高等学校教育部会(第5回) 議事録

1.日時

平成24年2月16日(木曜日)15時~17時30分

2.場所

旧文部省庁舎6階 第二講堂

3.議題

  1. キャリア教育・職業教育の充実について
  2. その他

4.議事録

【小川部会長】
 定刻となりましたので、これから高等教育部会、第5回を開催したいと思います。委員の皆様にはお忙しい中御出席いただきましてありがとうございます。
 それでは、まず、配付資料について事務局から確認をお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】
 本日の配付資料は、議事次第のとおりでございますが、具体的には、資料の1、2、5、8、9が事務局からの資料、また資料3、4、6、7として委員の御提出資料とヒアリング資料をお配りしております。
 それから、本日、委員の皆様への机上資料といたしまして、昨年1月に中央教育審議会答申が出されております、安彦部会長代理と小杉委員が特別部会の審議に御参画いただきましたが、今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方についての冊子と、それから野上委員に御審議に参画いただいておりますが、昨年末出されましたキャリア教育における外部人材活用等に関する調査研究協力者会議をお配りさせていただいております。不足等ございましたら事務局までお申しつけください。

【小川部会長】
 よろしいでしょうか。では、これから議事に入っていきたいと思います。今日のテーマは、資料1にありますとおり、2の柱、社会の要請に応える人材養成機関としての機能の充実という中でも、普通科におけるキャリア教育の充実、そして専門学科等における職業教育の充実という点で御審議いただきたいと思います。最初に、キャリア教育の推進について、事務局から今日のテーマに関係して御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【春山児童生徒課課長補佐】
 失礼いたします。児童生徒課の春山と申します。資料2、「キャリア教育の推進について」という資料に基づきまして御説明をさせていただきたいと思います。この資料2-1となっている3ページのところに、「初等中等教育におけるキャリア教育について」という一枚ものがございますが、こちらを御覧いただければと思います。これはキャリア教育について、1枚、全体として概要的にまとめた集約資料でございますが、まずは背景ということです。まず、今日、我が国の社会の様々な分野において構造的な変化というものが進行してございますが、中でも産業や経済の分野におきまして、その変容の度合いが大きくなっておりまして、これが雇用形態の多様化・流動化というものに直結をしているところでございます。
 こうした中、現在の子供、特に若者と呼ばれる世代につきまして、大きな困難に直面しているということが言われているところでございます。例えば若年層の完全失業率や非正規雇用率の高さ、それから無業者や早期離職者の存在ということに見られますように、学校から社会や職業への移行が円滑に行われていないという点において、そのような問題が指摘されております。
 また、子供たちの現状、子供たちの状況ということにつきましては、コミュニケーション能力など、職業人としての基本的な能力の低下といったことや、職業意識、職業観の未熟さ、進路意識や目的意識が希薄なまま進学する者の増加といったことでございますが、社会的・職業的自立に向けて、子供たち自身の状況として様々な課題が見られるということも併せて指摘がされているところでございます。
 また、後のほうで触れさせていただきますが、近年の種々の調査から、今の子供たちが学校での生活や学路選択というものにはっきりとした、目的意識を持って取り組んでいないのではないか、そのために学習意欲や学習習慣というものの確立が進まないのではないかといったことも基本的な懸念ということになっているところでございます。
 こうした問題でございますが、これらの原因や背景につきましては、やはり学校教育のみならず、社会全体を通じた構造的な問題が背景にあるということでございまして、こうしたことにつきましては社会全体として取り組んでいく、一体となって対応していくことが必要だと考えておりまして、ただ、その中でも、やはり学校教育といったものが中核的な重要な役割を果たす問題であるというようなことを考えているところでございます。
 続きまして、考え方ということですが、「キャリア教育とは」ということで赤字で定義をしてございますが、昨年1月におまとめいただきました中央教育審議会答申で、キャリア教育については「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通してキャリア発達を促す教育」というような定義が、中央教育審議会答申にてなされているところでございます。キャリア教育を推進する上で様々な観点があろうかと思いますが、基本的な方向性としてその下に3つまとめさせていただいておりますが、まずは後期中等教育修了までに、生涯にわたる多様なキャリア形成に共通して必要な能力や態度を育成するというようなこと。それから、社会的自立に向けて必要な基盤となる能力、いわゆる基礎的・汎用的能力を育成すること。それから、キャリア教育の実践を通じて、児童生徒の学習意欲を喚起すること、というようなことが基本的な方向性として考えられるところであると考えています。
 こうしたことを踏まえまして、各学校におきましては、まずは管理職のリーダーシップのもとに、校内委員会などの組織を設けて、キャリア教育を推進する校内組織を整備することや、学校の実情に応じて、各学校それぞれのキャリア教育についての目標、全体計画、年間指導計画等を作成すること。さらに、教科教育や生徒指導など、学校における教育活動すべて、全体を通じてキャリア教育を実践していくということ。最後に、職場体験活動やインターンシップ、さらには職業人講話というようなものを含めて、いわゆる体験的な学習活動というものを、事前・事後の指導をあわせて効果的に充実していくというようなことが、各学校の実践ということで、具体的な方法として考えられるところであると考えております。
 続きまして、1枚おめくりいただきまして、5ページからの資料を御覧ください。ここにおられる先生方におきましては、既に御存じのことであると思いますが、おさらいということでおつき合いいただければと思います。
 まず、5ページの下でございますが、景気変動や社会経済の構造変革といったものが若者の雇用に大きな影響を与えているということは周知の事実でございまして、この資料にありますとおり、ニートやフリーターといった問題、この資料にはございませんが、先ほど申し上げましたように完全失業率、早期離職率といったようなことの高さについても、こうした影響の1つの表れということができると思います。このように、社会的・職業的な自立を目指して、これから社会に出ていこうとする子供たちを待ち受ける社会の現状というのは、少なからず厳しいものとなっているというような状況でございます。
 こうした状況が存在しておりまして、若者がニートやフリーターといった問題にならないために、初等中等教育の段階から、将来における多様なキャリア形成に共通して必要な能力・態度を身に付けさせることとともに、そうした態度・能力の育成を通じて、価値観、とりわけ勤労観、職業観を自ら形成・確立していく子供を育てるべく、キャリア教育を行っていくことが重要であると考えておりますが、キャリア教育の必要性といったものは、こうした経済的な状況のみから要請されるものではなく、以降6ページからになりますが、子供たちの状況ということで、若干触れさせていただきたいと思います。
 6ページの上のほうには、中高生の悩みということで資料を付けさせていただいておりますが、まず勉強や進学のことで多くの中学生が悩んでいるというような状況がうかがえます。また、「悩みや心配はない」と答えている中学生もかつてに比べて減っているというような状況が確認できます。またさらに、高校生の進路を考えるときの気持ちということですが、やはり半数に近い高校生が、進路を考えるときに、「自分がどうなってしまうのか不安になる」というようなことを感じているとされています。
 6ページの下のほうのグラフでございますが、将来就きたい仕事につきまして、小中高、それぞれ男子・女子を、平成7年と18年について比較した資料でございますが、御覧いただきたいのは矢印のついているところでございます。小学生よりも中学生のほうが、中学生よりも高校生のほうが、年を重ねるごとに、将来の自分がわからなく、悩みが深くなるというような傾向が見て取れるのではないかと思います。
 続きまして7ページをお開きください。これも御案内のところでございますが、TIMSSの調査では、日本の子供たちの成績はおおむね良好ということでございますが、「勉強が楽しい」、また「勉強すると日常生活に役に立つ」、「将来望む仕事につくためによい成績をとる必要がある」というふうに答えた率は国際的には極めて低いというような状況になっております。PISAの調査におきましても同様の傾向でございまして、数学的リテラシー、科学的リテラシー、いずれにおいても成績はおおむね良好というような状況になっておりますが、このうちの折れ線グラフの自信指標、興味指標、それから将来との関係把握指標ということについては、世界で最低のレベルとの状況となっております。
 また、読解力のほうについては、こうした調査というものはありませんが、8ページで一つお示しさせていただいておりますのは、趣味として読書をする生徒の割合、この表の上のほうに「read for enjoyment」ということで、自分の楽しみのために読書をする生徒の割合ということですが、こちらについてはOECD諸国で比べると下から7番目ということになっています。
 その次のページ、9ページでございますが、その中の具体的なそれぞれのジャンル分けした同じ表になっておりますが、日本が一番トップにあるのが漫画というようなところでございまして、その隣にあるノンフィクション、ちょっと字が小さくて、見にくくて申し訳ありませんが、真ん中がノンフィクションで、一番右がニュースペーパーということになっておりますが、こうした客観的な事実に基づく論理性の高い文章というようなことについては、やはり低下、下のほうにあるということで、こうしたことが得意ではないというような日本の子供の姿が浮かび上がってくるところでございます。
 続きまして11ページを御覧ください。こうした状況を踏まえまして、今、新しい高等学校の指導要領におきましては、「キャリア教育」という文言を初めて使用しているところでございます。
 具体的には、真ん中のところですが、5款の4、職業教育に関して配慮すべき事項というところで、キャリア教育を推進するための配慮事項を示しております。のみならず、5の教育課程の実施等に当たって配慮すべき事項の(4)でございますが、生徒が自己の在り方、生き方を考え、主体的に進路を選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、組織的な進路指導を行い、キャリア教育を推進すること、というようなことが明示されているところでございます。また、そのほかの関連については、この資料をまた後ほどにでも御覧いただければと思っております。
 資料の13ページにお進みください。これまでのキャリア教育の主な流れということでございますが、まず、キャリア教育ということでございますが、平成11年に中央教育審議会の答申、「初等中等教育と高等教育の接続の改善について」という答申で、「キャリア教育」という文言が初めて登場しております。平成16年1月には、文部科学省の調査研究協力者会議でまとめていただきました「キャリア教育に関する総合的調査研究者会議」というような調査がございましたが、こちらのほうでキャリア教育を「端的には」という限定付きながら、勤労観、職業観を育てる教育というふうに位置付けております。これによって、キャリア教育ということが非常に浸透するようになり、これに今度キャリア・スタート・ウィークの実践等もつながって、職場体験活動の実施率、それから実施日数の増加ということにもつながってきたということでございますが、現時点においては一方で、社会的・職業的自立のために必要な能力の育成といった面がやや軽視されているのではないかというような課題も、昨年の中央教育審議会答申の中でも触れられているところでございます。
 平成17年から20年度の間に、申し上げましたがキャリア・スタート・ウィークの展開ということで、同じ見開きの隣のページの14ページにも書いてございますが、中学校における職場体験活動が平成15年から22年に、これだけ実施率としても伸びておりますし、また日数についても、多く3日というところが増えるというような状況になってございます。
 一方で、高校の状況についても触れさせていただきますと、実施率についてはやはり学科においても差があるのみならず、とりわけ日数別参加率ということで右のほうにございますが、職業に関する専門学科、それから普通科の間では、高校は希望制ということになっておりますので、どうしてもここには大きな差があるということが現状になってございます。
 13ページのほうにまた目をお戻しいただきまして、平成18年に教育基本法、それから平成20年に教育振興基本計画ということで、それぞれ記載の記述が盛り込まれております。また、昨年1月には、今、私が御説明させていただいておりますもととなっております中央教育審議会答申、「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」をおまとめいただいたところでございます。
 こうした流れも踏まえまして、近年、最近の初等中等教育におけるキャリア教育に関する施策ということで、野上委員にも御参画いただきまして、昨年12月にまとめていただきました、キャリア教育外部人材会議というところで、15ページ、16ページに概要をお示ししておりますが、キャリア教育という観点で、学校への教育支援等を円滑に進めていくための方策というところについての提言をおまとめいただいたところでございます。また、指導用資料として、小中高、それぞれ学校の先生、学校の教員向けの手引を作成して、これを指導に生かしていただいているほか、キャリア教育に関する研修用動画の配信、こちらは資料の17ページの下のほうにございますが、キャリア教育研修用動画コンテンツということで、キャリア教育担当の調査官の藤田晃之が講師となりまして、総論編55分と、各論編ということで小中高のそれぞれ25分という研修用動画を各学校の研修に生かしていきたいということで作成して提供しているところでございます。
 また、18ページのところにおきましては、こうしたキャリア教育についての御説明をさせていただく機会を、各県に文部科学省が直接行こうということで、キャリア教育推進アシストキャラバンというようなことで、これは来年度開催をしていこうということで考えております。
 最後に、中長期的な課題ということで、主なものを1つ挙げさせていただきますが、中央教育審議会の答申、また昨年12月におまとめいただきましたキャリア教育における外部人材活用等に関する調査研究協力者会議でも言われておりますが、「産業社会と人間」、総合学課の初年次教育で行われておりますが、こうしたキャリア教育、子供たちの社会的自立・職業的自立を育てていく上での中核となる教科・科目の時間を設定するということについて検討するということが、「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」答申で、またキャリア教育における外部人材活用等に関する調査研究協力者会議のほうでも言われておりまして、これが中長期の課題の主なものということではないかと考えているところでございます。
 説明は以上でございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。何か質問等々があれば、また意見交換のときにでも出していただければと思います。
 一応、これからキャリア教育について議論に入るわけですが、まず議論に入る前に、今日、先駆的なキャリア教育の取組をされている2つの高校の事例を紹介していただいて、議論のきっかけにしていただければと思っています。資料3、資料4を御参照いただきたいと思うのですが、今日、2つの学校というのは、福岡県立城南高等学校と、もう1つは大阪府立布施北高等学校の2つです。よろしくお願いします。
 最初に、福岡県立城南高等学校の取組について、主幹教諭の下田浩一先生から御報告いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【下田主幹教諭】
 福岡県の城南高校から参りました、下田といいます。現在、進路指導部長を務めており、生徒の進路についての悩み相談係というか、進路に関するいろいろな業務をこなしている立場の人間です。本日は、城南高校のキャリア教育の在り方ということでお話しさせていただきます。
 城南高校は、平成7年度から、全国的に有名になりましたドリカムプランを行いまして、いわゆるキャリア教育の先駆けとよく言われてきました。私が城南高校に赴任しましたのは平成17年だったのですが、ドリカムプランを始めてちょうど10年が過ぎたころです。ただ、10年も過ぎますと、多くの課題を抱えるようになっておりました。ちょうどそれが見直す時期だということで、その見直すきっかけになりましたのは、平成17年度に福岡県教委から委嘱された、キャリア教育に関する研究でございます。3年間かけて、普通科高校におけるキャリア教育について検討するということで、引き受けたものです。私は赴任しましたと同時に、その委員に指名され、直接携わったものです。
 この3年間で何をしたかといいますと、肥大化したドリカムプランをスリム化することと、城南高校の考えるキャリア教育をつくり上げていくということです。本日は、そのドリカムプランのスリム化については割愛させていただきます。
 城南高校の考えるキャリア教育をつくり上げていく過程において、委員が何名かいたのですが、そもそもキャリア教育とは何なのかというところから始まりました。「城南高校にはドリカムプランがあるじゃないか」、「進路学習としてのプランがあるのに、まださらにキャリア教育をしないといけないのか」、「キャリアというからにはインターンシップを全員に課すのか」、いろいろな議論がありました。
 その中で、3年目に1つの方向性を定めたわけです。それは、集団における自分の役割を遂行する態度の重要性から、「貢献」という言葉をキーワードとして、学ぶ力、学ぼうとする態度の育成を掲げたわけです。ここでは「学習力」という言葉をつけておりますが、社会に出て、いろいろな苦難もあるだろうし、自分の夢の実現が叶わなかった者もいるだろうと。でも、それでも、何か学んで成長していこうという態度を、この高校3年間で身に付けさせる、という結論に至ったわけです。それは、教育活動全体で育てるのだということも、ここで決めたわけです。
 従来のドリカムプランと違う面では、夢の実現ということをずっと掲げてきたわけですが、その中にも、社会に貢献する、他に貢献するという意識を明確に持たせたという部分が違うのではないかと考えています。
 簡単な概念図を挙げてます。城南高校のキャリア教育を展開するのは、教科学習、集団活動、ドリカムプラン、現在では総合的な学習の時間をドリカムプランと名をつけておりますが、この三本柱です。
 ただ、その土台となるものをしっかりと身に付けさせていかないと、この上に乗せるものが揺らいでしまうという気持ちも持っております。つまり、基本的生活習慣の確立ということでございます。自己管理能力と言えばいいのかもしれませんが、基本的生活習慣を身に付けさせる。これがなければ学力も伸びないし意欲もわかないということです。細かなことを言えば、遅刻や欠席をしない。また、服装や定められた提出物の期限をきちんと守る。日々の生活の中で、それらをきちっと身に付けさせようというのが、基本的生活習慣の確立です。
 本校のキャリア教育は、ここに挙げていますように、日常型とイベント型というふうに分けております。見ていただければ御理解いただけると思いますが、日頃の授業やホームルームや部活動等で、キャリア教育は展開できるんだということで、これを日常型と言っています。多くの高校で実施されています進路学習、これをイベント型というふうに考えております。
 進路指導主事の研修会で、よく、他校の先生から、キャリア教育としていろいろな進路関連の行事をしているけれども、数日間は生徒のモチベーションはそれで上がると。しかし、その気持ちがなかなか継続しないと聞きます。イベントを行ったときは「よし、やろう」という気持ちが起こるけれども、数日経てば、あの時のモチベーションはどこに行ったんだというぐらい冷めていっている。イベントとしてのキャリア教育はとても重要ですが、それを効果的なものにするためには、やはり日々の教育活動でのキャリア教育の意識が大切だったと私は思っています。つまり、キャリア教育というものを、イベント的な行事だけに頼っていては、あまり効果は上がらないと思っています。
 そこで、そのちょうど3年間の研究指定を受けたときに、3年間の指導シラバス、高校1年生から3年生までの指導シラバスを作成いたしました。学校行事や学年として取り組んでいくこと、また学年としての行事や総合的な学習の時間、学習指導について、それぞれ月割りに、この時期はどういうことを中心に指導していこう、ということを作成したわけですが、この作成過程といたしましては、キャリア教育の研究をしていた委員会でまず原案を作成し、各学年に提示をして、協議、修正をしてもらいました。さらにそれが委員会に戻ってきまして、再検討し、もう一度学年に降ろして再点検をしてもらったと。これが二回三回続きましたが、これで決定し、実行したという経緯があります。現在でもこれは続いておりますが、年度末にその評価をし、修正するべきところは修正し、それを次の学年に渡すということを繰り返しております。そういう意味では、教職員の総意で、その年間指導シラバスをつくっていると言っても過言ではないと思います。
 ちょっと細な文字ですが、これがそのシラバスです。これは1年生の分です。1つ、一例を挙げますと、体育大会についてのそれぞれの学年の目的です。学年の進行とともに、一つ一つの行事における役割は変わっていきます。ここに挙げたのは、その各学年でのキャリア教育の視点です。1年生では、1年生として各自の果たすべき役割を認識し、全体における自らの責任を果たす態度を身に付ける。これが体育大会での1年生の1つのキャリア教育的な視点であると考え、生徒に指導しています。3年生では、上級生としてのリーダー性を発揮して大会を成功させる、責任を持って大会を成功させるということのベストを尽くさせるということで指導しています。このように、学校全体、統一した行事でありながらも、それぞれの学年、発達段階に応じた目標を掲げて、先生方に指導していただいているわけです。
 もう1つ、教科の中でキャリア教育の観点における目標を掲げております。これは平成22年度から始まったものですが、ここに挙げていますのは、各教科の年間指導計画の1つの様式です。これは数学Ⅰ・Aの内容です。これについては、年度初めに生徒にも配付をします。
 具体的な例を挙げますと、国語表現、数学Ⅱ・B、保健体育ではこのように書いています。特に理系の教科については、当初、目標を掲げるのはなかなか難しい、キャリア教育という観点で、例えば数学で何ができるのかというふうな意見もあったのですが、しっかりとこれに書いていただいてます。大切なことは、このように目標を掲げる作業を通じて、先生方がキャリア教育を意識してもらおうということでありますし、また、そのことによって、教科指導においてもキャリア教育の実践が可能になっているということでございます。
 日常の中におけるキャリア教育の展開という例を、1つここに挙げさせていただいたわけですが、もちろん、キャリア教育の中核になってますのは、総合的な学習の時間と校外活動でございます。
 総合的な学習の時間につきましては、従来からありましたドリカムプランをそのまま継承し、実施をしています。1年生では、職業観の育成をテーマとして、キャリアアッププログラム表では、ちょうど10月にあるかと思いますが、いわゆる社会人講演会をメーンに全体を組み立てております。もちろん、途中に文理選択も入ってきますが、このキャリアアッププログラム(社会人講演会)をメーンに組み立てているわけです。
 この社会人セミナーというのは、本校ではどうしているかといいますと、福岡経済同友会と協力をして、10名の経営者、会社のトップの方に来ていただいて、それを生徒に聞かせています。生徒が希望する方の話を聞きに行くということです。以前は、職業ガイダンスとして、OBを20名か30名ぐらい招き、職業紹介というスタイルで展開していたのですが、生徒たちは中学校でも同じような経験をしていますし、中には、自分はこの仕事に就きたいわけじゃないからこの話を聞いても意味がない、と言い出す生徒もいたわけです。ですからここでは、職業紹介というよりも、仕事とは何かという、経営者の方々の人生哲学を語っていただくということを目的にしています。こういうふうな話をしてください、とお願いしているわけではないのですが、大体、こちらが望んだとおりのことを話していただきます。
 2年生では、表の10月、11月に、ジョイントセミナーと書いていますが、いわゆる大学からの出前授業です。これをメーンに全体を組み立てていっています。地元の大学を中心に、今年は北海道から宮崎県の大学の先生方に来ていただいて、26の講座を設け、このジョイントセミナーを行いました。3年生では、自分の夢の実現に向けての進路ガイダンス機能を効果的に盛り込んでいます。
 校外活動といたしましては、これは主に夏休みや冬休みが中心になるのですが、外部の人材、外部の組織、外部の団体との連携の上で展開をしています。この参加は強制でも何でもなく、希望者を募るわけですが、たくさんの生徒が希望してきます。中には定員があるものもあります。例えばジョブシャドウというのは、本校では10名の指定枠があるのですが、これに50名ほど希望してきたり、県庁のインターンシップも、これは1つの学校から5名ということなのですが、20名も希望してきたりと。先生方はこれを選抜するのがなかなか大変な作業のようですが、希望してくるものですから、生徒たちにもやらされ感というのはありません。何かつかんで帰ろうという生徒の意欲もあって、これを経験した後、がらりと変わる生徒もいます。今は大学生になりましたが、このジョブシャドウに参加をして、それまでは全く目立たなかった生徒が、全体の前でリーダーシップを発揮するようになったりとか、こちらがびっくりするぐらいの教育的な効果が上がっています。
 そのほかに、本校SSHの関係事業で、海外サイエンスキャンプも行っております。これも今年はカナダのほうに行きましたが、参加者15名というところを、実際のところ生徒は30名が希望して来ております。これはただ参加するだけではなくて、報告会も行っております。第1学年・2学年合同で発表会を行います。参加したくても参加できなかった部活動生等にもそのことを知らせると。ここで発表することによって、そのときの思い、考えを共有するということもできます。これは一同が体育館に会して行うわけですが、海外に行ったグループはすべて、プレゼンテーションは英語で、説明をすべて英語で、全く何を言っているかわからないという生徒もいるでしょうけれども、何かすごいことをやっている、すごいことをやってきたんだということを感じさせているということもありますし、その活動をしてきたときの状況を理解しやすいようにパフォーマンスをする生徒もおります。本当に、生徒企画の楽しい報告会を毎年やっております。
 これは総合的な学習の時間の、本校のオリジナルテキスト「ドリカムBook」です。今年で3年目になりますが、1年目は、とにかくテキストとして形にしようということで、1カ月ぐらいでつくり上げました。2年目からは、それを改訂していったわけですが、その学年の思いを込めて、大きく変わっていっております。
 そのコンテンツがこれです。1年生は「職業観について知る」ということ、2年生は「学問分野を調べる」というスタンスでつくっています。1年生では読み物風の内容ですが、2年生では書き込みができたり、いろいろな資料をスクラップできるような体裁に仕上げています。
 もう1つ、自己管理能力というところで行っています取組ですが、ドリカムNAVIノートというものがあります。これは基本的生活習慣の確立のための1つのツールとして活用しているシステム手帳です。6穴のA5判サイズで、時間割の変更や提出物、課題等を記入できるようにしています。入学してきた時にすぐに配付をし、その使い方の指導を徹底して行います。だからといって、点検等は一切しておりません。渡したら渡しっ放しでございますが、好きなように使わせています。ただ、入学してきてからの1カ月間は、学級担任や教科担任が、その都度、「はい、開きなさい」「書きなさい」という指導をします。全くメモする習慣がなかった生徒も、そうやって指導を受けると、あとは放っておいても書くようになります。最初に始めたときは、1年過ぎたら5割ぐらいの生徒が使っていたらいいかなと思っていたのですが、実際のところ、8割の生徒が使っていました。全くメモする習慣のない生徒も、ずっと使い続けてきたわけです。
 ここに書いているその例は、3年生の頃の書き込みです。このような、書き方は別に「こういうふうに書きなさい」と指導したからではないのですが、それぞれのスタイルで使っています。
 もう1つ、キャリア教育推進のための組織とては、本校ではドリカムキャリア推進委員会というものを作っています。DC委員会と私たちは言っているのですが、構成メンバーはそこにありますように、3人の主幹と学年主任、各学年の総学担当者及びSSHの担当者であります。審議内容は、総合的な学習の時間だけではなく、ここに挙げていますように、多岐に渡った内容になっています。
 この会議の効果といたしましては、学年間の差異をできるだけなくすと。風通しのいい組織を作っていくという意味では非常に効果が上がっています。学年間の意思の疎通と、統一感のある指導体制など、共通理解を図ることが効果として挙げられるということです。
 この委員会は、毎週月曜日の2時間目に定例で行っております。適当な時期に放課後行うとなりますと、なかなか時間が合わないということもありますので、これは確実に行うためにも、時間割の中に組み込んで展開をしているわけです。
 このような組織を組みながら、本校のキャリア教育というのは展開しています。現在、城南高校では、もう1つ新たな展開といたしまして、教育プログラムであるCCSというものを行っています。CCSのCはキャリア教育であり、もう1つのCはコミュニケーション、Sはサイエンス教育というものです。グローバル化する知識基盤社会の到来の現実を踏まえて、コミュニケーションとサイエンスの要素をより強化して、SSHや海外の大学との交流を織り交ぜながらキャリア教育を実践していくというところでございます。
 本校のキャリア教育の報告であります。以上で終わります。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、もう1本の報告がございます。資料4に基づいて、大阪府立布施北高等学校の報告をお願いいたします。

【中嶋教頭】
 失礼します。大阪府立布施北高等学校の教頭の中嶋と申します。こういう発表の場を、本日与えていただきましてありがとうございます。よろしくお願いします。
 まず、今ちょうど1年生が、来年度デュアルを選ぶ選択がほぼ決まったというような時期でありまして、ある子が、「先生、イメージチェンジってイメチェンやな」と。なら、本校、デュアルのキャッチフレーズが「トライ&チェンジ」なので、「ほんなら先生、トラチェンやな」とかいう話をしていたので、申し訳ないのですが、本校の資料のトップの、右上に「トライ&チェン」で終わっているのですが、実は「トライ&チェンジ」という、「ジ」が抜けて、「ジ」をつけ加えていただければありがたいかなと思います。
 では、ちょっと本校の紹介をさせてもらいます。資料はいっぱい用意させてもらったのですが、約15分間ということで、ポイントを絞って説明させてもらいます。
 資料をめくっていただいて1ページ、今日話をさせてもらうのは、ここに項目をあげさせてもらった内容を中心に話させてもらおうかなと思っております。
 まず、本校の状況というのを説明させていただいて、その背景の中で本校のデュアルシステムが取り組んだということがあると思いますので、本校の現状ということで、4ページを御覧ください。
 本校は34年目の学校に当たります。皆さんもよく御存じだと思うのですが、地域的には東大阪市ということで、東大阪市は中小企業の集まる町。といいましても、十数年前は中小企業が1万あったということなのですが、現在では5,000台というような状況だということです。本校の周りに、1つの公立の幼稚園、2つの小学校、それから1つの中学校、ここが意岐部地域といいまして、これもいろいろ、文部科学省のほうから、キャリア教育という形で指定を受けてきたというような地域で、キャリア教育を連携をとりながら取り組んでいる地域性のあるところに本校は建っております。
 ただ、大阪府は、中学校から高校に入学するのに、大阪府全体を4つの学区に分けておりまして、その中でもかなり低い位置に位置付けられています。そういうことで、親の意識も非常に薄い。1つの例を挙げますと、生徒の中で、御両親がそろっている家庭というのが、多分6割を切るかなと。5割から6割の間かなと。そういうふうな家庭状況も含めた生徒が多く入ってきております。
 進学・就職状況ですが、大まかに言えば3分の1の生徒が専門学校を含めまして進学。自動的に残りが就職ということになるのですが、きっちりした形で就職していくのがその半分、だから全体の3分の1。ということで、全体の3分の1に近い生徒が、フリーターも含めた未定者というような形が本校の現状です。その辺が徐々に、一時は未定者が40%を超えていたのですが、徐々に30%ぐらいの段階にいっているというのが本校の現状です。
 そのほか、本校では、5ページのほうに移るのですが、大阪府は前期入試と後期入試がございます。ほとんど、前期入試というのは専門学科。理数科とか文理学科、音楽科とか、工業高校さんとか商業高校さんとか、そういう前期入試という中に、中国帰国生徒・外国人生徒というのを実施しています。本校はその生徒を若干名ということで、1学年10人前後の生徒、いろいろな国籍の子が入ってきています。ただ、ほとんどの生徒は普通科ということで、後期入試、3月16日ですかね、その入試の形で入ってきている生徒ということです。
 そういうことで、本校は特色ある3つの三本柱ということで、まず、きめ細かい生徒指導と。1年生につきましては、本校、40人定員、6クラス240人を、1年生は8クラス展開しています。したがいまして、1クラス30人編成という形をしています。それから、今言いましたように、いろいろな国籍の生徒がいるので、多文化理解教育ということにも力を入れています。そして、今から、普通科高校でのデュアルシステムという話をさせてもらいます。
 デュアルシステムは、本校では専門コースと今は位置付けられておりまして、2年生と3年生で選択できます。ただ、融通性をきかせるということで、2年・3年、連続して選ぶのもあり、2年生で選んで3年生でやめるのもあり、2年で選んでなくても3年生で選ぶことも可という、かなり融通性をきかせております。
 本校のデュアルシステムの経緯というのは、7ページぐらいに移るのですが、平成16年度から3年間、文部科学省の専門学校等における日本版デュアルシステムの研究指定を受けたのがきっかけでございます。その3年間の研究指定を終わりまして、教育委員会のほうから、デュアルシステム専門コースの設置が認められて、現在に至っております。
 カリキュラム的には、8ページのところにいきますが、デュアルを選んだ子は、2年生でデュアル実習6単位、それと座学におけるデュアル基礎。3年生でデュアル実習と座学におけるデュアル演習、それと文書デザインというのがメインになります。あとは単位数の調整というようなことでやっています。
 まずデュアル実習というのは、週に1回、朝から、もう学校には来ないで、決められた実習先に行くというのを通年でやっております。ただ、2年生は、ミスマッチを起こす生徒もおりますし、本校は普通科なので、いろいろな分野を体験したいということもありますので、前期と後期で行き先を変えるということをしております。行き先を変えるので、分野が同じところ、前期も保育に行って後期も保育、というのもありますし、前期と後期で分野も変えるというのもやっております。もう1つは、本校は、1つの実習先には生徒は1人、これを原則にしています。複数の生徒はおくらないということをしています。
 学校と実習先さんの連携ということなのですが、あくまでこのデュアル実習というのは、本校では学校の授業の1つなので、実習先に任せるわけにはいかないと、必ず実習日には学校の教員が回っていきます。そして、実習先の人とのコミュニケーション、それから実習生の様子というのも連携していくということをしています。それと、生徒に対しては、実習日誌、実習ノートというようなものを書かせています。この実習ノートは、ちょっと飛びますが17ページ、18ページに載せさせてもらっています。生徒は、この実習ノートを書いた後、まず実習先で実習を終わった後、向こうの実習先さんの点検とコメントをもらいます。本校が、週1なので、翌日に学校で、回った担当教員に渡して、その下に学校の担当教員のコメントをもらうと。そしてまた生徒に返して、次の実習のときに持って行かせるというサイクルをとっております。

 そのほか、座学ということで、週に2時間、デュアル基礎・演習というようなことで、もちろん実習の振り返りということもやっておりますが、いろいろなオリジナル教材で、ビジネスアイディアとかトラブル発生したときの問題解決能力というようなことをやっております。
 ちょっと、どんなことをやっているかというのが、資料の20ページから用意させてもらいました。ビジネスアイディアであれば、例えばノートという商品に新しいアイディア、機能をつけて、新商品を開発しよう、というようなアイディアを出させます。それから、問題解決能力ということで、「あなたはこんなときどうしますか」というような問題。こういうトラブルが発生したとき、あなたはどう問題を解決しますかというのを、まず自分で考えさせて、グループで議論をさせて、グループとしての答えを出させて発表するというようなことで、20ページの下ですが、意外とここにおられる方も、こういう問題にぶち当たったらどうするかなと悩むようなネタかなと思います。
 それから、21ページでちょっと絵を描いていますが、この絵を、何も見ていない生徒に口で表現して、どんな絵だったかを描かせます。なかなか、本校の生徒は「立方体」とか「円柱」という言葉は知りません。したがいまして、例えば「のりの缶」とか「お茶の缶」とか、左下で言えば「6Pチーズの入れ物のちょっと厚さがあるやつ」とか、いろいろな工夫をしてやっています。そういう教材を使って座学のほうもするということをしています。
 あと、3年生で文書デザインという、これは、自転車で10分、15分のところの大学に移動して、向こうでプレゼンとかポスターづくりとか、そういう授業をしています。これもあくまで学校での授業を、学ぶ場を学校ではなくて大学の場を借りているというような捉え方をしています。
 本校では、この座学と実習、このサイクル、座学で力を付けたところをまた実習先で発揮をするというような、このサイクルを大切にしています。ただ、学校で学んだものを、実習先だけで発揮するのではなくて、いろいろな行事とかの場を設けております。その辺が、9ページの参加行事というところにも書かせてもらいましたし、まだ今年度が終わっていないので、1年間、そのほかにどんなことをしているというようなことは、14ページから3ページ分ぐらい挙げさせてもらっています。いろいろなデュアルに関わる行事をやっているということです。
 生徒のほうは、本校は17年度から本格実施をしておりまして、最初は少なくて細々と進んでいたのですが、19年度から2学年合わせて50名台、22年度、23年度は90名台ということで、実施をしております。
 校内体制としましては、本校、デュアルの研究指定を受けた平成16年度、このときは有志が集まりました。ただ、有志と言いましても、結局は当時の教頭に一本釣りして「入ってくれや」というようなことでスタートしました。それ以降は、基本的にはデュアル担当者が、デュアルのプロジェクトチームと言いますが、そのメンバー、それプラス、カリキュラム等がありますので、教務部長、それと進路部長が入ってきます。それで何年かやっていたのですが、平成22年度からは、生徒の数が増えたということは、自動的にデュアル担当者も増えたということで、この全員がプロジェクトチームをやると非常に大変なことになるので、一応、プロジェクトチームと、現在は授業担当者というのを分けて、会議を週1ペースでやっております。
 あと、効果というところに入りますが、基本的にはやはり生徒は、コミュニケーションも含めた社会人基礎力は付けていくだろうというのと同時に、本校は生活がしんどい子が多いので、生活を充実する。生きる望みを持っていく。元気に生活していく。こういうところにもポイントがあるかなと。その辺につきましては、今日はちょっと時間がないのですが、資料の23ページ以降に、何年か前からなのですが、3人ほどの生徒の体験発表を載せさせてもらっています。発表会で言ったこととか、この子らが、日頃の日常生活の中でどういうことを考えてデュアル実習をして、そのデュアル実習によってこの子らが高校生活、それから自分の人生をどう考えたかというようなものを載せているので、また時間があるときに見てもらえればと思います。
 そのほか、デュアルによってやはり地域連携が深まったと。学校もなかなか、「求人お願いします」以外は企業さんには行かないですし、そういう意味では企業も、「学校の先生がしょっちゅう来て、いろいろな話ができるな」みたいなので、一緒に飲みに行ったりというようなことも何回かあります。
 そのほか、地域のイベントとか。逆に言ったら施設さん、保育所とか老人ホーム関係では、「ちょっと手伝いに来てや」とかいうことでも関係が、気楽なそういう会話ができるというのと同時に、やはり学校が活性化したかなと思います。学校というのは、基本的には開かれた学校づくりと言いますが、やはり閉鎖的な部分がありますが、学校にいろいろな形で企業の方、施設の方の出入りもしています。ちょっと何人か集まって、実習の内容を相談したいので、ものづくりの方が5人ほど集まって相談しようか、というのが学校の場でということをしています。そういう意味では、地域にも出入りができるような場かなと思っています。
 ただ、課題もいっぱいあります。特に、本校は普通科高校のキャリア教育といいますが、普通科高校の問題は、学校設定科目が上限があります。言いますと、本校ではデュアル関係でも学校設定科目は16単位と。そのほかに、1年生で本校独自のカリキュラムということで、基礎学の授業とか基礎数学という科目も学校設定科目で設けていますので、これ以上学校設定科目を設けることができない。ところが、やはり本校は普通科高校なので、老人福祉に行く子はもうちょっと福祉関係の知識を授業でしたい。ものづくりの子はスパナとか、そういう道具も全然知りません。名前も知りません。ちょっとそういう講座を設けてやりたいと。そんなことも考えたいですし、学校でちょっとものづくり講座をしたいなというようなことも、なかなか時間がとれないというようなことで、やはり一番大きな問題は、今後それを進めていく上で、どうカリキュラムを変えながらやっていくかということと、本校、キャリア教育を、こんなんして注目はしているのですが、もっと何らかの形で近辺にキャリア教育を一緒にやっていこうという学校を増やしてもらいたい。今までは本校唯一ということで取組をさせてもらいましたが、今は情報公開しながら、「一緒に頑張っていこうや」というような学校がもっと増えたら、うちも元気が出るかなというようなことを考えております。そういうふうな取組をやっておりまして、今日はあまり時間がないですが、また資料等を読んでいただいて、本校に対するアドバイスや御意見をいただければ、また頂戴できればありがたいかなと思います。
 連絡先は最後の26ページに書いていますので、またメールでも電話でも、御意見やアドバイスをいただければいいかなと思います。ありがとうございました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。

 興味深い2つの報告をいただきました。議論をこれから40分前後ぐらいとって進めたいのですが、まず2つの報告をいただきましたので、この2つの報告の中身について御質問とか、関係する御意見があればお伺いしたいのですが。どなたからでもどうぞ。ございますでしょうか。
 では長南委員、よろしくお願いします。

【長南委員】
 ありがとうございました。大変よくわかりました。福岡県立の下田先生に質問ですが、資料の4ページで、基本的生活習慣の確立の上に三本柱が立っていますね。今、日常型とイベント型に分けた、イベント型のことが中心に説明されましたが、基本的生活習慣の確立ということのために、学校は何か取組をしているのですか。

【下田主幹教諭】
 風紀検査、服装・頭髪検査、そういうものも学期に何回かやっていますし、あとは、本当に細かな話なのですが、例えば遅刻・欠席をしないということで、確かに体調が悪くて休んだ生徒、または家庭の事情で遅刻せざるを得ない生徒等もおりますが、中には寝坊でとか、ちょっと来たくなかったからという生徒もおります。そういう生徒に対して、遅刻者指導といいますか、ちょっと厳しい指導なのですが――厳しいといっても体は厳しくないのですが、A4の紙にきっちり罫線をつけて、なぜ遅刻をしたのかを半分、残り半分が、これから遅刻をしないためにどうしたらいいか。
 当然、それをする前に、先生たちの面談も週1回やるのですが、結構これが生徒にとってはきつくて、1回それを経験すると、もう遅刻はしないというようなこともあります。これが正しい指導なのかどうかはわかりませんが、遅刻をしないことの大切さ、時間を守ることの大切さ、この事実は生徒は理解することができているのではないかなと思っています。
 あとは、提出期限を守るということにつきましても、例えば課題の提出、出せないというか、出さない生徒がいます。この者については、その日、学校に残して、終わるまでさせるとか、要するにきちんとやるべきことはやった上で次の取組を行うという、そういうことを、1年生の間にそれを徹底してやったりとかをしています。
 あとは掃除ですね。掃除をきちんとすることの大切さを教えたりとか、そういうようなことで指導はしています。

【長南委員】
 実は、こういうことは小中学校の段階でしっかりできていれば、高校に行ってわざわざ手を下すこともないのではないかなと思うのですが、実際には、日本の家庭の状況とか社会全体の状況が変わったために、こういうことが出てきているのではないかなと。
 このことは、実は次の5ページの資料の、キャリア教育の日常型とイベント型、日常型のところで、この基本的な生活習慣の確立というのはつながってくるのではないのかなと思うのです。その日常型の授業とかホームルーム、部活動でのキャリア教育の取組というのは、何か学校としての1つの仕組みとか、そういったものはあるのでしょうか。

【下田主幹教諭】
 基本的には、授業においてはもう先生方に任されてはいますが、その「やらされている」という感じよりも、やはり自分たちで学ぼう、学んでいこうという姿勢をつくる努力といいますか、そういうスタイルで授業を展開される先生方が非常に多いということです。
 私は数学なのですが、別の数学の先生は、隣と机をくっつけさせて、必ず予習を前提とした授業を展開します。これは当たり前と言えば当たり前なのですが、なかなか今の子供たちの状況でいうと、家庭で学習するという習慣がつかない子たちが多い中で、きっちりと予習をさせて、まず授業の初めに、「では、わからなかったところはどこですか」というところから始まって、わからなかったことをこちらが教えるのではなくて、生徒の中で、「それはこうやったらいいんだ」とかいう議論をさせながら授業を展開するとか、そういう工夫をして授業をしたりしています。そういう先生方が非常に多いと私は思っています。

【小川部会長】
 長南委員、よろしいですか。

【長南委員】
 今の、日常型とイベント型に分けてキャリア教育を論じるというのは非常にわかりやすいことです。それで一番大事なことは、イベント型はもちろんですが、日常型で学校という仕組みがどういう仕組みをつくっているのか。例えば、基本的生活習慣の確立なんていうのは日常型の部分だと思うのです。そういう点での取組の例があれば大変いいのかなと思います。それからもう1つ、ちょっと私の意見なのですが、ドリカムNAVIノート、あれは大変いいですよね。あまり手をかけないというところ。例えばああいうノートをつくると、一人一人の生徒に対してコメントをつけて返すとか、そういうことをやる例が小中学校では多いのです。それは実は、私はあまりよくないのかなと。ですから、これも自身で使い方がわかっていくという、そういう取組が、私はいい取組だったなと思います。ありがとうございました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。
 では直原委員、眞砂委員、そして小林委員、川嶋委員の順番でお願いします。

【直原委員】
 大阪府立布施北高等学校の御報告を聞きまして、普通科高校でもここまでやるのかということで、大変驚きました。 ちょっと教えていただきたいのは、2年次からデュアルシステムコースを選べるということなのですが、そうするとおそらく1年次で相当、自分のキャリアを意識させて、デュアルシステムの意義を理解させる取組がされているのだと思うのですが、どんな工夫をされているのか、教えていただければと思います。
 それからもう1点ですが、もともとのこの目標というのが、最初にお話がありました、卒業後の進路の中で、未決定の生徒が非常に多い問題があったということでした。私は都立高校の関係ですが、都立高校にもこういった問題を抱えている学校が数多くあるわけですが、このデュアルシステムの取組によって、進路未決定率というか、未決定の生徒の低減にどの程度効果があったというふうに考えられているか、教えていただければと思います。

【小川部会長】
 では中嶋先生、2点、よろしいですか。

【中嶋教頭】
 まず1点目の、1年生における取組という部分ですが、1年につきましては、基本的に共通カリキュラムで全生徒がやっているということで、ホームルームとか総合的な学習の時間で進路・キャリア関係で、よくどこの学校さんでもやっていますが、自分を見つめるとか、自分史をするとか、職業を考えようというようなことをちょっとやって、あとは2学期の段階で、1年生の学年集会とかを持ちまして、デュアルの紹介、それからデュアル発表会には1年は全員見させるというようなことを通じて、あなたはデュアルを選択しますか、選択しませんかということをして、さらに迷っている子や、とろうかなと思っている子につきましては、放課後さらに詳しい説明会を実施すると。それと同時に、保護者説明会も開催するというような取組を、1年の段階ではやっているということです。
 それから、進路未決定率の変化という部分では、確かにデュアルを選んでいる生徒の未決定率はかなり低いです。先ほど、全体の平均が3割強の生徒が未決定ということなのですが、デュアルで選んでいる子は多い時でも20%を切る。もともと人数が少ないので、パーセント的にはどれだけ有効の数字かわかりませんが、多くても10%台というような成果だと。
 そこが、ほかの生徒にどう影響があるかというところは、今のところ、数字は徐々に減ってきているのですが、それがデュアルの効果かどうかというのは、まだきっちり検証はできていないというのが現状です。

【小川部会長】
 直原委員、それでよろしいですか。何か。よろしいですか。

【直原委員】
 はい。

【小川部会長】
 では眞砂委員、どうぞ。

【眞砂委員】
 とても丁寧な取組で、勉強になるところがたくさんあります。2校に関してですが、生徒のアルバイトに関しては、学校としてどのような対応をとっているかをお聞きしたい。

【小川部会長】
 では、下田先生、中嶋先生の順でお願いします。

【下田主幹教諭】
 私ども城南高校では、アルバイトは原則禁止にしております。家庭の経済状況で、どうしてもということであるならば検討して許可している場合もありますが、基本的には禁止ということで扱っております。

【中嶋教頭】
 本校の場合は禁止はしておりません。先ほど言いましたように、家庭的な事情でしんどい子も多いということと、アルバイトも、一応担任、学年のほうには、どんなところに行っているというのは登録申請というような形はしているのですが、基本的には担任、家庭が把握していればオーケーという形でしています。

【小川部会長】
 それでよろしいですか。何か御意見は。

【眞砂委員】
 いえ。

【小川部会長】
 ではまた後で御意見がありましたらお願いします。では、小林委員、お願いします。

【小林委員】
 2つの学校、本当にありがとうございました。
 布施北高校の中嶋教頭先生にお願いしたいのですが、直原委員も話しましたが、卒業時の状況、進学がどのくらいで、このデュアルをやった子の中の進学・就職がどの程度にバランスがあるのか。それから2点目が、その就職した生徒の離職率がどのくらいなのか。3点目が、大学進学を目指した子のデュアル体験が、大学の学科選択に役立っていたのかどうか、この3点を教えていただければと思います。

【小川部会長】
 では中嶋先生、お願いします。

【中嶋教頭】
 まず、本校は普通科なので、デュアルで例えば介護とか保育関係もいて、自分がそこの進路を目指そうということで、専門学校なり短大へという形で目指す生徒もおります。したがいまして、基本的にはデュアルで選んだ子の、まず進学率ということでいきますと、全体的に本校は、生徒の3分の1が進学といいましたが、4割ぐらいが進学という数字です。そのほかは就職になっていくのですが、未定というのが非常に少なくて、何らかの形で就職していくと。
 離職率というのは、どの段階で離職していくかということで、そのようなデータはとっていないのですが、企業さんにちょっと聞くと、即戦力はやはりあるという評価が一定得られています。それと、やはり離職という部分で、本校の生徒であれば、普通の学校であれば就職してすぐやめたというような子もいますが、早いほうでも1年近くは頑張っているという状況です。
 大学も含めて、学科にどう影響するかは、例えば1人の例を挙げますと、「経済学科に行く」と。最初はそのまま経済学科に行くということを決めていたのですが、デュアルでちょっと販売系を経験した子が、実際、営業ができるかできないかはわからないのですが、大学に入るときに、「先生、できたら、どういう店をつくっていったらお客さんが来てくれるか、そういうことを大学で勉強したい」とか、やはり目的意識を、何か大学でこんなことを勉強したいという目的が、自分の中で選んで大学を選択している子が多いなと。それはもちろん専門学校も同じであります。もう1つは、先ほど離職率という話もあったのですが、例えば保育園とか介護の専門学校へ行くのでも、ほとんどの、ほかの高校さんから来た子は、専門学校や短大に入って実習がありますよね。その時が初めて、教育実習が実習。ところが本校の生徒は実習を経験していますので、やはりそこでも差が出ているというのは話として聞いております。以上です。

【小林委員】
 ありがとうございました。

【小川部会長】
 よろしいですか。では川嶋委員、よろしくお願いします。

【川嶋委員】
 ありがとうございました。大学のほうでも設置基準が改正されて、社会的自立・職業的自立へ向けた支援を正課内・正課外で行うこととなりましたが、なかなか正課内でのキャリア教育、特に城南高校さんからの御報告があったように、それぞれ個々の授業の中できちんとキャリア教育を行うというのはまだ難しいところがありましたので、非常に参考になったところもあります。
 そこで、文部科学省からの御報告も含めてそれぞれに質問があります。まず城南高校さんについては、今日配っていただいた資料の、学習力のところで、学習力を身に付けさせると。その下に括弧書きで、「キャリア形成にとって必要とされる能力や態度を培おうとする力」と書いてあるのですが、学習力で培うとされる「キャリア形成にとって必要とされる能力や態度」というのは、デファクトといいますか、既に自明のこととしてあるのか、城南高校さんとして具体的にこれこれこういう能力や態度であるとして明確に目標として掲げておられるのか、そのことをお聞きしたい。
 2つ目は、布施北高校さんへの質問ですが、例えば8ページに、教育課程のところで書いてあるのですが、普通科高校で、総合制でも単位制でもない高校で――私は高校教育が詳しくないのですが、丸一日、生徒を実習に出すという、そういう時間割上の工夫は、これは普通科高校で簡単にできることなのかどうなのかということをお聞きしたい。
 最後に文部科学省さんの報告について、1点だけ要望があります。この報告書をまとめるに当たって、キャリア教育と職業教育は違うということを明確にしたということでした。これは3ページのところで先ほど御説明があったのですが、実は11ページの学習指導要領のところのキャリア関連というところを見ますと、先ほど御説明の第5款の4で、見出しが「職業教育に関して配慮すべき事項」の中に、「キャリア教育を推進するために」という形になっているので、今回せっかくキャリア教育と職業教育は違うということを明確にされたのですから、職業教育の中にキャリア教育に関する事項を含めるのは、少し整合性がないのかなと思いました。以上3点です。

【小川部会長】
 では、1人ずつまたお答えいただけますか。城南の下田先生、お願いします。

【下田主幹教諭】
 この学習力という言葉が出る過程で、いろいろな先生方の意見を交わしたのですが、その中で出てきたのは、これから子供たちが社会に出て、必ず遭遇するのは、選択する場面、そして決断する場面があるのだと。その連続の中で、どう自分たちは生きていくのかという、その選択と決断をする力を養うには、やはり自分が学んでいこうとする力が必要なのではないかというようなことを経て、この言葉が登場してきたわけです。

【小川部会長】
 では中嶋先生、お願いします。

【中嶋教頭】
 時間割の件ですが、8ページのところでちょっと説明させてもらいますと、非常に実務的なものがあるのですが、2年生でいえば、デュアル実習6時間分、それを受けていない子らがどういう授業を受けるかというのがここにあります。情報演習Ⅰと芸術Ⅱと政治経済と数学Aということなのですが、1個ずつ入れますと6時間分に満たないので、そのクラスは同じ授業をその日に2つ受けさせるのはちょっと酷だと。まあ、そんなことをしてもいいとは思うのですが。だから、本校では、やはりちょっとロスというか、例えば2年生であれば日本史という科目は、デュアルの子も普通コースの子もあるのですが、それを別々に受けると。だから、普通コースの子は日本史の授業をデュアルの日に受けている。ところが、デュアルに行っている子はそれは受けていないので、別の日に別で集中して受けるという、ちょっと実務的なことをしています。

【小川部会長】
 川嶋先生、今のお二人の回答でよろしいですか。

【川嶋委員】
 はい。

【小川部会長】
 文科省のほうについても何かございますか。ではよろしくお願いします。

【春山児童生徒課課長補佐】
 御指摘がありました資料の11ページのところ、第5款でございますが、4のところは職業教育に関して配慮すべき事項ということで書いていますが、5の教育課程の実施等に当たって配慮すべき事項は、職業教育だけに限らない部分でございまして、こちらの(4)のほうは一般の職業教育以外のものを含めた形での記述となっております。
 今日お配りいただいております中央教育審議会答申の19ページのほうにも、キャリア教育と職業教育の関係を整理していただいておりまして、19ページ以外にも記述はありますが、端的にここが一番書かれているのかなと思いますが、育成する力として、キャリア教育は一人一人の社会的自立というところに重点を置きまして、そうしたことに必要となる基盤となる能力や態度ですが、職業教育というのは一定または特定の職業に従事するということで、ある程度分野が念頭に置いてあるということの違いがあるということと、それから教育活動ということにおきましては、キャリア教育は普通教育、専門教育を問わず、様々な教育課程の中で実施されるということで、この中に職業教育というものも含み得るものだということで考えておりますが、職業教育におきましては、具体的職業に関する教育を行われるということで、これがキャリア教育の推進、実践に寄与するということはあるけれども、やはりそのものではないということで、中教審答申のほうではまとめていただいているというふうに理解しています。

【小川部会長】
 そういうふうな整理の仕方に、川嶋委員のほうで何か御意見があれば、また後で議論の中で出していただければと思います。
 今まで、2つの報告に関して御質問等々お受けしたのですが、今度はもう少し広げて、高校教育におけるキャリア教育の課題について、もう少し皆さんからの御意見を伺っていきたいと思っています。
 前回、文書発言も積極的に認めますので、是非文書を提出くださいという御要望を差し上げていたのですが、今日、資料7にあるとおり、今日のテーマに関わっては3名の委員から資料の提出をいただいています。小杉委員、小林委員、和田委員の3名です。内容を少し見てみましたが、小杉委員はキャリア教育と職業教育の2点書かれていますので、最初に小杉委員と和田委員に、今のキャリア教育に関して御意見を伺って、小林委員は、これは後半の専門の職業教育のところで御発言いただくということでよろしいでしょうか。

【小林委員】
 はい。

【小川部会長】
 では最初に小杉委員、そして和田委員から御意見を伺って、また皆さんの御意見を伺っていきたいと思います。ではよろしくお願いします。

【小杉委員】
 ありがとうございます。前回の雰囲気からして、これは紙で出さないとしゃべる時間がないかもしれないと思って、慌てて紙を書かせていただきました。
 私の中では、職業教育とキャリア教育、両方混ぜたような形で書いてしまっていますので、その中で、キャリア教育を特に中心にという考え方で話させていただくことにします。
 私は労働市場のほうからいつも見ていて、一番気になっているのが、お話に出てきました「進路未定」という層で、学校基本調査の中では「左記以外」というような形とか、あるいは場合によっては「一時的な仕事」というところに振られているような、そういう層の存在です。この人たち、昨年3月の卒業生だと全国で6.8%ですが、この増減というのは基本的には労働力需要にかなり依存していまして、景気がいい時は少なくて景気が悪くなると多くなるという側面もあるのですが、それだけではなくて、やはり高校教育の在り方というところにも非常に課題であろうと。
 そこで1つ、データで示させていただきたいと思ったのが、2ページ目に示しました表1ですが、これは昨年の3月に、都内の20歳から29歳層――サンプリングは一応ランダムにとる形の調査ですので代表性はあると思います、都内に住んでいる20代の若者たちが、学校卒業時点でどういう状態だったかというのを聞いたものです。
 高校卒業学歴の男女を分けてありますが、どちらも卒業段階でアルバイト・パート、あるいは無職・失業という比率は、ほとんど正社員になった人と同じぐらいの比率で、派遣等も入れればさらにそれよりずっと増えるというぐらいの量になっています。進路未定で学校を離れた生徒の多くは、やはりアルバイト市場に入っているという実態があるのだろうと思います。都内の場合には、特に学卒の「左記以外」が非常に多い地域なので、特にこういうふうになっていると思います。
 こういう人たちが、これは卒業時点ですが、卒業時点からその後、この調査の時点まで、どんな経験をしているのかというのを見たのが下の図1なのですが、高校卒業の20代前半と20代後半と2つに分けています。明らかなのが、大卒のほうは紫色の長い棒、ずっと正社員だったというタイプの人が非常に多いのですが、高卒はこれが少なくて、非正規、今も卒業時点も非正規であるという層とか、あるいは、男性の場合はその中でも非正規から正規に変わったという人が、だんだん年を取ると増えてくるのですが、それでも、20代後半でもやはり非正規のままという人が2割ぐらいいます。
 最初の就業状態でも、決して学校基本調査上で見る「一時的な仕事」の比率を超えていて、非正規市場に入っている高卒者は非常に多い。それが、卒業時点だけの話ではなくて、その後20代を通じて、場合によっては30代まで続くような、そういう事態が起こっているということです。
 このことと、さらに3ページの表2は、そうした卒業後のこれまでのキャリアと、高校時代にどのような教育を受けたか――普通科・総合学科であったか、商業系だったか、工業系だったかというので分けてありますが、それで非常にはっきりするのは、やはり普通・総合という学科の場合に、正社員で定着する比率が非常に少なくて、非典型一貫の比率が高い。普通科の場合、やはり学校在学中にコアになるような、自分仕事上の強みみたいなものが形成されないまま労働市場に出るということで、その後かなり苦労が多くなるのではないかということが、ここから見えてくるわけです。
 学校基本調査の話にまた戻りますが、学校基本調査上で、就職も進学もしない形で学校を離れる層、先ほど言いました6.8%なのですが、その人たちがどういう学校を出ているかというと、やはり4分の3は普通科なんです。やはり普通科の卒業者が、最も卒業してからのキャリアに苦労するタイプになってしまっている。普通科高校における、私はここでは職業教育と書きましたが、まさに布施北のやられているような形、キャリア教育の中の職業にかなり特化した部分のような、実際に彼らが出ていく、卒業生が出ていく労働市場に見合った形での準備、それを学校の中でしていくということが、やはり彼らの卒業後の状況を見たら、絶対に必要なのではないかということをここで申し上げたいと思います。
 その後のほうは専門高校の話なのですが、最後のパラグラフに書きましたのは、進学という場合のキャリア教育では、場合によっては就きたい仕事を決めさせて、その就きたい仕事に見合った大学に進学するという、そういうところにひょっとしたら――私はそれは短絡だと思うのですが、短絡になりがちなことがあるのではないかという危惧を持っています。
 また、開いていただきまして3ページの表3、これは少し前の大学卒業の直前の大学生への調査で、量的にかなり多いので、ある程度の代表性があるのですが、医学部等を除いた一般労働市場に入るタイプの学部対象です。そういう学部の場合に、大学や学部を選ぶ時に、就きたい仕事のことを考慮して学部を選んだということに、「とてもよく当てはまる」から「全く当てはまらない」まであって、それがきれいに分散していますが、「よく当てはまる」からといって就職がうまくいくわけではない。それだけのことなのですが、就職がすべてではもちろんないので、それはそれでまた違う問題があるのですが、それはともかく、やりたい仕事を考えて、それに見合った学部を選んだからといって、それでその後、非常に安定的な仕事に、職業的な自立に向けてどんどん進んでいくかというと、そういうものでもないという事実です。
 言いたいことは何かというと、そういう短絡的な思想ではなくて、多分、これは城南のほうでおっしゃっていた学習力ということにかなり近い考えかと思っているのですが、自分で学び続ける力みたいな、学ぶ基礎になるもの、そういうものを持っていなければならない。要するに就きたいことを決めるというだけではなくて、それを実現するための力というのはもうちょっと幅広いものが必要で、このキャリア教育の答申の中で、汎用的な能力という形でも言いましたが、そういう幅広い形で能力形成が必要だということです。キャリア教育の中でしなければならないことというのは、そういう幅広い能力形成ではないかということです。
 それから、進路の実現というのは、これは一方で労働市場の状態があるので、この労働市場との対話の中で修正しなければならないことが幾らもあるわけです。そういうことも含めて、そういう事態を学んで、それに対して決断して決めていく。学ぶということが常に変化の中では必要なので、そういうところまで含めなければならないということで、ただ進学するときに将来のことを考えて進学先を決めたんだというだけでは、普通科高校でのキャリア教育はうまくいったということにならないのではないかということです。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。具体的な数字で示されると、非常に、普通高校のキャリア教育の重要性ということを改めて確認できたように思います。
 では和田委員、続けてお願いいたします。

【和田委員】
 失礼します。本校の事例をお話しする前に一言申し述べたいのですが、中等教育は、当然、人間としての幅広い教養、あるいはその他のものを身に付けるというのが大前提ですので、キャリア教育について議論する場合、学習習慣を含めて本来中等教育で学ぶべきものを身に付けるということまでキャリア教育の中で掘り下げて検討するべきかどうか、むしろそれはやっていて当たり前ということで考えていったほうがいいかなという気はいたします。
 さて、本校の場合、2回前に少し学校の様子を御紹介したのですが、全員が大学進学希望者であるという学校でありまして、そこで、もちろん学習面は当然手を抜くことはできないのですが、しかし、逆に勉強だけさせていたらいいというものでもないということで、ちょうど公立学校が完全週2日休みになったとき、いわゆる週5日制に移行したときに、本校も授業は5日制にして、そして土曜日にどういうことができるかということを考えて、別紙のような土曜講座というものをやるようになりました。
 当然、進路を含めて将来自分の進んでいく道、あるいはそのためにどういう勉強をしていくかというようなことも、なかなか本校の教員だけでは指導できないので、本校の場合、OBにたくさん御協力をいただくという形で、土曜講座というものをやっております。
 今日発表いただいた2つの学校の中でもOBをもちろん活用されているとは思うのですが、お話が出てこなかったので、あえて強調しておきたいのですが、大体どこの学校もOBと同じような母集団の生徒たちが集まっているわけですから、そのOBが進んだ道というのは、彼らの進路を探っていく意味で非常に意味がありまして、それと同時に、OBの方は今の仕事の話だけではなくて、今の仕事にどういう経路をたどって就くようになったか、そういうようなことも語ってくれますので、将来の目標、どういう仕事に就くかという目標だけでなく、それに至るために通っていく道筋はどうかというようなことを考える場合にも非常に参考になるという意味で、本校ではできるだけOBの方に来てもらうようにしています。しかも、狭い意味の勝ち組の人だけではなくて、裏にもありますように、いろいろな形の人、極端な場合は本校を中途退学したOBなども来てもらって、その経緯を説明してもらったりというようなこともしております。
 それと、だんだん発展してきまして、初めは学校が講師を決めて、その中で生徒がアラカルトの中から選ぶという形だったのですが、最近は、講師の選定自体は学校でせざるを得ないですが、「こういうような講師を探してほしい」という要望を受け入れて行ったり、また講師が決まってから、生徒会を中心にして、その講師との連絡役を決めて、事前にこのようなことを聞きたいとか、あるいは先生方はこういうような話をするつもりだというような相談を行ったりして、生徒の参画度を高めています。1つの実践例として御報告させていただきます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 そろそろ、この1のテーマでの時間がもうないのですが、ほかに一、二、ございましたら御意見を伺いたいのですが。
 では渡邉委員、そして及川委員、長塚委員。3名でよろしいですか。ではこの3名ということで、渡邉委員、よろしくお願いします。

【渡邉委員】
 若干感想を述べさせていただきたいと思うのですが、このいわゆるキャリア教育が大きく取りざたされてきたのは、総合学科の設置、そこから流れが出てきているのかなと考えております。総合学科の設置を受けて、「産業社会と人間」という科目が導入されました。今日、提出いただいた文科省の資料の19ページにも、キャリア教育、産業教育の在り方についての答申の内容が出ております。「産業社会と人間」の科目に類する、そういう科目を設けていくことを検討する必要があるという内容の答申でございますが、今日の2校の発表の中にもございました、キャリア教育を進めていく上で、総合的な学習の時間をかなり利用されている状況がございます。そこで、是非今後のキャリア教育を考えていく上で、総合的な学習の時間との兼ね合いというか関係、そこも是非考慮しながら、今後の検討をしていただければありがたいと感じているところでございます。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。では及川委員、どうぞ。

【及川委員】
 感想ですが、先ほどの小杉委員の御発表で非常に腑に落ちました。普通科高校の本校においても、キャリア教育という場合には、将来就きたい仕事を考えさせて、それに見合った学部選びをさせるというそういう観点での進路指導というのが中心だったのですが、非常にそれが必ずしも将来の自己実現に結びついていないというデータを示されてよくわかりました。そういう意味では城南高校のドリカムプランをリニューアルした観点が学習力の育成に重点を置いたという意義も理解できました。今、お話になったような、「産社と人間」の視点もまさに同じではないかなと思います。ありがとうございました。

【小川部会長】
 では最後に長塚委員、お願いします。

【長塚委員】
 従来の進路指導という概念と違って、このキャリア教育というのはまだ現場に広くおりていないというか、展開されていないと思います。特に普通科の場合にはそうだと思うのですが、これまで出口指導というか、進学や就職の進路先として、どこに行かせるかということだけに終始していた進路指導を変えるためにキャリア教育という名前をつけたというふうにも聞いております。つまり、教育活動全体のプロセスの中で、社会的自立をどう育てるかということで、このネーミングは大変良いと思うのですが、普通科もいろいろあって、インターンシップをどの学校にも行わせるなどということになると、本当にこれはなかなか大変です。学校はいろいろと工夫するとは思うのですが、先ほどアルバイトはどうなっていますかという御質問がありましたが、もう義務教育を終えて就労年齢に達している高校生たちは、むしろ喜んで、進んでアルバイトをしていたり、何らかの就業体験などを部分的にしていたりするのではないかなと思います。同じ普通科と言っても、高校生の1割弱の定時制や通信制の生徒たちは相当に状況が違います。本来、定時制は就業している生徒たちが入る学校としてできたものですが、現在はそれが崩れて、ほとんどパートタイム的なアルバイトをしているというのが実態だと思います。そしてその1割弱の生徒たちは、同じ普通科の中でも、将来の仕事には結びつかない形かもしれませんが、何らかの就労経験をしているということが実態としてあると思うのです。
 そういう生徒たち、特に定時制の生徒たちは、むしろ将来正業につかないことが多いのではないでしょうか。先ほどの小杉委員の御報告を受けて、その辺の生徒たちに、かなり大きな問題があるのではないかと思います。将来に結びついていない、ニート・フリーターになってしまう可能性が高いのではないかと思うのです。ですから、この定時制の普通科の生徒たちに、もっと手厚い、充実したキャリア教育というものが必要なのではないかと特に感じます。
 そもそも、このキャリア教育は自立ということを中心概念にしているわけですが、自立は依存の反対概念です。そこで、人のお世話にならないということだけであれば、ニート・フリーターどまりでも済ませられます。その上、個人主義の時代ですから、人のお世話にならないのだから自分は自分で生きていくというような価値観が相当普及していて、若者があまり正業に結びつかないで、パートタイムで済ませているという非常に安易な生き方がそこにはあるのだろうと思うのです。
 ですから、先ほどドリカムプランのところで、これからは「貢献」というものを新しい軸にするということに、大変共感しました。やはり人のお世話にならないだけではなくて、人のお世話をするというような、人の役に立つというのが、本当の意味での社会的自立になるのだろうと思いますので、そういうキャリア教育というのが必要なのだろうと思うのです。
 そういう意味では、インターンシップ体験というよりもボランティア活動というような、人のために役に立つような体験というものをもっと大事にしていく必要があるのではないかなという気がしております。
 国際比較で日本の子供たちが、もう小学校の高学年の段階で、自分が役に立っていない、自己効力感が薄いというふうにも言われております。つまり、自分は何らかの役に立つのだというような、そういう自立の基礎になる部分を育てておかないと、高校生になって役に立つ貢献というような方向に価値観を高めていくことができないのではないか。そういう意味では高校だけの問題ではなくて、キャリア教育は小中高一貫してやっていくべきだと思います。ただし、学校が生徒たちにとっては社会ですので、その中でできる活動は、イベントだけではなくて、部活動であったり、あるいは生徒会活動であったり、そういう中で社会性というのは学べるのであって、そういうものをこのキャリア教育の方面から見直していくことが大事なのではないかと思います。
 もう1点は、普段の授業が大切であって、やはりなかなか問題解決型のような授業になっていないことが課題ではないかと思います。先ほどドリカムの御報告の中に、数学の授業でしたか、最初に予習をやってきて、それから生徒同士で問題の解き方についていろいろと議論をするということでした。そういう、いわゆる問題解決型に持っていくような授業、生徒が参加していくような授業を、ふだんの一番大事なこととして、もっと改めていく必要があるのではないかなという気がしております。
 文科省の資料の御説明の中で、理数系の学力は維持されているけれども、国際的に興味とか関心が薄いとか、読書についても同じだとありました。そこで実は、キャリア教育によって学ぶ意欲の向上にもつなげていくのだというのですが、そのときに大事なのは、やはり学び方、あるいは教え方を変えてというふうにはならないのではないかということを強く感じております。長くなりましたが以上でございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、そろそろ、1つ目の柱はこれで終わりたいのですが、よろしいでしょうか。では、これで1つ目の柱を終わって、次に2つ目の柱である、専門学科等における職業教育の充実というテーマに移っていきたいと思います。
 最初に、事務局のほうからその関係資料を御説明いただきます。よろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】
 それでは、資料5を御覧いただきたいと思います。職業教育につきましては、キャリア教育と同様にこれまで中央教育審議会のキャリア教育・職業教育特別部会等、様々な会議において検討がされておりまして、先ほど春山課長補佐からも御紹介いたしましたように、中央教育審議会答申では、この職業教育を「一定または特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力、態度を育てる教育」という形で定義をしております。以下、関係するデータのほうを御紹介させていただきます。
 まず、2ページ目の図表を御覧ください。これは学科別生徒数の構成割合の推移を掲載しておりますが、普通科は最近20年間は約7割で推移しているのに対しまして、専門学科、中でもいわゆる職業学科につきましては年々減少しておりまして、近年は約2割という形になっております。普通教育と専門教育を選択履修を旨として総合的に施す総合学科ですとか、あるいは理数科・外国語学科といった職業系以外の専門学科につきましては、生徒数・学科数ともにやや上昇しているという状況になっております。
 1枚おめくりいただきますと、3ページ、4ページで折れ線グラフのほうをお示ししておりますが、これがそれぞれの分野ごとの生徒数と学科数の推移を、学科別のそれぞれ分野ごとにお示ししたものでございます。
 5ページが、これは平成22年度における学科数と生徒数を円グラフで表したものですが、このうち職業学科は学科数が全体の約31%、生徒数は全体の約20%という形になっております。しかしながら、これは平均値といいますとこういう形になりますが、実は6ページ目のグラフを御覧いただきますとおわかりいただけますように、各都道府県別に設置されている学科数を足し上げたものですが、この学科数は都市圏ですとか面積の広い北海道で大きくなっております。
 そして、1枚おめくりいただきまして、7ページ目のグラフでございますが、こちらは各都道府県内の学科数の割合を示したものでございますが、各県ごとに見ると非常に、先ほど申し上げましたようにバラツキがございます。特徴としては、九州地方では専門高校を設置している割合が高くなっているということが見て取れると思います。
 8ページは、今度は県内の生徒数を都道府県別に表したものでございまして、9ページが県内における生徒を所属学科別に表したものでございます。こちらもやはり学科数同様、九州地方で職業学科に属する生徒の割合が高くなっているところがわかります。
 10ページを御覧いただきますと、この表は学科別の就職状況の推移を表しておりますが、学科別の就職率は工業、福祉、情報と農業、職業と水産の順に高くなっております。また、看護学科の就職率が水色の線でございますが、平成17年度に大きく減少しておりますが、これは平成15年度からの現行の学習指導要領の実施に伴いまして、高等学校の専攻科の2年間を含む5年間の一貫課程による看護師養成教育が導入されたことが原因だと考えております。
 ちょっとページが飛んで恐縮ですが、20ページのスライドに飛んでいただきたいと思います。専攻科というものを簡単に紹介させていただきますと、学校教育法におきまして、高等学校には、精深な程度において特別の事項を教授し、その研究を指導することを目的といたしまして、修業年限を1年以上とする専攻科を置くことができることが規定されております。平成22年度では137の高校に設置をされておりますが、現状では職業学科、特に看護学科と水産学科に多く置かれているということでございまして、先ほど申し上げました看護学科の5年間の一貫教育というのは、この専攻科を活用して行われているということでございます。
 また11ページにお戻りください。こちらは進路別の割合を御覧いただいたものですが、水産・工業・福祉・農業は就職者が全体の50%前後と、普通科に比べて非常に高いことがおわかりいただけるかと思います。
 また、具体的な就職先がわかりますように、12ページ、13ページでは職業別と産業別に分けて就職先を表しております。例えば農業ですとか水産というところですと、卒業者の進路としては必ずしも、直後の進路としては農業や漁業に従事した者の割合は高くないということが見て取れるのですが、こういったものは一般企業等に就職された後に、御実家の農家や漁家を継がれるといったケースもあるのではないかと推測をしております。
 14ページは都道府県別の就職率を表しております。高等学校卒業者全体における就職率を表しておりまして、大学や専修学校等へ進学する者も多くおりますので、全国平均の就職率も15.8%と低くなっております。また、その進学率が高いと考えられる都市部の就職率は、特に今、低くなっております。
 15ページから19ページにかけましては、これは昨年度から今年度の前半にかけまして、文部科学省におきまして今後の高校教育の在り方に関するヒアリングというものを行っておりまして、その際に、東京大学大学院教育学研究科の本田先生から御提供いただいた資料でございます。
 15ページには、調査の前提といたしまして、入学者選抜試験の難易度が同程度の普通科高校と専門高校の高校2年生を対象に、中学時代はほぼ同じ成績で、同じような中学生活を送ったと思われる生徒さんを対象とされて比較調査を行われたということが書かれております。
 調査結果が16ページ以降という形になりますが、16ページにございますように、専門高校に進学している生徒のほうが、「この学校に入学したかった」だとか、あるいは「進学や将来の仕事に役立つと思ったので入学した」といった積極的な進学の割合が高くなっていることがわかります。また、17ページにございますように、授業におきましても、専門高校のほうが生徒数が25人以下である割合が高くて、生徒自身が目標を設定してそれに取り組む授業ですとか、一定の期間をかけて課題を達成する授業等の実践的な授業が多いと受けとめられていることがわかります。加えまして、18ページや19ページでは、生徒の勉強に対する姿勢ですとか、学校に対する満足度も高くなっていることがわかりまして、おおむね入試の難易度が同程度の場合、いずれにつきましても専門高校のほうが好ましい結果が出ているということがわかっております。
 続きまして21ページ、22ページは、先ほど御紹介しました中央教育審議会答申の関連する部分を抜粋させていただいたものでございます。専門学科につきましては、その中で体験的な学習や地域企業と連携を図った現場での長期間の実習等を通じて、実践的な教育活動を積極的にすることが必要ですとか、あるいは、職業教育に関する学習成果を客観的に評価する指標を設けるですとか、あるいは、高等教育機関におきまして、高等学校の専攻科の学習を単位として認定することなどについて、積極的に検討し、早期に実施することが必要であるといったような提言がなされております。
 一方、文部科学省としての取組は、1枚おめくりいただきまして23ページで掲げておりますが、新学習指導要領におきましては、専門学科に関しましては科目の構成や内容の改善を図っておりまして、現行の8教科169科目から8教科188科目に改訂をしておりますし、総則におきましては産業現場等における長期間の実習を取り入れることを明記しておりまして、各教科において社会人講師を積極的に活用するなどの工夫に努めるといったことを明記するといった改訂を行っております。
 最後に24ページから、専門高校における特色ある職業教育の実践例を掲載しております。この後、愛知県の教育委員会の取組を御発表いただきますので、この場ではそれぞれ簡単に触れさせていただきますが、まず24ページは、これは岐阜商業高校の取組でございます。中央大学の商学部と連携をされておりまして、日商簿記検定一級ですとか全経簿記検定の上級合格者で一定の評定以上の成績と、校長先生の推薦がある場合に、中央大学の会計ゼミを受講できるといったようなシステムをとっていらっしゃいます。このゼミは土曜日に中央大学の先生が高校までいらっしゃって行われるということでございますが、そのゼミの成績と面接で大学に入学することができるという形になっております。この制度を利用して、過去5年で12名の方が公認会計士試験に合格されているということで、特に大学2年次で2名、その他大学在学中に7名と、割と早期に合格されているというような特徴もあるようでございます。
 25ページは熊本県の農業高校の事例でございます。特にこちらでは現場実習におきまして、地元の農業法人等と提携をされて、地元の資源を活用した商品等の開発、1校につき1つ以上は開発するということを目標にされて活動をされております。その結果、例えば菊池農業高校では、菊池市の特産品であるヤーコンの葉を練り込んだヤーコンソーセージですとか、あるいは鹿本農業高校では小麦粉のかわりに米粉を用いて、コメロンパンといった商品名だそうですが、そういったものを開発されているということでございます。
 26ページは茨城県の工業高校の事例でございます。こちらでは、地元の商工会議所と連携されて、デュアルシステムを核とした生徒の企業実習ですとか、あるいはICタグや省エネカーの研究など、地元企業と一体となった事業を展開されております。
 最後の27ページは、東京都立六郷工科高校の事例でございますが、こちらでも産業界と高校が協働で職業教育を展開しているということで、長期間にわたってものづくり企業での職業訓練を行って、高校でそれを単位認定しておられるという取組をなされています。
 事務局からは以上でございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、皆さんから意見を伺う前に、愛知県教育委員会の嶋田麻知代課長補佐から、愛知県における職業教育の充実についての取組を御報告いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【嶋田課長補佐】
 失礼いたします。本日はこのような貴重な機会を与えていただきましてありがとうございます。
 本県は、都市部で比較的職業学科が多く残っておりまして、普通科と同等に、またそれ以上に評価を得ているということで、本日はお話をいただけたのではないかと思っております。
 それでは、愛知県における職業教育の現状を御報告いたします。本県は、製造品出荷額等が34年連続して全国で1位であるとともに、農業や商業も盛んであり、製造業を中心とした様々な産業が集積した、全国有数の産業立県でございます。
 このような中、本県の専門高校は、長年にわたり地域の産業界を支える人材育成において重要な役割を担っており、産業界の職業学科への期待は依然として大きいものがあります。
 現在、職業に関する学科を、全日制高校146校の約40%に当たる57校に設置し、情報科を除くすべての職業学科を配置しております。このうち、職業学科のみの県立高校が34校あり、ほかに名古屋市立の職業高校が4校ございます。
 本県では、中学校卒業者数の減少等を踏まえまして、平成13年度から平成22年度まで、魅力と活力ある学校づくりを進めるために、既設校の統廃合を含む、県立高校の再編整備を行いました。魅力ある学校づくりとして、総合学科の設置、普通科に専門科目を導入したコース制の設置、時代の変化に対応した専門学科の学科改編を行いました。
 この再編整備計画の実施を踏まえまして、また、地域産業界の期待に応えるために、教育委員会として次の3点に留意して職業学科を支援してまいりました。まず、普通科と職業学科の設置比率の維持でございます。総合学科が増えたことによりまして普通科が減り、職業学科も減らさなければいけないという現状が起こりました。また、2点目といたしましては、職業学科への安定的確保に向けた魅力ある学科づくりでございます。本県の中学生も、やはり普通科志向、そして総合学科の人気が高いという現状がございます。3点目は、産業教育に対する理解の促進であります。中学生や社会の理解、産業教育の魅力や充実した内容について、まだまだ理解が不足しているということが見えてまいりました。
 まず、普通科と職業学科の設置比率についてでございますが、学科別の学級数の変化を、再編前と現在を比較いたします。普通科が121クラスの減に対しまして、職業学科が18クラスの減、総合学科が50クラスの増、英語科等その他の学科が3クラス増でありまして、普通科のクラス減に比べて職業学科のクラス減は抑えております。そして、13年度も23年度も、普通科と職業学科の学級設置比率はほぼ3対1の割合となっております。
 本県では、産業教育振興法を受けて、県の条例に基づきまして、愛知県産業教育審議会を設置しております。他県におきましては未設置であったり、休止しているところもあると伺っておりますが、本県におきましては毎年、審議会を開催いたしまして、3年に1度答申をいただいております。平成6年2月の答申では、生徒の減少期に向けた対応といたしまして、普通科と職業学科の設置数の比率を75%・25%で維持することが示され、以後、この答申に基づいて募集計画を策定してきました。さらに平成21年2月の答申では、総合学科が増えたことにより、職業学科の比率を25%を超えることも含み、柔軟に設定していくということが確認されております。
 この器を十分に満たす入学志願者の安定的な確保を図るためには、生徒にとって魅力ある教育活動を推進していくことが重要であります。この取組が職業学科の活性化や高い就職内定率と低い離職率等にもつながっていくものと考えております。平成23年3月に卒業した県立職業学科高校生の就職内定率は98.9%であり、ほぼ全員が就職先を決定して巣立っていきました。ちなみに普通科は89.9%の決定率でございました。また、本県高校卒業生の3年以内の離職率は全国平均より低く、最新のデータでは29%でありました。
 それでは、具体的な教育活動について説明させていただきます。各分野のプロから直接指導を受けたり、現場等での体験を重視したりするなどして、本物を知ることのできる、産業界との連携は職業学科の大きな魅力であり、学科の活性化につながっております。例えば農業高校では、地元の農協や農家と連携して、栽培技術の開発や普及を行っております。写真は、生徒が考案し、栽培方法を確立した四角いメロンです。現在は農協と連携して、国内のデパートで販売するとともに、海外へも輸出しております。
 工業科の生徒を対象とした企業の研修施設や、生産現場での比較的長期の実習につきましては、平成16年度から県あるいは国の事業を活用して、形を変えながら継続し、現在は県の事業として、すべての工業高校が地元企業の協力を得て実施しております。参加した卒業生は地元企業で活躍するとともに、技能五輪で金メダルを獲得した選手も育っております。
 また、衛生看護科におきましては、目指せスペシャリスト事業、国の事業でございますが、指定で研究をさせていただきました。また、水産科におきましても、担い手プロジェクト事業、そして商業科におきましてもデュアルシステム等の研究をさせていただきましたが、これにつきましては学校のほうが自立し、国の研究指定が終了した後も、しっかりと現在、実践をしております。
 商業科や家庭科では、企業と連携した商品開発や販売が活発となっております。写真は生徒が考案したノートを「記帳面」という商品名で販売しているものです。
 このような産業界との連携を強化するために、教育委員会では、今年度から「夢はぐくみサポーター制度」を開設いたしました。これは、小中学校、高等学校、特別支援学校でインターンシップ等の受け入れや社会人講師の派遣に協力していただける企業を募集し、認定書を発行するとともに、協力企業名を教育委員会のホームページに一覧表にして公開するものであります。
 これは協力企業に発行する認定書です。
 魅力ある教育活動には、地域社会との連携も重要であります。水産高校では、写真のように、アマモの再生を行い、水質浄化や漁場の確保に貢献しております。福祉科では、敬老の日に校内一日デイサービスを実施し、高齢者の体調確認やレクリエーションをするなど、日頃の学習を生かした特色ある取組を行っております。
 今年度の産業教育審議会第一次まとめでは、新学習指導要領を踏まえた、各学科の今後5年間の計画を示しました。自然エネルギーの利用等をテーマにした学習活動の推進や、コミュニケーション能力の向上等、各学科の特色を生かした具体的な計画となっております。
 また、現在、本県の職業学科の生徒は、約6割が就職、約4割が進学しております。多様な進路希望に対応するため、教育委員会としては大学との連携についても協議を進めております。今年度から、県教育委員会と県内すべての四年制大学との連携推進のための協議の場を設けております。また、特に職業学科の高大連携を促進するため、各職業学科の部会をそれぞれ開催し、関係大学の教授と高校の校長、教育委員会事務局が出席し、具体的な連携方法について協議を進めております。さらに、現在、すべての四年制大学の、高校生を対象とする公開講座やオープンキャンパス等の情報をまとめた高大連携マッチングサイトを開設する予定で準備を進めております。
 最後に、産業教育に対する中学生や保護者、あるいは社会全体の理解を促進するための取組についてお話をさせていただきます。
 職業学科の取組をより多くの人たちに知ってもらうために、学習内容や日頃の生徒の学習成果を社会へ発信することが大切であります。平成6年度から平成12年度まで開催しておりました愛知県産業教育フェアを、10年ぶりに、少し形を変えて、「あいちさんフェスタ」として再開しました。県内2地区で開催し、生徒の研究発表や作品展示、作品の販売等を通して、職業学科に学ぶ生徒の生き生きした姿を社会へ発信しております。
 平成25年11月には、全国産業教育フェア愛知大会の開催を予定しております。この大会が本県職業高校のより魅力ある教育活動の展開につながり、また、産業教育に対する県民の理解がより深まることを期待しております。
 さらに、スライドにありますように、平成26年に本県で開催を予定しております技能五輪全国大会や、平成27年に開校予定の、専攻科を併置した新しい工業高校としての総合技術高校の設置を通して、ものづくり県愛知の基盤を一層確かなものにしていきたいと考えております。
 また、職業学科で学んだ生徒や保護者の満足度は、非常に高いと認識しております。今後も中学生や社会のニーズを踏まえ、学科改編も含めて、新しい時代の変化に対応した魅力ある学科づくりをしていくとともに、実践的な職業教育を充実し、全国産業教育フェア愛知大会を契機として、学校と地域社会、産業界が一体となって、将来の本県の担い手を育成する気運を高めていきたいと考えております。
 これで愛知県における職業教育の現状についての報告を終わります。ご清聴ありがとうございました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では最初に、先ほど事務方のほうから御説明があった、資料5の専門学科等における職業教育の充実についてと、今御報告いただいた、愛知県における職業教育の現状について、何か、その内容について御質問や御意見はございますでしょうか。
 では小杉委員、どうぞ。

【小杉委員】
 文科省に対しての質問なのですが、まず、ここの事例の中で、ある意味ではいい事例ということで三つ四つ出されたうちの2つが、地域産業の担い手プロジェクトだと思うんです。私もこのプロジェクトは大変いいプロジェクトだと思いますし、あるいは愛知のほうでも、愛知の場合はその担い手プロジェクトが終わった後に県単事業としてやられているようですが、この担い手プロジェクトの終わった後、どれだけそれが各都道府県で残ったかというか、都道府県の中でその事業を愛知のように継続するというところがどのぐらいあったのかということがもしわかったら教えていただきたい。これが質問の1点目です。
 もう1点目は、実は私、先ほど説明しましたものの中に書いてあった、飛ばしたところなのですが、学校卒業後の、この文科省の資料の中では11ページになりますが、卒業後の進路というときに、これは男女一緒に書いていますが、男女別々にしたときに、非常に前から私が気になっておりましたのは、男子の場合には職業高校卒業者の無業になる比率というのは普通高校よりもかなり少なくて、職業教育の成果みたいなものが出ているなと思うのですが、女子に限りますと決してよくはない。普通高校よりも無業や一時的な雇用につく人の比率が高いぐらいの状況になっておりまして、結局、労働市場にジェンダーがあるという、そういうことが大きな問題ではあるのですが、その辺、多分、工業高校は労働力需要にかなり見合っているので、求人が多くて、それなりに安定した移行ができていると思うのですが、女子の多い商業科高校など、労働力需要に本当に見合った教育になっているのか、これまで事務・販売系等にウエートを置いてきた商業教育について、特に女性の商業教育について、課題というようなものは感じられているか、ジェンダーを絡めて進路を見たときの課題というようなことを、もし何か考えていらっしゃることがあったら教えていただきたいと思います。

【小川部会長】
 2点ありますが、よろしいでしょうか。

【袖山主任視学官】
 まず1点目でございますが、担い手育成事業が終了いたしまして、その後、取組をいただいたところについて、引き続き取組をいただいているかどうかというのは、詳細なデータについては今、調査等させていただいているところでございますので、数字的なものはちょっと今は持ち合わせていないのですが、幾つか、実際に取り組んでいただいた地域で聞いたところでは、引き続き一定の取組をしていただいているところがかなり多いという実感は持っているところでございます。それが1点目でございます。
 それから2点目はなかなか難しい課題ではあろうと思っておりますが、やはり農業、工業といった分野と商業といった分野、そういった分野の特性によって、男子と女子の比率が違ってくるといったところもあるわけではございますが、商業などでも男子は必ずしもそれほど状況は悪いということではないということもあり、教育内容そのものについては、基本的にはこれは男子も女子も同じような教育をしているという認識をしておりますので、やはり労働市場側の受けとめ方という部分が影響しているのではないかとは考えてございますが、一方で、やはりそういった産業ニーズ、産業側の人材ニーズとのマッチングというものを十分意識しているかといったところ、こういったところは当然検証はしていかなければいけない課題だとは思っております。以上です。

【小川部会長】
 今の1と2に関係する、もしもデータ等々が整理できるようであれば、また後でもこの部会に提出していただければと思いますが、よろしいでしょうか。
 そういうことも含めて、小杉委員、よろしいですか。

【小杉委員】
 はい。

【小川部会長】
 ほかにどうでしょう。ではアキレス委員、よろしくお願いします。

【アキレス委員】
 1つ質問をさせていただきます。スライドでは3ページ、4ページ、5ページですが、学科別の生徒数とか学科数の推移というデータが載っています。ここに出ている学科というのは、実際に企業が求めている専門性とどのぐらいマッチしているのか興味があります。
 例えば、情報のところが非常に少ないという印象を持ちました。企業にいる立場としては、多分、若い方たちは非常に小さいころからコンピューターに慣れ親しんでいて、情報科学とか情報サービスのところは能力を発揮しやすいところではないかなと思います。企業としてもそういう人材を求めていますが、データに出ている専門学科の種類と、実際にその後、企業で使われるだろうと思われる専門性と、どのように整合性をとっていらっしゃるのかを伺いたいと思います。

【小川部会長】
 では、もし最初に文科省のほうで、その点について何かお考えがあればお答えいただいて、後の問題は、その地域の労働力需要と専門学科をどう構成するかというのは、これは県の施策としても非常に重要だと思いますので、愛知県の事例とかお考えなども。また東京都で何かあれば、直原委員のほうからでもお答えいただければと思います。
 では、まず事務方のほうからお願いします。

【袖山主任視学官】
 今、小川部会長に御発言いただきましたように、基本的にそれぞれの学科、どのような数を設置していくかというのは、設置機関である都道府県あるいは市町村などがそれぞれ判断を、地域の産業の人材ニーズなどに基づいてそれぞれご判断いただいているところでございますので、国として一定の方向性を持って決めているといった内容はございません。
 そういったこともございまして、その次に各県ごとの状況というのもつけさせていただいておりますが、やはりかなり地域によって、学科の設置状況というのはまちまちであるというようなことが見て取れるわけでございまして、まさにその地域のニーズに応じた学科構成をしていただいているものと考えております。
 そういった中で、情報が非常に少ないというお話がございました。専門学科の情報というもの自体、制度として扱われましてまだ日が浅いということもございますが、確かに御指摘のとおり、創られて日が浅いということを除きましても、その増え方というようなところでもなかなか大きく数が増えているという状況ではないというのは事実でございます。
 この情報というのは、いわゆる職業として、技術者なりとして情報というものを学ぶという観点であるわけでございますが、なかなか高等学校段階での技術者養成ということを考えたときに、どういったニーズがあるのかといったところがなかなかつかみづらい。やはり大学、あるいはもっと高いレベルでの教育というところでの産業界のニーズが非常に高いということはあろうかと思います。高校段階での技術者ニーズというのがどの程度あるのか、この辺のところはなかなかつかみづらいというようなことも、このような状況になっていることに影響しているのではないかと考えています。

【小川部会長】
 では、愛知県の取組について、嶋田先生、よろしくお願いします。

【嶋田課長補佐】
 愛知県の方針についてお話をいたします。情報関係の学科は、工業科と小学科の中にございます。商学科として、例えば工業高校であると、今、文科省から説明があったように、情報技術者を育成する学科といたしましては、例えば情報システム科とか情報技術科等がございます。
 それから、商業科のほうは、情報処理能力を育成するということで、情報会計科、情報処理科、情報科、ざっと数えましても14個設置しております。教科「情報」と教科「福祉」は新設された教科ですので、その際に、情報科として、本県としては独立させる必要はないと判断し、そのまま商業科の小学科として設置をしております。以上です。

【小川部会長】
 先ほどの御報告いただいた6ページに中で、普通科・職業学科・総合学科の増減を示すデータがありますが、この10年間でドラスティックに普通科を減らして職業学科と総合学科を増やしてというか、職業は普通と比べるとかなり抑制して、総合学科を増やしていますよね。労働力のいろいろなニーズと、こういう高校政策というのは、どういう手続とか仕組みで調整しているのかということも含めて、少しお話しいただければ、アキレス委員の御質問に答えるのかなと思うのですが。

【嶋田課長補佐】
 わかりました。産業界からの要望は、産業審議会の委員の方から伺ったり、キャリア教育の会議、そして工業のものづくり関係の会議がございますので、そういうところで調査をいたしたところ、やはり職業学科を卒業した生徒を求めていると。即戦力になる生徒を求めているという現状が愛知県はございますので、再編整備におきましては職業学科を削るというのは最低限にするという方針が出ております。
 総合学科につきましては、これはどちらかというと、統廃合の発展的統合ということで総合学科を設置いたしました。職業学科と普通学科を併置している学校と普通科単独校、2校を統合いたしまして総合学科にするという形で、職業学科を、本県は統合したものは1校のみということで、このような設置状況に現在なっております。
 また、産業界からのニーズとは少し離れるとは思うのですが、普通科におきまして、生徒指導的に大変厳しい学校もかなりございまして、そういう点で体験的な学習を重視するということで、総合学科、それから職業学科の設置をこのような比率で守っているということでございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、東京都の例ということで、直原委員、よろしくお願いします。

【直原委員】
 はい。まず、産業界のニーズとの関係ですが、まず、東京のものづくり産業を維持発展させるという、そのための人材を都の工業高校から一定の人材を供給していかなくてはいけないということから、引き続き都立の工業高校につきましては、規模も基本的には維持していきたいと思っています。
 他方、先ほどちょっとお話が出ました商業高校ですが、都立の商業高校、従来やはり教育活動の基本は簿記の勉強だったんです。これがもう現実には、これだけ会計ソフトが普及し、言ってみれば簿記の、本当は難しい勉強だと思いますが、従来の、簿記を勉強した生徒が欲しいという、そういう労働ニーズが激減しております。そういう意味で、商業科については、今の産業界のニーズとの調整が必要だろうと考えています。
 あと、情報の分野ですが、こちらは東京都の場合、まだちょっと取組がおくれているのかなと思っています。現実には、東京の場合、この部分は高校を卒業した後、あるいは大学を卒業した後、専門学校で産業界のニーズに応えているのではないかなと思います。こちらは、都としてはもう少し、都立高校としても情報の分野にもうちょっとできるのではないかなと、研究をしたいと考えています。
 それから、大きなもう1点で、普通科と職業科とのバランスですが、東京はもしかしたら全国の中で特異になるかもしれませんが、東京の場合、極めて大学進学志向が強い、そして普通科志向が強いという要因がございまして、この十何年間、職業科を減らして総合学科をつくってまいりました。今後ですが、もう少し慎重に見ていかなくてはいけないと思っていますが、先ほどの前半の議論との関係でいいますと、実は職業教育を受けさせたい生徒が普通科にかなりいる。普通科の学校の中の、大ざっぱに言えば2割から3割程度の生徒は、本当は中学を卒業する段階で専門高校に進学させることが、本人の将来にとってよかったのではないかなと思うのですが、今の保護者の経済状態などを考えますと、なかなか中学を卒業する段階で、その子の適性に応じて専門高校を選択させるというのは、現実に非常に難しい状況になっていると思います。
 ですから、現実的には、普通科高校で受け入れて、普通科高校に入ってから適切なキャリア教育、そしてさらに言えば職業教育を普通科高校でも実行して、卒業後、先ほどのように進路未決定にならないようにしていきたいと考えているところです。以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。追加ですか。どうぞ。

【嶋田課長補佐】
 商業科の件でございますが、やはり本県も商業高校の女子の生徒の求人が非常に少ないということで、1回目で合格する生徒は約半分と聞いております。2回目、3回目で、何とか最後は決まっていっているわけですが、進学を希望する生徒もかなり商業科では多くなっておりまして、従来の商業科目のみを半分程度学習するというのではなくて、進学コースを設けたりとか、商業科目と普通科目、英語ですとか、自分の進路に合わせて選択できるようなカリキュラムを、現在、商業高校では作成して実践しているところでございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 今、2つの、東京都と愛知県の労働力需要の動向と専門学科の設置のいろいろな取組のお話をいただきましたが、アキレス委員のほうから何か御意見はございますか。

【アキレス委員】
 ありがとうございます。理解できました。
 もう1つだけつけ加えさせていただくと、どのくらい企業と皆さんのほうで、ニーズのすり合わせをする機会があるのでしょうか。地元でやっていらっしゃるのかもしれませんが、せっかく職業というところをメインに勉強していただいているので、即戦力が欲しい企業と、ミスマッチが起きないように、コミュニケーションを図っていくことが大事なのではないかなと思いました。

【小川部会長】
 何か特別にありますか。なければ、時間もありますので、一応今、御意見ということで。
 あと、時間が5分しかないのですが、文書で御発言いただいている小林委員と野上委員の発言で締めさせていただきたいと思うのですが、ほかにどなたかございますか。
 なければ、小林委員と、最後に野上委員ということで、よろしくお願いします。

【小林委員】
 時間がないので、では端的にいきたいと思います。資料7-2を見ていただければと思います。
 今日は職業教育ということですので、専門高校を代表して1名で来ておりますので、多くのお話をさせていただきたいと思っていますが、まず現状なのですが、ものづくり教育の充実が忘れられて40年が経ちました。本当にこれは、昭和45,6年の大学紛争以後、工業高校を中心とする専門高校への進学が急に普通科志向に変わりまして、これと共に、様々な、オイルショック、あるいは経済冬の時代などもありまして、このものづくり教育が本当に忘れられた形で過ごしてきているのが現実だと、私は思っています。
 産業教育振興法によりまして、昭和30年代後半、全国で多くの工業高校が開校しまして、充実した技術者を世の中に送り出してきたところなのですが、昭和45年ごろから高校進学率が80%を超えて、普通科高校の増設がものすごく全国で拍車がかかりました。事務局配付の資料で、昭和50年ごろから急増しているのはよくわかるところでございます。
 高校受験の激化が偏差値教育の輪切り入試につながりまして、この輪切りによって、普通科志向の強くなったところで、専門高校に弊害をもたらしてきました。工業高校生は希望者のほぼ100%の就職率を今、確保しております。就職後3年間の離職率でも、平均で29%に届かない結果が、近畿地区、東海地区の工業高校の先生たちが熱心に調べた結果、そういう結果が出ております。東京都も30%にいかない現実です。ですから、よくちまたで言われている「7・5・3」という離職率で、5と言われていますが、実際に専門高校のほうは本当に低い値です。5にしているのはいろいろなところから出ている普通科高校卒業生の割合と思っていただければありがたいと思います。なかなか、3年後の離職率を調べる方法は、学科別にできない現実があるので、一括りで「高校卒、3年後5割」という結果が出ておりますが、是非工業高校を中心とする専門高校の子たちが頑張って、その職を全うしていると思っていただければと思います。
 そんなこんなで、世界のトップ技術を支えているとは思っているのですが、技能五輪国際大会では、年々、毎回毎回、優勝者が減少傾向にありまして、これがやはり次の課題になっていくだろうなと思っています。
 2番目、学習面の充実ですが、ものづくりというのは、才能を伸ばすというのを第1回目の委員会でやりましたが、ものづくりというのはやはり若い感性の中で、失敗と成功を繰り返して経験し、それで体得していくことによって、本当に伸びていきます。ですから、小学校段階より、一本筋の通った教育、技術教育がなされていない現実が、今現在、大学の工学部離れや――理数教育離れと言っていますが、私は工学部離れのほうがやはり厳しいのではないかと思っています。あるいは技術者の質の低下につながっていると思っています。
 安全神話が崩れてきたとマスコミ等で騒がれていますが、いわゆる幼児期、少年期、青年期、それぞれの各年齢段階での技術教育が十分でないためと私は考えております。中学校の技術家庭科の授業時数が激減したことも、これは大いに原因があると思います。
 ちょっと裏面を見ていただきたいと思います。これは私が調べた時数ですが、昭和37年度、47年度、平成5年、14年、20年、24年と比べていただければわかるように、技術家庭科は、昭和37年あたりは1年から3年までで315時間勉強していたものが、今年度、平成24年度からは、3年間で技術も家庭科も含めて175です。昭和37年の315というのは、男子学生向き、女子学生向きということで、男の子は技術を中心として、女の子は家庭科を中心とした授業時数ですので、それから比べても大変、ものづくり教育は劣悪な状況になっています。
 現在、中学生は、1年生は70時間ということは週2時間の授業です。週2時間の授業で、1時間が技術、もう1時間が家庭科で、3年間で4つの大きな分野を勉強します。そうしますと、学校行事等もありますので、中学生がものづくりを楽しんで勉強するというのは、今現在、本当に少なくなっている現実です。
 また、1人の先生が40人の生徒を、のこぎりを持たせたりとんかちを持たせたりドライバーを持たせたりする授業は、今の中学生には多分厳しいかと思っています。業者がつくっているキット製品を作らせても、未完の子が随分いると聞きます。それはやはり授業時数の少なさです。その結果、ものづくりに楽しさを見出せないまま上級学校に行ってしまうのかなと。
 もう1つは、中学校の規模によって、学級数によって、常勤の技術科の教諭が配置されない学校が現在多くなっています。そうしますと、非常勤講師がその時間だけ行って教えるというのは、なかなか身に付けさせることができません。そこら辺も大きな課題です。
 それから、次の○にいきますと、進学指導で、今言ったようなことになっています。工業高校を含む専門学科に在籍するすべての生徒が、履修が25単位を下回らないとなっていますが、これは専門学科の充実と技術の定着を図るためには、今後、履修習得を再度30単位以上とするべき時代に来ているのだろうと思っています。これはどういう形で伸ばしていくかはなかなか議論があるところですが。
 それから、職業教育及び技術教育にも不易と流行があると思います。教員の資質向上のための研修制度の充実が、本当に今、必要なのですが、なかなかこれがうまく回っていない現実です。先ほどアキレス委員から出ました情報科の話ですが、ウィンドウズが入ってから、もう本当に日進月歩で、教員が勉強して、さあ生徒に教えようと思ったら、もう次のソフトがあったり、次のコンピューターがあったりで、とてもじゃないですが情報教育は、もう本当に後追い後追いで、どうしても生徒に十分な学習が保証できていない現実はあります。
 この情報教育が入るおかげで、ものづくり実習も本当に減ってきています。先ほど言いました中学校の技術家庭の中にも情報が入りましたおかげで、それまで木工実習、金工実習、あるいは機械、電気、製図、様々なことができていたのが、今はできていません。
 3番目、制度の充実ですが、就学前、小学校、中学校、高等学校、大学、大学院と、職業教育を一貫してつかさどる組織がやはりないのではないか。ものづくり国家、工業技術立国として人材育成をしていくところで、やはり一本筋の通ったものが必要だろうと。
 そう考えますと、文部科学省の組織ですが、昭和25年5月に職業教育課が発足して、様々な政策を展開してきています。それから平成13年1月に、中央省庁組織の改編によって文部科学省が誕生し、そのとき、職業教育課は廃止されました。参事官室が設置され、職業教育を所管することになりました。平成21年4月に、児童生徒課産業教育振興室が発足して、職業教育を所管するところですが、やはり私は、権限がある、職業教育に責任ある立場の組織をもう一度つくって、ものづくり国家の人材育成を図るべきだと思います。経済産業省にはそういう組織があり、厚生労働省にもあります。
 あと、最後ですが、予算の交付金についてですが、現在、一括交付金で地方に出ています。以前のように意図的・計画的に、産業教育振興法の趣旨にのっとった形で地方公共団体に交付していただき、今、工業高校の各機械類、更新がきかなくて、古いまま使っています。お隣の韓国の工業高校生が東京に来て見学していくのですが、大変古い機械を使っている現実を見て、韓国の生徒たちは優位感を持って帰っていきます。
 先ほど、小杉委員がお話ししたところ、ちょっと商業高校の応援をしたいと思いますので、小杉委員のプリントを見ていただきたいと思うのですが、中段のところに、商業高校をはじめ、女子の専門高校卒業生については、普通高校卒業生より未就職者比率が高い事態が続いているというのは、多分、小杉委員の3ページ目の上の段、表2の女性のところの商業・ビジネス系で、その他が48.5%出ている、その上の普通高校の子が26.7%なのでということで、多分ここの比較だと思うのですが、けれども、文部科学省が出してきたこの資料を見ますと、商業高校から就職したい子はほとんど100%、工業高校と同じように就職していますし、先ほどの出口の部分で、昔みたいに金融系、事務系、それから百貨店等のサービス系が現在少なくなっている現実は確かにありますが、商業科の子供たちは頑張ってきちんとやっています。ですから、小杉委員のお話は、少しまた考えを改めていただければありがたいなと思っています。
 専門高校は、この数値に表れない、魂を植えつけています。例えば機械屋は機械屋、電気屋は電気屋という3年間の話を徹底的にさせて就職させます。就職してもどうしても折り合いがつかなくても、これは東海地区の工業高校の先生が調べた結果ですが、離職しても、電気を学んだ子は電気系の企業に行っています。ですから、そんな形で、専門高校の役割は非常に有意義な点があるということを御理解いただければと思っています。終わります。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 時間が大分過ぎていますので、最後に野上委員、簡潔にお願いいたします。すみません。

【野上委員】
 私からは、本日の論点のキャリア教育の推進について、そして職業教育の充実について触れさせていただきます。文科省さんの最初の説明にもございましたが、キャリア教育と職業教育が同意、同義的に捉えられているとの指摘は、私も参加しておりました文科省さんのキャリア教育関係の委員会においても同様に大きな問題と捉えておりました。
 私は、本日の会議に出席するに当たりまして20人近くの専門学科を設ける学校の校長、そして進学色の強い普通高校の校長5人に、キャリア教育についてどのように考えておられるのか尋ねてみました。驚くことに社会に直結する専門学科をもつ高校の校長先生の多くがキャリア教育の目指すものは生徒一人一人のキャリア形成に資するものでなければならないと語ってくれたのに対して、普通高校の過半数の校長がキャリア教育は職業教育と捉えていたことであります。
 こうしたことから、私はキャリア教育の推進にはこのような認識の払拭に取り組むことが肝要かと思っております。
 そのための方策ですが、本日皆様のお手元に配布されております文科省の報告書「学校が社会と協働して一日も早くすべての児童生徒に充実したキャリア教育を行うために」の20ページを御覧いただきたいと存じます。図表にございます産業人材育成プラットフォームは何も産業人材だけを育成することが目的ではなく、次代を担う若者の育成を目的としたものでまさしくキャリア形成のためのものであります。そして、キャリア形成を図るためには教育界だけにその任を負わせるのは酷で、産業界をはじめ社会を構成する全ての機関、人が関わるテーマであることを示しております。
 先程、愛媛県の方がお話しされておりましたが文科省の事業にクラフトマン21という取組がありました。これはキャリア形成にとって大変有意義な事業でした。しかし、いくら有意義な事業でも多くの場合予算措置が終わりますと取組そのものが終息してしまうのですが、埼玉県では幸いにしてこうした意義ある事業はこの協働組織であるプラットフォームの事業として継続されるとともに産業界もこのスキームの一員として積極的に関与し参加しているのです。お手元の報告書の検討に加わった委員の多くの方がキャリア教育の推進には学校が外部社会と協働することが肝要であると話されていたことをお伝えし私の話を終わらせていただきます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。時間を急がせてすみませんでした。
 では、これで今日の2つの論点を終わりたいと思います。最後に、今日、貴重な御報告をいただきました下田先生、中嶋先生、そして嶋田先生、ありがとうございました。
 次回の日程については資料9を御覧ください。3月9日、金曜日、3時から5時まで。議題についてはこのようなことになっておりますので、よろしくお願いします。
 
 これで今日の会議を終わります。ありがとうございました。

 

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