高等学校教育部会(第8回) 議事録

1.日時

平成24年5月18日(金曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省庁舎3階 特別会議室

3.議題

  1. これまでの意見の整理
  2. その他

4.議事録

【小川部会長】
 おはようございます。定刻よりも若干早目ですけれども、始めたいと思います。金子委員は少し遅れて来るそうですので、よろしくお願いいたします。
 それでは、中教審初中分科会の高等学校教育部会第8回目を開催したいと思います。委員の皆様にはお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございました。
 それでは、まず配付資料について事務局から確認をお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】
 本日の配付資料は議事次第でお配りしておりますとおり、資料1から資料4まで、そして名簿となっております。不足等ございましたら事務局にお申しつけください。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 前回から、これまでの議論を整理していただいて、課題の整理と検討の視点について議論してきました。前回は時間の関係もありまして、5の各種の振興方策を除いた他の部分について審議をしていただきました。
 今日、引き続き議論をするわけですけれども、まず、前回、議論ができなかった第5の柱を中心にしながら、この検討の視点(案)を全員で検討していきたいと思っています。よろしくお願いします。
 それでは、まず事務局から、資料についての説明をお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】
 それでは、資料1を御覧いただきたいと思います。資料1は、前回の会議で配付させていただきました「課題の整理と検討の視点(案)」につきまして、資料2に主なものとして事項ごとに記載しておりますが、前回の会議における各委員の御意見、さらに資料3としてお配りしております、会議後に事務局にお寄せいただきました安彦部会長代理、和田委員、長塚委員、伊藤委員、川嶋委員、これらの御意見をもとに修正を加えまして、見え消しでお示ししたものでございます。
 1枚おめくりいただきまして、1ページ、2ページ目を御覧いただきますと、赤と青の2色で修正していることがお分かりいただけるかと思います。赤で修正しておりますのは、この御意見をもとに追加等を行った部分でございまして、青で修正しておりますのは、それに伴って文書のつながり等をよくするために、もともとあった記述の位置を変更している部分でございます。
 それでは、赤字で修正している部分について、その主なものを御紹介させていただきます。
 まず、1ページ目の26行目と30行目の丸でございますけれども、ここは安彦部会長代理の御指摘を踏まえまして、子供の発達段階における後期中等教育の意義ですとか義務教育と高等学校教育の違いについて、事務局としての案を追加させていただきました。
 3ページを御覧ください。6行目では、直原委員から前回御指摘いただきました、東京都等の各都道府県の高校教育改革の取組について言及をしております。また、15行目からは、小杉委員や眞砂委員の御指摘を踏まえまして、総合学科についても記述を加えさせていただいております。
 4ページになりますと、こちらでは構成上のめり張りをつけるために、課題につきましては一つの項目として、2.高等学校教育の課題として独立させていただきました。このほかにも、1ページ目からお気付きかと思いますが、節目節目で小見出しを加えさせていただいております。
 では、6ページを御覧いただきたいと思います。10行目では、安彦部会長代理の御指摘を踏まえまして、制度の改善を含めた検討を行うべきではないかということ、また、その場合であっても、十分に時間をかけるべきではないかということを加えました。
 また、安彦部会長代理や及川委員の御指摘を踏まえまして、16行目では、高等学校においては単位制であるものの、ともすれば履修させることに重点が置かれている場合もあるといったことを加えまして、32行目のところからは、この2人に加えまして小林委員からも御指摘いただきましたので、その際には中退者が増加するのではないかということについても加えさせていただきました。ただ、この点につきましては、荒瀬委員や長塚委員から、また別の視点での御指摘がございましたので、ここは御議論があろうかと思っております。
 7ページを御覧ください。5行目では、「コア」につきまして、川嶋委員の御指摘も踏まえまして、昨年1月の中央教育審議会答申の「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」を参考にして追記をさせていただいております。
 また、26行目でございますが、こちらは小杉委員の御指摘を踏まえまして、転学や編入学等の進路変更がより容易になるようにすることというのを追記させていただいております。
 8ページを御覧ください。まず1行目では、安彦部会長代理の御指摘を踏まえまして、基礎的生活習慣の確立や学習態度や意欲の向上について追記をしております。
 そして11行目では、上野委員の御指摘を踏まえまして、教員の資質・能力の向上についての記述を追記しております。
 9ページを御覧ください。32行目でございますが、こちらも安彦部会長代理の御指摘を踏まえまして、高等学校教育の成果が見えにくいがゆえに、その成果を大学への進学実績という一側面で捉えていることについての記述をいたしました。また、そのことが10ページでございますが、高等学校教育に対する社会からの不信感につながっているということも書かせていただいております。
 それから、おめくりいただきまして、12ページを御覧いただきたいと思います。こちらは直接前回では御議論いただいていなかったところですけれども、それまでの議論の中で、まず28行目のところでございますが、和田委員の御指摘を踏まえまして、学習指導要領における標準単位数についての記述を追記させていただいております。
 また、32行目からは、上野委員や北城委員、あるいは和田委員から御指摘をいただきましたので、指導力のある教員の育成と学校の組織運営体制の充実についての振興策を、事務局の方で案を考え追記をさせていただきました。
 15ページを最後に御覧いただきたいと思いますけれども、こちらは、前回は全く事項として立てておりませんでしたけれども、アキレス委員ですとか北城委員、長塚委員の御指摘をもとに、高等学校と大学との接続について追記をさせていただいております。
 なお、前回の高等学校教育部会では、大学分科会長を務めていらっしゃいます安西委員より、大学教育部会の審議状況について御説明をいただきましたけれども、4月16日の大学教育部会、20日の大学分科会では、事務局から高等学校教育部会の審議状況について御報告をいたしました。その際、大学分科会や大学教育部会の委員の皆様からいただきました御意見を、ちょっとペーパーではお配りしておりませんが、簡単に御紹介させていただきますと、まず1つ目としては、世界の趨勢で見ると、18歳という年齢が、責任を持った大人というのが国際的な位置付けであるけれども、日本では全く実態が追いついていなくて、社会において果たさなければならない使命の自覚というのが抜きになっていると。この点が重要なのであって、高等学校教育における質保証についても、学力的な保証ばかりを目指すのは方向が違うのではないかといった御意見がございました。
 また、高校を中退して定時制や通信制に移っても、その後どうなるのかと。通信制課程では、そもそも中退率のデータもとられていないと。そういった意味で、人材育成の目標を掲げても、それを身につけなければどうするのかといった仕組みまで含めて議論をしないと、結局は今のままで変わらないのではないかといった御意見もございました。
 また、年齢主義を見直して、修得主義の徹底を図ることが必要だといった御意見、あるいはシラバスの作成・公表のように、教育手法として大学教育の方が進んでいるものについては、高等学校教育においても取り入れるべきではないかといった御意見。また、大学側として、単に受験勉強をするような生徒が欲しいわけではないのであれば、こういう力を持った生徒が大学として欲しいといったメッセージを出すことが大切だといった御意見、また、大学入試センター試験でしっかりと基礎学力を測定できるような制度が必要ではないかといった御意見をいただいております。
 安西、小川両分科会長のイニシアチブで、今後も高校、大学のそれぞれの部会が審議状況を共有して、中教審として高校段階から大学段階までを見通した議論をしていくということでございますので、簡単ではありますが、御報告させていただきました。
 また、高等学校と大学の接続のところ、特に大学入試の点につきましては、6の方で書いておりますけれども、この部会だけでは議論できないところもございますので、大学分科会と共同で検討の場が持てないかということを両分科会長に相談しながら、事務局としても今、調整をさせていただいているところでございますので、御報告いたします。
 事務局からは以上でございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 一応、前回の議論を踏まえて、前回出された案に更に新しい内容をつけ加えて、今日、提出いただきました。議論の順番として、今日は前回の議論で、時間がなくて、皆さんから御意見をいただくことができなかった、今日の資料1の目次でいえば、5の各種の振興方策について、まず、いろいろ御意見を伺った上で、この各種の振興方策は、基本的には1から4、そして6にも直接、内容は関連するものですので、最初は各種の振興方策を別建てで少し時間をとって意見を聞きながら、更にもう一度、全体を通して皆さんから御意見を伺うというふうにしていきたいと思います。よろしくお願いします。
 それと、これまでの議論の中で、高校教育の課題というのは広範囲に及んでいますので、議論していく際には、現行制度でも運用の見直しで対応が可能なものと、また法令や制度の改正を要するけれども、短期的にやるべきもの、また法令や制度改正を要するけれども、中長期的な検討を要するものということで、取り組むべき方策や課題を、そういう点で振り分けて整理する必要があるのではないのかということも、これまでの部会の議論の中では出てきました。
 前回と今日提案されている資料の中では、その辺のところはまだきっちり整理されていませんけれども、今日の議論を踏まえて、次回提出する際には、そうした運用の見直しで可能なもの、法令改正は必要だけれども短期的なもの、そして長期的に検討すべきものという、その辺のところは少し振り分けながら、次回以降に再度整理したものを提案して、それに即して個別の論点や内容を、また部会で検討していくという手順で進めていきたいと思いますので、その辺は御了解いただければと思います。
 では、早速これから、この課題の整理と検討の視点(案)について意見をお伺いしていきたいと思います。最初に、5の各種の振興方策を中心にしながら、少し御意見を伺いたいと思います。
 なお、皆さんのお手元に資料3として、委員からの御意見ということで、5名の方から文書で提案がなされています。この中には、5の各種の振興方策に関わる御意見を記載されている委員もおりますので、これを参考にしながら、この資料3を提出していただいた委員には御発言をしていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 では、どうぞ。どなたからでも構いませんので、よろしくお願いします。
 小杉委員、よろしくお願いします。

【小杉委員】
 ありがとうございます。5のところで、(1)の丸1について、前のところとすごく関係があるんですけど、この表現でいいのかなというのはすごく疑問に感じています。先ほど、大学分科会の方で、18歳は責任を持った大人というような議論がありましたけれども、ここで言う市民性教育というのは、そういうニュアンスが非常に強い、もっと強くすべきではないかと思うんです。18歳は成人かどうか、それはちょっとまだ議論は続いておるところだと思いますけれども、「市民性を育む」というだけではなくて、やはり卒業した時点で労働市場に直接出る人たちもたくさんいるわけで、その段階で基本的には大人にするというような発想が必要だと思います。この部分の書き方を、先ほどの労働市場に直接出る、既に大人としての自分の権利・義務をきちんと守れるような教育ということまで含めて理解できるような表現に是非して欲しいなと思います。
 労働市場の話は、この間、前のとき出ましたけれども、労働者としての権利・義務の話とか社会保障の話とか、やっぱりこの中に、社会生活を営む上で必要な知識の中にそういうものが全部含まれていると思うんですけれども、そこをもうちょっと強調していただきたいと思いました。
 それから、その下の段の社会的・職業的自立の話ですが、この「コミュニケーション能力など」という例示はやめていただきたいと思います。すごく矮小化されてしまいますので、コミュニケーション能力に。もっと幅広い社会的・職業的自立ということを考えられていたと思いますので、是非それはコミュニケーション能力という特化されたものにならないように、外していただきたい。
 それから、その帰結として、一つとして、中核的となる科目というのは、それは一つの選択肢だとも思いますが、キャリア教育はその一つの科目でやるものではないので、そういう意味では、そこのところはちょっと注意して書いていただきたいなと思います。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。小杉委員の今のお話はもっともだと思うんですが、更に何か具体的に御提案ありますか。「市民性を育む教育」というもの以上に、そうした表現を表すため、例えば何か具体的な御提案があればお聞かせいただきたいんですけど。

【小杉委員】
 18歳で学校を離れて社会人として自立することが求められている。社会人としての自立をするために必要な教育としての市民性教育とか、何かそういう枠組みを付けていただければと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにどうでしょうか。資料3で、文書で提案いただいた委員の方に、先ほど、5の各種の振興方策に関わって御意見を伺っている委員もいらっしゃいますので、いかがでしょうか。例えば安彦委員、あと伊藤委員、川嶋委員等々もございますけれども、どうぞ、御意見。伊藤委員。

【伊藤委員】
 伊藤です。14ページの「主として、自立して社会生活・職業生活を営むための基礎的な能力の育成を目指す学校」の振興方策の2つ目が非常に重要な方策だと思いました。「個々の生徒の状況」ということの中に、その下に不登校の生徒とか、それから、発達障害とか、そういう言葉はありますけれども、ここも多分メンタルヘルスのケアも含めて考えられていると思います。そういった意味で、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー等の専門スタッフの充実があれば、そういった当該生徒や保護者、教職員をサポートできていくと思いました。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 安彦委員、どうぞ。

【安彦部会長代理】
 関連するところだけまずは申し上げます。今、キャリア教育の御発言がありましたけど、私は前から、この市民性を育むとか、あるいはキャリア教育とかいうところをくくる概念として、子供は国の未来の主権者だという視点を入れろと言ってきたんです。そういう言葉をなかなか使ってもらえないんです。本省の役人の方にも、これは何とか使えないのか。もうちょっと、子供という抽象的な概念ではどうしてもぴんとこない。実際に、特に高校はもう、さっきからお話のように、すぐに社会に出る子がいますから、そういう意味では、未来の主権者としてふさわしい教育というのを、ちゃんと主権者となるにふさわしいものという意図をはっきり言葉に込めたいんですけど、なかなかいろいろな抵抗があるのか、よく分かりませんが、使っていただけない。その点、やはりこういうところの中にそういう言葉が入ると、もう少しクリアになるんじゃないか。賛成してくださる委員の方もいるんですけど、ごく少数で、なかなか入らないです。
 それから、振興方策として、黒丸で(2)の方に出ていますけど、正直言って私は、こういう学校を一種の、「学校」という表現にしているのがちょっと気に入らない。それぞれ別々の4つの学校にしてしまうのか。高校というのを4つの類型という言葉で、今はそう、言うかもしれませんが、その4つの学校にしてしまうのか。
 これは、しかし、見方によってはアメリカでいうトラッキングになるわけで、ある学校に入ったら、ほかの学校を通して、例えば大学に行くというようなことが、その学校からはもう不可能になるわけですね。走るトラックが決まってしまっていて、途中でトラックを変えることが許されないみたいなニュアンスが強く出てしまうので、そういうことについては、基本的に私は望ましいと思わないし、ほかの委員の方もそうならないことをお勧めですし、こういう、学校別に何かしてしまうというのは、本当にいいのかということですね。
 むしろ、これは何か私の考えでは、時代に逆行していると思います。一言で言えば、先進国にキャッチアップするときは、どのレベルまで行けばいいかということが見えますから、学校に入る入り口のところでここまでやっておけば大丈夫というので、そこである意味で適格者主義のような視点が有効で、入れられますけど、またその視点である意味で切ることができますが、もう先進国の仲間入りをしていて、前方にモデルとなる国がありませんから、どの水準までやればいいかというのは分かりにくいわけです。ということは、逆に言えば、前にも申し上げた、入り口のところで、入学のところで、こういう力じゃなければいけないという形で人を切るんじゃなくて、出口のところで、やはりそれなりに質保証も含めて、これだけの力をというふうにやらざるを得ない。
 ですから、そういう意味では大学も同じですけど、高等学校、大学は、基本的にモデルとなる国がなくなった今は、ある意味で、望ましい水準というのを自分たちで決めながら、経験しながら決めていくという時間が要るわけで、それを初めから、モデルがある時代と同じように、この水準なら高校に入る資格があるとか、大学に行ける力があるとかいう視点で決めてしまうと、言ってみれば、入ってから野放しにされるわけですね。もう入れたんだから大丈夫だろうと。
 そうではない、むしろこれからは産業界もそうですけど、出口のところで本当に力のある人が育っているのかということをチェックさせてほしいと言ってきている。ということは、もう産業界はそういうグローバルな、世界的な競争の中で、先進国と本当にモデルのない時代を闘っている、そういう状況の中で人材が欲しいわけですから、あらかじめ切って入学させるという発想ではなくて、そういう意味でトラッキングのようなやり方というのは望ましくなくて、入ってから勉強し合い、磨き合って、出るところでそれぞれの子供が一定の力をつけたものを、社会から見たら、こういう人が欲しいというふうに見えやすくするというか、それが今の先進国に仲間入りした時代の、特に高校、大学の姿のありようじゃないかなというのが、前からちょっと思っておったことです。
 そういう意味で、初めから学校というレベルでこうやってタイプ分けしてしまいますと、もう入り口のところで、この子はこの学校にふさわしい、こっちの子はふさわしくないという区分けをするわけですね。この点、やはり言ってみれば、今のそういう状況だと、今の状況をただ、より明確にするだけ、今の、ある意味ではタイプ分け、多様な高校があるということを前提にそれが進むわけですから、そんなに大きな改革にならなくて、現状追認のような形で、そういう望ましさみたいなものもあんまり議論にならず、どうも私としては、こういう分け方をしていくと、それぞれの学校の先生は楽をします、一定の子供しか入ってきませんから、私からすると、先生方が楽をしたいから、こういう学校のタイプ分けをするというニュアンスに聞こえてしまう。この点、やはり是非ちょっとそういう視点を入れてお考えいただきたい。

【小川部会長】
 金子委員、どうぞ。

【金子委員】
 今、安彦委員がおっしゃったことにちょっと触発されて申し上げたいと思うんですが、私は、現在までの論点のまとめは、これまで15年くらいたどってきた多様化路線そのものに対する反省といいますか、見直しの視点がやっぱり足りないのではないかと思います。同時に、既に御存じのように、四大の入学進学率は50%を超えておりまして、短期教育機関を含めれば7割以上が進学するという状態にあります。そういう状況の中で、私は初等教育、中等教育、高等教育とつなげて考えて、一貫した中でどういう学力はどの段階でつくっていくのかということをもう一回見直す必要があるのではないかなと思います。
 この報告書の冒頭の方に書いてありますけれども、国民としての基礎的な教養は義務教育で終わると。進学準備は高校の普通科で、職業準備は職業科でやるということだと書いてあるわけですけれども、実際にそうなのか。既に今の高校というのはそういうふうにできているのかというのを、私はかなり疑問に思うわけです。確かにそれであれば、普通科については、議論になっておりますように、普通科についても非常に大きな問題はあるわけで、大学入試がかなり易しくなっているために、非常に中核になる部分の学習時間が急速に減っている、これは何回も繰り返し問題になってきたところです。
 同時に、職業高校についても、一部、工業高校などでは紹介ということはあるとは思いますが、しかし、高校卒業生の就職先を見てみますと、製造業への就職者数というのは激減していますし、事務職への就職者数は更にそれに加えて激減している。これは既にIT技術とかそういったものが入って、高卒で事務職に入る人の需要の構造自体がものすごく大きく変化していて、実際には、例えば商業高校とか、そういったところの教育が職業に関してレリバンスを持たなくなっているという状況があるわけです。それをどのように今変えていくのかというのは基本的な資質の問題で、質の保証というのも、基本的にはそういうところから発生している問題ではないかと思います。
 これを、例えば大学進学者に関しては接続テストみたいなものをつくって、何とか持ち直そうという発想もあるかもしれませんが、これまた細かく言うと時間がかかりますので言いません、私はこれは現実的には非常に難しいと思いますし、高校と大学の接続を、接続テストみたいなもの、要するに入試に矮小化させて捉えるのは、非常に私はおかしいと思います。
 問題は、高校段階で国民全体に要求されるような、どのような学力を身につけているのかということをやはり考えるべきで、そのために高校生が勉強する、そういう環境をつくっていく。どういう高校生であっても、職業高校であっても普通高校であっても、またどういう大学に行く高校生であっても、どのように勉強する目標ができるのか。それをつくっていくということは、私は基本的に今の課題だと思うんです。
 実際、例えばアメリカなどで今行われているのは、小学校から大学までを一貫して捉えて、どういったものを勉強しているのか、そういう個人的な、個人情報とも言えるかもしれませんが、個人がどういう勉強を積み重ねてきているかというようなデータベースをつくるというようなことが、かなりの州で今行われていますが、それは基本的にはやはり通して捉えようと。通して捉えて、何を獲得しているのかを捉えようという考え方だと思うんです。私は、そういう考え方はやはり必要だと思います。
 もう一つの理由は、義務教育の段階では、達成度を測定して落とすわけに、今のところいかないわけですね。義務教育で落第導入というような意見も一部ありますが、あれがある程度受けているのは、やはり何か最低のといいますか、一定のこれだけは得ているものというのを、子供全体に身につけさせなければいけないという要求はかなり強いからだと思います。ただ、これは義務教育の制度の中にそれを組み込むことは実はかなり難しい。したがって、私は、高等学校の段階で一定の学力を保証する、プラットホームみたいなものをつくるということは非常に重要ではないかと思います。
 これは最初から申し上げていることでありますけど、繰り返し申し上げたいと思いますし、今、教育振興基本計画が議論されていますけれども、私は教育振興基本計画の中でも、やっぱり高校について言うべきなのは、小学校から大学まで一貫した日本の教育の中で、高校は何をすべきかということを考えるという位置付けを、振興計画の中でも位置付けるべきだと思いますし、ここでの議論でも、そういった論点が必要なのではないかと思います。
 それに関連して、この施策のところですが、私はそういった観点は必要だと思うんですが、これは私は文科省にもお聞きしてみたいんですが、今私が申し上げたようなことは、文科省ではどこがどう議論しているのか。要するに、教育課程については確かに教育課程として議論されているのではないかと思いますが、教育課程全体を通じて、どこでどういうような学力をつけていくのか。それは教育課程だけの問題で、私はないと思います。教育課程は課程ですから、形式的に言えば、それを修得していることは求められているわけですが、実際ではそうなっていないことは誰でも知っているわけです。具体的な学力としてどう保証するのかというようなことを、文科行政としてはどういうふうに捉えるのか。
 それから、特に私が疑問に思うのは、高校に関しては、基本的にはやっぱり今まで中教審でもまともに扱ってきていないわけですね。それで、初めて高等学校教育部会というのが、こうやってできているわけですが、基本的には行政的には私は都道府県に任されていると思いますけれども、各都道府県がどの程度そういったことについてプランが、イメージがあって、あるいはビジョンがあって議論しているのか。教育システム全体としてそれをちゃんと統合するような仕組みはどこにあるのか。
 これは非常に大ぶろしきみたいな議論ですが、私は非常に疑問に思うんですね。大学については、今、一生懸命勉強して、一応議論をしていて、ワークしているかどうかはちょっと別ですが、少なくとも議論をしている。初中についても議論をしている。高校については、こういった問題について、どこでどう議論するんでしょうか。中教審でこれからやっていくことになるんでしょうか。私は、それをちょっとお聞きしたいんですけど。

【小川部会長】
 文科省に……。

【金子委員】
 文科省にもちょっと聞きたいですが、部会長にも聞きたいです。

【小川部会長】
 わかりました。
 今、流れの中では、最初、各種の振興方策ということで、一応、1から4までの議論を踏まえて、4のところでは3までの政策の基本方向を踏まえて、大きなこれからの課題ということで、高校教育の質保証ということを別建てで重要視して設定して、更にその質保証を各個別の施策として、どう更に分節化して考えていくかということで、5のところがあるわけですけれども、今日は、そこからまず入ろうということで意見を伺っています。
 今、安彦先生、金子委員の方から、5の枠にはまらない、全体に関わるような議論にもう今なってきていますので、各種の振興方策について、更に何か、特にこの点について御発言したいという方がいらっしゃれば少し伺って、その上で、更にもう一度、前回同様1から6まで、全体を通して意見を伺うというふうにしていきたいと思います。
 今の金子委員の質問は、これが終わった後によろしいですか。文科省の方にお伺いしてみたいと思いますけれども。そういうことで、各種の振興方策のところで、最初に御意見を伺っておく必要があると思いますので、それを少しやってから、今の全体の問題に更に進んでいきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 直原委員、よろしくお願いします。

【直原委員】
 先ほども市民性の御議論がありましたので、それに関連して、ちょっと一言、私の考えですけれども。市民性のところは、とても大事なことだと思っているんですが、一つ、東京都の事例で言いますと、最近、新聞でも報道されましたけれども、今年度から都立高校全校で、宿泊付きで防災訓練を行うことにしました。ただ、これはどういう意図でやっているかといいますと、もちろん訓練という意味はあるんですけれども、本当の狙いは防災活動を通じて、生徒も社会の一員なんだという認識、それから、もう高校生ですから、防災活動を通じて社会に貢献できる役割を果たし得る存在なんだと、そういう認識を持ってもらいたい。そういう位置付けでやっています。ですから、別に取っかかりのテーマが防災でなくても構わないんですけれども、社会の一員となる、そして社会に貢献するんだ、社会貢献というのが一つのキーワードの一つになってほしいなと考えています。
 これもキャリア教育の一つだと思っているんですが、キャリア教育、これからもっと具体化していかなければいけないと思っているんですが、今、私どもの問題意識としては、そのキャリア教育と、それから、教科の学習とがあまりにもかけ離れている。キャリア教育が必要だということで、例えば防災活動のほかにも福祉施設に行って体験をするとか、様々な活動をやっているわけですけれども、それと5教科の勉強との関連性ができていないと思っています。そこをつなぐ活動、それが新しい学習指導要領でも目指されている、思考力・判断力・表現力あるいはコミュニケーション能力を高めるという活動だと思っていますが、それはもちろん一つ一つの教科の中でも、高校ではその部分の指導方法の改善が遅れていると思いますけれども、それに加えて、教科をまたがる活動が高校では不足しているなと思っています。
 もともと総合的な学習の時間というのは、本来そういうのを目指したはずだったんですけれども、現実にはなかなかできていない。例えば教科をまたがって一定のテーマを与えて、グループでゼミナール的な活動をし、報告書をまとめてプレゼンテーションをするとか、そのような一定のテーマを与えてグループで研究活動をすることによって思考力や判断力を鍛える、そこの中で普段の授業、5教科で勉強したものを生かしていく、それを発表して討議する、このような活動を進めていくことによって、一つは社会で求められている能力、人材育成にもつながると思いますし、本当の意味での教科の勉強と、それから、キャリア教育とのつながりができてくるのではないかと思っています。
 ただ、そのための課題としては、高校の教員にそういう力が不足していると思っています。というのは、今までの高校の教員というのは、やはり教科ごとの活動、特にその中の知識、理解の部分について、中学に比べると、まだ依然、旧態の部分が残っていまして、そういう高校の先生たちに、生徒の思考力や判断力やあるいはコミュニケーション能力を教科を超えて高めていくような指導が、どうしたらそういう指導力をつけていくのか、それは大きな課題だと考えています。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにどうでしょうか。和田委員、どうぞ。

【和田委員】
 前回の会議で川嶋先生でしたか、もっとストレートに意見を言った方がいいのではないのかということがありましたので、ちょっとストレートにものを言いますけれども。
 今、いろいろ御意見が出ていたことの中で、教科主義、科目主義というのは確かに高校にはあることは間違いないんですが、そういう制度をずっと文科省からつくられて、教育課程の改訂の中でも、総合的学習が始まった年にも、それならほかの教科をもっと大綱化できるチャンスがあったはずですけれども、それを一度もされなかった。総合的学習の時間という怪しい名前の科目が一科目増えたというような認識しか持てないような改訂であったと記憶しているわけです。
 その時にも、それを主導した教育学の先生の講演を聞いたことがありますが、今回は残念ながら規制強化の中で大綱化ができなかったけれども、今後はそういう方向に必ず進んでいく。つまり、物理、化学、生物、地学ではなくて、それをまとめた理科という名前になるのか、科学という名前になるのか分からないけれども、そういうような大綱化をしていく中で、総合的学習も生きてくるんだというような話があったんですけれども、そういう制度改革は、それからもう随分になりますけれども、少しも進んでいない。
 高等学校は教員の質だとかおっしゃいましたけれども、そういう教科制度のもとに文科省が立てた指導要領というカリキュラムのもとがありまして、それのもとに当然授業をしていくわけですし、教科書も物理、化学、生物、地学、相変わらず別でありますし、もっと言えば、化学もⅠとⅡとかに分かれているわけでありまして、そういう形であれば、その科目をそれぞれ教えていくしかやり方がないわけですよね。そういう意味でも、大きな意味の制度改革というのは絶対必要ではないかなと。それはやっぱり一つには、私の意見にも書きましたけれども、教育課程の大綱化ではないかなと。
 そして、理科という中で、こういうようなことを最低限教えていきましょうと、今までの9科目のものを合わせた形でもいいと思いますし、もう少しまた違う角度でもいいと思いますけれども、理科だったら理科のコア科目、あるいは社会だったら社会のコアの内容というのをつくって、それを、その程度は確実に押さえてくださいよと。その後、プラスアルファでできることは、もう各学校の自由でどんどんやっていけばいいというような形でしていけばいいんですけれども、今、残念ながら教育課程がそういう形にはなっていないということであります。発展的学習というような名前でプラスアルファできることになっていますけれども、そのことに関しても、特にどういうことができるか、あるいはその段階へ行くまででも、もういっぱいいっぱいの状況と言っていいぐらい、いろいろな教科、科目を教えなければいけないシステムになっているわけですから、ここをまず取っ払うというのが一番ではないかなと思っているわけです。
 それから、もう一つは、高大接続の問題が出ていますが、本校などの場合はほとんどが進学を目指しているわけでありまして、私立だからそうなのかもしれませんけれども、やはりそういう制度と、そして本人及び保護者の期待といいますか、ニーズといいますか、そういうものを満たすために日々努力しているわけでありまして、例えば医者になりたいというようなニーズがあったときに、現在は、とにかく医者になるためには医学部へ入らなければ、なれないというシステムなわけですね。どこかで社会人をしていて、あるいは病院で医療事務を手伝っていて、それの経験を重ねると、お医者さんという資格を与えられるということはなくて、医療事務を幾らしていても、あるいは技師としての資格を持っていても、医者にはなれないというシステムがあるわけです。もう一度医学部へ出て、医学の国家試験を通らなければいけないわけですけれども、そういうシステムの中で、やはり、じゃ、医学部へ入りたいという希望があれば、それを満たしてやるのが我々の務めではないかなというような形で、日々の授業なり学校運営をしているわけです。その辺のシステムが全部社会的に変わってこないと、なかなか難しいかなと思います。
 それから、もう一点、意見書にも書きましたけれども、これは私自身の考え方なのかもしれませんが、日本人の成績至上主義的なところ、これは何も学校がそうであるというのではなくて、あるいは大学がそうであるというのではなくて、日本人が持っている公平感といいますか、1点差で落ちても惜しかったと思うんだけれども、おかしいとは思わない。また来年頑張ろうという形で、1点差、あるいは0.何点差のところで線を引かれることに関して、意外と公平な感覚を国民みんなが持っていて、そこへ、例えば逆に推薦といいますか、面接だとか論文だとかいう、日本人からすると非常に曖昧なものを基準にされて、合否が、例えばペーパーテストの点数が逆転するというと、なぜだということになるわけでありまして、その辺の日本人の公平感的なものも変えていく必要があるのではないかなとは思っています。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかに、5の振興方策に関わって少し御意見伺いたいんですけれども。ほかにどなたがいらっしゃいますか。では、野上委員、及川委員、小林委員という順でお願いします。

【野上委員】
 現在、産業界は未だに経験したことのない大転換の真っ直中にあって大いに呻吟していますが、そうした状況を打開・克服するためには厳しい環境を機会と捉えるようなチャレンジ意欲旺盛な若者の出現と存在が欠かせないのであります。
 問題は、そうした若者をどのように育成していくかであります。しかし、検討にじっくり時間を掛ける余裕はありません。秋入学への移行がにわかに浮上したことでもお分かりいただけますように世界中がグローバル化の波の中にあります。
 かつて世界のなかにあってジャパン アズ ナンバーワンと賞賛された日本のものづくりも、そして企業もがボーダーレス化したこの荒波の中にあって現在もがき苦しんでおります。そうしたことから、多くの企業が好むとこのまざるとに関わらず日本的経営システムをベースとしながらも多くの国で採用される経営システムに移行せざるを得ない状況にあります。したがって当然のこととして人材のグローバル化が急速に進んでおります。結果、旧来の新卒を採用し時間を掛けて育成するといったシステムにも影響が出始めております。例えば、採用ニーズが発生したとき、グローバル化した企業は即戦力を世界中から必要人数だけ採用しているのであります。
 ところで、ここでいう即戦力人材とは、以前この会議でも申し上げましたが、自分自身の考えを持ち、その考えをベースに他人と議論し、自分の存在を示せる人物を指しております。このように申し上げますと、そうした資質を持ち会わせる人材はリーダー人材と聞こえるかもしれませんが、決してそうではなく企業ディスカッション、プレゼンス能力が求められているのであります。
 このような背景があるものですから産業界では、従来の新卒採用・終身雇用・年功序列と云った日本特有の単線型人事制度から通念採用・有期雇用と云った複線型人事制度を採用した企業が出始めているのです。こうしたことを念頭に議論を進めていくことが肝要かと思います。
 但し、グローバル化、ナショナルスタンダードが進行するからと言って、世界に誇れる日本の良き制度、良き仕組みを失ってはなりません。
 その一つが明治維新以降、特に戦後教育が育んだ所産だと思うのですが、日本には多くの産業人が感歎し、評価する人材の存在があります。それはテクノロジストと云われる人材です。テクノロジストの日本語訳はありませんが、これは彼の世界的経営学者ドラッカーによれば日本のメーカーには肉体的労働者でありながら技術の知識を持ち合わせた人材が数多くいて、その存在によって世界に冠たるものづくり大国日本が戦後誕生したのだと著作で紹介したことで日本固有のテクノロジスト人材の存在が表面化したのです。こうした人材の育成は一朝一夕に出来るものではありませんし、一度この養成システムが瓦解してしまえば再生は極めて困難なことから、グローバル化を急ぐにしてもこうした人材を生み出す伝統的な良きシステムを堅持・維持した上で世界に伍すことの出来る仕組み・制度設計をしていかねばならないと思うのであります。 

【小川部会長】
 ありがとうございます。
 及川委員、小林委員、5のところに、できれば関係づけてお願いいたします。

【及川委員】
 資料の13ページ、振興策の中で、育成すべき人材像に応じた類型が、タイプとして、学校として示されているんですが、その2つ目の学校、「主として、専門的職業人に必要な資質・能力の育成を目指す学校」の中で、2つ目に、「職業に関する資格等の取得に必要な学習内容と」云々というところがあります。例えば、前にもちょっと申し上げましたけれども、全国工業高校長協会がつくっている学習達成度を測る仕組みの一つに、ジュニアマイスター顕彰制度というのがあるわけです。全国商業高校長協会の方には全商1級とか2級、これは明らかにそれぞれ工業教育とか商業教育の学習成果を測る仕組みだと思います。
 ところが、工業高校の校長先生や商業高校の校長先生に伺っても、そういうジュニアマイスター顕彰制度であるとか認定制度であるとか、全商1級だとか2級だとかというものに対する社会の認知度は、やっぱり低い。つまり、先ほど、高校教育の学習成果に対する信頼が置かれていないというところに関わるかと思うんですけれども、そこのところを要するに振興策としてどうしていくのかということは是非検討していただきたい。そういうジュニアマイスター顕彰制度であるとか、それから、全商1級、2級といったような学習成果を測る仕組みを文科省がオーソライズするとか、そういうことが一つ考えられるのではないかと思います。
 そうすると、普通科はどうするのかということがあるわけで、そういう点では高大接続テスト、入学者選抜のツールではなくて、あくまでも学習成果の確認という意味でのツールとしては、高大接続テストというのは検討の余地はあると思います。ただ、目指す人材、育成すべき人材像のタイプの学校で3つ目の学校、「主として、社会におけるリーダー層やグローバル社会において」云々という、こういう学校ですけれども、これは前の方にある進路の多様化で分けた選抜制の高い大学へ進学する生徒が集まる学校のことになると思うんですけれども、例えば今申し上げたような、高等学校における基礎的な教科の学習成果を測る仕組みである高大接続テストのようなものが、例えば、この3つ目のリーダー層やグローバル社会において国際的に活躍できる人材を目指す学校の生徒に、学習成果を測る仕組みとしてふさわしいのかどうかということが問題になるかと思います。そういう意味では、普通科中でもかなり多様化が進んでいると思います。
 そういう意味では、最初に戻るんですけれども、今申し上げたようなジュニアマイスター顕彰制度だとか、全商1級だとか2級だとか、あるいは普通科が主な対象となると考えられる高大接続テストなどの学習成果を測る仕組みを、高等学校の目的である高度な普通教育と専門教育という分け方の中で考えていくということには、やはり無理があるのかなと思います。そういう枠を取っ払ったところで学習成果の確認、測る仕組みというのを構想していく必要性があるのではないかなと考えます。

【小川部会長】
 小林委員、よろしくお願いします。

【小林委員】
 今、及川委員がお話しした内容と少しかぶるところもあるんですけれども、普通科高校が7割、専門学科高校が2割、総合学科高校が1割というのが、今現在の配分、分布です。大学進学率がかなりの数に上っています。高卒で就職する生徒が、本当にどんどん今少なくなっている現実の中で、社会性を身につけて、社会の中で貢献できる人間をどこがきちんと育てればいいのかという議論は、やっぱり必要だと思っています。私が工業高校をずっと担当していまして思うのは、高卒と大卒の社会的な認知度、そこがもう少し開かれたものになっていただければ、高卒で十分に世の中に出て社会貢献して生涯を全うできる、そういう工業高校を今目指しておりますので、そこら辺を是非考えていただければと。
 そのために、先ほど及川委員が言いましたように、子供たちは3年間で様々な国家資格、認定資格を取って、それをポイントリザーブで30点以上がシルバー、45点以上がゴールド、60点以上は特別表彰というような形で、全国工業校長会がやっております。もう発足して11年目になりました。大分、企業にも認知されてきまして、それから、いろいろなAO入試ででも、理工学部に入る場合にはシルバーとかゴールドが有効に働いて、採っていただいている現実もあります。ですから、工業高校としては、質の保証、あるいは生徒の伸びしろ、そういうのは資格取得をやることによって、高卒以外の中身を保証していると私は思っています。
 ただ、これは、教員免許状の中では国家資格を取ることはないものですから、工業高校の教員として赴任して、さて国家資格を取るとなると、相当の勉強を必要としています。その国家資格を持っていないと、やはりなかなか生徒にきちんと教えていけるところがありませんので、各工業高校の校長としては、いろいろな研修会を利用しまして、新人なり中堅の教員に国家資格を取らせています。ここら辺の制度ですね、教員の資質向上のためには、各大企業も中小企業も、企業で受け取った大卒の人たちも必ず国家資格なり、その会社に有用な資格を会社の経費で取らせている会社はたくさんあります。それと同じように、教員も、都道府県の経費で、是非国家資格等を取らせて、教員がきちんと生徒に向かって国家資格あるいは認定資格を取らせられるような制度を、是非やってほしいなと思います。
 そうしますと、13ページの及川委員がお話ししました資格等の取得に必要な学習内容、これが大学の4年間で出た教員免許を持った人間には、これはできないんですね。ですから、よほど意識を持った人間が、自分で自分のポケットマネーで各団体の国家資格なり認定資格を取ってこないとできないという現実ですので、ここら辺はうまくやっていただきたい。
 それから、一番最後の、高等学校の専攻科ですね。都立科学技術高校が専攻科を持っております。この歴代の校長に聞きますと、入り口で募集するのも大変だし、2年間できちんと学習させて就職なり上級学校に行かせるのも、またこれは大変なことです。特に一番大変なのが、いわゆる専攻科を出ても工業高校卒、いわゆる高卒の資格しかございませんので、ここら辺はうまく制度上、変えていただいて、専攻科を出た場合に、様々な上級学校にきちんと単位認定で入れるような方法にしていただければなと思っています。
 それから、12ページに丸1番で社会性のところで、普通科高校に「産業社会と人間」、あるいは又はそれに類する教科・科目の新設なり何なりを明確に位置付けるような提案をされていますけれども、この「産業社会と人間」という教科を教える教員が、プロパーはいません。非常にやはりいろいろな方が様々に苦労して教えている段階ですので、ここら辺も創設期にはいろいろな研修会がありましたけれども、なかなか厳しい現実ですので、この教科を教える大学教育なり何なりをやはりつくるべきだと、私は思っています。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。

【金子委員】
 何回も発言して申し訳ないんですが、5の12ページの丸2の質保証に関する取組ですが、先ほど申し上げたように、私は質保証について真っ先に考えるべきところが大きいと思うんですが、特に、この丸2の書き方は、高校が自己点検して自己評価をするということが基本に書いてあるわけですけれども、それで十分なのかどうかということです。
 それで、例えば大学の場合は、いわゆる自己点検を基礎として総合認定をする、あるいはそれが適格認定団体をつくって、マクロの審査をするという方法を使っているわけで、その適格認定はアクレディテーションと言われるわけですが、これはもともとアメリカで高校から始まった制度でありまして、高校はそれぞれ自主性を認めるんだけれども、それぞれだけではやはり分からないところは、マクロに今、そこにいて検証するという精神だと思うんですが、ここの丸2の書き方だと、相互認証のところはほとんどないわけですね。
 それで、これは私、日本の高校制度から、やっぱりどうもいろいろな盲点ができているのではないかと思うんですが、例えば広域通信制ですと、日本の高校の監督は都道府県がやることになっているんでしょうけれども、これは必ずしも都道府県だけでできる問題ではありません。
 それから、私、構造改革特区の教育の評価委員会の委員をやらされていて、見ているんですが、これ、株式会社立の高校が今ありまして、これは実態を見るとかなり問題がというか、ひどい場合があって、例えば教員16人で生徒が2,000人いるとか、「これ、どうやって面倒を見ているんですか」と聞いたら、「職員がいっぱいいますから」って、「職員が40人くらいいますから」とか言うんですが、要するに、職員が指導しているということでしょうが、これはやっぱり高校教育の概念から離れているんですね。
 しかも、それを現実的にチェックする機関がないわけです。特に株立は市町村が認定団体ですから、都道府県も見ないという状況になっていまして、こういった学校は、それなりに非常に重要な役割を果たしていると思います。それは、普通の学校をドロップアウトした人たちがやっぱり入っているわけで、日本の高校進学率はこれだけ高くて、一応就業率もそんなにまだ低くならないのは、こういった高校があって頑張っているからだとは思いますが、しかし、今申し上げたような状況を放置しておいて、これで高校ですと言えるかどうかというのは、これは非常に制度上に大きな遺漏があるのではないかと思うんです。
 そういう意味で、システム的に個々の高校の自己点検、自己評価を基礎とすることは、それはそれでいいと思いますが、制度的にそういったものを補完する、総称する仕組みをやはり考えるという観点は、是非入れるべきではないかと思います。

【小川部会長】
 今、金子委員からお話のあった点は、おそらく4のところで、そういう各学校の自己評価、自己点検を踏まえた上で、そういう総合評価等々の仕組みをどうつくるかというところは、4の10ページのところで、その辺のところは少し問題提起しています。その辺のところをちょっと絡めて、今後、全体的に議論していただければと思います。
 もう一つ、金子委員が指摘された点で、ちょうど資料1の14ページの24行目のところに、広域通信制課程における教育の質の保証のところが出ています。おそらく株式会社立の広域通信制の問題については、これまでもこの部会で何人かの方から御指摘があったんですけれども、これについては更に何か御意見はございますか。長塚委員、この件については、この間、お話しされてきていますけど、今の金子委員の発言に関わって何かあればよろしくお願いします。

【長塚委員】
 今の件はまさに御指摘のとおりで、通信制の問題だけではなくて、質の保証という全体の問題で少し述べたいと思います。自由化や個性化、そして多様化という流れの中で、高校の多様化というのもまた、これは必然であったと思うのですけれども、そういう中で、質の保証というのが怪しくなってしまった。そこで、この4番目のところは、大きな意味で質の保証をこれからどうするかということがくくられているわけですが、それがあまり議論されないで、5の振興策の方に飛んでいる感じがします。ですから、この4番目の質の保証をどうするかということを、つまり多様化の結果として起きている問題点の根本的なところを議論してから、振興策の方に行くべきじゃないかという気がします。
 その上でのことですが、振興策の多くはごもっともで、特にこれからの質の保証は、国際共通性のあるような、国際標準で考えないといけないと感じています。まさに国際競争力のなくなっている高等教育や高校の、この教育の成果というのが問題だと思いますので、そういう意味では、例えばグローバル社会において国際的に活躍できる人を育てようというような項目は挙げられてはいるのですが、それを類型化プラス「コア」という形で、質保証をすると言っているわけですが、これがいいのか悪いのか、この点は最初、安彦先生が御指摘なさったような問題点についてもう少し議論を深めてから、振興策の方に行っていただきたいと思います。
 以上でございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。じゃ、よろしいですか。今のお話にもあったように、各種の振興方策というのは、ほかの1から4、そして6にもかなり密接に関係するものですので。ひとまず、特に各種の振興方策について、特に委員の方からこれ以上御意見がなければ、5の審議はここで一旦終わらせていただいて、今度は全体に関わって御意見を伺いたいと思うんですけれども、よろしいでしょうか。そういうことで、次に進めさせていただきます。
 その議論に入る前に、先ほど金子委員から、文科省の方に御質問があった点ですけれども、つまり幼児教育から大学まで一貫して、そういう学力、保証すべき教育内容の質というのをどういうふうに担保するのかという課題については、その辺は文科省はどういう部署でどういうふうに議論されているか。特に高校問題についてはどうなのかという御質問があったんだけど、これは、じゃ、局長の方からよろしくお願いします。

【布村初等中等教育局長】
 先ほど金子先生のお話を伺って、ちょっと率直に、今回の高校部会を設置させていただいたのは、幾つか反省の上に立って高校部会を設置させていただいたという経過を持っております。そこをちょっと簡単に、個人的に考えているところになろうかと思いますけど、御説明をさせていただきたいと思います。
 新制高校が戦後できてから、いわゆる大学より早い段階で90%の進学率を超えて、ユニバーサル化が来て、それで高校制度についての多様化、弾力化という方向で、ずっと制度改革をしてきたと。それも、平成3年の段階の答申が最終のものでございました。それで、総合学科ですとか単位制高校とか飛び入学、あるいは中等教育学校という形で、国としての多様化の方向性を打ち出した後は、20年間ほとんど都道府県の教育委員会、あるいは私立の高校にその多様化した高校生を受け入れて育てていただくということを、率直に言えばお任せしてきたということで、そこを評価するシステムを持っていなかったというのが率直なところあろうかと思います。
 それから、文科省サイド、行政サイドとしても、科技庁と一緒になった組織再編の際に、これまで小、中、高校、学校段階別の課の体制だったものを、教育課程であれば教育課程課ですとか生徒指導であれば児童生徒課とか、そういう機能別の役所の組織化を図った形になっています。それから、行政課題も、どちらかというと地方分権の関係では特に義務教育の議論が多くて、例えば教育基本法の中でも高校という条文ができていないと、そういうところにも如実にあらわれているのか、義務教育9年で一貫して何を達成するのかと、そういう議論がより多く議論されてきた経過をたどってきて、その経過を踏まえて、反省の上に立って、機能別の課の体制だけれども、まずは小学校、中学校、高校担当の部署を決めようという流れから動き出して、今はこの部会を担当している高校改革PTと、まだ課の体制までは行っておらないんですけれども、実質、課と同じような体制を組んできたところです。その上で高校改革に向けて、より中教審のお知恵をいただいて、今後の方向性を考える場として、この高校部会を昨年設置させていただいたという経過をたどっております。
 その中でも、やはり多様性の中で、まず高校という制度を前提として、高校3年間で共通に子供たちに身に付けてもらいたいものは何かと、いわゆるコアの部分を、もう一度原点に返って明確化したいということとともに、現実に多様化している高校の質の保証をどういうシステムでやっていったらいいのかいったところに重点を置いて、一つの大きな問題意識として御検討いただきたいということで、今、高校部会で御議論いただいていると認識しております。
 ですから、高校についての施策を今、高校改革PTという組織は一応作ってございますので、そこを一つの核として、局全体、それから、高等教育局あるいは生涯学習局とも、いろいろな形で連携しながら、これを整理していこうとしているのが今の段階であると思っております。

【小川部会長】
 一応、金子委員、そういう説明でよろしいですか。はい、ありがとうございました。
 では、先ほど確認したように、1から6まで全体を通じて、少しまた御意見を伺ってみたいと思います。それで、資料3に5名の方から、前回の議論を踏まえて御意見が出ています。最初、この資料3のペーパーをベースにして提出していただいた委員から少し御意見伺って、議論の口火を切っていただいた方が議論しやすいのかなと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それで、最初に、和田委員、11時半に今日退出ということなので、先ほど、和田委員のこの文書の中の発言、一部先ほど御発言があったんですけれども、この資料3を踏まえて、少し和田委員の方から最初御意見を伺えればと思います。よろしくお願いします。

【和田委員】
 失礼します。ありがとうございます。
 先ほど、一部というよりもかなりこの内容をお話しさせていただきましたと思うんですけれども、3つの柱に分けまして、高大接続については、先ほども申しましたように、日本人の公平感というのは、少なくとも私立中学へ入る場合もそうですし、高校へ入る場合もそうですし、そして大学へ入る場合もそうですが、ずっと点数至上主義的なものが続いてきて、大分そうでもなくなってきたという御意見もあるかもしれませんけど、やはり我々の目からすると、まだそれが残っています。それ以外の基準というものを国民に納得させるような形で、どういうふうにつくっていくかというのが一番大きなことではないかなと思います。もちろん、それは大学の方の委員会で検討されていることだと思いますけれども、私の存念を書かせていただいたということであります。
 それから、裏側へ行きまして、学校運営と人事の在り方というのは、これは私立の学校から公立の学校を見たときの話でありますけれども、やはり校長の権限を強めて、長期のビジョンを立てて、学校をどういう方向へ持っていくかというような議論が多い中、実質、校長先生も二、三年が公立の場合は普通であります。荒瀬先生のように、やはり10年ぐらいのスパンで校長を任せるというような姿勢でないと、なかなかその先生の色といいますか、指導力というのは発揮しにくいのではないかなという気を持って、公立の方を眺めております。
 また、教職員の方も、やはり何年かに1回配置転換というような形で、今いる学校を良くしようという気持ちで頑張っても、そのうち配置転換が来るということで、職場意識といいますか、職場愛といいますか、そういうものがやはり私立の、一旦勤めれば、よほどのことがない限りは最後まで勤め通すという、そういう学校に比べれば、どうしても少なくなっているのではないかなと。それと同時に、今習っている生徒も、卒業していった生徒も、やはり学校へ戻ってきて、学校という建物は前と一緒だなというような形で母校愛があるのではなくて、習った先生がまだいらっしゃるというような形で母校とつながっていく部分も、私学の場合は多いわけですから、そういう点、今の公立の人事的な部分、学校運営的な部分がうまくいっていないのではないかなというようなことで、多少やはり制度的な問題があるのではないかなという気がしております。
 それから、最後は先ほど申しましたように、教科の大綱化でありまして、例えば、先ほど理科の話をしましたけれども、社会などでも日本史が必修なのか世界史が必修なのかというようなことをもめているのではなくて、日本史も世界史も必修として教える部分はここだというようなことを考えれば、少し大きな大綱化として、いわゆる公民の部分も含めて、旧来の社会という枠で、こういうことはやればいいというような形でカリキュラムを組み直せば、随分学校教育そのものも変わってくるのではないかなというような気がしております。
 ちなみに、そこにつけ加えて言いますと、中高一貫の学校の場合などは、3年間で切って見られるのではなくて、6年間通じて教育をしているという部分もありますので、例えば大学への報告である調査書などでも、中高一貫用に6年間のことを書かせていただけるような、先ほど安彦先生でしたか、小学校からどういうことを学んできたかというのが、ずっと経歴のように残っていく形がいいのではないかとおっしゃいましたけれども、最低、中高一貫の場合は6年間を書かせていただけるような報告書、調査書なりをつくっていただくようなことも必要ではないかなと思っております。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかに、あとは安彦委員、長塚委員、伊藤委員、川嶋委員、御自由に御発言いただいて構いません。

【川嶋委員】
 私も意見を書かせていただきましたが、それはそれとして、今日の、いろいろお話を聞いていて、三、四点、ちょっと考えるところをお話しさせていただきたいと思います。先ほど、金子委員の方からもお話があったように、高校卒業後、いわゆるポスト・セカンダリー・エデュケーションを受ける高校生が7割いるという状況、それから、知識基盤社会ということで、これまでの暗記中心型の学力よりは、むしろもう少し知識を活用し、現実の課題を解いていく力というのは、日本の若者全体に必要になっているというようなことを考えますと、やはりこれは別に就職する人を排除するわけではないんですけど、7割の人たち、あるいは更に高等教育の進学者を増やそうという、これは日本以外の多くの国でもそういう施策をとっているわけですが、そういう状況の中で、何らかの形の高等教育、あるいはポスト・セカンダリー教育を受けて知識社会に入っていく人にとって必要な能力とは何かということを明確にした上で、それを最終学習目標に設定し、順次大学、高校、中学校、小学校へとその育成を下に降ろしていくという仕組みが必要ではないでしょうか。最終的な社会への出口のところで必要な能力をどう育成していくのかというような考え方が今後は必要になってくるんだろうと思います。
 そういう教育体系の中で、では、それぞれの段階ではどこまでを保証するのかということ観点から、高等学校に共通の質保証の仕組みを構築していくことが必要だろうと思います。その上で、その先のそれぞれの進路に応じた、また別の質保証の考え方を更に考えていくということが必要なんだろうということです。
 そういうふうに考えていくと、今回のこの課題の整理では、やはり義務教育との関係についての言及が少ないんじゃないかなと思います。どちらかというと、高校以降の話から課題を整理したり施策を考えている項目が多いと思うんですね。就職であったり、進学であったり。義務教育との関係は、何箇所か言及はされているんですけど、例えば冒頭のところに、制度上の話とか、「義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展させて」とか、義務教育段階での学習内容の定着が不足しているということの言及もあるんですが、もっと上と下の関係の中で高等学校教育がどう位置付けられているのか、そういう観点からすると、どういう課題があるのかということの議論も必要だろうと思っています。
 それから、質保証については、私も意見を書かせていただいたんですけれども、それは置いておいて、先ほどの金子委員の話とも関連しますけれども、大学は、私立大学ですと大体必要な経費の1割、それから、国立大学ですと約半分が公費で賄われているという中で、非常にアカウンタビリティーといいますか、説明責任を強く求められているわけです。私は高等学校全体として、どれぐらい公費が投入されているのかというのは、詳細は承知しておりませんけれども、この中でも書かれておりますが、授業料の実質無償化ということで、公費によるサポートというのは非常に重要な時代になっていますので、そういう点からもやっぱり高等学校教育の質保証、特に社会に対する説明責任というのは非常に強まっているんだろうということ。そういう観点からの議論も必要だろうと思います。
 それから、3番目は、先ほど冒頭に安彦部会長代理がおっしゃっていた箇所ですけれども、これは類型なのかトラッキングなのかわかりませんけど、大学の分科会では機能別分化ということが10年かちょっと前ぐらいに答申で書かれて、それが一種一人歩きしてしまって、そのどれかに当てはまらなければいけないという捉え方もされてきて、最近ようやく軌道修正がされているところです。こういうふうに書いてしまうと、確かに文章の中には、そうではないと、「複数の人材像が組み合わさっている場合もある」と書いてあるんですが、こういう形で文章化してしまうと、大学の例と同じように、安彦先生も懸念されているように、類型化といいますか、それが固定化して一人歩きしてしまう可能性がある。ここに書かれている様々な施策については、相互排他的なものではなくて、それぞれの特色の高校にも、当然、全てに必要な施策もあるわけですね。特に多様化ということでいえば、スクールカウンセラーというのは、別に14ページに書かれているような学校だけじゃなくて、普通科であってもいろいろな高校でも必要なわけですから、その辺の書き方をもう少し工夫していただきたいということです。
 最後に、先ほどから教育課程の大綱化とか、いろいろなことが議論されていますけれども、これは大学もそうですけど、何を教えるかというのは、ある意味ポリティクスだと思うんです。ですから、最近でも東日本大震災を踏まえて防災科をつくってはどうかとか、これまでも情報とか、いろいろな新しい科目が社会からの要求、変化に応じて、導入されてきているわけです。しかし、限られた授業時間の中でそういう新しい科目を導入していくと、当然それを見合った形で、どこかを削らなければいけないということがありますので、先ほどお話ししたように、これからの知識社会の中で、大学まで行く人、それから、すぐ社会へ出る人、そういう人たちにとって、先ほど和田委員の方からも大綱化というお話がありましたけれども、どういうことが必要なのかと、やっぱりゼロベースで教育の中身というのは今後考えていく必要があるのではないかと思います。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにどうでしょうか。長塚委員、どうぞ。

【長塚委員】
 私は1番から3番までに関してペーパーにさせていただきましたけれども、先ず、おおむね3種類の進路別の状況に分けて考えるということは、多様化している実態を分析して対応策を考えていくということからすれば、これはやむを得ないことなのだろうなと思っております。ただし、やはりこれから大学につながる生徒が多いわけですので、7割方の生徒たちの普通科のありようというのは非常に重要であり、高大接続の問題が中心になるというのは、これまた現実だろうと思っております。
 これが1点目です。そのときに、修得状況をどう把握するかということについては、これは一番大事な問題だろうと思うのですが、これを類型化して、類型別の内容で目標を定めて把握するなどということは、実はなかなか大変なのだろうと思いますが、いずれにしろ、何らかの把握をしなければいけないということもまた確かなのだろうと思います。
 4番目の質保証の10ページのところ、一番下に、「今後の質保証の考え方」の丸3に、「到達目標に対する達成度をどのように把握するか」とありますが、これが一番大事なことで、これを現実的にどうつくるかということですね。ここには各種検定とか共通テストとか、いろいろな組み合わせとかありますが、先ほどの全商の例とか、普通科以外のところの様々なそういう達成度を測る仕組みなども生かしながら、ということに多分なるのだろうと思います。そして特に大学との接続においては高大接続テストというのが一番合理的で、これまで議論されていることなのだろうと思います。
 これがなぜ必要かということを、あえて3点目に記載させてもらったのですが、国際共通性のある達成度評価というのが、国際競争力の必要なこの時代に欠かせないのじゃないのかなというのが一つあります。もしインターナショナルバカロレアスクールであれば、これは教育課程において評価しているものについての国際的に認定されている達成度評価ですので、改めてテストなどをする必要はないわけです。
 しかし、日本の国内において、全ての学校に共通するような、あるいは普通科の学校に共通するような達成度を評価する仕組みというか、そういう信頼性・標準性を持つようなものを各学校でつくることはほとんど不可能だろうと思いますので、やはり何らかのやはりテストという方法で達成度を測ることが必要だろうと思います。もし米国などのように、在学しながらも早い段階で大学の学びをさせるようなことも考えるのであれば、米国のSATのような、学力の共通のコアの部分を測るような仕組みがない限りは、質の保証を図るということはできないんじゃないのかなと感じているものですから、こういうペーパーを出させていただいております。
 私からは以上です。

【小川部会長】
 ほかの委員、どうでしょうか。資料3のペーパーを出していない委員の方も、御意見があればどうぞ。
 相川委員、どうぞ。

【相川委員】
 前回の会議ではちょっと欠席をさせていただいているので、これまでの先生方のお話を資料で拝見しながら、ちょっと感じているところをお話しさせていただくと、今、国際的に活躍する人材を育成するという方向で何となく進んでいるのかなという感じはするんですが、それもとても大事なことだと私は思っています。特に有名大学へ進学するという部分では、有名大学への進学というのは高くなっていくんでしょうけれども、いわゆる地方から見たときに、地方がそれは何となく定着しにくいかなという。人口が減少するリスクが、地方としてはそれは一つあるのかなという。
 いわゆる地方の学生がグローバル社会に適応するため都心へ出るわけですよね。そうすると、地方で活躍できる人材の育成というのは、やっぱり高校は必要になってくる。地方でも活躍できる人材の育成が高校では必要になってくるのかなというところも、ちょっと考えていて、まだまだ日本人の心の問題だとか、そういう日本のよさとか、そういう部分で思いやりの心、助け合う心だとかということを考えることのできる人材育成ということも、グローバル化ということも必要だけれども、もう一方ではそういうことも考えていくことも必要なのかなとも感じてはいます。
 やっぱり高校では、今本当に学校の統廃合とかいろいろな形で、生徒数だけではなくて、いろいろな統廃合の問題も地方では抱えているわけです。そういうことを考えると、やはりいろいろな地域性だとか特色を考えた、魅力のある学校づくりというのが、当然必要になってくるだろうなと。ただ、人数だけで統廃合するのではなくてというような感じがしています。
 小中高の連携というのは、私たち見ていて、いきなり高校でこれを求めてどうのこうのというのではなくて、やはり小中の基礎があって、高等学校で何を求めていくのか。高校教育に何を求めるのかということをはっきりと提示していく必要があるのかなと考えていますし、進学の部分では、各高校でいろいろな取組をしていますけれども、少し大変になってきているのは、進路選択が多様な形の学校がまだまだたくさんあるわけで、例えば就職を目標にする学校であれば、本当に社会人として役立つ人材を育成する力というか、そういうカリキュラムということをきちんとしないと、学校で頑張ろうという生徒がなかなか入学してこないというか、いわゆる輪切りで入試というところで切られるわけですから。ですから、もう少し、高校教育に何を求めるのかということをはっきりと提示していかなければいけないのかなということを感じております。
 学力そのものについても、入学のときに目的意識をいかに持たせるかが、すごくこれからの高校教育に求められていくのかなと。入学から出口まで、出口をどこにするのかと。3年後にするのか、その先を見たものにするのかというところもあるのかなと思いますけれども、目標を持たせて学習意欲を持たせることができれば、学力の向上につながった教育の質の保証ということも可能になってくるのかなと考えています。
 ちょっとあちこちに飛んだ話になりますけれども、そんなことを考えていました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにどうでしょう。小杉委員、どうぞ。

【小杉委員】
 私も類型分けって、前回も非常に違和感があると申し上げましたが、部会長代理のおっしゃること、非常に共感を持っておりまして、これを前面に出すということが一人歩きするので、是非この類型分けを前面に出すのは避けたほうがいいのではないかと思います。
 4ページのところで、どういう生徒がいるかという実態の分析をされていました。この実態分析は、非常に的確だし、ここからだからこそ見えることがあるので、この実態分析と、そしてこれに対応する形で13ページ、14ページの振興方策というのは、それぞれ目に見えている課題があって、その課題に対してどう対応するかという、そういう具体的な提示になっていると思います。この提示の内容というのは、川嶋委員のおっしゃるとおり排他的なものではないので、何もこういう類型分けで示さなくても十分言えることではないかと思います。
 質の保証に関していえば、やはりコアになる部分というのはきちんと議論して、保証すべきものとしてきちんと表示すべきですが、もう一つ、それぞれの進路の実現のために必要なことというのは、そのコアとは別のところであって、それを類型分けで示したところがかなり抵抗があったところだったのではないかと。それぞれの進路が確かに多様化して、それぞれに見合った高校教育の中身が必要で、それが生徒個人にとっては希望の進路の実現につながるための力になりますし、逆に労働市場から見れば、市場の需要に従った適切な配分をしてもらうと、その過程が高校になるわけで、高校全体としてきちんと保証すべきものというのはコアであって、それぞれについてはそれぞれの学校なり生徒なりの希望に応じた形での進路あるいは労働市場の需要に対しての対応という形の部分だと思うんです。
 その対応という形の部分を、何か方向としてきちんと書く必要があるのかどうか、ちょっとそこが疑問で、現在、その対応のためにはかなりいろいろな問題があるので、その問題に対してはこういうことをしていったらいいんじゃないかということで振興方策、問題対振興方策という形でストレートにつなげた方が、何か分かりやすいような気がします。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございます。
 安彦委員、荒瀬委員、どうぞ。

【安彦部会長代理】
 幾つかあるんですけれども、今、全体としての感想としては、今日やっと少し高校というものの基本的な制度上の性格を議論できたなという思いです。というのは、これまでの事務方がつくった文章というのは、今までやってきた本省の施策をベースに、個別施策についてわりあい細かくいろいろ出されてきましたが、トータルな高校というものに対する一定の評価といいますか、チェックをかけたということがなかなか見えなかったんですね。
 結局、そういう意味では、全体にどうも書き方が全て、今の類型もそうですけど、本省がこれまでやってきた事柄をいわばベースにして、それをこれから更にどう改善するかみたいな形で書かれているという感じがします。そうしますと、どうしても根本のところについての吟味ができないというか、むしろそれが、今やっていることが既に前提、これまでやられてきた施策が前提、これで足りないところはどこかというので改善策が示されるみたいな、そういう書き方になっている気がする。
 その辺をちょっと、一方では大ざっぱとプリントに書きましたけど、他方ではすぐに個別の話になってしまっていて、基本的な部分についての制度的な性格とか、そういうことがちゃんと議論できなかった。この点、是非これからは、今回は少し入れていただきましたので、それを入れていただきたい。そうすると、例えば今お話があったように、高校は一体どういう高校生を育てようとしているのか、どういう子供を育てたいと思っているのか、正直言って大変不満なのは、どこにも見えないんですね、こういう高校生を育てたいんだという言葉が入っていない。
 最初に、学校教育法の3つの高校の教育目標が掲げてある。この学校教育法の第51条を読んで、私は、3つに分けているけれども、どれがどうなのか、それぞれの区別もはっきりしないし、どういう視点で3つに分けて書いているのかもよく分からない。改めてこういうことについても、むしろもう一歩現場から、こういうことでなければならないんじゃないかという、そういう声を聞きたかったんですけど、どうもそういう声はなくて、すぐに今の施策の方の、こういう多様化してきた高校教育の現状を前提にして、その方向で、じゃ、今までどこがどうだったのかという、そういう議論に入っていってしまう。
 そういう意味では、やはり先ほどからある小中高大という学校体系全体から見るという見方が、あんまりしっかり入っていなくて、今の自分たちの高校、あるいは自分の高校の話だけの議論が多い。この点はやはり、先ほど局長からもお話がありましたけど、是非改めて全体として見直すという、特に基本的な部分、制度的なことも含めてやっていただきたい。
 ですから、データのとり方でも、もう少し普通科は普通科として、職業科は職業科として、その他、理数科、外国語の関係のものも、英語科とか等々あるわけですね。そういうものをやはり細かく見せていただかないと、どうしても話が、どうも普通科の話で全部通そうと、前提で話がされていたり、あるいは専門高校だけの話でずっとやっている。その辺でいう、話がどうしても、そういう意味できめ細かくならないというわけであります。
 一方で、そういうきめ細かさはないにも関わらず、基本的な部分についてチェックをどうかけたらいいかについての議論がまたないので、特に私のプリントでは(4)のところに少しそういうことを書きましたけれども、改めて中等教育というものの押さえ方をしっかり、どういうふうに考えているのか。いわば義務教育、特に中等教育の前期の中学校は義務教育の中に入っています。高校は義務教育の外で、一応、後期中等教育と今まで言われてきたわけですけど、年齢的な、あるいは発達段階的なことからいうと、大体どこの国も中高の段階は中等教育と言ってきているわけですね。そういう意味で、それを前期と後期、中高一貫の場合に、その2つを組み合わせたのは、中等教育という概念で両者をくくったわけです。そういう意味では、それをそもそも改めて、中高一貫じゃない場合でも、この考え方を使うのか使わないのか。
 私はやっぱり、そういう部分で中等教育の前期、後期共通しているのは、「自立」ということと「個性」ということだと言ってきています。これは先ほどからお話があるとおりで、社会が見え始めるのがこの時期ですから、自立をやはり意識する。ただ、中学校は義務教育ですから、職業教育はやっていませんので基礎教育です。高校になると、専門高校その他があって、準備教育をやっているわけですね。
 そういう意味で、一方で、そこに個性が入ってきて、個性については中学校はまだ自分が何に向いているかよく分からないから「探る」時期なんですね。探らせる場は、実は選択だったんですけど、その選択は高校と同じような選択になってしまっていましたから、探ることもさせないで、一気に伸ばせ伸ばせとやって、それでは子供の方がまごついてしまうのは当たり前で、うまくいかなかった。
 しかし、一応、探った上で幾つかの範囲に絞らせるということを自覚的にやらせた上で高校に入らせるとよかった。高校は一応そうやって複数のタイプがあるということは、現実に制度的にそうなっていますから、そのことで改めてしっかりと考える素地ができるわけですけど、今は中学校はもう選択もやめてしまって、全部必修であてがいぶちで、中学校までとにかくこれをやれと言われているからやっているという子供になっているわけですね。これではいつまでたっても自分で選んで、こっちがいいのかあっちがいいのかという、そういう主体的な探る姿勢というのは生まれない、あてがいぶちをただやっていればいいと。
 高校は、そういう意味では探らせる経験もしないまま、一気に子供を受け取りますから、そこですぐに伸ばそうとする。ところが、自分がどっちに向いているか、何に向いているかわからないで入ってきた子供たちは、何となく不適合感を味わうというようなことが起きているわけですね。ですから、個性についても、今言ったように中学校は探る時期であります。高校に入って、ある意味でさぐる経験をした上で伸ばすということをやるという、こういう中等教育というものの枠の中で、前期と後期の強調点をクリアにさせておくというようなことが、私はこれは、外国との比較研究で考えましたけど、ちっとも現場から出てこないんですね。高校の先生あるいは中学校の先生から、そういう教育課程の原則の視点というものが、どういうもので、どこにありますかといっても、だれも出してくださらない。
 これはやはり改めて、今の、とにかく中等教育の押さえ方、中等教育というのは何なんだということの押さえ方がぼけているんだと思います。この時期の発達で一番望ましい発達をとげさせるにはどうしたらいいかということを、全然子供の側から考えてくださっていない。さっきから皮肉で申し上げているけど、どうも高校は、高校の先生が楽ができる方向で考えようみたいな方向。それは前から申し上げているのは、進学準備教育をやるんだったら、それはその方がずっと楽ですよ。それはもう本当に、そうでない、進学校でない学校の先生方の苦労を御覧なさい。逆に言えば、進学校は進学だけやればいいんですから。そういう意味では、全体としてはこの時期の子供の実態に対してどうしようかということについて、本気になって考えているように思えない。
 ですから、この点、やはり今の高校は少なくとも、中学もちょっと含めてですけど、高校に引っ張られて、中学も非常に単なる高校準備教育をやっているだけで済んでいますから、その辺がやはり私は問題だと思っています。
 もう一つ申し上げると、質のことですけれども、実は早稲田に去年までいましたけれども、早稲田では、東大でも起きていると思いますが、確かに偏差値は高いでしょう。けれども、どうもまさに質の面で、さらに一歩入ったところの質ですけど、その偏差値が高いというのは、これはむしろ量ですよね、量で見た部分は高いかもしれないけど、実はその質たるや、実に心配な学生が入ってくる。ですから、偏差値が高くて、進学校だからいい学校で、ここは質保証できているからいいんじゃないかみたいなことをお考えだったら大間違いで、もう性格的にも変だったり、学力と自分の人格とがアンバランスだったり、ある意味で、前から申し上げる未熟さみたいなものが抜けないで来ていますよね。
 これは保護者も、それから、学校の先生もそうですけど、それをみんなネグレクトして、とにかくいい大学へ入れ、いい高校からいい大学へ、いい大学から入ればいい就職が得られるだろうみたいな。さっき野上委員がおっしゃったようなことなど全然頭にないですよね。とにかくいい就職、大企業のこういうところというのが、どんな保護者も、それから、高校の先生もそれに引っ張られて、それにこだわるだけでも精いっぱいですよね。足元をもう一度考えてみろって言わないですから、いい迷惑になるのは子ども自身でしょう。ですから、子供がゆがんでいたって本人分かっていませんから、早稲田に入ってきた学生でも、それは偏差値は高いけれども、ちゃんと挨拶もできない、議論させようとしたら議論しようとしない、うつむいて、討論をさせようとしても討論などで全然発言しない、発言しているのは留学生だったりして、周りをうかがってばっかりいるわけですね。
 そういう子供を見て、そもそも、だから高校の先生や中学校の先生も含めて、こんな子どもたちでいいのかということを考えたことがあるのかということですね。あるいは保護者もですけど。そういう意味では、本当に質については、こういう多様化の今までやってきた方策に、ちょっと手を加えて改善するなんていうものじゃ、本当は済まないと思うんです。もともとのところは、今の社会全体の在り方でしょうけど、それにしたって、社会の在り方だって、少しずつ、さっきの野上委員の話にあるように、変えようとしているのに、高校の方は全然内向きで、先ほどちょっと国際標準のことがありましたから、そういうことは意識されていると思いますけど、それにしたって、結局内向きの、日本の大学、日本の企業のいいところへというだけの話で、親もそう思っているからって、親に全部今度はまた返してしまう。この辺がやっぱり一つの問題だなと思っておりますので、そこまで踏み込んで逆提案するというか、そういうことをしないと、何のインパクトもないと私は思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 荒瀬委員、どうぞ。

【荒瀬委員】
 安彦先生の後にお話するのはちょっとためらわれるんですけれども。現実の問題ということだけを言っていてはだめだと思うんですけれども、高等学校の現場にいた者としては、現状の中で何とか改善ができないかということを考えてきました。多分、それは全国の高等学校の教職員は考えていると思います。ただし、今、安彦先生がおっしゃいましたように、保護者がこう言っているとか、あるいはまたこの学校はこういう役目を担っている学校だからといったようなことで、それを踏襲してきているというところがあるかもしれません。
 ただ、こういう言い方は何か自慢げに聞こえるかもしれませんけれども、私がいた学校は進学校と呼ばれている学校ですけれども、進学校といいましても、個性は大変多様だし、かつまた成績という面でも大変多様だし、勉強したいと思っている子もいれば、そうでない子もいるし。だから、多様であるというのは、学校が様々あるから多様であるのではなくて、人間というのはそもそも多様なわけですから、その多様な生徒たちにどんなふうな3年間を提供して、その中で自分の持っている力に気づいて、将来、まさに社会に出ていって自立して生きていく力をどうつけていったらいいのかというのを考えているのですね。
 それは、自慢げに聞こえるというのはここからですけど、ひょっとしたら、校長が本当に2年や3年で代わっていることに大きな原因があるのかもしれません。私は9年いましたけれども、実は年齢的にはあと2年続けられるはずだったんですが、何を間違ったか異動になってしまったんですけれども。教員も、どう考えるかというと、校長が11年間の定年までの時間を残している。しかもまず異動がないだろうと思われているような、京都市教育委員会の市立高校、京都市立高校というのはそういうケースが多いんですけれども。そうなりますと、この11年間をどうしていくかというのを校長は考えざるを得ないんですね。また、教員も、この校長とつき合わなければ仕方がないかと思うわけですから、その中でどんなふうにしていこうかというのを、非常に意見の交換などがスムーズに行われるというのは、これは事実です。
 私が聞いている公立高校の先生方のお話は、2年か3年で校長が代わると、これ、ちょっと本当に失礼な言い方をしますけれども、どうせ2年か3年で代わるんだというような思いを持っていると、学校としてまさに、個々の教員がどう思うかは、これは大切ですけれども、それを超えて、学校としてどういう教育活動を展開していくのかというのは、なかなかやっぱり決められない部分があるのではないかなということを思っています。 
 議論するときには、当然のことながら、基本的な部分からやっていくわけですから、そのときに、私はこの中教審でも何度も申し上げていますけれども、学力の重要な3要素というのをつけるのが学校の役目だと思っていますので、基礎的・基本的な知識・技能を習得させて、それらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等をつけて、その繰り返しの中で、スパイラルの中で学習意欲というのをしっかりとしたものにしていく。それが将来、社会に出たときに必ず役に立つということを思っているのです。
 そのやり方として、現状の高等学校は普通科があったり、その他の専門学科があったり、総合学科があったりしていますけれども、この類型化というのも、現状をそのまま追随するものになるのかもしれませんけれども、ルートはいろいろあるんだけれども、そのそれぞれのルートの中に共通するものは何なのかといったら、やっぱり学力の重要な3要素に示されているような力をきちんとつけるということだと思うのですね。基礎的・基本的な知識・技能というのは、これは差があるかもしれません。当然のことながら、それらを活用するということになりますと、活用能力というのも差は出てくるかもしれません。しかし、学習意欲というものに、これはもちろん何に対するものかとか、どの程度強いかとかいうことはきっとあるでしょうけれども、学習意欲をどうしたら培えるのかということについて考えていくような学校でなければ、これは高等学校に限りませんけれども、なければならないと思っていまして。
 私はそのことを軸としてしっかり考えていくのであれば、類型化というのがよいか悪いかというのは、これはこの場で議論が、今、なされているわけですけれども、どのルートを通っていくかということに大きな意味はないだろうと。もし、そこに一つだけ忘れてはならないという点を言うならば、どなたかもおっしゃっていましたけれども、行き来が可能であるといいますか、選択をしたものでずっと行かなければならないというんじゃなくて、また別の道を選ぶことができるというような、制度的なことを考えていかなければならないんじゃないかなと。
 ともあれ、私は一番思っていますのは、枠組みをどう変えるかということが、ついついそこに視点が定まっていくわけですけれども、実は、その中でどう取り組むかというのが一番大事でその取組の議論を、現在も全国の高等学校はやっているはずですし、それがうまくいっていないのは何なのかというのを考えていくと、例えば、今、教育委員会にいますので、こういう言い方もまたよくないんですけれども、教育委員会が高等学校に対して何らかの数値目標を出せとか、あるいはまた、これをやれとかいったような、そういうことをしていることによって、学校が、まさに学校自身が、特に高等学校自身が主体的にものを考えられなくなっていく。しかも校長は2年か3年で代わるから、前例踏襲になってしまうと。だから、校長が一手に引き受けるというのは、ちょっと格好いいのか大変なのかよくわかりませんけれども、何年間もその学校でやっていくとなれば、教育委員会がどうのこうの言うのと対峙してやっていけると思うんです。
 教育委員会と学校とが教育について議論できるような状況をつくっていかないと、結果的にどこの学校も同じように、安彦先生御指摘のように、結局は楽な方法をとっていくと指摘をされても仕方がない状況になっていくんじゃないかなということを思います。
 まとまりませんが。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 あと時間がないんですけど、ほかに御発言の方、いらっしゃいますか。長南委員と、ほかに、あとよろしいですか。長南委員、どうぞ。

【長南委員】
 ありがとうございます。今の荒瀬委員に指名されたみたいな感じですけれども、教育委員会として御意見を申し上げたいと思います。
 和田委員のペーパーにも出ているとおり、その校長が教育委員会の人事によって2、3年で代わっていく現状では、校長が指導力を発揮することは絵に描いた餅であるという、このことはまさにそのとおりですよね。これは高等学校だけじゃなくて、小中学校の校長も2、3年、短い場合に1年で交代するという、そういう実際もあるわけですね。
 このことを変えただけでも、私はいろいろな今、学校が抱えている課題というのは解決できるんじゃないのかなと思って私は今行動していますけれども。校長に登用した時点で、例えばあなたはこの学校の目標を掲げて、何年間でその目標を達成するのかということを明確にマネジメントさせれば、いろいろな課題は解決できるのでないのかなと思います。そういう意味で、この和田委員の指摘は本当に、文書で私、こういうのを見たのは初めてなんですね。私もこういうような気持ちは持っていました。
 なぜこういうことが起こっているのかって、うちの県もこういう状況ですね。多分、ほかの都道府県でもそういう2、3年で代わっている人事が多いと思うんです。実は行政との連携のために代わるという可能性もあるのですね。ですから、全体として高等学校の学校での枠組みを外す、外部での人事の在り方とか、そういうこともやっぱり関連づけて検討していかないとだめなのかなと思います。
 そういう意味で、今日は義務教育段階、高等学校教育段階、大学と、この3つの段階の目標をもっと具体的に明確に示す必要があるのではないか。目標が曖昧で、一般的で、義務教育段階、高校段階、大学段階でもあまり目標が変わらないようなことではいけないのではないのかなというので、まず目標を吟味するという。目標が吟味できれば、仕組みも吟味できるはずです。目標と仕組みがうまくつながっていれば、初めてその効果が最大限に伸ばすことができるのじゃないのかなと思います。
 今日の1番のところで、1ページのところ、書き直し、訂正があったんですね、「高等学校の位置付け」と書きまして、3行目のところに、「その実現を目指すことが重要」というところの「ことが重要」を消して、「その実現を目指す」で切っているわけですね。こういう書き方もやっぱり必要なのでないか。選択させるのでなくて、指摘するだけでなくて、やることはやるという、そういう文章の書き方が大事なのでないのかなと。
 ですから、これからのこの書き方についても、行動としてお願いする書き方と選択をさせるという、そういう書き方、文章表現があるのでないのか。そういうことを明確にわかる文章というのは人が動くと。人が動かなければ変わらないわけですから、そういうことにこれから注意して議論していけばいいのかなというように思います。

【小川部会長】
 ほかにどうですか。眞砂委員、どうぞ。

【眞砂委員】
 先ほどの安彦委員の大学生の質が落ちているという話、これは大学生に限らず、この会議の資料でも出てきましたけれども、日本の学生、生徒たちの学力は落ちています。これはよく考えると、ある意味当たり前で、日本の中で、小さな中で、偏差値という相対的な競争をしているんですよね。相対的な競争ですから、全体が落ちても誰も気づかない。つまり、人よりいいかどうかだけで大学の合格とかいい就職もそうなのかもしれませんけれども、人との競争の中で決まります。結局お互いが、自分は上を行っていると思っているけれど、実は全体が落ちたら上へ行っていないんですね。全体のパイが小さくなる中で安易な、相対的な競争が日本の教育をだめにしている。
 私たちが言うのは、グローバルだったり国際的というのは、日本国内だけの視点から外の風を入れましょうという考え方です。グローバルは一つの方法と思われるかもしれませんけれど、結構本質的な方法だと思っているのはそこです。もっと外のものを入れないと、日本人だけのことに終始しているのが、私たちの教育の大問題だと、今思っています。帰国生だったり留学生だったり、あと、僕はこの頃考えているんですけど、インターナショナルスクールや在日外国人学校をもっと活用できるんじゃないかなと思っています。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかに、時間がないんですけれども、最後、どなたかございますか。金子委員、どうぞ。

【金子委員】
 私、大学分科会にも属していまして、多分、高等学校教育部会と大学分科会とが議論するということですが、この議論を聞いていまして、私、ちょっとどこに接点が、大学の問題と高校の問題をあわせて議論するときに、具体的にどういう問題があるのかということを考えていたんですが。一つ、私、非常に大きな問題だと思っていますのは、大学で入学するときにはあまりに入試が細分化し過ぎていて、高校で高校生に選択させるのが、様々な意味で、キャリア教育とか言われていますけれども、かなり無理があることを、無理させているのではないかなと思います。
 私どもがやりました高校生の調査ですと4割くらい、高校3年生ですと、将来やることが決まってないというので、これはむしろ普通になっていますし、最近、私は東大の学生調査を見たんですけど、入学前に進学する学部、学科が決まっていたという学生の数が、ここ10年くらいで6割から4割くらいに急激にずっと減っているんです。それはかなり進路が多様化しているということを示しているので、そういう意味で、ちょっと入試の方に無理があるということは一つあるんだろうと思うんです。
 もう一つは、和田先生、もういらっしゃいませんけれども、さっきおっしゃっていた教科の大綱化、これは今まで具体的に議論されていないんですが、しかし、考えてみますと、今のようなあれだけ入試科目が多様化して、高校の学科が多様化して、入試科目が多様化している状況は本当にノーマルのなのかと。実際、センター試験も、私、監督も何回もやりましたが、非常に技術的に難しくなっていて、あれ、事故が起こるのは当然というような面もあるわけです、実は。
 そういう意味で、例えば理科とか社会、もう一まとめにしてしまうとか、そういったことは、私は今まで、まだ具体的にあんまり議論されていませんけど、本来考えても、そろそろいいのではないか。ただ、これ、多分、一番抵抗があるのは大学、高校でも先生に抵抗あるかもしれませんが、大学が一番抵抗があると思うんです。選抜性が高い大学は特に抵抗するだろう。ただ、これはもし高校教育にとって非常に意味があるということであれば、私は高等教育部会でもきちんとやはり議論すべきことだと思います。そういった意味で、こちらの部会でもそういった意見を言っていただければ大変参考になるのではないかと思います。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 よろしいでしょうか。じゃ、今日、改めて課題の整理と検討の視点の案を審議していただいて、また新たな内容や意見もありました。だんだん今後の高校教育改革の課題というのが整理されてきているかなというように感じますし、また、その改善に向けて取り組む際に、その課題をどう構造化していくかということについても、今日、いろいろな方から御意見をいただいて、よりクリアになったのではないかなと思っています。
 最後、金子委員の方からお話があった、大学分科会と高等学校教育部会の接点は、更に今後広げて、相互に意見交換しようということは、事務局等々に今調整していただいて、6月の下旬ですか、大学教育分科会に私と安彦先生が、高等学校教育部会の審議状況を、お伝えすることになっております。そこで意見交換しながら、さらにいろいろな課題等々については、先ほど金子委員がお話ししたようなことも含めて、高校部会の意向を大学分科会の方に伝えながら、相互の意見交換ができるような場を広げていければなというように思っています。
 次回の予定と今後の日程、スケジュール、事務局の方から説明をお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】
 次回の日程でございますが、資料4でお配りしておりますが、6月18日15時から17時、またこの会議室で行わせていただきます。これまでの御意見を踏まえまして、骨子のような形でお示ししましたが、少し文章を肉づけした形で、文案の方を御審議いただければと思っております。

【小川部会長】
 次回は6月18日3時から5時、この場ですね。また同じ会場になると思っています。よろしくお願いいたします。
 今日は、これで閉会いたします。ありがとうございました。 

―― 了 ――

 

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