高等学校教育部会(第14回) 議事録

1.日時

平成24年10月30日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省庁舎3階 特別会議室1

3.議題

  1. 高等学校教育の質保証について
  2. その他

4.議事録

【小川部会長】
 定刻になりましたので、ただいまから中教審初等中等教育分科会高等学校教育部会、今日で第14回目になりますけれども、開催したいと思います。お忙しい中、委員の皆様には御出席いただきまして、ありがとうございます。
 審議に入る前に、まず今日の配付資料について、事務局からお願いいたします。

【塩原教育制度改革室長】
 よろしくお願いいたします。
 本日の配付資料は、議事次第にお示しのとおりでございます。このうち資料3は、本日いらしていただいております宮城県からの提出資料、さらに、一番最後に、こちらは小林先生から御提供いただいておりますが、全国工業高等学校長協会からの提供資料と、本日併せて配付をさせていただいているところでございます。
 不足等ございましたら申し付けくださいますよう、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【小川部会長】
 資料そろっているでしょうか。
 では、これから議事に入りたいと思います。前回まで高等学校教育における「コア」について集中審議をしてきましたけれども、今日はこれまでの議論を踏まえて、高等学校教育における「質保証」の在り方について議論を進めていきたいと思います。よろしくお願いします。
 前回までの「コア」の議論においても、「コア」に関連した「質保証」に関する御意見も、委員の方から様々出ておりましたけれども、前回までの意見を踏まえて、その「コア」と「質保証」に関する論点等々を整理していただきました。今日は、まず配付資料1-1と配付資料1-2、この資料を使って、まずは「コア」と「質保証」のテーマについて議論していきたいと思います。
 また、その後に引き続き、前回、和田委員から御質問があったと思いますけれども、高等学校の生徒指導要録の所見欄の変更と、現在の高等学校の学習指導に関して、これについて事務局で資料を整理していただきましたので、それは資料2-1、資料2-2ですけれども、これも「コア」と「質保証」の資料の説明の後に、事務局から引き続き御説明をいただきたいと思います。
 では、まず事務局から、よろしくお願いいたします。

【塩原教育制度改革室長】
 それでは、本日「コア」と「質保証」の関係につきまして御議論をいただきますに当たり、事務局から数点資料を用意させていただいております。まず資料1-1、資料1-2を中心に御説明を差し上げたいのでございますが、その前にもう一つ、前回の御議論でいただきました主な意見につきましては、資料4で、事務局でこれをまとめさせていただいております。ざっとおさらいでございますが、資料4を御覧いただければと存じます。
 前回の部会でございますが、特に高等学校教育における「コア」とは何かという観点につきまして、集中的に御審議をいただいております。御審議では、「コア」に含めるべき能力の具体的な要素につきまして、例えば1のアにいろいろ出されておりますように、様々な御指摘をいただいたところでございまして、そこで御指摘をいただきました、そういった能力、力の要素といったものにつきましては、例えば学力の要素としての基礎的な知識、思考力、判断力、表現力、学習意欲、態度などのほか、さらには、クリティカルシンキングの力、プレゼン力、ディベート力、コミュニケーション力、ものづくり力、さらには、公共心、倫理観、思いやりといった人間性の部分にわたるまで、幅広い要素を含めるべきだとの御指摘もいただいていたところでございます。
 一方でございますが、今度はイでございますが、「コア」として指し示す範囲につきましては、イにありますように、求める能力全てを取り込んでいくということではなくて、むしろ全ての生徒が最低限共通してできる内容をスタンダードに限定して、例えば教科の中で最低限教えなければならない知識やスキルとは何かを絞り込んだ上で、これを「コア」として示していくべきだ、そういった観点からの御意見もいただいていたところでございます。
 さらに、「コア」の範囲については、2ページ目になりますが、ウにもございますが、評価との関係、様々な能力をどれだけ身に付けたかという評価との問題とも関連しまして、ウにあるような複数の意見をいただいていたところでございます。すなわち一つには、「コア」は全ての生徒に共通して最低限修得させるべき内容であって、高等学校側がその修得を確認できるような、評価できるようなものでなければならないという、そういった御意見がある一方、片や公共心や倫理観といったものについては、これは点数にはできないけれども、やはり教員が判断して評価していけばいいのだ。ないしは、高校生に身に付けさせるべき内容が「コア」であって、評価できるものに限定すると、その数が少なくなり過ぎてしまって、これからの高等学校教育がそれだけでいいのかといったことについて疑問がある。
 さらには、基礎的な知識は試験等で把握できるが、思いやりの心や奉仕の気持ちを育てることには点数が付けられない。しかし、高校生にはそういったものも身に付けさせていかなければならないのではないのかといったように、評価しにくいものについても重要なものがあり、それらは身に付けさせなければならない「コア」に含めるべきだといった立場からの御意見もいただいていたところでございます。
 こういった様々な御意見を踏まえまして、「コア」の範囲については、評価をはじめとした「質保証」との関係を改めて考えて、その中で整理していった方がいいだろうというのが前回までの御議論であったと認識しております。
 そこで、本日は「コア」と「質保証」の関係について整理していくための議論の材料といたしまして、資料1-1、1-2の2点をお示しさせていただいているところでございます。まず資料1-1を御覧いただきたいと存じます。資料1-1は、前回までにいただいていました様々な意見の全体を、おおむね見取り図的にお示しをさせていただいたものでございます。この資料、左から右の方に順に目を落としていただければと存じますが、まずこれを「コア」と呼ぶべきかどうかということは別といたしまして、高等学校教育を通じて身に付けさせる力とは何かということを考えていくとすれば、そのベースには「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」、学校教育法で教育目標として位置付けられたこれらの力がベースになるのではないか。
 また、そのうち学力については、学力の3要素とも言われます基礎的な知識・技能、思考力・判断力・表現力と学習意欲・態度、これらがベースになるということではないかということが1点でございます。
 さらに、各委員から御指摘をいただいておりました、例えばコミュニケーション能力、主体的行動力、様々な力でございますが、こういった力につきましても、確かな学力や豊かな心等の要素になるものであり、そのうち特に、例えば高等教育への接続の観点から重視すべき力ということに視点を当てれば、説明する力、議論する力、批判的、合理的に考える力などが、さらには、社会・職業への円滑な移行に必要な力、市民性といったところに視点を当てれば、自己理解・自己管理能力や主体的行動力、人間関係形成力などが含まれるということになるのではないかということでございます。
 その上で、これらの力の中には評価の対象としやすいものと、そうでないものがあると考えられるであろうということでございます。例えば、基礎的な知識・技能でございますとか、思考力・判断力・表現力等の中の一部分につきましては、例えば筆記試験でありますとか実技試験等によって、客観的な評価をしやすい面が強いのではないのか。一方、意欲・態度でありますとか、心の面、様々なその他の能力等につきましては、学力のように点数等で評価しにくい面があるわけでございます。
 これらを踏まえて、本日特に御審議をいただきたいのは、この資料の真ん中の上のところ、吹き出しの囲みの部分でございますが、全ての生徒が共通して身に付けるべき「コア」については、その範囲をどう考えるのか。また、その修得状況を把握して質保証を図る仕組みをどう考えていくのかということでございます。
 例えば「コア」の範囲というのは、この見取り図の中の全体にわたることになるのか、その一部に絞っていくべきなのか。また仮に一部に絞るとした場合には、「コア」以外の能力の評価や質保証ということは考えなくていいのか。また、「質保証」という場合に、評価しやすいものと、それ以外のものそれぞれについて、どのような仕組みが考えられるか、こういったことが論点になっていくものだと思っております。
 これが資料1-1でございますが、そういった御議論いただきたい点につきまして、さらに、本日材料といたしまして、論点メモとしてまとめさせていただきましたのが資料1-2でございます。こちらの資料1-2を御覧をいただきたいと存じます。まず論点の一つ目でございますが、「1.「コア」の範囲と「質保証」についての考え方」についてでございます。まず(1)は「コア」の範囲と評価の関係に係る基本的な論点でございますが、高等学校教育で身に付けさせる様々な能力等の領域のうち、どの範囲の領域を「コア」の要素を含む領域として捉えるかという問題でございます。
 その下、括弧で一つ付言をさせていただいているところでございますが、学習指導要領では、「高等学校とは何か」ということを学習内容の面から示すものとしては「必履修教科・科目等」を設けているという、教育課程についての整理では、このようなことになっているわけでございまして、この点につきましては資料1-2の4ページを御覧いただければと存じます。
 平成21年度学習指導要領改訂の際も、高校生に最低限必要な知識、教養の幅を確保する、そういった観点、共通性をどう担保するかという観点も含めまして、指導要領改訂に向けた様々な検討が行われてきまして、その成果が今回の21年学習指導要領改訂であったわけでございます。この改訂の基本的な考え方といたしましては、そうした共通性と学校の創意工夫を生かすための裁量、生徒の選択の幅の拡大という、共通性と多様性のバランスをどう図るかという、この両面に配慮しながら改訂の検討がなされたわけでございまして、その結果が、この下に書いてあるとおり、21年改正における必履修教科・科目、さらには、共通必履修科目等の設定ということでございました。
 その内容について御説明をさせていただきますが、まず高等学校における教科・科目等の構成全体でございます。これは従前から大体はこのような構成でやってきたわけでございますが、まず高等学校における教科・科目と教育課程につきましては、大きくは教科・科目、総合的な学習の時間、特別活動、これらは全ての生徒が必要時間履修をして、そして高等学校を卒業していくというわけでございます。
 こういった教育課程全体を通じまして、知・徳・体の幅広い能力を伸ばすということが高等学校教育の全体ということでございますが、このうち特に教科・科目の構成につきましては、1の丸1、丸2、丸3と三つの柱になっておりますが、この教科・科目、一つは必履修教科・科目、さらには、その外にあります必履修教科・科目以外の科目、これは各学科に共通する教科・科目のうちの必履修教科・科目以外の教科・科目。さらには、それぞれの学校が学校生徒の実態、学科の特徴等に応じて独自に設定いたします学校設定教科・科目。こういった3種類の教科・科目からなっているわけでございますが、このうち必履修教科・科目に当たるものというのが、これが高校生で最低限必要な知識・技能と教養の幅を確保するという共通性を担保する部分という形で、教育課程につきましては整理がなされているわけでございます。
 必履修教科・科目につきましては、前回の学習指導要領以前から設けられていたものでございますが、ここにつきましては、前回の改訂に当たっての検討を進める中で、改めてその位置付けといたしまして、全ての生徒が履修するこの必履修教科・科目につきましては、高等学校とは何かということを、学習内容の面から国が示したものに当たるのではないかという考え方の整理がなされているところでございまして、具体的には、次の5ページでございますが、国語、地理歴史、公民、数学、理科、保健体育、芸術、外国語、家庭、情報にわたります10の教科の中で、5ページの表の中の必履修科目という欄のところの丸印がついているところでございます。
 例えば地理・歴史のようなところにつきましては、世界史A、世界史B、二つの中から一つとか、日本史A、B、地理A、B、四つの中から一つ、選択的な必履修科目もあるわけでございますが、いずれにいたしましても、10の教科につきまして、必ず何らかの教科・科目を履修させるということ、この丸のついているところの科目を履修させるということが必履修科目の考え方でございまして、全ての生徒に履修させることが前提となっているわけでございます。
 ただし、様々な選択も含めた必履修科目の中から、さらに、本当に核となる部分というのは何なのか、高等学校を通じて身に付けさせる能力の中の一番の核となる部分が何なのかということについての議論も、今回改訂の議論の際に行われまして、その中から、初めて設定されたものといたしまして、必履修教科・科目の中に、共通必履修科目というものを今回設定しているところでございまして、具体的には、5ページの赤い字の科目でございますが、国語総合、数学1(ローマ数字)、コミュニケーション英語1(ローマ数字)、この3科目を位置付けたものでございます。
 これは学習の基盤であり、広い意味での言語を活用する能力ともいうべき力を高める国語、数学、外国語の必履修科目については、全ての高校生が共通に履修する科目ということで、こちらにつきましても選択の余地なく必ず履修するということを位置付けているわけでございまして、これにより高等学校の教育課程の共通性を更に高めたというものが、今回の改訂の考え方でございました。
 以上が今回の改訂の考え方でございますが、その中で、これら教科・科目と「コア」との関係はどうなるのか。若干乱暴に言わせていただければ、高等学校とは何かということを表す必履修教科・科目と、皆が履修します総合的な学習の時間、特別活動、こういったものの範囲と「コア」の範囲というのが重なるとおおむね言っていいのか、それとも、いわば「コア」中の「コア」とも言うべき共通必履修科目、国語総合、数学1(ローマ数字)、コミュニケーション英語1(ローマ数字)、この部分がその「コア」中の「コア」と言うべき本当の核であって、本部会が示す「コア」というものについては、どの部分を打ち出していくのか、こういったことが学習指導要領、教育課程の考え方との関連も含めまして、今回御議論いただきたいと思っているものでございます。
 もう一度1ページに戻っていただきますが、「コア」の範囲につきましては、1の真ん中の少し上でございますが、一つは論点を具体的に言いますと、アスタリスクマークの上でございますが、学校教育法が高等学校教育の目標に掲げている「確かな学力」、「豊かな心」及び「健やかな体」との関係でどう考えていくのか。「コア」の要素を含む領域は、これら知・徳・体の要素のいずれにも及ぶと考えてよいのかということが、まず一つの範囲について考える際の論点であるかと思いますし、また、もう一つ、これは先ほどの評価の関係のところでの論点でございますが、筆記試験や技能試験等による客観的な評価の対象としやすいもの、それ以外のもの、様々な領域がある中で、どの部分を「コア」の範囲として考えていくのか。これらが「コア」の範囲についての考え方を整理していく際の論点となり得るかと思っているところでございます。
 続きまして、もう一つ進めまして、「コア」の範囲と「質保証」の方向性、とりわけ評価との絡みに鑑みて整理をしていった場合に、こういう考え方はできないかという二つの整理の考え方の例をお示しさせていただいておりますのが、2ページの(2)上の部分でございます。これまでの議論を踏まえて、「コア」の範囲と「質保証」の方向性については、例えば、いずれかの考え方により整理できないかという形で、一つの考え方でございますが、考え方の1は、「コア」の範囲はAの評価の対象としやすいもの、及びBのそれ以外のものの双方の範囲にわたるものと捉えて、Aの基礎的な知識・技能、課題解決に必要な思考力、判断力、表現力等については、客観的な技能検定、学力試験、筆記試験等による評価の取組を進めるとともに、その他の要素についても評価の妥当性の確保や信頼性の向上に向けて調査研究を進める。A、Bの両方にやはり目を配った上で、両方の質保証を考えていこうという考え方が、考え方の1です。
 そして考え方の2につきましては、やはり「コア」の範囲というのは、評価との絡みも含めましてある程度絞り込んで考えていくべきであり、評価の対象としやすいAの範囲のみにとどまるものと捉えて、その上でAの範囲に当たります学力等の内容につきましては客観的な評価の取組を進めていく。このような二つの考え方と大きく整理ができるかと思っております。
 その上で、さらに、今後の「質保証」に向けた仕組みの在り方でございます。考え方の1をとるのか、2をとるのかということもございますが、いずれにしましてもAのような基礎的な知識・技能等、評価になじみやすいものと、Bのその他の幅広い能力等につきまして、どのように「質保証」に向けた仕組みを作っていくことがあり得るかということが、もう一つの論点としてあるかと思っております。
 まず、Aに当たります基礎的な知識・技能等の部分でございますが、これらにつきまして今後更に客観的な評価の取組を進めていくとすれば、どのような仕組みによりこれを進めていくかということを御議論いただければと存じます。この点につきましては、例えば本年8月に本部会でおまとめいただきました課題の整理と検討の視点におきましても、「質保証」の考え方の論点といたしまして、幾つか視点を示していただいているところでございまして、この中でも、達成度を測る仕組みや指標としてどのようなものが考えられるか。例えばその例として、各種検定試験の活用、共通テストの実施・活用等といったことが考えられる内容としてあり得るのかもしれないと、そういった例示をお出しいただいていた経緯がございます。
 また2ページの2の(2)でございます。その他の幅広い能力等についての質保証でございますが、こちらについてはどう考えるのか。これらの能力等につきましても、評価の仕組みの充実のために評価の妥当性の確保、信頼性の向上等の課題に対応していくとすれば、どう対応していくのか、こうしたことが論点になっていくかと思います。この点につきましても、本年8月の課題整理におきまして、例えば評価達成の仕組み、指標として、そうした測るための様々な指標例を提示していくこと、様々な幅広い能力等につきましても測っていくため、評価の客観性を上げていくための様々な指標開発のようなことも、今後のとり得る方策としてあるのではないかといった視点をお示しいただいていたところでございます。
 さらには、前回和田委員からも御指摘いただきましたが、指導要録の様式等の中では、幅広い能力についての記載部分が従前ございまして、この変遷等につきまして、前回御質問いただいたところでございます。指導要録をどう活用していくかということも含め、幅広い能力の評価の部分等について論点があり得るかと思っているところでございまして、引き続き指導要録の扱い等々につきまして、教育課程課の方から御説明させていただければと思っています。
 以上でございます。

【大金教育課程企画室長】
 教育課程課の大金でございます。引き続きまして、資料2の関係でございますが、今お話がございましたように、前回の部会における和田委員からの御質問を踏まえ、指導要録の所見欄の変更の経緯に関する説明をさせていただくとともに、併せて、現在の高等学校における学習評価につきまして、説明をさせていただければと思います。
 まず、高等学校における学習評価につきまして、資料2-1を御覧いただければと思います。最初に、「学習評価の意義・目的」ということについてでございます。一つ目の白丸のところでございますが、新しい学習指導要領に対応した学習評価の在り方について取りまとめました、平成22年3月の中教審・教育課程部会の報告書では、学習評価の意義ということにつきまして、学習指導要領が指導の面から全国的な教育水準の維持向上を保障するものであるのに対し、学習評価は生徒の学習状況を検証し、結果の面から教育水準の維持向上を保障する機能を有するものであるということが言われているところでございます。
 あわせて、二つ目の白丸のところでございますが、今申し上げました教育課程部会の報告書では、指導と評価の一体化ということで、学習評価を通じて学習指導の在り方を見直すことや、個に応じた指導の充実を図ること、学校における教育活動を組織として改善することが重要ということも言われているところでございます。
 また、三つ目の丸でございますが、平成21年に改訂されました新しい学習指導要領に対応した学習評価におきましても、きめの細かい学習指導の充実と、生徒一人一人の学習内容の確実な定着を図るため、教科・科目の目標に照らして、その実現状況を評価する目標に準拠した評価や、観点別学習状況の評価を引き続き実施することとしているところでございます。
 次に、生徒指導要録における学習評価のポイントについてでございます。生徒指導要録とは、「児童生徒の学籍並びに指導の過程及び結果の要約を記録し、その後の指導及び外部に対する証明等に役立たせるための原簿」でございます。指導要録につきましては、学校の設置者が様式を決定し、各学校が指導要録の作成を行うものでございますが、文部科学省では設置者や学校の参考となりますように、学習評価を行うに当たっての配慮事項や、指導要録の作成に当たっての配慮事項、指導要録の参考様式などを通知により示しているところでございます。
 資料2-1の「生徒指導要録における学習評価」の記述は、文部科学省が配慮事項等として示している内容のポイントをまとめたものでございます。なお、資料2-1の4ページ以降に、文部科学省が示しております高等学校の指導要録の参考様式を添付させていただいております。
 まず、「各教科・科目の評定」についてでございます。参考様式では資料2-1の6ページでございますが、これにつきましては、指導要領に示す各教科・科目の目標に基づき、学校が地域や生徒の実態に即して定めた当該教科・科目の目標や内容に照らし、その実現状況を総括的に評価すること、そして、評定に当たっては、知識や技能のみの評価など一部の観点に偏した評定が行われることのないように、「関心・意欲・態度」、「思考・判断・表現」、「技能」、「知識・理解」といった観点による評価を十分踏まえながら評定を行っていくこと等を示しているところでございます。
 ただ、小・中学校と異なり、高等学校の指導要録の参考様式には、観点別学習状況の記載欄は設けておりません。これは先ほど申し上げました、平成22年3月の中教審・教育課程部会の報告書において、「生徒の特性、進路等に応じて多様な教育課程が編成されていることや、高等学校の指導要録の現状を考慮して、大枠のみを示すというこれまでの基本的な考え方を維持する」とされたことを踏まえたものでございますが、この教育課程部会の報告書では、設置者である都道府県教育委員会等において、指導要録に観点別学習状況を記載できるようにすることも有効な手段である、ということも示されているところでございます。
 次に、資料2-1の1ページの中ほど、「総合所見及び指導上参考となる諸事項」についてでございますが、これは参考様式では資料2-1の7ページの中段でございます。これにつきましては、生徒の成長の状況を総合的に捉えるため、資料に記載させていただいております①から⑦までの事項等を文章で記述するということをお示しさせていただいているところでございます。
 次に資料2-1の2ページを御覧いただければと思います。ここでは「参考」といたしまして、各教科における生徒の学習状況を分析的に捉える観点別学習状況の評価について書かせていただいております。資料の中ほどでございますが、新しい学習指導要領に基づく観点につきましては、「関心・意欲・態度」「思考・判断・表現」「技能」「知識・理解」と整理し、各教科等の特性に応じて観点を示しているところでございます。
 また、2ページの下の方でございますけれども、学校教育法で新たに規定されました学力の三つの要素との関係では、基本的には、「基礎的・基本的な知識・技能」については、「技能」及び「知識・理解」において、そして、「課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等」につきましては、「思考・判断・表現」において、「主体的に学習に取り組む態度」につきましては、「関心・意欲・態度」において、それぞれ評価を行うこととして整理をさせていただいているところでございます。
 観点による評価を行うに当たっては、それぞれの科目のねらいや特性を勘案して評価の在り方を工夫するとともに、評価方法についても、学習活動の特質や生徒の発達の段階等に応じて、様々な評価方法の中から、その場面における生徒の学習状況を的確に評価できる方法を選択していくことが重要でございます。
 次に、資料2-1の3枚目を御覧いただければと思います。ここでは、文部科学省が平成21年に実施しました学習評価に関する意識調査の結果のうち、高等学校関係のものを幾つかお示しをさせていただいております。高等学校における学習評価につきましては、例えば、県内全ての県立高等学校において観点別学習状況の評価を積極的に推進している例なども見られますが、一方で、この意識調査の結果を見ますと、例えば、「いわゆる4観点の評価は実践の蓄積があり、定着してきている」と感じておられる高等学校の先生が約41%にとどまるなど、観点別学習状況の評価が定着している小・中学校とは、高等学校は状況が異なることがうかがえるところでございます。
 次に、資料2-2を御覧いただければと思います。前回の部会での和田委員からの御質問を踏まえまして、指導要録において、以前は「公共心」や「社会性」などを評価する欄があったが、現在はそうした欄がなくなっていることの経緯についてまとめさせていただいております。資料2-2の左下に、昭和56年改訂の指導要録の様式例を掲載させていただいておりますが、和田委員から御指摘をいただきましたように、従前は「行動及び性格の記録」欄の中で「公共心」や「社会性」などの10の評価項目を示しまして、3段階で評価を行っておりましたが、平成5年の指導要録の改訂で所見欄の変更が行われたところでございます。
 その経緯、趣旨等についてでございますが、資料の2-2の1にございますように、平成5年の指導要録の改訂では、生徒一人一人の特性を多面的・総合的に評価し、個性の伸長に役立つようにすることを基本方針の一つとして挙げておりまして、指導要録における評価につきましても、こうした点を踏まえたものとするよう改訂が行われたところでございます。
 こうした改訂の趣旨の下、2でございますけれども、従前の様式例では細分化されておりました「行動及び性格の記録」欄、「進路に関する記録」欄などにつきまして、「特記事項」欄というものを改めた「指導上参考となる諸事項」欄に統合いたしまして、生徒の特性を総合的に一括で記録することとしたところでございます。
 これまで「行動及び性格の記録」欄の中にありました、「自主性」や「公共心」といった10の評価項目につきましては、高等学校段階の生徒の多様な実態に鑑み、全国一律の評価項目によって3段階で評価するよりも、むしろ自由に記入した方が生徒の特性を把握する上でより適切ではないかということで、平成5年改訂の指導要録の様式例からは評価項目を示していないということでございます。
 資料2-1、2-2の関係につきましては以上でございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 時間が少し長くなりましたけれど、これから資料1、資料2に基づいて、「コア」と「質保証」に関わる議論をしていきたいと思います。先ほど説明しましたように、前回までの「コア」をめぐる論議に関しては、皆さんからいろいろな御意見をいただきました。そうした「コア」をどう捉えるかという様々な御意見を整理したものが、資料1-2の2ページのように、考え方1、考え方2と二つの立場に一応整理した上で、それに対応して評価の在り方、「質保証」の在り方について論点整理をしております。
 この線に基づいて、これから3、40分、皆様から御意見を伺った上で、その後にその議論を一旦休止して、今日、宮城県教育委員会から、宮城県では高校1年生、2年生を対象にした学力調査を県の責任で行っているということですので、そうした取組を紹介していただいた上で、再度「コア」、「質保証」の問題について、宮城県のそうした取組を踏まえつつ、少し意見を交換してみたいと思います。そのように、この後進めさせていただきたいと思います。
 では、資料1、2に関して、「コア」の捉え方、またその評価、「質保証」に関わるテーマについて少し御意見をいただければと思います。
 荒瀬委員どうぞ。

【荒瀬委員】
 ありがとうございます。前回欠席しまして、1枚ものをお出しさせていただいたのですが、議論を戻す気は全くありません。資料1-2の2ページで申し上げますと、私は考え方の1をとるべきではないかと思います。現在の高校生が卒業する段階で、どういう力が付いていて、どういう力が付いていないのかということを考える中で、この議論は進めていくべきだろうと思います。
 ですから、評価の対象としやすいものの範囲にのみとどめるというのは、それは高校教育の課題の把握という点で問題ではないかと思います。
 また、既にキャリア教育というのが新しい学習指導要領の大きな柱になっていて、そういったことも踏まえて考えますと、これらは高等学校の3年間で身に付けるべきものとは言いながら、初等中等教育全体でもって、最後の3年間を高等学校教育が担うということを考えなければなりません。よって、考え方1の、評価の対象としやすいものとともに、評価の対象とはしづらいけれども、先ほどの指導要録の御説明でもありましたように、やはりそこのところを言葉でもってやっていくということも大切なことでありますので、是非この考え方の1でもって議論を進めていただければと思っております。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 他にどうでしょうか。小杉委員、どうぞ。

【小杉委員】
 ここしばらく欠席いたしまして、戻すつもりはないのですが、前のことも含めて、私も少しだけコメントさせていただきたいと思います。私も基本的には考え方1の方に賛成です。私は「コア」のものが「質保証」イコールだと思えないのです。質として保証すべきというような、測れるようなものと、「コア」としてやるべきことというのは若干違っていいのではないか。
 つまり、測れないものも「コア」に入っている。そこの中で、資料1-1で示された真ん中の緑色の円になった部分、このような部分というのは「コア」であるけれども、「質保証」として何らかの水準で保証すべきものなのか。「コア」として育てるべきものであるけれども、これはこの水準といって「質保証」そのものにつながるものではないと思うのです。という意味で、「コア」と「質保証」というのは若干ずれた部分があるのではないか。
 少し前の方で、多分既に終わったことなのでしょうけれど、あえて一言、この緑の中にもう一つ入れてほしいものがあるということだけ、しばらく欠席した人間として、少しだけ言わせていただくと、いつの、どこにでもいるのです。今の18歳の人たちが労働市場に出ていくとなると、やはり決定的に欠けているのが現在の労働市場の中で生き抜く力なのです。つまり、労働社会に対する知識と、それを具体的に自分の義務あるいは権利をきちんと守るための能力というものが、かなり欠けている状態があって、これがないと個人の人権が守れないと思っております。そういう意味で、できれば勤労観とか、あるいは社会の一員として参画する意識、態度と並んで、労働社会に対する知識と、それを活用する、正に知識と思考力・表現力・判断力でそれを活用するというところのテーマになると思いますけれども、労働社会に対する知識、労働に関する権利、義務というようなことを、是非「コア」として必ず高校時代に身に付けてほしいと思います。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかに、いかがでしょうか。金子委員、どうぞ。

【金子委員】
 すみません、今、ちょうど「コア」に関する議論がだんだん深まっていくところで、少し腰を折ってもいけないのですけれど、その前に少し基本的なことについて事務局に伺いたいのですが、「質保証」が問題になっているわけですけれども、ここで言っている「質保証」というのは、主体はどこであって、どういう結果を予想したような「質保証」なのか。例えば大学の場合の「質保証」というのは、設置基準に照らして設置審議する。それから認証評価機関による認証評価という形で二重になっているわけでありますけれども、一応独立の組織を作って、これ自体も多少曖昧なところはあるのですが、比較的アメリカの適格認定制度に似ているもので、中間団体があって、それを介して質的保証をするという考え方になっているわけです。
 これに対して、義務教育においては、対応する教育委員会が質の保証をするという義務を負っているのだと思うのですが、高等学校については、形式的には多分都道府県の教育委員会が、ある程度責任を負っているのだろうと思うのですけれども、ただ具体的にはかなりここには問題があるところがあって、この場合、必ずしも内容的な質ではなくて、むしろそれ以前に、かなり物理的な施設・設備に関わる「質保証」についても、実はかなり法的な仕組みが、私はどうもよく分からないところがあって、特に特区でもって市町村が設置する高等学校なんていうものができていて、ここに関してはどこが監督する権限があるのかよく分からないわけです。
 それで、一般的に私は高等学校に関しても、適格認定のような制度を将来は作るべきだと思うのですけれども、アメリカなんかは適格認定制度をむしろ高等学校から始めているわけです。問題は「質保証」というのを、内容はこういうものがあり得て、やる必要があるということは十分に理解するのですが、制度的にどのようなものをイメージして、ここで言っておられるのか、それを少し伺っておきたいと思います。

【小川部会長】
 今のテーマ自体は、この部会の論議のテーマでもあるかと思うのですけれども、まずは事務局に少しお伺いしたいという御質問ですので、いかがですか。

【塩原教育制度改革室長】
 金子先生御指摘の点、例えば大学分科会の方で御議論いただいています「質保証」、高等教育の質保証等という場合の「質保証」と、この高等学校部会の「質保証」という場合、若干ニュアンスを異にするところがあるかと思います。高等教育分科会、基本的には国が設置認可を行って、さらには、評価等の仕組み、アクレディテーションの仕組み等も入れながら、高等教育そのものの質保証をどうやっていくのか、国際的なそういった信任みたいなものもどう維持していくのかといった議論も、高等教育の方ではございますが、高等学校教育につきましては、例えば高等学校、多くは県立の部分が担っているわけでございますが、設置認可の仕組み等が直接入ってくるわけではないという、そういったもともとの前提の違いもある中で、基本的には少し限定的に「質保証」を考えて、今議論をいただいているところでございまして、教育の活動の質がどのように水準として担保されていくのか、そして、それによって生徒が身に付ける能力について、どれだけ対外的にその生徒の能力を保証していくのかというところ等々が、私どもの関心事項として今御議論をいただいているところでございまして、例えば設置認可ないしは適格性の確認等のところまでは、直接の視野には入れない形での検討をいただきたいと思っている、そういうところで今、スタートをさせていただいているところでございます。

【小川部会長】
 金子委員の質問の意図に答えていただけているかどうかを含めて、どうですか。

【金子委員】
 意図として分かるのですが、ただ制度的に、やはり私はまだ不備と言うか、必ずしも完全でないところがあると思います。
 例えば、机の上に高等学校学習指導要領が出ていますが、学校教育法施行規則85条を見ると、教育上の目的がある場合には、かなり柔軟に教育課程を解釈してもいいというような条項が入って、それは文部科学大臣が認可することになっているのです。でも、本当に文部科学大臣がそれを監視すると言うか、評価するのかどうかというと、私は多分していないのではないかと思うのです。
 そういう意味で、これは少しつまらない話を持ち出しているようですが、特に教育課程の柔軟な使い方とか、これから問題になってくるのは、例えば、非常に基礎的なジェネリックスキルみたいなものと教科との関係を考えるという場合には、そういった点を少し教育要領の解釈を柔軟にしなければいけないということも考えられてくるだろうと思うのですが、それを文部科学大臣が直接に監視することは、少しあり得ないわけで、何らかの評価のメカニズムが多分必要なのではないかと思うのです。そこらの何かイメージがないと、今、質保証をどうすれば、何をすればいいのかと言われても、具体的に何をどこがどういう責任を持って、どういう目的であるのかということのイメージがないと、少し議論しにくいのではないかなと思う。私の意図は、そういうことなのです。

【小川部会長】
 正に今のテーマは、この部会のテーマでもありますので。
 では、事務局から何かありますか。

【布村初等中等教育局長】
 今、金子先生から御指摘いただいた学校教育法施行規則85条ですが、教育課程の基準、学習指導要領を文部科学省が定めております。その特例のカリキュラムを組みたいときには、文部科学省に相談してくださいという限りのシステムで、先ほどの大学の評価の方は、高等教育機関たる大学、短大の組織への評価のシステムと受け取ったのですけれども、今回ここで「コア」と「質保証」の議論は、一人一人の生徒が高校3年間でどこまで修得できたのか、そこの「コア」たるものと、それをどう評価するのかというので、機関の評価と生徒に対する評価と、少しシステムとして違うもので、高等学校そのものの評価は、制度として自己評価、あるいは学校関係者評価という制度は別途あります。
 これで逆に混乱するのかもしれませんけれど、私はそのような理解をしているのでございます。

【金子委員】
 ただ、個々の生徒に対する「質保証」というのは、本当に可能ですか。私は、一定のインプットを与えることは可能でしょうけれども、最終的な学力ないし獲得した資質について、全ての生徒について、本当にそれを保証することができるのかどうか。これは要するにインプットなのか、それともアウトカムで評価するかですが、アウトカムでもって本当に評価して、しかもそれを「質保証」と考えているところは非常に少ない。
 やはりそういう機会を与えて、それだけの条件を与えている、そういうところで保証は行われる。あるいは、それによってどういう学力ないし資質の変化が起こったのか、成長が起こったのかということを十分把握しているというところにおいての「質保証」は可能であるかもしれませんが、それはしかし機関がやるべきことであって、個々の生徒について完全に把握するという意味での保証ではないのではないかと思うのですけれども。

【小川部会長】
 今の往復しているような議論というのは、正に「質保証」の仕組みをどう今後詰めていくかという議論に関わっていくことですので、おそらく次回以降、議論を進めていく際には、そうした議論が当然議論の土俵に上がってくる問題だと思いますので、それは少し引き取らせていただきたいと思います。
 その前に「コア」と「質保証」評価に関わる基本的なところ、前回までの整理、かなりいろいろな方の御意見がありましたので、それを少し整理した上で、その辺のところをまず基本的なこととして押さえたいということですので、今日は資料1をベースにしながら皆さんの御意見を伺って、できれば「コア」の捉え方、そして「コア」の捉え方に対応した「質保証」に関わる評価等々についての基本的な部会としての方向を、確認しておきたいと思います。
 それを踏まえて、今言ったように、実際「質保証」を進めていく際、どういう仕組みというのが考えられるのかということに、次回以降議論を進めさせていただければと思います。よろしいでしょうか。
 では、和田委員、どうぞ。

【和田委員】
 金子先生の御指摘は、本当にそのとおりなのですけれども、少なくとも私個人として、この会議にずっと出てきた印象としては、生徒一人一人の評価ということを、いわゆる学力で測れる、部分以外のところも含めて、きっちり評価できるようなシステムはないのかというような議論で、ここまできているような気がするのですが。
 ということを一言言っておいた上で、私も考え方1、2とすれば、当然考え方の1に立つべきだとは思いますけれども、実際のところ、小杉先生がおっしゃったように、その他の部分と言いますか、AとBと書いてあるBの部分に関しての評価を、学校で本当に妥当なものを作れるかどうかというのは、ずっと疑問でありまして、前回の最後に発言したように、やはりA、B両方の素質は学校として責任を持って身に付けてもらうように教育活動を進めていくとしても、評価は、学校側が引き受ける評価と、今度はその後、受け入れていただく企業なり、大学なりの方でしていただく評価というものにある程度分けていくのが現実的ではないかと、いまだに思っております。
 それからもう1点、図らずもこの生徒指導評価における資料2-1に、各教科・科目の評定というところにありますように、学校が地域や生徒の実態に即して定めた当該教科・科目の目標や内容に照らし評価するということになりますと、やはり学校の多様性によって、5段階評価の意味が随分違っている。そういう意味で、各生徒の「質保証」は、それぞれの学校でできるとして、次に受け入れてくださるところは、いろいろな学校から来るわけですけれど、そこに対する全国的に公平な「質保証」になっていないのではないかというところが一番問題になるところだと思うので、その辺の整合性をどういう形で作っていくかということが大事なのかなと考えております。
 以上です。

【小川部会長】
 ほかにどうでしょうか。
 野上委員、どうぞ。

【野上委員】
 コアの考え方の1がよいか、2がよいかということですが、私は1を選択させていただきたいと思います。企業は人を採用するとき、その人物が高卒であれ大卒であれ、学校から提出された学業成績中心の推薦書をただうのみにして採用しているのではありません。もちろん、それらを大いに参考にはしておりますがそれ以上に重視しておりますのが指導教員による、該当学生・生徒には人の話を聞く能力にたけているとか、物を見たり触れたりした際には自身の感想や考えをしっかり述べ伝える力があります、といったことが添書されていますと該当人物の持ち味がわかり大いにその人物に関心が持てるのであります。
 なぜこうしたことが重要かといえば、最近人の話を聞いていても、物を見たり・触れても実に無感情・無感動の若者が多いのです。こうした人物が多い組織では到底持続的発展など望むべくもありません。
 ですから、帰結として企業はものごとの良し悪しが判断できる人物を求めるわけで、そうした人物を是非育成していただきたいのであります。
ところで、企業の中でそうした人物、つまり感動し・己の考えを外に示せる人物を観察しておりますと実に学習意欲も知識欲も高いことがわかります。当然、こうした人物はコミュニケーション、プレゼン、ディベートにもたけています。
 したがって、今後の議論の進め方としては、点数による評価基準づくりに注力した議論ではなく、ただいま申し上げたような点・領域にも重点を置いた議論にしていただきたいと存じます。その双方を具備した「質」が企業社会の求める「質」でありますので、教育界には是非そうした「質保証」をしていただければと思っております。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかに。アキレス委員、どうぞ。

【アキレス委員】
 すみません、私も前回欠席しています。今までの議論を踏まえて、今の「コア」の考え方1、2を見たときに、将来的な方向性としては、やはり1が望ましいかなと思います。
 一方で、前提としてAの部分というのはもう十分評価している、できているということで、加えてBの部分、評価しにくい部分もやっていくということなのでしょうかというのは、一つ疑問として思っているところです。
 それから評価は、もちろん企業でも行っていますが、何と言ってもポイントは、伝えられた本人の納得性なのです。評価して終わりではなくて、本人がそれをどう受け取るか。その結果、ここはもう少し頑張ろうとか、やる気を引き出すというのがポイントなので、Bの評価しにくいところをしっかり一人一人の生徒に伝えられるのか、そういった仕組みはどういうものがあるのかというところも踏まえた上で、一気にAとB両方をやるのか、それともまずAを前提としてしっかりやって、Bも将来に向けてステップとして考えていくのかというところは、もう少し議論があってもいいのかなと感じました。

【川嶋委員】
 「質保証」あるいは評価については、誰が評価するかと考えた時、原理原則から言えば、自らが評価していくのが一番望ましいのでしょうけれども、実際には、それぞれの学校教育が送り出す先が、その段階の教育の成果とか質を評価してくるわけです。したがって大学だったら、大学生を受け入れる企業とか大学院の側が、その大学の学士課程の教育が十分になされていて、学生がきちんと身に付けるものを身に付けたかどうかということを評価しているわけです。
 高等学校ですと、卒業後専門学校も含めて7割が進学、2割から3割ぐらいが社会に出て働くということです。そういう意味で「コア」といったときに、やはり働くにしても、大学に進学するにしても、最低限共通に必要なものを高校の間に身につけたかどうかを、質保証の原点とするという考え方がやはり必要だろうと思います。
 その際、高等学校については、先ほど言ったように個性に応じて進路を決定していくということが目的としてあるわけですので、進路は進学と就職に大きく二つ分かれています。しかし、だからといって、高等学校だけで社会へ出て、あるいは進学するのに必要な共通な能力等を育成すべきであり、その責任をとらなければいけないかというと、やはりそれは難しくて、小学校、中学校と生徒は継続して学んできている訳ですから、小学校、中学校との関連も踏まえて質保証を考える必要がある。
 となると、本当に小学校、中学校で、今お話ししたような18歳の時点で大学進学するなり、就職するなりに必要な学力、能力の基礎的な部分がきちんと育成できているかどうか、が問われます。これについては小学校と中学校は全国学力テストというのが導入されているので、一定の評価はされていると思います。
 ところが、それに相当する部分が高等学校教育にはなかったということで、何か仕組みなり枠組みが必要なのではないかということを今ここで議論しているわけです。
 したがって、「質保証」といったときは、それは先ほど金子先生が、個人なのか組織なのかというお話でしたけれど、同じような何らかの仕組みがあることによって、初めて組織や教育プロセスの評価なり「質保証」も可能になってくるのですから、私としては考え方の1のA部分について、先ほど客観的に評価できているのかどうかという現行の仕組みに対する疑問はありましたけれど、その部分もきちんと評価すると同時に、社会に出るために必要なのは単なる学力だけではないし、大学で勉強するための単なる学力だけではありませんので、Bのところも何らかの形で評価する必要があるのだろう。そのために新たなツールなり仕組みを開発するということが必要です。それに対して国はやはり十分な施策と支援をしていく必要があるのだろうと思います。
 大学の方では、客観的な評価ができないものは、ポートフォリオとかルーブリックを使って評価をしていくということを最近議論し始めていますので、高等学校教育についても、客観的なテストで測定できるものはきちんとやると同時に、客観的に評価できないようなものはポートフォリオやルーブリックなど、現在開発が進んでいる様々なインストルメントを使ってこれから取り組むべきであろうと思います。
 「コア」といったときは、やはり社会に出ても、大学に進学しても共通に求められる何かだと。具体的には何かというのは、またこれから議論になるかもしれませんが、そう考えます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 金子委員、どうぞ。

【金子委員】
 私、端的に申し上げて、人格その他の特性は大切だと思いますが、ここで言う「コア」に含めることについては疑問があります。やはりそれは基本的に高等学校教育の「コア」なのか、それともこの中で今考えていて、保証と言いますか、きちんと評価して、これだけは備えているべきだと考えるときの「コア」なのか、これは違う。高等学校教育の「コア」は確かに様々な側面があると思いますけれども、きちんと把握できて、これだけは持っていてほしいという基準というものは、取りあえず私はそれを考えるべきではないかと思います。
 確かに人格的な側面は非常に重要でありまして、私どものやりました企業の人事担当者の調査などを見ますと、このごろの若い大卒者はどこが足りないのかということを幾つか聞いていまして、コミュニケーション能力等々挙げているのですが、一番足りないと言っているのは人格的な成熟度という意見が強いです。実際にそれは非常に大きな問題であるのだろうと思います。企業の就職試験でも、1番重視するのは96%ぐらい面接と言っています。面接で何を聞いているのかというと、基本的には人格的な成長可能性とか、そういったところを聞いているということで、確かにそれは非常に重要でありますし、これからの社会に生きていくためには、そういったものが重要だろうと思います。
 ただ、それを保証すべき、あるいはこういった「コア」の確認の対象とすることはできるかどうかということについては、非常に私は問題あると思います。幾つか問題があるのですが、一つは、高校生というのは成長の過程にあるのです。どんどん変化している。でき上がっている人だけを評価するというのは、私はおかしいのではないかと思います。青年期にあって、これから変化していく過程にある人で、幼くても、それはこれから育っていくわけですから、それがまだ幼いといって低く評価することが正当化されるのかどうか。
 これは私、特に感じますのは、私どもが高校生の追跡調査をやっていますが、やはり高等学校卒業後、非常に変化しています。やることがないというような、非常に消極的な質問をすると、同じ学生でも相当変化してくるのです。「ない」と言っていた人が「ある」となってきて、「ある」と言っていたのが「ない」と言ってくる。これはやはり変化する途中にあるので、その途中にある人の人格的な完成度を評価するというのは、私はおかしいのではないかと思います。
 もう一つは、評価する側ですが、教師が一人で、担任か何かで接しているわけでしょうが、本当に評価ができるのか。その人がやった評価が納得し得るものであるのかどうか。これも非常に大きな問題がある。こうしたものの評価を、もし個人個人に付けるとすると、しかもそれは外に見えるとすると、相当大きなコンシークエンスを生むわけでありまして、これはやはり手続上もかなり大きな問題を生じる可能性もあるわけであります。
 そういう意味で、私は人格的なものは非常に大切だと思いますが、それは高等学校教育にとって非常に大切でありますけれども、直接把握して、ここだけは保証しなければいけないという対象にそれを含めるかどうか、私は非常に慎重に考えた方がよろしいと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにどうでしょう。では安彦先生、及川先生、そして荒瀬先生ということで、この3人のところで一旦議論を休止させていただいて、次に宮城県教育委員会から、主にAに関わるようなことを考える取組を少し提供していただくということにしたいと思います。それでまた改めて議論を再開するということにします。
 では、まず安彦先生からよろしくお願いします。

【安彦部会長代理】
 前回まで私はどちらかと言うと考え方の1、2で言いますと、2に近い方で考えておりましたが、決して評価できるか、できないかが重要なのではないわけです。これはあくまでも二次的な部分ですから、第一次的に重要なのは、やはり高等学校教育として共通に、子供の何をきちんと育てるべきかということが第一の視点ですから、測れるか、測れないかは二次的なことだと思います。
 先ほどありましたように、測れるものは、とにかくやはり「質保証」の観点から見ても、それ以外の観点から見ても、きちんとすべきでありますし、測れないものは、育てようという目的を掲げて、とにかく育てるという実践をしていただいて、ゴールフリー(掲げた目標から自由になって見てみる)という評価の仕方もありまして、そういうことも含めますと、先ほどルーブリックその他の新しいパフォーマンス評価の方法なども開発されていますから、そういうものをできるだけ使って、それを見るということで、そういう観点から考え方の1の方でいいのかなと思います。
 それから、今お話がありました部分について、金子先生から言われている部分については、これは私個人かなり前から評価全般に対して議論があることを知っておりまして、そういう意味では非常に慎重にすべきことだと思います。しかし、改めてそれをどこまでという問題がありまして、今申し上げたようなことが配慮されつつ、そしてまた指導上の関係者との間の関係が、ある程度きちんとできているという前提でということになりますけれど、信頼関係があるという前提でということになりますが、それなりのものを、指導する側が示すことは可能であり、また本人にとっても必要な場合があると思います。
 あと、指導要録との関係でいきますと、やはり文章で評価するということが一つの大きな流れにもなっておりますので、これはこれで、やはり特に数量的な評価をしにくい部分については、そういう手法も活用していいのではないかと思っております。
 先ほどから高等学校の学習指導要領の改訂の際に、単位数のことが出てきておりますが、参考資料でも出していただきましたけれど、特に共通必履修科目を3教科:3科目作ったことの根拠は、先ほどからお話があったことで、前回も申しましたが、小中学校の流れを受けて言語能力、言語活動を重視ということで、それに一番関わる3教科:3科目については、是非これを共通にするということで固めたわけでありまして、その点、ある意味で「コア」の「コア」、丸印の方は選択になっているものですから、高等学校によって違ってくることがあるので、そうでなくて、やはり「コア」の「コア」として3教科:3科目は共通に、ということを今回は打ち出して、共通性を強化して多様性とバランスをとったということであります。
以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では及川委員、よろしくお願いします。

【及川委員】
 私は、前回の議論を、資料1-1というイメージ案で、非常によく整理していただいたと思っています。それで、改めて今日、資料1-2の(参考1)で21年度版、来年度からの完全実施の学習指導要領のことについて説明がありました。それで、(参考1)の高等学校における教科・科目等の構成についてということで、先ほど説明がありましたように、「1教科・科目」、それから「2総合的な学習の時間」、「3特別活動」ということで、この1、2、3というのを資料1-1のイメージ案の左の横に並べてみると、より整理できるのではないかと思っています。
 それから、これも先ほど説明があった指導要録については、確かな学力の部分については評定という形で記載され豊かな心にあたる部分については、総合的な学習の時間であるとか、特別活動のところに記述式で行われています。そうしますと、「コア」についての考え方は非常にこれで整理されているなと思いますので、したがって、「コア」の範囲と「質保証」の方向性については、私も考え方1でいくのがよいと考えます。
 ただ、1点だけ気になるのは、今後の議論の中のことですけれども、Aの筆記試験や実技試験等による客観的な評価の対象としやすいもののことに関してなのですけれども、高大接続特別部会で高等学校教育の「質保証」、それから入学者選抜の改善、大学教育の質的転換を一体的に行うための基本的な方策等の検討が進められているわけですが、この高大接続特別部会の場合の高等学校教育の「質保証」の仕組みは、大学入学者選抜との関係で考えられていくわけで、そうしますと、これからこの部会で具体的に検討が進められていくであろうAの筆記試験や実技試験等による客観的な評価の対象としやすいもの、そのための仕組みということについては、大学入試との整合性を図っていかないといけないのではないかと考えます。
 以上です。

【小川部会長】
 今、及川委員が最後の方におっしゃった、この資料1-1のAの仕組みと、大学入試でこれがどう扱われるか否かという話は、おそらくまたいろいろな議論があるかと思いますので、またその議論の際には、その辺のところも少し意識して、この部会で論点は整理しておきたいと思っています。
 最後、荒瀬委員。

【荒瀬委員】
 ありがとうございます。
 先ほどからのお話を聞いていまして、金子先生がおっしゃいました人格的なものというのは、その中身というのがどういうものかというのは、またいずれお聞かせいただければと思うのですが、私も学習指導要領の改訂の際、教育課程部会におりました立場で申し上げますと、英、数、国で共通必履修科目を作ったわけですけれども、それ以外に大きな変更が今回の学習指導要領にはありまして、それは総合的な学習の時間です。前の学習指導要領では時間数だったのが、単位として認定するということになりまして、どの程度これが進められていくかというのは、内容的にレベルがどのようになっていくかというのは、これからの大きな課題ではありますけれども、しかし総合的な学習の時間で何を育てるのかというのは、これは全ての高等学校に非常に強く求められているものです。
 その中には、学力の重要な三要素の中の活用能力であるとか、学習意欲であるとかといったものがあるわけで、学習意欲を、例えば5段階で、あなたは1であるとか、2であるとかというような、そんな乱暴なことをするべきではありませんが、テストでは十分に見られない、あるいは見にくい力である意欲であるとか、あるいは活用力であるとか、そういったものと離れたところで「コア」の範囲や「質保証」について論じるのはいかがなものかと思います。評定が付けられるかどうかではなくて、評価をどのようにするかを考えることが必要です。評価は全てにわたってできますから、評定として付けられるか、付けられないかというものを区別して考えていかなければいけないのではないかと思います。
 当然のことながら、評価する人が担任1人であったりしてはいけないわけで、これは高等学校の組織そのものをどんなふうに考えていくのかということも、この「コア」を考える上では、決して避けては通れないと言いますか、少なくともここで議論するかどうかは別として、この「コア」というものが決まっていく中で、教育委員会であるとか、あるいは学校そのものが、真剣に自分の学校はそのためにどんな評価のシステムを作っていくのかということを考えないといけないと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、ここで一旦今までの議論をお休みさせていただいて、先ほどからお話ししておりますとおり、今日は宮城県教育庁高校教育課の松本様に来ていただいておりますので、宮城県における高等学校の学力調査の取組について御報告をいただいて、また質疑応答含めながら、今までの議論を再開させていただきたいと思います。
 では、よろしくお願いいたします。

【松本課長補佐】
 宮城県教育委員会の松本でございます。本県におきまして、公立の高校生を対象といたしました学力調査を平成15年から実施しておりまして、今年で10年目となります。これは学力向上を図るために、教育活動の取組改善のための調査でございますので、今御議論していただいている「質保証」とは、若干違う考えなのかもしれませんが、ヒントになればということを思いまして、発表させていただきたいと思います。
 私からは資料3を用いまして、導入後の効果、現在の状況、本年度の実施結果の3点について御説明させていただきたいと思います。資料3に沿って説明してまいりますけれども、1ページから5ページ目が、本日の説明のために新しく作ったものです。6ページから33ページ、これが今年の実施結果について概要のまとめになります。35ページ以降が調査の内容ですけれども、35から67ページが学力調査、69ページ以降が質問紙調査となっております。
 まず資料1ページを御覧ください。この調査導入前の状況、平成14年以前ということになりますけれども、県議会等におきまして、宮城県の学力低下、大学進学実績の低下、あるいは仙台地区と、それ以外の地域の学力差の問題等が指摘されておりました。この頃の全国状況で言いますと、全国40位台の結果であったと思っております。そこで各教科の全県的な学力状況及び学習に関する意識調査を行うということで、時期として1年生の10月に行う、ということで行ってまいりました。
 また、この導入が可能になりましたのが、マークシート方式で、学校現場が採点の労力を要しないという点がポイントでございました。このことにより、国語、数学、英語の3教科の全県的な状況、学習に関する意識の把握ができるようになりました。ただ、この段階では全員に3教科は実施しておりません。米印のところですけれども、学校別に、国語の学校は国語、数学の学校は数学、英語の学校は英語ということで実施しております。この理由なのですけれども、3教科をやって意識調査をしますと、実施に半日がかりとなる。導入段階では、ここまで全校の教育活動を削るということに理解が得られるという状況ではなかったものですから、まずは1教科で実施ということでスタートいたしました。
 ただ、この方法ですと、国語をやった学校では自分の学校の数学、英語がどうなっているのか分からないというようなことがございますので、やはり全部やりたいということになってまいりまして、3年目となります平成17年からは、全校で3教科が実施できるようになってきたということでございます。このことによりまして、全ての公立高等学校で国語、数学、英語の3教科の対策が可能となりました。
 また、全ての高等学校で実施するということは、高等学校ごとのレベルの差ということもございますので、問題がうまく使えない、難し過ぎる、簡単過ぎるということがございますので、選択問題を導入してまいりました。
 この全校3教科方式が2年間続きますけれども、実施時期が1年生の10月1回きりですと、年度による生徒の変化を見ることができないという指摘がなされまして、意識調査だけですけれども、19年度から2年生に意識調査を実施いたしまして、生徒の意識がどのように変化しているかということを調査してまいりました。
 さらに、平成22年度からは、2年生の7月に実施時期を変えました。これは1年生の途中ですと、1年生の後ろ半分のところは学力調査ができないということで、1年生の内容全てについて、どの程度定着しているのかということを測るためには、2年生で実施しようということです。この段階ですと「質保証」の考え方というのを若干意識して、実施方法を変えてきております。
 そして平成23年度に東日本大震災が起きまして、生徒の学力面についての震災からの復興を図るためということで、文部科学省の復興教育支援事業に位置付けていただきまして、慶応大学の金子郁容先生のご指導、ご助言も賜りまして、学力調査について、これまで以上に詳細に分析できる仕組み、後ほど御説明いたしますけれども、そういった仕組みを導入することができたということでございます。
 真ん中の表の三角の記号でございますけれども、英語につきまして、平成18、19、20の3年間、宮城版英検という名前にして取り組みました。これは三つランクを作りまして、準1級から4級までの幅で、全ての高校生が自分なりの目標を持って学力調査に取り組むということを可能にする仕組みづくりとしてやったのですけれども、1人500円の検定料を県が負担するという仕組みでやりまして、予算800万円ぐらいかかったものですから、長続きすることができなかったということでございます。
 10年間の取組の現段階の成果と課題につきましては、1ページの下の方にまとめてございますけれども、成果といたしましては、学力に関する全県的傾向、各個別校の傾向が把握できます。学習状況と学力との関係性、これもある程度把握できました。調査結果を活用して、各高等学校における改善方策の立案、県教育委員会における学力向上施策の立案、これがデータを基にしてやっていくことができるということが、良い点として挙げられます。
 ただし、まだ今の段階では生徒の個人データをデータシート形式にして返すというところまでは至っておりません。弱点分野や生活上注意すべき点などについて、学級担任と面談しながら、その後の学習計画を立てていくというところまではいっていないということでございます。
 また、課題といたしまして、各校の学力格差がございますので、共通問題での実施が困難なこと。毎年各校が対応を当然立てるわけなのですけれども、それでも同様の課題がなかなか克服できないということがございます。おそらく学力向上が最も大きな課題、あるいは永遠の課題ということなのだと思います。
 成果のところに書かせていただきましたが、学力向上を図るためには、生徒の学習意欲の根源となる志を育てるということから始めて、分かる授業、考えさせる授業、学習習慣の確立のための各種取組というのを様々に行ってまいりまして、あるいは義務教育段階の学び直しなども取り入れていく必要があると思います。
 課題のところに書かせていただきましたが、高等学校における確かな学力を保証していくためには、学校教育全体の質保証を図る必要があるのかなと考えているところでございます。
 次に2ページにお進みください。県で行っている調査の実施フロー、PDCAサイクルについてまとめているものでございます。一番上のプランニングの段階でございますけれども、県教育委員会の計画といたしましては、3ページに示していますのが、学力向上推進プログラムという10年計画なのですが、それの目標を示したページでございます。28年度までにこういう状況になりましょうということで、上の丸二つ、これがアンケート調査の中に出てくる数字でございまして、これを指標として用いているということでございます。
 次のページになりますのが、各学校で年度の初めに目標を立てまして、4ページに当たるところですが、各学校がこの学力向上目標シートに年度初めに目標設定をいたします。そして年度途中で実施したのを受け、実績を書きまして、来年度に向けた取組の改善ということで、計画段階、実施後の段階、2回校長先生が教育委員会と面談を行いながら取り組んでいるということでございます。
 資料の2ページにお戻りください。プランニングに基づきまして教育活動を行って、チェックの段階が、このみやぎ学力状況調査となるわけですけれども、県教育委員会が問題を作成いたしまして、各学校に紙で搬送いたします。各学校において実施標準日に調査を実施して、マークシートの読み取りを行い、データをサーバコンピューターに送信します。ここの研究機関について慶応大学にお願いしておりまして、データベースの管理と分析ソフトの提供を行っていただいております。
 各学校と県教委は、このデータサーバにアクセスするアカウントが与えられておりまして、学校では各教科の弱点分野、あるいは意識調査の傾向、生徒や地域の実態に沿った特色あるクロス集計で傾向分析を行ってまいります。県教委には、学習面の部分、クロス集計の部分と時期を分けまして、2回報告をいただいております。
 これらの分析結果を受けまして、各学校において改善計画の立案、県教育委員会においては、学力向上施策の立案を行っているということでございます。
 この黄色の辺りがチェックと改善のところまでなのですが、一番下の部分、こういった学力向上施策を回していくために、本県では「志教育」、マナーアップ運動、特色づくり事業、そして全ての教育活動の検証システムとして学校評価を行うというもので下支えしていく、高等学校の質保証を図ってまいりたいと考えているところでございます。
 資料5ページにお進みください。本年度の実施結果、7月に行いましたので、10月の教育委員会、県議会で報告資料として使ったものでございますけれども、5ページの1番から4番、実施の概要でございますが、7月上旬に公立高等学校の2年生を対象に、国語、数学、英語の3教科の学力調査、1年生、2年生を対象に意識調査、質問紙によって行っているということでございます。
 中ほど5番ですが、2年生の学力調査の分析結果でございますけれども、3教科とも基礎的・基本的な力はある程度身に付いているものの、応用力、活用力に課題があるという結果になっております。正答率につきましては、各教科による変動もございますが、問題の難易度の年度による差であるということで、特に学力が上がったり下がったりしているものではないと考えております。
 6番が、意識調査の結果をまとめたものでございます。学習につきましては、平日に2時間以上学習する生徒の割合は変わらないのですが、毎日学習すると回答した生徒の割合が低下、授業理解度も低下ということです。学習の主な阻害要因として考えられますのが、携帯電話、パソコン等、いわゆるディスプレーものに費やす時間が非常に多過ぎるということが原因であると分析しております。
 生活の状況ですけれども、おおむね8割の高校生は安定的な学校生活を送っているようでございます。学校生活に集中できないなど、不安定要素を抱える生徒が2割程度いるということが逆に不安材料でございます。
 宮城県独自の小中高等学校で一貫して行っているキャリア教育、これを「志教育」と呼んでおりますが、この「志教育」に関する意識につきまして、今年から初めて調査に導入しておりますが、おおむね7割から8割の生徒は良好な回答状況を示してくれました。7番には今後の取組をまとめております。
 次にグラフ等を御覧いただきながら、御説明したいと思います。通しの8ページ、真ん中に2ページと打ってあるところですが、この2ページ、3ページのところが3教科の得点正答率の分布状況なのですけれども、2ページの下に国語と数学、3ページの上に英語とございます。棒グラフが今年の分布、折れ線が昨年の分布、あと黒と白が足されたような形になっておりますけれども、選択問題のうち、基礎・基本を中心とする選択Aの選択者の状況が黒い方、選択問題Bの活用・応用まで幅広く見るような問題を含んだ問題の選択者の出来映えが白で書かれておりまして、共通問題のみの分布状況でございます。
 国語は、問題の素材の状況だと思うのですが、昨年と今年で大分、問題の難易度が変わりましたけれども、分布状況は同じ山型、英語も同じような山型なのですが、数学が非常に幅広でございます。零点の部分、100点の部分が多くて、また真ん中が多いと、3こぶラクダみたいになっております。非常に学力差が大きいという状況になっているのかなと思っております。
 冊子の10ページにお進みください。真ん中に10とあるページで、通しの16ページになります。1年生、2年生ほとんど同じ状況ですので、2年生の結果によって御説明したいと思います。図5でございますが、進路別の希望の割合がどう変化しているかということなのですけれども、大学進学希望の割合が1年のときよりも増加している様子が見られます。下がここ5年間の2年生の状況なのですけれども、おそらく全国の状況と同じなのですが、徐々に上がってまいりまして、一旦下がって、その後平行というような動きになっております。全国とほぼ同じ状況になっているかと思います。
 11ページ図7、授業の理解度合いなのですが、これが1年から2年に学年進行につれて下がってしまうということです。これは学習内容が難しいからということと、勉強時間が増えなければいけないわけなのですけれども、これが図8で家庭学習の時間も減少してしまう。
 12ページ、次のページに進みまして、ここ数年間の状況でも、震災で一番苦しかった昨年と比べても下がってしまっているというような状況。2年生の中だるみと呼んでおりますけれども、これがなかなか解消できない状況であるということでございます。
 次に、折れ線グラフで意識の状況、生活状況と学力との関係を少し御説明しますが、図9が家庭学習時間と正答率との関係で、学習時間が2時間、3時間がピークになって、それより長い場合に必ずしも伸びていかない。2時間、3時間の方が、かえって成績がいいというような状況がございます。
 13ページの一番上になりますが、図10、11は宿題・課題、あるいは小テストを小まめにやるという方が成績がいいということで、小まめな指導、あるいは若干外圧がかかるような形の方が取組がいい状況が見て取れます。
 13ページの一番下、早寝、早起き、朝ご飯です。朝食の習慣と学習、これも相関が見られました。
 次のページ、14ページを御覧ください。通しの20ページ、真ん中に14とあるところでございますが、生活全般と「志教育」に関する意識調査に用いた質問に関しまして、「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」と回答した割合が高い順に記載いたしました。生活全般につきましては、おおむね8割の生徒が学校生活に充実感を感じ、生活リズムも安定しているという様子が見られますけれども、白い星の下に黒い星の質問、これがネガティブな要素について聞いたものですけれども、これに当てはまると回答した生徒が2割程度それぞれおります。また、三つ全部当てはまる、となった生徒も各学年100名程度、データ上出てまいりました。大変心配される状況でございましたので、各学校において担任教師による個人面談、あるいはスクールカウンセラーによるカウンセリングを行うよう、先日の校長会で指示したところでございます。
 中ほど、勉強か部活動かという辺りなのですが、勉強については5割程度の生徒が、勉強できることの充実感あるいは喜びというのを感じておりますが、圧倒的に部活が楽しいという生徒の方が多いというような状況でございます。
 「志教育」に関する意識調査につきましては、観点を三つ持っているのですけれども、「かかわる」という観点、「もとめる」「はたす」と三つ旗印のようにして行っているのですが、「かかわる」につきましては9割程度の生徒が、自分は頑張っている、あるいはできていると答えています。「もとめる」「はたす」については、おおむね8割ということで、自分の意識としてはかなり良い、前向きな意識という回答状況ではありましたけれども、挑戦への意欲、情報発信、ボランティアの実際の関わりという3項目が低い値となりました。
 これらを受けまして、まとめなのですが、真ん中に27ページと入っている、通しの33ページ、ここに今後の取組についてまとめております。各学校におきましては授業改善、家庭学習時間の確保、「志教育」の充実した実施、様々な学習機会の提供、家庭との連携を進めてまいりたいということでございます。
 県教育委員会といたしましては、調査の継続を行いまして、全県的な学力傾向の継続的な把握、学力向上のための県事業の継続、教員の資質向上のための各種研修会の充実を図ってまいりたいと考えております。
 下の図は、文部科学省、家庭も含めまして、学校と教育委員会が連携してPDCAサイクルを回していくということを示しているものでございます。今後とも、こういった取組を継続して、高校生の学力向上、充実に、更に努めてまいりたいと考えているところでございます。
 早口で申し訳ございませんでした。以上で宮城県の取組についての御報告を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、今の宮城県教育委員会から御説明いただいた内容に対する質疑応答が、もしもありましたら御自由に。また、前半やっていた「コア」と「質保証」に関わる議論も、また御意見があればお受けいたしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
 金子先生、どうぞ。

【金子委員】
 大変おもしろい、重要な取組で、こうしたことを私は日本中でやられたらいいなと思います。少し中身の細かいことで伺いたいのですが、この報告書7ページからは1年生について、10ページから2年生についてと考えてよろしいのですね。
 それで、おもしろい、というのはおかしいかもしれませんが、少し私が興味を持ちましたのは、1年生で見ますと、授業理解度の割合というのは、ほとんどの授業はよく理解できる、それから理解できる授業が多いというのが、かなり顕著に平成18年から23年まで増えていまして、4割弱であったのが、5割に達しているという状況になっています。それから学習時間につきましても、次の8ページの図4ですけれども、1時間以上をとりますと、これもかなり顕著に増えているわけです。
 ところが、11ページにあります2年生の方の変化を見ますと、必ずしも同様の変化がなく、特に学習時間はむしろ減っているという状況になっているわけで、これを素直に読みますと、1年生は真面目に、入ってくる子はどんどん真面目になって、勉強もよくする、分かるようになる。ところが、2年生になるとそれはむしろ状況は良くなくなっていると読めてしまうのですけれども、これは二つ問題があると思うのですが、一つは、なぜ1年生がもっと真面目になって、分かりやすくなっているのか。なぜ2年生になると、それが違ってくるのかということなのですけれども、ここら辺はどのようにお考えなのでしょうか。

【小川部会長】
 よろしくお願いします。

【松本課長補佐】
 正に御指摘のとおりの状況と思います。いわゆる高1ギャップの部分については、対応力が増したということなのですけれども、それは継続的な取組としてやっていくという点では、いまだうまくいっていないという状況でございます。
 それと、1年生が上がってきているもう一つの理由が、実施時期が10月から7月になっております。ということは、2年生の中だるみといいう言い方を私はしたのですけれども、実は10月というのは夏休みの後です。これが7月にきたことによって上がっているということが、おそらく非常に大きな要素としてありまして、高等学校に入って夏休みの前までの緊張状態の中で高いものが、夏休み後の状況として既に保てていない。おそらくそれが本県の課題なのだと。今年見て、それで非常に愕然といたしまして、非常に憂慮した状態だということです。まだ新しい方策まで取り組めていないという状況かと思います。

【小川部会長】
 金子先生、よろしいですか。
 ほかにいかがでしょうか。あまり時間もありませんので、宮城県の取組についての御質問、また前半からの「コア」「質保証」に関わって。
 川嶋委員。

【川嶋委員】
 ありがとうございました。
 多分こういう取組は、それぞれの地域でされていることがあるのだろうと思います。中央と言うか、文部科学省が全部それを把握しているかどうか。例えば、ここは高等学校教育部会なので、なかなか関係者はお見えにならないのですけれども、高等専門学校は3年生、つまり高校3年生に相当する部分で51の国立高専と神戸市立の高専が参加して、物理と数学について学習到達度試験というのを、すでに数年間にわたって実施しているわけです。
 山形県も教育委員会が専門高校の数学の学力テストを随分前から実施していらっしゃるということをお聞きしたことがありますので、多分いろいろな地域や機関で、力を把握して教育改善や学生の学習意欲につなげるような取組をされていると思うのですが、しかし考えてみると、なかなかそれは持続可能性や手間暇とか、経費の問題で非常に大変だろうと思います。
 ですから、こういう各地域とか各組織でやっているような取組を、全国的な取組にして支援していくということが国に課せられている役割なのではないかと思います。ただ、そのときは一つの組織だけでやると、いわゆる序列化とか、一つの尺度になってしまうので、複数のコンソーシアムと言うか、複数の組織に対して国が支援するということによって、それぞれの切磋琢磨ということもありますし、それで全体が向上して、なおかつ一元的な序列化も避けられるという気がして、是非そういうことを国には期待したいと思います。

【小川部会長】
 事務局の方で、全国の都道府県で、県レベルで県立の学力試験とか学力把握をやっているような動向は捉えていますか。または、いろいろな機関で、そうした試みがあり、今の時点で、もしも状況が分かっていれば。どうですか。

【西尾教育制度改革室専門官】
 過去も含めてなのですけれども、文部科学省でインターネット等で調べた結果、17県、過去も含めて行っている県がございました。
 実際、今も続いているという県だと、もう少し少なくなりますが、即答できませんので、追ってお答えいたします。

【小川部会長】
 では、後で調べたデータを出してください。部会でこれからの仕組みの議論をする際、参考にしたいと思います。

【金子委員】
 もう一つは、PISAは15歳で高校1年生のデータがあるはずなので、実は日本ではあまり分析していないのです。それで、データ自体も国際的には公開されている部分は一部の研究者は使っているようですが、日本の部分について、もう少しデータを使えるはずなのですが、これについてほとんど調査結果の分析が今、公開されていない。私は国立教育政策研究所で何か作業をしているようには聞いていますが、しかし、これについてはほとんど、こういった席にも結果が出てきません。
 それでPISAの調査は家庭背景などについても一部データを入れていますので、かなり重要な分析ができるはずなのですが、これについてはもう少し積極的に活用した方が、私はいいのではないかと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。今の件も含めて、少し御検討いただいて、データとして出せるものがあれば、少しこれからの審議に資するものについては整理して出していただければと思います。
 安西委員、どうぞ。

【安西委員】
 大変貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。もしかしたら聞き逃したかもしれませんし、また、こういうことができるのかどうか分かりませんけれども、学力が伸びるということと、「志教育」等々の志、意欲が増していくということの間に個人相関があるかどうかということについては、どう思われるでしょうか。
 つまり、先ほどの議論でも、定量的に評価のしやすい学力のレベルということと、それから主体的な行動力とか批判的な思考力とか、なかなかつかまえにくいものと二つあるという議論がありましたけれども、本当はやはりそういう主体的に自分から学んでいくと言うか、それによって学力が伸びていくという、そういう関係があるといい、そういうことがやはり若い人たちの間で望ましいのではないかと思うのです。
 そういうことが分かるようなデータであり得るのかどうかということを、少しお伺いできればと思いまして。

【小川部会長】
 宮城の方に質問ですね。

【安西委員】
 はい。学力状況調査と、それから意識調査とやられておられますけれども、その間の相関をとることはできるかどうかということです。

【松本課長補佐】
 今年のデータについては、そこまでまだいっていないということなのです。学力を上げるために、まず勉強して学力がついてくるということですから、学習時間をキープして学力を上げていく、そういう考え方が以前からあったので、以前の意識調査があった。時間をかけてやれ、やれということで課題を与えるテストだけでは、少し機械的なので、志を育てるということの方が大事なのだろうという仮説に立ちまして、本県でもそういう教育を進めようということもございますものですから、今年から新たに指標で入れまして調査しまして、仮説としてはそう思っています。やはり気持ちがぐっと育っていくことで勉強に向かうようになるし、そして学力がついてくるだろうという仮説ではございますが、そこの相関までは、まだ分析し切れていないという段階でございます。

【小川部会長】
 よろしいですね。
 時間がありませんけれど、ほかに御発言の御準備の方は。
 では和田委員、そして安彦委員。ほかによろしいでしょうか。では、北城委員、そして眞砂委員、最後、小林委員ということで。では、和田委員からお願いします。

【和田委員】
 今の安西先生の話でありますけれども、文部科学省が、小学校6年生もやっていますけれども、中学校3年生で全国学習状況調査をされています。そこで学習に関することも含めた生活の調査もされていますので、それの学力とのクロスデータは当然あると思うのですけれど、実施した中学校側には提供されていますが、高等学校側にはあまりその辺が見えてこないので、そういう資料もここにお出しいただければ良いのではないかと思います。

【小川部会長】
 よろしくお願いします。
 安彦委員、どうぞ。

【安彦部会長代理】
 宮城県ですが、作問なのですけれど、問題作りの原則について、高校1年次に学習した内容の基礎・基本と思考力等を問う問題で構成し、平均正答率を50%と設定して作成したとのこと。これを一応一般社会的にと言いますか、議会がそれでいいでしょうというか、そういう納得をどういう形で得られたのですか、ということです。
 つまり、今伺っていると、伸びが減ったとか、逆に高まったとか、そういうのではなくて、今日の議論のような前提では、ある水準を念頭に置きたいわけです。そうすると、やはりそれを作問の場合に、こういう前提でというところですけれど、ここのところをどういう議論をして固めたか、と言いますか、そこはやはりこれから「コア」の範囲を決める上でも大事なところだと思うものですから、この点はどうでしょうか。

【小川部会長】
 よろしくお願いします。

【松本課長補佐】
 問題のデータベースがあって、ここまでできたらどうだとか、あるいは、この問題は何パーセントだろうというようなところの、本当に細かい詰めのところだと思うのですけれども、問題を作っているのは教育研修センターの指導主事と学校委員で作っております。
 過去の出来映えでいろいろな難易度の問題を並べていくということでやっておりまして、内部的にはそういう作業をしておりますけれども、外部に説明するときには、こういうやり方というのが、文部科学省の調査でもこんな感じでやっているんですという言い方にしかなっておりませんで、内部的なものと外向きとが全部細かいところまでリンクして進めてきているわけではないのではないかと思います。

【安彦部会長代理】
 ありがとうございます。その辺のこと、今後固めたいわけで、それで実は、個人的には少し前からの話ですけれど、歴史的には20年以上前ですが、高1までを10年間の共通基礎教育とみると言った時期があるのです。ですから、昔は義務教育を延ばす議論の中で、高等学校まで義務教育を広げようとかいう議論のときに、小1から見て高1が10年目ですから、高1までを共通基礎教育とみて、高1のカリキュラムを考えられないだろうか、みたいな議論をしたのです。
 その辺の議論を思い出しますと、大体高1までが「コア」と言いますか、先ほど特に量的に測れるものも、測れないものも、ともに問題はどこまでというのがあるのです。どこまで、あるいはどの範囲までを「コア」とするかというのが、まだ議論としては残ってしまっている。
 ですから、そういう部分について、やはり何かを軸に固めていかなければならないと思います。これは今後の、ここでの課題だと思います。
 ありがとうございました。

【小川部会長】  では北城委員、どうぞ。
【北城委員】  先ほどの「コア」の考え方の1と2ですけれども、私は1をとるべきだと思います。基礎的な知識は確かに重要で、なおかつ試験等で把握できます。しかし、子供たちが卒業して社会で働いたり、あるいは大学に進学した時に重要なのは、基礎的な知識をどれだけ持っているかだけではなくて、自ら学ぼうとする意欲だとか、積極的に行動する能力が必要です。これらは社会に出てからも必要とされる能力なので、やはりA及びBの両方を「コア」にすべきではないかと思います。
 もちろん、Bは評価が非常に難しいのですが、担任の教員を含めてBを評価する努力をすべきだと思います。
 評価が正しいかどうか、客観的な判断は確かに難しいのですが、しかしAだけで良いとしてしまうと、Aだけを行うことが教育になってしまいます。そうではないということを示すためにも、やはりA及びBという考え方をとるべきではないかと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、眞砂委員。

【眞砂委員】
 今の意見に引き続いて、同じことなのですけれども、Aの測れるものだけをやっていたのではだめだと思うのです。Bの方の測れないものの中に、実は大切なものがたくさんある。コミュニケーション力、表現力です。そういったものを実は授業の中で取り入れることによって、測れるものが伸びてくるという流れが必ずあると思うのです。
 ですから、「コア」としてはA、B広くとっておいて、そのBの中に大切な、これは授業のやり方になると思うのですけれども、表現しながら、ディベートしながら、みんなで、自分で主体的に考えながらやることによって、そして初めてAの部分がより伸びると実践から感じています。

【小川部会長】
 ありがとうございます。
 最後、小林委員どうぞ。

【小林委員】
 私も考え方は1が絶対だと思っています。それは、評価はいろいろあるでしょうけれども、中学校卒業生の98%が高等学校に入っている、オール4が集まっている学校と、オール2が集まっている学校では、スタート時点で実は「コア」のところは話が分かるのですけれども、「質保証」のところではかなりの差があります。ここのところを同一論議でいくのは、本当に難しいのだろうなと思っています。
 この「コア」で考え方1のBその他の要素のところで、やはりいろいろな場面で活躍する子供たちがたくさんいます。それをきちんと評価してあげて、先ほどの宮城県の「志教育」ではありませんけれども、オール2できた子たちは割と挫折している。学習に対して挫折している子供たちがたくさんいますので、子供たちが学習以外で褒めて育てていく場面が多くあれば、もっともっと志が高まって、社会に有為な人材として育っていけるのではないかと思っていますので、そこら辺のところも含めてやっていただければと思います。
 今日、皆さんのお手元に、少しお荷物になりますが、配らせていただきましたのが、きらめく工業高校という冊子です。昨年の第1回目のときにも配らせていただきましたけれども、また今年度分がありますので、これを見ながら、少し説明させていただきます。
 工業高校、全国で約600校近くあります。その子供たちが様々な形で社会に貢献している人材として育っていると私は自負しております。この11月に、第12回高校生ものづくりコンテスト全国大会というのがあります。7部門がありまして、これが北信越で五つの県で分散開催になりますけれども、ありますので、是非子供たちの活躍を見ていただければ、応援していただければと思っての御紹介です。
 堅いパンフレットの見開きを見ていただきますと、一番右側にジュニアマイスター顕彰というのがございます。これは前から言っているように、工業高校生が3年間の様々な資格あるいは認定、あるいは競技会等をポイント制にしまして、それを30点取るとシルバー、45点以上だとゴールドということで認定しまして、もう10年たちましたので、何遍も言っていますけれども、企業あるいは大学の方々にかなり認知していただきまして、AO入試なり、あるいは就職面接のところでは非常に有効に働いているところでございます。
 これと同じように、専門高校の商業高校も簿記、あるいは農業高校も日本農業技術検定ということで、農業高校で学んだ内容が初級段階でどのくらい理解できているかという質の保証の部分もございます。このような対応をしておりますので、できれば一番最初に、昨年11月1回目のときに、山中局長さんだったですか、普通高校7割、専門高校2割、総合学科高校1割というこの割合は、やはりもう一度考えていただいて、社会に有為な人材育成ができ、質の保証もできる専門高校の拡大をお願いしたい。
 最後にもう1枚ですが、これは文部科学省が後援していらっしゃいます全国産業教育フェア岡山大会があります。これも11月に行われますので、是非お時間があれば見ていただいて、様々な専門学科の生徒が活躍しておりますので、よろしくお願いしたいと思っています。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、これで今日の審議は終わりたいと思います。今日、皆さんの御意見をお伺いして、「コア」の捉え方、またそれに対応した評価等々の基本的な考え方については、おおよそ部会の基本的な方向性は得られたのかなと思います。また今日の議論を踏まえて、次回以降「質保証」の具体の仕組みのところについて、また議論を進めていっていただければと思います。
 では、次回の予定をお願いします。

【塩原教育制度改革室長】
 次回の第15回会議でございますが、11月19日、月曜日、10時から12時まで、場所は本日と同様、文部科学省3階1特別会議室での開催となります。追って、改めて開催通知により御案内をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【小川部会長】
 では、これで今日の会議を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

―― 了 ――
 

 

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