普及など、情報化が進展し身近に様々な情報が氾濫する社会の中で、ますます高まる読解力の重要性とは裏腹に、視覚的な情報と言葉との結びつきが希薄になり、知覚した情報の意味を吟味して読み解いたりすることが少なくなっているのではないかとの指摘もある。子供たちが教科書の文章を読み解けていないのでないかとの問題提起もあるところであり、全ての学習の基盤となる言語能力の育成を重視することが求められる。
1)言語能力
2)情報活用能力、情報技術を手段として活用する能力
3)健康・安全に関わる資質・能力
4)・・・

4.何を学ぶか(各教科等を学ぶ意義と教科等横断的な視点を踏まえた教育課程の編成)

○ 各学校においては、学習指導要領を手掛かりとしながら、学校教育目標や学校として育成を目指す資質・能力を実現するため、各教科等を学ぶ意義と教科等横断的な視点を踏まえて教育課程を編成することが求められる。
○ こうした教育課程の編成に資するため、学習指導要領における各教科等における指導内容については、事実的な知識の内容を系統的に示すのみならず、資質・能力の三つの柱や各教科等の学習過程の在り方を踏まえて構造的に示していくことが求められる。
○ 小学校及び高等学校については、育成すべき資質・能力を踏まえつつ、教科・科目構成の見直しを下記9.の通り行うこととする。

5.どのように学ぶか(各教科等の指導計画の作成と実施、学習・指導の改善・充実)

○ 各学校は「カリキュラム・マネジメント」を通じて、子供たちが「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」を組み立てていくことが求められるが、このうち、「どのように学ぶか」の鍵となるのが、アクティブ・ラーニングの視点、すなわち子供たちの「主体的・対話的で深い学び」をいかに実現するかという学習・指導改善のための視点である。
○ 社会で生きて働く知識や力を育むためには、子供たちが「何を学ぶか」という学習内容の在り方に加えて、それらの内容を「どのように学ぶか」という、学びの過程に着目してその質を高めていくことが重要である。世の中をどのような視点で捉え、どのような枠組みで考えたらいいのかという、物事に対する見方・考え方を身に付けて深く理解したり、多様な人との対話で考えを広げたり、学ぶことの意味と自分の人生や社会の在り方を主体的に結びつけたりしていくという学びが実現されることによって、学校で学ぶ内容が、生きて働く知識や力として育まれることになる。こうした学びの過程が「主体的・対話的で深い学び」であり、こうした学びが実現するように、日々の授業を改善していくための視点を共有し取組みを活性化しようというのが、今回の改訂の主眼である。
○ 教育方法に関するこれまでの議論においても、子供たちが主体的に学ぶことや、学級やグループの中で協働的に学ぶことの重要性は指摘されてきており、多くの実践も積み重ねられてきた。我が国では、教員がお互いの授業を検討しながら学び合い、改善していく「授業研究」が日常的に行われ、国際的にも高い評価を受けているが、そうした中で、子供が興味や関心を抱くような身近な題材を取り上げて、学習への主体性を引き出したり、少人数で対話しながら多様な考え方に気付かせたりするための工夫や改善が続けられてきている。こうした「授業研究」の成果は、日本の学校教育の質を支える貴重な財産である。
○ 一方で、こうした工夫や改善の意義について十分に理解されないと、例えば、学習活動を子供の自主性のみに委ね、学習成果につながらない「活動あって学びなし」と批判される授業に陥ったり、特定の教育方法にこだわるあまり、指導の型をなぞるだけで学びにつながらない授業になってしまったりという恐れも指摘されている。
○ こうした「主体的・対話的で深い学び」とは、特定の指導方法のことでも、学校教育における教員の意図性を否定することでもない。教員が教えることにしっかりと関わり、子供たちに求められる資質・能力を育むためにはどのような学びが必要かを絶え間なく考え、授業の工夫・改善を重ねていけるようにすることで、子供たちの「主体的・対話的で深い学び」を実現しようとする営みなのである。
○ 「主体的・対話的で深い学び」については、「論点整理」を踏まえたその後の議論を通じて、以下のように整理されている。
  ・習得・活用・探究の見通しの中で、教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせて思考・判断・表現し、学習内容の深い理解や資質・能力の育成、学習への動機付け等につなげる「深い学び」が実現できているか。
  ・子供同士の協働、教員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自らの考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。
  ・学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら、見通しを持って粘り強く取組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。
○ こうした「主体的・対話的で深い学び」を具体化する学習活動として、言語活動や体験活動、問題解決的な学習、見通し・振り返り等との関係を整理していくことが必要である。また、「主体的・対話的で深い学び」が、単元や題材のまとまりの中で子供たちの学習過程として実現されることや、評価の場面との関係などについても、わかりやすく示していくことが求められる。

(「深い学び」と「見方・考え方」)
○ 「主体的な学び」「対話的な学び」については、その趣旨が理解しやすく改善が図りやすいのに対して、「深い学び」についてはイメージがつかみにくいとの指摘もある。一方で、アクティブ・ラーニングの視点については、深まりを欠くと表面的な活動に陥ってしまうといった失敗事例も報告されており、「深い学び」の視点は極めて重要である。
○ 「深い学び」とは、「習得・活用・探究の見通しの中で、教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせて思考・判断・表現し、学習内容の深い理解や資質・能力の育成、学習への動機付け等につなげる」学びのことであると議論されている。その具体的な姿については、現在、中央教育審議会において検討中であるが、学びの「深まり」の鍵となるものして、全ての各教科等で議論されているのが、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」である。今後の授業改善等においては、この「見方・考え方」が極めて重要になってくると考えられる。
○ 子供たちが、各教科等の学習において、様々な知識や力を身に付けていく過程の中で、“どのような視点で物事を捉え、どのように思考していくのか”という、物事を捉える視点や思考の枠組みも鍛えられていく。例えば算数・数学においては、事象を数量や図形及びそれらの関係に着目して捉えて論理的に考えていくこと、国語においては、言葉の働きを捉えて自分の思いや考えを深めたり表現したりしていくことなどである。
○ こうした「見方・考え方」は、各教科等の学習の中で活用されるだけではなく、大人になって生活していくにあたっても重要な働きをするものとなる。私達が社会生活の中で、データを見ながら考えたり、アイデアを言葉で表現したりする時には、学校教育を通じて身に付けた数学的な見方・考え方や、言葉に対する見方・考え方が活用されている。いわば、頭の中の道具箱にある「見方・考え方」を活用しながら、世の中の様々な物事を理解し思考し、よりよい社会や自らの人生を創り出していると考えられる。
○ この「見方・考え方」は、知識・技能を構造化して身に付けたり、思考力・判断力・表現力を豊かなものとしたり、社会や世界にどのように関わるかの視座を形成したりするために重要なものである。すなわち、資質・能力の三つの柱全てに深く関わる、各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすものであり、教科等の教育と社会をつなぐものである。子供たちが学習や人生において「見方・考え方」を自在に働かせられるようにすることにこそ、教員の専門性が発揮されると考えられる。
○ こうした「見方・考え方」は、学習指導要領において長年用いられてきている用語であるが、その内容については必ずしも具体的に説明されてはこなかった。次期改訂に向けては、これまで述べたような観点から「見方・考え方」を改めて定義し、それを軸とした授業改善の取組を活性化しようとするものである。この背景には、現行の学習指導要領において言語活動の充実が盛り込まれ、全ての教科等で共通の視点からの授業改善が図られる中で、同じ言語で物事を捉えて思考していくにあたっても、捉え方や考え方には教科等の特質が見られ、それを各教科等で意識して磨いていくことが重要ではないか、といった具体の授業改善の成果が蓄積されてきたことなどがある。
○ なお、教科の枠組と学問の体系との関係については丁寧に論じられる必要があるが、学問の領域においても、“○○学の学びの本質的意義”が社会とのつながりの中で議論されていることについて触れておきたい。日本学術会議は分野別に教育課程編成上の参照基準を作成しているが、その中では、各学問分野が、どのような世界の認識の仕方や世界への関与の仕方を身に付けさせようとしているのかという特性を踏まえ、分野に固有の知的訓練を通じて獲得されるが汎用的な有用性を持つ力(ジェネリックスキル)が明確化されている。こうした取組は「見方・考え方」と共通の方向性を持つものと考えられ、教育全体の質保証を支えていく役割を担うものである。
○ 次期改訂が目指すのは、学習の内容と方法の両方を重視し、学習過程を質的に高めていくことである。単元や題材のまとまりの中で、子供たちが「何ができるようになるか」を明確にしながら、「何を学ぶか」という学習内容と、「どのように学ぶか」という学びの過程を組み立てていくことが重要になる。「見方・考え方」を軸としながら、幅広い授業改善の工夫が展開されていくことを期待するものである。

(発達の段階や子供の学習課題に応じた「主体的・対話的で深い学び」)
○ 「主体的・対話的で深い学び」の具体的な在り方は、発達の段階や子供の学習課題に応じて様々である。基礎的・基本的な知識・技能の習得に課題が見られる場合には、それを身に付けさせるために、子供の学びを深めたり主体性を引き出したりする工夫が求められる。高度な社会課題の解決だけを目指す取組ということではない点に留意が必要である。

6.何が身に付いたか(学習評価の充実)

○ 学習評価は、学校における教育活動に関し、子供たちの学習状況を評価するものである。「子供たちにどういった力が身に付いたか」という学習の成果を的確に捉え、教員が指導の改善を図るとともに、子供たち自身が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにするためには、この学習評価の在り方が極めて重要であり、教育課程や学習・指導方法の改善と一貫性を持った形で改善を進めることが求められる。
○ 子供たちの学習状況を評価するためには、教員は、個々の授業のねらいをどこまでどのように達成したかだけではなく、子供たち一人一人が、前の学びからどのように成長しているか、より深い学びに向かっているかなど、学びのプロセスをどう見取っていくかが重要である。
○ 次期改訂に向けては、すべての教科等において、教科等目標や指導を、資質・能力の三つの柱に基づき構造化することが検討されている。これは、資質・能力の育成を目指して「目標に準拠した評価」を実質化するための取組でもある。
○ こうした目標や指導内容の構造化を踏まえて、観点別評価については、「目標に準拠した評価」の実質化や、教科・校種を超えた共通理解に基づく組織的な取組を促す観点から、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の三観点に整理することとする。
○ これらの観点については、毎回の授業で全てを見取るのではなく、カリキュラム・マネジメントの考え方のもと、単元や題材を通じたまとまりの中で、学習・指導内容と評価の場面を適切にデザインしていくことが重要である。
○ 「目標に準拠した評価」の趣旨からは、これらの観点については、学習指導要領における各教科等の指導内容が資質・能力を基に構造化されることにより明確になるものと考えられる。学習指導要領改訂を受けて作成される、学習評価の工夫改善に関する参考資料においては、詳細な基準ではなく、資質・能力を基に構造化された学習指導要領を手掛かりに、教員が評価規準を作成し見取っていくために必要な手順を示すものとなることが望ましい。そうした参考資料の中で、各教科等における学習過程と評価の場面との関係性も明確にできるよう工夫することや、複数の観点を一体的に見取ることも考えられることなどが示されることが求められる。
○ なお、「主体的に学習に取り組む態度」と、資質・能力の柱である「学びに向かう力・人間性」の関係については、「学びに向かう力・人間性」には(1)「主体的に学習に取り組む態度」として観点別評価(学習状況を分析的に捉える)を通じて見取ることができる部分と、(2)観点別評価や評定にはなじまず、こうした評価では示しきれないことから個人内評価(一人一人の良い点や可能性、進歩の状況について評価する)を通じて見取る部分があることに留意する必要がある。
○ この「主体的に学習に取り組む態度」については、学習前の診断的評価のみで判断したり、挙手の回数やノートの取り方などの形式的な活動で評価したりするのではなく、子供たちが学習に対する自己調整を行いながら、粘り強く知識・技能を獲得したり思考・判断・表現しようとしたりしているかどうかという意思的な側面を捉えて評価することが求められる。このことは現行の「関心・意欲・態度」の観点についても本来は同じ趣旨であるが、上述の挙手の回数やノートの取り方など、性格や行動面の傾向が一時的に表出された場面を捉える評価であるような誤解が払拭し切れていないのではないか、という問題点が長年指摘され現在に至ることから、「関心・意欲・態度」を改め「主体的に学習に取り組む態度」としたものである。こうした趣旨に沿った評価が行われるよう、単元や題材を通じたまとまりの中で、子供が学習の見通しを持って振り返る場面を適切に設定することが必要となる。
○ 指導要録に加えて、子供一人一人が、自らの学習状況やキャリア形成を見通し振り返ることができるようにするため、「キャリアパスポート(仮称)」を導入することとする。こうした仕組みを活用しながら、子供たちが自己評価を行うことを、特別活動(学級活動)を軸としつつ、教科等の特質に応じて、学習活動の一つとして位置付けることが重要である。その際、教員が対話的に関わることで、自己評価に関する学習活動を深めていくことが重要である。
○ また、資質・能力のバランスのとれた学習評価を行っていくためには、指導と評価の一体化を図る中で、ペーパーテストの結果にとどまらず、論述やレポートの作成、発表、グループでの話し合い、作品の制作等といった、多面的な評価を行っていく必要がある。そのためには、教員が学習評価の質を高めることができる環境づくりが必要である。
○ 特に、高等学校については、義務教育までにバランスよく培われた資質・能力を、高等学校教育を通じて更に発展・向上させることができるよう、指導要録の様式の改善や教員の評価者としての能力の向上の機会を充実させることなどが重要である。
○ 加えて、知識の理解の質を高めるという次期改訂の趣旨を踏まえ、高等学校入学者選抜、大学入試者選抜の質的改善が図られるようにする必要がある。

7.子供の発達をどのように支援するか(学習活動や学校生活の基盤作り、キャリア教育、特別な配慮を必要とする児童への指導等)

○ 子供たち一人一人は、多様な可能性を持った存在であり、多様な教育的ニーズを持っている。社会的な変化が加速度的となる中で新たな価値を創造していくためには、一人一人が互いの異なる背景を尊重し、それぞれが多様な経験を重ねながら、様々な得意分野の能力を伸ばしていくことが、これまで以上に強く求められる。あわせて、苦手な分野を克服しながら、社会で生きていくために必要となる力をバランス良く身に付けていくことも重要である。
○ 各学校が行う進路指導や生徒指導、学習指導等については、子供たちの発達を支え、資質・能力を育成するという観点からその意義を捉え直し、「カリキュラム・マネジメント」の中でその充実を図っていくことが重要である。また、個々の子供の発達課題や教育的ニーズをきめ細かに支えるという視点から、特別支援教育や日本語指導等を充実させていくことも求められている。
○ 子供の教育的ニーズを踏まえながら、きめ細やかに発達を支えていくという視点を学校全体で共有するとともに、心理や福祉に関する専門スタッフや、補習支援などを行うサポートスタッフ、特別支援教育に関する専門スタッフなど、教員以外の専門スタッフの参画を得ていくことも重要である。

(学習活動や学校生活の基盤となる学級経営の充実)
○ 「学校」は、社会への準備段階であると同時に、学校そのものが、子供たちや教職員、保護者、地域の人々などから構成される一つの社会である。今を生きる子供たちにとって、現実の社会との関わりの中で、毎日の生活を築き上げていく場であるとともに、未来の社会に向けた準備段階としての場でもあり、学校における子供たちの日々の豊かな生活は、未来の創造につながるものである。
○ そうした子供たちの学習活動や学校生活の基盤となるのが、日々の生活を共にする基礎的な集団である学級やホームルームである。これまで総則においては、小学校においてのみ学級経営の充実が位置付けられ、中学校、高等学校においては位置付けられてこなかった。
○ 今回、「学校」の意義が再確認され、その中での学級の重要性が今一度捉え直されたことを受けて、特別活動においても学級活動・ホームルーム活動の中心的な意義を踏まえた上で改善が図られるなどの見直しが進んでいる。総則においても、小・中・高等学校を通じた学級(ホームルーム)経営の充実を図り、子供の学習活動や学校生活の基盤としての学級という場を豊かなものとしていくことが重要である。

(学習指導と生徒指導)
○ 学校は子供たちにとって、学習の場であり生活の場である。こうした場において子供たちに関わる教員の指導は、学習指導の側面と生徒指導の側面を持つことになる。
○ 生徒指導とは、一人一人の児童生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動のことである。今回、全ての教科等において育む「学びに向かう力・人間性」が整理されたことにより、今後、学習指導と生徒指導とは目指すところが共有されることとなり、さらに密接な関係を有するものになると考えられる。
○ 生徒指導については、今回整理された資質・能力等も踏まえて、改めて、一人一人の生徒の健全な成長を促し、生徒自ら現在及び将来における自己実現を図っていくために必要な力の育成を目指すという意義を捉え直していくことが求められる。ともすれば、個別の問題行動等への対応にとどまりがちとも指摘されるが、どのような資質・能力の育成を目指すのかということや、一人一人のキャリア形成の方向性等を踏まえながら、その機能が発揮されるようにしていくことが重要である。また、ガイダンス機能との関係も整理していくことが求められる。
○ また、学習指導においては、子供一人一人の「主体的・対話的で深い学び」を実現していくために、児童生徒理解の深化を図ることや、教員と児童生徒の信頼関係や児童生徒相互の人間関係づくり、児童生徒の自己選択や自己決定を促すといった生徒指導の視点を生かしていくことが求められる。

(キャリア教育(進路指導))
○ 子供たちに将来、社会や職業で必要となる資質・能力を育むためには、学校で学ぶことと社会との接続を意識し、一人一人の社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を育み、キャリア発達を促す「キャリア教育」 の視点も重要である。
○ キャリア教育は、小・中学校では特別活動の学級活動を中核に、総合的な学習の時間や学校行事の勤労生産・奉仕的行事における職場体験活動などのキャリア形成に関わる啓発的な体験活動、特別の教科 道徳をはじめ各教科における学習及び個別指導としての進路相談等の機会を活かしつつ、学校の教育活動全体を通じて系統的、発展的に行う必要がある。高等学校では、特別活動のホームルーム活動を中核に、総合的な探究の時間(仮称)や学校行事の勤労生産・奉仕的行事における就業体験(インターンシップ)などのキャリア形成に関わる啓発的な体験活動、高等学校公民科に新設される科目「公共(仮称)」をはじめ各教科・科目等における学習及び個別指導としての進路相談等の機会を活かしつつ、学校の教育活動全体を通じて系統的・発展的に行う必要がある。
○ なお、進路指導は本来、生徒の個人資料、進路情報、啓発的経験及び相談を通じて、生徒が自ら、将来の進路を選択・計画し、就職又は進学をして、更にその後の生活によりよく適応し、能力を伸長するように、教員が組織的・継続的に指導・援助する過程であり、どのような人間になり、どう生きていくことが望ましいのかといった長期的展望に立った人間形成を目指す教育活動である。このような進路指導のねらいは、キャリア教育の目指すところとほぼ同じであるが、実際に学校で行われている進路指導においては、進路指導担当の教員と各教科担当の教員との連携が多くの学校において不十分であること、一人一人の発達を組織的・体系的に支援するといった意識や姿勢、指導計画における各活動の関連性や体系性等が希薄であり、子どもたちの意識の変容や能力や態度の育成に十分結び付いていないとの指摘がある。このため、各学校は、自校におけるこれまでの進路指導の実践をキャリア教育の視点からとらえ直し、その在り方を見直すことが必要である。あわせて、キャリア教育とガイダンス機能との関係も整理していくことが求められる。
○ 特別活動については、キャリア教育の中核としての役割を一層明確にする観点から、小・中・高等学校を通じて、各教科等における学習の内容や、特別活動における様々な活動や行事の内容を見通したり振り返ったりし、自己の生き方・キャリア形成につなげていく仕組みを導入する観点から、特別活動の学級活動・ホームルーム活動に「一人一人のキャリア形成と実現(仮称)」を位置づけるとともに、「キャリアパスポート(仮称)」の活用を図ることを検討する。
○ 「公共(仮称)」については、教科目標の実現を見通した上で、キャリア教育の観点から、特別活動のホームルーム活動などと連携し、インターンシップの事前・事後の学習との関連を図ることなどを通して、経済、法、情報発信などの主体として社会に参画する力を育む中核的機能を担うことが求められる。
  また、高等学校のインターシップについては、これまで主に就職を希望する生徒が多い普通科や専門学科での実習を中心に行われて来たが、今後は、例えば研究者や高度な資格を必要とする職業も含めた就業体験(いわゆる「アカデミック・インターンシップ」)など、生徒自らのキャリア形成を視野におさめるなど、それぞれの高等学校の特性を踏まえたインターンシップが展開されることが求められる。
○ 日常の教科・科目等の学習指導においても、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら見通しを持ったり、振り返ったりしながら学ぶ「主体的・対話的で深い学び」を実現するなど、教育課程全体を通じてキャリア教育を推進する必要がある。

(個に応じた指導)
○ 児童生徒一人一人の可能性を最大限に伸ばし、社会をよりよく生きる資質・能力を育成する観点から、生徒の実態に応じた指導方法や指導体制の工夫改善を通じて、個に応じた指導を推進する必要がある。特に、今次学習指導要領では、「義務教育を終える段階で身に付けておくべき力は何か」「18歳の段階で身に付けておくべき力は何か」という観点から、各学校段階で育成すべき資質・能力の全体像を示すこととしていることを踏まえ、児童生徒が学習内容を確実に身に付ける観点からも個に応じた指導を一層重視する必要がある。
○ 特に、授業が分からないという悩みを抱えた児童生徒への指導にあたっては、個別の学習支援や学習相談を通じて、自分にふさわしい学び方や学習方法を身に付け、主体的に学習を進められるようにすることが重要である。
○ また、基礎的・基本的な知識・技能の習得が重要であることは言うまでもないが、思考力・判断力・表現力等こそ、子供を取り巻く環境を背景とした学力差が生まれやすい能力であるとの指摘もあることに留意が必要である。一人一人の「主体的・対話的で深い学び」を実現し、学びの動機付けや幅広い資質・能力の育成を図っていくことが求められる。

(特別支援教育)
○ 障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの構築を目指し、子供たちの自立と社会参加を一層推進していくため、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校において、子供たちの十分な学びを確保していく必要があり、一人一人の子供の障害の状態や発達の段階に応じた指導を一層充実させていく必要がある。その際、小・中学校と特別支援学校との間での柔軟な転学や、中学校から特別支援学校高等部への進学など、児童生徒の学習状況を踏まえた、教育課程の連続性を十分に考慮していく必要がある。

〈通常の学級(幼稚園、小・中・高等学校)〉
○ 小学校等の通常の学級においても、発達障害を含む障害のある児童生徒が在籍している可能性があることを前提に、全ての教科等の授業において、資質・能力の育成を目指し、一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細かな指導や支援ができるよう、障害種別の指導の工夫のみならず、各教科等の学習プロセスにおいて考えられる困難さに対する指導の工夫の意図、手立ての例を具体的に示す。幼稚園においても同様に、日々の幼稚園等の活動の中で考えられる困難さに対する指導の工夫の意図、手立ての例を具体的に示す。

〈特別支援学級(小・中学校)〉
○ 小・中学校における特別支援学級について、学級の実態や児童生徒の障害の状態等を踏まえた教育課程を編成することが重要である。このため、特別支援学級における教育課程の基本的な考え方や、各教科等における前各学年の目標・内容を適用する際の指導内容の精選、知的障害のある児童生徒の教科の適用など、教育課程の編成の基本的な考え方や留意点を具体的に示す。

〈通級による指導(小・中・高等学校)〉
○ 小・中・高等学校における通級による指導について、その意義、教育課程の編成の基本的な考え方、児童生徒の実態把握から指導目標や指導内容の設定、評価・改善までの手続等について具体的に示す。
○ 通級による指導の目標及び内容について、障害による学習上又は生活上の困難を改 善・克服するための指導であることをより明確にするとともに、通級による指導と各教科等の授業における指導との連携が図られるよう、通級による指導と各教科等との関係性を分かりやすく示す。
○ 高等学校における通級による指導の平成30年度からの制度化に当たり、その単位認定の在り方については、生徒が高等学校の定める「個別の指導計画」に従って履修し、その成果が個別に設定された目標からみて満足できると認められる場合には、当該高等学校の単位を習得したことを認定しなければならないものとする。
○ 生徒が障害に応じた特別の指導(自立活動に相当する指導)を2以上の年次にわたって履修したときは、各年次ごとに当該特別の指導について履修した単位を修得したことを認定することを原則とするが、年度途中から開始される場合など、特定の年度における授業時数が、1単位として計算する標準の単位時間(35単位時間)に満たなくとも、次年度以降に通級による指導の時間を設定し、2以上の年次にわたる授業時数を合算して単位の認定を行うことも可能とする。また、単位の修得の認定を学期の区分ごとに行うことも可能とする。
○ また、高等学校及びその設置者が、高等学校における通級による指導の実施に向けて円滑に準備が進められるよう、校内体制及び関係機関との連携体制、各教科等の指導を行う教員との連携の在り方、通級による指導に関する指導内容や指導方法などの実践例を紹介することが必要である。

〈個別の教育支援計画、個別の指導計画の作成、活用〉
○ 通級による指導を受ける児童生徒及び特別支援学級に在籍する児童生徒については、一人一人の教育的ニーズに応じた指導や支援が組織的・継続的に行われるよう、「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」を全員作成することが適当である。
○ 幼稚園、小学校、中学校、高等学校において作成される「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」の作成・活用の留意点(例えば、実態把握から評価・改善までのPDCAサイクルなど)を示すことが必要である。その際、障害者差別解消法に基づく合理的配慮やその他指導上の配慮との関係性についても記述することが必要である。

〈交流及び共同学習〉
○ グローバル化など社会の急激な変化の中で、多様な人々が共に生きる社会の実現を目指し、一人一人が、多様性を尊重し、協働して生活していくことができるよう、学校の教育活動全体で、障害者理解や交流及び共同学習の一層の推進を図る。
○ 具体的には、例えば、
  ・保健体育における共生の視点に立った関わり方
  ・生活科における身近な人々との自分との関わり
  ・音楽、図画工作や美術における感じ方や表現の相違や共通性の視点に立った、お互いのよさの気付きを通した自己理解や他者理解
  ・道徳科における、正義、公正、差別や偏見のない社会の実現
  ・特別活動におけるよりよい集団生活や社会の形成
など、各教科等の見方・考え方と関連付けた、交流及び共同学習の事例を示す。
○ さらに、学校の教育課程上としての学習活動にとどまらず、地域社会との交流の中で、障害のある子供たちが地域社会の構成員であることをお互いが学ぶという、地域社会の中での交流及び共同学習の推進を図る必要がある。

〈特別支援教育の支援体制〉
○ 学校全体として特別支援教育に取り組む体制を整備し、組織として十分に機能させるよう、特別支援教育コーディネーターを中心とする校内体制等の在り方について具体的に示す必要がある。

(日本語指導)
(調整中)

8.実施するために何が必要か(家庭・地域との連携・協働、チーム学校等)

○ 先を見通すことが難しい社会の中で、新しい社会の在り方を創造することができる資質・能力を子供たちに育むためには、「社会に開かれた教育課程」を実現し、教育環境や指導体制を充実させるとともに、家庭・地域との連携・協働を進めていくことが求められる。
○ 中央教育審議会においては、一億総活躍社会の実現と地方創生の推進のため、平成27年12月に、教員改革、学校の組織運営改革、地域からの学校改革・地域創生を柱とする3つの答申 を示しており、それを受けて、文部科学省は答申の内容の具体化を着実に推進するべく平成28年1月に「「次世代の学校・地域」創生プラン」を策定した。
○ 教員改革については、国、教育委員会、学校、大学等が目標を共有してお互い連携しながら、次の学習指導要領等に向けて教員に求められる力を効果的に育成できるよう、教員に求められる能力を明確化する教員育成指標や、それを踏まえた研修方針の策定などを示している。
○ 学校の組織運営改革については、複雑化・多様化する学校の課題への対応や、子供たちに必要な資質・能力を育成するための教職員の指導体制の充実に加え、学校において教員が心理や福祉等の専門スタッフと連携・分担する体制の整備や、学校のマネジメント機能の強化により、学校の教育力・組織力を向上させ、学校が多様な人々とつながりを保ちながら学ぶことのできる場となるようにしていくことを示している。
○ 地域からの学校改革・地域創生については、地域の人々と目標やビジョンを共有し、地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」への転換を図るため、全ての公立学校がコミュニティ・スクールとなることを目指して取組を一層推進・加速するとともに、次代の郷土をつくる人材の育成、学校を核としたまちづくり、地域で家庭を支援し子育てできる環境づくり、学び合いを通じた社会的包摂という方向を目指して取組を進めることにより、学校と地域との組織的・継続的な連携・協働体制を確立していくことを示している。
○ これらは、「社会に開かれた教育課程」の実現を中心に据えて、一体的な改革を進めるものであり、今後、その進展と軌を一にしながら教育課程の改善を進めていく必要がある。

(校内の研修体制)
○ 我が国の教員に対する国際的な評価はもともと高く、特に、各教科等における授業改善に向けて行われる多様な研究に関しては、海外からも極めて高い関心が寄せられている。とりわけ、各学校における教員の学び合いを基調とする「授業研究」は、我が国において独自に発展した教員研修の仕組みであるが、近年「レッスン・スタディ」として国際的な広がりを見せている。
○ こうした我が国の学校の特長をいかしつつ、「授業研究」を核とした校内の研修体制の一層の充実を図る必要がある。授業研究において、教科を超えて指導計画を比較することにより、教科横断で教育内容を関連付けることができるなど、授業研究についても、「何のために」、「どのような改善をしようとしているのか」をデザインし教員間で共有することにより、学校組織全体としての指導力の向上を図ることが重要である。
○ また、こうした授業研究に加えて、複雑化・多様化する学校の課題に対して、「チームとしての学校」の視点から対応していくため、例えば特別支援教育など学校教育を取り巻く共通的な課題や社会的な課題をテーマとした校内研修を通じて、個々の教員の資質向上を図ることも有効と考えられる。

(家庭・地域との連携・協働)
○ また、学校がその目的を達成するためには、家庭や地域の人々とともに子供を育てていくという視点に立ち、地域と学校の連携・協働の下、幅広い地域住民等(多様な専門人材、高齢者、若者、PTA・青少年団体、企業・NPO等)が参画し、地域全体で学び合い未来を担う子供たちの成長を支え合う地域をつくる活動(地域学校協働活動)を進めながら、学校内外を通じた子供の生活の充実と活性化を図ることが大切であり、学校、家庭、地域社会がそれぞれ本来の教育機能を発揮し、全体としてバランスのとれた教育が行われることが重要である。
○ そのため、これまでも学校は、教育活動の計画や実施の場面で、家庭や地域の人々の積極的な協力を得てきたが、今後、一層地域の人々と目標やビジョンを共有し、連携・協働して地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」への転換を図ることが必要である。
○ また、今回の改訂では、キャリア教育の充実や、高等学校における専門的な教育の充実を図る観点から、企業の協力、産業界との関わりがこれまで以上に重要である。教育課程の理念をどのように共有し、働きかけをしていくかを、具体的に計画していく必要がある。

(必要な体制整備)
○ これらに加えて、新しい学習指導要領が、各学校における授業の中で実効性のあるものとしていくためには、教員一人一人が力量を発揮できるような条件の整備が重要である。
○ 「カリキュラム・マネジメント」の実現や、「主体的・対話的で深い学び」を実現するための授業改善や教材研究、学習評価の充実、子供一人一人の学びを充実させるための少人数によるきめ細かな指導の充実など、次期学習指導要領における指導や業務の在り方に対応するため、必要な教職員定数の拡充を図ることが求められる。また、校務の効率化に資する検討が求められる。
○ 教科書を含めて教材についても、学習指導要領の各教科・科目の目標を実現しやすいものになることが望まれる。
  例えば、理数探究(仮称)などは、探究の過程そのものを科目の構成原理とするという新たな考え方で構成される科目となっており、スーパーサイエンスハイスクールにおける取組なども踏まえつつ、具体的な質の高い教材、指導方法が、学校現場にしっかりと提供・共有される必要がある。
○ 条件整備の一つとして、ICTの環境整備を進める必要がある。その際、教育効果が高いだけでなく、教員にとって使いやすい具体的かつ丁寧なものを学校現場に提供していく必要がある。
○ 教員養成においては、資質・能力を育成していくという新しい学習指導要領の考え方を十分に踏まえることが必要である。特に、教員養成大学においては、そのためのカリキュラム開発など役割・使命は大きい。
○ また、国や各教育委員会等においても、教科等別の学習指導に関する改善のみならず、教科等を横断した教育課程全体の改善について助言を行うことができるような体制を整えていく必要があり、教育委員会における指導担当部課長や指導主事等の力量の向上が求められる。加えて、学習・指導方法の改善について、モデル校の先進事例等を、動画を含めて参照できるようなアーカイブを整備していくことも考えられる。

(業務効率化)
○ これからの時代を支える創造力をはぐくむ教育へ転換し、複雑化・困難化した課題に対応できる「次世代の学校」を実現するためには、教員が誇りや情熱をもって使命と職責を遂行できる環境が不可欠である。文部科学省において平成28年6月に「学校現場における業務の適正化に向けて」を策定し、教員の長時間労働の状況を改善し、教員が子供と向き合う時間を確保するための改善方策を提案している 。こうした改善方策が着実に実施されるよう、国、地方自治体が一体となった取組が求められる。

(学校現場、広く国民の理解)
○ 今回の学習指導要領の趣旨が、学校現場、さらには広く国民から十分に理解されることが極めて重要であり、特に学校現場への周知については、プロセスそのものが重要になる。
  例えば、学校長に対してどのように伝えるかは、学校としてどのような目標を掲げカリキュラム・マネジメントを実質化していくのかという観点からも重要な要素となる。
○ また、メディア等を通して国民全体の理解を得て、広く全体的な議論にしていく必要がある。

9.小・中・高等学校それぞれにおける諸課題への対応

【1】小学校
(1)小学校教育の基本と、低・中・高学年それぞれの課題
○ 小学校においては、「各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎」を培うこと及び「国家社会の形成者として必要とされる基本的な資質」を養うことを目的とする義務教育のうち、基礎的なものを施すことが目的となる。
○ 小学校教育における現状の課題について考えると、小学校の6年間という期間は子供たちにとって大きな幅のある期間であり、低学年、中学年、高学年の発達の段階に応じて、それぞれ異なる課題が見受けられるとの指摘があるところである。
○ 低学年においては、その2年間の中で表れた学力差が、その後の学力差の拡大に大きく影響しているとの課題が指摘されている。学習の質に大きく関わる語彙量を増やすことなど基礎的な知識・技能の定着や、感性を豊かに働かせ、身近な出来事から気付きを得て考えることなど、中学年以降の学習の素地(そじ)を形成していくとともに、一人一人のつまずきを早期に見いだし、指導上の配慮を行っていくことが重要となる。
○ 中学年は、生活科の学習が終わり、理科や社会科の学習が始まるなど、具体的な活動や体験を通じて低学年で身に付けたことを、より各教科の特質に応じた学びにつなげていく時期である。例えば国語科における言葉の働きについても、低学年における「事物の内容を表す働き」等に加えて、「考えたことや思ったことを表す働き」があることに気付くなど、指導事項も次第に抽象的な内容に近づいていく段階であり、そうした内容を扱う学習に円滑に移行できるような指導上の配慮が課題となる。
○ 高学年においては、子供たちの抽象的な思考力が高まる時期であり、教科等の学習内容の理解をより深め、育成すべき資質・能力の育成に確実につなげるためには、指導の専門性の強化が課題となっている。定期的に文部科学省が実施している「教育課程の編成・実施状況調査」の結果を見ても、理科や音楽などを中心に、特に高学年において、専科指導を行う学校の割合は年々増加しているところである。こうした専科指導の充実は、子供たちの個性に応じた得意分野を伸ばしていくためにも重要である。
○ また、様々な生徒指導上の課題が早期化し、中学校からではなく、小学校高学年からの対応が必要となっているとの指摘もあるところである。こうした課題に対応するためには、学級担任だけではなく、複数の教員が関わり育てていくことが重要になっており、専科指導による教科担任の充実は、結果的にこうした多面的な子供たちとの関わりを創り出すことにもつながっている。学級担任制のよさと、教科担任のよさを兼ね備えた指導体制の確立が課題となっているところである。
○ 小学校教育の改善・充実に当たっては、上記のような低・中・高学年それぞれの課題を踏まえつつ、幼児教育や中学校教育との接続を考えながら、高等学校卒業までに育成すべき資質・能力や、義務教育を通じて育成すべき資質・能力の在り方などを見通していくことが必要である。

(2)言語能力の育成と国語教育、外国語教育の改善・充実
1)小学校段階における言語能力育成の重要性について
○ 育成すべき資質・能力の中でも、言語能力は、子供たちの学習や生涯にわたる生活の中で極めて重要な役割を果たすものである。
○ 子供は、乳幼児期から身近な人との関わりや生活の中で言葉を獲得していき、発達段階に応じた適切な環境の中で、言語を通じて新たな情報を得たり、思考・判断・表現したり、他者と関わったりする力を獲得していく。教科書や教員の説明、様々な資料等から新たな知識を得たり、事象を観察して必要な情報を取り出したり、自分の考えをまとめたり、友達の思いを受け止めながら自分の思いを伝えたり、学級で目的を共有して協働したりすることができるのも、言葉の役割に負うところが大きい。
○ このように、言葉は、学校という場において子供が行う学習活動を支える重要な役割を果たすものであり、全ての教科等における資質・能力の育成や学習の基盤となるものである。したがって、言語能力の向上は、学校における学びの質や、教育課程全体における資質・能力の育成の在り方に関わる重要な課題として受け止められる必要がある。
○ 特に、小学校低学年において、語彙量を増やしていくことがその後の学習に大きな影響を与えると指摘されていることなども踏まえながら、義務教育の初期段階を担う小学校教育において、重要な課題として取り組んでいく必要がある。
○ こうした言語能力については、全ての教科等における言語活動の充実を通じて育成を図るべきものであるが、特に言葉を直接の学習対象とする国語教育及び外国語教育の果たすべき役割は極めて大きい。言語能力の向上に関する特別チームがまとめた言語能力を構成する資質・能力やそれらが働く過程、育成の在り方を踏まえながら、改善・充実の在り方を考えていくことが必要である。
2)国語教育の充実
○ グローバル化する中で世界と向き合うことが求められている我が国においては、日本人としての美徳やよさを備えつつ、グローバルな視野で活躍するために必要な資質・能力の育成が求められており、多様な情報や考えを理解して、文章や発話により表現したり、個人や集団の考えを形成して深化させたりしていくために必要となる、言語能力や情報活用能力の向上が重要な課題となっている。
○ 国語教育を通じて、言語や文化に対する理解を深め、国語で理解したり表現したり、考えを形成していく力を身に付けることは、言語能力の向上や、あらゆる学習の基盤の形成に不可欠なものである。また、言語能力を向上させるとともに、古典の学習を通じて、日本人として大切にしてきた言語文化を積極的に享受していくことにより、我が国の文化を理解して語り継承したり、異文化を理解し多様な人々と協働したりできるようになることが重要である。
○ 現行学習指導要領の国語科においては、実生活で生きて働き、各教科等の学習の基本ともなる国語の能力を身に付けること、我が国の言語文化を享受し継承・発展させる態度を育てること等に重点を置いて、その充実が図られた。
○ しかしながら、例えば小学校では、文の中における主語を捉えることや文の構成を理解したり表現の工夫を捉えたりすること、目的に応じて文章を要約したり複数の情報を関連づけて理解を深めたりすることなどに課題があることが明らかになっている。
○ 小学校の国語科については、高等学校における科目構成の見直し等も見通しながら、国語ワーキンググループにおける取りまとめの通り、資質・能力や教科目標の整理、「認識から思考へ」「思考から表現へ」という過程の中で働く資質・能力の要素を踏まえた学習過程の整理、それらの整理を踏まえた指導内容の構造化を図ることとしている。
○ 特に、小学校低学年の学力差の大きな背景に語彙の量と質の違いがあるとの指摘がなされている。語彙の豊かさは、思考を深めたり活性化させたりして、考えを形成し深める力を身に付ける上で重要である。小学校低学年で表れた学力差は、その後の学力差の拡大に大きく影響するものであり、語彙量を増やしたり語彙力を伸ばしたりする指導の改善・充実、読書活動の充実が求められる。
3)外国語教育の充実
(ア)小・中・高等学校を通じて一貫して育成すべき外国語教育における資質・能力
○ グローバル化が急速に進展する中で、子供たちの将来の職業的・社会的な環境を考えると、外国語、特に英語によるコミュニケーション能力は、これまでのように一部の業種や職種だけでなく、生涯にわたる様々な場面で必要とされることが想定され、グローバル人材育成において今まで以上にその能力の向上が課題となっている。
○ このような背景の中で、外国語活動及び外国語科においては、小・中・高等学校を通じて、発達段階に応じて、言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や、情報や考えなどを理解したり伝えたりする力の育成を図るとともに、「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」の領域を総合的に育成することをねらいとして、現行の学習指導要領に改訂され、様々な取組を通じて充実が図られてきた。
○ 一方で、各学校段階での指導改善による成果が認められるものの、児童生徒の学習意欲に関する課題があるとともに、学校種間の接続が十分とは言えず、進学後に、それまでの学習内容を発展的に生かすことができていない状況が見られる。また、中・高等学校において、特に「話すこと」及び「書くこと」などの言語活動が十分に行われていないことや、伝える相手、目的・状況に応じて表現することなどに課題があると考えられる。
○ このため、次期学習指導要領においては、小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力を、前述の三つの側面を踏まえつつ、(1)各学校段階の学びを接続させること、(2)「英語を使って何ができるようになるか」という観点から一貫した教育目標(具体的な指標の形式の目標を含む。)を学習指導要領に設定する。それに基づき、外国語を「どのように使うか」、例えば、国際共通語としての英語を通して「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」という観点から、卒業後、どのような職業等に就くとしても生かすことができるような資質・能力を、児童生徒が将来の進路や職業などと結び付け主体的に学習に取り組む態度等を含めて育まれるようにする必要がある。このため、学習・指導方法、評価方法の改善・充実を一体的に図っていく必要がある。
○ また、これまでの外国語教育の成果と課題を踏まえ、各学校が適切に学習到達目標を設定し、育成すべき資質・能力についての達成状況を明確化できるようにする。そのため、国際的な基準などを参考に、外国語教育の目標に沿って、高等学校卒業時において共通に求められる資質・能力を発達段階に応じた形で明確にした上で、小学校中学年段階から「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やりとり、発表)」「書くこと」の領域ごとに示すとともに、複数の技能を組み合わせて効果的に活用する「技能統合型」の言語活動をより重視した指標の形式の目標を段階的に設定する。これらを踏まえ、外国語教育において育成すべき資質・能力を育む学びのプロセス(学習過程)の改善・充実を図ることとする 。
○ その際、高等学校卒業時の生徒の英語力として、国の教育振興基本計画に掲げられている目標(中学校卒業段階で英検3級(CEFRA1レベル程度)程度以上、高等学校卒業段階で英検準2級程度~2級(CEFRA2~B1レベル程度)程度以上を達成した中高生の割合を50%)の実現に向けた目標・内容等を想定した改善・充実を行うこととしている。
○ あわせて、言語能力向上の観点から、外国語教育においては、他者とのコミュニケーション(対話や議論等)の基盤を形成する側面を、資質・能力全体を貫く軸として重視しつつ、他の側面(創造的思考、感性・情緒等)からも育成すべき資質・能力が明確となるよう整理することを通じて、外国語教育を更に改善・充実する。
○ このため、外国語教育においては、小・中・高等学校を通じて、外国語で他者とコミュニケーションを図る基盤を形成するため、領域のバランスの取れた育成を踏まえつつ、言語や文化に対する理解を深め、他者を尊重し、聞き手・読み手・話し手・書き手に配慮しながら、外国語でコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図る。(あわせて、身近な話題から幅広い話題について理解したり、情報や考えなどを伝え合ったりすることができるコミュニケーション能力を養うため、目標、指導内容、学習・指導方法、学習過程、学習評価等の在り方について一体的に検討されている。)
(イ)小学校の外国語教育における改善・充実
○ 小学校段階においては、高学年の「外国語活動」の充実により、児童の高い学習意欲、中学生の変容などの成果が認められる一方で、(1)音声中心で学んだことが、中学校の段階で音声から文字への学習に円滑に接続されていない、(2)国語と英語の音声の違いや英語の発音と綴(つづ)りの関係、文構造の学習において課題がある、(3)高学年は、児童の抽象的な思考力が高まる段階であり体系的な学習が求められることなどが課題として指摘されている。
○ これらの成果と課題を踏まえて、中学年から「聞く」「話す」を中心とした外国語活動を通じて外国語に慣れ親しみ外国語学習への動機付けを高めた上で、高学年から発達段階に応じて段階的に文字を「読むこと」及び「書くこと」を加えた、領域を総合的・系統的に扱う教科学習を行うことが求められる。その際、これまでの課題に対応した教科化に向けて、新たに(1)アルファベットの文字や単語などの認識、(2)国語と英語の音声の違いやそれぞれの特徴への気付き、(3)語順の違いなど文構造への気付きなど、言語能力向上の観点から「言葉の仕組みの理解」などを促す指導を行うために必要な時間を確保することが必要である 。
○ 小学校高学年においては、
  ・教科としての外国語教育のうち基礎的なものとして、中学年からの高学年及び中学校への学びの連続性を持たせながら、これまでの体験的な「聞くこと」「話すこと」に加え、「読むこと」「書くこと」の領域を扱う言語活動を通じて、より系統性を持たせた指導(教科型)を行う。その際、外国語の基本的な表現に関わって聞くことや話すことなどのコミュニケーション能力の基礎を養う体系的な指導を行う教科として位置付ける。
  ・教科として位置付ける際、単に中学校で学ぶ内容を小学校高学年に前倒しするのではなく、身近なことに関する基本的な表現による各領域の豊かな言語活動を行うため、発達段階に応じた「読むこと」、「書くこと」に慣れ親しみ、積極的に英語を読もうとしたり書こうとしたりする態度の育成を含めた初歩的な運用能力を養うことが考えられる。
    例)馴染(なじ)みのある定型表現を使って、自分の好きなものや一日の生活などについて、友達に質問したり、質問に答えたりすることができる。
  ・教科として評価する際、英語嫌いにならないようにするため、外国語を読んだり、書いたりすることなどを通して、言葉の仕組みの面白さなどに気付きながら活用しようとする意欲や態度をより適切に評価できるようにすることが重要である。
○ あわせて、小学校で学んだ語彙、表現などは中学校において、小学校とは異なる場面で使ったり別の意味で活用したりするなど、言語活動において繰り返し活用し定着を図る。さらに、中学校で学習した語彙・表現・文法事項等は高等学校においても意味のある文脈の中で コミュニケーションを通して繰り返し触れることが重要である。その際、ICT等を活用した効果的な言語活動を行うよう工夫が求められるとともに、児童生徒が自らの学習活動を振り返って次につながる主体的な学びができるようにすることが必要である。
○ このような方向性を目指し、小学校高学年において「聞くこと」「話すこと」の活動に加え、「読むこと」「書くこと」を含めた領域を扱う言語活動を展開し定着を図り、教科として系統的な指導を行うためには、年間70単位時間程度の時数が必要である。また、中学年における外国語活動については、従来の外国語活動と同様に年間35単位時間程度の時数が必要である。
○ その場合の外国語の授業時数については、小学校高学年において、現行の外国語活動に必要な時間の倍程度となる年間70単位時間程度の時数を、中学年における外国語活動については、現行の外国語活動と同様の35単位時間程度必要である。
(ウ)短時間学習等の活用など、柔軟なカリキュラム設定に関する考え方
○ これまでの成果・課題を踏まえつつ、教育課程全体の枠組みの状況 を考慮すると、小学校高学年において年間35単位時間増となる時数を確保するためには、ICT等も活用しながら10~15分程度の短い時間を単位として繰り返し教科指導を行う短時間学習(帯学習、モジュール学習。以下「短時間学習」という。) を含めた柔軟なカリキュラム設定の在り方と必要な「カリキュラム・マネジメント」を、教育課程全体を見通しながら実現していく必要がある。
○ 弾力的な授業時間の設定に関する研究開発学校等の先行的な取組状況や「教育課程の編成・実施状況調査」の結果などを踏まえた、これまでの成果・課題等を踏まえ、短時間学習では、今後、外国語の特質を踏まえた指導内容のまとまりや教育効果を高める観点から、短時間学習を行う場合には、学習指導要領上の標準授業時数内で、その時間を年間授業時数に含め、その目標を明確にし、まとまりのある授業時間との関連性を確保した上で実施することが必要である。
〇 前述の調査結果や小学校現場の取組の現状を踏まえると、短時間学習については、授業時数内外で様々な教科も含めた取組が行われており、全ての小学校において、外国語に特化した短時間学習を一律に行うこととすることは困難な状況にある。このため、年間70単位時間における一定の短時間学習の在り方を横並びで求めるのでなく、ある場合には45分授業を60分授業の扱いにして、その中の15分を短時間学習として位置付けることや、また別の場合には外国語の短時間学習を2週間に3回程度実施する、さらに別の場合には夏季、冬季の長期休業期間において言語活動を行うなど、地域や各学校の実情に応じた幅のある柔軟なカリキュラムの設定が必要であると考えられる。
○ 中学年においては、年間35単位時間、週あたり1コマ相当の外国語活動を、短時間学習で実施することは困難であり、小学校の教育課程全体を見通した「カリキュラム・マネジメント」が必要であると考えられる。
○ 以上を踏まえた検討とともに、担当する教員が、その指導内容の決定や指導の成果の把握と活用等を責任を持って行う体制整備が必要であるといった観点から、教員養成、教員研修及び教材開発に関する条件整備が不可欠である。
4)国語教育と外国語教育の効果的な連携
○ 国語教育と外国語教育は、ともに言語能力の育成に関わるものであるため、学習の対象となる言語は異なるが、共通する指導内容や指導方法等を扱う場面がある。
○ このため、学習指導要領等に示す指導内容を適切に連携させたり、各学校において指導内容や指導方法等を適切に連携させたりすることにより相乗効果が生まれ、それぞれの学習が一層充実し、言語能力の向上が図られると考えられる。言語能力の向上に関する特別チームにおいて示された方向性や具体策を踏まえた連携の強化が求められる。

(3)情報技術を手段として活用する力やプログラミング的思考の育成
○ 情報化が急速に進展し、身の回りのものに情報技術が活用されていたり、日々の情報収集や身近な人との情報のやりとり、生活上必要な手続など、日常生活における営みを情報技術を通じて行ったりすることが当たり前の世の中となってきている。情報技術は今後、私たちの生活にますます身近なものとなっていくと考えられ、子供たちには、情報技術を受け身で捉えるのではなく、手段として活用していく力が求められる。
○ 情報技術の基本的な操作については、小学生の1分間あたりのキーボードでの文字入力数が平均5.9文字であることなども踏まえながら、文字入力やデータ保存などに関する技能の着実な習得を図っていくことが求められる。3学年の国語におけるローマ字学習や、総合的な学習の時間において身に付ける学び方、社会科における資料活用、算数における図形やグラフの作成、理科における実験・観察の記録等の学習とも関連づけながら、着実な習得を図っていくことが必要である。また、国は関係者とも連携して、そのために必要な練習用教材を開発し、Web上で提供していくことが求められる。
○ また、身近なものにコンピュータが内蔵され、プログラミングの働きにより生活の便利さや豊かさがもたらされていることについて理解し、そうしたプログラミングを、自分の意図した活動に活用していけるようにすることもますます重要になっている。中学校においては、技術・家庭科(技術分野)においてプログラミング教育の時間が倍増され、高等学校でも情報科の共通必履修科目の新設が予定されている。小学校段階においても、有識者会議による議論の取りまとめを踏まえながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる「プログラミング的思考」などを育むプログラミング教育の実施を位置付けていくことが求められる。
→必要となるカリキュラム・マネジメントや条件整備等について、(4)に追記

(4)各学校における「カリキュラム・マネジメント」
1)「カリキュラム・マネジメント」の意義
○ 教育課程を通じて、言語能力や情報活用能力等も含め、小学校教育として育成すべき資質・能力を育んでいくためには、各教科等を学ぶ意義を大切にしつつ相互の関連を図りながら、教科等単独では生み出し得ない教育効果を高めていくことが必要となる。そのための鍵となるのが、「カリキュラム・マネジメント」である。
○ 各学校が行う時間割の編成なども、学校における子供の生活時間を、教育課程の指導内容や授業時数との関係でどのようにデザインするかという観点から行われる「カリキュラム・マネジメント」の一部であると言える。現行学習指導要領では、児童の発達の段階及び各教科等や学習活動の特質を考慮して、授業の1単位時間を何分にするかについて決定したり、創意工夫を生かして時間割を弾力的に編成したりすることができることとされているところである。
○ 各学校では、学習指導要領に基づき育成すべき資質・能力を設定し、「カリキュラム・マネジメント」に基づいて、時間割の編成を含めて指導内容を体系化したり、地域や社会との連携・協働の中で、どのように人的・物的資源を活用していくかを計画したりしていくことが求められる。
2)小学校における弾力的な時間割編成の現状
○ 現行学習指導要領では、児童の発達の段階及び各教科等や学習活動の特質を考慮して、授業の1単位時間を何分にするかについて決定したり、創意工夫を生かして時間割を弾力的に編成したりすることができることとされているところである。
○ これを踏まえて、各学校においては、時間割を編成するに当たって、子供たちの姿や地域の実情を踏まえつつ、休憩の取り方や休業期間を工夫したり、朝学習や昼学習などの短時間学習の時間を設定したり、授業時間を弾力化したり、学校教育法施行規則の改正に伴った土曜日の活用を行ったりするなど、様々な創意工夫が行われているところである。
○ 「教育課程の編成・実施状況調査」によると、例えば6年生において、週28コマとしている小学校は63%、29コマとしている小学校は32%である。
○ また、現在、75%の小学校が短時間学習を実施しており、その主な目的としては、「繰り返し学習」による基礎的な知識・技能の定着や生活リズムの形成が挙げられている。指導の成果については、9割以上の学校が、指導の成果や児童の変容が見られたと回答しているところである 。
○ 短時間学習の実施内容については、読書活動が最も多く(91%。うち7%が授業時数内で実施)、次いで計算練習(84%。うち16%が授業時数内)、漢字練習(78%。うち19%が授業時数内)となっている。外国語活動や英語の学習については、実施している割合は低いが、実施する場合は授業時数に含めて実施している割合が相対的に高くなっている。
○ 加えて、学校教育法施行規則の改正等を受けて、現在25%の小学校で土曜授業が実施されている。時間割編成の在り方を考えるに当たっては、こうした多様な編成の現状を踏まえる必要がある。
3)次期改訂に向けた授業時数の考え方と「カリキュラム・マネジメント」
○ 「社会に開かれた教育課程」の理念のもと、これからの時代に求められる資質・能力を育成していくためには、学びの量と質の双方が重要であり、また、教科学習と、教科横断的な学習の双方を充実させていくことが必要である。
○ こうした改訂の方向性のもとでは、各教科等の指導内容は維持しつつ、資質・能力の育成の観点から構造化を図ったり、学びの質的な向上を図ったりすることが前提となり、指導内容や授業時数を削減するという選択肢をとることは困難である。
○ 現行学習指導要領における各教科等の授業時数を前提に考えれば、外国語教育の充実を図ることにより、時数としては中学年・高学年において年間35時間増となる。週あたりで考えれば1コマ分であるが、教育課程全体の枠組みの状況 や、小学校における多様な時間割編成の現状を考慮すると、全小学校において一律の取扱いとすることは困難であり、この時数の確保をどのように行っていくかについては、各学校の実状に応じた「カリキュラム・マネジメント」の視点から検討していくことが必要となる。
○ 高学年において年間35単位時間増となる時数を確保するためには、外国語に多く触れることが期待される外国語学習の特質を踏まえ、外国語科を中心にまとまりのある授業時間との関連性を確保した上で、効果的な繰り返し学習等を行う短時間学習を実施することが考えられるが、他にも、45分に15分を加えた60分授業の設定、夏季、冬季の長期休業期間における学習活動、土曜日の活用や週あたりコマ数の増なども考えられるところであり、場合によってこれらを組み合わせながら、地域や各学校の実情に応じた柔軟な時間割編成を可能としていくことが求められる。
○ また、中学年については、外国語活動を短時間学習で行うことや、60分授業の設定は難しいと考えられるが、その他については同様の考え方に基づき、地域や各学校の実情に応じた柔軟な時間割編成を可能としていくことが求められる。
4)小学校の教育課程の改善・充実を支える方策について
○ 「カリキュラム・マネジメント」を通じて上記のような工夫を行うことが考えられるとしても、中学年・高学年において、指導内容や授業時数として年間35時間分が増えることに変わりはなく、上限であるとされた前回改訂の授業時数を更に上回る改訂は、教育現場にとっては大きな負担の増となる。
○ こうした中で、次期改訂の方向性に向けて、小学校の教育課程の改善・充実を図るには、「カリキュラム・マネジメント」の実践に関する知見の共有とともに、外国語教育に関する教員養成、教員研修及び教材開発に関する条件整備、小学校の低・中・高学年それぞれの課題に応じた指導体制の整備が不可欠である。
○ 「カリキュラム・マネジメント」を通じた弾力的な時間割の編成の在り方については、短時間学習の位置付けを含め、学習指導要領の総則やその解説において分かりやすく示すこととする。また、こうした時間割の編成に当たっては、外国語教育や特定の学年にとどまらず、全ての教科等と学年全体を見通す視点が必要になることから、効果的な創意工夫の在り方について、国や教育委員会と小学校現場、関係団体が連携して調査研究を行い、その成果を普及させていくことが求められる。
○ 外国語教育については、効果的な教材開発と、指導者の確保が課題となる。教材については、教科書が、今回改訂の教科化や「カリキュラム・マネジメント」の考え方に対応したものとなることが重要であり、そうした教科書の在り方につなぐためにも、先行して教科化に対応した教材を平成30年度に配布できるよう、28年度中に27・28年度に開発した小学校中学年・高学年向けの新たな補助教材の検証を開始し、29年度にかけて開発を行うことが求められる。あわせて、活用しやすいICT教材の開発が求められる。
○ 指導者の確保については、中学校区等の地域単位を基盤として、中学校や複数の小学校が連携した研修、中学校と小学校の教員の相互の授業参加、専科指導を行うなど連携体制を構築する必要がある。例えば、「英語教育推進リーダー」を中心とした域内研修を行うことなどにより、学級担任はじめ全教員が外国語に触れ、外国語教育が指導できるよう校内研修の充実を含めた外国語教育における域内の連携体制を充実させていくなど、各地方自治体における体制づくりが求められる。また、そのような体制を確保しながら、養成・研修・採用を通じた充実を図っていくことが重要である。教職課程の見直しとともに、現職教員が外国語の指導に関する専門性を高めることができるよう、小学校の教科化に必要な内容を加えた認定講習の開設支援等を行う。あわせて、専科指導を行う教員の養成・確保や、外部人材の活用支援等により、専門性を一層重視した指導体制を構築する。
○ 小学校全体の指導体制に関しては、特に高学年に関して、専科指導を充実させることにより、学級担任制のよさと、教科担任のよさを兼ね備えた指導体制を確立していくことが求められる。こうした観点から、学年段階の柔軟な区切りを可能とする義務教育学校制度の更なる活用の促進も求められる。

(5)学校段階間の接続
○ 低学年は、学びがゼロからスタートするわけではなく、幼児教育で身に付けたことを生かしながら教科等の学びにつなぎ、子供たちの資質・能力を伸ばしていく時期である。現在、幼児教育部会においては、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の明確化について議論されているところである。小学校教育においては、生活科を中心としたスタート・カリキュラムを学習指導要領に明確に位置付け、その中で、合科的・関連的な指導や短時間での学習などを含む授業時間や指導の工夫、環境構成等の工夫 も行いながら、幼児期に総合的に育まれた「見方や考え方」や資質・能力を、各教科等の特質に応じた学びにつなげていくことが求められる。その際、小学校低学年のスタート・カリキュラムを中心とした学習と中学年以降の学習の接続という観点からのカリキュラム・マネジメントの視点も重要である。
○ また、高学年の発達段階における課題に対応した教育内容と指導体制を確立する観点から、学年段階の柔軟な区切りを可能とする義務教育学校制度の更なる活用の促進も求められる。

【2】中学校(取りまとめ中)
(1)中学校教育の基本
○ 中学校においては、義務教育を行う最後の教育機関として、教育基本法第5条第2項が規定する「各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎」及び「国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質」を卒業までに育むことができるよう、小学校教育の基礎の上に、中学校教育を通じて身に付けるべき資質・能力を明確化し、その育成を高等学校教育等のその後の学びに円滑に接続させていくことが求められている。
○ 「社会に開かれた教育課程」の理念の下、これからの時代に求められる資質・能力を育成していくためには、現行学習指導要領の各教科等の授業時数や指導内容を前提としつつ、資質・能力の育成の観点から各教科等の目標や指導内容の構造化を図るなど教科学習を充実するとともに、カリキュラム・マネジメントに基づく教科横断的な視点からの学習の充実が必要である。特に、教科担任制をとる中学校においては、教科横断的な意識を教員それぞれが持つことが重要である。本とりまとめの8.においても、教科横断的な視点からの校内の研修体制の充実を求めているが、このような視点は、中学校においても大切である。

(2)「カリキュラム・マネジメント」を軸とした中学校教育の改善・充実
1)多様化する課題に対応するためには、教職員間や地域の意識を「カリキュラム・マネジメント」を軸に一本化していくことが重要。
○ 中学生の時期は、思春期に入り、親や友達と異なる自分独自の内面の世界があることに気付きはじめるとともに、自意識と客観的事実との違いに悩み、様々な葛藤(かつとう)の中で、自らの生き方を模索しはじめる時期である。また、大人との関係よりも、友人関係に自らへの強い意味を見いだす。さらに、親に対する反抗期を迎えたり、親子のコミュニケーションが不足しがちな時期でもあり、思春期特有の課題が現れる。生徒指導に関する問題行動などが表出しやすいのが、思春期を迎えるこの時期の特徴である。
○ このように、発達の段階に応じて多様化する課題に対して、各中学校ではこれまでも生徒指導主事、進路指導主事等の校務分掌を担当する教員を中心に、生徒一人ひとりの発達をきめ細かに支える熱心な取組が展開されてきたところである。今後は、本とりまとめの7.でも述べたように、「カリキュラム・マネジメント」を軸としながら、全ての教職員の意識を教育課程を軸に一本化し、各学校が行う進路指導や生徒指導、学習指導等の意義を、子供たちの発達を支え、資質・能力を育成するという観点から捉え直すことにより、さらなる効果的な取組の充実を図っていくことが求められる。
○ また、中学生の時期は、生徒自身の興味・関心に応じて、部活動などの教育課程外の学校教育活動や、地域の教育活動など、生徒による自主的・自発的な活動が多様化していく段階にある。少子化や核家族化が進む中、「社会に開かれた教育課程」の視点から、生徒の多様な学びや経験の場を保障し、生徒一人一人の資質・能力を育成していくためには、教育課程外の学校教育活動や地域主体の教育活動と、教育課程との有機的な関連を一層充実することが大切である。
  ・「社会に開かれた教育課程」の視点から、授業での学びと教育課程外の多様な教育活動とを関連付けることにより、生徒が、多様な分野の学びや社会とのつながり、キャリア形成の可能性に触れながら、自分の興味・関心を深く追究する機会を実現し、人生を切り拓いていくために必要な資質・能力を育成する。
  ・「社会に開かれた教育課程」の理念の下、生徒にどのような資質・能力を育成することを目指すのかという教育目標を共有しながら、学校と地域がそれぞれの役割を認識した上で、共有した目標に向かって、共に活動する協働関係を築き、教育活動を充実する。
  ・教育課程内外の活動が相乗効果を持って生徒の資質・能力の育成に資するものとなるよう、教育課程外の活動についても、生徒の「主体的・対話的で深い学び」の実現を共に目指すものとする。生徒の学びと生涯にわたるキャリア形成の関係を意識した教育活動が展開されることが重要であり、短期的な学習成果のみを求めたり、特定の活動に偏ったりするものとならないよう、その実施形態や活動時間の適切な設定など、生徒のバランスのとれた生活や成長に配慮する。
2)部活動については、将来にわたる持続的な視野から在り方を検討し、活動内容や実施体制を検討していくことが必要。
○ 部活動については現行学習指導要領では「生徒の自主的・自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際、地域や学校の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行う」こととされている。
○ 部活動は、異年齢との交流の中で、生徒同士や教員と生徒等の人間関係の構築を図ったり、生徒自身が活動を通して自己肯定感を高めたりする等、教育的意義が高いことも指摘されているが、そうした教育が、部活動の充実の中だけで図られるのではなく、教育課程内外の関連を図り、学校の教育活動全体の中で達成されることが重要である。
○ このことを踏まえ、部活動については教育課程との関連を図った適切な運営を推進する観点から以下の点から改善を図ることとする。
  ・子供の自主的・自発的な参加により行われるスポーツや文化、科学等に関する活動については、学校教育か社会教育かといった枠を超えて、共に子供の成長を支えるという観点に立つ必要がある。少子化が進む中で、部活動に実施に必要な集団の規模や指導体制を持続的に整えていくためには、一定規模の地域で支える体制を構築していくことが長期的には不可欠であり、そうした将来の在り方を描きながら、教育委員会や関係団体等を中心として指導に必要な体制の基盤を整えていくことが求められる。
  ・部活動も学校教育活動の一環であることから、生徒の「主体的・対話的で深い学び」を実現する視点が求められることを明確にする。これにより、部活動と教育課程との関連がより一層明確になると考えられる。
  特に「深い学び」を実現する観点からは、例えば、保健体育科(運動領域)の「見方・考え方」は「運動やスポーツについて、その意義や特性に着目して、楽しさや喜びを見出すとともに体力の向上に果たす役割を捉え、公正、協力、責任、参画、共生、健康・安全といった視点を踏まえながら、自己の適性等に応じて「する・みる・支える・知る」等の多様な関わり方について考えること(運動領域)」とする方向で検討が進められている。運動部活動においても、こうした見方・考え方を生かしながら、競技を「すること」のみならず、スポーツに関する科学的知見やスポーツとの多様な関わり方、多様なスポーツのよさを実感しながら、自己の適性等に応じて、生涯にわたるスポーツとの豊かなかかわり方を学ぶような指導が求められる。
  こうした指導の考え方に基づき、スポーツや文化、科学等それぞれの分野に関する科学的知見や、指導者や仲間との言語活動を重視した指導者教育が行われることが重要である。
  ・部活動が教育課程内の教育活動と相乗効果を持って展開されるためには、部活動の時間のみならず、子供の生活や生涯全体を見渡しながら、生徒の学びと生涯にわたるキャリア形成の関係を意識した教育活動が展開されることが重要であり、短期的な学習成果のみを求めたり、特定の活動に偏ったりするものとならないよう、休養日や活動時間を適切に設定するなど、生徒のバランスのとれた生活や成長に配慮することが求められる。
  ・部活動も含めた、子供の自主的・自発的な参加により行われるスポーツや文化、科学等に関する活動の実施にあたっては、教員の負担軽減の観点も考慮しつつ、地域や学校の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等との各種団体との連携など、生徒にとっても多様な経験の場となるよう、運営上の工夫を行うことが求められる。

(3)学校段階間の接続
○ 義務教育9年間を通じて、子供たちに必要な資質・能力を育むため、小中学校間の連携を図ることにより、教員相互、保護者相互の理解を推進する視点も大切である。
例えば、近隣の小・中学校による合同連絡会や研修会、保護者会の開催などを通じて、児童生徒の実態や指導の在り方、保護者としての学校へのかかわり等について知る機会を得ることも大切である。
○ 6.で述べたとおり、高等学校段階との接続の観点から、知識の理解の質を高めるという学習指導要領改訂の趣旨を踏まえ、高等学校入学者選抜、大学入試者選抜の質的改善を図ることが求められる。

【3】高等学校
(1)高等学校教育の基本
○ 高等学校は、中学校卒業後の約98%の者が進学し、社会で生きていくために必要となる力を共通して身に付ける、初等中等教育最後の教育機関である。その教育を通じて、一人一人の生徒の進路に応じた多様な可能性を伸ばし、その後の高等教育機関等や社会での活動へと接続させていくことが期待されており、その学びは、高等学校等就学支援金制度等により社会全体で支えられているものである。
○ 平成27年6月の公職選挙法の改正により、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、生徒にとって政治や社会がより一層身近なものとなっている。高等学校においては、社会で求められる資質・能力を全ての生徒に育み、未来の創り手として送り出していくことがこれまで以上に強く求められている。
○ 高等学校教育については、大学入学者選抜や資格の在り方等といった外部要因によりその在り方が規定されてしまい、目指す教育改革が進めにくいとの指摘もなされてきた。しかしながら、現在、1.にも述べられているように、社会や産業の構造が急速に変化する中で、人間として求められる資質・能力とは何かということを、学校と社会が、学びの場面か社会生活の場面かということを超えて共有できる好機にある。
○ 今、教育界だけではなく社会的な要請としても求められているのは、初等中等教育がその強みを発揮し、子供たちに生きて働く知識や力を身に付け、大学教育や社会生活の在り方につなげていくことである。とりわけ社会への出口に近い高等学校が、それぞれの学校において子供たちに必要な資質・能力とは何かを明確にし、しっかりと育み次につなげていくことができるかどうかは、単なる接続の問題ではなく、子供自身の人生や未来の社会の在り方に関わる大きな課題となっていると言える。
○ こうした中で行われる次期改訂は、特に高等学校にとって、これまでの改訂以上に大きな意義を持つものになると考えられる。それは、今回のこの改訂が、「高大接続改革」という、高校教育を含む初等中等教育改革と、大学教育改革、そして両者をつなぐ大学入学者選抜改革の一体的改革や、「キャリア教育」の視点で学校と社会の接続を目指す中で実施されるものであるからである。
○ 文部科学大臣から、次期改訂に向けた審議要請の諮問がなされたのは平成26年11月であるが、これは中央教育審議会高大接続特別部会において答申の最終案が審議され、その最終調整の段階であった。諮問においてはこうした状況が反映され、「高等学校教育について、中央教育審議会における高大接続改革に関する議論や、これまでの関連する答申等も踏まえつつ」検討を行うことが要請された。同年12月に取りまとめられた中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体改革について」では、今後の学習指導要領改訂の方向性も見据えながら、一人一人の生徒が、義務教育を基盤として、(1)十分な知識・技能と、(2)それらを基盤にして答えのない問題に自ら答えを見いだしていく思考力・判断力・表現力等と、(3)これらの基になる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度とを身に付けていくことができるよう、高等学校教育の改革を実現していくことが求められている。
○ 中央教育審議会に設置された教育課程企画特別部会では、こうした高大接続答申の提言も踏まえつつ議論が進められ、昨年8月には、資質・能力の在り方や各学校段階別・教科等別の改革の方向性を示した「論点整理」がまとめられた。この「論点整理」が示した方向性は、22の専門部会の議論に受け継がれ、全ての教科等において、高大接続改革の実現を目指した学習指導要領の在り方が議論されてきている。
○ また、そうした次期改訂に向けた議論の状況は、高大接続改革の具体化のために設置された「高大接続システム改革会議」にも共有され、本年3月の最終報告にも反映された。このように、初等中等教育と大学教育が連携を密にしながら、これからの時代に求められる知識や力を生徒に育んでいくため、手を携えて改善・充実をはかるという改革の最中にある。
○ また「キャリア教育」については、平成23年の中央教育審議会答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」を踏まえつつ、小・中・高等学校を通じた充実が議論されているところである。今はまさに、高校と大学、社会が共に歩みを進め、学校種を越え、また学校と社会の間で学びをつなぐことのできる、またとない機会にある。
○ こうした中で、高等学校の教育課程の在り方については、各学校が、社会で生きていくために必要となる力を共通して身に付ける「共通性の確保」の観点と、一人一人の生徒の進路に応じた多様な可能性を伸ばす「多様性への対応」の観点を軸としつつ、育成すべき資質・能力を明確にし、それに基づく「カリキュラム・マネジメント」を図っていくことが重要である。また、育成すべき資質・能力と教育課程の在り方を、シラバスとして生徒や社会と共有していくことも重要である。
○ また、高等学校の科目構成については、育成すべき資質・能力の在り方に基づいた抜本的な見直しを図ることとしている(別添参照)。こうした新しい科目の趣旨に沿った教材の開発や教員の養成・研修がなされるよう、科目の趣旨を周知し、指導体制の確保等に必要な仕組みを構築していくことも重要である。
○ また、高等学校における指導や評価の改善・充実が未来を創り出すものだということを認識し、指導と評価を通じて生徒の資質・能力を伸ばしていくことを教員の中核的な業務として捉えていくことが重要となる。

(2)各高等学校において育成すべき資質・能力とカリキュラム・マネジメント
(高等学校におけるカリキュラム・マネジメントの具体的な方向性)
○ 高等学校では、生徒はその後に多様な進路を選択していくことから、地域課題や現代的、将来的な課題に合わせて育成する人材像を明確にしていくことが求められる。
例えば、校是や校訓などをより具体化して育成する資質・能力を設定し、それを基に教育課程の改善・充実を図るという文化を高等学校の中に作っていくことが、カリキュラム・マネジメントにおいては必要となる。
○ また、社会全体で人材を育てていく観点から、学校における学びのみならず、社会で学んだことを実践として取り入れていくことも重要である。高校生が、家庭・地域における多様な活動や企業等と連携した活動を通じて獲得した経験を蓄積し、また、学校における教育活動の中で生かしていくことで、より豊かな学びにつながり、「社会に開かれた教育課程」の実現に資することとなる。

《学び直しの充実》
○ 我が国の高校生の学力・学習状況については、特に学力中位層の学習時間の減少とともに、基礎学力の不足や学習意欲の面での課題が指摘されており、小・中学校での学習内容を十分に身に付けていない生徒も少なからず見られるなど、学び直しへのニーズは高い。
○ 現行の学習指導要領においては、学校や生徒の実態等に応じて義務教育段階の学習内容の確実な定着を図るための指導を行うことを指導計画の作成に当たって配慮すべき事項として示しており、具体的な工夫としては、ア.各教科・科目の学習の中で、学び直しの機会を設けること、イ.必履修教科・科目について学習指導要領に定める標準単位数より増加して履修させること、ウ.学校設定教科・科目として学び直しを行うことの三つを示している。
  平成26年度における義務教育段階での学習内容の確実な定着を図るための指導の実施状としては、必履修教科・科目の「標準単位数を超えて増加して配当する」ことによる指導を実施している学校の割合が最も高い状況であった。
また、学校によっては義務教育段階の学習内容の確実な定着を図ることを当該学校の特色として位置付けるなど、学び直しの充実が図られており、そうした学校においては、学校設定教科・科目として学び直しを中心とした科目を開設し、主に第1学年の生徒については、当該学校設定教科・科目を中心に履修させるような教育課程を編成している場合がある。
このように、義務教育段階での学習内容の確実な定着を図るための指導については、現行の学習指導要領に定める工夫やその組み合わせにより一層、個々の生徒の状況にあわせた対応が必要であり、これらの位置づけや具体的な取組例について周知を図り、各地域における取組の充実につなげていくことが望まれる。

《指導・評価の改善・充実》
○ また、義務教育段階の学習内容を含めた高校生に求められる基礎学力の確実な習得とそれによる高校生の学習意欲の喚起に向けて、高等学校における生徒の基礎学力の定着度合いを把握・提示できる仕組みとして「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の検討が進められている。
この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の基本的な目的は、生徒の基礎学力の習得と学習意欲の向上を図ることにあるが、具体的な運用においては、学校が、客観的でより広い視点から自校の生徒の基礎学力の定着度合いを把握し、指導を工夫・充実することや、設置者等が基礎学力定着に向けた施策の企画・立案や教員配置、予算等を通じた学校支援の実施に取り組むことが重要になる。
この他にも、都道府県独自に調査を実施したり、校長会等において検定試験を行ったりしている。各学校及び教育委員会等の設置者は、こうした調査等の結果を活用して、授業の改善をはじめ、教育課程の改善を図るサイクルが構築されるよう、具体的な活用事例の提示を含めて検討を進めていくことが必要である。
○ 多様な学習活動を多面的に評価することが求められていることを踏まえ、教員の評価能力の向上を図っていくことが重要である。また、評価業務が教員の中核的業務であることを踏まえた業務改善や教員配置等の改善が求められる。

《カリキュラム・マネジメントの充実に向けた取組の推進》
○ また、スーパーサイエンスハイスクールや、スーパーグローバルハイスクール、スーパー・プロフェッショナル・ハイスクールにおける先進的な教育課程の研究成果や、論理的思考力や表現力、探究心等を備えた人間育成を目指す国際バカロレアのカリキュラム等を踏まえながら、教科等における学びと教科横断的な学びを教育課程の中でより一層効果的に関連付けていくことも求められる。

(学校段階間の接続や卒業後の進路)
《中学校と高等学校との接続》
○ 中学校と高等学校の接続については、中学校において義務教育段階で育成すべき資質・能力を確実に育むとともに、高等学校においては、必要に応じて前述の学び直しの視点を踏まえた教育課程を編成して義務教育段階での学習内容の確実な定着を図り、高等学校段階の学習に円滑に移行することを重視する必要がある。
また、高等学校においては、生徒の多様な進路の希望に応えるため、幅広い教科・科目の中から生徒が履修する科目の選択を行うなど、選択履修の趣旨を生かした教育課程編成を行うこととしている。このことは、生徒には、自身の在り方生き方を考えて適切に選択・判断する力を求めるものである。中学校までの教育課程においては、生徒が履修する教育課程を選択するということはないため、高等学校への接続に関連して、生徒が適切な教科・科目を選択できるようガイダンス機能の充実を図ることが重要である。
○ なお、中学校と高等学校との円滑な接続の観点からは、中等教育の多様化を一層推進し、生徒の個性をより重視した教育を実現するため、中高一貫教育制度が設けられている。中高一貫教育制度に関する教育課程については、その利点を生かすため特例措置が設けられており、各学校において引き続き特色ある教育活動が展開できるよう、この特例措置については今後とも維持する。

《高大接続》
○ 高等学校教育に対しては、大学入学者選抜の在り方が極めて大きな影響を与える。この高大接続の課題については、平成26年に中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について~全ての若者が夢や目標を芽吹かせ、未来に花開かせるために~」が示され、その提言内容を具体化するため高大接続システム会議が設置され、平成28年3月には「最終報告」が取りまとめられている。
○ 高等学校における教科・科目等の在り方を含む教育内容の見直しや、アクティブ・ラーニングの視点による学習・指導方法の不断の改善、多面的な評価など学習評価の改善充実といった高等学校教育の改革は、大学教育及び大学入学者選抜の一体的な改革が不可欠であり、引き続き調整を図りながら検討を進めていくことが必要である。

《職業との接続》
○ また、卒業後に就職を希望する生徒に対して、そのニーズに応えることができるよう、必要な資質・能力の育成につながる教育課程の改善・充実を図るとともに、企業等とも連携しつつ、より実践的な教育活動が展開できるように体制整備等を進める必要がある。
○ 特に、職業教育を主とする専門学科においては、地域の企業やその団体等との間で緊密な関係が構築されており、教育活動や就業に向けた指導においても連携が図られている。引き続き、こうした関係を維持、発展させていくこと必要である。

(3)卒業に必要な単位数や教科・科目の構成等
(卒業に必要な単位数)
○ 現行の学習指導要領等においては、各学校における教育課程の状況等を踏まえ、卒業に必要な単位は74単位としつつ、「高度な普通教育」及び「専門教育」を施す高等学校においては、普通教育として、すべての生徒に対し、日常生活を営む上で共通に必要とされる知識・技能を習得させ、それを活用する能力を伸ばし、調和のとれた人間の育成を目指すとの観点から、必履修教科・科目を設定しており、全学科共通で必履修及び選択必履修の教科・科目等の単位数は最低で38単位となっている。
○ 生徒に卒業までに修得させる単位数については、多くの定時制課程や通信制課程において、卒業までに修得させる単位数を74単位としている現状を踏まえ、国として定める卒業までに修得させる単位数は、引き続き74単位以上とする。

(必履修教科・科目)
○ 学習指導要領に定める高等学校の必履修教科・科目は、「高等学校とは何か」ということを学習内容の面から国が示したものであり、引き続き、必履修教科・科目を設定することが適当である。現在の必履修とすべき教科の範囲は、いずれもすべての生徒に社会で生きていくために必要となる力を共通して身に付けるためのものであり、現行の教科を基本とすることが適当である。
○ また、標準単位数の設定については、すべての生徒に社会で生きていくために必要となる力を共通して身に付ける観点と、一人一人の生徒の進路に応じた多様な可能性を伸ばす観点を踏まえる必要があることから、各必履修教科における必履修科目の単位数について、現行の単位数を原則として増加させないこととし、選択必履修となっている教科についても最少の単位数については、原則として増加させないこととする。

(選択科目)
○ 必履修科目に関する見直しと併せて、選択科目や専門教科・科目について改善・充実を図ることとし、標準単位数については、(1)各教科の必履修科目との関係や履修順序、(2)生徒の進路に応じた選択を可能にするとともに過大にならないようにすること、(3)現行の各教科における科目の履修状況等を考慮して定めることとする。

(教科・科目の構成)
各教科等の改善の基本的な方向性としては、以下のとおりであり、これを踏まえた共通教科の科目構成及び単位数については別紙のとおりとする。
○ 国語科においては、教材の読み取りが指導の中心になることが多いという課題を踏まえ、国語による主体的な表現等が重視された授業が行われるようにするとともに、古典の学習について、日本人として大切にしてきた言語文化を積極的に享受して社会や自分との関わりの中でそれらを生かしていくという観点を重視した科目構成とする。
○ 地理歴史科、公民科においては、国家及び社会の形成者として必要な知識や思考力等を基盤として選択・判断等を行い、国家及び社会の課題を解決していくために必要な力や、自国の動向とグローバルな動向を横断的・相互的に捉えて現代的な諸課題を歴史的に考察する力、持続可能な社会づくりの視点から地球規模の諸課題や地域課題を解決していく力を、全ての高校生に共通に育んでいくという観点を重視した科目構成とする。
○ 理数教育に関しては、学習に対する興味・関心・意欲の向上をはじめ、知識・技能の着実な習得や思考力・判断力・表現力等の育成を図るために探究的な学習を充実させる観点から、スーパーサイエンスハイスクールにおける取組の成果を踏まえつつ、数学・理科にわたる探究的科目として「理数探究基礎(仮称)」、「理数探究(仮称)」を新たに設けることとし、共通教科として理数科を位置付ける。
なお、これに伴い、数学科及び理科において、探究する学習を重視して開設された数学活用及び理科課題研究を見直すなど、科目構成を改める。
また、新たに設ける理数探究(仮称)については、各教科等の特質に応じた見方・考え方を総合的に活用するとともに、大学における学問分野につながっていくことを前提に、自己の在り方生き方に照らし、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら見方・考え方を組み合わせて統合させ、活用しながら、自ら問いを見出し探究することのできる力を育成するものであることから、「理数探究基礎(仮称)」及び「理数探究(仮称)」の履修により、総合的な探究の時間(仮称)の一部又は全部に替えることができることとする。
○ 外国語科については、一部改善が見られるものの、依然として各領域すべてに課題がある状況である。特に、「話すこと」及び「書くこと」における発信力の課題が大きい。こうした課題に対応するとともに、中学校からの学びを高等学校に円滑につなげ、生徒の多様化に対応できるようにするための科目構成とする。
○ 共通教科の家庭科については、現行の学習指導要領における科目の履修状況を踏まえて科目構成を見直す。また、共通教科の情報科については、問題の発見・解決に向けて、事象を情報とその結び付きの視点から捉え、情報技術を適切かつ効果的に活用する力を全ての生徒に育むための科目構成とする。
○ 総合的な学習の時間においては、各教科等の特質に応じた見方・考え方を総合的・統合的に活用することに加え、自己の在り方生き方に照らし、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら見方・考え方を組み合わせて統合させ、活用しながら、自ら問を見出し探究することのできる力を育成する。そのため、名称について「総合的な探究の時間(仮称)」に改める。
○ 他の教科については、これまでの成果を踏まえ、現行の必履修科目の枠組みを維持した上で、その内容の改善を図る必要がある。

(専門学科及び総合学科について)
○ 農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉、理数、体育、音楽、美術、英語の専門学科においては、我が国の産業経済の発展を担う人材を育成するため、又はその他の特定の分野における専門的な人材を育成するため、一定の専門性を確保する観点から、専門教科・科目を25単位以上履修させることとしている。
専門学科については、一人一人の生徒の進路に応じた多様な可能性を伸ばすために、学校の実態に応じて、様々な履修が考えられるため、引き続き
・すべての生徒に履修させる専門教科・科目の単数は、25単位を下らない
・必履修教科・科目の履修と同様の成果が期待できる場合に、その専門教科・科目の履修をもって、必履修教科・科目の履修の一部又は全部に替えることができる
・職業教育を主とする専門学科においては、「課題研究」、「看護臨地実習」又は「介護総合演習」と総合的な学習の時間について、同様の成果が期待できる場合には、相互に一部又は全部に替えることができる
こととする。
○ 総合学科は、幅広い選択科目の中から生徒が自ら科目を選択し学ぶことを特色としており、将来の職業選択など自己の進路への自覚を深める学習が重視されており、「産業社会と人間」を履修することとしている。
総合学科における学校設定科目「産業社会と人間」は「社会に開かれた教育課程」へつなぐ上で、大変意義が大きく、引き続き、すべての生徒に原則として入学年次に履修させるものとし、職業や、これから学びたいことまで含めてキャリア形成を捉え、それぞれの学校の目標に応じて様々な取組が行われることが期待される。

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初等中等教育局教育課程課教育課程企画室