教育課程部会 教育課程企画特別部会(第4回) 議事録

1.日時

平成27年3月26日(木曜日) 10時00分~12時30分

2.場所

東海大学交友会館 阿蘇の間

3.議題

  1. これからの時代に求められる教育目標・内容,学習・指導方法,評価等の在り方について(関係する研究成果の報告及び自由討議)
  2. その他

4.議事録

【羽入主査】  おはようございます。それでは,定刻になりましたので,ただいまから中央教育審議会の教育課程企画特別部会(第4回)を開催させていただきます。本日はお忙しい中お集まりいただきまして,まことにありがとうございます。
まず事務局から,配付資料について御確認をお願いします。
【大杉教育課程企画室長】  はい。配付資料の確認をさせていただきます。本日は議事次第に掲載しておりますとおり,資料の1から7,参考資料といたしまして1から6を配付させていただいております。もし不足等ございましたら,事務局までお申し付けください。よろしくお願いいたします。
【羽入主査】  では,不足に気付かれましたらお知らせください。
本日の議事ですが,次第にございますように,これからの時代に求められる教育目標・内容,学習・指導方法,評価の在り方に関係するものを議論するために,それらの研究成果として,まず3件御報告をいただくことにいたしました。初めに国立教育政策研究所から,資質・能力を育成する教育課程の在り方に関する研究について。次に,無藤隆教育課程部会長から,育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容,そして評価の在り方に関する検討会の論点整理について。そして3番目に,川村学園女子大学 田中孝一教授から,言語活動の充実に係る検証改善の成果について,それぞれ御報告をいただきます。そしてその後,自由討議を行いたいと思います。本日は,12時半までを予定しております。
なお,報道関係者等により,会議の録音の希望がございまして,これをお許しいたしておりますので,御承知おきください。
では,まず国立教育政策研究所から,資質・能力を育成する教育課程の在り方に関する研究について御報告をいただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【髙口教育課程研究センター長】  国立教育政策研究所の教育課程研究センター長でございます。資料は,資料4を御覧いただければと思います。
私ども国研におきましては,平成21年度から教育課程の編成に関する基礎的研究,また本年度から,資質・能力を育成する教育課程の在り方に関する研究を行ってきたところでございます。本研究の中で,次期学習指導要領改訂の議論につながると考えられますこれまでの研究成果につきまして,3つのポイントに絞って御説明をいたします。
まず,国際的な教育課程改革の動向と,求められる資質・能力の枠組みでございます。この資料,1枚めくっていただきまして3と書いてあるスライドを見ていただければと思いますけれども,ここを御覧いただきますと,知識だけでなくスキル,さらに態度を含んだ人間の全体的な資質・能力であります,いわゆるコンピテンシーを教育課程の中核とする改革が各国で進んでいるということでございます。そういうことで,本日特徴的なフィンランド,イギリス,オーストラリアの事例に絞りまして御紹介申し上げます。
まず,4ページのフィンランドでございますけれども,皆様方御案内のように,フィンランドにつきましては,コンピテンシーの育成ということに早くから取り組んできている国でございまして,1985年に全国教育課程基準という基準を示しています。それは知識ベースのものであったということなんですが,1994年の全国教育課程基準から資質・能力を重視した教育に転換されて,その記述が大幅に大綱化されたということがございます。そしてまた2001年には,基礎教育の国家目標といたしまして,コンピテンシーが位置付けられたということでございます。
一方で2004年版の教育課程基準から,学年ごとに内容が示されることになり,期待される成果といった評価規準が書き込まれるなど,全国教育課程基準がより詳細になったということがございます。そして,2016年版の基準のドラフトが昨年公開されたということです。そこに,思考力,文化的コンピテンス,自立心,マルチリテラシー,ICTコンピテンス,職業において求められるスキルと起業家精神,参加・影響・持続可能な未来の構築,こういった7つのコンピテンシーが掲げられ,それらを評価の中でどこで扱うのかが具体的に示されており,内容が具体的に詳細になっているということです。フィンランドにおきましては,コンピテンシー型の全国教育課程基準に転換が図られまして,大幅に大綱化され,近年におきましては内容の詳細化の方向に進んでいるということでございます。
続きまして,イギリスでございます。これは5ページを御覧いただければと思いますが,イギリスもフィンランドと同様に,1980年代という早い時期からコアスキルという汎用的スキルの育成が職業教育で推進され,1999年のナショナルカリキュラムから,キースキルの育成が見直されてきているということでございます。その後,ナショナルカリキュラムは一貫して大綱化が進められてきたということですが,2010年に政権交代がございまして,ナショナルカリキュラムの改訂におきまして,教育等の知識が重視されるようになり,特に国・数・理については内容が大幅に詳しくなったということでございます。
イギリスにおきましては,スキル重視から知識の揺り戻しということがあったんですが,特に知識の構造とか大きな概念を教えるということの重要性が指摘されているということで,資質・能力につきましては内容を伴う文脈で教えるという方向になってきているということでございます。
最後にオーストラリアでございます。6ページのところでございます。オーストラリアは御存知のように連邦制をとっておりますけれども,このところ国レベルでの国家教育目標を設定するようになってきているということでございます。オーストラリアにおきましては,現在汎用的能力ということで,ここにございますようにリテラシー,ニューメラシー,ICT技能,批判的・創造的思考力,倫理的理解,異文化間理解,個人的・社会的能力,こういったものを育成するナショナルカリキュラムの開発と実施といった歴史的な事業が進められているというところでございます。
そしてこの汎用的能力におきましては,幾つかの要素に分けられまして,学習領域の内容のどこで指導するのかということが具体的に示されているということでございます。特にオーストラリアの大きな特徴といたしまして,このナショナルカリキュラムがウェブ上で公開されているということでございまして,様々な形での情報の検索が可能だということで,学校の教育課程の編成や教員の授業づくりを支援するリソースがございまして,教師向けのポータルサイトにリンクが張ってあったり,デジタル教材を入手することができたり,コミュニティで話し合ったりすることができるようになっているということでございます。こういうことで,教員に対する行政の支援の充実ということが,1つの特徴になっているというところでございます。
7か国分の事例を書かせていただいていますが,時間の都合上省略させていただきます。それらを含めまして,今の世界の教育課程改革を俯瞰した結果,15ページのところで御覧いただけますように整理をさせていただきました。
まず1つ目といたしましては,知識基盤社会の到来を背景といたしまして,コンピテンシーに基づく教育課程改革が世界的な潮流になってきているということでございます。この改革は何を知っているというというだけではなくて,知識を活用して何ができるようになるかということを視野に入れた教育の在り方への転換を意味しているということでございます。この育成が目指されている資質・能力は先ほど申しましたように様々な名称,キーコンピテンシーや,汎用的能力,21世紀型スキルなどがございますけれども,整理をいたしますと,1ページ前に戻っていただきまして,14ページの三層に分けられる教育目標が書いてございます。
基礎的リテラシー,認知スキル,社会スキル,こういった3つに分けるということができたということでございまして,これにつきましては,既に教育課程特別部会でも補足資料での御説明がありましたように,私どもの研究で,21世紀型能力のイメージというものをお示しさせていただいているところでございます。
あと15ページに戻っていただきまして,2つ目に,多くの国で領域固有性の問題が問われるということでございまして,資質・能力は内容の学習と結び付ける形での育成が目指されているということでございます。
あと3つ目といたしまして,学校現場の創意工夫が奨励されていると。それを支える仕組み作り(教材・専門的情報提供,教員の研修)が急がれているということが,まとめとして言えるのではないかと考えているところでございます。
続きまして,2点目のアクティブ・ラーニングの海外での先行事例につきまして御説明を申し上げます。以上のような諸外国の教育改革の中で,特にアメリカ,カナダ,シンガポールで展開されているアクティブ・ラーニングの事例を紹介させていただきます。16ページを見ていただきたいと思いますけれども,私どものこのプロジェクト研究におきまして,特定の手法や技法の推奨のためではなくて,成果と発展の経緯からそれらの共通点と今後の課題を同定するために,国内外の事例を検討していくということで,1つの事例を紹介させていただきます。
17ページのジャスパープロジェクトというものを見ていただきたいと思いますけれども,これは人が問題を見つけて解く力を持っていることを前提に,子供たちからもその力を引き出して育成しようとするというものでございまして,そのために何が問題かを子供が見極める必要があるということで,自分で情報を探して,たくさんの解決法を考えて比べる中で,知識・技能を習得させるという内容になっているということでございます。
具体的に左下にビデオドラマの問題というのがあるのですけれども,例えば森の中で撃たれたワシを助けにいく経路を考えるという問題にみんなで取り組むというようなものがございます。それで解けるようになったらその類題をたくさん解いて,知識を定着させ,最後に解き方を道具の形として理解を一層確かなものにするというものでございます。このジャスパープロジェクトですけれども,1つのポイントとして,個々の子供には少しハードルの高いチャレンジングな課題を与えるということで,それを仲間と一緒に協働して話し合ったり取り組んだりするということによって課題解決能力を引き出していくということが,この学習方法として特徴,ポイントになっているということでございます。
その成果としては,右下にございますように,算数・数学の基礎・基本が学べるということだけでなくて,問題解決能力の育成とか,今課題になっております学習意欲や自信の向上が上がっているという,そういう成果があるということでございます。
そして,このアクティブ・ラーニングにつきましての先行事例から,22ページのところに飛ばさせていただきます。共通点ということでまとめさせていただいておりますけれども,まず1つ目として,資質・能力を育成する目標として意識しつつ,その種を子供から引き出して育てるという特徴があるということでございます。また,もう一つの特徴といたしまして,資質・能力は学習活動を媒介として,内容と結び付いて育成されているということでございます。この22ページの下の表にありますように,内容と資質・能力というもののどちらが欠けても深い学びが起きにくいということだと考えております。
今後の課題といたしまして,一人一人の学習者が何を学んだかというきめ細かな評価を基盤とした,継続的な授業改善。そして,授業改善を通して学び続け,学習観をよりよいものにするための教員のコミュニティ作りが挙げられるというふうに考えております。また,授業や単元の学習を超えて,これらの学習活動をうまく組み合わせながら,学習を生きる力へとつなげるような,教育課程全体の編成が課題になってくるものというふうに考えているところでございます。
23ページを御覧いただきたいと思いますが,これらの事例をまとめさせていただきますと,ここにございます7つの特徴が考えられます。例えば意味のある問いや課題で学びの文脈を作るとか,考えを深めるための対話活動を導入するとか,学びを振り返り,学び方を自覚する機会を提供する,そういう7つの特徴が考えられるということで,これらの特徴それぞれにつきまして,24ページにございますように,既に企画特別部会でも御発表がありましたけれども,こういった調査校での検討を今続けているところでございます。
3点目でございます。学習指導要領の構造の分析についてでございます。これは26ページの方を御覧いただければと思います。まず,現在の学習指導要領の構造がどうなっているかということでございます。今,ここには例として小学校の国語,理科,図工について,資質・能力に当たる部分は赤い文字,学習活動に当たると思われるところを緑の文字でお示ししております。現行の学習指導要領におきましても,資質・能力とか,あと学習活動ということが,単に内容だけでなくて,様々な評価で記載されるということがお分かりになると思っております。ただ,書き方はそれぞれ評価によってばらばらになっているということでございます。
次のページ,27ページを御覧いただければと思いますが,もう少し具体的に見てまいります。これは小学校の理科の第5学年の目標のところでございますけれども,この構造を見ていただきますと,まず物の溶け方,振り子の運動,電磁石の変化や動きという内容を,それらに関わる条件に目を向けながら調べ,見出した問題を計画的に追究したりするものづくり,そういった学習活動について,物の変化の規則性という授業概念についての資質・能力である見方や考え方を養う,という書き方になっているということでございます。
そしてまた,これを構造化しますと,この下にございますような,内容について学習活動を通して学習して,資質・能力を育てるというふうに見ることもできるということでございまして,内容と資質・能力とを学習活動でつなぐことで,学びの深まるような学習指導を狙いとしているというふうに見ることもできるというところでございます。
そして,28ページを御覧いただければと思いますけれども,学習指導要領をこういう視点で見ますと,ここでは理科と算数の例をお示ししておりますけれども,各教科におきまして,図で示したような構造で,左にございますように,どのような内容を,右のどのような学習活動で学ぶか。つまり,何をどう学ぶかによって資質・能力の育成が目指されていると考えるということができるのではないかと思っております。
このような複数の教科の全体で,何が重要な内容かということと,何が重要な活動か,またその教科等をつなぐ考え方がどうなのか。そのどれが教科等の固有な考え方になるかということが整理していけると,学校での学びというものが資質・能力の育成につながるのではないかと考えております。また,そのような資質・能力が子供たちの中でたくさん自覚的に使えるものになってくると,さらに生きる力の実現につながっていくのではないかというふうに考えているところでございます。
そして,最後でございますけれども,具体的に諸外国の教育課程の基準でどう記載されているかということを例示としてお示ししております。29ページを御覧いただきたいと思います。内容面につきまして,ニュージーランドのカリキュラムの示し方をお示ししております。これは科学についての例を書いておりますけれども,なぜその教科を学習するのかということを,教科ごとのカリキュラムスタンダードの冒頭で示しているということでございます。ここでは科学の内容を学ぶことで,何ができるようになるかということを明記しているということが1つの特徴になっているということでございます。そして,子供たちが学ぶことで何ができるようになるかということを意識することで,内容の学習を資質・能力につなげやすくしていっているという,1つの例でございます。
そして,30ページでございますが,学習活動の示し方でございます。これは2つパターンがございまして,1つは資質・能力と内容,学習活動を対応させてしっかり結び付けて,文章の中に埋め込んでいるという例でございまして,これは完全結び付けモデルというふうに書いておりますけれども,そういう例でございまして,これはオーストラリアなどが例としてあるということでございます。
あともう一つは,ニュージーランドの例でございまして,緑色の学習活動を取り出して列挙しておりますけれども,1の目標,重要概念と2の個別の知識,技能の内容,3の学習活動といった形で,それらの要素を一旦切り離して示して,その結び付きを教員や学校が創意工夫をしてもらうというモデルでございます。この場合は資質・能力を総則に書いて,評価等には内容と学習活動を書くといったスタイルでございます。
このように世界各国とも,資質・能力の何を目標とするか。また,資質・能力育成につながるような学習内容はどういうものなのか。さらに学習活動として何が必要かということを明確化した上で,その具体的な結び付け方や位置付け,また示し方に関していろいろ各国で試行錯誤しているという状況が見てとれるかというふうに考えております。
以上,私どもの国立教育政策研究所で行っておりますプロジェクト研究のポイントを説明させていただきました。今回の審議での御参考にしていただければ幸いでございます。私からは以上でございます。
【羽入主査】  ありがとうございました。御質問もあろうかと思いますが,御報告を続けさせていただきます。
次に,無藤教育課程部会長から,育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会の論点整理について報告いただきますが,無藤先生は検討会の副座長も務めていらっしゃいますので,その御立場からの御報告をいただければというふうに思います。無藤先生,よろしくお願いいたします。
【無藤教育課程部会長】  それでは,私の方から御報告申し上げます。10分ほどということで御報告いたします。
お手元の資料の中で,資料5というもの,これが育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会,論点整理の概要でありますので,まずそれを開いてください。補足資料として,資料7 委員提出資料の中で無藤のものがあるんですが,それ,多少私見を入れましたけれども,概ねこの検討会の議論をもうちょっと違う形で整理いたしましたので,両方をお手元に置いてください。
まず資料5でありますけれども,これはそもそも,1ページの一番下に委員名簿がありますが,それらのメンバーによって1年半ほどかけて議論したものです。そして,先ほどの国研の報告と密接に連動して,議論を進めました。
趣旨としては,1ページの上の方にありますけれども,児童生徒に育成すべき資質・能力と,それを育成するための手立てである教育目標・内容と評価の在り方等の関係などを明確に示す必要があると。特に,分かるというだけではなくて,活用し,できるようになるというところまでの発展をどう書かれるかということを検討いたしました。
めくっていただいて,2ページであります。現行の指導要領,そのベースが平成20年の中教審答申であるわけですけれども,そこで「生きる力」の基本理念というものをより具体的な目標,内容に落とし込むという作業をしているわけであります。特に教科等において扱う知識・技能とともに,教科横断的に育成される汎用的能力というものの関係を示してあります。より具体的には,OECDのキーコンピテンシーなどの考えも参照しながら,幾つかの面,「生きる力」の使用例を整理したわけです。その流れの中で,例えば言語力の育成ということで,言語活動の充実ということも示し,これは指導要領として具体化されたところでもあります。
そういう意味で,私どもの議論はこの発展ということになるわけですけれども,同時にまだその時点では十分にできなかったことがあると思われます。それは特に資質・能力の全体像,またそれを育成するための教育目標と内容の関連について十分ではなかった。指導要領上も明確な表現には至らなかったのではないかということであります。
それを受けまして,続いて議論の中身ですけれども,まず育成すべき資質・能力とは何かということであります。この戻るべき根本は,教育基本法における「人格の完成」ということであり,「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質」の育成ということであるわけです。それに応じまして,先ほど申し上げた,教科等に固有の資質・能力と,教科等教育目標の基底にある汎用的な資質・能力の分析というものが必要であろうというふうに考えました。
そして,委員の考え,またはこれまでの学会,実践レベルでの論考を参照しながら,様々な提案がありますので,それらを整理してまいりました。その中には,いわゆる知識・技能とともに,主体的・自律的な力とか,対人関係,社会性,協働性とか,情報活用能力とか,グローバル化への対応とか,持続可能な社会作りに関わる力であるとか,クリエイティビティであるとか,思いやり等,いろいろなことが提案されているわけであります。
それらや,その背景にある教育学,心理学,脳科学等の知見を参照して整理を試みたのが,3ページの一番下です。教育目標・内容の構造ということであります。何らかの意味で構造的に示していく必要があるだろうと。その資質・能力の構造化によって学習内容を整理し,指導法に踏み込むことができないかということであります。一応,構造化まではいっていないと思うんですけれども,その視点を整理しました。これは論点整理の段階にとどまっていて,十分構造化にまでは至っておりませんけれども,御紹介いたします。まずアということで,教科等を横断する,認知的・社会的・情意的な汎用的なスキル(コンピテンシー)等に関わるものということで,1の中には汎用的スキル等で問題解決,論理的思考,コミュニケーション,チームワークなどの認知面や社会面,さらには意欲,情動制御などの情意面を含みます。2がメタ認知ということで,メタ認知というのは,要するに自分の認知,思考等について自分で自覚して考えられることでありますけれども,それを含みます。そしてイですけれども,教科等の本質に関わること。教科の中心的な考え方といったことだと思います。ウが,教科等に固有の知識,個別スキルに関わるものということで,大きく整理してあります。
こういったものを具体的にはどう学習活用に結び付けるか。つまり,それは知識,技能習得し,活用し,課題を探究していくという総合的な学習活動を重視する必要があるだろう。そういたしますと,次の(3)ですけれども,指導方法の扱い方の中で,効果的な学習課程な明確化しながら,ここではアクティブ・ラーニングと呼んでおりませんでしたけれども,いわばアクティブ・ラーニングにもつながる部分があるということであります。
それから,4では,さらに学習評価と結び付ける必要がある。知っていることを活用して,何ができるかを評価するということと,この学習すること,またその指導というのは密接につながっているので,評価活動についてより明確にするということが1つ。
最後5ページでありますけれども,カリキュラム・マネジメントという考えも打ち出してあります。これは教員の個別の資質・能力の育成,指導力の育成とともに,学校全体の指導力というものを考えるときに,カリキュラム・マネジメントという考え方が不可欠であるというところに踏み込みました。
私の方のペーパーを見てください。資料7であります。いろいろ書いてありますが,極めて簡単にポイントだけを説明いたします。まずパワーポイントでありますのでページが言いにくいですが,最初のところで,学力の三要素,そして今の論点整理,その他ということで,めくってください。1,学力の三要素。要するに,先ほど申し上げたようなことで,学校教育法の規定,知識・技能,思考力・判断力・表現力等,主体的に学習に取り組む態度,これがやはり議論の出発点である。そして,主体的に学習に取り組む態度というものをかなり拡張して考えていくということが,我々の提案の骨子となると思います。
2番は,幼児期から高校,さらに大学までつながるという整理でありますのでちょっと飛ばしまして,めくってください。車の絵が描いてあります。私,絵が下手なので,余りうまくありませんけれども,私なりの簡単なポンチ絵的イメージです。要するに知識面,思考面が車の両輪だとすると,それを進めるところのエンジン,これが主体的に学ぶ態度といいますか,情意面だと思います。そして,それをコントロールし,適切な方向に進めるようにしていくこと。これがメタ認知といったようなことではないかという簡単な整理で,それに該当するのを図式化したのが,右下に四角と矢印の図がありますが,ほぼ似たようなことであります。
それらを御覧いただくと,要するに,考える力ということを伸ばすんだということだと思うんですね。そのときに,知識も実は個別の知識がばらばらではだめで,それがネットワーク化し,中心的な考えとともにしっかり構造化されてこそ,それが活用されると。その一方で,しっかり自分なりに自覚して,勉学,学習,考え,取り組むという姿勢,それが自覚化,メタ認知ということで,それを支える情意面というものや,社会的協働というのが必要なんだよということであります。
そして,次の6番は,多少心理学その他の研究を参照して整理いたしましたので,これは御覧いただければと思います。時間ですので,以上でございます。
【羽入主査】  ありがとうございます。
では続きまして,川村学園女子大学 田中孝一教授から,言語活動の充実に係る検証改善の成果について御報告をいただきます。この言語活動の充実に係る検証改善は,文部科学省において言語活動の充実に関する取組の成果や課題を把握して,今後必要となる方策や,今後の方向性について検討するために意見交換を行ったということでございます。田中先生は,言語活動の充実に取り組んでこられまして,意見交換において進行役を務められましたことから,本日は意見交換の概要を御説明いただきます。田中先生,よろしくお願いいたします。
【田中先生】  失礼いたします。川村学園女子大学の田中と申します。今,御紹介いただきましたように,資料6の1枚目の上半分に,今のお話の内容等も書いてございますし,それから,この意見交換をこれらの9人で行ったということでございます。以下,意見交換の概要及び今後の方向性ということで,大きく3つ。1番目が言語活動の位置付け。それから,2番目が成果と課題。それから3番目が言語活動の今後の方向性ということでまとめてございます。
1枚目の上にありますように,この意見交換を行いましたのは,昨年10月に2回であります。大臣による中教審への諮問がその一月後というタイミングのときでございましたので,もちろん諮問の内容等は分かりませんけれども,今3つで柱を立てております。そもそも言語活動というのは,現在の教育課程の中でどういう位置付けであったのかということと,それが現時点においてどういう状況にあるのか。成果としてはどういうことが挙げられて,課題としてはどういうことがあるのか。そして3番目に,じゃあこれから言語活動ということを充実させていくことの意味,あるいは方向ということについて意見を交換したということでございます。
まず,1番目の言語活動の位置付けでございますが,これは1ページから2ページの始めにかけてでございます。今までお二人の御発表の中にもありましたように,今回の学習指導要領,教育課程において,言語活動の位置付けというのは極めて明確で,各教科等を通じて充実させていくんだということで,今全国で取り組んでいるということでございます。理念的な位置付けについては,先ほどの資料にもございましたが,ここにも改めてまとめてございます。
それから,2枚目にいきまして,1番の最後のところの2つ目のポツでございます。言語活動を確かに充実させようということで,現在の教育課程では重視しているわけでございますけれども,例えば,今回それが初めてで,今までゼロだったものを100にしようということではなくて,従来からも当然各教科でいろいろな言語活動に取り組まれてきましたし,国語科などでも学習指導要領そのものにも,現在だけでなくて以前から明示しているところでもございました。それを今回は,もっと教育課程全体として取り組もうということで位置付けがなされたものだというふうに認識しております。
2番目でございますが,成果と課題ですけれども,まず成果や取組状況ということですが,1のところですけれども,私が全国的な規模で拝見をしたり,学校,あるいは教育委員会等の取組を拝見したり,あるいは実際にいろいろな発表等を拝見したりしているところでは,言語活動を意識した取組がかなり進んできているということでございます。全国学力・学習状況調査の実際の数値的な結果,それから質問紙等の結果から見ても,やはり言語活動を充実させることが,児童・生徒の学力の定着に寄与しているということがデータ的にも示されているという状況でございます。
ですが,一方で課題もございまして,2,3のところですけれども,やはり一つには,なぜその言語活動をその授業の中で取り入れるのかとか,あるいはそれぞれの教科の学習課程があるわけですけれども,その中でなぜそれがそういうところで位置付けてあるのかということなどが不明確であったり,それ以前の例えば指導計画の段階で,なかなか明確に位置付けられていないということなどがあるということが指摘をされているところがございます。
3のところですけれども,さらに実際に言語活動ということになりますと,話し合いとか発表とかの場面が多くなるわけですけれども,そのことについて,例えば教師の方が負担感があるとか,あるいは時間がかかるということで,気持ちの面で積極的に取り組めない面があるという指摘がございます。そういう現状と課題でありますけれども,それでは,今後言語活動をどのように進めていくかということについて,3番であります。3枚目以降になります。
そこに丸数字で幾つか挙げてございます。まず,先ほど来話題にもなってきておりますけれども,また諮問の中にも出てきましたけれども,アクティブ・ラーニングということと,それから言語活動ということとの関係性。もちろんこのことについては,意見交換の中で明確に出てきたというわけではありませんけれども,現時点において意見交換を振り返ると,このようなことが言えるのではないかということであります。
一番最初のところですけれども,各教科等の教育目標を実現するために,見通しを立てる,それから主体的に課題の発見・解決に取り組み,そして振り返るといった学習のプロセスがございますが,そのプロセスに言語活動を効果的に位置付ける必要がある。言語活動を位置付けて,ねらいを明確に示すことも必要だと。その場合に,アクティブ・ラーニングを構成する学習活動の要素を検討する際にも,いろいろな学習の活動の要素はあると思いますけれども,言語ないしは言語活動が学習活動の基盤であるということを踏まえる必要があるということでございます。細かく言いますと,その下にポツで幾つか書いておりますけれども,このようなこともあわせて考えていく必要があるということでございます。
そして,その下ですけれども,小・中・高等学校等において,各教科の学習,それから教科等総合的な学習の時間,特別活動などございますが,言語活動を推進して,学習活動を効果的に位置付けている例として,そこにありますように,この意見交換に出席されたそれぞれの先生方から,御自分の取組とか,御自分の県や学校の取組等,あるいは全国的な取組等にこういう報告をいただいているところであります。
それから,4枚目でございますが,目標の設定,見通しと振り返りというところであります。この見通しと振り返り,先ほども出てまいりましたが,小・中・高等学校ともに,今回学習指導要領の総則に初めて設定されました。先ほど無藤先生の御発表にもありましたが,メタ認知的な要素というのも非常に強いので,学習過程をしっかり児童・生徒が認知していく,あるいは,理解しておくということの大事な要素として,この見通しと振り返りがあるんだと。そして,それは目標と,あるいは学習のねらいとセットで密接に結び付いているということでございます。
それから,評価です。現在行われている目標に準拠した評価,そして指導と評価の一体化というのがさらに必要になってくるのではないか。そこにあるように,評価規準が一人一人の先生で異なるとか,あるいは学校全体でばらばらであるとかならないように,共通理解を図る必要があるということ。それから,次のポツですけれども,言語活動自体は,目標に準拠した評価というときの指導目標を実現するためのいわば手立てでありますから,いわゆる学習評価の対象として直接設定されるものではありません。ですから,言語活動を通じて思考・判断した過程や成果を目標に照らして評価していくということが今後も一層大事なのではないかということであります。
それから,2です。言語活動,先ほどちょっと出ましたけれども,時数の確保が難しいという御意見もありますが,それを逆に考えますと,やはり学年等を超えて,長期的に言語活動を行う能力の育成を考えていく。先ほど出ましたカリキュラム・マネジメントという視点に立っても,やはり小学校であれば6年間,どのような言語活動を積み上げていくのかということで,一層効果的で効率的な学習が可能となるような視点,そういうものも立てていく必要があるのではないかということであります。
そのためには,下のポツの下の方ですが,国とか,先ほど御発表のあった国研でありますとか教育委員会等で事例を収集して,やはりいろいろな懸念や課題について解決の方法を見出していくような情報提供もお願いできればということでございます。
最後3ですが,やはり言語活動を充実するということは,教員の資質・能力の向上のためにも是非とも必要なことですけれども,やはり学校が全体として取組が進められるように,教育委員会,大学等による支援や環境整備等が今後さらに必要なのではないかということであります。
最後のポツです。学習指導要領において,各教科の特質に応じて言語活動の示し方を行うことが必要だとか,あるいは今回の諮問,あるいはこの部会の中心的な課題になっている教育目標・内容,それから指導,学習方法ですかね,それから評価,これらを一体的に示すことという意味において,指導要領全体の構造において言語活動等の――言語活動だけではありませんけれども,言語活動を中心とする学習活動の示し方というものを検討していけばよろしいのではないかなというふうなことであります。これについては,最初の国研の方からも,いろいろな示唆に富む御発表があったのではないかというふうに伺っておりました。
私どものこの意見交換は2回だけでしたけれども,今後の本部会の検討に少しでも参考になれば幸いでございます。以上でございます。
【羽入主査】  ありがとうございました。
それでは,議論に移りたいと思いますが,それに先立ちまして事務局から,論点ペーパーについての御説明をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】  報告が続きまして恐縮ですが,もう少しだけお付き合いいただければと存じます。まずは参考資料の御説明から入らせていただきます。資料の2,3,4,5,6のあたりでございます。
まず資料の2でございますけれども,これは先日公表されました英語力調査の結果でございます。教育基本法に基づく閣議決定であります教育振興基本計画に,生徒の英語力把握・検証による戦略的な英語教育の改善ということで,今回高3生の英語力の目標を設定し,高3生を対象に,英語の4技能がバランスよく育成されているかどうかという観点から,英語の学習状況を把握・分析するという調査を実施させていただきました。
結果が参考資料2の表の下の方にございますけれども,4技能,聞くこと,話すこと,読むこと,書くこと全てにおいて課題があるのですが,特に話すこと,書くことについて課題が大きいというところが見えてきたところでございます。また意識の面でございますけれども,英語の学習が好きではないという回答が半数を超えるというような状況が明らかになっております。教育振興基本計画におきましては,高校卒業時におきまして英検準2級から2級程度以上を達成する生徒の割合が50%というような目標の達成を掲げているところでございますが,こういった目標の達成に向けましては,さらに目標の設定でありますとか指導要領の在り方を含めていろいろな改善が必要であるということが見えてきたところでございます。
続きまして,参考資料の3でございます。これも先日公表されました情報活用能力調査の結果についてでございます。この調査は,児童生徒の情報活用能力がどの程度あるかということ,どの程度の状況にあるのかということをはかるという意味で,我が国で初めての調査として実施されたものでございます。情報活用能力測定調査の主な目的等々は,1枚目に書いてございます,「情報活用能力とは」という御説明の下にございますけれども,情報の科学的な理解,情報活用の実践力,また情報社会に参画する態度,この3つを情報活用能力として捉えているところでございます。
1枚めくっていただきますと,調査結果のポイントがございますけれども,例えば小学生について,整理された情報を読み取ることはできますが,例えば複数のウェブページから目的に応じて特定の情報を見つけ出し関連付けるということでありますとか,また情報を整理し解釈すること,受け手の状況に応じて情報発信することなどに課題があるといったことが明らかになったところでございます。
また,少しおめくりいただきますと,生徒用の質問調査というところでいろいろな状況も明らかになっておりますけれども,3ページに,例えば今回の結果が上位群の学校におきましては,先生方が児童生徒に自分の考えを表現させている,情報を整理させているというような活動をしっかり行っているということでありますとか,2の方でありますけれども,学校でICT活用を促進している頻度が高い傾向にあるといったことも明らかになったところでございます。
続きまして,参考資料の4,これは文部科学省が先日公表いたしました理工系人材育成戦略ということで,御参考です。理工系人材の戦略的育成の必要に基づきまして,様々な施策の方向性を打ち出しておるところでございますけれども,おめくりいただきまして11ページのあたり,スライド番号11のあたりを御覧いただきますと,初等中等教育におきましても,まさに創造性・探究心・主体性・チャレンジ精神を涵養していく必要があるということで,目標の方向性が示されているところでございます。
それから,評価に関しまして,参考資料5というものをお配りさせていただきました。これはアクティブ・ラーニング含め,多様な学習活動ということが展開されますと,それをどのように評価していくかということが大きな課題になるわけですけれども,それにつきまして,現在25年から27年の3年間で行っております調査研究につきましての御紹介でございます。
2枚めくっていただきますと,左側に事業を実施していただいている機関名がございますけれども,こうしたところで,右側にございますようなパフォーマンス課題による探求的な活動を実践し,ルーブリックに基づき,その評価手法を開発するといったようなことを,各教科の特性に応じて展開していただいているということで,こうした研究の成果も,今後の改定に生かしたいというふうに考えてございます。
参考資料,最後に資料6ということで,今回廣田委員から,義務教育学校というものについて少し資料をという御要望もございましたので,今回配付をさせていただきました。3月17日に閣議決定をされた学教法の改正案の概要でございますけれども,小中一貫教育を行う新たな学校の種類を制度化するということで,設置者の判断によりまして,こうした小学校から中学校までの義務教育を一貫として行う義務教育学校を,新たな学校の種類として設置可能というようなことの法律案でございます。
(1)の青い枠の下のところに※で書いてございますけれども,こうした学校につきましては,教育課程の特例も政省令で規定する予定でございまして,例えば小中一貫した特別な教科の設定でありますとか,指導内容の入れかえといったことも可能となるという予定でございます。
以上が,参考資料の御説明になります。続きまして,資料の1,2,3をお手元に御用意いただければと存じます。本日の論点ペーパーになります。
本日は,諮問に沿いまして,多少分析的な論点ペーパーを御用意させていただきましたけれども,本日このペーパーにかかわらず,大きな視点から御意見をいただければと存じます。諮問の1本目の柱に沿いまして,今後,我が国の子供たちが社会で活躍するために重要と考えられるような資質・能力。諮問におきましては,例えば主体的に取り組む意欲や多様性を尊重する態度。リーダーシップやチームワーク,コミュニケーションの能力,豊かな人間性などを掲げさせていただいているところですけれども,どういった資質・能力が求められる社会となっているかという点。それから,そうした資質・能力を育むために,教育課程の在り方はどのように改善していくべきか。前回までに様々なヒアリングもさせていただきましたけれども,そうした事例も含めまして,そこから得られる教訓とは何かということを考えていただきたいと思っております。
また,教育課程につきましては,こうした資質・能力,具体的には各教科の構造の中でしっかりと育んでいく必要がございますけれども,資料の2の補足資料,17ページを少しながめていただければと思います。前回,補佐官から御紹介のありましたOECDとの政策対話で,OECD側から提示された資料ですけれども,カリキュラム・デザインのための概念ということでございます。まさに知識,スキル,人格とありますが,何を知っているか,知っていることをどう使うか,社会の中でどのように関わっていくか。そして,それらを総括し,どのように学んでいくかということでメタ認知と。これらの概念を使いながら,教育課程全体のデザインというものを考えていく必要があるということ。
また,飛んで23ページになりますけれども,まさに知識,スキル,人格の構造が,その表の横にありますけれども,それらと各教科の学習,それから総合的な学習の時間,特別活動,こうしたものの構造をどのように考えていくかというようなことの整理が必要になってくると思っております。
資料の3といたしまして,これは現在,事務局でこうした作業をさせていただいておりますという御紹介でございまして,これ自体に細かくいろいろコメントをお願いするということではなくて,イメージということでお示しさせていただきますけれども,この資料3は,各教科等における学習を,何を学ぶか,どのように学ぶか,何ができるようになるか,またそれらの評価という観点から,構造化を現在事務局の方で整理をしているというものでございます。これまでの学習指導要領の構造は,1の何を学ぶかの構造であるというふうに捉えられがちでありましたけれども,今回の改訂の方向性におきましては,それのみならず,2,3のどのように学ぶか,4,5も含めた,何ができるようになるかというところの構造をしっかり見ていくということで,現在各教科ごとにこういった整理をさせていただいているというものの御紹介になります。
続きまして,資料の1に戻っていただきまして,丸の2つ目になりますけれども,こちらはアクティブ・ラーニングを含めた具体的な様々な学習指導方法の在り方についてどのように考えるかということで,いわゆるアクティブ・ラーニングに必要な要素として考えられるものは何か。いろいろ資料が行き来して大変恐縮ですけれども,補足資料,資料2の29ページを御覧いただきますと,これも前回,政策対話の資料として御紹介申し上げたものですけれども,アクティブ・ラーニングの要素として重要と考えられるものを幾つか挙げている資料でございます。主体的な学び,協働的な学び,深く学ぶこと,知識の獲得と能力の育成を統合するプロセス,言語活動,教科学習と教科横断的学習のバランスといったものが掲げられておりますけれども,これについても様々な観点から御意見をいただければと思います。
また,そうした必要な要素を踏まえた学習活動を実現するためには,学習指導要領においてはどのような点を示し,またどのような点に配慮すべきか。また,現場の様々な指導方法の工夫を促進するためにはどのような支援が必要かという点にも御議論をいただければと思っております。
資料の1の2枚目になりますけれども,2枚目の最初,評価のところでございます。評価の観点や手法,目標に準拠した評価や,指導と評価の一体化の実現。また,多様な評価の普及という観点からも御意見を賜れればと思います。
諮問の2つ目の柱は,各教科の在り方になりますので,これはできますれば,次回以降御議論をいただきたいと思っております。
最後の3本目は,今日御議論いただければと思いますけれども,まさに学習指導要領の理念に基づき,各学校において資質・能力に基づく教育課程の編成等を促していくためには,どういった支援なり開発・普及ということが必要かということで御議論を賜れればと思っております。
最後になりますけれども,本日委員御提出資料ということで,資料の7をいただいております。市川委員,奈須委員から,また御発言の中でお触れいただければと思いますけれども,本日御欠席の門川委員から資料を頂戴しております。資料7の後ろの方になりますけれども,学校教育と社会とのつながりを重視し,未来のよりよい市民,国民,国際人を育てるという観点から御提案をいただいております。
1枚目の一番下に,今こそ学校教育と社会とのつながりが重要ということでございますけれども,1枚めくっていただきますと,京都市の様々な取組を御紹介いただいております。その上で3ページ目の提言ということで,子供が学んだことを学校や生活の中で使う。○○教育・学習から○○生活というものを目指していくということ。それから,2番目といたしまして,子供が地域に関わる,地域総がかりで子供を育む。まちづくりなどに子供の意見と参画をという観点。それから,1枚めくっていただきまして,教職員の専門性の進化とともに,社会に,未来に視野を広げるということ。様々な業種の人との交流の場面,民間企業での研修の機会の充実など。加えて評価の視点,学習指導要領での具体化。最後に,日本の社会的課題の解決に向けてということで御提案いただいておりますので,御参考にいただければと思います。長くなりまして恐縮ですが,以上になります。
【羽入主査】  ありがとうございます。それでは,質疑に入りたいと思います。今のような内容について今後議論するに当たって,何度か議論が必要かと思いますが,今後のスケジュールを簡単に御説明いただく方が,委員の方々がどこで何の発言をするのが適切かをお考えいただきやすいと思いますので,簡単で結構ですので,目安としてだと思いますが,お知らせいただければと思います。
【大杉教育課程企画室長】  はい,失礼いたします。お手元に1枚紙を,資料番号なしでお配りさせていただいております。次回第5回が4月15日,第6回が4月28日,それ以降月に2回程度のペースで,大変忙しいペースで恐縮なんですけれども,開催を予定させていただいております。
次回は,今日の議論も踏まえまして,より具体的に幼・小・中・高一貫した観点から改革が必要な事項について,これも少し論点ペーパーを整理させていただきまして,御議論をいただきたいと思っております。
それから,第6回は,幼・小・中に焦点を当てまして,幼・小・中の教育課程に関して改革が必要な事項。その次以降は,高等学校教育の教育課程に関して改革が必要な事項ということで,少し学校種別に御議論をいただくということを考えてございます。
その後,学校種別の議論を1回まとめさせていただきまして,その後,論点整理ということで,これを夏までに論点整理として取りまとめさせていただき,この内容を秋以降の各学校種,教科等別の専門部会において生かさせていただくということを考えております。以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。それでは,まず,先ほど御説明,御報告をいただきましたお三方の報告について御質問があれば,それを先に伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。そしてその後で,論点ペーパーに沿って皆様の御意見をいただきたいと思います。いかがでしょう。特によろしいでしょうか。では,高木委員。
【高木委員】  教育課程センター長の髙口先生に質問いたします。先ほど出た28ページのところの,教科等をつなぐ構造化の観点というところです。これを見まして,かなり整理されてきていて,これを学習指導要領の具体に入れるとかなり有効だと思っています。この内容の資質・能力というのは,これからそれぞれの教科の中で実行されていくと思いますが,今実際にいろいろな学校種,特に小学校ですけれども,多くの授業を見ていますと,問題はこの構造化の中の中間点の学習活動なんです。この学習活動が,私はそれぞれの学校の授業で創意工夫をかなり行っていかなければいけないと思います。この構造と示されている教育課程で,内容と資質を両方抑えられてしまうと,この学習活動が固定化された,ある形のものでしか成立しなくなっていくということがないかどうか。この学習活動をどういうふうにお考えなのかをお伺いしたいと思います。
【羽入主査】  お願いします。
【髙口教育課程研究センター長】  ただいま学習活動に関します御質問でございますけれども,私どもといたしましては,これはあくまでも例示ということでお示しをさせていただいておりますし,あと私どもの研究におきましても様々な視点,観点など方法,そういったものについての研究事例を集めておりますので,当然その学習活動ということで固定をするということは全く考えておりません。ですから,内容と資質・能力を示すことによって,そこはこちらの部会の議論になると思いますけれども,それで学習活動というものを,多様性等を認める形でどう授業に反映させていくか,そういったところに課題になっていくのではないかと考えております。
【羽入主査】  ありがとうございます。それでは,ほかに御質問はございますか。
【上田委員】  私も,髙口先生にお聞きしたいことがあります。先ほど諸外国の取組について,大変分かりやすいレビューをしていただきましてありがとうございます。同様に諸外国から見て,我が国の教育システムの取組の強み,あるいは弱点がどのように評価されているのかというのを,私たちが自分自身の気付きの観点から大変興味がありますので,是非御教授いただけるとありがたいです。
【髙口教育課程研究センター長】  その点につきましては,少し専門的な領域になりますので,研究官の方からお答えさせていただきます。
【松尾総括研究官】  日本の学習指導要領というのは,今御説明にもありましたけれども,かなりよくできたもので,資質・能力にもすごく配慮されたものになっていると思います。それで例えば生きる力という概念にしましても,諸外国を見回してみましても,非常に早い時期に導入をされていたりでありますとか,あとは生活科,総合的な学習の時間などの教科,あるいは領域などといったものが新設されているでありますとか,言語活動の充実といった具体的な手立ても示されているというように考えることもできるのではないかと思っております。
ただ,教育の現状を見てみますと,そういった形で学習指導要領レベルではかなり改善が進んでいるとは思うんですけれども,やはり何を知っているかへの関心というのは非常に強い状況がありまして,知識を活用して何ができるかといったことに対応するような教育への転換というのが非常に求められているのではないかと思っております。そういった意味で,どういった資質・能力を育てるのかというのを明確に,この検討会の中で位置付けていただいたりでありますとか,資質・能力と内容をどうやって学習活動を通してつないでいくのであるとか,そういった具体的な方向性を示していただくと,さらによりよい学習指導要領になっていくのではないかと思っております。
【羽入主査】  ありがとうございます。それから,今日御報告いただいたような様々な点も,これから我が国の教育の中に新たに取り込むべきものという観点での御報告をいただいたのだというふうに思っております。ありがとうございます。
ほかに御質問がないようでしたら……,どうぞ。
【今村委員】  私も諸外国の取組について,もう1点だけ伺いたいんですけれども,この御説明いただいた3国については,学級の大きさ,1人の教員につき何人の生徒で指導体制をとられているのかということについて補足いただければと思います。
【羽入主査】  もしすぐにお返事ということでなくてもよろしいようでしたら,後ほどにでも資料を提出していただければと思いますが,よろしいですか。
【今村委員】  大丈夫です。ありがとうございます。
【羽入主査】  ありがとうございます。
それでは,ほかに質問がございませんようでしたら,論点ペーパーに沿って先生方のお考え,それから御意見を承りたいと思います。事務局で論点を整理してありますけれども,これに加えて何が必要か,あるいはこれらの論点に対してどのようにお考えかというようなことを,今回は御自由に,どの点についてでも結構でございますので,御発言くださいますようにお願いいたします。どなたからでもどうぞ。では,天笠委員。
【天笠主査代理】  それでは最初に,ちょっと先ほどの御発表のことについての質問と関わらせながら申し上げさせていただきたいのは,1つ目のところであります。また,先ほどの言語活動の検証・改善の成果についてということで,田中先生から御発表いただいたレポートの5ページの最後のところなんですけれども,言語活動の在り方というんでしょうか,学習指導要領においてどんな形で明示していくのかどうなのか。現状からさらに次に向けたときにどう改善していくのかという,そういうことについての課題の提起というんでしょうか,というのがこの最後の文言のところに示されているかなというふうに聞かせていただいたわけなんです。
そこで御質問させていただきたいのは,この文言に学習指導要領全体の構造という,こういうことなんですけれども,学習指導要領の全体というのは,常識的に言えば,総則から特活に至るまでというのと,それから目標の明示から内容の取り扱いという,それをもって学習指導要領の全体の姿というふうなことで。その示し方の工夫とか改善によって,言語活動の在り方というのは,今よりもより発展させていくというか,中身的に深めていく。あるいは,次への学習指導要領の改善の趣旨と改訂の趣旨等をつなげていくというようなことだと思うんですけれども,ここでいう学習指導要領の全体というのをどう理解していったらどうなのか。
もう一つは,こういう理解の仕方もあるかと思うんです。今のような学習指導要領とともに,いわゆるところの解説書,それからいわゆる指導事例集というんでしょうか,その3点セットでも,学習指導要領の趣旨とか方法というのを伝えていこうとか広めていこうという意味で組み立てられた,ある意味でいうと歴史的な所産でもあるんじゃないかというふうに思いますので,そういう点では学習指導要領の全体の姿をどんな形で表現,表記していくということが,次への展望につながっていくのかどうなのかということで,今のスタイルは今のスタイルとしてあるわけですけれども,今度のテーマは,先ほど来ありますアクティブ・ラーニングですとか,指導方法ですとか,指導の事例ですとか,そういうものということと基本的な方向性とか,資質・能力とか,こういうものとどうつなげながら全体を整えるか。まさに学習指導要領の全体の姿というのが問われようとしているのではないかと。
そんなふうに考えたときに,この学習指導要領全体の構造における云々という,検討すべきだというのは,私は大変大切な御指摘だというような形で受けとめさせていただいたわけでありますけれども,この点について何かお考えになること等々がありましたら,あるいは補足等々がありましたらお話を聞かせていただければと思うんですけれども,いかがでありましょうか。
【田中先生】  ありがとうございます。この検討会,意見公開の会自体は,学習指導要領そのものについて,先ほど申し上げましたように,時期的に諮問の前でもありましたので,そういうところまでやっておりません。現時点において考えたときに,最後にこういうふうに書いて,この特別部会での検討の参考にしていただければということでございます。
御質問が,今,天笠先生からありましたので,以下は私見になりますけれども,発言させていただきます。学習指導要領全体の構造ということですが,諮問の検討事項の第1に,今日の議題でもあるわけですけれども,教育目標,内容,それから学習指導方法,学習評価の在り方を一体として捉えて,学習指導要領を考えていきましょうということであります。先ほど高木委員からの御指摘は,その2つ目の学習指導方法の部分を,両側を固められると動きにくいのではないかというお話でもありました。大事な指摘だと思います。
これは私の個人的な認識ですけれども,今,仮に,この3つのものを一体として捉えて学習指導要領を組み立てていくと考えた場合,今までの学習指導要領は目標と内容が示されており,学習指導方法ということは,主に教育委員会や学校に任されていた。だから,そこに創意工夫ということが期待されてもいたということです。それから,学習評価については,順序的に言えば,今まで学習指導要領や解説が出た後に教育課程部会で検討されて,今回の場合でいけば,学習評価の在り方について報告があって,それに基づいて指導要録の改訂の通知がなされている,そういう段取りだったと思います。今回はそれを,一体的なものとして捉えていこうという考え方で進めるということだと受けとめています。
言語活動については,この2番目の検討事項の学習・指導方法の中に言語活動をどう位置付けるのかということであると存じます。言語活動には,各教科共通するものもありますし,各教科特有のものもあります。学習活動としては,例えば計算をするとか,実験をするとか,観察するとかありますが,そういう様々な学習活動の中で,特に各教科を横断するような学習活動の有力な1つとして言語活動があるのではないか。
現在,国語科では,言語活動の例を学習指導要領に示しております。ほかにも例えば算数・数学は算数的活動,数学的活動を示しており,その中には,「言葉で説明する」などの言語活動的なものもあります。ほかにもいろいろな教科で,報告書を作るとか,その他の学習活動が明示されているのもございますので,それらを再構成しながら,学習指導方法の中に示すことになるような方向なのかなというふうに,現在のところ想像しているところです。
そうなりますと,天笠先生の御質問であるところの3つについて,学習指導要領全体の構造はどういうものになるかということですが,それは,この部会で諮問の趣旨に沿って検討がなされて御提案がなされることと期待しております。
例えば昭和20年台には,現在の指導資料までも含めたような学習指導要領がありましたけれども,ああいう具合になるのか,あるいは現在の解説や事例集などとの関係で学習指導要領がどの程度までに,ある意味コンパクトにされるかというのは,私個人としては非常に興味のあるところで,本部会の検討の推移というものに興味を持っているところであります。私個人は,今日言語活動ということで発言しておりますので,そういうところで発言をさせていただきました。ありがとうございました。
【羽入主査】  ありがとうございました。平川委員が名札を立ててくださっています。御発言のある方は名札を立てるか,手も挙げていただけるとありがたいです。よろしくお願いします。
【平川委員】  市ヶ尾中学校の平川でございます。いろいろ先生方の御発表を聞かせていただきありがとうございました。先ほど天笠先生からもお話がございましたけれども,私もこの学習指導要領全体の構造というのを,もう少しどの範囲で,どこまでこの部会において御提案できるのかというふうなことを確認させていただきたいなと思っております。何分私は,普段子供たちと一緒におりますので,今回のこの目的,それから手法があって評価というこの一貫性ですね。これは今までの学習指導要領とは大きく違いまして,枠組みが広がってきているなというふうには思っているんですけれども,子供自身の気持ちというのが何かこう,これ自体は完璧なんですけれども,子供自身の気持ちとかニーズとか,そういうものがちょっと抜け落ちているような気がしています。子供の気持ちは本当に単純明快でして,子供のニーズに合った教育機会を作ってくださいという,それだけのことだと思っているんですけれどもなかなか,それは学ぶペースであったり,学び方を子供たち自身に合ったものを選びとりたいというふうなことだと思うんですけれども,そこまで御提案させていただいていいのかどうかというところもあります。
今回の学習指導要領を見ていて思うんですけれども,結局価値観の転換を伴うパラダイムシフトまで至っていないような気がしていまして,そこはいろいろ書きつらねたとしても,結局現場におりてきたときにどうなるのかなと。結局,今のままなのかなという心配があります。それは先ほどルーブリック評価とか,パフォーマンス評価とか,ポートフォリオ評価とかいろいろ御紹介がございましたけれども,こういう評価,なかなかやっぱり教員の資質ですとか能力が必要になってまいりまして,普段現場を預かっておりますと難しいです。本当に難しいです。授業と評価の一体化なんていいますけれども本当に難しくて,評価の中で先生同士が喧嘩しちゃったりとかしますというふうなことが現実です。
でも,結局は時間がないんですね。教材研究の時間すらなくて,部活動もやらなければいけない。それから,校門から出た後は,欧米なんかではこれは家庭の仕事ですけれども,学校の仕事とされている,コンビニの前でたむろっていたら先生が行かなきゃいけないというような現実がある中で,アクティブ・ラーニングをするのであれば,そちらの方の教員養成,それからそれに伴う時間の確保というのは必須ではないかと思っております。以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。これについては,事務局に少し後ほどコメントをいただきたいと思いますが,市川委員,無藤委員,齋藤委員の順で御発言をお願いいたします。
【市川委員】  先ほどの学習指導要領の構造ということなんですけれども,現行の学習指導要領を作るために議論した,私もその中の1人だったんですが,改めてそのときのことを思い起こしますと,どうも日本の学習指導要領というのが,構造化ということからいうと,まだ十分ではないのではないかということが言われたと思います。つまり,それぞれの俗に言う縦割り部会ですね。教科ごとの部会が,学問的な体系に沿って,高校ではこういうことをやっておいてほしい。そのためには中学校でこういうことをやってほしい,そのためには小学校でこういうことをやっておいてほしいという形でおろしていって,教科ごとには体系化されているけれども,それでは教科を通じて,教科横断的に,こちらの教科ではここでこういうことをやるので,そちらではこうしてくれるとありがたいんだけどとか,あるいはそれぞれの教科を通じて,常にどういう力を育てるのかという議論が出ていました。目指すべき力というのが,個々の内容以上に何かあるのだろうと。そういうものを少し整理して,それぞれの教科がどういうふうに受け持っていったらいいだろうかということを議論するべきではないかという発言は,そのときも私もいたしました。
ただそのためには,例えば教科横断的な部会とか,あるいは部会同士の時々一緒になって話し合う機会とか,そういうものを設けていく必要もあるわけですが,なかなかそれができないと。そのときにいろんな力についてすることはできないけれども,今回是非1つだけでもやりたいんだと。それが言語力です。教科横断的な言語力の育成ということには,是非手をつけていこう。これが文部科学省の事務局の方からも,そういうこれだけはやりたいということがあったと思いますし,それが何とか言語力についての議論を進めたことになったと思っています。
それが今度は,言語力もその1つですけれども,そのほかにもいろいろな資質・能力があるではないかと。それについて教科ごとに連携しながら学習指導要領を作っていこうということになりつつあるのではないか。それは世界的な動向もあるかと思いますが,日本の中でもそれをやっていかないといけないのではないかというふうに,私は今回のことを捉えているのですが,いかがでしょうか。どなたに聞いていいのか分からないんですが,そういう流れだと私は思っております。
【羽入主査】  ありがとうございます。御発言を次々伺って,それで恐らくそこでもディスカッションが生じると思いますが。無藤委員,お願いいたします。
【無藤教育課程部会長】  先ほど発言したので,2つほど補足的なお話をしたいと思います。1つは,学習指導要領の構造化ということをめぐってなんですけれども,言語力というものが,私は現行の指導要領導入で10年近くというところで,かなり現場が動いたと思うんですが,学習指導要領レベルで一番簡単な理由は,総則に書いただけではなくて,各教科の内容の取り扱い部分にもそれぞれの教科の特性に応じた言語力の指導というのを書き入れたと,そこにあるんじゃないかと思っております。
そういう意味では,言語力を含めてさらに評価とか必須能力の様々な面を重視するということであれば,やはり教科ごとにその具体的な特質に応じた書き方で書き入れる必要がある。これが1つです。それとともに私は総則についても,言うなれば,あれは箇条書き的に書いてあるんですけれども,もう少し構造的に示すという工夫が必要ではないかというのが2番目です。
そして3番目は,カリキュラム・マネジメントというものが論点の中に入っているわけでありますけれども,やはりそこを指導要領の書き方と連動させる必要がある。それは何かというと,国として示すというときに,全てを学習指導要領の解説書に書き入れるのか,ある程度まで書いて,それから先は各学校におけるカリキュラム・マネジメントの中で具体化を図ってもらうようにするかというところが大事なポイントになると私は理解しました。
もう一つお話ししたいのが,先ほどの私のプレゼンの補足でありますけれども,言語力という考えが導入されて非常にうまくいったと私も思うんですが,やはりそれを拡張する必要があるというふうに思います。それは3点ほどですが,1つは言語力を含めて,表現というのは極めて多様にあるということですね。非常に簡単に言えば,例えば算数,数学で言えば,自然言語としての日本語とともに,数式というのは1つの表現ですし,図式とか,あるいは具体的なものを使う表現です。そういう意味で,多様な表現で物事をあらわすということ自体が意味があるということが1つ目です。
2番目は,その表現というのは,ただ表すということではなくて,その表現に関して人と人,教師と生徒,生徒と生徒が対話するところに意味があり,対話を通して思考を深めるのかと思います。その対話過程を促すことに踏み込んでいただきたい。
そして3番目は,それを通して多面的な物事の理解というものにいくんだということが重要だと思います。そういう意味で,1つの正答にいかに上手に至らせるかではなくて,まあ,そういう場合もあるとは思いますけれども,物事の多面的で深い理解に至らせるための表現と対話ということを申し上げたいと思います。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,続けて齋藤委員,どうぞ。
【齋藤委員】  プレゼンありがとうございました。今日のプレゼンを聞いて,幾つか気になったことというか,定義の確認を4つほどしたいと思っております。1つは,諸外国の試みについて,まとめがすばらしくてよかったんですけれども,私もたまたまシンガポールやアメリカで教育関連の検討委員会に参加していて,そういう諸外国の教育プログラムを参考にするのはいいと思うんですけれども,彼らも今まさにこういう教育に関するミーティングをしていて,今公開されている内容をさらにどう改善するかという検討をしているので,諸外国の現状を目指すということになると,ただのキャッチアップになってしまって,ここでは諸外国の内容を超えるようなものを目指さないといけないと思います。既に彼らがやっているようなことは,やっぱりあくまでも参考ぐらいに考えて,その先を考えてほしいと。
世の中の流れを見ていると,1つ気になっていることは,言語とおっしゃっていますけれども,ここでいう言語というのは,念頭に置いておいるのは英語じゃないかなと思うんですよね。ただ,多様性というのもさっき出てきましたが,そこはすごく大事で,英語だけでなく,例えば,中国語をどうしていくとか,ほかの言語とも大事になってくる可能性があります。英語だけに集中していると,よく言うんですけれども,日本で英語ができた時点で,世界の共通語が中国語になっていた場合には残念なことになるので,そこら辺は柔軟に対応していくべきです。そして,プログラミング言語というぐらいですから,プログラミングの方も言語の中で広く取り扱ってほしいです。その流れで3つ目。
ICTを教えていると書いてあるんですけれども,ICTを教えること自体が目的化しないように,ICTをどう活用するか。授業自体にどう使っていくかということが,あま見えてきていないかなと。教員の方が忙しい,なかなか時間がないといった点,どうICTを活用して負担を少なくするかというところもあわせて考えていくということで,ICTを教えるだけじゃなくて,ICTを使いこなす授業の中で必要なモノを学ぶ環境にする,ツールとしてICTを使っていくところを目指すということが3つ目。
そして4つ目は,これは細かい点なんですけれども,生きる力という言葉。意味は分かるんですけれども,生きるのは私は当然だと思うので,それにプラスアルファ価値を与えることを目指して,どう成功まで持って行くか。成功する力という言葉をゴール設定に考えていただけたらと思います。ちょっとすみません,細かいところで。
【羽入主査】  ありがとうございます。では続けて,松川委員どうぞ。
【松川委員】  前回欠席しましたので,ちょっと議論があったかどうかと思うんですけれども。今回御議論になっております,新しい学習指導要領の構造というものを考えたときに,ちょっと抜け落ちている論点があるのではないかということで発言させていただきます。
こう言うとちょっと語弊がありますけれども,日本で最も学習指導要領を克明に読んでいる方はどなたかというと,私は教科書を作っている人ではないかというふうに思っているわけです。今回の問題は特に学習指導要領の中に,学習指導方法について書き込むということがもし出てくるとすれば,最も影響を受けるものは,私は教材,あるいは教科書の在り方ではないかと思うんですけれども,その辺のことについて,学習指導要領について自由にここで意見交換をするのはいいんですけれども,現在まである日本の教科書システムというものが変わらないということと,それと非常に関わっていると思うんです。ICTというのもそうですけれども,いろいろなことを教えるために,特に今回問題になっていますようなアクティブ・ラーニングをしようと思えば,普通思うのは,検定教科書1冊使ってやるという授業はあり得ないと思うわけでして,そういう意味では,教科書制度の問題と学習指導要領というのは本当に重要な関係があるわけで,その辺についてどういう展望があってこの議論がされているのかというのを,私は伺いたいと思います。
【羽入主査】  ありがとうございます。ほかにはいかがですか。
先ほどから議論になっているのは,まず平川委員が口火を切ってくださいましたけれども,ここでの議論の範囲ということがあろうかと思います。1つは,今問題にされているのは,学習指導要領の構造というのをどの範囲で考えたらいいか。あるいは,どの要素で考えたらいいかということがあろうかと思いますが,もし事務局の方でこの点について何か御発言があればお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】  ありがとうございます。今回,企画特別部会というのを持たせていただきましたのは,先ほど市川委員からも御指摘ございましたように,いきなり各教科の縦割りということを超えて,1つの大きな方向性,カリキュラム全体の在り方ということを御議論いただいてから,各教科の議論に移りたいという思いでございます。そうした意味では,平川委員から先ほどお話ありましたパラダイムシフトということでございますけれども,新たなパラダイムの在り方ということも,当然視野に入れて御議論いただければと思います。
しかしながら,諮問事項につきましては,これは初等中等教育における教育過程の基準等の在り方についてでございますので,そうした新たなパラダイムの在り方が,まさに新たな教育過程の基準の在り方にしっかりと落とし込める,そうした議論につながっていく御議論を是非お願いしたいと思っております。
最終的にはそうした学習指導要領,これは天笠委員からもお話がありましたけれども,必ずしも学習指導要領だけではなく,解説の在り方,指導事例の在り方,それから松川委員からも御指摘ございましたけれども,教材の在り方,これは諮問事項の一番最後に教材の在り方についてというようなことも,新しい学びに対応した教材や評価手法をどのように開発,普及していくべきかということで,念頭に置かせていただいております。
教科書というものがアクティブ・ラーニング,学習活動を意識したものにしっかりとなれるかどうか。これは様々な教科書,現在でもその内容と学習活動の掛け合わせというものが,各単元の構造として意識できるような構造の教科書もたくさん生まれているというふうに考えております。そうした教材の在り方と先生方の支援,そしてそれらの理念の大もとになるような学習指導要領の在り方,また評価の在り方,これをうまく結び付けて,実現していかなければならないたくさんの要素があるわけですけれども,これを時には全体像を見ながら,時には各パーツの御議論をいただきながら,御議論を展開していっていただければありがたい,事務局としてはそのように考えている次第でございます。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,池野委員どうぞ。
【池野委員】  2つお話をさせていただきたいなと思うんですけれども,学習指導要領自体が目指す資質・能力みたいなもの自体を,どういうモデルとして私たちが考えるのかという点が1つです。先ほど無藤先生が自動車の例を出されました。自動車の中のいろいろなパーツが,私たちが身に付けないといけない資質・能力の1つのモデルとして出されたんですけれども,そういうモデルを作るのか。
あるいはもっと,例えばイギリス,イングランドの,私は専門的には社会科なんですけれども,シティズンシップなんかをするときに,立方体といいますか,人間の体をキューブみたいな形に考えて,立法的の基本的なものを大きく成長させるという形で考えていく。ある一面は,知識・理解ですよ。ある一面,側面は技能・能力ですよ。天井みたいなところは,態度とか価値だとか,そういう立方体をそれぞれ膨らませて,人間が大きく成長していくのと同じように考えていくということなのか,その資質・能力みたいなものを幾つかの車が,例えば軽から大型車やいろいろなものに乗り換えて,いろいろなところの自動車を運転できるようになるというのがモデルなのかという問題だと思うんですね。だから,そういう形にするのか,どういうようなモデルを作るのかということだと思うんです。
私自体は,人格モデル的な,人間の子供たちが大きくなって,小学校から中学校に行くように,人間のモデルのようなものをとっていって,その資質・能力みたいなものをどのような形で分担していくかということの方が,今の場合適切じゃないかなと思っています。これが1番目です。
それから2番目は,その資質・能力自体を,例えば学習指導要領の中に構造化するという話が今問題になっていますけれども,構造化するときに,実際の学習指導要領と解説等を分けた場合に,学習指導要領自体は法律になるので,一定程度になるんですけれども,それで書ける範囲は,その目標と内容。方法は事例だと思うんですけれども,内容も,基本的には事例として行われるので,教科書はその中の範囲をどこまでするか。それから,学習指導要領は,今現在は最低基準になっているので,最高じゃないので,最低基準だったので,もっと発展的な能力だとか,習得活用,探究のような,もっと力を植えるような,より高いレベルの力をつけていくような形にしていかないといけない。そういうのを許すような形の学習指導要領の書き方を作っていかないといけないんじゃないかなと思いました。
そのときに,解説の中には一定の例示でしかないと思うんですけれども,その例示の中に,例えば広島県の幾つかの市とか学校がやっているんですけれども,基本的に国語だったら国語,理科やいろいろな教科が実際に学習指導要領を作るときには,本来初等と中等で,ここはこういう形で小学校1年生から高校3年生までの間に力をつけるという,一定の段階制みたいなものがあると思うんです。それを切り分けて,小学校ではこういう国語の能力,中学校ではこういう能力としているんですけれども,それを多分小学校や中学校の先生方,あるいは現場の先生は,教科書を使いながら,本当にどんな力をつけるかというのを再構成できる力が,今必要になっていると思うんです。それが多分,小中一貫だとか中高一貫のときに,つなぐ能力でこの資質・能力を含めてどういうように教科書の中を通して,資質・能力を含めたこういう力を,小学校中学年ではこうで,高学年ではこうで,中学校ではこうでというように結び付けて,大体こういう力を国語ではつけていく。理科ではこういう力をつけていくということを作る。
ただ,全ての先生がそこまでできる余裕はないので,多くはカリキュラム委員会だとか教育委員会のあるモデルが作られていて,それをうまく利用して各先生方が指導案だとかいろいろな研究授業のときに活用していくという形になると思うんです。だから,そういうもののモデルみたいなものを,一定程度こちらが当然各教科とか作るときに必要なので,そういうモデルと展開例みたいなものが,一定程度今は必要になっているんじゃないかなと思います。
そういう形で,学習指導要領が形式的にするものだけじゃなくて,それをより構造化するときに,小学校と中学校ではこういうステージを経ていって,こういう段階でこういうように伸ばしていくんですよという図がないと,あるいはモデル図がないと,多分先生方は,小学校5年生ではこういうことを教えればいいだけですよねというところでとどまってしまって,6年生につなげる,あるいは中学校につなげることができないんじゃないかなと思います。それが今,一番大事な求められているものではないかなと思っています。以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。ほかの方の御意見は。では,どうぞ。
【吉田委員】  ちょっと観点を変えて,少し私なりに考えていることをお話しさせていただきますと,先ほど英語の方の,高校3年生の英語力が非常に低いというようなことで資料なども出されましたけれども,先ほど松川先生からも,教科書の話というのも少し出てきたんですが,学習指導要領を考えるときに,ここでお話をされているような資質・能力であるとか,内容であるとか,実際のプロセスをどういうふうに組み立てていくかという,言ってみればボトムアップ的なプロセスで積み上げていくという,非常に正当なやり方だし,いいと思うんですが,もう一方は出口のところというんですかね。どうしても,例えば今回の英語の問題にしても,ああいう4技能のテストを実際にやってみた。しかも複数の技能を統合して解かなければならないような問題を出すと全然できない。もちろん今回テストされたのは,旧課程の高校3年生ですので,来年になりますと新課程になるので,そうするとまた違った結果が出てくるというように私なんかは期待してはいるんですが,学習指導要領には既にそういうことが書いてあるんですね。4技能を統合的に,総合的に教えましょうと書いてある。それが果たして出口のところの評価方法によってはかられているのかどうかという。もちろん入試ということも1つでしょうけれども,入試以外にも今回のような実力テストのようなもの。国としてこういうようなことが具体的にできることが,つまり学習指導要領に沿って学んできたことの結果なんですよという,そこの終着点というんですかね,そこのところをもう少し明確にするということができないんだろうか。
各教科ごとに変わってくると多少は思いますけれども,基本的な能力は変わらないはずだと思いますよね。ですから,そこのところをまず今議論しているんだと思うんですが,それが各教科ごとに,いろんな教科の先生方がここはお集まりなわけですから,自分の教科であれば,例えばこれって高校卒業することで,こういうような能力につながるのかなと。ディベート,ディスカッション,ネゴシエーション。私なんかの場合言語ですから,ちょっとこういう場面で方向性が,例えば自分の意見をはっきり言えるようになるんだろうかとか,こういう場面でちゃんと物が書けるんだろうか,読めるんだろうかということを想像した上で,ではそこに到達するまでの学習過程の中で,どういうような能力を,どの段階で導入して具体的に育成していけばいいのか。特にプロセスに関してですね。そういう考え方というものも,どこかで入れていく必要があるかなと。どうしても下からいってしまうと,いつも評価のところで,じゃあそれをどうやって評価するんですかと言われたときに,従来どおりの入試をやられたら,結局何も起こっていないという結果になっちゃうんですよね。ですから,そのところをちょっと視点を変えて,少し議論する必要もあるのではないかなと思います。以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。ほかの方はいかがでしょうか。高木委員どうぞ。
【高木委員】  今,吉田委員の言われたこと,本当にもっともだと思うんですね。それで実は今日,この資料1の諮問を踏まえた論点ペーパー,これを見ながら少し話をしていきませんと,話が深まっていかないんじゃないかと思うんですね。私はまず最初のページの四角の中の上から3つ目のところの資質・能力の問題と,それから出口の評価の話を合わせますから,次のページの最初の四角の上から2つ目の目標に準拠した評価,ここを関係させながら,話をいたします。
現行で行われている目標に準拠した評価というのは,私はある意味で,日本独自の評価方法であり,学習指導要領の内容,指導事項に合わせてきちんと評価ができるシステムになっていると思うんです。ところが,それを具体的に学校の先生方がどういうふうに自分の授業に合わせたときに,それがきちんと評価できているか。そこの問題が一番大きいと思っています。というのは,教師自身も自分のそれまでの体験や経験の中で,学力の内容が今回の指導要領では,学教法の30条の2項に合わせた学力に変わってきているにもかかわらず,いまだに特に高校あたりでは,ペーパーテストをもとに,中心にしながら評価が行われていると言う状況に留まっている現状があります。
そこのところを考えると,資料1の最初のページの3つ目のところに書かれている資質・能力は,まさに学力の重要な要素と言われている3つの観点が示されている。これは結構分かりやすいと思うんですね。今は4観点になって,目標準拠評価が行われているんだけれども,この3観点というのは,法律と学力との間で整合性がとれているので,知識・技能の部分,それから思考,判断,表現,それから態度や情意的な力が良く分かる構造になっています。では,次の学習指導要領で,それをどうやって整合性をはかっていくのかというと,先ほどいいました2ページ目の真ん中の指導と評価の一体化というところになってくると思うんです。
先ほどから出ているように,各教科との内容の問題がここに絡んできますが,一番ポイントになるのは,私は3つ目の態度や情意的な力。現行の指導要領でも関心・意欲・態度は,他の観点に関わる重要な要素であるというふうにきちんと書いてあって,他の観点との関係の中で評価をすべきということになっているにもかかわらず,単なる辞書的な意味の関心・意欲・態度だと思う誤解がかなり広まっている。だから,その点を是正するためにも,きちっとこの3つの観点を明記することによって,指導と目標の一体化を図る評価の実現が可能になると思っています。
次に,もう少しパフォーマンス評価等についてお話ししたいんですが,それは次回,小・中・高一貫した観点からということで話をしますが,今は,ちょっとだけ話しておきますと,小学校ではなかなか子供の数が多いので,パフォーマンス評価が難しい現状にあります。指導時数も1人で1週間に28時間という指導時数を持っています。さらに,教科も8教科持っていますから,これはなかなか難しくなると思います。ですから,評価の観点と,それから資質・能力のところを,今回の指導要領では,これは全ての教科の中できちんと位置付けて,何をすべきかということを分かりやすく,明確に出していく。それが私の一番言いたいところでした。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,油井委員。
【油井委員】  今回の学習指導要領の改訂に向けて,学習内容と学習の方法といいますか教育方法と,それから,意欲,態度という3つの観点で総合的に見ていこうというのは,とても私も重要なことだと思うんですけれども,一番難しいのは,この意欲,態度というのがどうやって高められるかというところで。先ほどの高校3年生の英語の結果を見ても,英語が余り好きじゃないというような答えが過半数を占めるというのは,自分が英語を勉強したことによって何になるのかということのイメージが十分つかめない。大学受験のためには勉強するかもしれないけれども,勉強した後,それがどうやって自分に役立つのかということがはっきりしないという面があると思うんですね。ですから,意欲,態度をどうやって向上させていくかということが,言ってみれば出発点だと思うんですね。それがある程度解決していくと,学習内容やスキルのものにもつながっていくということで,私も名案があるわけではありませんけれども,もう少し学習意欲とか態度の向上の方法みたいなものを議論する必要があるんじゃないかというのが1点です。
それから2点目は,外国の学習指導要領的なものを見て,ちょっとびっくりした経験がございます。それは日本の学習指導要領だと,生徒に何々させるというふうに,生徒が目的語になっていると思うんですね。ところが外国では,生徒が何々できるようになるというような形で,生徒が主語になっているんですね。今回のようなアクティブ・ラーニングを助長するのであれば,まさに生徒が主語になるような学習指導要領の記述の変更というものが検討されてもいいんじゃないかと思います。以上であります。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,廣田委員が先にお願いできますか。で,奈須委員。済みません,廣田委員がちょっとお急ぎとのことですが。
【廣田委員】  大丈夫です。
【羽入主査】  よろしいですか。では,牧田委員,奈須委員で。
【牧田委員】  学習指導要領の構造をこれからの授業を見据えて変えていくのはなかなか難しい問題ですが,学校の現状を見たときに,どこもかしこも課題ばかり抱えているわけではありません。非常に豊かな授業を行っている学級もあるわけです。何が違うのかといいますと,子供たちがこの教科を学ぶ意味は何かということを,先生方と一緒に考え続けているクラスかどうかということです。確かに学習指導要領に内容の目標が書かれていますが,それにとどまらず,先生方が子供達の学習活動から,特に今議論している資質・能力のようなことをちゃんと拾い上げて,吟味し,その価値を評価する。そういうことを繰り返して,学ぶ意味を長いスパンで子供と先生が一緒に探し出すというような姿勢で行われている授業は非常に豊かなものになり,福井県でもかなり実践されています。
そうじゃないのは,やっぱり効率的に毎時間毎時間これだけのことをやらなければいけないということだけが最前面に出ている授業です。それと比較すると,歴然です。そう考えますと,先ほどもお話がありましたけれども,学習指導要領の中で,その教科をなぜ学ぶかということを,子供サイドの言葉で少し例示をいただけると,子ども自身が理解でき,また先生方も子供達の活動の意味を拾い上げる助けになるのかなと思うわけです。
また,そういう授業を実現するためには,授業そのものがリフレクティブな長い構造を持っていること,常に今やっていることの意味は何かということを問い直させるような授業の構造が必要です。例えば私が行った数学の授業ですと,ゼロより小さい数はあるのかということをずっと問い続ける。例えば,子供たちが世の中にあるマイナスがつくものを集めてきて,どういう基準で考えれば分類できるのか,同じカテゴリーになるのかということを考えます。その学習の後,ゼロより小さい数はあるのかと聞くと,あるあると答えるのですが,次に加法や減法を学習していくと,いや,ちょっと怪しい,ちょっと分からなくなってきた,となる。ところが,四則を全部学習してくると,ゼロより小さい数は本当にあるのかと聞かれると,あるというよりも,どうも人類がうまく作り上げてきたようなものに感じるようになったというようなレポートを作るようになります。
そうやって,ただ楽しかったとか,意欲的にやったとかといった振り返りではなくて,学習内容に非常に密着したリフレクティブな構造を授業の中でロングスパンに組織していくということが非常に重要かなと思います。そういう意味で考えると,教員の授業を見る目,子どもを見る目が非常に重要です。今いろいろな資質・能力とかメタ認知とか学びへの構えとかということが表に出されるのは,とてもいいと思いますが,それをちゃんと捉えられる教員の目を養うこと,そして,養えるような学校の中での研究体制の在り方という意味で,カリキュラム・マネジメントという考え方は非常に重要で,これもしっかり明記するべきだと思っています。以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,奈須委員。
【奈須委員】  先ほど来コンピテンシーという話が出ていて,それは情意とか態度に関わる学力で大事だと。あるいは,子供がなぜ学ぶ意味,なぜこのことを学ぶのかという意味を実感するようなことが大事だという話でしたけれども,コンピテンシーとかというのは汎用的能力,つまり教科横断した,教科の内容に,特定に依存しない能力という言い方をするわけですけれども,2つ層があると思うんですね。余り本当に教科内容に依存しないような情意的なものでありますとか,対人関係的なものでありますとか,あるいは論理的な思考というものでも,余り特定教科に依存しないものがあるだろう。それらについては,まさにアクティブ・ラーニングといっているような内容の改革をもって身に付けていくというか,育てていくという話になるんだろうと思います。だから,方法を改革しなきゃいけない。
国研の資料の方でもあったように,そういった汎用的な能力を育てるというときも,形式的に育てるのではなくて,具体的な内容を教える文脈の中で育てるということが大事なことかなと思うんですけれども。でもその場合,内容は比較的任意ということになるんだろうと思うんですよね。どの内容であっても,情意を高める,学ぶ意味を高める,教科内容が生活経験の中で役立つということを学べるという,比較的任意性が高い。任意性が高いんだけど,それをいろいろなものでやることによって汎用化するということだと思うんです。
ただもう一方,コンピテンシーという場合には,実は教科ならではの物の見方,考え方,いわゆる教科の本質ということに深く関わるような数学的な物の見方,科学的な物の見方,あるいは社会科なんかである多面的・多角的にやるというようなものを足場にしつつ,それを当該教科の領域以外にも適用する。例えば,理科で学んだ,自然科学的な対象に対して学んだ科学的な物の見方を,社会的な事情に対しても適用するというようなことが求められていると思いますし,あるいは教科を教える際の論理として,数学を将来使わない子供たちにも数学を教えるのは,数学以外の対象に対しても論理的・合理的に考える力が育つからだよと,これまでも言ってきたと思うんですね。でも,本当にそれが成し遂げられているかと言えば,心理学的に言えばほとんど成し遂げられることはないと。つまり,転化しない。数学について育てられた論理性は,数学的な対象,数や系や量に対してしか適用できず,社会的対象に対しては,そこに1つの工夫をしなければ適用されないだろうということがあると思うんです。
つまり,コンピテンシーと呼んでいるものの中に,まさに余り教科に依存しないものと,教科的な学びを足場に,もっと言うと教科の本質と呼ばれているもの,その教科ならではの物の見方,考え方や,ビッグアイデアや本質的な問いということを足場に,それ以外の,その教科以外の領域に適用するような思考の様式。これはまさに意図的に,計画的にカリキュラムを組んでしっかり育てなければいけないだろうし,その観点から教科を再編成するというようなことが考えられていいんだろうと思うんですね。
つまりコンピテンシーを育てるという場合に,それを方法的改革によって,内容については余り変えなくても達成される部分と,内容的な改革を含み,最初に力をつけた,つまり教科の本質としてつけた部分を,当該教科が対象とするもの以外に適用するような学びの広げ方ということが,多分求められるんだろうなと思っているんです。つまり,コンピテンシーと呼んでいるものの中に,教科領域に余り依存しないものと,教科領域に依存するというか,教科領域を発展・統合して使うような部分があって,そういうことを据えた各教科の再編成というか,内容の吟味ということが大事かなと思うんです。
そう考えたときに,今のコンピテンシーの議論でもう一つ気になることは,○○力というようないろいろなコンピテンシーが海外でも整理されていますけれども,それらをまず上のレベルで整理して,各教科におろしてブレークダウンして,各教科で考えてくださいというのが1つの論理だろうと思うんです。でも,それは本当にうまくいくのか。むしろ各教科の本質を上げていく,それがコンピテンシーになるというふうな筋道も考えるならば,むしろ各教科の中でもう一度教科の本質とは何ですか。その教科ならではの物の見方,考え方,その教科の当該対象を超えても適用できるようなビッグアイデアとか本質的な問いというのは何ですかということを,むしろ各教科でしっかり整理していただいて,それを各教科間で全部並べて,その間の統合とか関連付けとか体系化ということを図っていく中で,コンピテンシーの様相というのはかえって見えてくるんじゃないかなと。
またそうすることで,各教科ならではの持ち味,特性,あるいは過去の積み上げてきたいろいろな資産が日本の教科におありですから,それと今回上げているコンピテンシーという部分が接合してくるかなと思いますし,またそうすると,コンピテンシーと言っている層と,教科の本質と言っている層と,あるいは各教科のコンテンツですね。それが整合してくるかなと。その3つが整合することがとても大事で,コンピテンシーの育成ということを図ったばかりに,コンテンツがそこから遊離したり,各教科がその教科の本質や教科の特性から遠いことをやり始めるということは,余り得策ではないだろうと。各教科がしっかりコンテンツを教えつつ,教科の本質を全うしつつ,全体としてコンピテンシーが実現されるような,全体としてのまさに学習指導要領の構造というか,論理を生み出すということがとても大事なのかなと思って伺っておりました。
【羽入主査】  ありがとうございました。では,品川委員どうぞ。
【品川委員】  ありがとうございます。非常に勉強になりました。先生方の発表は非常に勉強になりました。ありがとうございます。
3点ほど申し上げたいなと思っているんですが,実は私も先ほど吉田先生がおっしゃったように,まず出口を見ることがすごく大事なのではないかということを,最初に申し上げたいなと思っていたら,ちょうど先生がおっしゃっていただいたので,ああ,よかったなと思ったんですけれども。ハーバードのモデルが何度も出ていますが,やっぱり知識を知っているだけではだめで,それがどう使えるか。それが社会にどう生きていく上で使われているかというところをしっかりとちゃんとチェックできているのかということが,多分すごく大事だろうなということです。大人になってから,不適合を起こす人たちを取材していると,非常に痛感しています。学歴があったり,知識はすごくあるのに,社会不適合を起こす人たちの背景にあるのは,やはり知っていることとできることの差がものすごくあるという点なんです。
ですから,出口を見る方向性を,やはりこの新しい学習指導要領には入れていくことが必要なのかなということと,実はもう一つ言いたかったのが,先ほど高木先生がおっしゃった,実は今の学習指導要領も,私は拝見していたらすごくよくできているなと思っていたんですが,実際に現場に行くと,そこにすごく乖離があって,なかなか現場の先生方が,私が取材するような先生方との乖離をどうしても感じていたんですね。要は指導要領どおりになかなか行われていないとか,あるいは事例が出ていたらそれだけをやるみたいな。やっぱりそうではない何かが必要なんだろうなというふうに思っていて。そしたら,言語技術のところが非常によくできているのは何でなんだろうと思っていたら,先ほど市川先生の説明ですごくよく分かったんですけれども,やはり柔軟的な話し合いがあったということで,ああ,なるほどなということを思いました。
そういったことを踏まえて,まず出口を見るということと,それからもう一つ,是非今回のこの議論の中に入れていただきたいのは,私個人はアクティブ・ラーニングでも,前回いろいろ見せていただいたユネスコスクールとかもいろいろございましたけれども,どれもすごくいいなと思っているんですね。これは個々の先生方の自由度を上げて,先ほどどなたかの先生がおっしゃっていましたけれども,細かい学習活動まで決めていくよりは,そこは自由度を上げてもいいのかなと思っているんですが,やっぱり発達の特性を踏まえるとかという学習のスタイルの違いがあるのだということをしっかり書き込んでおいていただかないと,どうしてもそこからまた漏れてしまう子供たちがいるということを強調したいなと思っています。
それともう一つ,キーコンピテンシーのところに,先ほど無藤先生に説明いただいたのは非常に私は納得したんですが,これは今,奈須先生もおっしゃっていたんですけれども,やっぱり土台となるベーシックスキルの読み書き計算とか推論とか,本来の教科が持っているべきところをまず徹底するということも,是非忘れないでいただきたいなということを痛感すると同時に,私個人は,やはり規範教育というんですかね,規範意識というものを,特にこれから,これほど情報がますます氾濫し,御存じのように北大生がイスラム国に行きたいとかいってしまうとかいうような時代を踏まえたときに,規範というものをしっかりと教えていくということを,クロスカリキュラムでやっていくということも大事なのかなと。
犯罪学でいう規範というのは,ただ法律を守るだけではなくて,道徳とか倫理とか,それから良心というものを育てるということをすごく強調していますので,それはもしかしたらハーバードのモデルで言えば,人格というところに当たるのかもしれませんが,社会が変動して変容するからこそ,ますます規範というものが問われてくるというふうに思っております。以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,荒瀬委員どうぞ。で,上田委員お願いします。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。最初の方で平川委員がおっしゃった,子供のニーズに合った教育機会のこととか,それから松川委員がおっしゃった教科書のこととか,私も全く同感です。
私は,知識と活用力と学習意欲の関係をどんなふうにそれぞれの学校が関係付けていくのかということがとても大事だと思っています。知識が先か,活用力が先か,学習意欲が先かというそういう話ではなくて,知識も身に付いたら楽しいですし,身に付いて楽しい,おもしろいと思うから生徒はやるのだと思うんですね。先ほどご紹介のあった英語の授業は,現行の学習指導要領によるものではないということですから,その点は考慮しなければなりませんが,英語では割合アクティブ・ラーニング的な授業が行われてきているにもかかわらず,生徒の半分以上がおもしろくないというのは,きっと本当におもしろくないんです。
だから,じゃあどうしたらおもしろくなるのかという観点を,新しい学習指導要領に入れない限り,結局は先ほど品川委員もおっしゃいましたけれども,現場の先生と学習指導要領が乖離している状態が続くと思います。なぜかというと,現場の教員にとって学習指導要領というのは教科書だからです。教科書の有り様をどう変えていくのか,教科書の内容をどう変えていくのか。指導事例というけれど,その指導事例がなぜそこにそういう事例があるのかということが十分に理解されないまま事例がいっぱいあっても,事例に溺れてしまうということになってしまっては意味がありません。児童生徒を主体として考えていくということでアクティブ・ラーニングであるならば,もっと本当に教室で子供たちがおもしろいと思えるような方法を工夫する教員が求められます。
10年前に,高等学校の学習指導要領は,大学入試センター試験じゃないですかと申し上げて,顰蹙をかいましたけれども,結局,そうなってしまってはいけないと思います。本当に教室の中の子供たちが生き生きできるようなということを常に考えながら,理論的にもしっかり深めていかないといけないし,研究の内容も活用していかないといけないけれども,もう一つ,やっぱり現場でどんなふうに動いていくのかというのを考えないと,作ったけれども,また次回の中教審で,前回の学習指導要領はこういう点が足りなかったということを繰り返すだけで終わってしまうというのは,余りにももったいないと思います。まとまらない話ですが,以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,上田委員。で,神長委員,お願いします。
【上田委員】  先ほど牧田委員がおっしゃった,教員と,それから生徒との対話が成り立つクラスでは非常に教育効果があるというのは,私はかなり教育の本質じゃないかと思います。会話が成り立ったときには,私も教えていてそれは非常に感じることなんですけれども,そのときには知が育つだけじゃなくて心も育つと思います。次回の改訂の目標である思考力,表現力。これは非常に重要だと思います。ただ,それを子供に伝えるためには,伝えるべき教員側のコンピテンシーがまさに問われます。一般的な体系をいくら整備しても,それが教育の現場にまでおりてこないと何の実績にもならないはずなので,成功した事例をよく調べて,教員の皆様がそれぞれ本当に参考になるような事例集をきっちりと作ることが大切だと思います。子供たちに要求するだけではなく,それを私たちがどう伝えるべきなのかということまで踏み込んだ体系ができれば,次回の改訂はすばらしいものになるのではないかと思います。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,今村委員,そして神長委員の順でお願いします。
【今村委員】  私も平川委員の発言が非常に,私の心を代弁していただいたなと思っているんですけれども。私もずっと被災地で学習に困難を背負った状態で,家庭の経済的にも困難を背負っているような子たちをずっと見てきた観点からいうと,この学習指導要領にのっとった学習カリキュラムを現場の先生方が描くには,リソースとして先生方に教科書と指導要領だけを与えるのではなくて,この指導要領の中に活用できるリソースを明示してあげる必要があるんじゃないかと思っています。
それはやっぱり地域の人であり,専門家であり,今現実的には学校の支援はもちろん,地域性によってばらばらになっているとは思うんですけれども,大学生が近くにいる地域は大学生が活用できるけど,地方の地域はそれが難しいとかいろいろとあるとは思うんですけれども,この指導要領の中に,先生だけがこの指導要領を見て学習デザインをするのではなくて,先生が何がしかのサポートをしてくれる別のリソースになってくれる方々を巻き込みながら授業デザインをしていけるようなことも,一緒に明記するようなことも検討に入れられないかなと感じました。以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,神長委員どうぞ。
【神長委員】  私もいろいろ議論を伺いながら一番感じておりますことは,ここの中の今日の論点ペーパーで言えば,最後のところにありますけれども,やはり各学校,私が担当するところは幼稚園が多いんですけれども,やはり各学校におけるカリキュラム・マネジメントというものがしっかりできるということが大事ではないかなと思っております。もちろん学習指導要領上の構造も大事ですし,そこの中で何をどう示していくかということも非常に重要なことなんですけれども,あわせてやはりカリキュラム・マネジメントをどう各学校,園で行っていくのかという,そこをしっかりと行っていくことが必要かなと思っております。
それで私は先ほど冒頭にですけれども,方法が固定化されてしまうという話にちょっと違和感を実は感じておりました。私が担当しております幼稚園の場合ですと,幼稚園教育要領になるんですけれども,非常に大綱化した形で,育てるべきことということが示されてあり,非常に活動とか方法については,各園で実態に即した形で作り出していくということを非常に重要視しています。それはこの次の次のあたりの議論になるのかもしれませんけれども,やはり子供の実態に即して教育を考えていこう,授業を考えていこう。幼稚園の場合ですと保育を考えていこうということになりますと,非常に多様なんですね。そこの中から,今育てるべきことは何かということを見極めていくということが,教師の資質として非常に求められるところです。
ですから,各学校,園において,そういった教師の話し合いであり,研修であったり,教材研究であったり,そういうものを十分保証していくということが非常に重要かと思います。それが各先生に求めるというよりは,やはりそれをカリキュラム・マネジメントとして位置付けながら,各学校,園の教育力をつけていく。また,それが先生たちの資質・能力を向上していくということにつなげていくことが大事で。方法というのは,アクティブ・ラーニングとかいろいろ話題にはなっておりますけれども,各事業においては,本当に子供の実態から編み出していくということがあるので,そのときに何が大事なのか,どういう視点から考えるのかということを考えられる先生って大事だと思うんですね。
もう一つ,先ほど喧嘩になってしまうという話題になったときに,やはりそういう対話が保証されているかどうかという。喧嘩になるぐらい意気込んでできる先生ということもすごく大事ですし,それをカリキュラム・マネジメントとして,授業を作る,保育を作るということは結論のないことなんですけれども,それを重ねていくという,そういう方向性をしっかり示すことが大事かなと思っております。
【羽入主査】  ありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。そろそろ時間ですので,少しまとめていこうかと思いますけれども。どうぞ。
【平川委員】  すみません,一言だけ。関心・意欲・態度が難しいと吉田委員からもお話がありました。現場としては本当にそうです。高木先生からもそのようなことを言っていただいてありがとうございますという感じなんですけれども,一番ここが悩ましいところです。いろいろ教員と生徒の会話が成り立って,本当に豊かな教育活動がある中で難しい部分もあって,幾つかスイッチというか,それをオセロを裏返すようなスイッチがありまして,それが京都市長の門川さんからいただいている資料に,やはり学校と社会のつながりを重視したことをやっていくということが,私もスイッチだと思っておりまして。例えばキャリア教育の推進ですとか,コミュニティスクールですとか,あるいは言語活動の充実,体験活動の充実,これしかないような,これを全部やってみて,総体的によくなっていくということが実は学校なのかなと思っております。
これをやることによって,勝手にアクティブ・ラーニングになっているというのが,実は私が民間人校長として5年間やってきた一番の核になる部分でございまして,やるためには,やはりここをやってみようよと。思いきってここに踏み込んでみようよというような教育委員会からの後ろ楯であったりというところが一番の鍵になってくるのかなと。そうすれば,子供たちも興味,関心も高まりますし,評価の問題はいろいろ難しいですし,喧々諤々やりながら進めていくものだとも私も思っておりますけれども,一番やっぱり開かれた学校になるということが,キーポイントになってくるかなと思っております。
次回,幼稚園,小・中・高とのつながりというところですので,このあたり,中学校の立場としてお話しさせていただければと思っております。キャリア教育ということで,生きる力ができたらなというふうに思っておりました。
【羽入主査】  ありがとうございます。それでは,奈須委員,そして三宅委員どうぞ。
【奈須委員】  今ほど来のお話を聞いていると,子供の意欲の問題であるとか,教育方法の改善が難しいとかという話ですけれども,もう一つ戻すと,結局子供というのはそもそもどんな存在で,子供というのはどんな能力を持っていて,子供というのは学びに対してどんな方向性を生まれながらにして持っているかという,まあ,学習指導要領で書くことじゃないかもしれませんけれども,でもそこがずれているから,子供はそもそも実は勉強は楽しくないと思っているから,どう楽しくしようかという方法を工夫する限りうまくいかないんだと思うんですね。子供はもともと学びたがっているし,成長しようとしているし,もっと言うと学んだり思考する能力の芽は持っていて,その能力を洗練させるという仕事をすればいい,あるいは顕在化するという仕事をすればいいだけだというふうな場所に立てば,方法の工夫も,それからコンピテンシーの議論というのは全く変わってくるんだろうと思うんですけれども。
もう一つ言うと,コンピテンシーという言葉自体が,もともと子供は有能な学習者であり,外の世界と関わりを求めていこうという,実は概念から生まれているということもとても大事で。さあ,指導要領ってそんなことを書くのかどうか分からないけれども,でも,欧米にはありますよね。そういう人間観とか,人間の学びというのはどういうものかとか,人間にとって知識とはどういうものかというふうなことを出発点にして,だから僕らは何を教えようか,どんな教科書にしようかという議論はある。そういう方向に教育政策の基調を変えられるのかどうなのかということを含めて,学習指導要領の構造という話かなと,今思って伺っていました。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,三宅委員どうぞ。
【三宅委員】  済みません,お聞きになりにくいかもしれないんですけれども。やっぱり学習指導要領というものを底支えするのは,人は本来どういう学ぶ力というのを持って生まれてくるのか。その中で,ある意味整理しにくい話ではありますけれども,放っておいても何とかなるもの。例えば,人はだれでも言語を獲得する潜在的な能力,元祖コンピテンスですね。それをもっていますから,日本に生まれて,日本の両親がいて,テレビつければ日本語が聞こえて来るなら,それらがその潜在能力の出現チャンスになりますから,日本語ができる。ただ,それとは別の学ぶ力の中に,無藤委員の言っていらっしゃった,対話をしながら自分の考えを変えていく。対話をしながら相手の主張を取り込んで,そして自分の考えの,自分が作った答えの適用範囲を広げていくというたぐいの力は,本来人が誰でももって生まれる潜在能力,コンピテンスのひとつなので人は生まれ落ちたときから自分で考えて社会的な対話関係の中でかなり「自分で答えを考えその質を上げて行く」経験を積んでこないと,子どもも大人もこういう力を人は本来持っているんだということにすら気付きにくい力の1つなんですね。
そういう意味では,学習指導要領全体構造の話ができるのは,今日最後かと思ったので,ちょっと無理矢理最後に発言させていただきますけれども,やっぱり人がどう学ぶものなのかというところから始めて,学校の中で,その中でも意識的に出現チャンスを増やしていかないと,放っておいたって伸びるかもしれないけれどもひとつ間違うと伸びない,自分で考える潜在能力の出現範囲を増やしていった方が,学校というシステムが機能的に社会の中で果たす役割を果たせるんだ,そういう構造を持たせていけるといいのではないかなと思っております。
【羽入主査】  ありがとうございます。今日,資料を提出していただいております奈須委員,それから市川委員に,御発言の中で御説明をしていただこうと思いつつ,時間がなくなってしまって申し訳ございませんでした。次回に改めてまた御説明をいただくということでよろしいでしょうか。大変不手際で申し訳ございませんでした。
今回,論点ペーパーを事務局が作りましたけれども,これに沿ってということではございませんでしたが,ここで項目立てされていることについて,先生方から非常に多面的な御発言をいただいたというふうに思います。例えば,1ページ目の一番初めの枠の中に書かれておりますことは,どのような資質・能力が求められているかということに加えて,どういう改善点が挙げられるかということに,むしろお話が集中したように思います。そこで私たちが今,三宅委員が最後におっしゃってくださいましたけれども,あるいは平川委員もおっしゃっていましたが,社会と,それから学校との関わりなども視野に入れて,ここでこれまでも議論してきたと思いますが,子供の視点といいますか,子供と教師のリフレクティブな関係というふうにもおっしゃっていたりしましたが,これから内容を詰めていくに当たって,そうした視点を入れていくということが,恐らく先生方の共通した認識なのではないかと思います。
私,指導要領を初めて見たときに,何で使役動詞が多いんだろうと思ったことを思い出しました。そのようなことも,共通の我々の問題意識としてありながら,例えば,今日の議論を大きく分けますと,2つの要素があるかと思います。1つは,方法と内容との関係,あるいはその区別が必要であるということ。それからもう一つは,教科ごとの問題と,教科に共通する,つまり教育の場で共通するもの,その2つを,いわば全体的にはクロスされた形で4つの要素があるのではないかと考えました。
手法と,それから内容については,手法としては様々なアクティブ・ラーニングがあったり,それから,教科の内容の示し方についても,先ほど奈須委員がおっしゃっていましたが,コンテンツ,あるいは教科の本質をどう考えるかというようなことも関係してくるかと思います。
それから,もう一つ別の観点で,教科ごとの問題と,それから教育の場で共通する要素として,やはりそこでも手法が考えられ,あるいは内容との関係が議論されてこなくてはならないのだと思います。
さらにもう一つ,やはり評価のこととして御発言が多くありましたけれども,評価という言葉で言ってしまう以前に,出口の問題なのか,それとも評価は,をどの程度使えるようにしたのか,獲得したのかとか,少し言葉を砕いてといいますか,考えていく方がいいような気もいたしました。これは全くの私見ですけれども。評価ということで,皆さんイメージしていることは違うかもしれないので,そこをはっきり認識する必要があるかと思いました。
評価を出口というふうにして考えるだけでは,もしかしたら十分ではないのかもしれない。つまり,出口のところで備わっているべきものだけを教育の内容にしてよいのかということも,少し問題意識として持っている必要もあるかもしれないというふうなことも考えました。
恐らく皆様の御発言は,事務が上手に取りまとめ,そして次にまた論点を膨らませた形で御提示できると思っています。今日は,様々な観点からでございましたが,御発言をいただきまして大変ありがとうございました。また,資料がありながら,奈須委員,市川委員には御発言の時間をとりませんで,大変失礼いたしました。
それでは,事務局からお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】  大変ありがとうございました。次回の日程でございますが,4月15日水曜日の10時から,文科省の3階講堂にて開催を予定しております。内容といたしましては,先ほどお伝えいたしましたとおり,幼・小・中・高一貫した観点から改革が必要な事項について,本日の議論を事務局の方でまとめさせていただきます。
なお,本日御発表の機会等,不手際で大変失礼いたしました。本日言い尽くせなかった議論等もございましたら,また書面等でお寄せいただければと存じます。以上です。
【羽入主査】  それでは,これで今回の部会を終了いたします。まことにありがとうございました。

── 了 ──

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2369)