高等学校教育部会(第16回) 議事録

1.日時

平成24年12月17日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

旧文部省庁舎6階 第二講堂

3.議題

  1. 高等学校教育の質保証について
  2. その他

4.議事録

【小川部会長】
 おはようございます。金子委員が少し遅れるかと思いますけれども、定刻になりましたので、第16回高等学校教育部会を開催したいと思います。
 総選挙の結果も出ましたけれども、この部会は粛々と改革の議論を進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、まず、配付資料について、事務局からお願いいたします。

【塩原教育制度改革室長】
 よろしくお願いいたします。
 本日の配付資料、議事次第のとおりでございますが、資料1から4まで4点、加えまして、参考資料1といたしまして、高等学校教育部会の委員名簿を配付させていただいております。不足がございましたら、事務局までお申し付けくださいますよう、よろしくお願いいたします。

【小川部会長】
 よろしいでしょうか。資料1から4、ございますか。
 では、これから議事に入っていきたいと思います。
 これまで、御承知のように、8月に課題の整理と検討の視点をまとめて、それをベースにして、それ以降、高等学校教育のコア及び質保証の在り方について、およそ5回にわたって議論いただきました。今日は、皆さん御承知のとおり、中教審の第6期の任期が1月末になっておりますので、その1月末に、この部会としても何らかの審議経過等々、また、審議経過と内容についてまとめることになっておりますので、そのまとめに向けて、まずたたき台として、骨子案を事務局の方でまとめさせていただいております。
 まず最初に、事務局から、配付資料1を中心に御説明いただいて、その後に、この内容について、委員の皆様から御意見をいただければと思います。
 では、その説明について、よろしくお願いします。

【塩原教育制度改革室長】
 配付資料1を御覧いただきたいと思います。資料1は、本部会の審議経過報告につきまして御議論いただくための、たたき台としての骨子案でございます。
 本部会、8月に課題の整理と検討の視点をおまとめいただきまして、それ以降も、高等学校教育のコアについての検討、さらには、前回会議からは、高等学校教育の質保証の仕組みにテーマを絞って議論を進めていただいているところでございまして、まだ審議の途上ではあろうかと思いますが、今期中教審の会期は来年1月までとなっております。1月までに開ける会議の回数も限られるかと思っておりますので、今回、8月以降、現時点までの議論の成果を審議経過報告としてまとめて、来期の議論につなげられるように、さらに、今、関連の議論を行っております中教審の高大接続部会への、現時点での高等学校教育部会としての審議の経過等をお示しできるようにと、そのような趣旨で、今回、骨子案をまとめて、お示ししているところでございます。
 質保証の仕組み等につきましては、今後さらに検討を深めていく必要があろうかと思いますが、現時点での基本的な方向性についておまとめいただけますよう、本日の骨子案をたたき台として、御議論いただければと思っているところでございます。
 それでは、中身でございます。この骨子案、大きく4章立てになっておりまして、まず第1章の部分は、高等学校教育部会における検討の背景とこれまでの検討経緯でございます。
 まず、(1)検討の背景でございますが、高等学校教育改革のこれまでの成果と課題に関する指摘といたしまして、一つは、高等学校の多様化と一口に言われるところでございますが、多様な教育ニーズに応じた高等学校教育改革を進めてきたという経緯とその成果、さらには、多様化が進む中で、高等学校が対応すべき課題というのも非常に多様になっている、このことについて、大きく捉えたものでございます。
 その下、イでございますが、国の教育政策の中での高等学校教育ということにつきましては、例えば、平成20年の第1期教育振興基本計画の中でも、高校生の学習成果の多面的・客観的評価、高等学校教育の質保証の必要性が打ち出されていたこと、さらには、平成22年、高校無償化についての法案が取りまとめられた際の国会審議におきましても、高等学校教育の更なる向上について、附帯決議としてこういった要請がなされていたことなどについての言及を入れていくことを考えているところでございます。
 その次、(2)でございますが、検討の経緯でございます。本部会の検討の経緯といたしましては、課題全般の整理を昨年11月の第1回会議以降進めていただきまして、その成果につきましては、「課題の整理と検討の視点」として、既に24年8月におまとめいただいているとおりでございます。その「課題の整理と検討の視点」の中では、特に高等学校教育の質の保証に関する論点といたしまして、一つには、高等学校教育においてどのような能力を身に付けさせるか、もう一つとして、生徒の修得の到達目標を誰がどのように設定するか、さらに、到達目標に対する達成度をどのように把握するか、そして、上記の点を踏まえた質保証の仕組みをどのように構築するか、こういった点につきまして論点を提示していただいたところでございました。
 さらには、中教審の中では、高大接続に関して、本年8月末に文部科学大臣から新たな諮問がなされているところでございまして、高等学校教育、大学入学者選抜、大学教育の在り方を一体として捉え、その円滑な接続と連携の下に、高等学校教育の質保証、大学入学者選抜の改善、大学教育の質的転換を進めることが喫緊の課題と、このような認識の下での新たな諮問が出され、この議論について総合的に議論するための新たな特別部会、総会直属の高大接続特別部会も設置されている、このような経緯についても言及させていただいた上で、ウの部分でございますが、今回の審議経過報告の位置付けに当たるものかと思いますが、8月以降の本部会での審議について、コア、質保証の在り方についてテーマを絞って議論いただいておりますが、当該テーマについては、今後も、より幅広い関係者の意見を聴きつつ、また、高大接続特別部会との連携・対話を図りつつ、議論を集約していく必要がありますが、第6期中央教育審議会の会期の区切りに当たり、高等学校教育の質保証に関するこれまでの審議の経過をまとめ、この審議経過報告の位置付けにつきまして、ここで言明をさせていただいている、このような案でございます。
 続きまして、2ページ目、第2章でございます。第2章につきましては、中心的な課題となりました質保証をめぐる現状と課題についての本部会としての認識を、ここで整理をしていこうというものでございます。
 まず現状についての整理でございますが、まず(1)でございます。高等学校教育を取り巻く現状と質保証といたしまして、一つには、多様化について、少し掘り下げた内容、一面としては、生徒の多様化、もう一つは、学校・学科等の様々なタイプの高等学校が制度的に整備をされ学校・学科の多様化、さらには、教育課程の多様化、必履修教科・科目の比重の低下と書かせていただいておりますが、戦後の高等学校学習指導要領は、最も多い時には70単位程度の必履修教科・科目が卒業のために履修が必要という位置付けがありまして、かなり共通性の面が強かった時代もあったわけでございますが、現在は31単位が必履修教科・科目、卒業までに修得させる74単位のうちの31が必履修教科・科目という状況になっているわけでございまして、必履修教科・科目の比重の低下、こういったことについての一つの捉え方でございます。
 こういった状況の中、生徒の多様な学習ニーズに応えることは可能となった一方、「高等学校教育として共通に求められるものは何か」という視点が弱くなっているとの指摘があること、これらは8月の課題の整理等でも言われていたところでございました。
 続きまして、イにつきましては、生徒の学習意欲の後退、学習への動機付け契機としての大学入試の機能低下ということでございまして、学習意欲の低下をうかがわせる学習時間の減少等のデータ、さらには、PISAで、日本の生徒は、記述式の問題等について無回答、真っ白なまま白紙回答をしている者が多いというようなところから見受けられますような、学習意欲についての課題。さらには、学習意欲低下について、その背景として、いわゆる「大学全入時代」における大学入学選抜の学習動機付け機能の低下、この辺りについての課題認識があろうかと思います。
 さらには、高等学校教育に対する信頼性のゆらぎ、質保証(出口管理)に対する要請ということでございまして、まず大きくは、若者が社会の一員として求められる意識・態度や、一般的な教養等を十分身に付けていないのではないかという社会全般の指摘、課題意識、さらに、産業界からというところに焦点を当てれば、職業・社会への円滑な移行に必要な能力を身に付けぬまま就職し、早期離職をしているのではないかといった関係についての指摘。さらに、高等教育機関からの指摘としては、必要な学力を身に付けぬままの大学進学についての指摘等があるわけでございました。
 その次の(2)でございますが、質保証・向上に関するこれまでの取組、こちらにつきましては、いわゆる国等の公的な制度等として担保してきた質保証、これについての取組と、一方で、学校設置者等による自主的な取組、両面があろうかと思いますが、公的な制度・仕組みとしては、一つには、学校の教育条件等の保障、ガバナンスの向上といった視点からは、設置基準や設置認可の仕組み、学校評価、情報公開といった枠組みがあります。さらには、その次、教育のソフトであります、施される教育の内容・水準の担保という意味では、学習指導要領による枠組み、こちらにつきましては、平成25年、来年度から新学習指導要領が学年進行実施されていくという状況にあるわけでございます。また、その下で、生徒の習得の状況の把握・保証、これをどうしていくのか。こういった部分についての仕組みとしては、これは学習評価の仕組みであり、単位認定・卒業認定という部分になってくるわけであろうかと思いますが、とりわけ新学習指導要領の理念を実現していく上での学習評価の充実というのが、25年度、新しい指導要領が実施されるという中での、今の喫緊の課題であろうかということでございます。
 また、設置者・学校等による自主的な取組といたしましては、都道府県における学力調査、本部会でも前々回、宮城県から御報告いただいております。また、検定試験等の活用。さらには、まだ一般的とまではなっていないかもしれませんが、その他様々な評価の仕組みの中に、例えば、ルーブリックの活用等も一部始まっている状況があろうかと思いますが、こういった部分につきまして、自主的な取組という形で、少し押さえておくということでございます。
 このような現状についての全体を見通した上で、課題認識をまとめているところが、3ページ目でございます。多様化への対応を進めるこれまでの高等学校教育改革は、生徒一人一人に応じた教育の推進の上で大きな成果を上げてきたところでありまして、こういった対応につきましては、引き続き推進していくことが必要であろう。一方、多様化は、結果として、生徒が高等学校の学習で何をどの程度習得したのかを見えにくくもしており、高等学校の成果として期待される資質・能力を身に付けないまま卒業していくケースも見られる中、それらのことが高等学校教育に対する不信感にもつながっているといった課題がある中、多様化の推進が重要であればこそ、その中で生じてくる質保証の問題には、積極的に対応していく必要があろうということでございまして、このような課題認識の下、本部会におきまして、一つは、全ての生徒に共通に身に付けさせるべきもの(コア)についての検討、そして、質保証に向けた新たな仕組みについて検討、このような課題認識についての全体整理をさせていただいているものでございます。
 その次でございますが、3章目は、本部会で8月以降に御議論いただきましたテーマの大きな一つ目でございますが、コアについての基本的な考えのまとめの部分でございます。
 コアにつきましては、コアの範囲、コアの要素についての捉え方、必履修教科・科目とコアとの関係という、大きな三本立てでお示しさせていただいておりますが、まずコアの範囲でございます。全ての生徒に共通に身に付けさせるコアを構成する要素は、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」のいずれの領域にも含まれるものとして、コアの範囲を捉える。このようなことで、本部会の概ね共通認識をいただいていたかと思っております。
 イの部分でございます。学校教育法等における高等学校教育の目標とコアということで、ここの部会で議論してきた経緯の中での、どんな議論であったかということを踏まえまして、少し言及させていただきますが、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」の調和を図るとともに、基礎的な知識・技能、基礎的な知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等、主体的に学習に取り組む態度の三要素を、学力の重要な要素に位置付けた学校教育法の教育理念というのは、「生きる力」の育成に不可欠、これは「生きる力」の育成そのものであろうということの確認でございまして、「生きる力」というのは、全ての高等学校にとって共通の目標であり、これらのことを踏まえれば、コアにつきましても、これら全体の領域をカバーする、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」(知・徳・体)のいずれの領域にも及ぶものではなかったかということでございます。
 その次でございます。コアの要素についての捉え方といたしましては、コアの要素を含む資質・能力としては、「社会・職業への円滑な移行に必要な力」や「市民性」が重要であるほか、これらを構成する一部ともなる「批判的に考える力」「説明する力・議論する力」「創造力」「人間関係形成力」「主体的行動力」「自己理解・自己管理力」「職業観・勤労観」「公共心」「社会奉仕の精神」「他者への思いやり」などや、さらには「健康の保持増進のための実践力」なども、コアの要素を含むものとして位置付けることができる。このようなことであったかと思います。
 これらの中で、社会で自立し、社会に参画していく人材の育成を推進していく観点からは、特に重要なものとしては、「確かな学力」を構成する「学力の三要素」とともに、特に、コアの要素を含む資質・能力の重要な柱としては、社会・職業への円滑な移行に必要な力、そして、市民性、そういったものがあるのではないかということ、これに言及しているところでございます。
 さらに、コアの要素を含む資質・能力としては、そういった社会・職業への円滑な移行に必要な力、市民性といった重要な資質・能力の柱をもう一段具体化したものも含めて、資料の5ページにございますような様々な資質・能力の例、こういったものが位置付けられるのではないかと、このような整理になっているわけでございます。
 その次でございます。必履修教科・科目とコアとの関係につきましても御議論いただいたところでございましたが、「必履修教科・科目」は、全ての生徒にコアを身に付けさせるための共通の枠組みを、教科・科目等の形で示したものとして捉えることができるのではないか。特に、新学習指導要領で導入された共通必履修教科・科目は、全ての生徒に共通の目標を身に付けさせるため、共通の科目を履修させるものであって、高等学校教育としての共通の内容を端的に示すものではないか。このようなことについて、この部会の中でも確認をいただいていたかと思います。
 また、そういった共通必履修教科・科目との関係を踏まえての、目標等の在り方の検討ということで、5ページの下のイのところに記載させていただいておりますが、高等学校教育におきましては、こういった学習指導要領で示します各教科・科目の目標に基づき、それを踏まえて、各学校ごとに、生徒の実態や地域の実情に即して、大きな教科の目標の下での具体的な目標、学習内容が定められ、この具体的な目標や内容に照らして、各学校の学習評価がなされ、その結果も踏まえて単位の修得、卒業認定が行われている、このような仕組みになっているかと思います。
 そういったことを踏まえ、高等学校教育のコアをどう捉え、明確化していくかということに併せまして、学習指導要領における必履修教科・科目の範囲、目標・内容等の在り方についても、今後さらに、中長期的な観点から幅広い検討が必要で、これはむしろ次期の学習指導要領の改訂までを視野に入れるような、中長期的な観点から言えば、そのような検討視点があろうかということでございます。
 一方、一番下でございますが、25年度から年次進行で全面実施される新しい指導要領が示す必履修教科・科目については、それらを効果的に実施し、教育の質を担保していくことが当面の重要課題である。このような中でございますが、新学習指導要領の下で、高等学校全体で共有すべき達成水準として、何を、どこまで求めていくかについては、そのための評価の在り方と併せて、引き続き検討していく必要があろう。このような整理をさせていただいている案でございます。
 教科の在り方についての導入が少し出てまいりましたが、6ページ以降は、4章でございます。高等学校教育の質保証に向けた評価の仕組みについての考え方ということで、大きくまとめたものでございます。
 (1)でございます。全ての生徒に共通に身に付けさせるコアと評価ということで、まず導入部分の記載をさせていただいておりますが、コアの要素を含む様々な資質・能力の中には、例えば知識の量のように、筆記試験や技能試験等の手段により客観的な把握を比較的容易に行えるものと、そうでないものが存在するということ。そういうことにつきまして、まさしくこの部会の中で御確認をいただいてきた経緯がありましたが、そういった中、評価の取組を進めるに当たっては、こうした様々な資質・能力について、それぞれの性質に応じた適切な方法による把握を行い、客観的な評価の充実を図っていく必要があろうかということでございまして、まず客観的な評価の対象としやすいと思われる、基礎的な知識・技能と思考力・判断力・表現力等の評価についてまとめたものが、(2)でございます。
 この基礎的な知識・技能等の評価につきましては、その到達度を把握する全国規模の調査の仕組みを設け、各学校・生徒の希望に応じて活用できるようにするとともに、技能検定等の活用を促進し、客観的な評価の充実を図るとさせていただいておりますが、前回までにいただいていた主な意見等を踏まえつつ、たたき台として、今回、このような形で骨子案をお示しさせていただいているところでございます。
 まずその中身、アでございますが、評価のシステムの充実の必要性、こういった知識・技能等につきましては、もともと客観的な評価の対象としやすい面が強い部分があろうかと思いますが、それであれば、それらの方法を、個々の学校ごとの取組に加え、システムとしてどう充実させていくか、この部分が本部会における検討のテーマであったかと思います。
 そこにつきまして、まず、基礎的な知識・技能の習得に関する課題ということでございまして、もう一度課題に立ち戻って、例えば、PISA調査における読解力や記述式の問題の無答率の高さなどの課題も指摘され、特に高校生については、学力中間層の学習時間が大きく減少していること、また、「大学全入時代」とも言われる中、大学入試の選抜機能の低下、とりわけ推薦入試やAO入試については、事実上の学力不問となっているのではないかなどの懸念等の実態がある中、基礎的な知識・技能を身に付けていない者が大学に送り出されるという状況に関しては、大学入試の在り方の問題と同時に、高等学校教育の質保証の問題として対応していく必要があろうかと思います。
 また、職業・社会とのつながりの面では、職業人に求められる専門的な知識・技能が高度化・拡大している中で、専門高校等におきましても、生涯にわたって自ら学んでいく上で必要となる学力、それぞれの職業分野での基本となる技術など、専門職業人としての基盤を確実に身に付けさせる必要があります。
 このようなことについての課題認識でございまして、その上で、全国規模の調査の仕組みの検討ということといたしまして、全ての高校生の学力の向上を図る観点から、既に幾つかの都道府県においては、国語、数学、外国語などの教科の学力を測定する共通テストの取組が実施されているところであります。これらの取組につきましては、生徒の習得状況を適切に把握し、学校における指導の改善・教育の質向上につなげていく上で非常に有効であろうかということでございます。また、こういったテストにつきましては、生徒が学習を進める上での目標を与えられるようなものになれば、これは学習意欲の向上の面でも大きな意義があり、さらには、こういった思考力・判断力・表現力等を求める良質の問題で調査が実施できれば、学習指導要領が目指す学力観について、現場で共有していく上でも効果があるのではないかとしております。
 一方、都道府県における既存の共通テストでございますが、生徒の学力向上には役立てられている一方、全ての生徒に共通に求める学習の到達目標を設定し、その到達度を測るようなテストとしての性格は弱く、一定の学力を担保する意味での質保証の仕組みとは、その用途・目的において、多少異なる面もあるのではないかという状況です。
 そして、これはさらに、これから考える質保証の観点からということでございますが、共通に目指すべき到達目標の明確化を図るとともに、その到達度を把握する共通的な調査の仕組みを設け、全国の高等学校・全ての高校生が、それぞれの希望に応じて、この調査の機会にアクセスできるようにすることが望まれるところではないかということです。
 7ページ目でございますが、本部会としては、高校生として共通に求められる基礎的な知識・技能、思考力・判断力・表現力等を把握する全国規模の調査の導入が必要との認識の下、今後さらに、その仕組み等を検討。このように入れさせていただいたところでございます。
 また、もう一つ、技能試験等の活用の推進ということでございます。いわゆる職業系の基礎的な知識・技能等の評価につきましては、既に公的な職業資格・検定試験や、民間の技能検定、さらには各専門学科の専門高校校長会等が実施する検定試験などがございまして、これらの成果が、進学や就職時の評価等にもつながるとともに、生徒にとっての学習上の一つの目標ともなるなど、重要な役割があります。このように評価できるものであろうかと思いまして、そういった技能検定等の活用を積極的に推進するなどにより、一層の充実を図っていくことが必要ではないか。このようにまとめているものでございます。
 そして、最後でございます。その他の幅広い資質・能力の評価というところでございますが、(2)で見たような、いわゆる客観的な評価の対象としやすいもの以外のもの、(2)の対象とすることが困難な幅広い資質・能力、豊かな心の面の評価等についてでございますが、この部分につきましては、評価の妥当性の確保や信頼性の向上に向けて、評価の手法や評価指標等に関する調査研究を行い、その成果を踏まえ、より一層の評価の取組を進める。このようにさせていただいております。
 こういった、例えば、学習への意欲・態度、社会への円滑な移行に必要な力、「市民性」、その他の道徳的な価値・倫理観、健康の保持増進のための実践力等の評価については、これは筆記試験等の方法により、全体を評価することは困難であり、また、学力の一要素である思考力・判断力・表現力等についても、その評価については、筆記試験以外の手法も含めた評価手法の改善によって、一層の充実を図る余地があるという、このような中でございますが、イにありますとおり、これらについては、評価の妥当性の確保、信頼性の向上等の課題に対応していくことが重要であり、こうした課題に対しては、ルーブリック、ポートフォリオ評価などの様々な手法の研究も進んでいる状況で、こういったことについて、様々な先進的評価手法の活用も視野に入れながら、どのような資質・能力を、どのような手法で把握するか、評価の指標をどうするか等の調査研究を進めるべき。
 なお、これらの研究の成果については、必要に応じ、指導要録の様式の見直し(記載事項の改善)など学習評価の充実につなげていくことも検討すべき。このようなことでまとめをさせていただいている案でございます。
 最後、7ページの一番下でございますが、生徒の学習状況に関する調査の推進です。知識・技能、思考力・判断力・表現力等の調査に加えて、学習時間、学習意欲などの、高校生の学習状況を客観的に把握するための調査等の取組も併せて推進する必要があると、一言ではありますが、これにも言及を行っております。
 以上、説明は長くなりましたが、事務局で本日お示しさせていただいております骨子の案でございます。御議論いただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、今の資料1の骨子案の内容ですけれども、今、御説明があったように、ポイントを簡潔に整理しております。最終案では、さらにこれに具体的な、必要に応じたデータなども組み入れながら、しっかり文章として書き込むことになるかと思います。残された時間、1時間半ぐらいありますけれども、前半と後半ということで大きく分けて、皆さんの御意見を伺えればと思います。
 最初の30~40分は、まず今日御説明いただいた資料1の、この部会の審議の経過についての全体の柱、骨子ですね。骨子全体の構成についての議論と、資料1で言えば、1の高等学校教育部会における検討の背景とこれまでの検討経緯と、2の高等学校教育の質保証をめぐる現状と課題認識、この辺りまでをまず前半で、御意見を伺って、後半に4ページ以降、3と4について御意見を伺うというようにしていければと思います。よろしくお願いします。
 では、まず前半、骨子全体の構成及び1、2に関わって、何か御意見があればお伺いしたいと思います。どなたからでも、どうぞ。よろしくお願いします。
 では、荒瀬委員。

【荒瀬委員】
 ありがとうございます。
 3ページの課題認識の部分ですが、これまでの議論の中では、十分共通理解があろうかと思うのですが、(3)の課題認識の1行目の途中から2行目にかけての部分で、高等学校教育改革が、生徒一人一人に応じた教育の推進の上で大きな成果があったというのは、これは言えなくはないとは思うのですけれども、大きな成果があったのなら、別に課題として認識する必要はないわけでありまして、対応を進めるということに少し力点が置かれてしまって、生徒の多様化に対して対応するということに力点が置かれてしまって、教育という点で幾つかの課題があるということが、実は共有できている課題認識ではないかなということを思いますので、その点、一つ申し上げました。
 以上です。

【小川部会長】
 書きぶりを工夫せよというようなことですので、この辺は了解しました。
 ほかに、では、長南委員、どうぞ。

【長南委員】
 今の3ページの課題認識のところですけれども、白丸が四つありますね。一つ目と三つ目の、多様化への対応と多様化の推進という書きぶりでスタートしていますけれども、この多様化への対応というのは、生徒の多様化、学校・学科等の多様化、教育課程の多様化、この三つのことを表しているのでしょうか。

【塩原教育制度改革室長】
 多様化への対応といった場合には、どちらかというと、背景として、今、多様化というものが進んでいるということ、それに学校側・教育側がどう対応するか、その面で言うと、背景の方が中心ですので、これは厳密に詰めているわけではないのですが、例えば生徒の多様化、ないしは、生徒の多様化等に伴い、抱える課題の多様化というような、どちらかというと、背景面を中心に置いたものです。
 多様化の推進ということについては、むしろそれらへの対応として、様々な学習ニーズに対応する学習機会も多様化していくなどの、対応面の方が中心になると思いますので、同じ多様化という言葉で大まかに言っておりますが、少しニュアンスを異にするところはあろうかと思っております。

【長南委員】
 そうですね。その辺のところが少し読みにくいので、いろいろな方が読むわけですから、その時に読み違えるようなことがないようにすることは非常に大事なことではないのかなと思います。

【小川部会長】
 分かりました。
 ほかに、どうでしょうか。
 では、長塚委員、どうぞ。

【長塚委員】
 1ページの(1)のイのところに、高校無償化導入時の国会附帯決議ということがあって、高等学校教育の質の更なる向上要請とあったのですが、確かに、無償化に伴って、そういう附帯決議や要請があったというふうに言ってもいいのかもしれませんが、私はあえて私学の立場から申し上げますが、そもそも国公立に対して私学というのがあるというような、高等学校においても、そういう多様性というのは、私学においてはもとからあったわけであります。
 私学は、高校無償化と言いましても、よくよく誤解されることが多いのですが、無償化ではなくて、無償化は公立であって、それ以前も、公立学校は教育費の9割方は税金で賄っているという、そういう位置付けでありましたから、残りの1割ぐらいが全国一律の、正確には、施設使用料が授業料を名目ということで捉えていたものを無償化しただけであって、それによって、公立高等学校においては、そういうことがある種達成されているのだろうと思いますが、私学は、公費の就学支援金というのが導入されましても、教育費の半分にもまだ満たないわけでありまして、一律に無償化を導入し、全ての学校というふうに、この後の論議がくくられているのには、違和感を感じます。私学のあるべき多様性を重視していた、そのもとが失われてしまうような、そういう論議が前提になっているような話なものですから、その点を踏まえていただきたいと思います。
 とりあえず以上です。

【小川部会長】
 分かりました。
 今の点も、本部会の課題の性格もありますので、その辺、全面展開はなかなかここで書き込むのは難しいと思うのですが、何らかの形で、その辺のところは少し配慮しながら書いてみたいと思います。よろしいですよね。
 では、小杉委員、どうぞ。

【小杉委員】
 課題認識の枕詞に、労働市場・社会の変化というところも入れていただきたいと思います。例えば、多様化の話の前提には、中学卒業では労働市場はほとんど入れるところがないという事態があって、その中で、やはりより高い学校に進学しなければ、労働市場に出ていくことができない状態になっており、そういった社会、産業の高度化など様々な状況はございますけれども、社会・産業側の状況が変化したという枕詞は、是非入れていただきたいと思います。

【小川部会長】
 正にそうですね。
 今、小杉委員がおっしゃっていただいた点については、8月にまとめたものもありますので、今日の骨子案の中には、その辺のところがまだきちんと反映されていませんけれども、おそらく最終案では、8月にまとめた「課題の整理と検討の視点」の内容もきちんと書き込んでいくかと思いますので。
 ほかに、どうでしょうか。
 もう一度全体に戻ってきますので、もしも骨子案の構成、1、2に関わって、今の段階で御意見がなければ、後半の3と4、こちらの方に議論を移していって、最後にまた全体を通じて、皆さんから御意見を伺いたいと思います。
 それでは、3のコアについての基本的な考え方、4の高等学校教育の質保証に向けた評価の仕組みについての考え方、これに関わって、御意見を伺いたいと思います。どなたからでもどうぞ。
 では、小杉委員、どうぞ。

【小杉委員】
 続きまして、5ページの、コアの要素として、事例として是非入れていただきたい1行があります。それは、具体的に言えば、労働に関わる権利・義務と、労働相談窓口などを通して、それに対処できる能力です。社会の変化の話に関わりますけれども、日本の今の企業の中には、コンプライアンスが徹底されていない部分というのが現実にありまして、労働系の相談窓口などでも、かなりそういう事例がたくさん集まっています。そういう現状を考えた時に、労働相談窓口などを通して、それに対処できる能力というのは、やはり高校時代に必ずみんな勉強するものにしてほしいということで、是非入れていただきたいと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかに、どうでしょうか。
 では、長塚委員、どうぞ。

【長塚委員】
 先ほどの話に続くのですが、私学の立場であえて申し上げますが、6ページの真ん中ほどのイのところに、大学入試の選抜機能の低下で、括弧書きもありまして、推薦入試やAO入試云々もあり、学力不問になっている問題があるという懸念があるということ、これが案外、今回の質保証の最初にあった、発端になっていたというふうに私は認識しているのですが、前回のことを繰り返すようで恐縮ですけれども、センター入試を、大学・短大進学希望者の約8割、77%が既に受験しているという事実とか、ですから、学力不問になっているというようなことを簡単には言えないのではないかなと思っております。
 入学した生徒で区分すると、確かに推薦入試の人数が多く、入っている生徒が多いということに結果的にはなるのですが、一度そういうセンター試験の受験を8割の生徒がしているということ、そういうことが見過ごされている、かなり事実誤認の前提で、これは話がされてきているのではないかということを改めて、もう後半のまとめの段階に入っておりますので、今さらと思われるかもしれませんが、そういうことが、誤認ではないのだということであれば、そういうふうに説明していただきたいし、もう一つは、高等学校の学校数・生徒数の3割を私学が占めております。その3割のうちの半数は、大学附属、大学の系列であるということは、最初の回で私も申し上げました。つまり、15%程度は、30万人のうちの半分程度は、実は大学附属・系列であります。その生徒たちが大学に入る時は、これは全部推薦入試で入るんです。一般入試ではないんですね。そういう基本調査が、文部科学省の方では基本調査には区分がありませんから、されていないと思いますけれども、そういうことは以前申し上げたとおりでありまして。
 ですから、入試の区分で、学力不問であるというのは、大変失礼な話にもなります。簡単に言って、著名な大学にある附属の生徒は、ほとんど全てが推薦入試で大学に進学しているのであって、それがいけない、その学力がないというのは、大学の下に、あるいは大学の附属ごとに、そういうものはきちんと把握しているのであって、決してそうではない、この認識は、一般に流布しております推薦入試あるいはAO入試で入っている生徒の学力が問題であるというのは、半分以上偏った見方であるというふうに私は言っておきたいと思います。
 とりあえず以上です。

【小川部会長】
 では、金子委員、どうぞ。

【金子委員】
 私は大学教育部会にもおりますので、今の点については異論がありますので、申し上げておきます。
 不問というのは言い過ぎかもしれませんが、しかし、高等学校段階での学習の準備に問題があるということは事実だと思います。センター入試をとっている率が7割とおっしゃいましたが、これ、手元に数字がありませんので、もう一回確認いたしますが、今、日本の4年制大学に入学している学生の4割ぐらいは、ほとんど大学が行っている入試を受けていません。それから、私どもがやりました高校生の調査でも、これは何回も申し上げていることですけど、今、日本の高校生の大体6割ぐらいは、高校3年生で、自分の家で、つまり、授業時間以外では全く勉強していないんですね。大学に入っている学生自体でも、4割近くは全く、3年生の段階で勉強していません。これは非常に問題がある状況でありまして、学力不問かどうかというよりも、むしろ学習の習慣ができていない、それが非常に大きな問題だということを私たちは申し上げたいわけです。
 学力については、実際に統一に試験をしていませんから、分かりませんけれども、高校3年生で、ほとんど家で勉強していないような学生が、非常に十分な学力を持っているかどうかということは、私は非常に疑わしいと思います。
 それから、そういった学生が、大学在学期間、大学を通じてどのような経験をしているかということを調べてみますと、やはり高校時代にセンター試験を受けていないとか、あるいは、特に学習時間が少なかった学生というのは、大学4年間を通じて、やはり学習時間が少ない。はっきり言って、就職率も悪いです。私は、学力で差別するというよりは、むしろ高校時代に一定に目標を持って学習してきた経験があるかということが、非常に大きな問題だと思います。
 いずれにしても、大学の入学者に学力上の問題がないということは、絶対に私はないと思います。高等学校が努力されていることは事実でありますけれども、そこのところに問題がないということは、現実の認識としてあり得ないと思います。
 この点について、もし事実上まださらに問題があるのであれば、私は幾らでもいろいろと調査の結果等々お知らせいたしますけれども、この点について、日本の高校生の学力は、大学入試に際して問題がないと言うことはできないと思いますし、むしろ非常にその点が大きな課題になると思います。
 日本の4年制大学には5割の学生が入学しているわけでありますけれども、それについて、大学の入試という形では学力保証ができなくなっているということは、これは事実としてあるわけですが、であれば、高等学校の教育の質というものをきちんと把握できる、保証できるようにしなければいけないというのが、この部会のそもそもの趣旨でありまして、その点について、私は疑いを入れることはできないと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、和田委員、野上委員という順番でお願いします。

【和田委員】
 失礼します。
 今の御意見は、一面正しいとは思っておりますが、それを受けて、ここで評価の仕方、あるいは、共通テスト的な話題は、これからどういうものにしていくかを検討するということにはなっていますけれども、一方で、新聞が間違っているかもしれませんけれども、毎日新聞の記事などを見ていると、共通テストありき的なものが発表されていっている中で、そういう評価をする、あるいは保証するテストをしていくということ自体は、一つの方向性としてはあるとは思うのですけれども、果たして、この部会の途中でどなたかがおっしゃったように、今やっている中学校とか小学校の全国学力調査のように、高等学校の教育の現状を把握するための調査、テストなのか、あるいは、今おっしゃったように、高校生の個人個人の習得、あるいは学力その他を含めた、一人一人の質保証のための、いわゆる大学入試なり、就職試験なりの前に、高等学校できちんと身に付けるべきものを身に付けたということを調べるための、個人個人の質保証のためのテストなのかというところが非常に曖昧なままきていると思うので、そこのところはどちらかなのか、あるいは両方なのか、その辺も含めて、書き込んでいく必要があるのではないかなと思います。

【小川部会長】
 今和田委員がおっしゃった点も含めて、皆さんのいろいろな御意見を伺えればと思います。
 では、野上委員。

【野上委員】
 今回いただいた資料の4ページに、コアの要素についての捉え方とございますけれど、かねがね産業界は、今、本当にグローバル化の中で、大変な状況にあるわけですけど、そうした時に、この括弧書きの中の、こういうものを身に付けてさせていただきたい。ここへ表記していただいたのは大変ありがたいし、これを堅持していただきたいと思います。
 もう一つ、我々、今、産業界にあって、企業間競争をしておりますと、どういう人材が必要かと申し上げれば、異質異能な人材、こういった人材をどう育成していくのかということも、一つ必要になってまいります。そうしますと、全ての生徒に共通に求める到達目標のために何かをシステム的に作るということであれば、逆に、私どもは、その異質異能な人材を養成していくにはどういうことが必要かと言えば、やはり教育界の現場の先生には大変でありますけれども、一人一人の生徒のカルテ的なものを是非作っていただき、それは何も高大接続とか、高等学校だけの問題ではなくて、我々が求めているのは、どこでその要素が欠落していってしまうのかということをいつも考えております。そうすると、やはり小学校から中学校、中学校から高等学校、高等学校から大学へという、どこかでそのカルテが必要で、高等学校だけのカルテを作っても、これは一人一人の異質異能なところの発掘にはつながらないと思うわけです。
 したがって、高大接続はここにありますから、その前提としては、やはり小学校から中学校、中学校から高等学校へ対する一人一人のメニューを作るということは大変な作業だとは思います。教育的負担も大きいと思いますけれど、そうしないと、やはりボーダレス化したグローバル社会の中で闘っていける人材、それから、雇用に結びつく人材の育成にはなかなかならないのだろう。そのようなことを、この全体の書きぶりの中で入れていただければありがたいなと思っております。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、直原委員、そして、及川委員、荒瀬委員ということでお願いします。

【直原委員】
 2点あるのですが、一つ目は、6ページの(2)のイのところですが、これは最初の方にも似たところはありましたけれども、PISA等の調査結果で、読解力や記述式の問題に無答率が多いということの解釈として、学習意欲や粘り強く課題に取り組む態度が足りないのだという、そういう評価になっているのですけれども、そういう面もあると思いますけれども、私はむしろ、知識がない、知らないことは答えない、分からないことは答えようがない、つまり、試験問題というのは、知識とか、理解とか、それを問うものだというふうに思っていて、深く考える、答えはないかもしれないけど考える、そういった力を普段鍛えていない、つまり、思考力や表現力の問題なのではないかなというふうに捉えています。
 それから、そのことと少し関係があるのですが、こうして、この間の議論をこうやってまとめてみると、私、バランスとしてどうなのかなと思ったのは、もともとこの会の発足は、今の高等学校教育はこれでいいのだろうか、社会が必要としている、あるいは、本人が成長すべき部分をきちんと鍛えているのだろうかというところにあったと思うのですが、それに応えるには、いきなり評価の仕組みということになっているのですけれども、これももちろんとても大事なことですけれども、では、その求められている力を一体どうやって身に付けさせるのか、どういった教育活動がこれからは必要なのかという部分について、少し抜け落ちているように思います。
 例えば、思考力や判断力を付けるといった場合に、高等学校でどういう活動によってそれを付けていくのか。中学校については、随分この間、教え方について改革が進んできたと思いますけれども、残念ながら、高等学校教育は、先生にもよるのですけれども、例えば、せっかく少人数指導を入れても、教え方は従来と同じように、教科書と問題集、そういうやり方で行われている部分が非常に強い。その部分を変えていかないと、例えば、論文を書かせるとか、発表させて議論させるとか、そういった活動をもっとやっていかないと不十分なのではないか。その部分が、このペーパーでは、評価の問題だけではないと思います。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 今、直原委員がおっしゃった後半の点については、確かに課題の整理等、8月にまとめる過程で、高等学校で様々な授業改善の課題、取り組むべき課題がたくさんあるという話はかなり出ておりましたので、そういう視点は確かに重要だと思いますので、最後のまとめでは、そうした8月にまとめた内容なども少し整理して、きちんと書き込めていければなと思います。御指摘ありがとうございました。
 では、次、及川委員。よろしくお願いします。

【及川委員】
 二つありまして、一つ目は、事務局への質問のような形になるかと思います。4ページに、(1)として、コアの範囲というタイトルがあって、それで、イの二つ目の丸に、「コアの要素を含む領域」という表現が出てきます。そして、(2)に参りまして、その枠の中の書き出しが、やはり「コアの要素を含む」という言葉になっているのですが、最初に「コアの範囲」という言葉が出てきて、その次に出てくる言葉が「コアの要素を含む」という流れになっているのですが、コアの要素そのものについては、この部会の捉え方としては、どういうふうに把握されていたのかなということを確認したいということが1点です。
 資料2にあります、コアのイメージ図です。私などは、このイメージ図を見た時に、コアの要素というのは、上の方に位置付けられている、確かな学力、それから、学習成果として期待される資質・能力ですが、学力と、学習成果として期待される資質・能力、その資質・能力としてはどのようなものがあるのかというのは、(2)以降に出てきているような資質・能力だというふうに私は理解していました。つまり、コアの要素というのは、繰り返しますけれども、学力、それから、学習成果として期待される資質・能力という捉え方でよろしいのかどうかということを確認したいと思います。
 もう1点は、6ページになります。これは質問ではありませんで、意見です。6ページの一番下の白丸のところで、全国の高等学校・全ての高校生が、それぞれの希望に応じて、把握できる共通的な調査の仕組みということについての言及があります。それで、私は、こういう仕組みが、何よりも生徒の学習意欲の向上につながることは、非常に不可欠だと思っています。その意味では、7ページに参りまして、4行目のエのところに、技能試験等の活用の推進ということで、民間の技能検定だとか、専門学科の専門高等学校長会が実施している検定試験、工業高校でいうとジュニアマイスター顕彰制度、商業でいうと全商一級といったような、こういった試験というのが、その次の3行目、進学や就職時の評価等にもつながる、これが生徒にとっての学習上の一つの目標となっているということで、生徒の学習意欲につながる仕組みだと思います。6ページに出てきている到達度を把握するような共通的な調査の仕組みというのは、正にこういう生徒の学習意欲につながるようなものであってほしいと思います。
 以上です。

【小川部会長】
 今の及川委員の1の方の質問、事務局の方でよろしいですか。

【塩原教育制度改革室長】
 今回、言葉として、コアの要素とか、そういった言葉を使っておりますのは、これまでの会議資料での言葉遣いと同じにさせていただいているのですが、若干回りくどい言い方をしておりますのは、8月の課題の整理と検討の視点でも示されておりました。コアというものを捉える時に、これを能力として捉えるのか、内容や水準として捉えるのか。または、内容や水準として示していくのか、能力として示していくのかなどについて、この部分については、8月の課題整理の際には、少し詰めていく必要があるというように言われておりまして、その課題意識がありましたので、若干回りくどく書かせていただいております。
 今まで特に重要だということで示されていました、例えば、社会や職業への円滑な移行に必要な力でありますとか、市民性といったものは、おそらくこれは能力のようなものとして示されているのだろうということで思ったわけでございますが、こういった能力をかなり大きな目標として打ち出す、そういうことであろうかと思いますが、これをさらに要素レベルに還元していくと、いろいろなものを考えていくことができるのだろうと思います。
 その要素ということで、今回お示しさせていただいていますが、こういった資質・能力の、さらに構成要素として、市民性の内容として人間関係形成力とか、能力を少しブレークダウンしたものがあろうかとも考えましたし、さらに、もう一つは、市民性といった、例えば規範意識とか、決まりを守るとかということであっても、単に決まりを守るだけなのか、決まりの意義まで分かるのか、さらには、決まりを自らみんなで話し合って作っていくところまで、そういった様々な段階のどこまでを身に付けさせるのか。例えば、小杉委員が言われますような、労働社会の中できちんと自立していくという時に、どういった知識を身に付けさせるのか。そういった内容・水準の部分につきましては、実はこの部会の中では個別具体の議論はしてはいなかったのではないのかと思います。
 ただし、場合によっては、この部分につきましては、今後、様々な評価の仕組みについて考えていく時に、到達目標をどう考えるのか、ないしは、もっと中長期的には、新学習指導要領等の議論にもつながり得るような話になっていくかもしれないというところでございまして、能力と内容・水準の部分を少し分けて考えまして、ここでコアの要素ということでいった場合につきましては、何の脚注も入れていないのですが、とりあえず現時点では、要素というのは、何が分かる、どこまで分かる、または、何ができる、どこまでできるという、内容・水準レベルのものを考えております。当然、人間関係形成力というものが、おそらく能力として必要だという時に、具体的にどこまでなのかということについては、さらに、より掘り下げた議論が別にあるのかもしれませんが、とりあえず大きな領域の中で、こういった領域の力というのが、知・徳・体全般にわたって必要だろうというのを捉えたのがコアの範囲であって、その中で、具体には何なのか、どういった部分に分布しているのかというのは、コアの範囲という今回の一応の言葉遣いでございまして、何の御説明もないのですが、前提としては、このような考え方の整理で言葉を使わせていただいております。
 これをまた文章化していく際には、この辺りにつきましても、脚注などを入れる形で、厳密に書いていければと思っているところでございます。

【小川部会長】
 及川委員、今の段階では今の説明でよろしいですか。まだまだ整理すべき課題があるという確認かと思いますけれども。

【及川委員】
 はい。

【小川部会長】
 では、金子委員。

【金子委員】
 今の議論のところ、私もここのところはよく分からないのですが。ただ、言えますのは、このコアに関わる議論は一筋縄ではいかないと言いますか、多分、担当者も非常に苦労されて、こういう整理の仕方をされているのだと思いますが、それがほかの人に素直にすっと入っていくかというと、必ずしもそうはならない。これは、ただ、やる人の責任ではなくて、この件に関しては、そういうところもあるようでありまして、ここ15年くらい、国際的に見ても、コアとかコア・コンピタンスというようなことについて、いろいろな議論があるので、PISAの調査を作る時にも、それに先だって、中等教育段階くらいで、どういうものがエッセンシャルな能力であるかというようなことについて相当な議論があって、基本的には教育心理学者が中心ですけれども、幾つも報告書も出ていまして、その結果として、そういう能力像に応じてPISAのテストができているわけです。
 ただ、これも、例えばアメリカなどの考え方はどうもかなり違うみたいでありまして、結局、これに関しては、整理の仕方として非常に難しいところがあるので、この部会としては、文部科学省で案を作ってくださって、もう少しワーキンググループか何かでもむとか、そういうことを考えて、あまりこのコアの整理自体に突っ込んでしまうと、非常に議論が錯綜してしまって、収拾がつかなくなる可能性がありますので、少なくともどういった点を押さえておくことが必要なのか、コアの議論をすることによって、どういった点を押さえていくことが必要なのかということをアグリーするというような形でまとめていく方がいいのではないかと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、荒瀬委員。

【上野委員】
 今のことに関わることですけれども。

【小川部会長】
 では、いいですか。上野委員に先に御意見いただいて、その次に荒瀬委員。

【上野委員】
 むしろ関連する質問なんですけれども。
 今のような議論というのは、ある程度漠然としたようなことにならざるを得ないと思います。それで、例えば、野上委員がずっと言われてきたようなことは、例えば、授業でどうこうできるというような問題ではないです。この後の、次の第2段階目の今日の話題にも関連すると思うのですが、以前和田委員がおっしゃったのだと思うのですけが、評価する時の対象として、例えば、授業と言いましょうか、カリキュラムの中だけで捉えたいというようなことをおっしゃっていたような気がします。
 高等学校教育というのは、おそらく全人的な触れ合いで、例えば課外活動もあり、ホームルームもあり、いろいろあります。そういうものを含めて捉えないといけない部分と、客観的な評価がやりやすいような部分については、例えば、カリキュラムの中で行われるものでやりやすいわけです。授業です。そこの区別がよく分からなくて、一番大事な切り分けをやらないとなかなか考えがまとまっていかないのに、そこがあやふやです。そこをもう少し考えていく上で、指針みたいな分け方を言っておいてくださると、コアで入れないといけないことでいろいろあるけれども、例えば、学力などは授業に関わるところが多いです。だから、それで考えていく部分と、もっと課外活動なり、時間外活動と言うのでしょうか、それを通して育成していくのだというものまで含めて、高等学校教育であると、明々白々と捉えるかです。それがないと、なかなか難しい話をやらざるを得なくなります。

【金子委員】
 国際的な流れを私が理解していることから申し上げますと、今おっしゃっていたのは、教科か教科外で高等学校全体として何を作るかという二つあるので、そのどちらかという話でしたが、今、やはり先進国間で一番問題になっているのは、教科自体が日常生活につながらないということ。教科と高等学校教育全体として身に付けさせる様々な積極性とか、そういうような、その中間に何かもう少し基礎的な学力みたいなものがあるのではないかというのが基本的な流れだと思います。
 PISAというのは、先ほど申し上げましたけれども、一応そういう流れを代表しているわけで、今回のこの文章について言えば、やはり教科自体は非常に多様化してしまったので、それぞれの知識の内容は明確なのでありますけれども、それが具体的な社会生活に結びつくのか、あるいは、それが自分で積極的に学習する目標を形成することになっているのかと言えば、それはあまりそうではないような。そういった意味で、その基礎的なものというのが、教科を通じて、しかし、学力としてあるのではないかという考え方だと思います。
 そのほかに、まだ高等学校教育全体として身に付けさせなければいけない価値とか、そういったものもあるでしょうけれども、やはり私は、その両者の中間に一定のものがあり、そういった意味での、基礎的な学力というのは、何かやはり身に付けさせていかなければいけないのではないかと思います。

【川嶋委員】
 よろしいですか。

【小川部会長】
 では、川嶋委員。

【川嶋委員】
 このコアの考え方ですけれども、いろいろ御意見あって、金子先生の御意見などあると思うのですけれど、例えば、4ページで、囲みの中、これまでいろいろ議論して、これは全て入れていらっしゃると思うのですが、逆に、ここに記されているもの以外で、どういう能力や資質があるのかというと、なかなか指摘しにくい。というのは、つまり、もうあらゆるものが、コアと呼ばれている、この中に入っている。それは、この審議会の性格として、それぞれ御意見があるのを、最低共通項をまとめられたので、こういうことになると思うのですけれども。
 やはり先ほど御意見ありましたけれども、高等学校の責任として育成できるものと、それ以外のものがあり、なおかつ、金子委員がおっしゃったように、教科を超えて共通となるような基礎学力、汎用的な知的能力、汎用的なスキルというものがあると思うのですが、その辺りを、多分、この後1回だけで議論できないので、そういうことの整理を、5ページ辺りにも書かれていますけれども、次期の中教審の審議会で、もう少しフレームワークをきちんと作った上で、整理していくべきだろうと思います。
 今日の資料2を見ても、これでコアだと言われても、高等学校の側は困ってしまうのではないでしょうか。もう少し枠組みとか観点を整理した上で、育成すべき共通の能力コアというように定義していく必要があるのではないかと思います。
 それで、もう1点は、共通の筆記試験を行うことの可否は、いろいろ御意見あると思うのですけれども、一つ考えなければいけないのは、よく言われるのは、そのテストを受けることによって、高校生にどういう、先ほどモチベーションという話がありましたけれども、これを受けることによって、生徒一人一人に、ある意味、具体的なメリットがあるかどうか、それを考えていかないと、要するに、英語ではハイステークかローステークかというのですけれども、もし受けることだけで終わってしまうと、やはり先ほどの白紙が多かったということにつながってくると思うんですね。これを受けることが、高校生一人一人に何らかの影響を及ぼすという形での実施を行わないと、ここでずっと議論した、履修主義か修得主義か、テストを受けて、それで終わりでは、やはり試験を実施する意味がないと思うし、高校生も受ける意義とかモチベーションはわかないと思うので、もしこういう共通筆記試験を導入するとしたら、それが、先ほど和田委員のお話がありましたように、誰にとって、どういうメリットがあるのかということをきちんと議論して、それを示していかないと、あまりコストパフォーマンスもよくないのではないかと思います。
 以上です。

【小川部会長】
 長南委員、今までの議論の流れに関係しての意見ですか。

【長南委員】
 関係あります。

【小川部会長】
 では、すみません、荒瀬委員、もう少しお待ちください。

【長南委員】
 全てが関係あるというわけではないのですけれども。
 まず最初に、少し疑問に思っていることをお話ししたいと思います。2ページ目の「質保証(出口管理)」という表記の仕方、それから、3ページ目の三つ目の白丸の下の「質保証・向上の正否は」という、この表記の仕方ですけれども、質保証ということが果たしてできるのかどうかという、そういう問題を私としては考えているんですね。何を質保証するのか。質保証したら、その先はないのか。質保証・向上となると、質保証というのは、物品の場合、100%を狙うことだと思うのですけれども。その後、向上という言葉が入ってくると、果たしてどういうことなのかなと。この質保証という言葉の使い方、それから、果たして質保証ということができるのかどうかという疑問がまずあります。
 二つ目は、多様な生徒への対応ということで、このまとめでいくと、7ページの、その他の幅広い資質・能力の評価という、こういうことは今非常に高校生に大事なことではないのかなと思います。ですので、これは次期の改訂の狙いかもしれませんけれども、こうしたことを全ての高等学校で扱う時間の設定とか、そういうことまで考えていかないと、このことの評価ができないのではないのかなと思います。
 そして、三つ目の、高等学校のテストの件ですけれども、多様化を推進しようとしている一方でテストをするというのは、逆のような感じがします。逆に、もしテストを実施してしまうと、それに全ての子供一人一人に対応したテストが可能かどうかということです。そういうことから考えると、多様化を推進する一方で、それを狭めるような行動ではないのかなと思っています。したがって、私は、高等学校の段階では今、机上で考えるようなテストが果たしてできるのかどうか、もしやるとすれば、そのようなところをしっかり考えて導入しないといけないのではないのかなと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、荒瀬委員、どうもすみません、お待たせしました。

【荒瀬委員】
 ありがとうございます。
 私、このペーパーの中で5点申し上げたいことがあるのですが、ただ、その前に、今お話しになっていたことを伺っていまして、これは、国として出していくことになるわけですから、言葉にこだわらないといけないというのはとても大切なことで、今後もこのコアとは何かということについての議論というのは必要だと思うのですが、一方で、現場にずっといた人間としては、現状にこだわるということもとても大切なことではないかなということを思っています。今なぜこういう議論をしなければならないかというと、高校生が本当に生涯学び続ける力の基礎になるような学力を付けて卒業しているのかというところが問題で、そこのところと両方見ながらやっていかないといけないのだろうなと思っております。
 そういうことを踏まえて、4ページですが、これはまとめていただく上での確認と言いますか、(1)のイの一つ目の丸のところに、ここで出てきているのは、学校教育法等における高等学校教育の目標ということなのですが、出されているのが30条だけでして、やはり51条がきちっとあるわけですから、そちらを踏まえた書き方というのも必要なのではないかなと。
 二つ目は、これも先ほどお話が出ましたが、(2)のコアの要素についての捉え方で、私は、ここにさらに入れるものというのを考えたのですが、ここに書かれていることは、全部個々人からの発信型といいますか、逆に、受け取る側としての視点というのも必要なのではないか、ですから、例えば、状況について把握する力であるとか、人の言うことを聴く、何を言っているか聴く力であるとか、あるいはまた、折れない心と言うのでしょうか、あるいは、折れても復元できる心と言うのでしょうか、そういった力といったようなものも、必要になってくるのですから、これを網羅することは多分不可能なのだろうということを思いながら読みました。という感想のようなことで申し訳ありません。
 5ページ目なのですが、高等学校教育のコアとしての必履修教科・科目等で、前から申し上げていますが、どうしてここに総合的な学習の時間というのが大きく取り上げられないのかというのは、私は不思議な気がしております。教科を超えて、というような御意見もいろいろありましたが、総合的な学習の時間こそが、そういった働きをカリキュラムの中でやっていくものでありまして、来年度から完全実施される新学習指導要領では、単位としてこれを認定するということにまでなっていて、小中学校が、ややもすると総合的な学習の時間が軽んじられているのではないかというような批判もありますけれども、高等学校の場合は、むしろ重くなっているわけですね。ところが、それについての取組というのは、私は全国的なことは分かりませんが、少なくとも、京都においては、必ずしも進んでいるとは言えません。だから、ここがとても大切なものとしてあるのではないかと思います。学習指導要領の目指すものを進める意味でも、とても大切ですし、このイのところの一つ目の丸の2行目に、生徒の実態や地域の実情に即した具体的な目標というのを学校では立てなさいという、これこそ正に総合的な学習の時間の目標に合致する、ぴったり重なるもののはずですから、総合的な学習の時間というのをもっと重視していくということによって、今の高等学校教育の課題というのを、それこそコアも含めて、乗り越えていくということで考えていくべきではないかなということを思っています。
 それから、6ページなのですが、6ページの真ん中辺りのイの部分です。先ほど、一つ目の丸のところで、学力の重要な要素である学習意欲や粘り強く課題に取り組む態度に差がある、問題があるから白紙回答が多くなっているというのは、必ずしもそうではないのではないかという御意見がありました。それは確かにそのようにも考えられるなということを思うのですが、そういうことも含めて考えますと、二つ目の丸、三つ目の丸との関連で言いましたら、三つ目の丸のところの2行目に、「生涯にわたって自ら学んでいく上で必要となる学力」という言葉が出てくるのですが、これこそが一体どういうものかということを考えていって、これがきちんと身に付けられているかどうかというのを評価するようなシステムが必要なのではないかなということを思っています。それが身に付けられていることをもって、大学がそれを活用なさるかどうかは別として、高等学校教育のこの部分の質の保証については、高等学校教育の責任の範囲内でやっていかないといけないということが問われているのではないかなということを思いました。
 最後でありますが、7ページの(3)の、その他の幅広い資質・能力の評価ということで、これは生徒に対してこういうことをやっていく中で、幅広い資質・能力を身に付けさせようということなのですが、これをしようと思いますと、カリキュラム上の問題や、あるいはまた、学校行事を含めた学校生活全般の問題の中で一番鍵になるのが、教職員の能力、あるいは、学校としての教育方針と言いますか、具体的によく言う校風でありますとか、あるいは学校としての姿勢でありますとか、そういったものが問われていくと思っています。先ほど総合的な学習の時間のことをお話ししました時に、生徒の実情や地域の実態に応じてというようなことがありましたけれども、そうした中で、教職員がどのような教育力を発揮していくのかということについても考えていかないと、生徒にはこういう力を付けなさいと言うのですけれども、それを傍らにいて直接的に影響を与える、あるいは指導するのは教職員でありますので、そこのところも忘れてはいけないのではないかなということを思っております。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかに、では、眞砂委員、渡邉委員、そして、相川委員、伊藤委員、小林委員ということでお願いします。

【眞砂委員】
 この資料1、骨子に、別に何かを付け加えるとか削るとかいう話ではないのですけど、根本的な流れとして、先ほど直原委員、それから長南委員もおっしゃったようなことの続きなのですけれども。
 私たちは、多分、高等学校の教育を改革しようとしていると、ここでこのようにまとめてくださって、読んで、今まで少しもやもやしていたものが少し晴れたような気がしたのです。私としては、どうしても具体的に考えないと分からないタイプの人間でして、すばらしいコアが4ページに書いてあって、では、それを具体的にどのように質保証するかが6ページ、7ページに書いてある。6ページの方を読んでいると、どうしてもペーパーテスト、筆記試験でやるのかなというふうに、そういう部分も強いなと見えてしまうのですけれども、先ほど長南委員が言いましたように、本当にペーパーテストのようなもので質を保証できるようなものが作れるのか、非常に難しいだろうなと思います。例えば、漢字でしたら、2,000字覚えていればいいのかとか、いや、できる子は4,000字ぐらいできるだろうとか、数学でしたら、数Ⅰの問い程度の問題を出せばいいのかとか、読み書き算など、基本的なものを、全ての高校生にとって過不足なく、適切なものを見つけて、そのボーダーを引くというのは非常に難しいだろうなと考えています。
 だったら、その測れないものも含めて、実はそちらに大事なものが非常にたくさんあると思うのですけれども、例えば、私は具体的に、発想を転換して、生徒にこういうことをさせたらどうかと思います。高等学校の卒業の時に、自分で何か今までの勉強の中から論文を書くという取組です。書く力は当然必要になります。そして、それを発表し、短くまとめて、みんなにうまく伝え、そして、その発表を発展させて、みんなと議論する。議論することによって、もちろん、コミュニケーション能力は非常に必要になると思いますし、社会に出てから市民としてやらなければいけないことが、その勉強を土台にして、そこに含まれていると思います。そういったものを質保証と呼んでいいのかなと思います。それは少し私には分からないのですけど、自分で論文を書き、まとめ、みんなに発表して、みんなと議論して、徹底的に納得いくまで話し合う。これは総合だと思うのですけど、そういったものを質保証とできるのでしたら、ペーパーテストよりも、そういう方向に重点を置いた方が、今まで私たちが話していた課題を解決していくのではないかなと思っています。

【小川部会長】
 では、渡邉委員、どうぞ。

【渡邉委員】
 ありがとうございます。
 少しだけ意見を述べさせていただきたいのですが、前回も、少しお話をさせていただいたと思いますが、評価と質保証の問題で、適正な評価というのは非常に大事でございます。それがなければ、もちろん、質の保証も何もないわけですけれども、生徒の到達度を把握することが最終目的ではないと思うんです。どのような評価システムを作ったとしても、それをきちんと生徒の方にフィードバックをしなければ、何にもならないのだろうと私は考えます。
 今日いただいた資料の6ページのウの最初の丸の1番目の米印のところで、生徒の習得状況を適切に把握し、学校における指導の改善・教育の質向上につなげていく、ここが一番大事な点だろうと思うのですが、その内容について具体的な記述は何もございません。この部会でそこまで言及する必要はないという御意見の委員の方もいらっしゃるかもしれませんけれども、その辺の具体的な内容については、各都道府県、あるいは各学校の方でやるべきだ、そういう御意見もあるいはあろうかと思います。しかし、フィードバックをして、生徒の方に下ろしていくのだという方向性はきちんと表現をする、これが私は絶対必要なことではないか、そのように考えております。
 以上でございます。ありがとうございました。

【小川部会長】
 では、相川委員、どうぞ。

【相川委員】
 今お話しいただいた渡邉委員のお話と、ほぼ私も同じような考えを持っています。いわゆる共通テストのところで、学力の向上を図るための共通テストなのか、到達度を測るものなのかというのは、これまでも議論されてきたことだと思うのですが、やはり子供たちにとって、この学力テストはどういう意味があるのかということは、最低限押さえないといけないし、子供たちとともに、学校として、そのテストを導入することによって、子供たちをどのように指導していけばいいのかというところも、また必要なのではないかなと感じておりますので、この共通テストの取扱いということに関しては、もう少し議論が必要なのではないかなと思います。
 今、学力が足りないから共通テストをやっていけばいいという流れではなくて、その学力テストをやる目的は何なのかということを少し考えることが必要なのではないかなと感じております。
 以上です。

【小川部会長】
 では、伊藤委員、どうぞ。

【伊藤委員】
 私は、3点大きく感じたことがあります。
 1点は、直原委員がおっしゃったことと関連して、どういう指導が必要かということは本当に大切だと思っておりまして、習得させるための仕組みが本当に大切だということの論議がなされておりますが、どういう指導が必要か、その指導の工夫・改善は当然大切なことだと思うのですけれども、家庭の学習時間が足りないというような調査をどうするかというような論議もありましたけれども、習得させるには、やはり学習時間の確保が大切だと思っています。学習時間は、家庭学習の時間だけではなく、高等学校での授業時数の確保とか、それから、授業以外での学習時間をきちっと確保させる、そういったことが大切だと思っています。併せて、指導の工夫が大切だと思っています。
 それから、2点目は、6ページの下の、全国規模の調査の仕組みの検討のところで、和田委員、渡邉委員、それから相川委員がおっしゃっていたことに付け加えますと、やはりその活用方法が大切だと私も考えます。学習して習得するという、そのものの目的意識を、学校としても、それから高校生にも、どう高めていけるのか、また、高めていけるようなものに活用できるといいと思っています。
 それから、3点目、私は、中学校ですので、前から中高の一層の連携が大切であるということはお話ししておりましたが、高等学校が、このような仕組みを基に、将来の夢や目的に向かって、日々学習やその他の活動に生き生きと取り組んでいて、習得すべきことをきちんと習得するというようなことが具現化することが、高等学校の取組を、また中学校としても、そのいいモデルとして、中学校教育の充実にもつなげられる、すばらしい取組ができていくことを期待していきたいと思います。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 小林委員、どうぞ。

【小林委員】
 コアの部分のところなのですが、5ページのところ、荒瀬委員も、総合的な学習時間のことについて、こだわった御発言がありましたけど、私も実はこのコアの教科・科目のところで一つこだわっているのは、明治以来、日本はものづくり国家で生きてきていまして、今後もそれでいくのだろうと思うのですけれども、ものづくりについて、きちんとした教えを実はかなり怠っていると私は思っています。
 先日、読売新聞で報道されましたけれども、教科「情報」が未履修になっているのではないかという報道がありました。これは各県等もいろいろ調査されていると思いますけれども、その情報という教科が、今、余りにも世の中の情報技術の進歩が早くて、高等学校の中で教える中では、もう本当に陳腐化している部分がたくさんあります。ここは、是非コアの教科、必履修教科・科目の中で、以前提案をさせていただきましたけれど、技術・情報科というような名前で、新しい内容に組み替えていただいて、是非明治以来の日本が頑張ってきたものづくりについて、全生徒が教えてもらえる機会を作っていただきたいと思っています。それによって、日本人の誇りというものを是非抱いて、グローバル化に対応した人間に育ってくれればと思っています。
 2点目は、これは98%の中学卒業生が高等学校に進学している段階のところで、評価について、一律に共通にという考え方は、国の審議会ですから、当然やらなければならないのでしょうけれども、現場を預かっていた人間として、目の前の定時制、通信制に通っている生徒たちに、果たしてこれはどうなのかというところは非常に危惧します。中学校卒業オール3である子たちを対象にするのか、その上なのか、その下なのか、これもまた随分議論が深まっていかないと、かなり厳しい現実が待っているのだろうなと思っています。多様化した高等学校の中に、先ほどもいろいろな意見がありましたけれども、共通に評価をする必要性は本当にあるのかどうかというところをもう一度お考えになった方がいいのではないかと思っています。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかに、どうでしょうか。今日は、いろいろな御意見を伺いました。ほかに、どうでしょうか。何かございますか。
 では、和田委員、そして、長塚委員ということでよろしいですか。

【和田委員】
 ありがとうございます。
 各委員から、総括的な形で御意見があったのですけれども、具体的な解決方法というようなところが乏しいということだったと思いますが、今までの審議の経過として、それは当然のことで、そういう具体的な内容、あるいは振興方策に関しては、別途、後ほどやるということになっていると思うんですね。ですから、この部会は閉じて、私を含めて、皆さんがまた選ばれるのかどうかは別として、この後の高等学校教育部会では、そういう、ここで決まったコア的なものを、どのように高等学校で実際的に身に付けさせるようにさせていくかという振興方策を含めて、あるいは、教師の向上に関しても議論が具体的になされていくことを期待しているわけでありまして、私としては、コアとして、こういうことをやはり身に付けなければいけないということのまとめと、そして、それをどのように評価するか、あるいは保証するかということに関しては、またこれから検討する必要があるというような形でまとめていただければいいのではないかなと思っております。
 私は、評価の方法とかは別として、むしろ具体的にこういうことに関して、前半でかなりグローバル教育だとか、キャリア教育だとか、いろいろなお話も出ましたし、具体的にそれをもっと推進していくための方法というのを、ここでお話が進んでいくことを期待しているところであります。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、長塚委員、どうぞ。

【長塚委員】
 少し繰り返しの部分もあるのですが、共通テストと言いましょうか、到達度が足りない生徒の把握ということで、私は、特に大学との関係でそういう問題が、認識があったというふうに思っていたものですから、今でも、高大接続特別部会の方で、それが中心になっているのだろうとは思います。私は、センター入試を8割方受けているということからすれば、その辺の改善からしていただきたいという思いがあるのですが。ここで今議論されているのは、基礎・基本の力ということで、どちらかと言えば、学力の最低保障というような、大学進学者とはまたある意味対極にあるような、最低の保障のところをどうするのかということの方に、そして、それを全国規模でやろうとしているという、そこに何か矛盾を感じているわけです。
 本部会としては、全国規模の調査の導入が必要との認識の下というように、7ページの一番上に書き込んでいますので、これは本当に本部会としてそういうことを、全国規模の導入が必要と認識したと言い切れるかどうか、ここは多少疑問があるなと感じております。
 結局のところ、そうだとすれば、全国一律の小中学校の学力調査のようなことを考える方がいらっしゃるとすれば、これはやはり行き過ぎだろうと思いますし、学力の最低保障というところでやれば、これはもう最初からそれを必要としない高等学校、あるいは生徒も多くいるだろうと思います。そういうことからすれば、希望ということが結構盛り込まれておりますので、そういうものを希望する高等学校や生徒が使用するというのであれば、現状でも、民間の様々な学力調査のようなものは、実は各学校単位で行われていたりしますので、そういうものを国の方で、あるいは、都道府県単位ではなくて、全体としてやるということは、ある意味、意味があるのかもしれませんが、結局、一律で全国学力調査のように、全ての生徒にということは、これは避けていただきたいです。また、必要性がないのではないでしょうか。
 入り口の段階で、高等学校の適格者主義は廃されたということで、この間ずっと議論していましたけれど、適格者主義が廃されたというのは、全体としての生徒の収容が、誰でも入れるようになったという数の問題でありまして、実際には入学者選抜が行われて、各学校別の適格者が問われて、入っているという実態があります。入り口の段階では、かなり調査はされています。そういう全体像がある中で、この最低学力保障のテストを全てが必要とするかというと、かなり疑問があるということを重ねて申し上げておきたいと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにまだございますか。では、小杉委員、荒瀬委員ということでお願いします。

【小杉委員】
 ありがとうございます。
 私も、フィードバックと言いますか、生徒に対してのフィードバックという部分が非常に大事だと思っています。この年齢になりますと、かなり幅があって、一律で同じものでという話は多分ないというのが、皆さんの認識だと思います。学校によって、多分、選択肢などがいろいろあって、それぞれの個性によって選択肢がいろいろあるというのが多分大事で、かつ、それが生徒にフィードバックされます。
 なぜ大事かというと、やはり勉強するって大事なんだよなと生徒に思ってほしいというのが一番の初めだったと思います。勉強なんかしなくてもいい、そんな学力なんて関係ないと思うのではなくて、やはり勉強して、思考力を付けて、判断力を付けて、表現力を付けるということが、世の中を生きていくのに大事なのだということを生徒に対してどう伝えるか。多分、そこが今回の、コアを何にして、こういうことは大事だから、それを伝えるという意味で、これをきちんと評価しましょう、外に対してもそれを発信していきましょうという話は、一番発信しなければならない相手は、生徒さんに対してだと思うのです。
 正にそれこそが将来の意欲につながることで、私どもで、ほかの調査で、労働市場にいる人たちに対して、自己啓発をしているかというようなことを調査して、それを多変量解析をかけて、一体何が自己啓発をするかしないかにかかってくるかというと、やはり学力がかかっていたという大きな発見もありまして、やはり勉強することが大事だということをしっかり伝えるという意味で、生徒へのフィードバックというものは絶対必要だなと思います。
 以上です。

【小川部会長】
 では、荒瀬委員、よろしくお願いします。

【荒瀬委員】
 今、小杉委員がおっしゃったことと全く同感でありますが、一つだけ加えるとすれば、高等学校教育について考えるというのは、高等学校の有り様といいますか、高等学校そのものの現状がどうのこうのということを考えようというのではなくて、これからの社会で生きていこうとする、今生徒と呼ばれている若者たちに、どういう力を付けるのかということが重点として置かれなければならないということを思っております。
 以上です。

【小川部会長】
 ほかに、よろしいですか。
 野上委員、どうぞ。

【野上委員】
 今回、コアの要素についてというところで、非常に関心が深かったのですけど、やはり、今は大変危険状態に産業界はありますけれども、戦後のゼロ状態からここまで、今日までの発展を顧みますと、その所産というのは、やはり教育にあったと思うのです。日本が持ってきた教育の結果、何が強みになっているかというところをもし欠落させてこの制度を作っていくとすると、問題だと思います。
 というのは、以前にも申し上げましたけど、日本の産業界、企業が持っている強さの中に、4ページの四角の中にも、他者への思いやりなんていうのがありますけど、企業ですから、もう少し、真面目さだとか、真摯さだとか、それから、具体的に言えば、例えば、期限がある、納期があるという時に、日本企業は必ず守っているわけです。あるいは、いついつまでにこの工事を完遂させるというのを守るからこそ、いろいろの地区で、例えば、イスタンブール、トルコでも、ドバイでも、最終的には日本企業に発注してくるものが多いわけです。では、それはどこで培われたかと言えば、やはり明治維新以降、その昔は知りませんから、戦後の教育の中に、その強みになるもの、例えば先生というのは、数学の先生でも、国語の先生でも、おそらく目の前に生徒がいたら、数学だけを教える、国語だけを教えているのではなくて、日々指導の中で、いろいろのことをやってきたことが今日の日本を作り上げています。
 強いて挙げれば、欠落しているのは、我々企業社会から見ると、人と討論する、議論する力であったり、あるいは、時にはディベートをする力であったり、というようなところが、ややもすれば日本の教育の中に抜け落ちていたところではないのかなということで、是非この議論の行く末が、一人一人の良さとかやる気を引き出すためのもの、それは日頃関わっている先生たちが日々やっていること、それでは変革の議論にならないのではないかということもありますが、それを無くしてしまった上で何かを求めるのだとすると大問題なので、日本教育が培ってきた良さ、空気のようなものをどういうふうにベースにして、この後、付加価値を付けていくかという議論にしていただければありがたいです。
 我々、教育界の人材輩出に大変感謝しているものですから、欠落している部分だけを申し上げました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 よろしいですか。では、最後、金子委員、そして、安彦部会長代理の方から御発言をお願いします。
 では、金子委員、どうぞ。

【金子委員】
 今日の議論を少し思い返していたのですが、1番目に申し上げたいのは、やはり多様化への対応のところが、少しまだ表現が不消化なのではないかと思います。これは、やはり文部科学省が今まで多様化政策を採ってこられたので、これに対して、どのような反省、見直しをするかというところ、スタンスに関わるところで、私はよく分かりませんが、政策的には微妙なところなのだろうとは思いますが、多様化政策はそれなりに意義があったとしても、今、この委員会ができているのは、やはりそこで出てきた問題について、一定の反省を加えようということだろうと思うので、ここのところのやり方が、余りに多様化を評価しすぎる言い方があります。
 それから、もう一つは、制度としての多様化と高校生の多様化というのが混同して使われているので、そこのところはどうも誤解を生むのではないかということです。多様化の推進というのですけど、制度的な多様化の推進をしている政策だと私は理解していないので、そこのところはやはり明確にしていただく必要があるのではないかと思います。
 2番目ですが、能力の問題は、先ほど申し上げましたけれども、整理が非常に難しい問題で、いろいろな議論が出てくるところではありますけれども、その能力の問題と、それから、そういった能力形成、それを何が作るのか、教科なのか、あるいは総合的な学習なのか、あるいは、高等学校全体としての中の行事とか、そういったものなのか、そういったものの対応関係が重要なのだというところを、一応述べてあるのだろうと思いますけれども、そこのところは、これからさらに議論する問題だということを、むしろ明確に、これからの問題として言った方がいいのではないかと思います。
 それから、3番目は、全国調査という言葉を使っているので、これはどうもいろいろな意味で解釈されて、少し誤解を生む可能性があり、全国調査というのは、必ずしも全国一律調査で、しかも一定の到達段階に達しているかどうかで合否が決まるとか、そういうふうにイメージされているのではないと思うのですが、よく読むとそういうふうに読めます。要するに、全国規模で、そのような質を判断するような仕組みを作るということだろうと思うので、これは必ずしもどこかで合否ラインがあるとか、同じ問題にするとか、一回しか受けてはいけないとか、そういう問題ではなくて、むしろ問題は、先ほどから議論がありますように、それを学習の目標にすることができるということだろうと思います。それに応じて、また学校の指導もできるというように、役に立つようなものにしていくというところが非常に重要なところなので、そういった観点をやはりもう少し強く正面から入れていただいた方がいいのではないかと思いました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、最後、安彦委員、どうぞ。

【安彦部会長代理】
 皆さんの御意見、いろいろ考えさせられるところは多いのですけれども、今、金子委員もおっしゃいましたが、この会がこのテーマでやり出したそもそもの発端というか、これはやはり今の高等学校教育の質を、これでいいのかという問い直しをしたかったからであって、そういう意味では、反省ということがありましたけど、そういうことをきちんとやってみたいという趣旨だったと思います。この点では、委員の先生方も異論はないのだと思います。
 前から申し上げているような、産業界、あるいは大学側から、今の高等学校教育はこれでいいのか、という問いかけがあることに対して、やはりきちんと答える必要があり、そういう意味で言うと、大学側からも、産業界からも、少なくともそういうことについて、よくやっているという声はなかなか聞こえないです。やはりそれなりにいろいろな面から御意見が出て、どちらかというと、高等学校教育はどれほどきちんとやっているのか、という不信の声、不信感の方が強く出ていたということであるわけです。
 産業界の代表の方からの御意見などは、ある意味で、もう少し高等学校側にストレートに言っていただく。大学側には、産業界の声が割合来る、例えば、コミュニケーション能力とか、今の異能異才とかとおっしゃるような、こういう話は、大学には割合来るのですけど、高等学校側になかなかいかないと言いますか、言ってみれば、そういう声を、例えば、こういう場で高等学校の先生たちに聴いてもらいたいという気持ちもあったわけであります。
 正直言って、産業界が表向き言っていることというのは、とにかくこういうグローバル化された産業構造、あるいは競争の中で、やはりそれなりに太刀打ちできるような人材が欲しいわけでありまして、これは決して単に大学修了者だけではなくて、高等学校の段階からそういう人材が欲しいということは、本音としておありになります。
 ですから、そういうことについて、もう少し高等学校の先生が意識していただけるならいいのですけど、高等学校の先生方は、結局、ほとんど国内の大学への進学とか、職業高校からの就職者の人数も多くないものですから、大勢としては、大学進学の方の意識が強くて、保護者もそうなのですけれども、そういう部分に対して、啓蒙するのではなくて、むしろ、それに従ってやることの方に流れていくわけです。
 そういう意味で、産業界は、ある意味では、個人レベルと公的レベルでは違うのかもしれませんけど、表向きは、それこそグローバル人材が欲しいと言っているのですけど、その言った人が、家に帰ったら、自分の娘や息子に、「お前、どこどこ大学は大丈夫か」みたいなことを言って、矛盾した態度をとっているのではないかと言ったりするのですけど、全体的な日本の求めているものに対して、高等学校が本気でそういう人材にしていこうということを、正直言って、本当に考えてくれているのかということなのです。
 改めて日本の将来云々と言われるのは、先ほど誰かから、産業界の声をもう少し、変化なども入れてほしいとおっしゃいましたけど、そういうことをもう少し具体的にと言うか、ストレートに高等学校側にも聞いてもらうという、そういうことがあってほしいです。
 その一つが、今、質の保証というようなことだったわけで、先ほどから言われている授業云々とか、細かい部分については、具体的なところについては、正にどなたかおっしゃったとおり、それ自体では議論もほとんどしていませんから、共通試験だとか、こういうことをやることが、そのまま質保証になるとか、質の向上になるとかになっていないというのは、正にそのとおりなので、これはあくまでも条件であり、手段であります。そういう意味では、目的でないとおっしゃった委員に全く同感でありまして、そういう意味で、先ほどから共通試験的なことについての疑念が出されているのはよく分かりますけれども、しかし、あくまでもそういう手段の一つとして、社会的な不信感を払拭し、そういう広く社会から求められていることに対して応えるという一つの姿勢を示さないといけない。これは前から申し上げていることだと思います。
 そういう意味で言いますと、正直言って、先ほど全高校生に共通に何かを求めるのは無理ではないかというお話を聞くと、そもそも、それでは、指導要領もだめなのか、共通必履修教科・科目を設けることもだめなのかというような、そういう議論にいってしまう危険、前から私は、そういうふうに言われると、一体高等学校の先生は高等学校教育の理念というのを持っているのだろうか、高等学校教育固有の理想というか、理念というものをベースにして教育活動をしてくださっているのだろうかと、つい思ってしまうわけですね。それで、前から言っているように、それだったら各種学校になってしまっても仕方がないような状況が生まれるのではないか。そうでなくて、やはり各種学校では困るという声は、これは皮肉ですけれども、保護者にあるわけですね。保護者は、やはり高等学校でなければならないというわけです。ですから、そういう意味で、もう少し、改めて高等学校でということの独自性と言いますか、それはやはりきちんと確保しないと、保護者も納得はしないはずだと思います。保護者にも言いたいことはありますけれども、改めて、そういうことも含めて、やはり高等学校としては、高等学校という学校種の持つ特性、それはやはりきちんと示す必要があります。
 私は前から、コアについては、あまり広げたくないし、レベルも高く設定しなくない、むしろコアのコアでいいという考えで、割合絞り込むことを言ってきましたけど、少なくとも、あまりいろいろなものをコアの中に入れると、今おっしゃられたようなことで、必要なものというニュアンスだけでいってしまうと、もうあれも必要、これも必要という、そういう観点になってしまいますから、それでは時代によっても社会によっても変わってきて、いろいろなものがあります。やはりもとのところというのは、人間の人間らしさのもとである言語能力とか数理能力と言うか、そういういわゆる読み書き計算のところの基礎の基礎の部分をやはり固めておく。それが最終的にその人の人間としての、いわば信用の基になっているわけなので、そういうことについて、やはり高等学校レベルで社会的に示すというようなことが最低限必要だろうと私は思っております。
 余りに多様性とかいうことを高校生のレベルで言われると、これは全くそうなのですけど、その時に、制度も、金子委員の言われたとおりに、それに応じて多様化する、多様性を保つということになると、一部の人が言うように、早くから選別、差別して、本来持っている可能性のある子を、もう少し別な方向で、あるいは、いろいろな形で発達させることというのを早くに諦めさせて、そして「君はこういう特性なのだから、こちらへ行け」というふうに、可能性を狭めてしまうという危険というのは、それは常にあるわけであります。改めて高等学校は、少なくとも各種学校とは違って、そういう可能性の部分については、むしろそれを担保して、保証してやって、そのレベルを高くしていく、可能性を広げていくということが一つの大きな狙いですから、そういう部分を、高等学校としては、やはりそれぞれの子供に対して責任を持って対処していこうということを示していただきたいです。
 そういうことも含めて、最低の条件、子供たちが自分の可能性を広げていける最低の条件を、何らかの形で、社会的にも信用される形で示すということが必要だということが根本です。ですから、この試験に、先ほどから言われているような、子供の意欲を喚起するとか、あるいは、教員の経営活動を促進させるとか、いろいろな機能を持たせることは何ら問題ないし、そういう方向でやっていただきたいですけれども、そもそものことは、私の観点では、社会的な信用を回復するということが一つあるわけであります。
 総じて、これから国がそれなりに、先ほど私学は別だとおっしゃいましたけど、そうだといたしましても、全体として、無償化その他で財政支援その他、条件整備等の支援をしていくという時に、やはりそれは何といっても、小中は少なくとも全国調査で、アカウンタビリティを示す形でやりまして、大学は大学で、どちらかと言うと、自己点検・自己評価で、もう20年近くもそういうチェックをして、社会的に信用を得ようとしてきました。高等学校はどうかというと、やはり少し抜けていると思うのです。その点は非常に自覚していただきたい。それは、いろいろな意味で、対社会的にそれなりの情報をきちんと示す必要があると思いますので、その情報が全てではないですけれども、一つの情報として、こういうものがやはり国としても必要だろうなと私は思います。
 全体として、高等学校教育の質を上げる条件として、いろいろあると思いますけれども、その一つとして、今も言われてきたような、そして、これまでの議論で進められてきたような、この方向性というのはやはり必要なことで、それなりに社会的に求められていると思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 今日はほぼ全ての方からの御意見をいただきました。ありがとうございました。
 この本部会の任期は1月末と決まっていますので、今日いただいたたくさんの意見について、全て最終案の文案の中に盛り込むと言うか、処理するということはなかなか難しいと思いますけれども、今日いただいた意見については、最大限生かせるように努力したいと思います。
 特に、コアをどう捉えるかとか、そうした点については、おそらく本部会の一つの基本的な方向とか確認ということはなかなかできないと思うので、少なくともコアをめぐる論議、論点については、やはりきちんと整理した上で、なぜそういうコアの議論が今日議論される必要性があるのかという、その意味とか、論点、争点みたいなところは文案のところには書き込んで、整理しておきたいと思っています。また1月になるかと思いますけれども、再度、その辺のところは皆さんでご確認いただければと思います。
 最後に、部会長の意見はなかなか言えないのですけれども、最後に一言だけ申し上げます。
 先ほど金子委員が述べられたことと、私も同じような感想を持ったのですけれども、全国規模の調査というような言葉が、やはり少し誤解されるイメージを作っているのかと思いますけれども、少なくともこの部会の中では、全ての高校生を対象にして、一律に強制的にするようなテストということは、ほとんどそういう意見はなくて、そういうようなことを前提にして議論してきているわけではないと思っています。
 あくまで基礎的な知識・技能とか、思考力・判断力・表現力等々の確認を必要とする。言葉はよくないかもしれないのですけれども、例えば、ある一定層の生徒を対象にして、そうした生徒が、自分の学習状況をきちんと確認していく、ないしは、学校側や教師が、自分たちの指導の結果をきちんと確認していて、次の生徒指導のフィードバックに使えるような、そういう高等学校の学習活動の一環として有効に使えるような、そういうことが必要な生徒や高等学校が、希望でもって任意的に選択的に活用できる試験という、大体そういうイメージで議論されてきたように思うのです。
 今日、最後のところで、あたかも全国規模の調査ということで、全ての高校生を対象にした、一律的な強制的な試験というようなことを前提にして、いろいろな疑義を出されていましたので、この点については、再度、1月のところで、事務局の方で論点を整理していただいて、最終的な確認ができればと思っています。
 最後、長塚委員が希望制であればというようなことをおっしゃっていますけれども、正にそういうテストに近いものかなと考えていますので、またこの点については、次回、御意見を伺えればと思います。
 では、最後、事務局の方から、次回の御案内をいただければと思います。

【塩原教育制度改革室長】
 次回高等学校教育部会でございますが、1月28日の月曜日、時間は13時から15時まで、場所は文部科学省3F1特別会議室での開催の予定となっております。また追って、開催通知により御案内をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【小川部会長】
 次回、おそらく最終回になるかと思うのですが、1月28日月曜日、1時から3時ということです。よろしくお願いいたします。
 少し時間をオーバーしてしまいましたけれども、これで教育部会を終わります。ありがとうございました。

―― 了 ――

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