高等学校教育部会(第22回) 議事録

1.日時

平成25年11月6日(水曜日)10時00分~11時30分

2.場所

ホテルフロラシオン青山 2階 芙蓉

3.議題

  1. 高校教育の質の確保・向上について
  2. その他

4.議事録

【小川部会長】
 おはようございます。定刻よりも若干早めですけれども,ただいまから,第22回高等学校教育部会を開催したいと思います。委員の皆様には,お忙しい中,御出席いただきましてありがとうございます。
 審議に入る前に,前回,9月10日の第21回部会以降,文部科学省の人事異動があったということですので,事務局から御紹介いただきます。

【小林教育制度改革室長】
 それでは,文部科学省の人事異動について御報告を申し上げます。新たに就任いたしました者についてのみ紹介させていただきます。
 大臣官房審議官,初等中等教育局担当の藤原でございます。

【藤原大臣官房審議官】
 藤原です。よろしくお願いいたします。

【小林教育制度改革室長】
 また,私,初等中等教育企画課教育制度改革室長の小林でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【小川部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,審議に入る前に今日の配付資料の確認について,事務局からお願いいたします。

【小林教育制度改革室長】
 それでは,お手元の資料でございますけれども,一番上にございます議事次第を御参照ください。配付資料のリストがございます。枝番が付けておりますが,資料1が教育再生実行会議関係の資料でございます。まず資料1-1,教育再生実行会議第四次提言の概要でございます。折り込んだ資料ですが,資料1-2,教育再生実行会議第四次提言の本体でございます。資料1-3,教育再生実行会議第四次提言の参考資料でございます。データの参考資料です。それから資料2,教育再生実行会議第四次提言を踏まえ,高等学校教育部会で更に確認・検討すべき論点(案)という資料でございます。それから,参考資料1から3まで御手元に配付させていただいております。
 もし不足等ございましたら,恐縮ですが,事務局にお申し付けください。

【小川部会長】
 資料は,よろしいでしょうか。
 それでは,これから議事に入りたいと思います。今日は,本年1月に取りまとめた本部会の「審議の経過について」で,今後の検討課題となっていた高校教育の質の確保・向上について議論を深めていきたいと思います。
 皆さんも御承知のとおり,先月10月31日に,官邸の教育再生実行会議において第四次提言「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」が取りまとめられまして,その中で,「教育の質の向上」,また,「達成度テスト(仮称)の導入」について提言を頂いているところです。今後,この提言も踏まえながら,また,高大接続特別部会との連携も図りながら,本部会において,高校教育の質の確保・向上に向けた検討を引き続き行っていきたいと思っています。
 本日は,まず,最初に,教育再生実行会議の第四次提言の内容について,教育再生実行会議の担当室より説明頂いた後に,事務局で整理いただきました,今後,部会で更に確認・検討すべき論点について,説明をいただきます。
 その後に委員との意見交換に入っていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,まず,最初に,教育再生実行会議の第四次提言について,教育再生実行会議担当室より御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【高橋教育再生実行会議担当室長】
 皆さん,おはようございます。教育再生実行会議担当室長の高橋でございます。本日はこのような御時間を頂きまして誠にありがとうございます。
 資料1-1から1-3が,今日お出ししている資料で,提言本体が1-2でございます。資料1-1は提言の概要です。今日はこの資料1-1を使って,若干口頭で補いながら,大きな流れについて御説明をしたいと思います。
 表題の「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」がこの第四次提言の内容でございまして,このテーマで5か月ほど議論をしておりましたが,国民の関心が非常に高いということもあるのか,大学入試がどう変わるのか,特に大学入試センター試験がどう変わるのかというところにマスコミの報道が集中した感があります。あたかも大学入試センター試験の改革案だけを議論しているかのような印象があったかもしれませんが,この会議全体としては,これからの我が国に求められる人材を,特に高等学校,大学においてどのような方針で育成していくのか,そのためには高校教育,大学教育がどうあらねばならないのか,その結果として,その接続である高大連携,その高大連携の重要な要素である入試も必然的に変わっていくだろうと,そういった三者を一体的に議論しようということで進めてまいりました。
 報道は専ら入試に焦点が当たっておりましたが,まずそういったことを御理解賜りたいと思います。
 この議論は6月6日から開始いたしましたが,の最初の会議では,今日もおいでいただいております安西先生に,お越しいただきまして,中教審の本部会と高大接続部会のそれまでの議論について,レクチャーいただくところから始めました。したがいまして,教育再生実行会議でも中教審の議論の実績をかなり意識しながら,それをどう発展させていくか,二つの部会の議論を教育再生実行会議としてどう消化,集約していくのかという観点も委員の皆様にお持ちいただきました。従って,中教審の議論と全く無関係に,あるいは別の方向の議論が進んだということには恐らくならなかったと思います。
 資料1-3には,今回の会議で使った基本的な資料を付しておりますが,中教審での議論に活用された資料もかなり参考にして議論されました。
 資料1-1の左側には今回の提言ポイントを並べ,提言の流れが分かるように1枚にまとめたものです。そして,右側が,提言の二つのレベルの達成度テストを簡単に集約したものでございます。
 上の方に三つほど丸囲みがありますが,ここは本文で言うと,「はじめに」というところで,今回の提言に至った背景,ポイントを簡単にまとめたものでございます。この会議は第3次提言でもグローバル化について取り上げ,そのときは特に大学のグローバル化をどう進めていくのかがテーマでしたが,その延長線上の議論でございます。今回の提言においても,グローバル化の急速な進展に対応する教育の在り方とはどのようなものかということや,「主体性と創造性,豊かな人間性のある多様な人材が必要」になっていることについて,強く意識をされました。
 それから,下村大臣もいろいろな講演でおっしゃっておられるのですけれども,人口の長期予測を見ますと,今後50年間で我が国の生産年齢が半減する。若年層に限っていえば半分以下になるという,極めて急速な人口減の局面を迎えていきます。そういった中で,引き続き,日本が活力ある国として一定の持続的な成長を図るためには,イノベーションの活性化も必要ですし,人材の質,一人一人の労働の質を飛躍的に向上することも必要になってくる。そうなれば,高等学校,大学に求められる役割,つまり義務教育後の役割というのはこれまで以上に極めて大きなものになる。そういった背景がありまして,二つ目の丸囲みの「夢を志に高め,実現に導く情熱や力,社会に貢献し責任を果たす規範意識や使命感」,「幅広い教養,日本人のアイデンティティ,コミュニケーション力,課題発見・解決力など」が強く求められていくだろうといった認識に立ったわけでございます。
 そして,こういったことが現在の高校教育,大学教育で十分行われているか。あるいはこういった資質を見いだすというような入試になっているかということについては,まだまだ改善すべき点が多々あろうということで,以下の提言につながっているわけでございます。
 ですから,報告書の構成も大きくは三本柱になっています。まず,最初に,高校教育の在り方,高校教育の質をどう向上していくか,次に,大学においてどのような教育の改革を行っていただきたいか,三つ目に,それらをつなぐ高大接続の在り方,更にその中心である入試改革の在り方はどうあるべきか,こういった構成になっております。
 今日は細部まで御説明する時間はありませんが,「高校教育の質の向上」のところについては是非,本文を後ほどご覧いただきたいと思います。ここはかなり本部会の議論と重なるところだと思いますけれども,国においては基礎的・共通的な知識,技能や,思考力や判断力,表現力について,高等学校において共通に身に付けるべき目標を明確化することを求めておりまして,それを把握する一つの仕組みとして,新たな達成度テストの基礎レベルを創設することを提言しております。これについては後ほど触れたいと思います。
 それから,2番目の大学の人材育成機能の強化に関する提言においては,様々な提言内容が含まれておりますが,一言で言いますと,入試を変える時に,出口を変えずに入口だけ変えるという改革はあり得ないだろうということです。今回の報道を見ても,入試に非常に関心が高まるのは,今でもなお日本の大学は,入るのは難しいけれども,一旦入ってしまえば出やすいということがあるのではないでしょうか。
 客観的なデータを見ても,大学に入学して卒業する比率はOECD平均では約7割ですけれども,日本は93%と言われております。アメリカは6割ぐらいですから,日本は大学に入るところのウエイトが圧倒的に高くなり過ぎています。むしろ入ってから何を学ぶのか,あるいは出口をどう厳しく管理していくのかという考えに立ち,今回も,第三次提言の「厳格な成績評価・卒業認定の実施」を再度打ち出しました。今回のポイントとしては,例えば認定を厳しくすることによって留年が増えると,短期的にはその大学には学生が増えることになります。
 私学助成などですと,定員以上の学生が入ったりすると,ペナルティ的に補助金がカットされることもありますし,国立大学でもそういった運営費交付金上の扱いがあります。今回卒業認定を厳しくすることによって生じた定数上の問題については,不利益にならないような措置を講じようという具体的な提言も本文に明記しております。大学の出口管理とセットで入試の問題も考えていただきたい,そういったメッセージも出したつもりでございます。
 そして,3番目の大学入試については,まずは現在の大学入試センター試験に代えて,達成度テストの発展レベルというものを導入します。それに加えて,各大学においては,どういう人材を育成するのか,あるいは,どういう学生を受け入れるのかといったアドミッションポリシーを明確にした上で,学力はもちろんですけれども,学力にとどまらずに,多面的,総合的に評価をしていただきたい。面接や論文や,高校時代の活動履歴など,様々な視点からその学生の持っている力を評価する方向に転換してほしい。教育再生実行会議でもマスコミからも指摘されていることですが,このような対応をするためには,大学においては非常に人手や予算のコストが掛かります。ただ,それを理由に進まないのでは何も変わらないので,国としてもメリハリを付けた財政支援ということで,改革に取り組む大学には積極的な財政支援を行う提言も併せてさせていただきました。
 これが第四次提言の大きな流れ,ポイントでございます。
 次に,右側の表でございますが,今回,高等学校の基礎学力がしっかり身に付いているかを測る基礎レベルの達成度テスト,それから,入試センター試験に代えて入試で活用いただくことを想定する発展レベルの達成度テスト,こういった二つのテストの創設を提案いたしております。
 基礎レベルに関しては,機能としては,高等学校の基礎的・共通的な学習の達成度を客観的に把握して,学校における指導改善に活かしていく。併せて,推薦・AO入試における基礎学力の判定に際しての活用を促進していくということが提言されています。一部の私立大学ではその定員確保のために,本来の趣旨と違う推薦・AO入試が行われて,学力を問わない形での入学者選抜が行われているのではないかという指摘がございます。そういった指摘に応えるために,推薦・AO入試で,この基礎レベルのテストを大いに活用していただくように大学側に働き掛けていくという提案でございます。
 受験回数については,在学中に,1回ではなく,複数回受験できる仕組みにするということを是非検討していただきたい。
 試験内容については,基礎的・共通的な教科・科目というだけで,具体的な教科・科目をどうするかということは今後の検討に委ねさせていただきました。そこでは思考力・判断力・表現力も含めた幅広い学力を把握して,指導改善につなげられるようなものを期待しております。
 また,このテストが直ちに高等学校の単位あるいは卒業の認定,あるいは大学入学の資格とするといった条件付けはしないことにしております。これも各団体などからの御意見なども反映したものでございますが,できるだけ多くの生徒が受験できるように是非考えていただきたい。
 教育再生実行会議の中では,全員の受験を義務付けるべきではないかといった意見もございましたが,生徒は多様であり,大学に進学する生徒ばかりではありませんので,全員に義務付けるというところまでは,今回は踏み込んでおりません。しかし,できるだけ多くの生徒に活用いただきたいということで,このような表現になっております。
 それから,発展レベルにつきましては,現在の入試センター試験に比べますと,大きく二つぐらいの点で異なる点がございます。一つは,現在のセンター試験は1回の受験ですけれども,複数回の挑戦を可能にすることを検討していただきたい。ただ,現在のセンター試験は6教科29科目と,できるだけ多様なニーズに応えるために,非常に肥大化,複雑化してきております。一度に50万人が受けるという,世界にも類のない大規模なものでありまして,その実施は限界に来ています。今のままで複数回実施ということになると,実施サイドには非常に負担が大きくなりますので,「教科・科目を勘案し」とし,精選という方向になると思いますが,そういったこととセットでの複数回の実施を検討課題として提言させていただきました。
 もう一つは,「知識偏重の1点刻みの選抜にならないよう,試験結果はレベルに応じて段階別に表示」をしていただきたいということでございます。このレベルを大くくりにすればするほど,選抜機能が薄れて資格試験的な要素が強まります。逆に,細かくすればするほど,現状とあまり変わらなくなります。どのようなレベルで大くくりするかということは,一つの大きな検討課題であると思いますが,実行会議は必ずしも試験の専門家や各団体の代表が集まっている会議ではありませんので,そういった細部については,二つのレベルの達成度テストとも,今後,中教審などにおいて専門的な検討に委ねたいということで,今回は大きな方向性を示すにとどまっております。
 会議の過程では,この二つのレベルのテストを一本化できないのかということがかなり議論になりました。ただ,現実的な問題として,多様な生徒を一つのテストだけで全て測るというのは難しいだろうと。現実的には基礎レベルと発展レベルというような形で,二つのレベルぐらいのテストにしないと,どっちつかずのものになってしまうのではないかということで,将来的にコンピューターを活用して一本化という可能性がないわけではないのかもしれませんが,当面,現実的な対応としては,この二つのレベルのテストを導入するのがよろしいのではないかということで,提言にはこのような形にまとめました。そのときに両方のテストがばらばらにならないように,高等学校レベルの達成度を測るという意味においては共通のところがございますので,入試センターが有するノウハウ,利点を活用しながら,この二つのテストを相互に連携して一体的な運用が行われるように是非十分議論をしてほしいということも報告には盛り込まれたところでございます。
 以上,少し長くなりましたけれども,今回の提言の概要でございます。この細部については,多くのを中教審の議論に委ねた形になっておりますので,引き続きこちらでの御議論をよろしくお願いしたいと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では,引き続き資料2を御参照ください。事務局の方で,教育再生実行会議の第四次提言を踏まえて,高等学校教育部会で更に確認・検討すべき論点を整理していただいておりますので,まず事務局の方からこの資料2に基づいて,御説明いただければと思います。お願いします。

【小林教育制度改革室長】
 それでは,お手元の資料2を御準備いただけますでしょうか。こちらの資料は,今,部会長からも御紹介いただきましたように,今年の1月に本部会で審議の経過としておまとめいただきました提言に沿って論点を整理しまして,今後,特にこの部会で御検討をいただきたい点を論点(案)としてまとめさせていただいたものでございます。
 まず1ページ目でございますけれども,今後検討すべき論点(案)といたしまして,大きく二つございますが,一つは,今,特に御説明ございました,「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)」についてでございます。
 一つは,試験の目的,活用方策をどうするか。それから,入試での活用をどう考えるか。それから,対象者についてどう考えるべきか。4点目でございますが,具体的な実施方法についてどうすべきか。例えば試験内容につきまして,出題教科・科目の範囲をどうすべきか,それから,試験形態について,筆記,マークシート又はその併用等をどういった形を取るか。それから,5点目でございますけれども,具体的な実施時期,受験回数,実施場所についてどう考えるか。それから,6点目でございますけれども,試験の名称についてどうすべきか,これはまだ仮称ということでございますので,どう考えるかでございます。
 また,この達成度テストだけではなくて,大きな2点目といたしまして,生徒の多面的な学習成果の評価の仕組みの充実・活用方策についても,今後御検討いただくべき点があるかと考えております。
 なお,達成度テスト(発展レベル)の在り方も含めました,高校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策につきましては,今後,必要に応じまして,この部会と連携して,高大接続特別部会の方で御審議いただくと考えているところでございます。
 資料2の次のページを御覧いただけますでしょうか。今,御紹介いたしました論点は,今年,この部会でおまとめいただきました,本日のお手元資料の参考資料として配付させていただいております審議経過の20ページのところにも,この部会として,新たなテストを導入する場合には,今後その検討を進めていくべき点ということをまとめていただいており,それに沿う形での検討課題が幾つか挙げられておりますけれども,もう少し詳しく,先ほど紹介させていただきました実行会議の提言と,こちらの部会の審議経過で今までおまとめいただいております論点,ポイントに沿ってどのように実際に,大きな方向性としてはほぼ同じような方向での御提言をいただいているかと思いますが,少し復習もかねて御紹介させていただきたいと思います。
 まず達成度テスト(基礎レベル)についての御提言でございますけれども,目的と活用方策につきまして,実行会議の今回の提言では,「高等学校教育の質の確保・向上を図るため,高等学校の基礎的・共通的な学習の達成度を客観的に把握し,各学校における指導改善や生徒の学習意欲の喚起,学習改善に活用」とございます。特に,達成度テスト(基礎レベル)は高等学校の単位及び卒業の認定や大学入学資格のための条件とはしないとございます。また,民間の検定や各種試験との相互補完により,生徒の学習習慣の定着を図る方策も模索という御提言でございます。
 一方で,部会,この部会で御提言いただきましたのは,「高等学校全体の質保証の観点から,生徒として共通に求められる基礎的・基本的な知識・技能や思考力・表現力・判断力等に関し,その学習到達度を把握する希望参加型のテストを全国規模で行う仕組みを設け,各学校・生徒の希望に応じて活用できるようにするなど,客観的な把握に基づく評価の充実を図る」ということでございます。
 また,入試での活用につきまして,実行会議の方では,「推薦・AO入試における基礎学力の判定に際して活用も可能とし,各大学の判断による活用を促進」ということでございます。
 この部会では,「例えば,就職やAO・推薦入試の場面などの対外的な場面において,自らの学力を証明できるようにし,生徒の学習意欲を一層喚起」とございます。
 また,対象者につきまして,先ほど少し御説明ございましたけれども,実行会議では,「できるだけ多くの生徒が受験」ということでございまして,部会の方では,「全国の高等学校・生徒が希望に応じて参加」ということでございます。いずれも全員参加型ということではございませんけれども,多様性を踏まえて,若干のニュアンスの違いがございます。
 また,4点目,実施方法につきまして,試験内容や形態についてでございますが,実行会議は,「教育課程における基礎的・共通的な教科・科目で,知識・技能の活用力・思考力・判断力・表現力なども含めた幅広い学力を把握・検証できるものとする」という提言でございます。
 一方,この部会では,「高校生として共通に求められる基礎的・基本的な知識・技能や思考力・判断力・表現力等に関する学習到達度を把握」ということでございます。また,この同調査に加えまして,学習時間や学習意欲など,生徒の学習状況を客観的に把握するための調査を定期的に行うことが必要という御提言もいただいているところでございます。
 五つ目でございますが,受験回数,実施時期,実施場所でございますが,実行会議の方では,「高校在学中に複数回受験できる仕組みとすることを検討」ということで,実施時期や実施場所については今後の課題ということで御提言いただいております。こちらの部会では先ほど御紹介させていただきましたように,審議の経過において,これらは今後の検討課題ということで整理いただいているところでございます。
 最後に,試験の名称でございますが,実行会議の方は,「達成度試験(基礎レベル)」(仮称)ということでございます。この部会では,「高等学校学習到達度テスト」(仮称)ということで御提案いただいていたところでございます。こちらの名称につきましては,今後,発展レベルとの調整も出てくるかもしれませんが,検討課題の一つだと考えております。また,欄外のところでございますけれども,試験の運営方法につきましては,再生実行会議の四次提言におきましては,大学入試センター等が有するノウハウ,利点を活かしつつ,達成度テスト(発展レベル)と相互に連携して一体的に実施することということが提言されているところでございます。
 また,お手元の資料の2点目でございます。「生徒の多面的な学習成果の評価の仕組みの充実・活用方策」ということで,こちらは実行会議につきましては,概要でございますけれども,一つは,国及び地方公共団体は,ジュニアマイスター顕彰制度や職業分野の資格なども活用し,生徒の多面的な学習成果の評価の仕組みを充実し,生徒が進学や就職にも活用できるようにするということでございます。また,「学校は,教育活動の質を向上させていくため,自らの教育活動の成果等を不断に検証する学校評価を通じて学校運営の組織的・継続的な改善を図るとともに,積極的な情報発信を行う」ということが提言されております。
 この部会では,御議論いただきましたのは,一つは,「幅広い資質・能力については,評価の妥当性の確保や信頼性の向上に向け,評価の手法や評価指標等に関する調査研究を行い,その成果を踏まえ,評価の取組を進める」ということでございます。また,「これらの研究成果につきましては,必要に応じ,指導要録の様式の見直し(記載事項の改善)などによる学習評価の充実につなげていくことも検討」ということでございました。また,最後に,「生徒の学習状況の評価だけではなく,その評価の結果を生徒に適切にフィードバックしつつ,日々の指導の改善・充実を図る。国においては,各高等学校・教員におけるこうした指導改善への取組を支援・促進していく」ということでおまとめいただいていたところでございます。
 以上,資料2につきましては,特に1枚目のところでございますけれども,大きくは教育再生実行会議の四次提言で提言されている内容と大きな方向性は,それほど違わない点も多いかと思いますけれども,こちらの部会でもまだ,今後の検討課題とされていた部分につきましては,まだ実行会議の方でも提言されていない具体的なテストの在り方についてなど,また,学習成果の評価の在り方について,更に御議論を深めていただきたいと考えております。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では,残り1時間ほどありますので,これから,今御説明いただいた教育再生実行会議の第四次提言及び事務局が整理いただいた論点を踏まえて,皆さんから御意見を伺いたいと思います。
 これまでこの部会でも,学習到達度テストという名称のテストの有り様とか,学習成果をどう評価するかという,その評価の在り方等々については議論はしてきましたけれども,今回,教育再生実行会議の第四次提言が公表されたということもありまして,その第四次提言を踏まえつつ,今後このテーマに関わってどのような検討をしていくべきかという,そういう今後の方向性とか作業の進め方も含めて,今日は広く委員の方から御意見を伺いたいと思っています。今日は自由に,そういう広いテーマに関係することですけれども,皆さんから御自由に御意見を伺いたいというような趣旨でございますので,よろしくお願いいたします。
 どなたからでもよろしいのですが,今日は11時頃に退席予定の安西委員がいらっしゃいますので,もしも御意見があれば11時までによろしくお願いいたします。
 では,御自由にどうぞ皆さんから。御質問も含めてあればお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。
 では,和田委員,お願いいたします。

【和田委員】
 失礼します。教育再生実行会議の提言のことで,先ほど中教審の審議を十分に踏まえてということを言っていただいたのですけれども,例えば3ページ,全体の3ページの(2)生徒の多様性を踏まえた学校の特色化というようなところですね。これは相当議論して,学校の特色化は打ち出さないというような形でこの部会ではまとめたのではないかなという気がしておりまして,多様な人材を育てるという方向ではあったと思いますけれども,学校をこのように分別化するような方向は取らないという形ではなかったのかというふうに思うのですけれども,この辺までこの部会の過去の議論を読み込んでいただいた上での新たな,または再提案なのかというようなところが非常に疑問を覚えるところであります。
 それから,試験のことに関してはこれからいろいろと出てくるとは思うのですけれども,既に小学校,中学校で行われている学習状況調査も,当初はあくまでも,日本の教育全体でどういうことが課題なのかというようなことを見直すための調査であったというような気がしますが,それが個別の学校の成績の公表というようなことに使われていっている中で,今度,高等学校のこのテストもそういうふうな形で利用されていく危険性をどう防ぐかというようなこと。もしこれが入試に使われるとすれば,今,我々の学校が御協力している中学校のような形の,高等学校での実施ということはなかなか難しいのではないでしょうか。やはり入試と同様なもの,入学判定の材料に使われるということであれば,誰が監督官をするのかとか問題の保管とか,そういうことも含めて,今のような形では無理だと思いますし,それから,現在の小・中のものはかなり一般の業者が実行に関わっておられると思うのですけれども,この辺も当然そういう形では許されないのではないかなというようなこともありまして,かなり,本当に実施していくにはいろいろなハードルがあるなと思います。ほかにもいろいろあるのですけれども,まずそれは個別の試験の課題が出てきた時に検討するとして,一番初めの点が少し気になっているところです。

【小川部会長】
 後の方のテストの実施に関わるいろいろな実務的な検討については今後議論するとして,最初の教育再生実行会議の第四次提言に関わる質問については,これは,高橋室長,よろしいでしょうか。というのは,この部会においても,高等学校の類型化の話は一時,議論としてあったのですけれども,類型化ということについてはいろいろな議論がありまして,かなり部会としては慎重に扱って,その類型化の形は,部会の整理の段階では報告の中には記載するというふうなことはしなかったのですね。
 今回この第四次提言の3ページの上の方の「学校の特色化」というふうな議論は,正にそういう部会で少し問題となった類型化に関わるような議論でしたので,その点について何か御説明をいただければと思いますけれども。

【高橋教育再生実行会議担当室長】
 はい。まず部会でのその辺りの議論まで詳細に実行会議で紹介をさせていただいたわけではありません。どちらかというと,この達成度テストの議論を中心に御説明したというのが実態でございます。それから,このような記述になった背景の一つは,第三次提言では,グローバル化やイノベーションの推進ということで,大学を中心に議論をしたのですけれども,その中で高校段階においてもそういったことが必要になるということで,具体的にはスーパーグローバルハイスクールやスーパーサイエンスハイスクールの取組,推進といった意見が既にあったことがあります。第四次提言でも,高等学校は普通科が7割ということで,多様化する生徒にふさわしい,学校において特色ある取組が必要ではないかという問題意識がありました。
 例えば,こういった学校がこれから推進され,ニーズになってくるのではないかということで,例示をすることが全体でまとまりました。必ずしもこういった学校の類型を明確に作ることが強く意識されていたわけではありませんが,こういった要素をこれからより意識していく必要があるのではないでしょうか。
 そのためには,ある程度学校ごとに特色を持たせることがあり得るのではないかということで,今回の提言がまとまっております。部会の議論とは違う方向になっているのかもしれませんが,そのように御理解賜れればと思います。

【小川部会長】
 和田委員,説明ということでよろしいですね。

【和田委員】
 はい。

【小川部会長】
 また議論があればよろしくお願いします。
 ほかにいかがでしょうか。安西委員,よろしいですか。高大接続含めて今後連携しながら議論を進めていかざるを得ないのですけれども,何かあればよろしくお願いします。

【安西委員】
 先ほど最初に高橋室長が言われましたように,この高等学校の問題と,それから,大学における教育の問題と,それから,大学入学者選抜の問題は,やはり全て一体というのでしょうか。同時に考えていかないと,並行してやっていかないと,全てがうまくいかないというふうに考えております。
 その中で,この高等学校のことについて一点だけ。大変少し風呂敷の広い話で恐縮でございますけれども,この達成度テスト(基礎レベル)が全国の生徒の学力を一定レベルに担保するために行われるのでしょうか。一方で,幅広い教養とかアイデンティティとか,そういうことが大事だということも言われておりまして,これは先ほどもありましたように,学力テストの延長線ではないでしょうか。あるいはセンター入試の一部ではないでしょうか。これは達成度テストの発展という方になるのかもしれませんけれども,非常にそこに集中した世の中の反応が出てくる可能性がありまして,そこの辺りのこの高等学校教育部会での共通理解が大事なのではないかというふうに思います。
 この点はむしろ再生実行会議の方にも伺えればというふうに,議論がどういうふうになっているかということも伺えればとも思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。では,川嶋委員,どうぞ。

【川嶋委員】
 2点お伺いできればと思うのですが,1点目は,今後,中教審の審議に詳細を委ねるということですが,中教審での時間の見通しというか,工程表というか,いつまでにどういう体制で最終的に取りまとめていくのか,事務局にお聞きしたいというのが第1点です。
 一部報道によると,来年3月までに答申を出すというような報道がございましたけれども,その辺りの見通しをお聞きしたい。
 それから,テストではないのですけれども,今日の論点の中で,多様な能力を評価するということに関わりまして,これまで話題になっている達成度試験以外にも様々な資格,検定等を活用するということを高校教育部会で議論してきたわけです。しかし,一方で,こういうテストで測定する,例えば基礎レベルですと,基本的な知識・技能の活用力や思考力・判断力・表現力といったような形のものを,この基礎レベルの試験で把握するということになっておりますが,では,高校教育の質保証といった観点で,我々は「コア」ということを考えてきたわけですけれども,その資格検定等で測れるものと,そのテストで測定しようとしているものと,いわゆる資格あるいはクオリィフィケーションとして同じと考えていいのかどうか。両者が高等学校の学力として保証する内容が果たして同じものなのか,同等性があるのかどうかということをテスト以外にも様々な検定や資格等を活用していく場合には,検討をしていかないと,テストで保証していく質である生徒の能力と,検定やそれ以外の試験等で保証していくというものが,同じ高校の生徒の能力として同等性や共通性がなくなるということに疑念が生じる可能性があるので,その辺の検討を今後必要ではないかなと思います。

【小川部会長】
 2点目の論点は正に部会で議論すべき論点かと思うのですけれども,その1番目の質問についてですが,これは事務局からお答えいただいた方がよろしいですね。つまり,今後の工程表ですけれども,そのほかに,本部会とその高大接続特別部会,それぞれ役割,基礎レベルと発展レベルという役割はもうあるのですけれども,ただ,全く関係なく,別々に議論するということも少しやはり,課題がありますので,その連携も含めて,どういうふうな手続と工程で今後進めていくのかというのは,事務局から一つ,今の段階での御説明で構いませんので。それと先ほど,安西委員から出た基礎レベルのテストをどういう性格のものとするかということについては,これもこの部会でもいろいろな議論があったかと思うのですが,その際,やはり全員一律というような形態は避けるべきだというような,そういう形で本部会ではこれまで議論してきたのですが,結果的に教育再生実行会議の提言の内容もこの部会の考え方とそれほど変わらないのですが,ただ,一時,教育再生実行会議の議論の中で,全員に一律にというような話もあったという話もありましたので,その辺は教育再生実行会議の中で,この基礎レベルのテストの性格をどのようなものとして捉えるべきかというふうな,恐らくそういう議論もある程度,そういう様々な議論があったかと思うので,少し教育再生実行会議の方で,この基礎レベルのテストをどういう性格のものとして想定するかに関わっての,何かそれに関わるいわゆる議論等々があれば,少し御紹介いただければなと思います。
 では,まず最初に,事務局からよろしくお願いします。

【小林教育制度改革室長】
 今後の見通し,スケジュールについての御質問でございますけれども,まだこれはと決まっているわけではございませんけれども,事務局といたしましては,大体年度内,今からですと現実的には四,五回,程度開催させていただきまして,何らかの一定の方向性をこの部会として頂ければと考えているところでございます。
 ただ,先ほど安西委員の方からも,また,部会長の方からも御指摘ございましたように,当然その内容といたしまして,高大接続特別部会の方とも連携を取っていく必要があると考えておりまして,その両者の検討状況の足並みなどもそろって,なるべく調整していきながら進めてまいりたいと考えておりますので,その高大接続特別部会の方の審議状況も考慮しつつということになろうかと思っております。
 また,より具体的に両者の連携を図っていくために,これも先生方の御日程の調整ということもございますけれども,もし可能でございましたら,特別部会の審議状況につきまして,この部会に御報告いただくような機会の設定ですとか,あるいは可能でしたら両部会の合同会議の開催などをさせていただきまして,そういったところで共通の意見交換あるいは御意見を頂くというようなことも検討したいと考えているところでございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 川嶋委員,いかがでしょうか。年度内に一定の方向をというふうなことのようですので。よろしいですか。
 では,高橋室長,よろしいですか。

【高橋教育再生実行会議担当室長】
 本文2ページ目でございます。2ページ目の1番に高校教育についてタイトルがあり,そのリードの部分の3段落目に,「併せて,教育活動の質の確保について,大学入試にその機能を頼るのではなく,高等学校教育の責務として,絶えず質の向上を図っていくことが求められ」るとあります。入試に頼るのではなく,高等学校が自らの責務として,質保証をしっかりと実施いただきたいと。では,具体的にその中身が何かということが,四角の中の(1)の最初の丸です。ここはかなり本部会のコアの議論を意識しているのですけれども,「国は,基礎的・基本的な知識・技能や思考力・判断力・表現力等について,高等学校において共通に身に付けるべき目標を明確化する」とあります。実行会議でそれが何かという踏み込んだ議論をしたわけではなく,むしろ,本部会での議論によって導き出されることを期待しているわけですが,その明確化されたものがしっかり身に付いているかどうかを測る具体の手段として,3ページ目の上から三つ目の丸に,「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)の試験内容は,基礎的・共通的な教科・科目の学習達成度について,知識・技能だけでなく,その活用力,思考力・判断力・表現力等を含めた幅広い学力を把握・検証できるものとする」とあります。併せて読みますと,高等学校自らがその一定の質を必ず保証する。高校生である以上,これだけは必ず身に付けさせるというものを国として決めて,それを検証する手段として,達成度テストを導入する。そういったことが実行会議の議論になろうかと思います。

【小川部会長】

 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。

【安西委員】
 高大接続特別部会の方とも是非連携を取って御検討いただければと,私も思いますので,よろしくお願い申し上げます。
 先ほど少し舌足らずで申し訳なかったのですけれども,達成度テスト,基礎レベルを実施することによって,やはり多少懸念されますのが,保護者から,業者から,学校から,もうこぞってテストの点数を上げることに集中して,高校教育全体の中で,その達成度テストの比重というのでしょうか,精神的な比重が非常に高くなる,そういうことがやはり考えられるので,それについてどういうふうに,この部会ないし教育再生実行会議が考えておられるのかということが,そこの点の共通理解が大事なのではないかということでございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。

【高橋教育再生実行会議担当室長】
 先ほどのできるだけ多くの生徒が達成度テストを受験してほしいというところなのですけれども,実行会議においては,この部会が方向を出していたように,希望参加型という意見が主ではあったのですが,高校生としての基本である以上は,全員が受けるのが望ましい。更に一歩踏み込めば,全員が受けるべきではないかという御意見を言う委員の方が複数いらっしゃいました。そこは少し議論になりましたが,全体の流れとしては,全員に義務付けると,進学しない生徒,就職するような生徒も多々ある中で,いろいろな課題も出てくるだろうということで,実行会議としては,義務付けまでには踏み込まない。ただ,希望参加よりは,少し一歩踏み込んだ形でできるだけ多くの生徒が受験することが望ましいというメッセージを出した上で,最終的にはこういう表現にまとまりました。
 ですから,実行会議の中でも多様な意見がございました。それを集約したのがこの表現であるという御理解をいただければと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。では,上野委員。そして,北城委員,どうぞ。

【上野委員】
 少し質問させてください。高等学校教育部会で,多分,委員の方々,随分御苦労してお考えになった論点の一つに,達成度テストをやる時に,数値的な評価を行いやすいもの,要は,試験であるとか,何かを具体的にやって,測定できるようなものの場合はいいのだけれども,実は今恐らく,より必要と思われるのは,そういうふうな判定が難しい生徒の成長状況ですね。そういうふうにして二つに分けて,最後にまとめたはずなのですね。
 それで,実行会議の方の文章のダイジェスト版の方を拾ってみますと,微妙な書き方がしてあって,例えば実施方法のところを見てみますと,基礎的・共通的な教科・科目でと書いてあるのですよ。そうすると,教科・科目で,いわゆる筆記試験等をやりやすいものについてだけを想定されているのか。恐らく人間が成長していく上で,いろいろな意味で判断力等が必要になってくるわけです。後は道徳心なんかもあるのでしょうか。いろいろございますね。そういうふうなことについて,何を達成度テストに含める,含めなくてもいいかもしれない,そういうふうなところはどうなっているのでしょうか。結局,最後にそこが非常に難しい問題にもなってこようかと思います。

【高橋教育再生実行会議担当室長】
 生徒に求められるものとしては,社会に貢献して責任を果たす規範意識や使命感といったものの重要性ということも議論がされました。ただ,今回,ここでは,推薦・AO入試における基礎学力の判定に際しても活用を促進するというイメージでございますので,基本的には,試験になじむような既存教科を念頭に議論が行われていたと思われます。
 ですから,基礎的・共通的な教科や科目に明示的な議論はありませんでしたが,多くの委員は,まずは英・数・国の3教科があって,理科,地理や公民といった教科をどうするのかといったことを念頭に置きながら議論されていたと思われますが,具体的にどういった教科にするかという個別には立ち入らずに,そこは今後の議論になるという認識だったと思います。
 しかし,だからといって,道徳心などペーパーで測れないものが軽視されるということではなくて,AO・推薦入試であれば,ペーパーテスト以外の要素で測る。高等学校で身に付けるものとしては,それは必要だという理解だったと思いますが,あくまで念頭に置かれていたのは,ペーパーテストで測れるものということで提言はまとめられております。

【上野委員】
 そうすると,確認させてください。割と短期間の間にかなりのところまで考えておかないといけないということになりますので,基本的にはいわゆる学力に関することを想定して考えていけばよいということになりますね。学力という言い方はよくないでしょうか。筆記試験で数値的に判断しやすいようなものについて。

【高橋教育再生実行会議担当室長】
 はい。裏を返せば,実行会議でも,規範意識や使命感などペーパーテストで測れないようなものまで測ることは想定していないという御理解でよろしいと思います。

【小川部会長】
 上野委員,よろしいですね。

【上野委員】
 はい。どうもありがとうございました。

【小川部会長】
 では,北城委員,どうぞ。

【北城委員】
 2点あるのですけれども,最初の資料1-1で,達成度テストの中で,基礎レベルと発展レベルとに分けているのですが,教育再生実行会議で,AO入試における基礎学力の判定に際しての活用促進と,こう書いてあります。しかし,発展レベルでも推薦・AO入試に使われると思うので,何となくこの推薦・AO入試というのは,余り難しい,学力の高い人を求めていない印象に見えてしまう。そうではなくて,発展レベルこそ,この発展レベルのテストとそのほかのことを考えて,推薦・AO入試をやるべきなのではないでしょうか。そうでなければ発展レベルのテストをした上に,また個別の大学で何か試験問題をやるようなことになりかねない。実際はそうではないということを書いてあるのですが,文章の書き方として,基礎レベルの方にだけ推薦・AO入試という言葉を入れると,推薦・AO入試をする学校は,何か非常に基礎的なことだけを対象とするように見えてる,AO入試に対する評価を下げてしまう懸念があります。,この辺の書き方は注意が必要ではないでしょうか。我々の議論でもそういうことを考えていく必要があると思います。特に高大接続部会においては,そういうことを考えていただきたいということです。
 2点目は,基礎レベルに関しては,全ての高等学校において共通に身に付けるべきもので,やはり試験やテストで把握できるものでいいのではないでしょうか。なおかつ,本来はそれを達成したかどうかの評価でいい。本来はですね。ですから,単に「合格した」というだけです。ただ,合格したという最終判定だけだと,その途中の過程で,どこまで自分が進んできたかが分からないので,合格に至るまでのどの段階に今いるということを分かるためにレベルを設けることはいいのですが,最終的には,これは合格したというだけでいい。生徒としての最低限の能力や,基礎的な学力は身に付けているということだけを見ればいいし,それ以外のところは,そこに至るまでの過程という扱い方でいいのではないかと私は思います。

【小川部会長】
 今の議論も今後更に本部会で深めていくべき論点かなと思います。その辺,もしも何か議論が教育再生実行会議の方でもあれば,またそれを少し御紹介いただければと思いますけれども,ほかにいかがでしょうか。
 では,相川委員,お願いします。

【相川委員】
 子供たちの基礎学力が身に付いて卒業できる。これは保護者としても,子供たち自身にとっても必要ではないかということは感じております。その基礎学力というところだけを到達度テストという形でいくと,やはり主要教科のテストという形で判定をされていくのかなと。これは今後具体的な活用のところで当然議論になっていくと思うのですけれども,私はそのテストのほかに,先ほどお話がありましたように,数値では判定か難しいものをどうするのかと。そこもプラスアルファしていかなければいけないのかなというふうにも思っておりますし,先ほど言いましたように,推薦とAO入試のところの基礎学力の判定。これは決して基礎レベルだけではなくて,先ほど先生がおっしゃったように,発展レベルの方のものもあるだろうし,そして,先ほど普通科が7割という中で,これを実際実施するに当たって,普通科といっても,幅が広いわけですよね。その中で,それぞれの普通科の中でどうやってこれを実施するのだろうということはこれからの議論になるといえばそれまでですけれども,非常にまだ漠然としたもので,少しつかめないなという気がしております。
 ですから,余りにも漠然としたものだけが独り歩きするのが少し怖いなという気がしておりますので,これまでのいろいろな具体的なものの審議には十分時間を掛けてほしいなと思っております。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょう。では,アキレス委員,そして,和田委員,そして,及川委員の順でお願いします。

【アキレス委員】
 ありがとうございます。2点ございます。
 1点目は,今,相川委員のおっしゃったことに少し関連していますけれども,全体の方向性とか枠組みは理解できますし,良いなと思うのですね。この部会で話したこともかなり生かされているなと思います。ただ,例えば冒頭で書いてあるグローバル化を見据えて,主体性,創造性,コミュニケーションとか,その辺りはテストでは測るのが難しい。正解があるような事柄でしたら採点できますけど,思考力とか表現力はなかなか正解というのがなくて,なおかつ,多様な人材を生むということになると,ますます判定が難しいですね。だからといって,基礎的な教科の採点しやすいものだけに限ってしまうと,日本の教育として強化すべき点がテストの中で測れないところがある。ですので,テストだけではなくて,違った方策を見付けていくことが必要だと思います。
 2点目は,到達度テストの基礎レベルというところなのです。目的が質の保証と学習意欲を高めるということでしたら,ただ単にテストを受けていただくということではなくて,その結果をどういうふうに御本人たちにフィードバックして,ああ,自分のできているところはここだなと,ここが足りないのだなと自覚してもらうと。では,どういうふうにしたらもっと発達できるのかというような話し合いをしていく材料に使うことができます。
 つまり,テストの点数を高めることが目的というよりも,その点数を指標として,どういうふうにその学習者の意欲を高めて,到達点に達してもらうかというところが重要だと思うのですね。ここは質問なのですけど,そういったフィードバックの重要性についてどんな議論がされたのでしょうか。そこがやはりこれからますます意識していくべきところだと思います。
 以上です。

【小川部会長】
 実行会議の方,何かございますか。では,お願いします。

【高橋教育再生実行会議担当室長】
 はい。おっしゃるのは正にそのとおりでございまして,この基礎レベルの方は,発展レベルと違って,単に学力を把握するだけではなく,学校における指導改善に活かすという文言が入っているのは,正にそういう視点でございます。これは小中学校で行っている学力・学習状況テストにおいてもそういうような要素がありますので,今回はそういう要素と,それから,推薦・AO入試にも活かしていく,両方を併せ持った形になっていきます。そうなってくると,先ほどの北城委員の御意見とも重なってくる部分があるのですが,入試の判定だけでしたら,合否やA,B,Cといった相当な大くくりでいいのかもしれませんが,指導改善に活かすとなると,その採点とか評価の仕方をどうするかというのは非常に多様な部分が出てくると思います。発展レベルではある程度,大くくり,段階的に示すということは書いてあるのですが,基礎レベルについてはそういう少し複合的な要素がありますので,あえてそこについては提言では触れておりません。それはむしろ今後のこちらでの御議論に委ねたいと思いまして,書かなかったというところでございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。よろしいですか。では,アキレス委員,もう一度よろしくお願いします。

【アキレス委員】
 そういうことでしたら,せっかく二つのレベルに分けているので,基礎は今やっている学習のところに集中して,大学受験に関しては発展レベルにするというように,違った指導法になる可能性もあると思います。その辺の整理がもう少しできると良いと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。その辺は本部会で今後検討していきたいと思いますけれども。
 では,和田委員,次お願いします。

【和田委員】
 失礼します。2点ほどあるのですけれども,1点目は高等学校の側から言うことではないかと思いますけど,大学が特色を持って生徒を選んでいく中で,いろいろな学力試験ではなくて,人物評価をする面接とかいろいろな要素を入れていくというのは,良い方向だと思うのですけれども,ただ,学力だけは共通のテストだけで測るというのは,これまた僕は少し極端な議論ではないかなと思います。学力だって,大学はそれぞれ求めるものが違うはずなので,それを一つの判定テスト,それが発展レベルであろうが,基礎レベルであろうが,良いと思うのですけど,それだけで学力はいいですよと。それで本当にそれぞれの大学が,自分たちが思っているような生徒を採るということにつながるかどうかというところが非常に疑問を持っている点でありまして,これは再生実行会議の方でももう一度御議論いただかなければならないかと思います。そして高大接続特別部会とか大学教育部会の方では真剣に御検討いただくべき内容ではないかなというふうに思っています。
 それと,今のアキレス委員のお話ですけれども,結局,各個人に対する成績の開示ということですよね。これがやはり複数回受けるということであれば, 1回目の成績は2回目を受ける前に開示があるべきでしょうし,そして,そういうものを見て,例えばそれが大学の出願につながるのでしたら,自分の点数が先に分かった上で,では,どういう大学を目指していくかということが決まってくると思うのですけれども,現在のセンター試験の方式であると,開示は全部の入試が終わってからという形になっていますので,この辺も大幅に変えていかなきゃいけないのではないでしょうか。
 それから,もう一つは,これも細かい話なのですけれども,技術的な話で申し訳ないですけれども,センター入試というのは各個人の責任で出願していますから,当然個人負担も発生しているわけです。小・中学校の学力状況調査は,国の施策でやっているわけですから,もちろんその受験料というのは発生していないわけでありまして,この辺のところの整合性といいますか。要するに,個人が受けるべき試験なのか,国としてやるべき学力状況把握,あるいはそれをフィードバックして各学校で教育改善につなげるためのものかというのは,やはり両方を兼ねるというのが本当にできるものなのかどうかということが非常に疑問を持っているところなので,その辺もお考えいただきたいなと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 少し順番変えますけれども,安西委員。すみません。

【安西委員】
 申し訳ありません。手短に。再生実行会議が10月31日に第四次提言を出されてから,まだ高大接続特別部会は開催されておりませんので,私見になって恐縮でございますけれども,大学入学者選抜に達成度テストの発展レベルをどう使うかということは,これはやはり私見ですけれども,大学が本当に主体性を持って判断してもらいたいことで,どうもテストというと,全て一斉に使われるのではないかという錯覚が起きますけれども,そこをやはり変えていくことがこれからの日本の発展,特に高等教育のためだと考えております。
 それから一方で,この基礎レベルにつきましては,先ほどからありますように,やはり基礎の学力をしっかり,高等学校を卒業するからには達成として持つということはやはりこれからの日本にとって極めて大事なことで,そこの部分についてこの達成度テスト,基礎レベルというのがあるのだということが共通理解されていって,生徒の成長というのはそれのもっと広いことだと思いますけれども,そのある部分として基礎学力の達成ということは,これからの日本,それこそ生産人口が減っていく中で大事なことだという,そういう共通理解がされていけば結構なことではないかと思います。
 以上です。すみません。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 及川委員,そして,服部委員という順でお願いします。では,及川委員,どうぞ。

【及川委員】
 この第四次提言についての感想ということで発言させていただきたいと思います。最初にこの提言で良かったなと思ったのは,基礎レベル,発展レベルともに大学入試センター試験等が有するノウハウ,利点を生かしつつ,相互に連携して一体的に行うというふうに明記されたことに大変安心したといいますか,これまでの議論が,私自身が整理されたような気がします。つまり,言い方が適切かどうかは分かりませんけれども,今年1月にこの部会でまとめられた審議の経過について出てきた「高等学校学習到達度テスト」(仮称)がこの大学入学者選抜のツールとして生かされる形になったと私は理解しています。
 したがって,先ほどもありましたように,この部会の目的というのは,大学入試にその機能を,要するに,教育の質の保証というのを大学入試の機能に頼るのではなくて,高等学校教育の責務として絶えず質の向上を図っていかなければいけない。そのためにどういう仕組みを作るかというのがこの議論だったと思いますので,その一部で出てきた,この到達度テストが基礎レベルの達成度テストとして,ツールとしては組み込まれたというふうに理解できました。したがって,高校教育の質の保証そのものは,要するに,高等学校教育の責務としてどうあるべきか,ということは引き続きここで議論されていくだろうというふうに思います。
 ただ,もともと「高等学校学習到達度テスト」(仮称)が出てきた時に,生徒の学習意欲の向上につなげるという指示があったと思うのですね。現場にいる私が,こういうことを言うのは,本当は良くないのかもしれませんけど,なかなか生徒の学習意欲の向上というのは非常に難しくて,どうしても,例えばテストであるとか試験であるとか,そういったものにどうしても依拠してしまうというか,そういうものが,言葉は悪いのですけど,何かインセンティブが付かなければなかなかその生徒の学習意欲の向上には結びつかないのではないかというような思いがありまして,そういった考え方も踏まえて,経過についての中では就職であるとか推薦・AO入試等で,自らの学力の証明となる。それが学習意欲の向上につながっていくのではないかというふうにまとめられたと思いますので,そういう意味ではこの基礎レベルのまとめにもありますように,推薦・AO等で活用されるというところは整合性があると思いますし,したがって,趣旨としては,希望参加型ということになるのだろうと思います。
 願わくは,是非推薦・AOを行っている大学の側が,大学入試の選抜方法はもちろん大学が主体的に決めることのわけですから,是非この基礎レベルの達成度テストを活用する。そういう動きになることが趣旨を生かすことになるのではないかなというふうに思いました。それが1点です。
 それから,現場はやはりどうしても,一番不安に思っていることは,在学中に受験が可能で,複数回。これが具体的にこれから検討されていくことだと思いますけれども,その実施時期であるとかによっては,現在の高等学校の学校行事等含めた教育活動にかなり大きな影響が出てきます。そういうことが予想されるので,現場では非常にどうしても消極的な捉え方がやはり事実多いと思います。
 そこは事実そういうことが出てくることなので,大きな改革なので,そういう考え方はどうしても懸念は否定しようがないと思います。そのためにも結局この教育の質の保証,それから,大学教育の質的転換,それから,大学入試のそういう1点刻みからの多面的な評価へという,それを一体的に行おうとしているわけですから,当然,高等学校の現在の教育活動に大きな影響が出ることは,これは間違いがないわけなので,そういったことがなぜそういう改革をしなければいけないのかということが先ほど説明ありましたけれども,広く社会の皆さん,要するに,現場,それから,教員,保護者等に広く理解される。そういう努力がやはり必要なのではないかなというふうに思いました。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では,すみません。服部委員,お願いします。

【服部委員】
 ありがとうございます。私も高校教育に関わっていて,高等学校,普通科,それから,商業,工業の校長を経験しておりまして,そういう場面,今の及川委員の発言とも少し重なることがあると思いますが,この部会での検討として,何らかの形で,日本の生徒のレベルを測る,そういう制度は必要であるということは思っています。それが第1点ですね。
 2つ目は,この議論の視点として,日本の教育そのものを改善する動きになるような,そういう方向性というか,そういうものにならないといけないと思います。そのためには評価の視点というか,どうしても達成度を評価するというようなことだと,あるいは総点方式みたいに,何か学習した成果を評価する,そういう到達度評価ということではなくて,学習の過程を評価するような動きというか,そういう評価の視点の在り方がもう少し議論される必要があるのではないでしょうか。
 それはある意味では,小刻みな評価というか,評価されることが新たな意欲とか生徒の行動につながっていく。学習意欲の向上につながっていくような,そういう評価というような考え方にしないと,到達度,達成度ということになると,少しそれは違うのではないでしょうか。それは私の専門,工業というか,商業ですと,小刻みにある意味では学習したところで資格,検定というような,そういうものが生徒にとって一つの目標になっていって,ここまで来たら次の段階というようなそういう3年間の学習のプロセスの中で,それを目指すことによって,向上する意欲も高まっていくという,そういう評価の在り方ということで,トータル的に達成度というよりも,むしろ繰り返すようですが,評価が新たな向上心とか,あるいは新しい行動につながっていくような,そういう評価というような考え方が必要ではないかなというように思います。

【小川部会長】
 野上委員,どうぞ。

【野上委員】
 私は昨日県内の十数人の経済人が集う勉強会で本日の討議テーマについて意見交換をしてまいりました。そこで話題となりましたのが最近立て続けに起きた経済界の不祥事についてであります。席上問題視されたのが高資質・高学歴の人材が多数存在するであろう大手企業や名門企業,そして老舗で何故あのような事件が起きてしまったのかということでありました。またそうした企業ではコンプライアンスやガバナンスに関して十分な知見があったであろうに何故起きてしまったのかという疑念から発生原因探しの勉強会となったのであります。
 勉強会では,この会議でも大いに議論が交わされた規範意識や道徳心がこれら企業に欠けていたというものでした。
 しかし,規範意識や道徳心の醸成を促すにしてもそうたやすいものではありません。それには先ず事の良し悪しを判断する考える力を付けなければなりません。そのうえで討議に不可欠なディスカッション力や自説を繰り広げるためのプレゼン力,更には相手を説得するディベート力,そして何よりも人との関係にとって不可欠なコミュニケーション能力を兼ね備えて初めてそうした不祥事を未然に防いだり,ストップがかけられるのではないでしょうか。ということになりますと学校段階の早い時期からこのような能力の醸成に努めていただけたらと思っています。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では,安彦委員,どうぞ。

【安彦副部会長】
 今の野上委員の御意見に対して,まず私の考えを申し上げますが,私はその点は,もう本当に繰り返し,学力に対して人格性,人間性,道徳性がいかに大事かということを申し上げてきたと思います。問題は,それを学校だけがやることなのか,高等学校ばかり,あるいは小・中学校の道徳教育ばかりにそれを求めますけども,繰り返し申し上げたいことは,道徳教育の部分というのは,これはもう学校だけでできることではない。学校と外とが協力してやるべきことであって,どうして学校だけに道徳教育を強化しろ,強化しろ,そうすればこうなるはずだという,そういう考えが抜けないのか。といいますか,一貫してこれまでも学校にばかり,それを要求してきて,保護者はほとんど何もやらない。企業もそれこそ学校に要求するだけ,今の企業にそれをする暇はない。言ってみれば,もう本当に学校だけにそういうことを要求するというのが,もう無理な時期に来ているということなのです。これはやはり学力にばかり,ある意味で問題関心が移っているので,根本的に人間教育としてのポイントを申し上げているつもりですが,それをどこがやるかについては改めてきちっと考えていただきたい。そういう意味では,学校に要求するということ,あるいは学校だけに要求されることについては,繰り返し反発を申し上げます。
 これをどうチェックするかということについても,ですから,これも,それを国がやるのか,企業がやるのか,家庭,保護者のあるグループがやるのか,そういうことについて,やはりしっかりと弁明を入れていただきたい。どこが,そういうことを,いつやらなきゃいけないかについて,改めてこれは,本当に国民全体でよく考えていただきたい,ということを思います。
 今のことは,非常に実はひとつ,内容と関わるのですけど,私たち教育界の方で,先ほど和田委員からも学校レベルからの特色化ということについて,類型と結び付けて御意見ありましたが,私は基本的に,その点についてずっと問題を感じてきたわけです。学校のレベルでといいますか,類型化につながるような特色化の出し方よりは,学校の中で,アメリカ型ですけども,アメリカの高等学校のように,その中でいろいろなコースなり,課程なりがあって,特色をいろいろ持つという,そういう,それがいわゆる総合制の本来の姿だと思いますが,そういうことを特色としては考えるべきで,学校レベルで,類型化につながるような特色化については余り賛成できない。
 その一つとして,今回の学習指導要領改訂で,共通必履修科目というのを設けたわけで,結局これがなかったことによって,言ってみれば,繰り返し申しますけど,本当にいろいろなタイプの,本当に高等学校と言えるのかという,保護者の間からいろいろそういう批判が出るほど,いろいろな高等学校ができてしまって,かえって,それでもって高等学校の姿がぼやけてしまった。これはもう他方で,保護者自身に,その形式上の学歴化志向というか,学歴主義化があって,とにかく卒業の資格だけはもらいたい。だから,どんな高等学校であれ,高等学校という名前があるところが欲しい。そういう非常に形骸化した,あるいは学歴志向の保護者の意識の問題に,ある意味では帰着するようなところもある。それを前提にして出来上がった,この高学歴社会といいますか,それが非常に形式化・形骸化して,硬直化してきた結果,先ほどからお話があるように,少しこういうテストを作ると言うと,みんなそのテストの点数だけに目が行ってしまって,その点でもって学校がこう,評定されてしまうのではないか。ナンバースクールになるのか,ならないのかみたいな,そういう流れにどうしてもつながってしまう。改めてそういうことを,何とか脱皮したいというか,そういう意味では,先ほどアキレス委員がおっしゃったように,本当に全体として,とにかく保護者も含めて,安西先生も言われましたけども,今のこの社会の在り方そのものについて,きちっと何か物を言っていただいた上ででないと,いくら高校のこの部分だけいじってもどうしようもないなと思う。
 実際,果たして本当にこの部分だけいじっても,本当に産業界が求めるようないい人材は育つのだろうか,という心配があります。そういうことも含めて,やはりこの,具体的には例えば,共通基礎的な教科・科目という名前を,私どもの部会も使っていますけど,本当にこれは教科・科目という言葉を出してしまうと,もうその二つの教科・科目について,複数の幾つかの教科を,つい先ほど御意見があったように,それだけをとにかく子供は勉強して,それでいい点取ろうとするような方向に流れていく。ですから,こういう出し方の問題も,教科・科目という名前を出さないで,何か中身そのものを具体的に考えていかないと,そういう間違ったといいますか,妥当でない方向に行きそうな気がします。
 それから,複数回との関係で言いますと,本当にこれは3年間で2回あるいは3回なんてやれるのか,というのは心配です。それを,しかも,先ほどどなたかおっしゃられたように,1回目が駄目だったら指導が入って,2回目はもっとという,そういう,これはある意味で,テストの性格としては形成的テストですよね。本来は,いわゆる総括的テストとして評定,到達度を見たいがために設けたはずなのですけど,それを形成的テストにするのだったら,本当に趣旨が違うので,そういう意味では,これは複数回やることに値するような,いわば現実的なものにしなければいけないし,同時にそうやって途中から指導が入って,それがちゃんと効果が出るまでの時間を確保して,複数回を考えなければいけない。そういうことも含めて,これから,この部会の方の場で考えなければいけないだろうと思う。
 それと,もう一点だけ。あと,実施主体が分からないわけですが,実施主体と,名称もそうなのですけど,達成度試験というだけではいかにも,どこの何の達成度なのか,高等学校なのか,大学なのか,何なのか,はっきりしませんし,実施主体がこれまた本当にどこになるのか。これは,一体的にと言われても,まだ何を核にするのかも表現されていませんから,入試センター辺りが核になってくるのかどうか。これも高等学校の方の基礎レベルの方だと少し変な気がしますし,その辺やはり改めて,そう簡単ではないのではないか。そう簡単に決まることではないのではないかな,というようには思います。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにあと,現場を抱えているというか,携わっている長塚委員,そして,長山委員,そして,中学校の伊藤委員に発言を求めたいのですが,では,長塚委員からどうぞ。

【長塚委員】
 我々の部会で検討していたことが加わって、二つのテストが行われるというような形で実行会議から出されてしまったのですけど、単純に考えますと、これは二重負担になるなという印象が非常に強いわけです。改めてこの実行会議の参考資料なども見ていたのですが、資料1-3の18ページですね。色刷りで、いろいろな図、評価が載っておりました。この18ページのところの下にセンター試験受験者数と大学入学志願者における受験者の割合があります。大学入学志願者のうちの、最新では73.4%がもうセンター試験を受けている。ということは、これは現役生でいっても、多分志願者66万人のうちの44万人ぐらいが受けていることになる。この数字はここにはないのですけれども、ほかの表から拾ってくるとそのぐらいになる。実は大学志願者の4分の3はもうセンター試験を受けているということで、現役生もかなりというか、実は現役志願者のうちの3分の2ぐらい、このセンターを受けているのですね。ただ、センターの結果を通して入っているわけでもないというだけのことであって、いわば発展レベルに相当するところの試験は受けているという実態があるのです。大学入試の在り方からこのような試験制度がもっと必要だというふうに言われているとすれば、このセンター試験の受け方、あるいは内容などをいろいろ工夫することによって、もっと受けるようになる。あるいは受けやすくなるようになるのではないかと思います。そういう意味では、大学入試との関係においては、このセンター入試を改変していくような発展レベルの試験の方法で十分対応できるのではないかなと思いますし、その中でいわば到達度というよりは、これは集団準拠型ですから、相対評価的に試験結果が並べられている中で、選抜的に使えるのだろうなというふうに思います。
 ただ、1点気を付けていただきたいのは、高校生の3分の1は私立生です。そのうちの半分は大学附属か、大学系列なのですよね。その中でも規模の大きな大学など、そこの附属校は内部進学ですから、内部テストで入るのであって、いわゆるこのセンターとかではなくて入れるわけです。この文部科学省の統計でいえば、結局こういう推薦制度の中に組み込まれているわけです。ですから繰り返しますが、高校生の3分の1にあたる、30万人のうちの半分が大学系の学校であって、そのうちの何万人かはこういう一般入試を通らないで、内部の推薦入試系列で入っているわけです。そういうところが文部調査統計には入っていませんので、この間の論議から抜け落ちているのだろうと思います。
 しかし、そういう生徒も含めて、この新しい発展レベルのテストというのをもしやるとすれば、それで十分大学入試関係は済むだろうと思います。しかし、それに加えて更に私どもの部会で検討していた希望参加型のテストが、何かまたAOとかそういうものにつながっていくということでありますが、これはやはり思考力などを問うような問題を中心にしていただかないと現場の負担が大きくなりそうです。つまり、結局ほとんどの生徒が基礎力を試すのであれば、ほとんどの生徒を受けさせるように学校は指導すると思われるからです。
 そこで、1年次は1年次の内容、2年次は2年次の内容という形成的な評価のその段階別の基礎力を試すようなことになってしまうのか。それともどの学年で受けてもいいとすれば、いつも同じ傾向、同じレベルでないと、共通性のある到達度というのは測れないわけですから、何回受けてもいいということなどからすると、これはいわゆる知識問題というよりも、思考力を問うような問題。準備を必要としないような、いわゆる全国学力調査でいえば、AとBの、Bの方の問題に係るような内容を中心にしていただかないと、そのための準備をしなければならないというようなことが起こると思います。
 途中段階の、いわゆる学力というのは各学校で、業者テストで、頻繁に行っていますから、改めて国を挙げてこの基礎力テストなどをやらなくても、実はもう全国レベルの水準も分かっていますし、いろいろなレベルでのテストを相当やっているわけです。基礎力も含めてですね。ですから、そういうものとは別として、いわゆる思考力型のようなテストをするのであれば、ある意味、二重負担性はかなり薄れるというふうに私は感じます。
 ちなみに、それは教科・科目などを想定するというものとは少し違ったものにすべきなのかなというふうに思いますが、全国学力調査がまた悉皆になったのですけれども、それでもこれはなかなか到達度を測ることができないということがある意味分かっています。去年と今年の小学生の学力調査の国語の問題のAは、去年と今年で平均点が20ポイント上がったのです。こんなのは到達度を測ったことになりません。これはその会議でも到達度を測っていることになっていないということは認められたわけですけれども、ですから、もう基礎レベルの小学校の国語の問題でさえ、到達度を測るということは非常に難しいということを、我々は冷静に認識する必要があると思います。実は基礎力の到達度を測るというようなことは非常に困難だと。まだまだそういう蓄積はないというふうに、ノウハウが蓄積されていないというふうに思います。
 結局はその平均点が出されてしまうので、平均点の序列化だけが今、大騒ぎになっているという事態です。学校別にどうするかというような話に今、問題が出てきているわけで、結局はそういうことにつながらないようにするためには、この希望参加型の基礎レベルのテストというのは、繰り返しになりますが、思考力のようなテストにしていく方がより望ましいのではないかなというふうに感じておるところでございます。
 長くなりましたが、以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。長山委員,どうぞ。

【長山委員】
 昨日,東京都の定通の校長だけですけど,少し数人で集まって,この話をしたのですけれども,定通の方もこの間お話,議論していただいたように,いろいろな生徒がいるということで,やはりこの達成度テスト等を受けて進学したり,何とか活用できる生徒がいるわけですから,その中で参加していくということになりますけれども,ただ,この後,この基礎レベルのテストですとか,それの内容がどういう,それこそ基礎レベルのレベルがどの程度のものか分かりませんけれども,一方で,やはりまだ定通の生徒で考えれば多くの生徒,それから,全日制の生徒にしてみても,やはり先ほどありましたけれども,かなり上の方のレベルから,学力の高い生徒から,学力がまだもう少し足りないという生徒がいろいろいるかと思いますけれども,そのようなところを踏まえると,やはり指導改善に活かすということを考えていけば,それは一つの方向としていいのだと思うのですけれども,テストだけに目を向けるのではなくて,もし指導改善に活かすということであれば,この前,どなたか委員の先生におっしゃっていただきましたけれども,この高等学校の教育の質の確保,向上ということを踏まえて,何が足りない部分かというところを補っていくためにも,方策とか,それから,手立て,人的とかいろいろな手立てを必要な部分につきましては,やはりメリハリを付けた対応をしていただきたいなというのが意見としてありました。
 それから,複数回受験といっても,定時制,通信制の生徒の場合だと,数は少ないですけれども,なかなか学習の進度の面でかなり差がありますから,進め具合もやはり少し進度が違いますので,そういうところをどういう形で受けられることができるのかとか,それから,実際に受けた場合,どの学年で受けるのかと考えると,全日制,定時制,通信制,ごく一部の学校でしょうけれども,抱えている学校では,例えば一斉に学校でやりなさいといっても,キャパシティの問題では難しいだろうというふうな話も出ました。
 そういうところがいろいろ,これから具体的なところの中で皆様方にお考えいただかなければいけないのかなと思っております。

【小川部会長】
 では,伊藤委員。

【伊藤委員】
 提言の3ページに生徒の学習意欲の喚起及び学習改善につなげると同時に,生徒の学習習慣の定着を図る方法も模索するというところがあり,特に中学校もそうですけれども,今でも生徒の学習習慣の定着が非常に大きな課題なのかなと思っていますので,これは是非模索,検討していく必要があるなと思います。
 それから,中学校では,既に全国学力・学習状況調査をさせていただいておりますが,教科に関する調査のほかに,生活習慣や学習環境等に関する質問紙調査があり,それが現場としては,特に指導改善に役に立っているところがあります。高等学校でこの達成度テストを行った場合,その指導改善ということでは,点数だけではなかなか難しいところがあると思います。それで,では,どこが分析をし,それをやっていくのかというところも課題になっていくのかなと感じました。
 以上です。

【小川部会長】
 予定の時間が少しオーバーしてしまいましたけども,ほかにございますか。1点だけ。では,川嶋委員。

【川嶋委員】
 実行会議の議論の中で,先ほど安彦委員からもお話がありましたが,複数回ということに関して,今の学年歴といいますか,4月入学,3月卒業という,今のアカデミーカレンダーの中の,本当にそれぞれの教育の行事等を含めて,しわ寄せのないような形で複数回できるかという,そういうフィージビリティー,学年歴についての検討というのはされたのか。この1点だけお聞きします。

【高橋教育再生実行会議担当室長】
 細部まで踏み込んだ議論はなかったと思います。ただ,一つの学年で2回やるということもあるし,2年生と3年生でといういろいろな形の複数回があるだろうということで,ここは非常に広い意味で在学中の複数回,しかも検討ということになっております。実行会議で,学年歴に照らしたフィージビリティーまでは踏み込んでいないというのが実態でございます。

【小川部会長】
 よろしいですね。今の論点も部会で少し,どこまで議論できるか分かりませんけれども,やってみたいなと思っています。
 では,時間が過ぎてしまいましたので,今日はこれくらいで終わらせていただきますけれども,本部会としても学習到達度テストという案で意見の整理をしてきたのですが,いよいよ教育再生実行会議の提言もまとまって,そういう段階でのテストの具体の制度設計を本部会でも議論していくことになります。今日の段階でも,実際,どういう制度設計するかに関わって,いろいろな新たな論点も出てきたように思います。かなり技術的な課題についても出てきていますので,恐らく3月末までというふうなことを考えると,恐らく基本的な方向性や制度設計は本部会の責任としてやらなければいけないと思うのですが,その際どこまで具体の技術的なテストの中身とか,複数回の件とか,指導改善に活かすようなテストの実施時期とかその内容等,そういう技術的な面,詳細全てにわたってこの本部会で議論するというのは,本部会で,今言ったような全てのことを議論するというのは荷が重いというか,本部会の本来の趣旨にもそぐわない面もありますので,これは少し事務局とも相談して,本部会で議論すべき,その辺のところの論点整理ですね。再度確認して,次回以降に皆さんにはお示しして,3月末まで本部会で検討すべき論点というのを改めて部会で確認して,議論を進めていければなと思っています。よろしくお願いします。
 あと,今日の議論の中で,やはり一つ大きな特徴が出てきたのは,テストの実施ということで,具体の制度設計は当然,本部会としてもやることになるのですが,多くの委員から出てきたのは,そういうテストになじまない資質・能力を高校教育の教育活動を通じて,どう図っていくのかという,そういう論点も本部会の重要なテーマとして意見の整理のところではまとめたのですけれども,その点についてももう少し踏み込んだ,本部会としての議論は必要なのかなということを改めて,今日,皆さんの御意見を伺いながら感じました。
 非常に大きなテーマで,残された時間は非常に少ないので,ひょっとして本部会の開催が増えるのかなということを少し懸念して,これからいろいろ大学,高等学校,忙しい時期に入るかと思いますので,また委員の方にはいろいろ御迷惑を掛けるかと思いますけれども,審議に御協力いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは,今後の本部会の開催含めて,事務局の方から御説明いただければと思います。

【小林教育制度改革室長】
 ありがとうございました。次回の日程につきましては,後日,委員と調整させていただければと存じます。また,先ほど御意見いただきましたように,高大接続特別部会との合同の会議なども日程的に可能かどうか,その調整も含めてまた改めて御連絡をさせていただければと存じます。
 また,今,部会長からもおまとめいただきましたように,本日,資料2でお示しいたしました論点について,今後更により具体的にまた深めて御議論いただき,また整理していく必要があるかと思いますとともに,御指摘いただきましたように,この部会で何を3月までに検討すべきか,という論点や事務局で検討すべき論点ということも併せて整理させていただければと思います。
 本日はまことにありがとうございました。

【小川部会長】
 ほかに委員の方,よろしいですか。なければ,これで今日の部会を終わりたいと思います。ありがとうございました。

―― 了 ――

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