高等学校教育部会(第4回) 議事録

1.日時

平成24年1月31日(火曜日)15時~17時

2.場所

旧文部省庁舎6階 第2講堂

3.議題

  1. グローバル人材の育成について
  2. 生徒の情報活用能力の育成について
  3. その他

4.議事録

【小川部会長】

 それでは、定刻になりましたので、第4回の初中分科会高等教育部会を開催させていただきたいと思います。
 委員の皆様におかれましては、お忙しい中御出席いただきましてありがとうございます。
 まず、審議に入る前に、前回、12月末の部会以降、文部科学省のほうで人事異動があったようですので、まず最初に事務局のほうからその点について御報告をお願いします。

【小谷教育制度改革室長】

 それでは、文部科学省の人事異動について御報告を申し上げます。新たに就任いたしました者についてのみ御紹介させていただきます。初等中等教育局長の布村でございます。

【布村初等中等教育局長】

 布村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】

 生涯学習政策局長の合田でございます。

【合田生涯学習政策局長】

 合田でございます。よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】  

 以上でございます。

【小川部会長】  

 ありがとうございました。それでは、今日の配付資料について事務局のほうから確認をお願いします。

【小谷教育制度改革室長】

 本日の配付資料は議事次第のとおりでございますが、具体的には、資料1、2、5、7、8が事務局からの資料、また、資料3、4、6として委員御提出資料及びヒアリング資料をお配りしております。不足等がございましたら事務局にお申しつけください。

【小川部会長】

 よろしいでしょうか。それでは、これから議事に入りたいと思います。資料1にあるような検討課題に沿ってこれまで論点ごとに議論していただいてきました。今日はその中の2の柱、社会の要請に応える人材養成機関としての機能の充実、更にその中でも、グローバル人材の育成、そして生徒の情報活用能力の育成というこの2点について今日は御報告いただいてから意見交換をしていただきたいと思います。まず最初に、議題1のグローバル人材の育成に関わって、関係する資料等について事務局の方から御説明をお願いしたいと思います。

【小谷教育制度改革室長】  

 それでは、資料2を御覧いただきたいと思います。グローバル人材の育成についてまとめたものでございますが、1枚おめくりいただきまして2ページ目でございますが、グローバル人材の育成につきましては、これまでも政府の様々な会議において検討がなされてきております。その中でも直近のものといたしましては、3ページにございますように、例えば、前回の会議でも御紹介いたしました、当時の枝野官房長官や髙木文部科学大臣らで昨年6月に取りまとめられましたグローバル人材育成推進会議中間まとめというものがございます。その中では、その定義といたしまして、グローバル人材の概念を、要素1として語学力・コミュニケーション能力、要素2として主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性など、要素3として、異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティーの3つに整理をしております。また、グローバル人材の能力水準の目安としましては、ここに示されたようなマル1からマル5のレベルに区分いたしまして、今後はさらにマル4、二者間の折衝・交渉レベル、マル5、多数者間の折衝・交渉レベルの人材が継続的に育成、確保されることが極めて重要であると指摘をされております。
 このうち語学力やコミュニケーション能力という点につきましては、1枚おめくりいただきまして4ページから御覧いただきたいと思いますけれども、例えばTOEFLのスコアの国別ランキングでは、左側の表にございますように日本は163カ国中135位と低位でございますし、アジア内でも、右側の表にありますように、シンガポールや韓国、中国に比べて低くなっております。また、5ページを御覧いただきますと、IMDが毎年発表しております世界競争力ランキングにおきましても、我が国の弱い指標として、右側の表にございますように、外国語のスキルというものが上げられております。
 おめくりいただきまして6ページを御覧いただきたいと思います。次に、日本人の海外留学の状況でございますが、左側のグラフにありますように、海外への留学者数は2004年の8万2,000人から、2008年には6万7,000人まで減少しております。一方、7ページを御覧いただきますと、中国やインド、韓国の留学者数は年々増加しておりまして、日本との差が拡大傾向にあることが見て取れます。
 特に高校生の海外留学ということにつきましては、8ページを御覧いただきたいのですけれども、これも近年減少傾向にありまして、4カ国の高校生を対象とした調査におきましては、アメリカ、中国、韓国の高校生は可能であれば海外に留学したいとする割合が高いのに対しまして、日本では、留学を希望しないとする生徒の割合が高くなっているという状況がございます。
 このような状況を踏まえまして、次の9ページにございますように、グローバル人材育成推進会議の中間まとめにおきましては具体的な対応策が幾つか提言されておりますけれども、例えば高校留学等の促進ということにつきましては、(2)の1つ目の星印にありますように、18歳以下の世代の在外経験や高校生の海外留学を大幅に促進するための環境整備を行うこと等により、18歳頃の時点までに1年間以上の留学ないし在外経験を有する者を3万人規模に増加させることを目指す、また、留学しても3年間での高校卒業が可能である旨を周知徹底するといったこと、あるいは3つ目の星印には、高校卒業時に国際バカロレア資格を取得可能な、あるいはそれに準じた教育を行う学校を5年以内に200校程度増加するといった数値目標を掲げたような提言もなされております。
 また、1枚おめくりいただきまして10ページになりますけれども、こちらでは昨年8月に閣議決定された「日本再生のための戦略に向けて」を抜粋しておりますけれども、その中でも国際バカロレア資格取得可能校等の拡大というものが盛り込まれておりますし、また、12月に閣議決定されました「日本再生の基本戦略」におきましては、当面重点的に取り組む施策として、外国人留学生等の受入れ及び若者の留学の推進を図るなど、若者の国際的視野を涵養する取組を推進するとされております。
 また、文部科学省におきましても、その次の11ページにございますように、外国語能力の向上に関する検討会におきまして「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策」というものを昨年6月に取りまとめまして、これも踏まえて種々の施策を推進しております。
 具体的には、1枚おめくりいただきまして12ページになりますけれども、まず外国語教育の充実につきましては、基本的な考え方といたしまして、小学校から高等学校までを通じてコミュニケーション能力を育成するために、言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成するとともに、聞く、話す、読む、書くの4技能をバランスよく育成することとしています。平成25年度から実施される高等学校の新学習指導要領におきましては、コミュニケーション英語Ⅰというものが共通必履修科目となったほか、授業を生徒の理解の程度に応じた英語を用いて行うことを基本とすることといたしました。またさらに、指導語彙につきましても1,300語から1,800語へ増やしまして充実を図っております。
 さらに13ページを御覧いただきたいと思いますけれども、平成24年度の予算案におきましては、上段にございますように、指導内容を改善するため、各都道府県におけるすぐれた取組の支援や外部検定試験の活用による検証を行いながら指導の充実につなげるための取組、あるいは中ほどにございますように、各学校が到達目標であるCAN-DOリストを作成するためのガイドブックの作成や授業実践事例集の作成のための予算を計上したところでございます。
 また、1枚おめくりいただきまして14ページを御覧いただきますと、高校生の留学等を通じたグローバル人材育成のための取組につきましても、平成24年度予算におきましては23年度より大幅に増額して計上しております。中ほどにございます高校生の留学経費を支援する事業ですとか外国人の高校生を日本に6週間程度招聘して同世代間の交流を深める事業につきまして対象者を拡充して実施いたしますとともに、その下の欄にございますように、各都道府県での高校生留学等推進協議会の開催やグローバル人材の育成のための講師の学校への派遣など国際的な視野を持たせて海外留学への機運を高めさせるための取組も新たに行うこととしております。これらの詳しい内容は15ページから17ページに掲載しているところでございます。
 続きまして、少し飛びますが、18ページを御覧いただければと思います。国際バカロレアについて資料を御用意いたしました。国際バカロレアとは、国際バカロレア機構の認定する共通カリキュラムによる授業の実施や統一試験の受験などによりまして取得することのできる資格です。下のほうに記載しておりますけれども、対象する年齢に応じて3つのカリキュラムが用意されております。特に16歳から19歳までの生徒を対象とした2年間の課程であるディプロマプログラムを終了し資格を取得した生徒には国際的に大学入学資格が与えられております。日本におきましても昭和54年から高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められるものとされ、大学入学資格の1つとして位置付けられています。
 19ページにございますように、昨年9月の時点では141カ国で約3,300校が認定を受けておりまして、日本におけるバカロレア認定校は22校となっております。ただ、このうちディプロマプログラムの認定を受けているものは15校ございますが、多くはインターナショナル・スクールなどでございまして、このうち高等学校は5校となっております。
 続きまして20ページを御覧いただきたいと思います。このディプロマプログラムのカリキュラムでございますけれども、マル1の表にございますように6つのグループから構成をされております。グループ1からグループ5までの科目を各1科目選択しまして、さらにこのグループ6から芸術、あるいはグループ1からグループ5の中からさらに1科目を選択して合計6科目を2年間履修することとなります。また、マル2にございますように、各科目については240時間の履修が必要な高レベルとして3から4科目、150時間の履修が必要標準レベルとして2から3科目を履修することになります。また、これに加えまして、マル3にございますように、課題論文ですとか知識の理論と言われる理論的思考力を育成するための学習、それから、創造性・活動・奉仕といった社会経験や共同作業による協調性を学ぶ学習、この3つを履修することになります。こうした授業は基本的には英語、フランス語、スペイン語のいずれかで行われることになります。
 その上で、21ページにございますように、国際バカロレア機構による統一試験に合格することによってディプロマを取得することができます。この試験も基本的には英語、フランス語、スペイン語で行われることになります。
 1枚おめくりいただきまして22ページを御覧いただきますと、この取得状況を上げさせていただいておりますけれども、この国際バカロレアの資格取得の状況といたしましては、2010年度におきましては日本人受験者は495人でございまして、これは全受験者のうちの約1%でございます。また、中ほどにございますように、日本人取得者445人のうち日本において取得した者は、下にございますように211名ということになっております。先ほど申し上げましたように、国際バカロレア資格につきましては我が国の大学の入学資格として認められておりますので、一般の選抜によるほか、帰国子女を対象とする特別選抜におきましてもこの国際バカロレア資格を用いて出願が可能となっております。なお、国際バカロレア資格取得者数が何人かというところまでは不明でございますが、帰国子女特別選抜によって大学入学した者は2010年度におきましては1,140名という状況でございました。
 23ページを御覧ください。このような国際バカロレア認定校になるためには、毎年加盟校費としての一定の費用が必要になりますし、これに加えまして、ディプロマプログラムでは授業、試験とも英語、フランス語、スペイン語で行われるのが基本ですので、導入を目指す学校からは、そうした授業ができる必要な教員の確保ですとか教育課程の編成・実施に当たっての工夫が必要であること、また、大学入学者選抜において評価する大学の数が少ないことなどが意見として寄せられているところです。
 こうした状況を踏まえまして、最後のページになりますが、24ページでございますが、文部科学省におきましては平成24年度予算案におきまして、国際バカロレアの趣旨を踏まえたカリキュラムや指導方法、評価等に関する調査研究を実施するということで必要な予算を計上しているところでございます。この件については以上でございます。

【小川部会長】  

 ありがとうございました。じゃ、次に具体的に議論に入っていくわけですけれども、その前に、このグローバル人材の育成に関する実際的な取組を2人の委員のほうから御紹介をいただきたいと思っています。1つは、資料3に基づいて野上委員のほうから、そしてまた、資料4に基づいて、関西学院千里国際学校の取組ということで眞砂委員のほうから御報告をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【野上委員】  

 野上でございます。前回の会議でも申し上げましたけれども、私が考えますグローバルな人材とは、3つの能力、つまり自身の存在感を示すプレゼンス能力、他人と議論を交わすディスカッション能力、そして自らの考えを提案するプレゼンテーション能力を持ち合わせた人物だと思うのであります。そうした能力を持つ人物をさらに分析いたしますと、単に語学が堪能なだけではなく、想像力が豊かで思考力も多面的、そして高い企画力の持ち主でもございます。加えて、事に当たっては自分以外の人間や組織と共同できる能力の持ち主でもあります。
 そうした人物を育成・輩出するということであれば、教育界だけにその任を負っていただくのは酷で、埼玉県に置きかえてみれば、教育界を中心として、知事部局、研究機関、さらには我々産業界などあらゆる主体が参加する県、社会挙げての取組が肝要でございます。幸いにして我が埼玉県では、知事並びに教育長が自ら先頭に立ちグローバル人材の育成に取り組んでおりますので、お話をさせていただきたいと存じます。
 配付資料の「埼玉県のグローバル人材育成について」を御覧いただければ幸いであります。最初に、目次の次の1ページの埼玉県のグローバル人材育成についてを御覧ください。埼玉県のグローバル人材育成関係事業の全体像でございます。目的を世界で鍛える、世界に目を向けさせる、世界で渡り合える力を身につけさせるとして、それぞれの右に対象の事業がございます。右端に埼玉県グローバル人材育成基金と書かれておりますが、この基金を活用した事業が矢印で示されたものでございます。
 2ページの埼玉県のグローバル人材育成基金でございますけれども、これはグローバル人材を育成する事業の財源に充てるためのもので、設置期間は平成23年4月から平成29年3月までの6年間、平成23年度県が拠出した金額は10億円で、うち1億300万円が本年度の予定執行額でございます。
 次に、主な事業について御説明いたします。まず3ページの「埼玉発世界行き」奨学金支給事業でございますけれども、これは大学生や高校生に対するものですが、返還義務を伴わない奨学金で、留学の経費を支援するものでございます。この中で高校生留学生については応募者が31人と定員の50人に達しておりませんけれども、募集の開始が遅かったこととか所得の制限などの影響ではないかと県は分析しておりまして、改善に向け検討しておるところでございます。なお、帰国後の奨学生の活用については、グローバル人材埼玉ネットワークに加入してもらい、一過性の経験に終わらせることなく、何かしら県への貢献をしてらうことも考えておるということでございます。
 次に、県教育委員会が所管する主な事業について説明させていただきます。7ページの世界を目指す「志」育成事業でございますけれども、今年度の新規事業で、世界を視野に入れた高い志の高校生の育成を図るものでございます。主な取組の一つにハーバード大学、マサチューセッツ工科大学への生徒派遣がございます。これは基金を活用してのもので、生徒の経費も全額県負担でございます。349名の応募者の中から県が選考した県立高校生30名を昨年11月13日から10日間派遣いたしました。大学では講義の聴講、研究室の訪問、教授や学生との意見交換などが組み込まれ、参加した生徒は相当の刺激を受けたようでございます。その下の埼玉版高校生白熱教室については、世界に目を向けさせることを目的に、埼玉の地を離れ、議論を闘わすにはふさわしい早稲田大学の国際会議場をお借りいたしまして開催されました。当日は果たして議論が白熱するのかとの懸念をよそに、活発に発言、議論が重ねられたということでございます。教員の海外派遣につきましては、韓国とシンガポールへ教員が派遣されました。派遣された教員はいずれも9ページにございます事業の指定校の教員で、カリキュラムの研究、作成に資する研さんのため高校や教育機関などを視察したものでございます。さらにこの3月下旬には、国際貢献活動の体験のためベトナムへ2人の教員が派遣されるとのことでございます。
 9ページのグローカル・ハイスクール・プロジェクト推進事業でございますが、これも本年度から始まったもので、5校を指定し、地球規模の視野と地域の視点をあわせ持つ人材の育成を図る観点から新たなカリキュラムの研究、作成に取り組むための事業でございます。記載の指定校は、グローバル・ハイスクールとして目指す学校像や育成したい生徒像、教育課程、授業や行事等で行う様々な教育活動を研究・検討し、年間計画を今年度末までに策定することになっているとのことでございます。なお、カリキュラムの作成に当たりましては、我々企業人を交えた協議会が開催され、グローバル人材の育成などの観点から議論が交わされているところでございます。
 11ページの県立高校学力向上基盤形成事業は平成22、23年度の2年間の事業で、県教育委員会と東京大学が連携しまして協調学習の手法の研究を行うとともに、その実践を通じまして生徒の学力向上につながる授業改善を行い、21世紀型のスキルを身につけさせ、国際社会で通用する人材としての基盤の育成に努めるためのもので、今年度は研究指定校13校、研究推進委員の教員66名を中心に現在取り組んでおるということでございます。
 最後に、13ページの埼玉県思考力チャレンジ事業についてでございますけれども、これはグローバル人材の予備軍である中学生が対象で、教科の枠を超えた問題や日常生活に関連した問題等に挑戦する機会を提供し、思考力や学ぶ意欲の向上を図るためのものでございます。今年度は公立中学生を対象に地区大会、県大会が開催され、思考力を問う問題に取り組んでもらったところでございます。今後、参加生徒979名の中から成績上位の生徒48名を対象に県内科学施設等の見学や体験の機会を提供し、さらなる動機付けをするとのことでございます。
 以上、縷々説明をさせていただきましたが、こうした取組がある日突然浮上したわけではございません。教育局、知事部局はもとより我々産業界の面々が、閉塞感漂う現状を打開するには次代を担う若者の育成が欠かせないとの共通認識があらゆる機会を通じて県内で醸成され、今日、知事、教育長が我々産業界を巻き込みながら次の時代を切り開くグローバル人材の育成を目指して先ほど説明させていただいたような諸事業を現在展開しているところでございます。私自身は、知事がこうした施策を立ち上げる際、そして教育局が諸々の事業を検討する段階において深くかかわらせていただいた経緯から本日貴重な時間を頂きお話をさせていただいたわけでございます。
 最後に、グローバルな人材の育成・輩出には社会を構成するあらゆる主体が横串的に連携することが肝要と申し上げまして私の話を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【小川部会長】

 ありがとうございました。御質問等があるかと思いますけれども、また後で一括して意見交換の中でお出しいただければと思います。では次に、眞砂委員、よろしくお願いいたします。

【眞砂委員】

 よろしくお願いします。2つ資料があります。1つが学校のパンフレットです。それからもう一つは、後で使わせていただきますパワーポイント、「千里国際キャンパスに展開する教育」という資料(配布資料4(眞砂委員提出資料))を使わせていただきます。
 まず学校のパンフレットを1枚開いていただきます。関西学院千里国際中等部・高等部という学校から来ました。大阪の箕面市にあります。21年前に開校しました。その数年前に臨時教育審議会の答申で新国際学校というものを作ろうという提案がありました。学校のパンフレットの2ページの上にありますように、外国籍生徒、一般生徒、帰国生徒、これらが交ざり合って国際的な教育を行う、そういう学校を作ろうというところから出来上がりました。あとはこのパンフレットにある内容をパワーポイントで紹介したいと思いますけれども、進路に関しては、パンフレットの最後、11ページにあります。そこは今日は話しません。では、パワーポイントを準備しますので、このパンフレットを見ておいていただくといいと思います。
 それでは、画面のほうを見てください。たくさんのスライドがあるので、画面を見ていただいたほうがぱっぱと話が進むかなと思います。(配布資料4(眞砂委員提出資料)のページ1)小さな学校ですが、とてもユニークな学校です。こんな学校が日本に50校ぐらいできると本当に日本の教育も変わるんじゃないかなと思っています。しかし、まだ多くの方に知られておりません。こういう機会を設けていただいてこの学校を説明させていただくことを本当にうれしく思います。ありがとうございます。
 このキャンパスの中に2つの学校が存在しています。(ページ2)1つが大阪インターナショナルスクールです。先ほど、事務局の御説明に出てきましたIB、つまり国際バカロレアのカリキュラムに基づく教育をしています。DP、MYP、PYP、3つの教育課程について幼稚園から高校3年生までを日本で初めて設置した学校です。まだ歴史は21年ですけれども、とてもいい成果を出している学校です。英語で授業をやっています。主に外国人が学んでいます。イギリス人のジョン・サールという方が校長です。もう一つが右側、私が校長をしている学校です。私立の中高です。ただ、違うのは、この2つの学校が一緒になって教育を行っていこうということです。大阪インターナショナルスクール[略称 OIS]のほうが小さく、260名ほどの生徒がいます。(ページ3)関西学院千里国際中等部・高等部[略称 SIS]の在籍450名ほどの半分ぐらいと大阪インターの一部が帰国生徒です。海外30カ国ぐらいから帰って来ています。それから、大阪インターナショナルスクールを中心に外国籍生徒、私たちの学校にも在日の方たちとか国際結婚されている方のお子さんとかがいます。そして3分の1が日本の普通の小学校、中学校を出た子供たちです。この生徒たちが交ざり合って、先ほど言いました新国際学校を形成しています。ちょうど3分の1ぐらいずついるんです。ですから、私たちの学校はそのコミュニケーションというものがとても大切になる学校です。(ページ4)
 学年別に言いますと、インターナショナルスクールのほうが幼稚園から、G12というのは高3です。(ページ5)私たちは中1から高3まで。活動は全部一緒にやりますけれども、勉強の部分もなるべく同じ学年は一緒にやろうという考え方です。(ページ6)合い言葉はこれです。Two Schools Togetherです。OISとSIS、SOISなんて私たちは1校として呼ぶことがあります。本当は将来的にこれが1つの1条校として認められると非常にいいんじゃないかとは思っています。
 (ページ7)どんなところで一緒にやっているかなんですけれども、授業は体育、音楽、美術、それから、私たちの学校で帰国生でもネイティブに近い英語の子たちは大阪インターナショナルスクールの英語の授業を受けますし、コンピューターの授業なんかも一緒にやっています。それからIBヒストリーなどというのも両方でやることができます。それから、大阪インターナショナルスクールのほうで大阪人みたいなバイリンガルの日本語のうまい子がいますので、その子たちは国語で私たちの授業に入ってきます。それから、帰国生で国語までちょっとまだいかないという子たちは、日本語を大阪インターナショナルスクールのほうでやることもできます。
 そんなことをやっているので、私たちの学校の中等部は大体3分の1以上が英語での授業になります。高校は選択できるので、選択の仕方によって20%から70%ぐらい英語の授業になるということです。それから活動のほうは、これはなるべく一緒にやろうということで、生徒会、クラブ活動、学園祭、運動会など、ほぼ100%一緒にやっています。
 (ページ8)授業は英語でやるのをよくイマージョンプログラムと言いますけれども、それよりももっと、インターナショナルスクールの授業内容でやるということで、私たちはシェアードプログラムと呼んでいます。
 これは音楽の授業です。(ページ9)演奏主体です。コンサートを学校の玄関でやっているんです。あと年に2回箕面の市民ホールで発表があります。そのために練習するのが音楽の授業です。(ページ10)
 (ページ11)私たちが目指している国際的な教育ですけれども、日本の高校生というのは勉強が非常によくできると思います。しかし、一生懸命やって、ある意味修業のようにやっていて、勉強が好きになっていない、嫌いになってしまっている子がいます。大学に入るともう勉強終わりみたいな。それはとてももったいないことだと思っています。本当に前向きに勉強を好きでやっている、楽しみながらやっている、そういう子をつくりたい。教科間の連携も必要ですし、単に正解を出すのではなくて、例えば中学生だったら、イエス・ノーで終わるのではなく、その後ビコーズといって、なぜそういうことなのかということを説明できるような、そういう中学生になってもらいたい。それから高校生になったら単に正解を見つけるだけではなくて、もっと批判までできるような、そういう高校生をつくりたいと。相手を納得させたり説得したりする、そういう表現力は教育によって身につくべきだと考えています。
 (ページ12)プレゼンテーションは非常に大事なので、うちの学校でもたくさん取り入れています。私も今プレゼンをしているんですけれども、これは生徒と一緒に学んだようなもので、生徒よりも私はレベルが低いです。本当に若い人たちというのは、コンピューターでもそうですけれども、任せておくと自分でどんどんやっていける部分があります。そういったところをもっと日本の学校は注目したほうがいいんじゃないでしょうか。例えばコンピューター導入にしても、先生たちが全部準備してから導入するのではなくて、実は導入すると生徒たちが導いてくれる、そんなようなこともとてもこれから起きていくんじゃないかと思います。美術なんかも発表の場がたくさんあります。(ページ13)
 それから、少人数教育が特徴です。(ページ14)大体1クラス20人とか、高校だと18人ぐらいで授業をやることが多いです。ただ、少人数教育を日本でやると、どうしても世話をする、きめ細かく手とり足とりやるということが非常に多くなってしまうんですけれども、それではよくないと思います。(ページ15)私たちは生徒が自立することができるようにするために少人数教育が必要だと考えています。そこに書いてある授業の形態、獲得型・参加型、リサーチとかプレゼンテーション、討論、実験、そういうものをたくさん取り入れて、教員と生徒がコミュニケーションをしながら授業が進んでいく、そういうのが必要だと思います。成績も非常に丁寧につけています。一人一人にコメントを書いています。
 (ページ16)これは化学実験室です。手前にあるのが教卓です。その後ろの白いいすつきのテーブルで勉強するんですけれども、その後ろの黒い大きなテーブルが実験台です。前で今日の実験はこんなことをやるよといって説明して、じゃ後ろでと言って実験して、途中でちょっと集まってみたいな形で行ったり来たりできる、こういう実験室がインターナショナルスクールのレベルの実験室と考えています。基本的に理科の授業は実験室でやるというふうになっています。
 (17ページ)そういうようなことをしながら、学期完結制ということで非常に自由度の高い授業選択を本校の高校生はしています。時間割が一人一人異なります。毎学期授業選択するので、今までの勉強を振り返ったりこれからの勉強を考えたりして、自分の将来を考える、そういうことをしなければ授業選択というのはできないようになっています。
 (18ページ)それ以外に学校行事も、これは運動会ですけれども、手前、右下にいるのが生徒会の役員です。生徒会が仕切って運動会をやっています。後ろのほうに立っているのが教員で、下働き、お手伝いをしています。音楽の授業はいろんなところに登場します。(19ページ)学園祭も生徒主体でやっています。(20、21ページ)それからこれ(22ページ)は学年旅行ですけれども、高校2年生の終わりに行きますが、これも半年以上前から生徒が候補地を決めてプレゼンして、生徒が投票してどこに行くかが決まります。内容についても生徒が決めます。教員はそれにくっついていくような感じで、毎年行き先が違うということになります。
 先ほどの学期完結制、これは授業に関してですけれども、大阪インターナショナルスクールと一緒にやるためには、4月だけじゃなくて、9月、12月と年3回の学期ごとのかたまりで始まりが3回あります。(23ページ)そうすると帰国生がいつ入ってきても、それから留学に1年間、9月から次の年の6月まで行っても勉強が中途半端にならないのです。そして自由に選べるということ。それから、例えば帰国生が高校2年生に入ってきたとしても、海外での勉強が日本の高校2年生の枠におさまるはずが本当はないのです。高1の授業をとってもいいし高3の授業をとってもいい。自分の必要なものを必要なときにとるという、それが学期完結制です。
 これは図書館です。(24,25ページ)3万冊あまりの英語の本と3万冊を超える日本語の本があります。(26ページ)これはクラブですけれども、クラブもふたつの学校が一緒にやっていますのでコーチがアメリカ人だったりします。英語ができないとクラブ活動がしにくいという状態です。あと、海外の学校とリーグ戦つくっているので、今週末もソウルのインターナショナルスクールから来ますけれども、ホームステイをしながら、クラブ以外でもいろいろな経験もお互いができるようになっています。
 (27ページ)このような英語環境の中で学校が回っていますので、日常生活でどうしても英語が必要ということはしみじみと生徒たちが感じています。英語に対する動機づけが強く、本当に生徒たちは真剣に授業を受けることになりますので、読むだけではなくて、聞き、話し、エッセーを書くという宿題が毎週出ます。これは模擬国連です。(28ページ)関西でも模擬国連があります。そこのいくつかの高校が参加しているところです。クラブとかではなくて、1学期単位の授業が模擬国連のためにあるんです。
 (29,30ページ)これは学校のミッションです。やっぱり世界に貢献しようという考え方があります。このミッションに向かって実際には5つの行動の指針があります。1つは自分を大切にするということです。ほかの人を大切にする、学習を大切にする、環境を大切にする、リーダーシップを大切にする。当たり前のことですけれども、世界各地からいろいろな子供たちが集まってくるので日本的な校則というのはあまり意味がなくなっています。ですからこの根本に立ち返っていつも考えながら行動してもらう、そういう学校です。その行動も考えるトレーニングになっているということです。
 (31ページ)そういうふうにいろいろな子供たちが集まってくるので、小さなぶつかり合いは多いです。しかし、一人一人違うという前提に立っていますので、いじめみたいな、そんな深刻なものは逆に少ないです。お互いを、違うものを、飲み込まれるのではなくて、受入れて認め合って学び合う。それがうちの学校の基本姿勢です。
 (32ページ)これは来月ありますミュージカルなのですけれども、舞台の上でこういうふうに活躍する子もいれば、舞台の下で音楽を生演奏する子たちもいれば、舞台の裏で衣装を手伝ったりメイクを手伝ったりする子もいます。(33ページ)入り口ではチケットを売ったり、全部英語でやりますから日本語の字幕をつくったり、生徒がそれぞれの持ち場で活躍できる、そういうチャンスのたくさんある学校です。
 例えてみればということなのですが、大阪では笑いをとらないといけないので、こういう喩をよく言います。(34ページ)普通の学校がマッサージのように外から教え込む(筋肉をほぐす)ならば、私たちはヨガのように自分でポーズをつくらせて内側から筋肉をほぐそう、そういう教育をしたいと思っています。インターの教員たちと一緒に働いていると、ヨガの先生を呼んできて週末はみんなでヨガやろうよ、みたいなことが結構盛り上がって、私も数年前まで一緒にやっていましたけれども、ヨガをやりながら考えたことです。
 ちょっと話が変わって、今とても話題になっている大阪から私は来ています。今日の大阪の朝日新聞の1面もやっぱり大阪府の教育のことでしたので、ちょっと大阪の話題を話します。(35ページ)3つのことについてです。1つ目は授業料支援補助金制度です。(36ページ)京都にもありますしいろいろなところであるのですけれども、大阪では独特の制度が付け加わっています。2010年から始まったのは、年収350万円までの方、大体大阪の私立高校の平均が55万円の学費なのですけれども、そこまでは国の支援金と大阪が積み上げて(55万円までは)支援します。だけれども、それを超える学費を取る学校は、超える分を学校が出しなさいというものです。これは大阪独特の制度です。それが去年からは年収800万円までの方を対象にしました。610万円から800万円までは、10万円だけご家庭が出してくださるのですけれども、結局あとは国、大阪府、そして超えたものは学校となります。
 私たちのような学校は少人数制で独特の教育をやっていますから、学費が大体100万円ぐらいします。ですから、うちの学校からこれを出すと経営が成り立たなくなるのでこの制度には乗れませんということで、大阪の全日制の私立高校で1校だけだったのですけれども、この指定を受けない学校になりました。特色ある教育を守るためにはこれは仕方がないと私たちは決断しました。ただ、私学にお子さんを通わせるご家庭にも経済的な援助をしようというのに、私たちの学校の保護者が乗れないというのは非常に忸怩たるものがありまして、苦渋の決断でした。しかし、こういった形の支援、補助というのはもう少し考えてもらえないかなというのが私たちの本音ではあります。
 2番目が大阪府学力・学習状況調査です。(37ページ)これは国がずっとやっていましたが、去年は震災のためにできなかったのです。大阪は、国がやっているときに続けて全国で下から3位でした。何とかしなければいけないということで、大阪でも去年初めて大々的にやりました。私は、この試験に関してはとても面白いと思っています。特に面白いのは、A問題とB問題があって、B問題が活用ということです。Aは基礎知識ですけれども、それは当然として、どれぐらい活用ができるかということを例えばPISAの試験のようにやってしまおうというのです。カリキュラムとして総合のように取り組むのではなくて、問題としてB問題というものをばーんと出して、こういう問題が解ける生徒を育てなさいというふうに私は感じています。
 うちの学校がこのような結果ですが、うれしいのは活用がよかったということです。大阪府の平均より基礎知識に比べてもさらに活用がよかった。そこら辺は活用というものを考えて授業をしている私たちにとってはうれしい結果でした。それから、下に書いてありますけれども、いろいろな学習に対する姿勢を問う調査も、これも国もやっていますけれども、とてもおもしろいです。”Risk Takers”というのがIBの10個の目標の一つにありますが、危険を冒してでも目標に向かっていこうというような考え方ができるかを聞いたりしています。
 (38ページ)これはさっきの点数のグラフです。赤が大阪です。白が私たちの学校なのですけれども、国語と数学、それなりに、こういう結果です。ただ、点がいいことを自慢したいのではなくて、点がいいのは、多分私立の進学校だともっといい点がとれると思いますけれども、活用のほうでより良かったということと、もっと注目したいのは英語です。これは良い点数ですけれども、本当にこのテストは何だったのかなというのをちょっと分析してみました。私たちの学校は帰国生がいますのでレベルを分けています。(39ページ)5つのレベルがあります。一般の生徒たちとか日本人学校から帰ってきた生徒たちはsレベルといいます。それから、海外に一、二年いて英語で授業をやっていたけれども助けをもらっていた生徒がi レベル、そして、英語圏に四、五年ぐらいいて、地元の生徒とほとんど一緒にやっていた子がh レベル、さらにhプラスというのはネイティブのレベルです。そういう子たちのレベルにあった英語の授業を提供しているつもりなんです。ところがさっきの試験をレベル別に点数を見ると、(40ページ)真ん中にあるのがiとhとhプラスの子たち、ここですね。この子たちの平均点にほとんど差がなかったんです。まとめると91.8点の点数をとっています。もっと驚いたことに、sレベル、この子たちは一般の小学校から来た子がほとんどなのですけれども、89点もとっています。ほとんど差が出ていないのです。私たちから見るとやっぱり帰国生と一般の子たちは、本当ははっきりとした差があります。。でも、ここでやられた試験ではほとんど差が出なかったというのは驚きだったのです。
 これを分析すると、帰国生とか留学しようとか真剣に英語をやっている子たちの点数が結局わからないテストになってしまっているのです。(41ページ)日本の学校の試験だから当たり前かもしれませんけれども、学習教科としての英語力をはかる試験であったと。ただ、これは、日本の学校の普段のテスト、期末テスト、それから入試でさえ、帰国生とか留学を目指すような生徒はある意味損しているのではないかと思います。本当の実力をはかってもらえていないだろうと感じています。そして、当然、日本の今の英語の授業レベルでは留学とはほど遠いということです。
 (42ページ)私たちは帰国生も大事にしていますので、帰国生がある意味日本の教育を変えるんじゃないかと思って20年間やってきました。いろいろここに書いてあるようないいものがあります。すみません、長くなって。もう少しで終わります。
 もう一つ、大阪府はこれもやっています。(43ページ)今のテストに対して、TOEFL-iBTのほうなんですけれども、それを受けさせて頑張っている学校を支援しようと、そういう制度です。ただ、やはりなかなかiBTは大変なので、参加校は1けたになっています。TOEFL-iBTはとても面白い試験だと思っています。(44ページ)4技能だけではなくて、実際の場面でどうやって使うか、それから、コンピューターを使って4時間半ぐらいかけてやりますので、コンピューターも使えなければいけません。更に、その青で書いてあるところのように、いろいろな問題解決能力を試されますので、英語以外の教科の力も試されていると思います。本校はこの事業に喜んで積極的に参加させていただきました。結果はこれです。(45ページ)今度ははっきりと英語の力が現されたと思っています。今度は高校生の試験なので、さっきs、一般生だった子たちはiレベル以上に中学3年間で上がっています。ほかに帰国生がhレベル、hプラスで、それぞれの点数が46、77、96と、実力が本当にあらわれた。英語だけではなくて、普段のほかの教科の学力も現れたと思っています。受けたい子はどうぞ受けてください、大阪から補助金が出ますので受験料は学校が出しますよと、なるべく多くの高校生に受けてもらったということで、250名中159人が受けてくれました。そういうレベルの授業をやっていきたい。(46ページ)帰国生や国際性の豊かな、国際結婚の家庭の方とかそういう生徒たちを更に伸ばすような授業、日本の一般の高校生、大学生が留学できる授業、それは英語だけではないということ、さっき申したとおりです。
 (47ページ)日本の教育はそう考えていくとまだまだ、企業はかなり頑張っているけれども、学校はまだ鎖国状態の中にあるのではないかなと思っています。インターナショナルスクールに日本で行こうとすると通知が来たりして、日本の学校に戻ってくださいみたいなことをよく言われます。あと、やはり人数の多い教育ですね。ただし、少人数でやっても、さきほどお話ししたように、ただ手取り足取り、お世話していたのでは意味がないと思います。予算も是非つけてほしい。でも、そういう中ではPISAやTIMSSなんかは、ダメだダメだと言われているけれども、私から見ると善戦していると思います。もっと根本的に変えてほしいと思います。
 (48ページ)留学できる生徒を増やすために私たちが言いたいのは下の4つです。帰国生の同化ではない受入れ。帰国生とともに一般の生徒を伸ばしたい。それから、インターナショナルスクールなどと協力して何か新しい学校をつくりませんかということ。それから、インターの授業ができるような教員が普通の日本の学校にも絶対に必要です。そしてIBの導入です。
 最後です。(49ページ)そういうことで、私たちの学校は大阪インターナショナルスクールと一緒に授業をやっていますから、その中の1割以上の生徒は高校3年間うちの2年間を大阪インターで授業を受けてIBディプロマを取ることができるんです。時間割り上何の問題もありません。IBの本部の承認を受けました。しかし、やっぱり縛りがあって、特例申請が通らなかったのです。1条校としての縛りですね。インターナショナルスクールは専門、専修学校扱いなので単位を認めてもらえないのです、1条校の。それから、もちろん指導要領で必修科目の縛り、例えば体育などは、IBディプロマの2年間に体育はないのです。かわりにボランティア活動みたいなものがありますけれども、そういうところをちゃんと見てもらわないとできないです。教科書はもちろんIBのしっかりした教科書があります。それでも日本の教科書を買いなさいというのはとてもつらいことです。使わないのですから。そういったようなことがあって、うちの学校ではIBディプロマの教育をやりたいと思っていますけれども、今のところできていないというふうになっています。

【小川部会長】

 ありがとうございました。今から事務局からの説明と今の野上委員と眞砂委員の御報告を少し参考にしていただきながらグローバル人材の育成に関して、恐縮ですけれども30分前後ぐらいで意見交換をしてみたいと思います。皆様から御質問でも構いませんし、御意見を御自由に出していただければと思います。いかがでしょうか。

【小川部会長】

 長南委員。

【長南委員】

 それでは、野上委員の先ほどの報告にちょっと質問したいのですけれども、これは平成22年から23年度、この期間だけなんですか。

【野上委員】

 御説明した東京大学との連携による事業は御指摘のように終了いたしますが、この事業によって展開された授業では、私が先程申し上げたグローバル人材に欠かせない三つの要素、つまりプレゼンテーション能力、ディスカッション能力、そして自らの存在を示せるプレゼンス能力の何れもが高まることから、連携事業の実践校では自前で今後とも継続していこうとの考えをお持ちのようです。

【長南委員】

 実はこの事業の名称が県立高等学校学力向上基盤形成事業という、学力向上をねらうという、最終的な目標だと思うのですけれども、きっとこれは成功しますよ。

【野上委員】

 若者が社会に出る場合、行く抜いていくための考え抜く力さえ付いていれば道は切り拓いていけるわけで、埼玉では進学校の県立浦和高校などがこの授業を導入してきたところですが、ぜひ続けていただき考え抜く力を身につけた人材を育成していただければと期待しております。

【長南委員】

 そうですね、私も本当に期待していますので。それから、眞砂委員に質問ですけれども、先ほどの、きめ細かな指導ということがちょっと話題になりました。少人数教育の中ですぐ出てくるキーワードとしてきめ細かな指導をしているという、きめ細かな指導ができるということをよく言われるのですけれども、果たしてきめ細かな指導をすることが本当にいいことなのかどうか。私は、きめ細かに手を抜く指導ではないのかなと思うのです。ですので、きめ細かな指導という用語を使う場合には、どういうことをするのかという、そのことが具体的に周りにわかるような、そういう取組が必要でないのかなと思うんです。

【眞砂委員】

 まさにその点を私も考えておりまして、少人数教育で世話をやき過ぎて、結局自分で何もできないような生徒が育っては本当に逆効果です。ですから、さっきの私のパワーポイントでいうと15ページになりますけれども、数を減らして、生徒が授業の中で先生とコミュニケーションをとれる、そして実験などは1人1個の実験ができるとか、調べものを自分でしてそれを発表してみんなとディスカッションできる、そのためには少人数が必要だと思います。そういう具体的な取組をするために少人数を私たちは必要としている、そういう考え方です。

【小川部会長】

 よろしいですか。

【長南委員】

 はい、ありがとうございました。

【小川部会長】

 ほかにどうでしょうか。じゃ、川嶋委員、どうぞ。

【川嶋委員】

 二、三コメントと質問をさせていただきます。まず最初に1つ文部科学省の事務局にお伺いしたいんですけれども、スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクールというのを前回のSSHと同じように指定されて、様々な実践をしていると思うんですが、そのあたりの成果がどうなっているのかということを1つお伺いしたいということ。
 それで、次に2点ほど私の考えでのコメントなんですが、1つは、グローバル人材というのをいろいろなところで言われているんですが、例えば今日の事務局の資料の3で要素3つあるんですけれども、要素1の語学力、ここに日本語も含めば別にグローバル人材ではなくても、21世紀を生きる日本人としてすべて必要な属性といいますか能力要素だと思うんです。そこで、なぜ今、特に千里国際中・高のほうから御報告もありましたけれども、国際学校だとこういう能力が身につくのかということですけれども、私自身は、英語じゃなくてもこういう主体性とか他者の理解とか課題発見・問題解決能力というのは育成しなければいけないし、できると思うんですが、ただ、国際学校ですと要するに暗黙の了解が通じない生徒たちが一緒に勉強しているので、きちんとそれぞれの意見なり主張なりを説明しなければいけない、そういう環境の違い、環境の要素が非常に強い、影響力が大きいと思うんです。
 そういう点が1つと、それからもう一つは、本当に今、国際共通語として英語力を日本の若者に身に付けさせなければいけないのであれば、小学校の5年生、6年生で1時間という時間数では、小中高大まで続けても本当の英語力がつくとは思えません。韓国は共通試験の中から英語を取り出して韓国版TOEFLを実施することにしたと聞いていますけれども、もし本当に英語力を身に付けたグローバルな人材を育成しようとするなら、最終的にはそのような人材をどう評価するかが重要な課題になります。そして、その評価というのは単にアセスメントの問題ではなく、評価された結果、社会なり国から、あるいは仲間からどういうrewordを受けるのか、つまり、どのようなメリットがあるのかを具体的に示さないと、重要性を指摘し続けても日本の若者たちが語学力も含めてなかなか外国人に伍していくことはできないだろうと思います。
 最後に、今後のことになるのかもしれませんけれども、高校教育をめぐっては、資料1にありますように様々な課題といいますか論点が列記されています。しかし、課題が多いのは大学も同じなんですけれども、どこかで優先順序をつけないとやっぱり何もできない。総花的な話になってしまうので、是非今後は、このグローバル人材や、前回の個性を伸ばすとかいろいろな課題がありますけれども、是非4月以降は優先順位を付けた形での高校教育改革という議論にしていただきたいと思います。

【小川部会長】

 ありがとうございました。最後の点については、3月末まではとにかく問題の洗い出しをやりながら、そこに優先順位をつけながら4月以降集中的にやっていくというようなスケジュールでおりますので、御了解をいただきたい。最初の質問について、事務局、何か今お答えできることございますか。じゃ、よろしくお願いします。

【渡邉外国語教育推進室長】

 外国語教育推進室長の渡邉でございます。質問がございましたスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール、いわゆるセルハイについてですけれども、こちらは14年度から8年間で延べ169校を指定をいたしました。21年度をもって終了いたしておりますけれども、この中でいろいろ、どういった成果があったかということを分析しました結果、各学校の中で4技能、いわゆる読む、書く、聞く、話すといった力それぞれが具体的に伸びていたり、あとは授業中の英語使用時間の増加といったようなことが上がったりしております。それから、教員、学校の中では、例えば明確な到達目標の設定や共有といったことが進んだり、あとは教材の開発といったことも行われたりしました。文部科学省としましては、25年度からの新学習指導要領の改訂の中で例えば授業は英語で行うことを基本とするということを導入したわけですけれども、そのまさに参考になるような取組が行われまして、これをベースに学習指導要領の改訂も検討がされたということでございます。
 なお、先ほど申し上げたように21年度で終了しておるわけですけれども、今日の資料の2の13ページをお開きいただきますと、グローバル人材の育成についてということで13ページの上の段の左側、「英語力を強化する指導改善の取組」という事業を新しく現在予算案に計上しております。こちらは、同じように拠点校を設けて、新学習指導要領の着実な実施とか、それから英語使用機会の拡充といったことに取り組む事業をやる予定になっております。前回のセルハイと違いますのは、セルハイは学校を指定していましたが、今回は都道府県の教育委員会に事業を委託しまして、教育委員会で改善計画をつくっていただいて取り組んでいただくという形で実施する予定にしております。こういった事業につなげていきたいと思っております。以上でございます。

【小川部会長】

 今日の時点ではそれくらいでよろしいですか。川嶋委員、何かございますか。

【川嶋委員】

 この事業では9,700万円の予算で何件ぐらい選定を受けたんですか。

【渡邉外国語教育推進室長】

 新事業につきましては、今一応47都道府県でやっていただく前提で積算はしております。

【小川部会長】

 よろしいですね。

【川嶋委員】

 はい。

【小川部会長】

 あと何か後でまとめて整理して資料として提供できるものがあれば、今の点についてまた後で整理して委員のほうに資料提供いただければと思います。じゃ、北城委員どうぞ。

【北城委員】

 北城です。資料2の4ページを見ると、我が国の英語力で、TOEFL(iBT)ですけれども、アジアで30カ国中27位というのは本当に恥ずかしいことだと思います。先進国の日本の英語教育の結果としてこれしかできないというのも非常に恥ずかしいことで、グローバル人材として、もちろん英語だけできればいいのかとか、いろいろ議論はありますけれども、英語もできないでグローバルには活躍できないので、少なくともまず英語教育を抜本的に変えるという覚悟をしなければいけないんではないか、それが1点目です。同じ資料の9ページを見ると、教員の資質・能力の向上のところで、全ての現職の英語担当教員にTOEFLあるいはTOEICの試験を1度は受験するように促しとありますが、これは1度は受験するようにではなくて、全てまず受験してもらって、教育が不十分であればその教員の英語力の向上もすぐに行っていただく必要があります。教える先生が英語をしゃべれないのでは子供の英語力は向上しないと思うので、これは早くやっていただいたほうがいいと思います。全てのことを全部一遍にはできないにしても、ともかくこれは非常に大きな問題です。日本の初等・中等教育の大きな問題だと認識していただくとともに教員の質の向上を行うべきです。必要ならアメリカ人を含めたJETプログラムを活用して、もっともJETだけではなくても、本当に英語が上手にしゃべれる人を活用すべきです。アクセントがある人たちよりも、できるだけアメリカ人を採用したほうがいいと思うのですが、JETプログラム等も使って外国人による教育をやっていただいたほうがいいと思うのです。
 それともう一つは、これは高校部会では決まらなくて、大学分科会との関係になるのでしょうけれども、大学の入学試験で、特に有力校ですけれども、英語についてはTOEFL、TOEICの達成基準として、例えば700点以上とか800点以上を持っていることというのを受験するときの資格のような形にするのです。大学側が聞いたり話したりする能力を求めているというのを明確に示せば、少なくとも進学に関して競争的な環境にある大学を受ける子供たちは話したり聞いたりすることに努力をすると思います。そういう意味では大学受験のところも根本的に変えるように方針を出すべきです。各大学はそれぞれの考えなので強制はできないでしょうけれども、少なくとも英語の試験について取組を変えたところには支援金を出すとか、グローバル30みたいな感じで支援するとか、ともかく大学の入試も一遍に変えるぐらいの覚悟をしない限り日本の英語力は向上しないと思います。英語力は日本のグローバルな競争力向上の面で大きな問題点になっていると私は思います。

【小川部会長】

 よろしいですか。ほかにどうでしょうか。じゃ金子委員、そして長塚委員、そして小林委員という順でお願いします。

【金子委員】

 少し否定的なことを言って申し訳ないですけれども、英語教育の話になりますと必ず実用的な英語をきちんともっとたくさんやるべきだという話になってくるわけですが、それは確かに事実であるところもありまして、高校の先生は特にアカデミックな訓練を受けてきて、あまり実際英語を使うというようなことの経験は少ない方が多いのは事実でありますし、教科として非常に確立しているために独自の論理ができてしまって、使う言葉としての教育になかなかスイッチできないということも事実なので、これは改革すべきだとは思うんですけれども、ただ、今の大学入試は、御覧になるとわかりますが、相当実際に使えるものとの関係が近くなっていて、それから、特にセンター試験は聞き取りは非常に難しい、聞いていただくとわかりますが、あれだけよくやるのは相当できるんじゃないかなと私は思います。むしろ私は、今大学側を代弁して申し上げたいんですが、問題は大学側でありまして、大学生に語学能力の自信を聞きますと、1年生が一番高くて、2、3、4とだんだん低くなるという、これは大学教育のほうの責任が非常に高いと思います。
 それから、TOEICの試験ですが、先ほど、アメリカあるいは英語圏から帰ってきた人の英語力と入試の英語力は相当違うというようなことのお話がありましたが、私も大学院の入試で感じるんですが、実は帰国子女の入試、試験はよくないです。それは、的確に文章をきちんと理解して、それを日本語で表現するということはできないからです。これはアメリカの大学、高校生も、別に高校生の英語はそんなにできているわけじゃなくて、大学に入ってきちんと仕立て直すんです。大学で非常に文章を読んだり書いたりする訓練をするので、私は日本の高校の英語は今のままでいいとも必ずしも思いませんが、ただ、そんなに日本の英語教育はめちゃくちゃだというわけではない。むしろ大学でそういった言葉を使う訓練をするということは非常に重要な課題だろうと思います。
 あと、それからもう一つ非常に根本的に英語教育で私は問題だと思いますのは、英語教育だと、英語ができないというとすぐ小学校から英語をやれとかいう議論になってくるわけですが、確かにTOEICとかTOEFLのスコアをこのまま見ますと日本は低いように見えますが、受験する層が非常にほかの東南アジアの国と違っていまして、日本人のトップ層はこういった試験をとっていないわけで、むしろとっているのは外国に留学する希望のある人で、ところが韓国とか中国は相当の高学力層がこういう試験をとりますので、結果としては非常に低いように見えるんですが、私は、全部、もしとらせてみたらそんなに低いということは必ずしもないのではないかと思います。
 最終的な問題は語学にどうしたら意欲を持たせるかということで、大学を卒業した人、今職場でどれくらい英語をよく使うと思われますか。私たちは大学卒業生に調査をしたのですが、12%です、「使うことがある」と言っているのは。「たまに使うことがある」と言っているのは2割程度で、要するに実際にはそんなに使わないんです。しかし、私はやっぱり英語はできたほうがいいし、そのほうが世界に対する感覚は磨かれて、そういう意味では日常の、ただ仕事の問題ではなくて、そういった視野が広がるという意味で非常に大きな意味があると思いますが、そういったものに対して意欲を持たせるということは非常に大きな問題で、そういう意味でも学習に意欲を持たせる、それをただ単に教科として持たせるのではなくて、自分にとって意味のあるものとして意欲を持たせるというような工夫が非常に重要なんではないかと思います。以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。では、長塚委員、よろしくお願いします。

【長塚委員】

 グローバルな人材をどのように育成すべきかということで2点ほど述べたいと思うのですが、1つは高校における学力、実際に行われている、指導されている学力観というものを変える必要があるのではないかという気がしています。英語の力を上げるというときに、大学入試の英語の試験に対応する力はついても、それを実際に主体的に使おうというような意欲は確かに今のお話のように不足している。実際に使うという場面で、発信するという気持ちや発信する行動につながっていないというのが問題なのだろうと思います。前回のSSHについても、英語で発表するということを目標にしていましたが、国際共通語としての英語というのはやはり発信力が伴っているかどうかということにかかってくるのではないかなと思います。その点で受験学力の英語はやっぱりちょっと弱いのではないかなという気がします。
 文科省の新学習指導要領における新しい学力観というのは、この点で、知識力だけじゃなくて、思考力や表現力、あるいは意欲というものを大事にしようとしているわけですから、小中学校の教育までは、おそらく対応しつつあると思うのですが、残念ながら高校の授業の現場は旧来の講義型の一斉授業というのが中心になっているのではないかと思います。やはり参加型の授業のような工夫がIB教育をしているインターナショナル・スクールなどに比べると少ないですね。そういう意味で、グローバルな発信力のあるような人材育成の教育にはつながっておらず、高校の教育の現場の学力を変える必要を強く感じます。
 もう一点は、そうはいっても実は日本から海外に留学する高校生が少ないとか、なかなかIB教育は実際にはできないということも大きな障害としてありますが、日本の大学入試のそのものの障害があります。日本の大学の入試はグローバル化していない、まさに内容も仕組みも国際的じゃない仕組みになっていますので、グローバル人材を育てるというときに、高大の接続手段になってくる大学入試をグローバル化するということは非常に大事だろうと思うのです。社会の教育投資という面から考えても、浪人をしてでないと入れないような大学入試とか、あるいは今話題になっている秋入学によってギャップタームでリセットしなければならないような受験学力なんていうのはそもそも無駄な話ではないかなという気がします。
 柔軟な思考力のある高校生のうちに、現状の飛び級のような狭い制度じゃなくて、早修とか拡充とか、大学教育につながってしまうような学習が高校時代に始められるようにする、これがグローバルな教育に変えていくことにつながるのじゃないかなという気がします。ちょっと長くなって恐縮ですが、つまるところは、目標準拠ではなく集団準拠型の大学入試を続けている限りはグローバルな人材を育てるための入試制度とか学力を育てるということにはつながっていかない。そのためにも履修主義から修得主義へという転換を図らないと、この世界的な教育競争の社会に日本の高校教育は対応できないのじゃないかなという気がしております。以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。じゃ、小林委員、よろしくお願いします。

【小林委員】

 このグローバル人材の育成は、何%育成することを目指しているのかというのが実はわからなくて、先ほどの金子委員から大学を出て12%ぐらいというのを聞いて、そうなんだろうなと思っています。今、高校には中学卒が98%入ってきて、70%が普通高校です。その中で、じゃグローバルなのかというと、そうではないと思います。私が扱っている工業高校もやはり海外展開をしていく企業に多く就職しています。現在はどんどん、今円高も含めて海外展開に企業はいっていますので、企業に就職した二、三年後、二十を超えたあたりで海外派遣されている本校の卒業生もいると。そういう場合に、このグローバル人材というのはどのくらいのレベル、どのくらいのパーセンテージで育成されるのかというのがもう少し議論していただければありがたいなと思っています。
 それから、英語教育は、先ほども何人かの委員から出ましたけれども、提案されている9ページの、すべての現職の教員に1度は受験を促すのではなくて、本当にこれは強制的にするべきだと私は思います。それで、スコアの何点までとれと。実はTOEFLを受けると1万5、6千円かかるんですかね。4つの部門でそれぞれいろいろ時間がありますので、4時間半から5時間ぐらいかかると聞いております。そうしますと、そこに行くまでの時間的保障も含めて英語の教員にはやはり豊かな時間を与えてあげたいとなると、各教育委員会の制度もそれぞれ変えていただかなければなかなか受けさせることはできない。本来ならば新採から5年ぐらいまでの間に受験を促して、若い頭のときに資格を取らせて自信を持って生徒指導ができるようにしていただく。そうしますと高校生にこの資格を取っていると国際的に通用するよというようなアナウンスもできて、それがグローバル人材の育成にもつながっていくのかなと思っています。以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。そろそろ時間もないんですけれども、あと二、三。

【和田委員】

 すみません。

【小川部会長】

 では、及川委員と荒瀬委員、渡邉委員、そして最後、和田委員という順でお願い致します。

【及川委員】

 先ほどの千里国際中・高等学校や、5人のお話を聞いて感想めいたことですが、私の勤めている学校、都立ですけれども、1977年、昭和52年に帰国生学級を設けています。ですからもう35年ぐらいたつんですけれども、現在18名の帰国生枠というのがございまして、1学年280名ですから8%ぐらいの帰国生の受入れを行っているんですが、実際にはこの帰国生は、帰国後、学力の面で適応できないという問題があります。学校生活上も適応できない、そういう問題を実は感じています。
 眞砂委員の資料のほうに、高校、中学からの取組ができることということで、帰国生の日本への同化ではない受入れということで、グローバル人材の育成の可能性がここでちょっと触れてあるんですけれども、私は全くこのとおりだなと思っています。ただ、本校の状況で、帰国生の受入れをしていながら実際にはなかなか同化できない、日本の学校の風土というのがあるなと思っていまして、その点では、相変わらず教科学習とか受験学力とかそういったところでの発想が日本の学校教育の中でまだまだ中心であると。そういった意味で、帰国生の受入れという部分ではなかなか立ちいっていかないのかなと思いました。グローバル人材の育成という観点でも考えなければいけないと思います。つまり、日本の学校教育での学び、先ほどから出ていた参加型の学習であるとかそういった形での開かれる可能性、必要性を感じました。
 それから、今回、ユネスコスクールの認定を受けて半世紀以上たっていますし、国際理解教育も随分行っているということもあって、このグローバル人材の育成という観点でいろいろ考えているところがあります。留学生の受入れももちろんしていますが、送り出しのほうは、昨今の状況で申しますと、現在2年生が3名、いずれもアメリカに留学をしております。1年です。それから、今の1年生、8月から5名、これも全員アメリカへの留学が決定しております。この人数が多いのかどうかは、先ほど資料でありましたけれども、なかなか判断できないんですが、留学をしたいと考える生徒がなかなか踏み切れない理由の中に、帰ってきたときに大学受験で適応できるかどうか心配だ、そういうことを言ってためらう生徒がいるのは事実なんです。先ほども出ていましたけれども、大学進学との関係もやっぱり考えなければいけない部分があるかなと思いました。これは感想です。以上です。

【小川部会長】

 じゃ、荒瀬委員。

【荒瀬委員】

 ありがとうございます。4月以降また論点が整理されていくということなので、今言うべきでないかもしれないんですが、忘れてはいけないので。先ほど英語の教員の姿勢とか資質とかが問題だということ、私は英語ではありませんのでほっとしておりますけれども、実はそれで言うと、じゃ数学の教員は何で測ればいいのか、国語の教員は何で測ればいいのか、日本史の教員は何で測ればいいのかということが全てにわたって言えるということが今高校教育の問題ではないかなということを思っています。ですから、英語の教員に対してTOEICやTOEFLを全員受けまして、結果も返ってまいりまして、校長がそれを一人一人にコメントをつけて手渡すということで、君低いねとかいう教員もいるわけでありますけれども、それ自体は確かに刺激にもなりますし、向上心を生むことにもなります。でも、英語だけじゃないだろうということを私は思います。
 それからもう一つ、実はうちはいわゆる進学校と言われておりますけれども、先ほどから出ている受験学力の定義が私にははっきりとはわかりません。大学受験のための学力ということ、私はもちろん本気の英語入試を大学はやっていただきたいと思いますし、東大の9月入学というのは大変興味深いところですけれども、しかし、実は大学入試の問題というのは相当練られているということが言えます。出題に対して答えていくということでもって思考力とか判断力とか、あるいは選択能力とか、選択能力は、1番でしょうか2番でしょうかではなくて、どういう判断をしてそれを自分の答えとするかというふうな、そういう力を試すという点では比較的正当な力があると思います。
 英語も、先ほど金子先生がおっしゃいましたけれども、センター試験のリスニングというのはなかなかすごくて、このセンター試験のリスニングもうちは幸い大変高いのですけれども、しかし、リスニングのための準備というのは一切しておりません。おそらくリスニングで高い点数とっている学校というのはリスニングのための準備をしていないと思うんです。どうしてかというと、受験学力とは言われますけれども、実際に英語の力を高めようと思ったら耳をよくしなければ力はつかないです。ですから、うちは最初は入試問題対策みたいなことをやらなければいけないのかと思って、それに英語の教員は結構時間をかけましたけれども、それにしても全然力がつかないんです。何をしたかというと英語を聞かせたんです。レベルに応じてどんどん聞かせた。例えばアメリカのニュース番組の音源を使ってそれを聞かせた。そうしていくと、結局耳がよくなると英語の力が上がっていく。当たり前のことでして、言語というのは耳から入ってくるわけですから、そういうところにしっかりと力を入れていく。それを、では国語の場合はどうなのか、数学はどうなのかということを考えていくというのが一つ学力、それは狭い範囲の学力ではなくて、本当に幅広い、生きる力をはぐくむような学力をはぐくむためには必要なのではないかなということを思いました。以上です。

【小川部会長】

 じゃ、渡邉先生、お願いします。

【渡邉委員】

 一言だけ感想を述べさせていただきたいと思うんですが、グローバル人材育成といいますとどうしても英語の学力云々の議論といいましょうか、その話のほうに進んでいってしまうんですけれども、高い語学力を有するということは当然必要なことであると思います。しかし、一番大事なのは、今の若者は、内向き志向だとか安定志向だと言われていますが、そういう若者の意識を変えていくということが一番大事な点ではないかなと感じております。先ほど野上委員さんから埼玉の状況が御報告されましたけれども、3本の柱の中の真ん中の部分、動機づけ、意識啓発、この部分が非常に大事なことになってくるのかなという、そんな印象を持っております。以上でございます。

【小川部会長】

 では最後、和田委員、お願いします。

【和田委員】

 私はもともと英語の教員ですので、その責任上何か発言しなければいけないなと思っておるんですけれども、まず、留学生が少ない、特に大学生あるいは大学院生の留学生も他に比べて少ないということに関しては、モチベーションともつながると思います。帰国後の社会の受入れというのは本当にきちっと日本ではできているのか。企業の登用姿勢、あるいは大学へのポスト、一旦留学し、日本の大学へ入ってきたらポストがないというような話はよく聞きますけれども、まずそういうところから変えていかないと、何のメリットもなくて、行くのがデメリットだということがわかっていて、仮に奨学金をいただいて行ってもそれは本人は楽しくない。結果的には海外でポストを得てというような人がたくさんいますけれども、それは本当にいいことなのかな、そこからまず変えなければいけないという気はしております。
 ただ、高校生の海外留学だけで見ますと、行くために何が要るかというと、簡単にコミュニケーション能力と言いますけれども、実際は、向こうの授業でインターラクティブな授業を受けるにしろ、そのための勉強といいますか、1時間の次の授業のために何十ページも読まなければいけない。そういうテキストを読んだ上で、それに基づいてインターラクティブな授業が成り立つ、ディベートが成り立つわけですから、実際は耳から入ったりしゃべったりできないというコンプレックスではなくて、たくさん読めない、それが日本人の留学生、特に高校生なんかの留学生の一番困っているところで、実際途中でついていけなくなって帰ってくるというような人もいるのです。そういう人たちの困っている点というのは読解力を含めた英語力であって、決して、いわゆるコミュニケーション英語ということで聞く、話すところばかりに重点を置くべきではないと思います。
 それと、英語教育に関して言いますと、古いかもしれませんが、ライシャワー博士が言っているように、日本語と英語というふうにかけ離れた言語で語学の勉強をすることは非常に論理力を鍛えることになる。むしろ私なんかは、英語の授業では日本語も積極的に使っていくべきではないかと、そう思います。
 ただ、西洋から入った学問、数学とか理科を中心とした、そういう学問に関して、日本は一生懸命訳語をつくって日本語で教育してきたのだけれども、この辺でぼちぼちその訳語を離れるのはどうかと思います。理科や数学の先生にいきなり英語で授業をしてくれということは、これは英語の先生に英語の授業をすることを望む以上に難しいことではありますが、例えば教科書にある訳語、重力ではなくてgravity、あるいは斥力なんて難しい言葉を使わないでrepulsion、そういう言葉をどんどん入れていくことによって随分日本人はそういう国際的な語学力はついてくると思うんですけれども、そういうことからはすぐにでも変えていけることではないかなと思っております。以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。ほかの方も御意見あるかと思いますけれども、時間がありませんので、この第1のテーマについてはここで終わらせていただきたいと思います。今日は英語教育の在り方をめぐる問題とかいろいろな取り組むべき課題、様々意見が出されましたけれども、4月以降に今日出された意見を、もう少し精査して議論を深めていくような形にしていきたいと思いますので、今日はこの辺で御了解いただければと思います。
 時間の予定、あと30分しかないんですけれども、もう一つ今日のテーマとして「生徒の情報活用能力の育成」という点についても時間をとって少し御意見を伺いたいと思いますので、この今日の作業部会は一応5時までですけれども、多少の時間の延長は御了解いただければと思います。生徒の情報活用能力の育成に関わって、まず最初に事務局のほうから関係の資料をこれも簡潔に説明いただければと思います。

【小谷教育制度改革室長】

 では、資料5を用いて説明をさせていただきます。2ページを御覧いただければと思います。中ほどの枠囲みにございますように、文部科学省におきましては平成15年度から現行の学習指導要領におきまして情報教育を必履修科目として位置付けておりますが、新学習指導要領におきましては、次のページの3ページの一番下の欄が高校でございますけれども、小学校から高等学校までを通じまして生徒が情報などを身に付けることを一つの柱としております。
 おめくりいただきまして4ページ、こちらが高等学校の学習指導要領の情報の改訂のポイントでございますけれども、この改善のポイントといたしましては、情報社会を構成する一員として社会の情報化の進展に主体的に対応できる能力と態度を育むこととしております。そしてさらに、情報に関する科学的な見方や考え方を確実に定着する指導を重視するため、科目構成や内容を見直しまして、「社会と情報」または「情報の科学」のいずれかを選択して必ず履修していただくということにしております。また、その情報活用能力を確実に身に付けさせるために、小中高等学校を通じて体系化された情報教育の指導内容を踏まえて、一部重複して履修させるといったことで指導を充実したほか、内容に情報モラルを項目立てして、情報モラルというものを身に付けさせる学習活動というのを重視しております。
 5ページを御覧いただきますと、この学習指導要領の改訂に加えまして文部科学省におきましては、昨年の4月に「教育の情報化ビジョン」というものを策定しております。これは、21世紀を生きる子供たちが、生きる力とともに情報活用能力が不可欠であって、学校はこの情報活用技術を活用して、一斉指導による学習に加えて、子供たち一人一人の能力や特性に応じた個別学習ですとか、あるいは子供たち同士で教え合うような協動的な学びを推進していくことが必要だと、そういった考えに基づいて策定をしております。
 具体的な施策につきましては、6ページと7ページで掲載をしております。それぞれのテーマごとで四角で囲んでおりますけれども、本日の議題でございます生徒の情報活用能力の育成ということにつきましては、6ページの左側にございますけれども、まずは新学習指導要領の円滑な実施が必要でございまして、そのために指導事例の収集や学校現場への一層の周知、あるいは教員向けの指導資料や子供たち向けの教材の開発といった内容を盛り込んでおります。また、今後の教育課程に向けて、各学校段階における体系的な情報教育を一層効果的に行うといったことから、研究開発学校制度等の活用によって情報活用能力の育成のための教育課程について実証的に研究していくといったことを盛り込んでございます。
 駆け足で恐縮ですが、8ページを御覧ください。こうした生徒の情報活用能力の育成に当たりましては、当然学校におけるハードの整備ですとか教員の指導力の向上というのも欠くことができません。コンピューター1台当たりの児童生徒数については、8ページの左のグラフにございますように、高等学校は5名となっております。またさらに普通教室の校内LANの整備率も、こちらは右側ですが、約94%ということで、小中学校に比べて整備率は高くなっているというところでございます。
 9ページを御覧いただきますと、教員のICTの活用指導力についてお示しをしておりますが、青や緑の折れ線で示しております教材研究、指導の準備・評価などにICTを活用する能力ですとか校務にICTを活用する能力というのは比較的高い割合になっておりますけれども、オレンジや茶色の折れ線で示しております授業中にICTを活用して指導する能力ですとか児童のICT活用を指導する能力といったものにつきましては約6割の教員にとどまっているという状況になります。
 最後に10ページのほうを御覧いただきたいと思います。OECDが2009年に行いましたデジタル読解力調査の結果について御紹介をしたいと思います。これは15歳になった年の6月ということですので、日本では高校1年生を対象としてなされたものでございまして、ホームページへのアクセスやボタンのクリック、コピーアンドペースト、eメールの送受信、ウェブの掲示板への書き込みといったICTリテラシーに関する知識や技能を測るための調査でございます。
 調査結果につきましては11ページのほうに記載しておりますけれども、参加した19の国・地域の中では平均得点が4位と上位に位置しておりまして、習熟度の下位層(レベル1以下)の割合も2番目に少なくなっております。その一方で、下の枠囲みにございますように、併せて行われました質問紙調査によりますと、国語や数学、理科の各授業においてコンピューターを使っている生徒の割合というのが他国と比べて最も低くなっておりますし、マルチメディア作品の作成ですとか表計算ソフトを使って実際にグラフを作成するといったことにつきましては、これもOECD平均より低い水準にあるということがわかっております。以上でございます。

【小川部会長】

 ありがとうございました。それで、今日の議論に資するということで、この生徒の情報活用能力の育成で先駆的に取り組んでいろいろな成果を上げている千葉県立袖ヶ浦高等学校から永野直先生にお越しいただいておりますので、今日はその高校の取組を紹介いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【永野教諭】

 葉県立袖ヶ浦高等学校から参りました永野直と申します。よろしくお願いします。今日は情報活用能力の育成ということにつきまして本校の取組を20分程度紹介させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 まず、本校の概要ですけれども、地図を御覧いただきたいと思いますが、袖ケ浦市というのは、東京湾にアクアラインがありますけれども、そのふもとあたりに位置する高校で、今までずっと三十何年間普通科のみの学校だったんですけれども、本年度4月から情報コミュニケーション科という専門学科を新たに設置いたしました。本校は学力としては偏差値でいうとちょうど50くらいで、まさに普通の高校生といったところですけれども、部活動なんかは非常に熱心に、活動的な生徒が多いといったような特徴があります。そのような袖ヶ浦高校に情報活用能力を専門的に育成する学科を設置したということですけれども、社会がどんどん変化していく中で、社会に主体的に参加していく生徒を育成するという教育の目的があるわけですけれども、社会が変化していくんであれば、また教育も変化していかなければ社会に対応することはできないだろうということで、それを専門的に学習していこうというねらいでつくった学科です。
 情報活用能力は、この3点、情報活用の実践力、情報の科学的な理解、情報社会に参画する態度ということを指しているわけですけれども、通常、全ての高校生は教科「情報」を学んでいます。それから、基本的にはコンピューター教室で行われるということが多いわけですけれども、情報活用能力というのは、全ての生徒において、それから、右側にありますけれども、全ての教科・科目、あらゆる場所で行われるべきものであると学習指導要領にも書いてあります。ただしかし、実際には、週に2時間程度コンピューター室を情報の時間に使う、あるいは普通教科の中でもたまに先生が教室にプロジェクター、コンピューターを運んできて授業を行うということですので、あらゆる教科で全ての時間、全ての教室でというだけの時間とか設備などはなかなか足りないというような状況です。
 そこで、本校の専門学科としては、これまでのように職業的なITスキルを身につけて就職に生かすということだけではなくて、まさに通常の教科・科目の中でICTを使って、これからの時代にふさわしい学習の在り方というものを考えていこうということです。
 これは実際の風景ですけれども、生徒が1人1台タブレット端末を持っています。普通教室あるいは特別教室、実験室などに無線のアンテナを設置しまして、インターネットにつながっているという状態です。ただ、このタブレット、iPad2ですけれども、これは学校が配付したものではありません。これは全ての生徒に各家庭で、自己負担で購入をしていただいたものです。これは入学前に中学校を全て回りまして、本科ではこのような学習をするので、それを踏まえて受験ください、お願いをいたしまして、入学してから、反対は1件もありませんでした。
 というのは、なぜ個人で買わせるのかということですけれども、これにも幾つか理由があります。先ほどのように、週2時間、あるいは学校が買ったものを借りて授業するというのではなかなか体系的に身に付かない。通常の授業も含めて、あるいは家庭でも部活動でもホームルームでも、自分のものとして自分のつくった記録、コンテンツが全て自分の端末の中に入って、家庭でも振り返ることができる、あるいは日常生活の中でこういったインターネットやICTに触れることによって現代の情報社会とか知識基盤社会に生きているんだという自覚を体験的に身に付けてほしい、感じてほしいということから各自で購入していただくという方針にいたしました。
 その機械1人1台使って授業するということですと、授業に人間味がなくなるとかというような御心配をよくいただきますけれども、こういった機械でドリル的に学習をしますとか、あるいは成績管理をするといったようなことは一切考えていませんで、本校は、情報コミュニケーション科という名前のとおり、まさにこのコミュニケーション、言語活動などを通していろいろ人の意見を聞いたり自分の考えを人に伝えたり、あるいは聞いたり話したり、あるいはいろいろな素材や情報を蓄積したものをみんなで共有するとか、あるいはみんなで学び合うとか、そういったことをこのICT機の利点をうまく活用しながら学習をしていきたいと。もちろん黒板、教科書、ノートは使います。さらに今までの教具に加えてタブレット端末が加わった。今までの授業を何かに置きかえるというふうに考えてはおりません。
 さらに、情報モラルというものが非常に重要だと言われておりますけれども、通常の授業ですと、あれは危ない、これは危ない、出会い系サイト危ない、ウイルス怖い、こういった授業になってしまいがちなんですけれども、彼らは日常的にこういう機械に接していますので、まさに日常の生活からこう使うべきだというようなむしろ積極的な情報モラルの考え方になっていくのではないかということでこのような取組をしています。
 実際の授業の事例なんですけれども、こちらは国語総合の授業です。生徒は漢詩の学習をしているわけですけれども、一通りの学習が終わった後に、杜甫の月夜という漢詩を扱ったんですけれども、その杜甫のつくった、この詩を作ったときの情景を自分たちで目に見える形に視覚的に表現をしてみましょうというような取組です。
 実際の映像を見ていただきたいと思いますけれども、例えばこの生徒は、もみじの背景に映る月で杜甫の悲しさを表現したということだそうです。この杜甫のイラストも月の方向を見上げるように、自由に配置できるわけですけれども、ちょうど月を見る方向に置いたということなんだそうです。それから、このようなものを作った生徒もいます。おもしろかったのは、中国の古典の漢詩であるものに現代の都会のビルのイメージを重ねた。これは何でと聞いたんですけれども、今東北の震災で故郷に帰れない家族のことを思っている人たちがいると。この杜甫も家族と会えない悲しい気持ちを表しただろうから、そこに共通点を感じたというようなことを言っていました。これもおもしろいな、高校生らしい独創的なアイデアだなと思いましたけれども。
 これは生物の授業ですけれども、こちらのタブレットには、こちらで今、御覧いただけるようにカメラが内蔵されているわけですけれども、ちょっと前には映っていませんが、このカメラを用いまして顕微鏡の観察をしたんですけれども、最初生徒が、「先生、写真撮っていいですか」と言ったんです。「この内蔵のカメラを使って写真撮るのはちょっと無理じゃないかな」と言ったんですが、これが実際に生徒が撮った写真なんですけれども、非常に鮮明に写っています。拡大しても大分細胞の様子がよくわかりますし、さらに、ビデオカメラもついていますので、細胞の中の原形質流動の動きなどもとらえることができます。もちろん普通科の生徒と同じようにスケッチもするんですけれども、このように動きをとらえるということはなかなかスケッチでは難しいということで、デジタル機器の活用と言えるんじゃないかと思います。これは花粉から伸びていく様子を撮影したものです。
 このように撮影した画像はインターネット上の共有フォルダにすぐにアップロードしまして、全員でお互いに比べたり自分と違うところ、共通のところを比較したりしました。さらにそれをスライドの中に、5分後、10分後、15分後の違いなどを矢印とかテキストを加えて電子黒板の前で発表するというような授業を1時間の中で行いました。通常ですと、撮影した画像をもし、生徒に40台のデジタルカメラが配られていること自体が通常はちょっと難しいんですけれども、それをさらにコンピューター室で編集をして次の時間に発表という流れがこれまでだったとすれば、1時間ですべて可能であったということです。
 こちらは地学の授業ですけれども、これは立体の地図ソフトですけれども、地形を実際に拡大したり回転したりすることで谷の様子などを確認していったというようなものです。これも日本とスイスの谷の違いを比較したいというようなことをしました。
 こちらは数学の授業ですけれども、2次関数のグラフ、ノートに手でも書くんですが、それをグラフの作成ソフトなどを使いまして、パラメーターをたくさん変えて数値を変えたときにグラフがどう傾きが変化するか、移動しているかというのを比較したり、あるいは、これはちょっと遊びのようなものですが、確率の勉強の際に、さいころを振って、それで出た目の確率を計算するという授業だったんですけれども、実際のさいころで体験させるのが一番いいんですが、シミュレーションということを生徒に説明した上で確率の計算をしました。個人でやる場合には全く確率どおりにはならないんですけれども、グループ同士で計算を合わせてみる、さらに40名で計算をしてみると大分理論値に近づいていくというような、確率を体感的にとらえるというような授業です。
 次に、これは「情報コミュニケーション」という学校設定科目ですけれども、生徒は、各自の部活動とか、あるいは地元の紹介のプレゼンテーションを作成しまして、大人たち相手にプレゼンテーションをしました。通常、普通科の生徒もプレゼンテーションは行うんですけれども、よく知ったクラスメートに対してやるというのがほとんどです。ただ、実際の社会では見ず知らずの人とか全く異なる年代の人々にプレゼンテーションをしなければならないという機会も多いと思いますので、異なる世代の大人たちに自分の部活動で自分の担当している楽器、部活動の様子を紹介したりですとか、あるいは地元の袖ケ浦の名所、地図の画面なんかも取り込んだりしまして紹介をしたということです。生徒は非常に緊張したようですけれども、楽しそうに大人たち相手にプレゼンテーションをしてくれました。
 それから、これは先々週になりますけれども、1月16日に文部科学省の国内のICT教育活用好事例集の関東甲信越ブロック大会で、生徒40名全員総合教育センターに連れていきまして、300名の聴衆の中で授業をやってきました。そのときの様子などもあるんですけれども、生徒は多くの観客の中で随分頑張ってくれたと思いますけれども、ちょっと時間がないので。
 この際に、先ほどの漢詩の話がありましたが、今までのそういった作品ではなくて完全オリジナルの自分の韻文作品、俳句、短歌、漢詩、ソネット、こういったものを作りまして、これを冬休みの課題にしました。それをさらに視覚的に、自分でこれも撮影したビデオ、写真、音楽、こういったものを取り込んでマルチメディアで表現をしようといったような授業です。これも実際に御覧いただこうかと思いますが、例えばこの生徒はこのような詩を最初作ったわけですけれども、これに最初はこのような色をつけて写真をつけたというようなものだったんですけれども、ちょっと時間がないので全体を見ます。ほかのクラスメートからこれではちょっと写真が小さいんじゃないかというような指摘を受けまして、この生徒はそれから改編しまして、春夏秋冬というのをそれぞれ別のスライドに分けてつくり直したというようなものです。
 それから、この生徒は、琴を習っているんだそうですけれども、最初のこのような作品をつくって、それで自分で弾いた琴のビデオと音を、ちょっと今音が聞こえにくいと思いますが、自分で演奏した音を取り込んで動画にしたというようなものです。それから、この子は漢詩をつくったんですけれども、なかなか大作で、内容までは御紹介する時間はありませんが、漢詩をつくった生徒もいました。
 この際に非常に印象的だったのは、ほとんどの生徒は自作の写真などを使ったわけですけれども、この生徒は、インターネット上に非常に自分のイメージに近い絵があったと言っていました。これを作品に使ったわけですけれども、通常では、著作権の概念がなければ、まず気にしないでこれを使ってしまう。さらに、情報の授業で著作権に触れると他人のものを使っちゃいけないんだということで使うのをやめる、今までの情報モラルの授業ではそこまでだったんですけれども、この生徒は、私は指示していないんですけれども、この作者を探しまして自分で使用許諾の連絡をとったと。この16日の関東甲信越ブロックの発表会の当日の朝に使ってよろしいというような返事をいただいて、これで今日発表できるということで、まさに情報通信と会場でつながっているからこそ連絡を受けられたというようなことで、まさにこれは、使うのをあきらめるんではなくて、ルールにのっとった上で情報を正しく使うには自分がどういう行動をすればいいのかということを主体的に動いたような情報モラルの例ではないかなと思います。こういう生徒は何人かいました。
 それから、授業の感想とか疑問、それから発表に対するお互いのアドバイスなどは、クラウドサービス、今ツイッターというものがありますけれども、これを使って毎時間のように共有しています。最初はただよかったとか褒めるだけだったんですが、もっと声が大きいほうがいいとかアドバイス、ちょっと批判的な内容もたくさん出てくるようになりまして、数千という意見が蓄積されています。ただ、名前なんかも入りますので、これはインターネットからは一般の人は見ることはできません。我々教員とクラスの生徒がお互いに共有するというものです。それから、つくった作品などはすべてインターネット上のフォルダーにありますので、自宅から続きをやる、あるいは友達の作品を参考にする、こういったようにつくったものをすべてお互いに共有するというようになっています。
 このようにあらゆる科目でこのようなタブレットを使った授業というものが広がっていっているわけですけれども、さらにホームルーム、それから部活動、運動部なんかも自分でフォームを録画してみてその場ですぐに確認をしてみるとか、いろいろな生徒のアイデアで使い道が広がっています。まさに生徒の側から教えてもらう使い方、先ほどの顕微鏡の記録というものもそうでしたし、こんな機能がありますよと教えてもらう機会もたくさんあります。
 この約1年間やってきた中で重要だった点というのは、いろいろありますが、まず、この学科のねらいというのをきちんと中学生に理解させるということが非常に大変でした。さらに、ルールもやはり必要ですが、あれをやってはいけない、これをやってはいけないということではなくて、彼らの自分たちでルールをつくってもらいました。
 それから、予算もなかなかありませんので、生徒は自己負担でこの端末を買ってもらいましたけれども、学校では盗難の防止などについてはきちんと対応しようということで、ロッカーなどを用意しました。
 それから、一番問題としては、これをいかに多くの先生方に理解して広げていくかというところで、こんなもの要らない、わからない、難しい、むしろチョークとノートがあれば授業はできるのだという先生がたくさんいらっしゃいますが、もちろんそういった授業もありますけれども、ただ、それだけやっていればこれからの社会生きていけるのかというとなかなか難しいところもありますので、まず実際に見てさわってもらって、こんなことできますよ、こんなおもしろい授業できますよ、こんな効果的なことができるかもしれませんと言うと、実際にさわっていただくと、気軽な感じで始めていただける先生もだんだん増えてきたというところです。
 最後に、1人1台環境といいますと、機械相手に勉強というようなイメージがありますが、まさにそうではなくて、自分たちで先ほどの作品をつくり上げたり工夫した写真を撮るようないろいろな創造的な学び、あるいはそれをみんなで共有したり一緒につくったりというような取組を心がけています。まさにお互いに学び合い、これは生徒だけではなくて、教員と生徒にとっても学び合いの場でもありますし、その際に、ものをつくり出したりそれを残したり、みんなで共有したり伝えたりするときにICT機器というのはプラスに作用する部分が多いと感じています。社会に出てからは必ず他者と一緒に何かをつくり出したりしていかなければならない、その辺をきちんと対応していってもらえるように、お互いに高め合いながら情報活用能力を育成してもらいたいと考えています。以上です。

【小川部会長】

 永野先生、本当にありがとうございました。本当は今の報告に基づいて少し御質問を受けながら意見交換したいんですけれども、もう時間が予定の5時になってしまいました。またこの後ほかの会議がある方もいらっしゃいますので、あまり延長できないんですけれども、何か今の御報告についての質問とか、それに関わって何か御意見、どうしてもという方ございますか。あれば一、二受けたいんですけれども。じゃ、和田委員。ほかにどうでしょうか。じゃ、和田委員、よろしくお願いします。

【和田委員】

 非常に素晴らしい発表をありがとうございました。我々は普通科の学校においてもできるだけICTを使った教育というのを心がけたいのですけれども、なかなか実際どの教材でもそれを使える先生というのは非常に少ない。そこで、高校では「情報」が2単位必修として入っているんですけれども、その2単位必修の中で、狭い意味での情報教育に限定するのではなくて、情報機器を使ったいろいろな活用、先ほど出ていた英語の授業、TOEICの勉強なんかも入ると思うんですけれども、そういうことも情報教育の中でやれるというような、そういう高等学校の学習指導要領になっていただけないかなと思います。実際もうほとんどの生徒はブランイドタッチもできますし、表計算の利用もワープロの利用もできる状態で高校に入ってきていますから、情報モラルの勉強は大事ですけれども、情報のことに限って2時間やるというのは非常にもったいないので、いわゆるe-learning的な情報教育、教科の先生と情報の先生が一緒になってTTでやるというようなこともオーケーといいますか、それで情報をやっているという形を認めていくような柔軟さが必要ではないのかなと思っております。

【小川部会長】

 ありがとうございました。時間もないので、すみませんけれども、今日はこの辺で終わらせていただきたいと思いますが、一言ちょっとお願いというか御提案ですけれども、今日の会議もそうですけれども、この高校部会は委員のメンバーの出席率が非常に高いんです、これまで。是非最後までこの出席率は維持していただきたいとお願いしたいんですけれども、ただ、会議は2時間というようなことで限られていますので、なかなか全員の方々から御発言をいただくということが時間的な制約もあってできません。そこで提案ですけれども、これからの会議に関わっては、その会議ごとのテーマ設定がありますけれども、そのテーマ設定について発言したいという方は、あらかじめ文章を作成していただいて、それを事務局のほうに会議前までに送っていただければ、それをベースにしながら発言していただけますし、また、それに関わる時間も調整できますので、できれば、今度の予定はキャリア教育・職業教育の充実というふうなことで審議していただくことを考えていますけれども、例えばキャリア教育や職業教育の充実についてこういう点で発言したいというふうな委員の方がいらっしゃれば、あらかじめ事務局のほうに発言の趣旨とか文章を簡潔に作成いただいて、それを送っていただけないかなと思っています。次回以降もそういうことで限られた時間の中で全員からの御意見をできる限り伺うという運営をしていきたいなと思っています。
 またさらに、一応3月末までの部会では高校教育の問題の洗い出しというようなことをする予定ですので、これまで幾つかのテーマで議論してきましたけれども、これまでの作業部会でも十分発言できなかったという方もいらっしゃると思いますので、これまでのテーマについても、自分はこういうふうなことを考えているんだというような御意見を文書で提出していただければ、それを3月末までの作業部会の問題の洗い出しの際にも活用して、問題の整理のところに使わせていただけないかなと思っています。そういうことを考えていますので、また改めて事務局のほうからその趣旨についてお願いの御連絡が行くかと思いますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。
 あと、次回以降3月までの予定ですけれども、資料8にも記載されているように次回がキャリア教育・職業教育の充実ということで、2月16日3時から5時まで、会場はここです。3月9日は中途退学、不登校について議論していきたいと思いますので、年度末でお忙しいと思いますけれども、是非よろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは、これで今日の会議は終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

 

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