高等学校教育部会(第26回) 議事録

1.日時

平成26年2月17日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

ホテルフロラシオン青山 3階 孔雀

3.議題

  1. 高校教育の質の確保・向上について
  2. その他

4.議事録

【小川部会長】
 定刻になりましたので,ただいまから第26回高等学校教育部会を開催したいと思います。委員の皆様には,お忙しい中御出席いただきましてありがとうございます。
 本日は上野政務官が,後からまたお見えになられるかと思いますけれども,よろしくお願いします。
 審議に入る前に,配付資料の確認を事務局からお願いいたします。

【小林教育制度改革室長】
 本日の配付資料は,お手元の議事次第のとおりでございます。まず資料1-1が高等学校教育部会審議のまとめ(素案),資料1-2が高等学校の広域通信制の課程の在り方について(案),資料2-1が達成度テスト(基礎レベル)(仮称)(案),資料2-2が前回の主な御意見,資料3が次回の日程についてでございます。
 また参考資料1が本部会の名簿,参考資料2が達成度テストに関する参考資料と致しまして,中に2種類,学習指導要領の共通の履修教科・科目の資料と,それから,御参考に,高卒認定試験の概要について参考資料2の中にとじております。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 資料の方はよろしいでしょうか。
 それでは,議事に入りたいと思います。本日は,高校教育の質の確保・向上に関係して,二つのテーマについて皆さんに審議をお願い致したいと思います。一つは,高等学校教育部会の審議まとめに向けて,前回配付しました骨子案を基に審議まとめの素案を審議・作成いただきたいと思っています。年度末をめどとして部会としての取りまとめを行いたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 2点目は,達成度テスト(基礎レベル)について,これまでの議論を踏まえて,前回様々な意見が出ました。そうした意見も組み込みながら事務局でたたき台を今日作成いただきましたので,第1のテーマが終わった後,事務局の方からたたき台を説明していただいた後,達成度テスト基礎レベルの在り方について皆さんから御意見頂ければと思います。よろしくお願いします。
 それではまず,第1のテーマに入っていきたいと思います。資料1-1,資料1-2,事務局の方から説明をお願いいたします。

【小林教育制度改革室長】
 それでは,お手元の資料1-1をごらんください。こちら,小冊子のようになっているものでございます。一昨年の8月と昨年1月までにそれぞれ審議経過をおまとめいただいたものをベースに致しまして,それをこの部会の今年度のまとめに向けてまとめさせていただいたものでございます。特に昨年の1月からの追加項目につきましてはアンダーラインをさせていただいております。
 1枚おめくりいただきますと目次がございます。大きな構成と致しましては,「はじめに」ということで,第1章が高校教育をめぐる現状とこれまでの取組,第2章が高校教育の質の確保・向上に関する課題・基本的考え方,第3章が高校教育の質の確保・向上に向けた具体的な施策,最後に「おわりに」ということで構成させていただいております。
 第1章では,生徒を取り巻く状況の変化ということで,個別の生徒の多様化とか,基礎学力の不足,学習意欲の低さ,大学入試の選抜機能の低下といった,個別の生徒を取り巻く状況の変化についてまとめさせていただいております。また,9ページぐらいから,学校や学科など制度的な教育課程のこれまでの変化についてまとめさせていただいております。また,11ページですが,高校教育の質の確保と多様なニーズへの対応の要請ということで,そういった要請についてまとめさせていただいております。同じ11ページの,4点目と致しまして,これまでの質の確保・向上に関する取組について紹介させていただいております。高校改革のこれまでの取組などがその内容になっております。
 また,第2章でございますけれども,本部会の審議のまとめをお取りまとめいただいている中での高校教育の課題と基本的考え方ということで,特に17ページをごらんいただきますと,この報告をまとめるに当たっての基本的な考え方として二つ大きな柱を挙げさせていただいております。
 一つが共通性の確保ということで高校教育に共通に必要とされているような共通性の確保と,一方で非常に多様化した実態を踏まえた多様化の推進ということで,この二つのバランスを取りながら,この部会では,共通性を確保するということで,全ての生徒に共通に身に付けさせる資質・能力について,コアという御議論をいただきましたけれども,コアと位置付けた上で,その範囲,要素と評価の在り方について整理したということ。
 17ページの2点目でございます。このように共通性の確保を図る一方で,高等学校や生徒が多様化している中で,様々な幅広い学習ニーズにきめ細やかに対応することも求められ,両者のバランスに配慮しながら,高校教育の質の確保・向上を図ることが必要であるということ,現在抱えている課題等も踏まえつつその基本的な考え方を示すこととするということで整理させていただいております。
 同じ第2章ですが,その次の2番のところで,まず全ての生徒に共通に身に付けさせる資質・能力の育成ということで,その中身について挙げさせていただいております。特に1月までの審議のまとめでおまとめいただいている内容が中心になっております。また,20ページからですが,こちらは多様な学習ニーズへのきめ細やかな対応ということで,様々な学科や課程における課題とその対応,それから,経済・社会の方の変化への対応等について挙げさせていただいております。
 また,25ページから第3章でございますけれども,第2章の基本的な課題認識とか,あるいは基本的な考え方に立った上で,具体的な施策についての在り方の部分でございます。25ページから第3章でございますが,最初の部分が共通の質の確保という観点から,達成度テスト(基礎レベルの導入)ということを入れさせていただいております。ここの部分はまたこれから御議論いただくということで,25ページは一部空欄にさせていただいております。
 また,27ページからは,特に高校教育の特質として,学校から社会・職業への円滑な移行推進ということで,職業教育等の重要性についての施策でございます。
 また,29ページからは,多様な教育活動の推進ということで,定時制・通信制課程などにおける困難を抱える生徒等のための支援・相談の充実のための施策,あるいは高等学校段階の特別支援教育の推進,それから,優れた才能・個性を有する生徒を支える取組,あるいはICTの活用による機会充実など様々な多様な教育活動を支えていくような施策についてまとめさせていただいております。
 また,そのほか,そのための環境整備といいますか,教員の資質向上と学校の組織・運営体制の改善・充実,それから,最後,30ページになりますが,広域通信制課程の在り方の検討ということでまとめさせていただいております。
 すみません,幾つか記述上のミスがございましたけれども,それについてはこの場では省略させていただきます。また次回修正したいと思います。
 続きまして,資料1-2でございます。今の審議のまとめの一部,最後にございましたけれども,広域通信制課程についてでございます。前回この部会で調査結果について御紹介させていただいたところでございますけれども,そこで本年1月にまとめた調査結果で浮き彫りになりました課題と致しましては,資料1-2の上の部分に挙げさせていただいております。
 一つはいわゆるサテライト施設,面接指導が行われる施設でございますが,そういったところの所在の把握とか情報提供が広域通信制の場合難しくなっているということ,それから,様々なサテライト施設で行われている教育活動状況の把握ができていないということ,あるいは管理・指導体制などが十分ではないという人的な制約などについての課題が挙がっておりました。また,昨年行われました調査の中でも,一部の民間教育施設による教育活動と混然一体となった運用とか,あるいは択一式によるだけの添削指導とか,いろいろな確認,成果の評価等を行わない面接指導など不適切な教育活動の存在も昨年の前回の調査で明らかになっているところでございます。
 そういった課題に対して,今後の通信制課程への対応の在り方ということで,案を2のところでまとめさせていただいております。広域通信制高校ガイドラインの策定ということを例えば取組として行ったらどうかということでございます。例えば今後,有識者会議などを立ち上げまして,専門的に通信教育における添削指導,面接指導,試験の在り方とか,あるいは学校評価結果の公表の推進,それから,サテライト施設の把握徹底,所轄庁の区域外の教育活動の把握など,今回の調査などで課題となった点につきましてガイドラインをまとめて,そういうところに取り組んでいくということを有識者会議等で御議論いただければと考えております。また,情報公開の促進とか第三者評価の仕組み創設といったことについても検討課題として挙げさせていただいているところでございます。
 以上,資料1-1と1-2の御説明をさせていただきました。

【小川部会長】
 ありがとうございます。この高等学校教育部会も2年以上審議してきまして,今日のこの素案は,御存じのとおり,1年前,「高等学校教育部会の審議経過について」をベースにしながら審議経過報告をまとめ,公表した以降,1年以上また議論してきているわけですけれども,この間の意見を更に組み込んで素案としてまとめたものです。先ほど報告ありましたように,平成25年1月にまとめた「高等学校教育部会の審議経過について」をベースにしており,それ以降新たに付け加えた内容については,アンダーラインを引いた内容が加わったというようなことになっております。
 それでは,これから四,五十分,この素案について皆さんから御意見頂きたいのですけれども,内容が大部ですので,二つに分けて議論させていただければと思います。最初,「はじめに」と「高校教育をめぐる現状とこれまでの取組」,この1章,ですから,16ページまでまず御意見をお伺いして,その後,17ページ以降,第2章,第3章について御意見を伺うという,そういう二つに分けて審議を進めさせていただければと思います。よろしくお願いします。
 それでは,まず最初に,「はじめに」及び第1章「高校教育をめぐる現状とこれまでの取組」について,皆さんの方から御質問,御意見頂ければと思います。どなたからでもどうぞ。
 上野委員,どうぞ。

【上野委員】
 お送りいただいた資料1-1の,今,話をしないといけない部分について,例えば「はじめに」のところの第4段落,いろいろな背景を考えますと,第4段落のところに「高等学校の果たすべき役割」というキーワードが入ったところがございますね。「高等学校は,中学校卒業後のほぼ全ての者が」うんぬんというので始まっているところです。高等学校が果たすべき役割と責任がどうも明白になってないのではないかしらという感じが少ししております。ある程度読むと分かることにはなっているのですけれども,そういうふうなことをもう少し分かりやすく書き込んではいかがでしょうか。例えば一番最後の行のところに,「高等学校が果たすべき役割と責任は極めて重い」と書いてございますけれども,例えば将来の我が国の発展のためにというようなことだとか,将来の社会の発展のためにとか,何かそういうふうなことを書いておくとより何をすべきか,ということが分かるのではなかろうかと思いました。
 それから,第2点は,第1章の1の(3),9ページの第2段落,丸印が付いているところ,「大学入試については」で始まるところです。その部分の下から3行目,「ては,多くの大学において」というので始まっている部分です。ここでは「大学入試の選抜機能が低下し」ということと,高等学校の教育について記されています。「大学入試の選抜機能が低下し」というのはそのとおりの事実なのですけれども,もっと大事なことは,これによって大学が日本の社会に対して果たすべき役割とか責務・責任が果たせなくなってきているということなのです。例えば選抜機能が低下していることの結果として大学が社会に対して果たすべき本来の役割や責任も低下している要因となっているとか,何かそういうふうなことを書き込んだ方がより本来目指すことを書けるのではないかと思っております。
 その次に,11ページへ少し行っていただいて,一番上の3の最後の丸印の部分,ゴシックの4の上の部分です。ここにはこの最後の部分に付け加えて,例えば「また一方で,より高度な教育や経験によって一層向上し得る生徒への対応は十分とは言えない」というふうなことを書き込む必要はないのだろうかと思っております。
 この報告はおそらく多くの生徒さんに対する新たな教育へ向かっての手立てを書いているのだと思うのですけれども,そのウエートがある範囲に偏り過ぎている。そのために,手立てをするというのが,得てして学業について行きにくい人たちに対するものとして書かれているところが多くて,おそらく手を掛けてあげないといけない人はより優秀な人の中にもいるだろうという視点が不足しているようです。さらに,学業は中くらいの山の中にあったとしても,そういう人たちに手を掛けてあげるとドンドンと教育効果が上がり得る人たちがいること。そういう人たちに対する手立てがどうもまだ日本の教育としては少ないのではなかろうかという感じがします。
 それに関しては,これまでの取組のところで例えばスーパーサイエンスハイスクールの取組などが行われているというようなことが書かれています。多分あれも随分成果を上げておりますけれども,実は平均してみると,選抜制というキーワードが,第1回目のSSHの取組のときを除くと排除されてしまっている場合が多いと言えばよろしいでしょうか,希望制になってしまっている。すなわち,もう少し手立てを考えるといろいろな可能性が出てきそうな気がするということもありますので,何かそういうふうな手立てをする必要がまだあるという意味で,そのような点に対する手立てが十分とは言えないというキーワードを入れてはいかがでしょうかと思っております。

【小川部会長】
 ありがとうございました。3点,更に詳しく書き込んでほしいというふうな趣旨の発言だったと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 長塚委員,どうぞ。

【長塚委員】
 8ページの(2)で基礎学力の不足と学習意欲の低さということが指摘されているわけですが,中段に,OECDのPISA型の調査では全体として国際的に上位にあるけれども,下位層はまだ依然として十分な学力が身に付いていない生徒もいるとか書いてあります。問題の本質は,むしろ学力よりも,学習意欲が国際的に見ると向上していないということが問題ではないかということがこの調査で分かっているのではないでしょうか。いわゆる学ぶ楽しさとか,もっと探究したいとか,そういう意欲の面がこれまでの高校教育では余り成功していないということでしょう。
 それが忘れられると,これからいわゆる達成度テストというようなテストを基にして学力を上げていこうということなのですが,学力の要素の一つである学ぶ意欲という面を上げることに本当になるのかどうか。ここのところをしっかりと押さえた上でこれから対応しなければいけないのではないかという意味では,ここにその言葉をしっかりと書き込んでおくべきでしょう。いろいろなことが考えられるのでしょうが,教育の手法などを更に工夫するとか,そういうことがテストなどとともに今まで以上に必要とされているのではないかというふうに,国際的な比較からするとあえてここに入れた方がいいのではないかという気がしております。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ,川嶋委員。

【川嶋委員】
 前半の部分,ページ数で行くと4ページで,「はじめに」の(1)の検討の背景の部分はほぼ全て前回の審議報告にはなかったところを新たに書き起こしたものです。「共通性の確保」と「多様化の推進」ということで,そもそも多様化が非常に進んでいるという事実はあるわけでございますけれども,それを何とか押しとどめようとしてこの高校教育部会が始まったと私は理解しているのですが,さらに最後のところに,「「多様化の推進」も併せて進める」と書いてあります。これでは,私としては日本の高校教育はどこへ向かうのだろう,ますます混沌とした世界になってしまうのではないかと大きな違和感を覚えます。この原案をあらかじめ送っていただいて読ませていただいて,まずここの表現に引っかかりを覚えました。以上です。

【小川部会長】
 推進という言葉が少し適切でないような。どうしましょうかね。その辺少しいろいろお聞きしたいのですけれども。個々のニーズに更に丁寧に対応するというような趣旨で全体的には書かれているのですが,その趣旨が推進というようなことで,やはり書いている中身とそぐわないのではないかというふうな指摘を言われると,そうかなというように確かに思いました。全体的には,更に多様化を推進するというよりも,皆さんこれ読んでお分かりになるように,一人一人の多様な適性・能力に丁寧に対応していくというような趣旨で一貫して書かれているので,その辺はやはり言葉とすればいかがなものかというような御指摘で,これ少し検討した方がいいかなと思います。ありがとうございました。
 ほかにいかがですかね。
 金子委員,どうぞ。

【金子委員】
 先ほどの8ページのところですが,基礎学力の不足と学習意欲の低さというところで,これが大体この委員会,いろいろな議論をするときの初発になってきたところだと思います。国際的に見ても,PISAでは表面的には学力は高いけれども,下半分あるいは3分の1ぐらいのところはむしろ差が非常に大きくて,かなり相当な大きな低学力層が存在する。しかも,今御指摘のあったように,学力というよりはむしろ意欲で,PISAでも意欲を聞いていますけれども,PISAの調査で非常に明らかなのは,日本の高校生はやらなければいけないからやっているという反応をしているので,面白いと思っていないと。これ,非常に深刻な問題だと思います。
 それから,その前のところの学習時間ですが,これも経時的に見て減っていますし,現在,高校3年生の段階でほとんど勉強していない人が6割ぐらいまでということになっているわけです。
 ここで何が問題なのかは,結局,高校生が自分で自律的に学習するといいますか,高校生にとって今,勉強とは授業に出ているということであって,自分でそれを基に学習するという対応はできていない,その時間も非常に不足しているところが基本的な問題であるということが非常に重要な初発の問題で,そういう意味で自律的な学習を引き出していくことが重要だということがここでは述べられているとは思いますけれども,そこのところはもう少しそういった言葉を使って,基本的な姿勢として強調すべきだと思います。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 服部委員,どうぞ。

【服部委員】
 前回の時に到達度とか達成度というには,高校教育の到達目標とか達成目標がどういうものかということについて,やはりここにいる委員全体の中で本当に共通認識があるかどうかというところが少し疑問に思うわけです。何をもって高等学校の卒業程度とみなすかとか達成とするかということで,到達目標が明らかになって,それに対してどれだけ到達したか,達成したかということについて,後半のことにも関連するのですが,細かく読むと,それが随所に出てきているのですね。
 例えば,お手元の資料の12ページ,高校教育として求められる資質の確保・向上に向けたこれまでの取組ということで,ここではっきりと,公的な制度・仕組みによる質の確保・向上には,高等学校の教育の質の確保・向上のための公的制度・仕組みとしては,「設置基準等の基準と設置認可,学校評価,学習指導要領,単位認定・卒業認定といった枠組みが定められており,これらにより」とずっとうんぬんとある。これは余りにも幾つかのことを,設置認可とかいろいろなことで学習指導要領が少しそれらの中にある意味では埋没しているような感じを受けるのですが,もう少し明らかになってくるのは13ページの方です。
 13ページの4の生徒の資質・能力の状況の把握,「高校教育の出口段階での質の確保は学習評価に基づく単位の認定や卒業認定により担保される。高等学校の学習評価は,学習指導要領に示す各教科・科目の目標に基づき,各学校が生徒の実態や地域の実態によって」とずっと書いてある。学習指導要領,これは前回も申し上げましたが,全ての高等学校,これは全日制・定時制を問わず,あるいは普通科とか専門科とかを問わず,国が出している学習指導要領に基づいてやっているという,それを標準にしているということがここで見れば分かるのですね。
 その下の丸のところにも,「新しい学習指導要領の理念を実現していく上では,各高等学校等が,新学習指導要領における各教科・科目の狙いを踏まえつつ,個々の生徒の学習評価をいかに実質化させていくかが重要となる」と。そういった出口というのはあくまでも現実に各高等学校等が行っている学習指導要領に基づく教育内容に基づく,それを測るのだといったことが前半に述べられている。これは非常にいいことだと思っています。
 要は後半につながるのですが,飛びますが,25ページ,少し先に行ってしまうかもしれませんが,高校教育の質の確保・向上に向けた施策の学習成果や教育活動の把握・検証,達成度テストというふうに出てきたところには,これまで丁寧に学習指導要領の内容で評価するのだ,出口のところでもそれが本来の姿だというような意味があるわけですけれども,ここへ来て前半に述べた学習指導要領のところが少しつながっていないような気がするのです。
 あくまでも達成度テストというのは,前回も申しましたが,やはり学習指導要領の内容の延長上にあって,そのことによってそれぞれの生徒一人一人がどのようなところに達成したか,到達したかというようなことを見るのだというような意味で,前半の学習指導要領の持つ意味を受けて,そして,後半のところに,そのことを今回の到達度テストでやるのだというようなことをつながらせる必要があるのではないかということを強く思いました。以上です。

【小川部会長】
 今の服部委員の趣旨は,前半の12,13ページ辺りの趣旨を再度,達成度テストに関係付けてもう一度書き込んでほしいという趣旨ですか。

【服部委員】
 はい,書き込んで。

【小川部会長】
 分かりました。

【服部委員】
 そうすることによって,今度の目的というか,各学校が取り組むべき姿勢が明らかになるというふうに考えるわけです。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 今の点,後半部分でまた少し意見交換をしてみたいと思います。
 「はじめに」,第1章,16ページまで,ほかにございませんか。
 どうぞ。

【荒瀬委員】
 ありがとうございます。4ページの「はじめに」の第3段落ですけれども,「そのような中にあって」という文言です。この5行は,高校教育に求められるものが大変厳しく書かれていると思います。実際にこの部会がスタートした時には,こういったことに少しでも近付けていくために必要なことは何なのかということを考えていく中で,現在の高等学校教育の課題を明らかにしていこうということで始まったと思っております。
 今議論の対象になっている前段部分というのは,そういったいろいろな困難な課題がある中で,高等学校教育が一定の取組をし,これは都道府県単位でもし,学校単位でもし,私学を想定したものかもしれませんが,個々にそれぞれの団体で努力しているということは書かれているので,高等学校教育に携わってきた者としては大変ありがたい表現だとは思うのですが,しかし,実際に課題が消えたわけでは決してなくて,その課題をどうしていくのかということが後半部分で具体的に明らかにされていかなければいけないということを思います。
 私も学力の重要な3要素の中で,それこそ後半部分に関わることですけれども,高校生全てに共通性として持たせたいと思うのはやはり学習意欲であります。知識の量とか,その知識に基づく活用力とかに差があったとしても,学習意欲については当然のことながらきちっと持っていなければ,生きていくということでは大変困ると思います。ところが,その学習意欲が問題だというときに,学習意欲を重視すべきだというだけではどうにもならないと思うのです。基本的な知識がないと,知識に基づいて物を理解していくとか,また新たな発見につながるような取組をするとかいったようなことは生まれないと私は思います。
 そういったことについて,この前段部分というのは比較的取組に対して,様々こんなこともやっている,あんなこともやってきたということで好意的に書かれてはいますけれども,これを書いてほしいとかおかしいとか言う気は全くありませんが,しかし,これで課題が消えたわけではないからこそ,後半部分の,具体的にどのような取組をしていくのかということにつながっていかなければいけないと思うのです。その点の,私たちのこの場というか全ての高等学校の関係者の思いとして,こう言っていただくのはありがたいけれども,しかし,これで課題が消えたのではないのだ,課題は今もあるのだということをしっかりと認識していかなければならないということを申し上げたいと思って発言を致しました。以上です。

【小川部会長】
 荒瀬委員,何か具体的にこういうことを加筆してほしいとかいう,そういうことがもしも今の発言の延長線上で何かございましたら。

【荒瀬委員】
 それは何かすごくひっくり返すようなことになってしまうのですけれども,こうしていろいろやってきたのだけれどもこれだけの課題が今も残っているということがあって,次につながるべきものではないかなと私は思っています。だから,一つ一つといいますか,全体の書くトーンとして,様々な取組をやってきた,これは事実です。いろいろな努力が今でも払われているのも事実です。全国の高等学校関係者は,本当に頑張っているかどうかというと頑張っているのだろうということを私も思います。
 しかし,それでも生徒の学習意欲が高まらないとしたら,これまで見過ごしているものがあるのではないかなということを思います。私はその点で一つ思うのは,やはり基本的な知識が十分に高校生に対して教えられていないのではないかと。その部分について私たちがはっきりと見るための対策といいますか,対応を考えていかないといけないということにつながっていかないといけないのではないかなということを思っているということであります。

【小川部会長】
 ありがとうございます。そういう文脈であれば,達成度テストの意義付けということも再確認できるのかなと思います。ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 では,なければ, 2章,3章に審議を移して,それでまた最後,初めから全体について意見を伺うというふうにしたいと思いますので,よろしくお願いします。それでは,2章,3章,17ページから30ページまで,皆さんの方から何か御意見がございましたら,よろしくお願いいたします。
 金子委員,どうぞ。

【金子委員】
 これはせっかくここまで書いていただいたので,この内容についてはそんなに不服はないのですが,ただ,私はここの段階でまだかなり明確に議論されていない問題があると思います。それは教科と基礎学力との関係です。この案の後の方に基礎レベルの試験のアイデアが出ていますが,それは基本的に私は教科別に基礎を考えるという考え方であると思います。
 それから,ここの前の方の議論でも,基礎学力というか達成をどう考えるかということについては,高等学校の指導要領で目標としているものを達成しているかどうかということが基本的な視点であるべきであるというような議論がされてきました。ただ,私は,それが本当に重要な基礎レベルの試験に求められていることなのかどうか,あるいは社会に求められていることなのかどうかについて基本的な問題を感じます。
 非常に端的な例を言いますと,私は基本的な学力はやはり基本的には言葉と数だと思うのです。読み書きと数的な能力,これは非常に基本的な能力として必要です。例えばPISAの調査も何を測っているかといえば,基本的には数と言葉を通じて社会的にあるいは個人が直面する問題にどのようにそういった基礎的な能力を使って解決できるかと,そういう発想によって出来ているわけです。それは決して,学科として教科として達成された能力が達成されているかどうかということを基準にしているのではありません。
 言葉について端的にいいますと,今日お配りいただいた高校生の認定試験の問題ですが,国語をとってみますと,一番最初に国語があるのでパラパラと見ていくと私は大変面白かったのですが,この国語の問題は,まず最初に小説が出ています。その次は古文です。しかもこれ,縦書きで書いてあります。この問題ができるということが,現代の普通の人たちが読んだり書いたりする国語の文章を試すことになるのかどうか,私はかなり疑問だと思うのです。これ,私は,国語は不必要だと言っているのでは全くありません。もちろん必要ですが,教科とここで我々が必要とする問題とする能力との間にはそのまま対応するものでは必ずしもない。
 私は言葉にしても数にしても,これは別に教科別に教える必要は必ずしもないので,様々な教科を通じて教えられる部分もあってもいいのではないかなと思います。私は高校教育については素人ですので,高等学校の先生方はそんなこと言っても無理だというふうに思われるかもしれませんし,あるいはそのような努力もある程度されているかに聞いていますけれども,しかし,この基礎的な能力に関しては,少なくともやはりそういった問題がある。
 具体的にどういうふうなところに落ち着くべきかという案について,ここの場で本当に最終案に到着することは可能かどうか分かりませんけれども,少なくとも基礎学力をどの単位で捉えるのかどうかという決定について,学習指導要領の目標によって定義すべきなのか,あるいは本来社会生活で必要な能力として定義すべきなのか,ここのところにやはり明確な相違があるので,それをどのようにして捉えるべきなのか。それと,高等学校での教科と指導との関係がどのような関係にあるのかということは,やはりかなり明確に議論すべき問題として少なくとも指摘はすべきではないでしょうか。
 しかもその場合に,例えば数とかいうのもかなり難しくて,一昔前に分数ができない大学生とかの問題がありましたが,私は,それは非常に疑問で,例えば分数は本当に普通の生活で使う能力かというと,実はあまり使わないのではないかと思うのです。それについていろいろな研究がありますが,やはり普通に使う能力と,学生に学力がないというイメージとはやはり少し違うのではないかと思います。大学生には必要な能力というのはあると思います。
 それから,非常に重要な問題は,これ,実は高校教育が目標を達しているかどうかということではないのかもしれないのです。つまり,高等学校に入る時点で相当に基礎学力が欠けている生徒が入ってきていますと,高等学校の教科で教えてそれを回復することは多分難しいのかもしれません。大体,相当な基礎的なものを高等学校の教科で教えないですよね。それを高等学校でどうやって対処されているのか,私は高等学校の先生は大変苦労されていると思いますけれども,しかし,我々が知りたいのは,むしろ高校卒業のときにどの程度の学力を確保しているのかどうか。
 PISAの調査でも,下の3分の1ぐらいはどうも問題が読めていないらしいのですね。PISAの調査というのは一定のコンテクストを設定して,それを理解してそれにどう答えるかということを聞いていますから,読めないと,コンテクストが理解できないと答えようがないような調査です。実際,PISAの下から3分の1ぐらいというのはかなり離れて下の方に,先進国の中でも相当下の方にあります。私はそこのところは非常に大きな問題で,日本の将来を抽象的に考えるよりも,全ての国民がある程度一定の基礎能力を持っていることが重要だと思いますので,そういった点からむしろ基礎能力とは何かということをまず考える。その上で,教科とどのようにそれが関わっているかということを考えるべきなのではないかと思います。
 それは個人的な意見ですけれども,いずれにしてもそういった指摘しておくことは必要ではないかと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。今の点は非常に重要な指摘であって,これはおそらく基礎レベルの達成度テストにおいても,達成度テストの試験科目をどう設定するかにも直接関わるような大きな論点かと思います。少し今の金子委員からの争点提示というか論点提示に関わって御発言もいただければと思います。
 はい,どうぞ,和田委員ですね。どうぞ。

【和田委員】
 失礼します。金子先生御指摘のことは,逆に言えば,高校生の卒業時点で当然身に付けていてほしいコアの要素を我々はまとめてきたわけですけれども,それが学習指導要領を基にした試験ではなかなか測りにくいということをある意味で言っている部分もあるのかなと思います。
 ですから,やはり相川先生もこの御意見の方で書かれているように,一番最後のその他のところですけれども,ここは一番大事な点ではないかと思います。最後の5のところの3行目の後ろからですけれども,思考力,判断力,表現力等の育成,主体的に学習に取り組む意欲の育成という課題はうんぬんがありまして,学習指導要領の改訂なしには済まない重大なものだと認識していますという点です。だから,現在,今まで何回か改訂されてきて,良く改正されている部分もかなりありますが,やはり今の学習指導要領で高校教育を進めていくということにおいては,多少従前の学力中心のことを学校としてはまず優先してやっていかざるを得ない状況だということを思うわけです。
 今回,学習のニーズ,きめ細やかな対応というのは,ここでも確認したように,学校単位でその生徒たちに合った教育に,学校を類型化するのではなくて,各学校が預かっている個人個人のニーズに応えるような教育をということが根本になっているかと思いますが,それを実現していくためにはやはり思い切った学習指導要領の大綱化あるいは弾力化が必要ではないかと思います。
 一つ言いますと,体験学習とか職業学習だとかいろいろなものが高等学校でも必要だとされていますけれども,一方で,一つの単位は35週やらなければいけないという決まりは学習指導要領にあるわけです。それを両方実現するというのはなかなか難しいです。ですから,まず35週で縛るというようなことも少し考えてみたらどうかと思います。それは縛らずに,それを減らすなり,各学校が生徒に応じた時間数でその科目をやるというのも一つの方法かもしれません。
 それからもう一つは,1科目当たりの標準時間単位数が決まっていますが,これは弾力化していい,3単位のものを2単位でやれればやったらいいし,4単位としてやってもいいということになっていますけれども,極端な話,卒業必要単位数は74単位でありまして,そのうち,必修単位を少ない単位数のものを集めると大体36単位必修で,残りは選択というような形で卒業できるのが現実です。人によっては標準でいけば36で終わるものを,74一杯一杯必修単位だけやってでも,取りあえず必修はしっかり身に付けて,選択は何もできなかったけれども卒業できたという人もいてもいいと思うし,あるいは36単位の内容を例えば20単位分ぐらいの時間数でできた人に関しては,残りの部分をいろいろなほかの科目,発展的な学習もやっていいというようなそういう大綱化,弾力化というようなことがあって,それぞれの生徒に応じた教育が実現されるのではないかと思うわけです。
 実際,例えば一つの科目を標準3単位で行っている授業に関してでも,3単位だけでやると退屈してしまうような優秀な生徒もいるし,3単位では全然理解できないまま終わってしまう,単位は何とか追認とかでもらえるのでしょうけれども,その3単位をそういう形で過ごしてしまっている生徒も実際いる。一つの学校の中でもいるわけでして,そういう中でその人その人に応じた学習指導要領の展開の仕方を認めるようなそういう学習指導要領の弾力化というのが,やはり一番個に応じた教育をしていくことになるのではないかなと思うわけです。
 具体的なことを言いましたけれども,学習指導要領が25年度から高等学校は改訂されましたから,次の改訂はあっても10年後かなというふうに諦めていたのですけれども,今回,一部ではありますけれども文部科学省も学習指導要領の改訂をなさったわけですから,そういうことができるのであれば,余り10年というスパンを考えずに,むしろ新しいテストを始めるまでに適用できるような形で改訂に踏み切られたらどうかということで,どこかに新しい学習指導要領に向けての策定なりの文言を入れていただきたいなと思います。
 そういう個人個人の生徒に応じた学校の裁量を大きくすることの保障として,達成度テストで,どのような教育をして育てていただいてもいいけれども,最低必修科目に関してはどの程度できたかはこのテストで測りますよというのであれば,達成度のテストの意味はそれなりの意味であるかなと思っております。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょう。
 長塚委員,どうぞ。

【長塚委員】
 前々回の高大接続部会との合同の会議の際にそこで出されていたテーマが,汎用的能力を達成度テストで測るようなことが構想されていたと思うのです。その汎用的能力,将来,大学や,あるいは社会で必要となる汎用的能力とは何かということが随分あの場でも議論されたと思うのです。つまり,先ほど金子委員がおっしゃったような,本当に必要な,知識力というよりは活用力とか思考力とか言っていいのでしょうか,そういう力が実際には大学やその後の社会で必要とされているのだという認識は案外共通していると思われます。しかし,高校現場では,学習指導要領,教育課程の下で縛られた範囲でしか実は教育ができていないという現実があります。そのギャップをどうするのかというのがあそこで話題,課題になったような気がするのです。それが今またここで話題になっているようにも思うわけです。
 しかし,少なくとも活用力は,全国学力調査の結果でも分かるように,知識力がない生徒や学校は活用力も高くないということのようでありますから,知識力の裏付けがある程度ないと実は活用力も期待できない。ですから本来,活用力を調べればいいのですが,その前提としてある程度の知識力も必要だ。ですから,これはセットにならざるを得ないところはあるのだろうと思いますが,本来の本当の目的は実は活用力の方であるということは忘れてはならないのだろうと思うのです。
 達成度テストの後ほどここで議論することになっている案では,試験内容が,教科が例えば数学とかいうことで,理科は物化生地とか分かれて括弧書きで書いてあるのですが,高校現場では数学という教科を教えているのではなくて,科目で数学を更に分けて内容を分けて教えているのであって,理科も物化生地と分けて教えているのが基本で,その中で地学はほとんど教えていないという実態もあるわけです。
 ですから,先ずはやはり教育課程の大綱化のようなことを指導要領でやらないと,その上でのこのテストでないと,正にここで言っているような教科に対応するようなテストも作れないですし,それに対応して更に活用力をそこで求めていくようなことにもつながっていかないのではないかと思います。ですから,このテストがこの後の議論になりますけれども,その前提としては,やはり教育課程の大綱化,そして,その内容も知識力だけでなく活用力というものをもっと明確にしていくような,そういう指導要領に改訂した上でのテストという方向に行かないといけないのではないかと思っております。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかに。
 では,服部委員。

【服部委員】
 私はずっと以前に高等学校で数学を教えていたものですから,数学の目的というか目標は学習指導要領ではずっと長年変わっていないのですね。これは今もあるように,事象を数学的に考察する能力を培い,数学の良さを認識できるようにするとともに,それらを活用する態度を育てる。学習指導要領が示す目標は延々と同じような意味で,これ,どの教科を読んでも,同じようにそれらを活用する能力を育てるというふうになっているのです。ところが,それを測るのに,テストでその後の教科の内容の科目ごとのそこだけで学力を測ろうとするから,活用する能力は測っていないというかですね。
 これは学習指導要領の目標とかそれが良くないということではなくて,試験の仕方というか,学力の測り方が悪いのではないかと思っています。先ほど金子委員さんとかいろいろな人が言われるような,それらを活用する能力を高等学校等で一生懸命育てているのですけれども,それが適切に評価されていない実態があるということだと思います。
 測り方の問題であって,学習指導要領のそのものは改善のために工夫されていて,どの教科も,そして,先ほど和田委員さんがおっしゃったように,学校ごとにかなり弾力的に適用できるようになっているのですね。必修科目も以前よりはかなり少なくなっているし,それから,全定別あるいは普通科・専門科によって選択の幅を大幅に取り入れるようにできているというふうに,かつて,私たちがいたときは卒業の認定単位は80単位を超えるような場合が時にはあったのですけれども,今は70単位程度で卒業できる。かなり学校ごとに工夫をして適用できるようになっているということです。
 結論は,先ほど言いましたように,学習指導要領の目標は,私はある意味では適切になっているので,これが今の日本の高等学校教育の一つの方向性を示すものだと思います。もちろん今後工夫する点はあるかと思いますけれども,これによって各学校が現実に授業等を行っている以上は,ここに準拠した試験の制度を行うべきではないかと私は思っています。
 もう一つ言うと,私は今回の達成度テストを行うことについては,基本的には非常にいい方向で,後ほどまた機会があったらその趣旨を申したいと思いますが,これによって現実に行われている高等学校教育が改善の方向に向かう一つのてこになるのではないかという期待をしていますので,このことについては賛成の方向でございます。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では,野上委員,そして,松野下委員ですね。では,その順でお願いします。

【野上委員】
 二十数回に及ぶ会議の中で私は地方の中堅・中小企業が求める人材像についてクドクド述べて参りましたが,それが地方企業が求め,抱えるテーマだからであります。
ところが,そうしたことは何も中小企業特有の課題ではなく大企業にあっても同様で技術に精通した技能者の存在が欠かせないということで高校卒の人材確保に高い関心を寄せているのです。
 例えばトヨタ自動車やホンダ技研工業といった大企業にしても技術者だけではままならず,ものづくり技能にたけた技能者の存在が欠かせないという。そうした人材は一朝一夕には養成できず技能の習得に最も適した年齢の高校卒を採用し企業内教育を通して身に付けさせると同時に知識に裏打ちされた技術をも習得させ技術がわかる技能者の養成に務めているということであります。
 ところで,技術がわかる技能者の存在は日本特有のもので,こうした人材の存在によって日本はものづくり大国に発展したと彼のドラッカーは言い,これらの人材をテクノロジストと名付けたのであります。
 そしてこれら人材について更に興味深いことがありますのでお話ししますと高校卒のこれらテクノロジスト達は車づくりの夢のため勤務のかたわら大学卒の技術者達が身に付けている数学や物理,そして英語などの知識吸収に寝食を忘れ取り組むのだそうであります。技能五輪に出場するような若者の多くが自らの意志でこうしたチャレンジを続けているのだそうだ。そうした努力の結果,彼らは企業にとって無くてはならない人材に成長していくのだそうであります。そうした人材の中には後年,大学の教授に招請される者も出てくるというのですからこれからも若者にはチャレンジの機会を提供していくことが肝要と考えております。
 ところで私はかつてこの様な道を歩まれた方に話を伺う機会があり,成功の決め手は何ですかと尋ねますと,この成功者は高校時代までは全く読書もしなかったし,ましてや文章を書くことなど皆無だったが,企業に入り自身が成長するためには先ず知識の吸収に努め,同時に人の言うことを正確に理解する努力をしてきたことで今日の自分があると話されたのが印象的でありました。
 また,そうした能力を身に付けるのに最も役立ったのが読書や文献を通しての読解力を付けたことだとも教えてくれた。そこで到達度テストでは〇×だけで答えを求めるのではなく記述させたり,読解力を測ったりする出題に努めていただきたいと思います。

【小川部会長】
 次のテーマ,達成度テストも今日,皆さんの忌憚のない御意見伺いますので,素案については次の松野下委員で終わらせていただきたいのですが,どうしてもという方いらっしゃいますか。
 では,伊藤委員,アキレス委員,そして,上野委員で第1のテーマについては終わらせていただきたいと思います。

【長塚委員】
 広域通信制のことも少し。

【小川部会長】
 そうですか。では,長塚委員ということで。
 では,すみません,松野下委員。

【松野下委員】
 総合学科に携っていますが,大きな視点で議論が続いている中で瑣末な話で申し訳ありません。22ページの上から二つ目のところに総合学科について書いてあるのですが,「生徒が目的意識や将来の進路への自覚を持っていないため」という書き方なのですが,そういった目的意識が弱い生徒もいるのですけれども,このように断定的に書かれてしまうと誤解を受けることがありますので,このまとめの影響の大きさを考えますとここは指摘しておきたいと思います。少し書き方を変えていただければと思います。以上です。

【小川部会長】
 もしよろしければ,後で構いませんので,具体的な文章の訂正案など,もしもアイデアがございましたら,後で事務局の方にお寄せいただければと思います。よろしいですか。

【松野下委員】
 はい。

【小川部会長】
 では,アキレス委員,どうぞ。

【アキレス委員】
 ありがとうございます。非常に長い議論で様々な角度から話してきたことを全体としてはよくまとめていただいているなと思いながら読んでおりました。その中で一つ何か足りないかなというふうな感覚がございまして,それが何であるかということに気が付いたのです。そもそも新しい形を作っていく背景としては,やはり日本も含めた世界の変化,グローバル化。企業も日本の市場だけではなかなか成長が望めないのでどんどん海外に出ていく。やはりグローバルで活躍する人材を是非作っていきたいなと。もちろん高等学校だけでは難しいところもあると思いますが,早いうちからそういう素養を身に付けていくと,後々活躍の場が広がっていきます。
 その中で,先ほど御指摘が野上委員からもあったように,19ページのポイントというのは非常に大事だなと思いますが,何が欠けているかというと,英語がグローバル共通語としたら,語学のところが余り強調されていないような気がするのです。語学というのは学問ではなくて,言葉という意味では,環境によってかなり上達するという部分がございます。早いうちから語学ができるような仕組みなり環境なりを作っていくと年を重ねてからも苦労が少なくて済みます。
 テストという意味では外部テストを使うという案もあるのですが,先ほど机上の資料で英語のところを見ていたのですけれども,どう考えてもこれでは英語が話せるようにならないのではないかと思うような設問になっています。このテストはそこを見ているのではないのかもしれないのですけれども,例えば最初出てくるのが,どこを強く発音するかと。これ,文法が分かっていればある程度分かるのですね。ほかの質問も文法と読解。読解にしても,文章と,それから,データをどう読むかというところで,今までの英語教育を踏襲して作られている。
 グローバル化に向けた人材をつくっていくという観点からすると,今までの考え方とかテストの仕組みでは,少なくとも語学に関してはなかなか太刀打ちできないところがあるのではないでしょうか。後半のディスカッションにもなってくると思いますが,もし日本語だけではなくて,共通語としての英語のコミュニケーション能力を高めていくということを重要と思っているのだったら,少しその辺りもどこかで触れていただきたいと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございます。
 では,上野委員。

【上野委員】
 第3章のところでまずはささいなことから,少し気になったので。第3章の29ページのところなのですが,先ほど申し上げたことと若干関連しているのですが, (3)のところの一番最後の部分,おそらくやる気を起こさせるというところにも関連してくるところです。中ほどに「厳格な成績評価の下での早期卒業制度の創設」と書いていただいておりますけれども,おそらく早期卒業制度の前に「飛び級制度や」というのを入れておく。飛び級制度というのは1学年ポンと上がるという意味だけではなくて,ある科目については上級の科目を受けても構わないということを含めますので,一つの科目を得意な子がいて,その子が上の更に次の授業が受けられるということがあると,多分自分自身の誇りにもなって,より先へ進んでいけるという可能性を開くものだと思います。
 第2番目は30ページで,なかなか書きにくいことだと思うのですが,4の教員の資質の向上と学校の組織運営体制のうんぬんのところです。学習意欲の問題というのは結局,先生自身が輝く背中を持っていないと,なかなか生徒というのはうまくいかないのです。それは授業だけのことでもないのです。いろいろなことが関連してくる。そういうことをもろもろ考えますと,(1)指導力のある教員の育成の最初の丸印の2行目,「指導力のある教員の育成を図るため,教育委員会」うんぬんと書いてございますね。この前に,すなわち,「図るため」の次に,教員養成段階における改革を指摘しておく必要があるのではなかろうかと思います。
 要するに,先生になってしまってからどういうふうに研修するかどうかということも大事なのだろうと思うのですが,教員養成段階で,すなわち,教員養成系大学といいましょうかね,今はそうでないところからでも例えば高等学校の先生になられる方がいらっしゃいますけれども,そういうことを踏まえて,例えば教員養成大学の改革などというのを含めておく必要があるのではなかろうかと思います。結局そこがうまくいかないと,その後はなかなか大変なのですね。できるだけそれを考えていただければと思っております。ここのところは以上です。よろしくお願いします。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では,伊藤委員。

【伊藤委員】
 20ページなのですけれども,多様な学習ニーズへのきめ細やかな対応ということで,私が義務教育ということで責任を感じているところもあるのですが,学び直し,特別な支援が必要な生徒への対応,優れた才能や個性を有する生徒への支援と,三つの学習のニーズの例が出ておりまして,特別な支援が必要な生徒への対応と,優れた才能や個性を有する生徒への支援については,23ページに項目立てがされていて出ております。
 それに対して,学び直しというのが,22ページの定時制・通信制課程の課題と対応の中に,学び直しの機会提供と支える体制の強化と,この中に含めてあります。現実にはおそらく,普通科にも義務教育段階のものの学び直しが必要な生徒がいたりすると思いますので,例として学び直しを出しておりますから,是非,学び直しで何か項目を作られるか,若しくは,必要な各学科・課程の中にも学び直しに対する何か手立てがあるといいかなと思っています。現実には,中学校を卒業した生徒も本当に高等学校でもう一度学び直しみたいな感じで御指導受けている生徒も非常に多く,それでリセットできて大学進学ができている生徒もたくさんおりますので,大事かなと思いまして言わせていただきました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では,長塚委員,最後。

【長塚委員】
 今の学び直しの最大の場になりつつある広域通信制のことが30ページの最後に書かれております。これはこの部会での要請もあって,文部科学省の方で調査もされて,そして,新たに資料1-2で,今後の在り方についてのまとめをしていただいたわけですけれども,全体を通じて,これに対して意見が出ていなかったと思いましたので,私の方から一つ申し上げておきたいと思っています。
 資料の1-2なのですが,広域通信制高校ガイドラインを策定するというのは誠に結構なことで,是非そのガイドラインに沿ったこれからの対応を是非お願いしたいと思うのですが,その中で特に少し気になるのは,「所轄庁における」というのが三つほどあります。所轄庁におけるサテライト施設の把握徹底とか,あるいは区域外における,つまり,県外とか全国に散らばっているサテライト施設とかその教育内容の把握をするということ,これが実は大変難しいからこの問題が起きているので,だからこそ調べるのだとか,徹底把握するのだというのですが,この徹底把握が各所轄庁で本当に実際上できるのかと危惧しています。やはりできないのではないか,できないような仕組みを認めてしまったのではないかというのが本質的な問題だと私は思っていました。
 例えば学校法人立の広域通信制では,1,200平方メートルの面積を本校舎で持たなければいけないということは全部守られているけれども,株式会社立の方の広域通信制ではそれが守られていないところが3割もあって,中には70平米の本校舎しかないというようなこともあったというのが23年度の調査で分かったわけです。ですから,本校舎,本部のあるところでさえ分かっていないというか,それで認めてしまっているのに,全国に散らばっている施設の状況なんかを調べるということ自体が非常に難しい。
 あるいは,その教育の中身が,サポート施設,自前で持っているいわゆる株式会社立の別立ての会社でやっている民間の会社のサポート校に通わせているというようなこと,その辺をもっときちっと整理するという構えでこれはいきませんと,実態調査をするというだけではなかなか実はこれは正常化していかない問題だと思います。既にこれは相当拡散してしまった問題ですから,相当腹を据えてこれは掛からないと,ガイドラインを作ったぐらいでうまくいくというふうには私は思えない気がしております。
 それから,3点目の所轄庁における管理・指導体制の強化促進で,括弧で例示として,教育委員会との連携の促進等と書いてあるのですが,これ,少し気になるわけです。広域通信制とはいえ,学校法人立は私学であります。私学の学校法人立の場合には,各都道府県の私学審議会が,しっかりとした設置基準を設けたりして,いろいろな認可をちゃんと審査しているわけです。そういうことが行われていないのが株式会社立であったといえます。つまり,私学審議会のような組織がないわけです。
 各区市町村が特区で作ってしまったということで設置基準等もないということですから,いわゆるそれを管理する組織がほとんどないということで,教育委員会に,あるいは教育内容等の支援をお願いするのはあるかもしれませんが,そもそも都県や各区市町村の教育委員会は,自分の地域,区域内の教育に携わっているのであって,区域外のことになど到底,どうあるべきかなどということの知見を持たないわけで,また力を持たないのではないかと思います。それに連携するということが私はなかなか,少なくとも学校法人立の方にはこれはなじまない話であって,その辺を十分留意して,これは例示というのでしょうか,図っていただきたいと思っております。以上でございます。

【小川部会長】
 今の長塚委員の御指摘,御意見について,事務局の方で今の段階で何か回答しておきたいこととか,情報提供を頂けるものはございますか。

【高見専門官】
 先ほどの御指摘も踏まえながら,当然今後議論していただくということになろうと思いますが,1点だけ,教育委員会との連携の促進のところですけれども,ここは先生おっしゃっているように,教育内容とかの面で若干サポートが必要な場合やっていくとか,そういうイメージで書いておりますので,何か教育委員会がのりを越えてやるとか,そういうイメージで書いたものではございません。失礼しました。

【金子委員】
 少しいいですか。

【小川部会長】
 では,一言。今の件に関係して,ですね。

【金子委員】
 私,特区評価委員会に入っておりまして,この問題についていろいろとやりとりしたのですが,一つはやはりおっしゃったように,株式会社立の高等学校に相当大きな問題があるのですが,一つの問題は,市町村が認可していまして,市町村はほとんど無知といいますか,何が問題であるかということを知らないということがありますので,何らかのガイドラインなり何なりを作ることは,市町村にそういった注意を払うということを喚起するという意味である程度の意味はあるだろうと思います。
 ただ,私は高等学校に関しては,やはり長期的には,設置基準だけではなくて,何らかの意味での適格認定といいますかそういった手段が,例えば先ほどの議論にありますように,学力課程自体の基準をある程度柔軟化するというようなことがある場合には,ただ設置段階での監督だけではなくて,それ以降の監督もある程度必要になってくるのではないかと思います。例えばアメリカの高等学校に関しては適格認定団体があって,それで定期的に指摘・検討しているので,一定の種類の高等学校のときにはやはりどうしてもそういう仕組みが必要になってくるということもありますので,将来的にはそういったことも考えるべきなのではないかと思います。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。2章,3章に関わる御意見については,非常に多くの意見が出されました。どこまでうまく書き込めるか,また事務局の方とも相談したいと思いますので,今日頂いた意見については可能な限り書き込んで,また次回,皆さんからの御意見頂ければと思います。ありがとうございます。
 時間が大幅に過ぎてしまったのですけれども,残り35分で2の達成度テスト(基礎レベル)の中身の議論というのは収まらないと思うので,多少の時間延長をお許しいただければと思いますけれども,お願いいたします。
 それでは,二つ目のテーマである達成度テスト(基礎レベル)についての議論をしていきたいと思います。まず最初に,資料2に基づいて事務局の方から御説明お願いいたします。

【小林教育制度改革室長】
 資料2-1でございますけれども,試験の目的のところは,生徒が,自らの学習意欲の喚起,それから,学習の改善を図ることを目的とする高校教育の達成度テストを実施ということにさせていただいております。
 また,試験の活用方策のところは,前回,目的の中にこの2点が盛り込まれていましたが,こちらはあくまでも目的ではなく活用の方策だということで,高等学校の指導改善に生かすこと,それから,AO・推薦入試や就職時に基礎学力の証明や把握の方法の一つとして,その結果を大学等が用いることも可能とすることというふうに整理させていただきました。内容は前回と変わっておりません。
 また,対象者につきましては,個人単位での受検又は学校単位での受検も可能とするということで,ただ,学校単位での受検の場合の支援を検討するということでございます。
 また,試験内容でございますけれども,試験教科・科目は,当初は以下を想定して,今後検討ということで,いずれも選択も可能ということにしておりますけれども,国語,数学,英語,地理歴史等ということで挙げさせていただいております。今日お配りしている参考資料2のところに,高等学校の各教科に共通する教科・科目を用意させていただいておりますので,そちらも御参考いただければと思います。
 また,教科のところですが,英語など一部試験は外部試験によるこのテストの代替も検討してはどうかということ。それから,いわゆる実技を伴うような,保健体育,芸術,家庭,情報及び,そのほか,また専門学科の各教科の可能性についてどうするか,その部分も検討するということ。それから,実施時期とも関連いたしますが,高校2年から3年にかけて履修させているような科目もありますので,試験の教科・科目及び出題範囲については,実施時期を踏まえた検討が必要ではないかという留意点も記載させていただいております。
 また,2ページ目でございます。試験の問題ですが,いわゆる基礎的・基本的な知識・技能だけではなく,それらの活用力,思考力等を測る問題も含める。ただ,その問題は,学習の達成度を測るものとして,1点刻みのような,そういった選抜するための性質の問題とはしないということ,それから,複数の教科を融合した教科融合型問題も含めることも検討ということで案を作らせていただいております。
 試験のレベルは,前回少し話題になりましたので,例えば高卒認定試験と同等程度とすることを検討ということでございます。また,全ての教科で,各生徒の多様な学習成果を評価するため,外部試験や検定の結果,コンクールなどの評価をこのテスト以外に活用することも検討。それから,困難を抱える学校では,部分的な活用などもできるのではないかということでございます。また,テストの結果の表示ですけれども,成績を段階で表示するとともに,各問題の正誤や各自の正答率なども併せて表示するということ。
 それから,試験形態は,マークシートを原則としつつも,一部記述式を含めることの可能性も検討する。ただ,実施体制とか試験内容,そういったことにもよるのではないかということ,それから,発展レベルのテストとも併せて検討する必要があるのではないかという留意点を記載させていただいております。
 また,実施方法ですが,高校2年及び3年の受験を可能とすること,各年に3回程度の実施を検討ということでございます。また,可能な限り受検可能な機会を増やすという意味で,高1からの受検も可能とするかについても検討ということでございます。また,年間の実施時期は,学校現場の意見などを聴取しながら更に検討する必要があるのではないかということでございます。また,実施場所については高等学校で,ただ,個人の受検者のためには,各都道府県ごとに,学校だけではない場所に設ける必要もあるのではないかということでございます。
 最後にその他のところですが,高等学校卒業程度認定試験と統合する方向も含めて検討ということで,これは高校レベルのテストが二つになるということで,その関係を整理する必要もあるのではないかということでございます。以上でございます。

【小川部会長】
 ほかに参考資料として参考資料2も配付されておりますので,少しそれも踏まえながら御意見いただければと思います。
 先ほど金子委員をはじめ幾人から出た,今後育成すべき学力の中身をどう考えるかというふうなそうした議論に関わっては,ここでは例えば複合の教科を融合した教科融合型の問題も含めるというようなことも事務局の方か一つのたたき台として出されていますので,前回よりも更に踏み込んだ具体のたたき台を今日事務局から提示してもらいました。

【長塚委員】
 これは何なのでしょうか,この冊子。すみません。

【小川部会長】
 これは高卒資格認定試験の問題です。

【長塚委員】
 高卒資格認定試験のものなのですね。分かりました。失礼しました。

【小川部会長】
 今日は達成度テストと高卒程度資格認定試験の関係も少し議論しますので,一応実物を配付してもらいました。

【長塚委員】
 分かりました。すみません。

【小川部会長】
 残り時間余り多くないのですけれども,忌憚ない御意見頂ければと思います。
 では,金子委員,どうぞ。

【金子委員】
 このテストの問題,非常に悩ましいといいますか,私もそんなに回答があるわけではないのですが,先ほどの基礎学力のお話について一つだけ申し上げたいと思います。基礎学力というのは二つ考え方があって,一つは,先ほど長塚委員もおっしゃっていたように,応用力のようなもの,細かい知識ではなくて応用する能力を試しているようなもの。PISAの試験を見ると,ある程度そういった考え方で出来ています。これは1990年代ぐらいからこういうような学力観が出てきて,個々の教科の知識ではなくて,それを使う能力こそが基礎学力として重要だという考え方です。大学についてはAHELOというのをOECDでやっていますが,これも基礎学力としてそういった学力を試そうということを今やっています。
 ただ,もう一つ,実は基礎学力には考え方がありまして,それはそういったものより更に基礎といいますか,要するに,教科の学力以前に,読んだり書いたりする基礎的な力,それから,計算する基礎的な力,これを考えようと。要するに,先ほど学び直しのお話がありましたが,私はそういうことがそこにあるのだと思うのです。基礎的に文章を読んだり書いたりすることができないといいますか,非常に能力が限られているというところがやはりかなりあるのだと思います。
 それから,算数も,数学以前に例えば小数点が入ってきたら計算が途端に分からなくなるとか,実態としての社会生活を送る上で,あるいは学習をする上でも基礎的な知識,予備がないという子供は実はかなりいるようです。それは不思議なことに,上の方に試験になりますと分からなくなってしまうことがあるのです。どうせ学力が低いのだからといって一緒くたにされてしまうのですが,実は相当前の方からつまずいていて,基礎的な力がない。そういう意味での基礎学力というのもあります。
 私は,少なくともそういう意味での本当に基礎的な学力自体が,私は日本の高校生のうちのやはり下の3分の1ぐらいは相当怪しい,相当達成できていないという子供がいるのではないかと思います。私が申し上げているのはむしろそちらの方の基礎学力をきちんと確保する。これは繰り返し高等学校でやるとか,あるいは様々な教科でそれを学習するとか,そういったことを考えるべきだと思います。
 繰り返しますが,先ほどの高校学力認定試験の国語ですが,これですと,必ずしもちょっとした文章を書いたり読んだりとか,そういったことはむしろテストできないのではないかと思います。むしろそういったことをきちんとテストするということも必要なのではないか。それは学力型の試験,教科型の試験ですと非常にやりにくい。国語の試験ですと,やはりこういった試験になってしまって,ほんとに基礎的なものは読めても読めなくてある程度の確率で書けてしまいますから,本当に不合格になるかどうかも分からないですし,不合格になってもどこが原因なのか分からないということになります。
 そういう意味で私が申し上げたいのは,やはり基礎的な学力の試験というのも十分考慮すべき必要がある。それから,社会生活を送る上でもそういったものがないと困るような学力というのがあって,それが相当部分不足している。広く言えば,国際競争力を考えた上で,日本の高卒で就職する人というのは,現実に国際競争にさらされるというのはそういう人たちなのです。そういう人たちが近隣の諸国の高卒者と競争する。そのときに,やはり一定の学力がなければ,本当に日本の子供は将来競争できなくなるわけです。高等学校卒業だけで就職している人というのが今,大体3割ぐらいいるわけですけれども,その人たちがどのような学力を持っているかは非常に重要だと思いますが,私はそういった意味での基礎学力が重要だと思います。それはやはり計測できますし,するべきだと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 服部委員,どうぞ。

【服部委員】
 先ほど今回の取組についてある意味で期待しているというのは,少し古い話になるのですけれども,私,昭和54(1979)年に初めて全国共通一次試験が始まったときに高校教育に関わっており,3年間,1年生からその対象となる学年をずっと指導してきたのです。共通一次試験がその後センター試験になった。そのことによって,日本の高等学校教育がその後に大きく変わったと思っているのです。それまでの高等学校教育は,それぞれの学校単位で校内の模擬試験とか,あるいは高等学校の先生方が生徒を一人一人見届けて学力を付けると,そういう教育がなされていたと思うのです。
 ところが,共通一次試験,それから,センター試験になるようになってから,それぞれの高校単位では全国的なレベルでの相対的な位置が分からないということで,いわゆる偏差値というか,大手の受験塾というか受験産業が各高等学校をずっと,例えば1万人とか10万人というような単位で高等学校の達成度というか試験を求めて,そして,それによって各生徒あるいは各学校と言ってもいいと思いますが,偏差値による個別の尺度,相対的な位置を示すようになった。そのことによってずっと,それ以前の教育と今の教育が変わってきたと。
 要は,期待するというのは,そういう日本の教育が,高校生の教育が偏差値によって,学力の捉え方も狭い意味での学力によって数値的に測られたものによって高校生が数値化されるというようなそういうようなことの動きを,やはりどこかで流れを変えなければいけないと思うのです。要は,全体の流れの中の偏差値というような流れを変えて,もともと高等学校が行っていたそれぞれの学校での地道な教育を復活させるような取組に期待したいと思っています。
 それからもう一つは,その後,私,日本のOECDのPISAのテストに,教育センターの専門研修主事の時に国研,当時の国立教育研究所のお手伝いをしてそれに関わったことがあるのです。例えばこれ,今日,今示された2-1のところで実施方法,ここまで言うことは少し難しいかもしれませんが,これ,誰が行うかというようなことについて,私は今の国立教育政策研究所が所管する全教連,全国教育研究所連盟,各都道府県・指定都市にある教育センターなどが考えられると思います。
 教育センターは,教員の資質・能力の改善を図る研究とか研修を主に事業の内容としているわけですが,先ほどある委員の中であったのですが,この取組については,高校生だけではなくて,先生方の資質能力の改善・向上につながるような取組でなければならないと。そうすると,この実施に都道府県・指定都市にある教育センターの主事が関わるというようなことが,早い時期に入れておいた方がいいのではないかと思うのです。
 それは高校生,児童生徒の学習指導・支援に関わることによって,実質的に高校生の指導・支援に関わることによって,先生方の指導力とか,あるいは授業改善といったようなことにもつながるというような意味で,この取組がもともとは高校生の達成度を測るのですけれども,それに繰り返し関わることによって,先生方の指導力の向上・改善につながっていくようなものにもなるというような意味で,各都道府県・指定都市にある教育センターが何らかの形で関わっていくというようなことを入れていただくことがいいのではないかということを二つ目にお話しします。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 長塚委員,どうぞ。

【長塚委員】
 本文のところで少し言えなかったのですけれども,この対象者がこの部会では希望参加型ということが原則的にあったと思うのですけれども,いつの間にか本文の中にもその言葉が抜けて,この案の方にもそれがないわけです。ですから,対象者のところは,やはり私は「希望参加とし」とか「希望参加とするが」という前提をしっかりと入れるべきではないかと思います。この文言がないと,これは正にここの3行を読むと,何か強制的なものだというそしりを免れないと思うのです。
 小中学校で現に行われている全国学力調査,これは決して生徒が悉皆を選んだり,生徒が抽出を選んだりしているのではなくて,時の政権などが抽出だと言えば抽出になるし,悉皆だと言えば悉皆になっている。これは生徒,受検生が受検できるということを選べるわけではないわけですよね。ここは義務教育ではない高校生のテストですから,受検生が自分で主体的に選べる,あるいは学校が主体的に選べるという,その前提が非常に重要だと私は思います。
 ちなみに,私立のことをいえば,大学附属高校があって中高大とつながっているようなところでは,必ずしもこの達成度(基礎レベル)を必要としないかもしれない。そういうところまで強制するかのような,そういう枠組みを示してしまうのは問題があるだろうと思われます。やはり各学校いろいろ多様化しているわけですから,多様化の中でこれをどう使うかということは,生徒や学校が主体的に考えるように是非明示していただきたい。
 ちなみに,達成度の発展レベルは正に希望参加型であって,大学受験に使うものを全員がやるということはないのだろうと思いますから,達成度レベルの発展も基礎も,これは同様に希望参加型とするということを明示していただきたいというのが,これまでの部会の流れからしての私の強い希望といいましょうか,率直な意見でございます。
 もう一点,時間がないようですので簡単に申し上げますと,2枚目の試験の内容の最後の方ですかね,各学校の生徒に対して成績を段階で表示するとともに,各問題のうんぬんと書いてあります。この学校の,あるいは生徒に対して成績を段階で表示というのは,学校単位で受けたときの学校の平均点を表示するのかどうか,これは非常に問題があるだろうと思います。正に全国学力調査が学校別平均点は公表しないという前提で始まっていながら,今になってみると,実は学校別の平均点を公表するというようなことになってしまったわけで,それは公費を使っているのでそれは公表する責任があるというような論理で今回なってきたように思うのです。
 ですから,そういうふうにならないということが非常に重要で,高等学校の場合には,全国学力調査をする公立の小中学校のような,半ば均一に学校にいろいろな生徒が入っているというのと違って,適格者主義で高等学校は選別で入っているわけですから,何度もこれは繰り返し私は申し上げましたけれども,それを学校別の平均点が出るような何らかの表示をするようなことをすると,学校の偏差値がランキングされるような,公的な学校ランキングを作ってしまうことになりますから,是非これは気を付けていただきたい。ここは最大限配慮すべきことではないかなと思います。
 それから,戻ってしまいますが,対象者のところで,二つ目の丸がありまして,2行目の学校単位での受検の場合の支援を検討するというのは,学校単位でやった場合には,いわゆるこれに関わる費用の負担の支援を検討するという意味としてここは事務局でお考えだったのでしょうか。だとすれば,いわゆる受検が可能となるような費用の負担の支援をするということの方がより分かりやすいのではないかというふうな気が致しました。学校単位でないと費用の負担をしませんよというのはかなり誘導的だなと。個人参加であっても参加するときの負担はしてあげるよというのがいいのではないかなという気が致します。少し細か過ぎるかもしれませんが,以上でございます。

【小川部会長】
 今の点について少し確認ですけれども,1ページ目の学校単位での受検の場合の支援という場合どういうことを想定されているのかということと,もう一つ,2ページの各学校・生徒に対して成績を段階に表示するというのは,各学校の平均点を表示するというように,これまでの議論ではほとんどそういう議論はされていないので,そういう受け止め方を僕はしていなかったのですけれども,その辺を少し確認させてください。

【小林教育制度改革室長】
 1点目ですけれども,基本的には財政的な支援は,ここに書いてありますように,できるだけ多くの生徒がそういったものを受検できることを正に可能とする場合に,学校単位であれば,例えば大勢受けるときの割引といいますか,そういったことを想定してここでは記載させていただきました。
 また,2枚目の方ですけれども,こちらは今,部会長からお話しありましたように,各自が例えば本来,合否だけでもいいのではないかという御意見もあったかと存じますけれども,一方で,例えば自分がどれだけ伸びたかとか,あるいは学習意欲の喚起ということ,それから,学校での指導改善ということに生かす上では,個別の各自の正答率も示されている方が生かしやすいのではないかという趣旨で入れさせていただきました。

【小川部会長】
 各学校の平均点も表示するという趣旨ではないですよね。

【小林教育制度改革室長】
 そういった趣旨ではないです。

【小川部会長】
 分かりました。
 今,こちら,荒瀬委員ですね。荒瀬委員,アキレス委員,そして,長山委員,服部委員という順でお願いします。では,まず。

【荒瀬委員】
 まず試験の目的なのですけれども,下線が引いてあって,生徒の学習意欲の喚起,学習の改善を図ることを目的とするということなのですが,その試験の活用方策はどうかというと,高等学校の指導改善に生かすこととなっています。これ,どちらが順番で先なのかというと,先ほども申しましたけれども,高等学校教育の課題を改善するためにこの導入を考えたという経過もありますし,私はそういう意味でやるべきだと思っておりますので,まずはやはり高等学校が指導改善する中で生徒の学習意欲の喚起とか学習自体の改善,生徒自身の学習自体の改善に資することになるというような流れを考えなければ,後の部分とのつながりが十分でないのではないかなということを思います。
 それから,1枚目の試験内容の※印の二つ目の保健体育以下のことですが,これは大変重要な科目・教科あるいは取組であるということは十分承知しておりますが,むしろ2枚目の一つ目の丸の二つ目の※印にある,「全ての教科において,各生徒の多様な学習成果を評価するため」というこちらとリンクさせればよいのではないかなと。いわゆるペーパーテストで測るということとは少し違うのではないかなということを思います。
 それから,最後に,2枚目の一番下,その他のところで「高等学校卒業程度認定試験と統合する方向も含めて検討」と。統合するとなりますと,先ほどからも御意見が出ていますが,高等学校卒業程度認定試験,これは「程度」が入るか入らないかというのは相当大きな違いがあるということが導入された時に言われておりましたけれども,卒業程度認定試験に対するテストとしての評価を十分にしておかないと,その評価は当然のことながら,高等学校での学習活動とか,先ほどお話しになった基礎学力をどのように見るかとかいったことからすると,単に統合ということだけではよろしくないのではないかなということを思います。
 最後にと申しましたが,もう一つ,元に戻りまして,私立大学等でいわゆる学力検査をしないAO入試とか推薦入試をなさっていらっしゃる大学にこういったものが導入されれば,活用方法は大学がいろいろお考えになると思うのですけれども,是非していただくことが,高等学校あるいは高等学校生徒がこの達成度テスト(基礎レベル)を受検するモチベーションにもつながっていくなということを思いますし,それがひいては高等学校の改善にもつながっていくなということも思います。以上です。

【小川部会長】
 では,アキレス委員,どうぞ。

【アキレス委員】
 それでは,試験の目的のところなのですけれども,まず言葉で少し引っかかるなと思ったのが,2行目の「学力を証明する」というところなのです。本当に証明というのは結構重い言葉なので,学力の証明になるかどうかということを考えると,これは表現だけの問題だと思うのですけれども,例えば客観的な基準で提示するとか。おそらく試験のときに参考にするという意味で,自分だけが把握しているのではなくて,外部に向けてということだと思うので,活用方法のところにも出ておりますが,少し表現を工夫さなさったらいいのかなと思うのが1点目。
 それから,今,荒瀬委員の方から御意見があった点なのですけれども,これは私は何のためにやるのかというと,指導するためにやるというふうになってしまうと,やはり今日も話題になっている生徒の学習意欲というところが何か薄まってしまうような印象を受けるので,表現はもう少し工夫が必要だと思いますけれども,生徒の学習意欲の喚起,学習の改善を図るというところは是非強調していただきたいなと思うのが2点目。
 3点目,試験の内容のところなのですが,前回も申し上げたとおり,余り負担が過度になってしまっては現場の先生たちも生徒自身も本当に大変かなと思うので,共通のところは国語,数学,外国語というふうにして,プラス1で選択できるようにするのがやはりいいかなと思います。その選択をするのは,生徒本人が興味が持てる又は得意なものを是非やっていただきたい。減点法ではなくて,得意なものがそこにのってくるような形にするのが望ましいと思っております。
 4点目は,先ほども触れましたけれども,「英語等,一部試験は外部試験による」,※印のところがあるのですけれども,これは確かにそのとおりなのですね。ただ,TOEICというのが一つの例だとすると,皆さん,受けたことがございますか。ヒアリングも混ぜて2時間半かかるのですね。かなり集中力を高めていかないと難しいところがあるので,私の御提案は,TOEICに限らないのですけれども,もし外部の試験を使うとしたら,まず指導する側の教員の皆さんが受けていただくと。それで点数を把握するというところをやった方が,より生徒の身になるのではないかなと思います。
 ちなみに,私もTOEICを2回受けたことがあるのですけれども,これ,ただ単に英語が分かるだけ,つまり,帰国子女の方が例えば仕事の経験がなく受けても,点数はそれほど高くありません。990点が満点だとしたら900点前後まで行くのですけれども,なかなか990点までできない。なぜかというと,設問がかなりビジネスのシチュエーション,状況に応じてどういう答えが適切かというふうになっておりますので,そのまま高校生の皆さんに使っても,英語は分かっても状況が分からないために間違ってしまうということがあるので,それは一つ注意点だと思っております。
 次のポイントは次のページなのですけれども,一番最初の丸のところです。「複数の教科を融合した教科融合型の問題を含めることを検討」というのは,私は賛成します。やはり考える力というのは,一つの物だけではなくて,幾つかの複雑なものをいかに理解して,自分の言葉に表すかということを考えると,これはとてもいい方法ではないかと思います。ただし,採点する側は少し手間が掛かると思います。その後の試験形態のところでも,一部記述式も検討ということになっていますので,ここは入れることに私は賛成しております。
 それから,次のポイント。先ほども御指摘があった,各学校・生徒に対して成績を段階で表示するというのは確かに非常に賛否両論がある議論になるかなと思うのですけれども,別に学校ごとに全て並べて開示するということではなくて,生徒自身とその学校のみに提示するという方法もあると思うので,変な意味での偏差値的な意識が芽生えないような工夫はできるのではないかなと思っております。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 長山委員,どうぞ。

【長山委員】
 私は今,定時制の生徒を見ている中で,それから,以前に少し学力の低い学校の生徒を見ている中で,やはり学習意欲の低さというのが,先ほどからありますように基礎学力が非常に不足しているということとつながっていると思います。その中で,学び直しの時間というか,そういうものを確保していくとなると,学び直しの時間を確保することによって学習意欲を喚起するということもかなり効果としてあるのだと思います。現在,私の学校でもやっていますけれども,実際に効果があると思います。
 ただ,そうなるとやはり本来の高等学校の勉強がどの程度達成できたかというところまで見るにはかなりの時間がかかるということで,この目的のところにありますように,生徒の学習意欲の喚起,学習の改善を図ることを目的とするということを考えたときには,生徒の立場から例えば2枚目の方にあります実施方法として,複数の受検回,あるいは※印にありますように,学習指導上の困難を抱える学校では,希望に応じてテストの部分的な活用等というのを,ここをうまく結び付けてできるようになってもらいたいなと思っています。
 ただ,複数回やるとなると,やはり高校現場としてはなかなか負担も大きいというのがありますから,複数回というのがどの程度なのかというのもありますけれども,そこがうまくつながっていけばうまくいくのではないかなと思っています。それが試験の活用方策のところにある高等学校指導改善にもちろん大きくつながるのではないかと思います。
 それから,最後のその他のところに高卒程度認定試験と統合する方向というのがあるのですが,定通の生徒のかなりの,どのぐらいか分かりませんが,相当程度の人数はこの高卒認定試験も併用する形で高校卒業の単位を満たしているという生徒がおりますので,統合するとなると,その辺の扱いを含めて一緒に検討していただかないと,今,そういうことを活用しながら高卒の資格を取っているというか高等学校を卒業している生徒への対応が難しくなるのではないかと思います。以上です。

【小川部会長】
 では,服部委員。

【服部委員】
 たびたびすみませんが,大事なことなので。対象者をどうするかということですが,私は原則的には悉皆にすべきだと思っています。今日お休みの二人の委員からもそのような旨が届けられていますが,生徒の学力・学習状況というか意欲とかそういったことを見ようとすると,単に学力,数字……,これ,小中学校のあれでも,マスコミ等は学力テストと言っていますが,本来は学力・学習状況調査なのですね。それは一人一人の子供たちの学習状況をどう改善するか,さらには教師の指導改善に結び付けるかということで悉皆ということになっているのです。今回の高等学校についても,願わくば生徒の学習意欲とか学習状況の改善を図るということであれば,原則悉皆というようなことが望ましいと私は思っています。その点で長塚先生とは少し違うと思います。
 それで,もう一つは,例えばOECDのPISA等は,これは統計的な数値を出すには,これは標本調査で十分ですね。むしろその方が的確に数値が出るわけです。やはりあくまでも個々の児童生徒,受検者の改善に結び付けるということであれば悉皆にする。したがって,それが一気に難しいということならば,こういう表現で,例えば高等学校在籍中に少なくとも1回は受検するというようなことであれば,どこかで受けるということで1回は受けるということになり,ある意味では悉皆ということが達成されるのではないかというようなことを含めて,この達成度テストの意味からいうと,私は原則,対象者は悉皆にすべきだと思っています。以上です。

【小川部会長】
 では,川嶋委員。

【川嶋委員】
 時間もないので手短に。このテストの在り方についてはそれぞれのお立場でそれぞれ意見があると思うのですが,試験の内容について先ほどからもいろいろ御意見が出ております。それで,実際このテストを実現に向けてこれから検討していくとして,タイム軸をどう考えるかということですね。つまり,先ほどからも,学習指導要領の改訂なくしてはというお話もあったのですが,このテストの導入を非常に急ぐということであれば,現行の教科ベースの学習指導要領に依存したものにならざるを得ない。
 しかし,先ほどから出ている,学習指導要領を大綱化するということになれば,これは各高等学校での具体的な学習内容というのは多様化してくるわけですから,当然,個々の教科に依存したテストを実施すると,不公平が生じるという話になってくるので,どうしても教科・科目に依存しない,先ほども基礎学力をどう考えるかという金子委員からお話がありましたけれども,各教科の基盤となるようなリテラシーとニューメラシーを確認するというようなテストが必要になってくるかもしれません。ですから,一つは,このテストの性質や出題内容をどうするかというのは,現実的に考えれば,これからこのテストの導入をどういうスケジュールで考えていくか,特に学習指導要領の改訂ということと大きく関連してくるのだろうと思います。
 それから,もう一点は,資料2-1ですけれども,先ほど各県の教育センターが参加してはどうかというお話もございましたけれども,今日のペーパーを見ますと,どこが実施するのかという主体が,つまり誰が実施するのかということ一言も触れられていないということです。これも微妙な問題なのであえて触れていないのかもしれませんけれども,今回の審議のまとめも,基本的に誰が何をやるかというメッセージはなかなか伝わってきません。
 必要であるとか,求められているとかいう文言で大体パラグラフが終わっているのですが,誰に求められているのか,誰が何をすることが必要なのかということが,特に後半の施策,対応のところはほとんど書かれていないので,このままでは,例えばこれを受け取っても,それぞれの関係者は,自分は何をすべきか,具体的に何をしたらいいのかということが分からない。SSHについても,あるいは特別なケアが必要な生徒も,教員を増やしたり,カウンセラーを増やしたりすることは必要であると書いてあるのですけれども,では,誰が,どのようにしてカウンセラーや教員を増やしてくれるのですかという,そういう具体的なところが書かれていないというのが全体を通じての最終的な私の感想です。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがですか。
 和田委員。

【和田委員】
 すみません,幾つか。ほかの先生方と重なるかとも考えますが,まずいろいろな教科において,英語もそうですけれども,外部試験・検定結果,各種コンクール等の評価ということなのですけれども,これ,評価というのは,この試験とは一切関係ない話ではないかなと。試験はそういう科目ではできないですよと。だから,大学とか企業が生徒を選ぶときにそういうものを評価として使ってくださいよということであって,達成度テストそのものに関わる内容では一切ないような気がするので,このペーパーの中に入れるのはどうなのかというのが一番感じるところです。英語に関しては,共通のものを全員に受けさせてこれに代えるという意味であれば載せてもいいかと思います。
 それから,外部試験というのはいろいろあるのですけれども,アキレス委員がおっしゃったように,TOEICとかTOEFLとか,あるいは国連英検とか,そういう公的なものを意図されているのか。多分全国の高校生が受けるにはそれは少しレベル的には難しいのではないかとなってくると,いわゆる民間企業がやっているような,今あるものでいえば,GTECとか英検とかですが,そういう民間企業のものを導入するというようなことになってしまうのは果たしていいのかということでありますから,外部試験ではなくて内部試験で,今回示されたような高校卒業程度認定試験の問題では不満足だというのであれば,それに見合うような形のものを英語も国語も作っていくことがやはり一番大事なことではないかなと思います。
 それから,もう一点ですけれども,高校卒業程度認定試験と統合というのは本当に全然役目が違っていますので,例えばこれに代わってこの試験である程度どの科目もあるレベルに達しているということが測られたとしても,高等学校ではこんな人には単位はあげられないよという場合も出てくるわけでして,そういう場合にその整合性が問題になってくる。その逆も出てきますよね。高等学校としてはこの子は十分卒業単位を認定しているけれども,このテストでは認定されなかった,何回か受けたけれども認定されなかったというような場合に,それをどういうふうに整合していくのかというのもあります。認定試験は認定試験で,きちっとした高校課程を受けることができなかった人たちのために置いておくべきものであって,達成度テストに外部会場を作るから,代わりにそこで受けてくれというような質のものであるとは思えないので,この統合というのは相当慎重に考えていただかないと危険があるのではないかなと思います。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかに。もう時間が過ぎているので,あと発言のある方は,では,及川委員,長塚委員,野上委員,金子委員でよろしいですかね。

【及川委員】
 私はこの基礎レベルの達成度テスト,ここに資料2-1で具体的に案として示されているのですけれども,基本的に高校版の全国学力・学習状況調査というように性格は捉えています。全国学力・学習状況調査のような,基本的な狙いはそこにあって,それにプラス,生徒の学習意欲の喚起という点で,自らの学力を証明すると,そういう狙いもあるというような仕組みとして受け取っています。そういう意味では,試験の目的のところに一番最初に出てくるのは「高校教育の質の確保・向上に向け」ということですから,これは正に全国学力・学習状況調査の狙いであって,二つ目に,生徒にとって自らの学力を証明すると,そういうつながりになっていると思います。
 そういった観点からすると,試験の活用方策は,最初に指導改善に生かすということが来て,AO・推薦入試等の学力の証明というのがこの順番で来るのは整合性があると思います。つまり,高卒程度認定試験の統合をということでいうと,自らの学力の証明というイメージは正に高卒認定試験がそうだと,そのようなイメージだと思います。高等学校の卒業者と同等以上の学力があるかどうかを認定する試験が高卒認定試験ですから,自らの学力の証明という仕組みのイメージとしてはよく湧くなと思っています。
 それで,この試験の狙いからいったときに,対象者のところが,高校生の個人単位での受検又は学校単位での受検も可能とするということで,基本的にはこういう表現で参加希望型であるということは私は理解できます。ただ,先ほど言った,この試験の狙いからすれば,学校単位での受検の方が最初に来た方がいいのではないか。つまり,学校単位での受検というのは,一番の狙いはやはり指導改善になると思いますので,自らの学力の証明という点で個人単位での受検ということを考えると,対象者のところはそういう順番の方が,試験の目的,活用方策,対象者という,その流れは整合性が出てくるのかなと思いました。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では,長塚委員,どうぞ。

【長塚委員】
 すみません,今の件と同じなのですが,全国学力調査と同じような意味合いになってきたなというふうに私もどうも話の流れを感じていたのですけれども,高校版の全国統一テストというような意味合いにどうもなってきてしまっていて,そういう議論だったのかなと改めて少し振り返っております。
 まとまりませんが,そもそも主体的に学ぶということから始まっていることで,個人に焦点を当てるということは非常に重要だと思います。高等学校は小中学校と違って,個人が多様な高等学校を選んで来ているという,その多様性の中の共通性をどうくみ取っていくか,保証していくか,質を確認していくという作業をするのが大事であって,学校が前面に出るというのは,高等学校教育の基本が違っていると私は思います。
 そこでいかに個人をしっかりと主体的に学ばせるというところに持っていけるかが大事であって,それは発展レベルの試験と同様であります。発展レベルもこれは悉皆ではなくて,当然,学校が全員強制ではなくて,個人が選んで主体的にこれを受検するわけですから,そこを忘れてしまっては,高等学校の学ぶ意欲をしっかりとさせていくというような方向性の土台が,基本が違っているのではないかなというふうな気が致します。
 学校がこの統一テストのようなものを使って指導の方策を考えるという前に,いろいろなことを学校ではやれていて,大体,学習の度合いとかは調べているわけですから,それをなしに教育をしているはずはないのであって,是非ここは個人の主体的な学ぶ意欲につなげるようなテストの在り方に私はしていただきたい。
 もっとも公立学校の場合には,首長なりが言えば,全県一斉に各都道府県のテスト同様に行われる。それが全国版で行われるというだけのことだと思いますので,それが行われてもある意味差し支えないのかもしれませんが,私立学校においては,全国学力調査同様に,実施するかしないかは各学校に判断を委ねられているということは是非押さえていただきたいと思います。
 それから,もう一点,実施方法で,各年二,三回程度やるというのですが,発展レベルもやって,基礎レベルもやるというだけでも,もうこれで二つあるわけです。中間層にとっては二つの試験を必ずやるようなことになるわけで,それが更にダブルになっていく,トリプルになっていくといった場合には,一体高校生は何回これらの試験を受ければいいのかということになりかねないわけです。もうすでに二つはやるということになる方向でありますので,それらのそれぞれについて余り回数を多くする必要性があるのかどうか。同じ試験でも2年次受けるのと3年次受けるだけでも2回受けることになるわけですので,どうもその辺は少し気になるところであります。以上です。

【小川部会長】
 では,野上委員,どうぞ。

【野上委員】
 テスト導入の目的はあくまでも到達度を測ることによって生徒の意欲喚起を促すものであることを忘れてはならないと思います。
 今まで協議してきたような内容でテストが作成されるならば金子先生も述べられておりましたが教科横断的な複合問題の出題も可能となりますので多面的に能力判定ができますので大賛成であります。また上野先生からはこのテストが飛び級の審査,選定にも活用されるようなものにとのお話がありましたが,今企業では独創性に富んだ人材の確保が持続的発展のために不可欠となっており,そうした資質の持ち主を発掘するためにもそうしたことが見極められるテストであって欲しいと思います。
 そしてテスト回数ですが,到達度を検証する目的からすれば1年次から何度でも受験できる制度設計としていただきたいと思います。またテスト結果についても公表していただきたいと思います。何故なら公表を機に学校間,教師間に切磋琢磨の機運が生まれることになれば指導を受ける生徒にとっても益することで是非公表していただきたいと思います。

【小川部会長】
 では,最後,金子委員,お願いします。

【金子委員】
 先ほどの発言ですが,私は悉皆にすることは反対です。これは基本的に選択にすべきものだと思います。この会合の始まりましてもともと初発の問題は,日本の高校生は明らかに学習時間自体が明確に減っているという非常に深刻な事実がある。しかもそれは何の中で起こってくるかというと,高校教育の教育課程が非常に多様化してきて,何を獲得目標とするかということが薄れてきたのではないかと。同時に,大学の入試によって強制的に勉強させられる部分も少なくなってきている。その際にどうしたら基本的な学力を保証できるのか,あるいはそれを測ることはできるのかというところから始まったのだと思います。
 そこからこういった発想が始まったわけですが,こういうふうにしてしまいますと,やはり全国試験が始まるのだと。だから,これは悉皆した方が大体システマティックでいいのではないかという発想が出てくることは分かりますが,やはり基本的には私はそれは無理ですし,やるべきではないと思います。
 第一に,高校教育は義務制ではありません。これは選択の上に成り立っているシステムのわけです。どのような選択するかということは個人によって任されているわけです。同時に,先ほどの発言からもいろいろとありましたが,やはり少なくとも教育課程を多様化するというのは行き過ぎかもしれませんが,生徒が多様であって,それに柔軟に対応することは重要であると,これはやはり基本的な認識としてあるわけです。それに一律的な試験を課すということは,私は基本的に矛盾していると思います。
 技術的にいっても,ここのところで特に申し上げたいのですが,試験というのはターゲットがあるのです。誰にでも向いている試験というのは余りないのです。小学校,中学校ではやはり誰でも向いている試験はあるかもしれませんが,上に行くに従って,どういう目的で学習するのか,どの程度のところに行くかによって試験の内容は変わってくるわけです。高校段階で誰にでも向く試験というのは実は私はないと思います。例えば共通試験も,これもある程度,大学を受験する,学力と言っていけないかもしれないけれども,上位半分ぐらいの人たちを対象とした試験です。ですから,大学によってはそれでは不十分だというところも多いわけです。
 ここで何を対象としたいかといえば,私はむしろ学力上位層ではなくて,下位層のところの人たちの学力を底上げするということが基本的な問題だと思います。学力上位層は,大学で試験をすればある意味でいいわけであります。全員を対象とした試験というのは技術的にも非常に無理がありますし,制度としても意味がない。それから,個人に対する情報としても全く意味がないと思います。そういった意味で,悉皆というのは少なくとも高校段階では私は無理だと思いますし,意味がないと思います。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。御熱心な討議ありがとうございました。予定よりも20分ぐらいオーバーしてしまいましたけれども,今日の議論で委員の話題で幾つか今後更に議論すべき論点も明確になってきたと思います。今日頂いた意見を更に再整理して,次回,継続的にまた議論お願いいたします。よろしくお願いいたします。
 次回の予定については,事務局の方からお願いします。

【小林教育制度改革室長】
 次回は3月7日金曜日の夕方5時から7時,文部科学省内で予定させていただいております。

【小川部会長】
 次回は3月7日金曜日5時から7時まで,文部科学省のビルを予定しているということですので,日程の確保よろしくお願いいたします。
 それでは,今日,長時間ありがとうございました。これで終わります。

―― 了 ――

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