高等学校教育部会(第3回) 議事録

1.日時

平成23年12月27日(火曜日)13時~15時

2.場所

旧文部省庁舎6階 第二講堂

3.議題

  1. 生徒の優れた才能や個性を伸ばす学習機会の充実について
  2. その他

4.議事録

【小川部会長】

 定刻になりましたので、ただいまから高等学校教育部会第3回目を開催したいと思います。
 年末の本当にお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。
 それではまず、今日の配付資料の確認を事務局からお願いします。

【小谷教育制度改革室長】

 本日の配付資料は、議事次第にございますように、資料1から5まで、参考資料1から3まで、それからパンフレットといたしまして3点「京都市立堀川高等学校」「灘中学校・灘高等学校」「千葉大学先進科学プログラム」のパンフレットもお配りさせていただいております。また、いつものとおりの机上資料も備えております。よろしくお願いします。

【小川部会長】

 ありがとうございました。では、議事に入っていきたいと思います。
 お手元に、参考資料3として検討課題の柱を記載しているものがあるかと思うんですけれども、前回は検討課題の1、個々の生徒の学習進路、理解などに応じた学びのシステムの構築ということで、生徒一人一人の進路に対応した高等学校の在り方、また、高校教育での生徒の学力をどう保証するか、そういった点について御意見を伺ってきました。まだ議論が尽くされたとは言えませんが、一応、3月末までは検討課題の柱の論点について、一通り全体にわたって論議し、そして、課題を整理した上で、次のステップとして個別の課題の審議をさらに深めていくというスケジュールでやらせていただくということを確認しております。
 ですから今日は、前回に引き続いて、検討課題2「社会の要請に応える人材養成機関としての機能の充実」、その中で特に、生徒の優れた才能や個性をどう伸ばしていくか、この点について今日は意見をお聞きしたいと思います。
 それでは、この議題1に関わって、事務局から配付資料の説明をお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】

 それでは、配付資料の1を御覧いただきたいと思います。本日は、今、部会長からお話がございましたように、生徒の優れた才能や個性をどのように伸ばすべきかという論点について御審議いただきます。優れた才能や個性と申しますと、学問的な内容に限らず、芸術、スポーツ、職業的な技能など様々な才能や個性が考えられますが、本日は学問的な内容に絞って資料を用意させていただいております。
 学校教育におきまして優れた才能や個性を伸ばす取組につきましては、大きく2つに分けて考えられると思いますが、通常の学校のカリキュラムよりも体系的で進化した、より内容の深い、幅広い内容の学習の機会を与える方法、これは才能教育の研究者の間では拡充といったような言い方をされておりますが、そういった手法と、既存の教育プログラムを通常よりも早く、あるいは早期に履修させる教育的な対応、これは早修と呼ばれておりますが、そういった手法がございます。この両方の取組について御審議いただければと存じます。
 それでは、資料の2を御覧いただきたいと思います。表紙をおめくりいただきまして、1ページ目から、スーパーサイエンスハイスクールの取組を紹介させていただいております。これは、平成13年に定められました第2期科学技術基本計画に基づきまして、科学技術分野で卓越した人材の育成、また、理数教育を重視する高等学校への支援制度の拡充といった目標を実現いたしますために、平成14年度より文部科学省が科学技術、理科、数学教育を重点的に行う高等学校をスーパーサイエンスハイスクール、略称でSSHと申しておりますが、といたしまして指定し、支援をさせていただいているもので、現在、145校が指定されております。過去指定されていたものも含めると、170校ということになっております。
 本年8月に閣議決定された現行の第4期の科学技術基本計画におきましても、このSSHの支援を一層充実することが明記されておりまして、200校の指定を目指して、平成24年度政府予算案ではこれを178校に拡大する方針で、予算計上しているところでございます。
 荒瀬先生が校長を務めていらっしゃいます京都市立堀川高等学校がこちらのSSHに指定されておりますので、後ほど実際の学校の取組などについても御紹介いただければと存じますけれども、文部科学省や科学技術振興機構は、このSSHが行う学習指導要領によらないカリキュラムの開発・実践ですとか、課題研究の推進ですとか、観察・実験等を通じた体験的、あるいは問題解決的な学習を支援しておりまして、各高等学校では大学の研究者や研究機関ですとか、あるいは民間企業とも連携しながら将来の国際的な科学技術人材育成に向けた様々な取組を行っているところです。
 実際にSSHに指定されている高等学校、専門学科といたしまして理数系科目を必履修教科・科目のほかに25単位以上履修するということが求められている理数科、そして普通科について、それぞれの取組状況をまとめたものが2ページ目以降のスライドでございますが、理数に関する体験学習や課題研究、理数に関する研究発表の機会、科学者や技術者の特別講演ですとか講演会、そういった取組のいずれもSSH、理数科、普通科の順で多く、特にこのSSHの取組が高くなっているところが見て取れるかと思います。
 続きまして、5ページでございます。この5ページからは、国際科学オリンピックについて説明をさせていただいております。国際科学オリンピックは、すべての国の科学的才能に恵まれた子供たちを見出して、その才能を伸ばすチャンスを与えること、あるいはその才能を伸ばすこと、また、国際交流ですとか国際理解を深めることなどを目的としておりまして、日本も含めまして各国の持ち回りで実施をされております。自然科学系分野において日本が参加している科学オリンピックといたしましては、数学、物理、化学、情報、生物学、地理、地学がございまして、表にまとめておりますように、国内予選を経て代表選手を選考しているという状況でございます。
 6ページに、これまでの日本代表の結果を示させていただいておりますが、日本の高校生の成績は、御覧のとおり年々向上しておりますし、また、7ページ目のスライドにございますように、国内大会の参加者の数も年々増えております。また、8ページにございますように、国内で行われている科学オリンピックについて紹介されている割合ですとか参加割合につきましても、先ほど御紹介いたしましたSSHというのは、特に高くなっているというのが明らかになっております。
 おめくりいただきまして、9ページのほうを御覧ください。こちらは、日本数学オリンピック参加者の現在の職業に関しまして、過去、科学技術政策研究所が調査をしたことがございますので、それを御紹介したものでございます。民間企業や公務員等の事務従事者のみならず、研究者ですとか技術者、あるいは医師、教員などの職業についている者も少なくないということが見て取れるかと思います。
 なお、10ページにございますように、文部科学省といたしましては、今年度より科学技術振興機構が主催で科学の甲子園全国大会という新規事業を開始することとしておりまして、来年3月に開催されることとなっております。こうした科学技術に関する優れた才能を有する生徒に対する支援策は、着実に整備されつつあるとは思っておりますけれども、更なる充実に向けて、この後、御意見をいただければと思っております。
 また一方で、全国の中にはいわゆる文系の分野においても同様に、言語力や論理的思考力を鍛える特色ある教育を行う学科もあらわれております。先ほど御紹介しました堀川高校におかれては、平成11年に、自然探求科に加えて人間探求科という専門学科を設置されておりまして、自然科学系、そして人文科学、社会科学系のそれぞれで専門的な研究につながる学習を進めておられ、そういった学科としては先駆的な存在かと思いますが、例えば11ページのほうに掲載させていただいておりますように、過去、SSHに指定されておりました大阪府立北野高等学校、こちらおきましても今年度から普通科に併せて、文系・理系ともに、進学指導に特色をおいた専門学科として文理学科というものを設置されております。
 現在、設置1年目ということでございますので、2年次以降の実際の教育活動は来年度以降ということになりますけれども、2年次からは探求的な活動学習として、1年間、週1回、授業時間にグループあるいは個人で研究に取り組む課題研究ですとか、京都大学の研究室への訪問ですとか、大阪大学の公開講座の受講などを予定されているとのことでございます。
 こうした取組はこのほか、例えば富山県の富山中部高等学校ですとか香川県の三木高等学校などでも見られるところでございます。
 もう1枚おめくりいただきまして、12ページを御覧いただきたいと思います。こちらは、商業科を改組して未来社会創造学科エンタープライジングというものを設置されました京都市立西京高等学校の取組でございます。英語運用能力ですとか情報活用能力、プレゼンテーション能力といったコミュニケーション能力の開発に着目をして、学校独自の専任のネイティブスピーカーによります英語の専門科目ですとか、「シンキング・スタイル」という名称だそうですが、情報を元にした専門科目を設けられて情報機器の機能や情報通信ネットワークの仕組み、あるいは情報通信の方法を理解された上で、論文やレポートを作成するために必要な調査手法、あるいは文書作法、あるいはメディアから受け取る情報を読み取っていく方法、こういったことを学習させたりですとか、豊かな経済センスの育成に向けまして「エンタープライズ」と称する専門科目を設けていらっしゃいまして、KJ法といった、実際にアイディアを引き出す手法を学習しながら、実存する企業から新商品や新サービスなどに関する課題を与えられ、生徒がアイディアを出し合って、整理してプレゼンテーションを行う、あるいは、地元の京都ですとか上海でフィールドワークを実施して調査報告書をまとめたりする、そういった学習を行っておられます。
 この後の御審議では、こうした取組につきましても、その意義ですとか充実方策などについて御意見をいただければと思っております。
 続きまして、資料3を御覧いただきたいと思います。いわゆる早修制度についてまとめております。日本の初等・中等教育では戦後、いわゆる年齢主義を採用しておりますので、長年の間、飛び級や飛び入学といったものは認められておりませんでしたけれども、1980年代ころから教育の自由化ですとか多様化といったことが、臨時教育審議会や中央教育審議会において議論されるようになりまして、このスライドの2ページにございますように、平成9年の中央教育審議会におきまして、「18歳未満であっても、特定の分野について稀有な才能を有する者については、教育上の例外措置として大学入学資格を認めるという制度改革を行うことが適当」との答申がなされました。
 この答申では、「生徒の全人格的成長ですとか円滑な適応等の点を勘案して、対象を高等学校に2年以上在学した17歳以上の者とすることが適当」とされております。
 その一方で、飛び入学という形で、高等学校を中退して大学に入学することになりますので、大学を中途で辞めた場合には、本人の最終学歴が中学校卒業となってしまうということについての懸念も示されてはおりましたけれども、1枚おめくりいただきまして、3ページに制度の内容をお示しさせていただいておりますが、平成10年度から17歳(高校2年生)からの大学への飛び入学制度というものが導入をされております。 
 この制度では、中央教育審議会ですとか国会における法案の審議におきまして、先ほども申し上げましたが、生徒の人格的成長や高校教育への影響、あるいは安易な学生集めに利用される恐れがあるといった懸念が示されましたので、一定の要件を設けております。
 こちらにございますように、対象者につきましては年齢要件のほかに、「大学が定める分野における特に優れた資質を有すること」。また、受け入れ大学におきましても、「当該分野に係る大学院が置かれ、かつ、特に優れた資質を有する者の育成を図るのにふさわしい教育研究上の実績や指導体制を有すること」。また、「大学が入学希望者を『特に優れた資質を有する』と認める」際には、大学だけの判断ではなくて、「在学校の校長の推薦を求める等により、制度が適切に運用されるように工夫される」こと。また「受入れ大学は、制度の運用状況について、自己点検評価を行い、その結果を公表すること」というふうに条件を課しております。
 その結果といたしまして、実際に活用されたのは、4ページにございますように、平成10年からの累積人数として、平成23年度までに97人が――一番右下の数字でございますが、実際に飛び入学を行っているというところでございます。
 その一方で、5ページのほうに掲げさせていただいておりますが、政府に設けられておりますグローバル人材育成推進会議という会議がございます。これは中間まとめの時点では官房長官が議長を務められ、文部科学大臣、国家戦略担当大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣を構成員として設けられた会議で、政治主導で御議論いただいた会議でございますけれども、そちらから本年6月に中間まとめを取りまとめていただいております。
 その中では、高校留学の促進等の観点から、高校において早期卒業制度の創設のための制度的な整備等を検討することが明記されております。グローバル人材の育成につきましては次回以降の御審議を予定しておりますけれども、その優れた才能のある生徒の教育という観点からも、こうした高校で早期卒業を認めるといったことの是非につきましても、御意見をいただければと思っております。
 なお、御参考までに、6ページにございますように、大学の学部段階におきましては、修業年限4年でございますけれども、4年未満での早期卒業の制度と、3年次からの大学院への飛び入学の双方の制度が設けられておりまして、それぞれ大体、年間約300人程度の実績があるということでございます。
 また、もう1枚おめくりいただきまして、初等中等教育段階におきましても、これは中等教育の段階になりますが、早期に上の学年の指導内容を学習するという点につきましては、7ページにございますように、中高一貫教育制度で一部、実現しております。中高一貫教育制度につきましては、中等教育段階の複線化を図って、生徒や保護者により幅広い選択肢を提供するという観点から、平成11年度から制度化されて導入されておりますが、7ページのスライドの一番左にございますように、中学校段階と高等学校段階が1つの学校として教育を行う中等教育学校。また左から2つ目のパターンになりますが、同一の設置者が、中学校で入学した生徒を無選抜で高等学校に進学させ、一貫教育を行う形の併設型の中高一貫校におきましては、8ページの表の中ほどになりますけれども、中学校と高等学校の間での指導内容の入れ替えですとか、高等学校から中学校への指導内容の移行といったことを認めております。
 9ページにございますように、これらの教育課程の特例につきまして最も活用されておりますのは、国立はもともと母数が5校として少ないのですが、公立は176校、私立221校につきまして平成22年に調査いたしましたところ、こちらの高等学校から中学校への指導内容の一部移行という形が、最も多く活用されております。
 そして、10ページにございますように、教育課程の基準の特例を実際に活用して何が成果があったのかといったことも、その時調査をいたしましたけれども、こちらに幾つかの項目がございますけれども、一番右側の「高等学校からの中学校への指導内容の一部移行」が、最も成果があったと学校側から回答があったといったような状況がわかっております。
 事務局からは以上でございます。

【小川部会長】

 ありがとうございました。では、これから審議に入っていきたいと思います。
 今日の論点は、もう1度確認ですけれども、資料1に記載しているとおり、生徒の優れた才能や個性をどのように伸ばしていくか。それに関わって、今日は2つに分けて、前半、後半ということで意見をお伺いできればと思います。前半が高等学校における取組、そして後半が早修制度についてということで、2つに分けて進めていきたいと思います。
 なお、今日の議論ですけれども、芸術的能力とかスポーツ能力において優れている生徒をどう指導していくかということもありますけれども、今日の論点は、先ほど事務局から説明のありましたとおり、学問的な能力を中心にして御審議いただければというようなことですので、よろしくお願いいたします。大体40~50分の時間を取って、まず、高等学校の取組について意見交換をしていきたいんですけれども、最初に話題提供というわけでもありませんけれども、SSHの取組をなさっている堀川高校の校長の荒瀬委員もいらっしゃいますし、また、学力の高い生徒を伸ばす取組をなさっている灘中学・高等学校長の和田委員もおりますので、このお2人から、最初、自校の取組ですね、それをまず紹介していただいた後に、今の事務局の説明いただいた資料とお2人からの問題提案というか話題提供を踏まえて、皆さんから御意見を伺うというふうなことで進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。 
 じゃ、最初に荒瀬委員のほうから、堀川高校における取組について御紹介いただければと思います。

【荒瀬委員】

 ありがとうございます。こういう場で学校のことを御紹介できるというのは本当に光栄に思います。
 それでは、私のおります京都市立堀川高等学校の御説明を、A4判の学校案内がございますが、そちらのほうで御説明をさせていただきます。
 1枚おめくりいただきますと、2ページのところに「すべては 君の『知りたい』から はじまる」とありますが、これがメーンメッセージと呼んでおりますけれども、1999年から新しい校舎で新しい取組をしていこう、その際の基本的な考え方、生徒たちに対する呼びかけというのがこういうものでありました。また後で、どうぞ御覧いただければと思います。
 次、3ページでございます。公立高校として目指しておりますのは、かつての京都の公立高校――全国的にもそうかもしれませんが、自立する18歳を育んでいきたいということでやっております。社会生活をしていく上で必要な教養の基礎について、高校時代に学ぶということと、学校生活を通してそれらを実際に活用する中で、様々な経験を重ねていくということを重視しています。
 その下に、普通科第1類、普通科第2類、人間探求科、自然探求科というふうに学科コースが書かれていますが、京都府内の公立高校は、多分今、全国的に見ても公立高校の入学試験の在り方としては、大変複雑な部類に入ると思います。恐らく、この二、三年のうちに高等学校の入学者選抜制度がもう少しわかりやすいものに変わっていくと思いますが、普通科を設置している学校の中には類型制が置かれ、かつ、また、その普通科以外に普通科タイプの専門学科というのが非常にたくさんの学校にあります。先ほど御紹介いただいた西京高校のエンタープライジング科というのも、商業科からスタートはしておりますが、やっぱり普通科タイプの専門学科。堀川高校に設置しております人間探求科、自然探求科、これは入学する時点では分けて採りませんので、探求科というふうに校内的には総称しておりますけれども、こちらも普通科タイプの専門学科です。
 定員が、普通科第1類は40名、普通科第2類が40名、探求科は全体で160名ということで、学年240名の比較的小さな学校です。
 前回でしたか前々回でしたか、御紹介いたしましたが、普通科第1類というのは、これは全く地域の学校の役割を果たしています。近所の子供たちが入ってきます。この普通科第1類は総合選抜という選抜制度をとっておりまして、京都市内の通学圏は2つありますが、その通学圏内の合格者がまず決まって、その後、教育委員会が入学校を決定していくということで、どの高校に行くかということが選べない形というのがこの定員の大半です。一部、生徒の希望に添うということも導入しておりますけれども、大半の生徒は自分で行く学校を選ぶことにはなりません。
 普通科第2類というのは、通学圏内で自分が行きたい学校に願書を出して、受験をして合否が決まるというふうな形です。これは恐らく一般的なものだと思います。
 一方、専門学科である探求科のほうは、これは京都府内に唯一であるということで、どの学校の専門学科もすべて京都府内全域が通学区域というふうになっています。実際上、京都市内にある堀川高校ですけれども、舞鶴といったようなところから、通いはできませんが、親戚の家から下宿して通っているという生徒も、わずかではありますが、います。
 右のページ、4ページであります。先ほど御紹介いただきましたように、堀川高校は平成14年度からスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けまして、これで3度目の指定を受け、今現在、継続をしています。そこの写真の上のところで、「堀川高校のSSHは単なる理科教育を越えた」などと大言壮語しておりますけれども、要は、SSHの対象というのを、当初は理系の生徒だけでスタートいたしましたが、次第にその対象を増やしていったといいますか広げていきまして、今、全校生徒。文系であれ理系であれ、理数系の教育というのは非常に重要であると。また、理系であったとしても、理数系の教育そのものよりも、そもそも学問をしていく上で基礎になる言語力というのが大変重要であるということで、これは百数十校あるスーパーサイエンスハイスクールの中では恐らく非常に珍しい研究テーマだと思いますが、言語能力の向上というのを挙げています。
 理系に進むにせよ文系に進むにせよ、社会に出た段階では、理系だとか文系だとかといったような仕事であるとか場面というのが必ずしも多くはないということを、その下のほうに載っております名誉学術顧問でありますとかスーパーサイエンスハイスクールの運営指導委員でありますとか、あるいは学術顧問の方から大変厳しく御指摘を受けています。ここにはもう名前は載っておりませんが、亡くなられました動物行動学の日高敏隆先生とかにも顧問をしていただいておりましたけれども、日高先生や、それから京大の元総長の井村先生とかから、文系理系に高等学校を分けるのは本当にけしからんということで、再三おしかりを受けました。ただし、じゃあ、大学入試を文系タイプ・理系タイプというふうな形をやめていただければ随分と変わるのですが、と申し上げると、それは永遠の課題だというふうにおっしゃっておられました。
 ともかく、しかし、私たちもおっしゃることにつきましては十分に理解ができますし、生徒たちの全面的な発達ということを考えれば、早い段階から大学入試にシフトした形で文系・理系というようなことをしていくよりも、基礎の部分をしっかりと広く、かつまた、可能な限り深く学ぶことを進めることが正しいだろうというふうに考えてやっています。
 特に言語力の向上ということをテーマに据えようと決めましたのは、宗教学者の山折哲雄先生から、スーパーサイエンスというのはそもそもどういう意味なのか。スーパーというのは最先端の意味なのか、それともサイエンスを超えるという意味なのかというような、大変哲学的なお問いかけを受けましたのと、同じやるのであれば、全く今までとは違ったようなスーパーサイエンスの取組をするべきではないかというご指導もありまして、言語力の向上ということに焦点を据えてみたらどうかということで、現在、進めているところです。
 その中身につきまして、そこに簡単に書いております。
 次のページ、5ページ、6ページを御覧いただきたいと思います。こちらのほうは、大変申し訳ありませんが、文字がほとんど読めないような細かい文字になっております。基本的にこれは中学生向けの学校案内ということもありまして、読みたい人だけが読めばよいという、非常に不親切なパンフレットなんですが、これがSSHによって特に支えられた堀川高校での取組です。探求ということをキーワードに、探求をするための基礎を学ぶ探求基礎という科目を、来年度のカリキュラムから、普通科、探求科ともに入れます。現在、普通科は総合探求、探求科は探求基礎というふうに科目名は違うのですけれども、これからは1つの科目名にして進めていこうと思っています。
 ここでは4つの力、受け取る力、考える力、判断する力、表現する力というのをまずつけて、それによって自分の知りたいと思うものに気づいて、それをさらに深く見ていくというような取組を、段階を経て行っていくことを進めています。
 右のページの一番上に、大変よく売れましたといいますか、多くの方がお読みになった『知の技法』の一節を、これは東大出版会の許可をとって掲載させていただいていますが、私たちは、学びのための作法を生徒たちに身につけてほしいということを思っています。知りたいということを、そもそも、思っている生徒はいいですけれども、必ずしもすべての生徒は知りたいと思って入ってくるわけではなくて、ただ何となく来たといったようなことも多く見られます。ですから、知りたいという思いについて、まず、生徒たちが自分で持つためには知識が必要になってまいりますし、その知識を、しかし、ただ単に教え込むだけではなくて、どういう形で体験的に学べるような取組にしていくのかということを、試行錯誤しながら工夫をしています。
 上の部分に2人の生徒の写真が載っています。左側は、これまで普通科総合探求、右側はこれまで探求科は探求基礎という形で分けておりましたので、2人の生徒の写真とコメントが載っていますけれども、いずれも、探求という取組についての意義は一体どうだったのかというのを、卒業した時点で考え直しています。この授業自体は教科書がない授業でもありますので、生徒たちが、自分たちの取組というのは一体何なのかということを考えながら進めていくといったような面もあります。大変読んでいただきにくい、細かい文字ではありますけれども、お時間があればお読みいただければと思っています。
 私たちはこれらを通して、1つには、学問に対して真摯に取組みたいと思うような高校生に育てて、大学に引き継ぎたいということを思っておりますが、ただし、それが学問研究にのみつながっていくとは考えておりません。段取りを組んで、その組んだ段取りに従って物事を進めていって、うまくいかない場合にはまた工夫をして、見直して、やり直して、場合によったらその方法をやめて別の方法を考えたり、それを自分1人でやるということも大切ではありますけれども、いろんな人と話し合いながらやっていくといったようなことも大変重要であると考えておりまして、これは一種のキャリア教育の形であるというふうに考えております。
 そのほか、学校案内のほうには幾つか、いろいろと書いておりますけれども、非常に文字が細かい、すなわち情報量がたくさんありますので、その辺はまた適当にお考えいただきたいと思うのですが。
 実は、卒業生の中でちょっとユニークな生徒がいますので、簡単に御紹介しておきたいと思います。まず、御紹介します2人は、この子たちは入学する段階では、何をしたいということを特に持っていませんでした。1人は、世の中の役に立ちたいという気持ちだけはありました。もう1人は、とにかくわからないことを調べて知っていきたいという思いを持っていました。
 こういう思いを持っていても、それが具体的に取り組めるような対象ですとか機会ですとかがなければ、きっとそれはそのままに終わってしまって、ずっとその生徒たちの中に内在したままで大学に行って花開くということもあろうかとは思いますが、高等学校の間にそういう経験を持つことによって、大変躍進したといいますか、大きく前に進んだ例です。
 1人のほうは、世の中に立ちたいということで考えていたのですが、あるときバングラデシュの土壌の中にはヒ素が入っていて、そのヒ素が入っている水を飲めないから、遠いところまで水を汲みにいかなければならない、その汲みにいく仕事は子供たちがやっているということを知ります。それを自分とを引き比べてみると、なんと自分はのんびりしていることか。ならば、なんとか自分の力でもってそれに取り組めるような方法は考えられないかということを考えていきまして、ヒ酸イオンとリン酸イオンが形が似ている、形が似ているものは性質も似ているはずだということで実験をずっと繰り返して、そして結果的に、ドラム缶を使って、ヒ素が含まれた水を、赤土を使うことによってヒ酸イオンを吸着させて、結果的に安全な水にするという方法を考案しました。この生徒は科学コンテストに出しまして、アメリカにも行きました。
 もう1人のほうは、環境について勉強したいということで、何でもよかったわけですけれど、ヒートアイランド現象について調べるために風の向きというのを考えたわけです。単なる風速計だと水平方向の向きしかはかれないというので、三次元的な風の向きを調べるということを考えまして、パソコンを使って電気系統の調べるための装置というのを、全部手づくりいたしました。それを数十個作る予定だったんですが、時間がなくて3つしかできなくて、実験自体は大した結果には結びつかなかったのですけれども、そういったことをいたしました。
 それらが、これが非常に幸いなことに、スーパーサイエンスハイスクールの研究指定を受けていますと、経費の面でも大変支えていただいているということを思っています。
 この子たちは現在、大学でいえば京都大学の理学部で、1人はもう大学院生ですけれども、学んでいます。結果的に大学に行くために、この子たちもまたある時期は、相当長い時間をかけて受験勉強をしています。ですから、高等学校の学び、様々な興味関心に基づく学びというのが、直接大学に入る上ではちょっと回り道をしたかのような感じさえありますけれども、しかし、結果的には大学で研究をそのまま進めています。
 あと2人、これも簡単に紹介したいのですが、この2人は、いわゆる勉強というのをほとんどしない生徒です。成績は、1人は最下位で入学しました。もう1人は、入学して毎年毎年留年しそうになっていました。
 毎年毎年留年しそうになっていた生徒というのは、『ファーブル昆虫記』を読んで大変感動して、中学時代からずっとハチを追いかけていました。中学時代はよかったのですが、高校に入学してきてもずっとハチばかり追いかけますから、勉強は全然しないので留年しそうになる。ところが、冬になりますとハチが活動しないので、その間は仕方がないから勉強するということで、何度も何度もそれを繰り返して、最終的に大学にも、ですから実は合格しませんで浪人をいたしまして、現在は大学生ではありますけれども、やっています。
 この子たちはいわゆる勉強というのはしなかったのですけれども、1人は実は、高校1年生のときに国立天文台がなさった高校生のためのフィールドワークに参加いたしまして、そこでもういたく感動いたしまして、この道しかないということで、成績はとても悪いのに東京大学に行きたいと言いました。どうしてかといいますと、宇宙の星の起源が知りたいということで、それをするためには電波望遠鏡が必要で、電波望遠鏡の一番大きいのを持っているのは東京大学だというので、東京大学へ行きたいという、非常に素直な思いを持ちました。
 ところが、成績は全然よくなかったのに、驚くべきことにだんだん力がついていきまして、いわゆる受験学力もついてきまして、東京大学には至りませんでしたが、そこで名前を言うとちょっと語弊があるんですけれども、東北大学に合格いたしました。東北大学に行きまして、4年たったら必ず自分は仙台から東大に行くんだと言って、そのとおりいたしました。で、思いのままの研究室に入り、現在はドクターの1年生ですけれども、活動の本拠をアメリカに移してずっと研究をしています。
 こういう生徒たちにスーパーサイエンスハイスクールのような機会がなかったとしたら、きっと単なるちょっと変わった、しかも勉強をしない劣等生で終わっていた可能性があります。そのハチの研究者を目指している生徒に至っては、中学時代にもらう小遣いを研究費と呼んでいたそうですから、相当、そういう意味では変わっています。5日間の職場体験は京都大学の総合博物館に行っています。総合博物館で、現在館長をなさっている古生物の大野先生が標本の整理をその子にさせたと。この子は、いわば総合博物館を職場だと思って行っているわけですね。
 そういった感覚の生徒たちというのが、実は幾らもいるということを知りました。ですから、こういった生徒たちに対する指導というのは非常に重要である。かつまた、こういった生徒と共に学ぶ、ちょっとこれも語弊がありますが、いわゆる普通の生徒ですね、その生徒たちも大変刺激を受けるということが、先ほど学校の学科コースの別を申し上げましたけれども、私たちは経験的にそれを見ております。
 そういうことで、いろいろな機会が中学生、高校生に与えられるということが大変重要であることをつくづく思うということで、御報告をいたします。

【小川部会長】

 ありがとうございました。引き続いて、和田委員のほうからお願いします。時間の都合上、10分程度でよろしくお願いします。

【和田委員】

 はい。
 灘中学校・高等学校、併設型を平成19年から名乗っておりますけれども、こちらの簡単な説明をさせていただきます。
 今の荒瀬先生のところの堀川高校さんのようにシステマティックなことは何もなくてですね、したがって、それほど御報告することもないんですけれども、薄っぺらいパンフレットの、1枚めくっていただいたところにありますように、創設当時の顧問には嘉納治五郎先生になっていただいた。文部官僚でありますし、講道館柔道の創設者でもありますし、また東京高等師範学校の校長を長い間されていた。その先生が、たまたま御影という神戸地区の出身でありまして、その近くに私立中学をつくるということになりまして、顧問になっていただいたということで始まっております。したがって、学校の精神も講道館の精神そのままで、「精力善用」「自他共栄」、これは嘉納先生が一生涯唱道されていた言葉なんですけれども、これを校是にいただいて現在まで来ております。
 「精力善用」は自己修養といいますか、自分の力、長所短所をしっかりわきまえて、最大限に自分の力を利用するということ。「自他共栄」は、自分一人で今の立場に立てたわけではなくて、両親や友達や、あるいは先生方、そういう人々のおかげを知って、そしてその恩返しをするために努力をしていく、そういう教えであり、私たちも教育の中でそれを伝えていっているところです。
 学校制度としましては、旧制の中学校が5年だったのを新制に学校制度が変わったときに、中学3年・高校3年という両方を併設する形で、6年の学校という形にしたので、6年一貫教育というのは必ずしも仕組んだわけではなくて、自然に5年を6年に延ばしただけという形、自然な形でずっと、戦前以来続いてきている制度だというふうに考えております。
 もう1つ、その6年一貫を完全にするために、中学校1年生の入学時に、各教科から1人とか2人とか出てきまして、7から8人の担任団をつくります。そして、その担任団は、よほどのこと、定年とか病気とかそういうことがない限りは、6年間ずっとその1学年をチームで持ち上がる。学習指導と同時に生徒指導も持ち上がる。これが本校の一番の特徴ではないかなというふうに考えております。
 1つは、カリキュラム上、非常に効率がいい。中学校1年生、2年生、どういうことを教えてきたかということの上に立って、高等学校のカリキュラムも考えていけるということですね。それから、途中でほかの人にその科目を渡さないということで、引き継ぎの手間も必要がないわけですね。3学期の終わりに足踏みをしたり、慌ててばっと進んでほかの人に渡す、そういう必然性がありません。途中で終わっても、また4月から次のところから進めていけばいいということで、非常に効率がいいのです。
 それからもう1つは、6年間、その科目に関しては自分が責任を持って上がるということで、責任回避ができないといいますか、そういう意味で教師の責任感も非常に高くなってくるということ。それと、ずっと付き合っていきますので、生徒と教師の信頼関係が醸成されるということです。特に、中学校から高校へ上がる頃には、非常に多感な時期を迎えますのでいろんな変化が起こるわけですけど、そういう変化にも、今まで見てきた生徒がどう変わったかというのがわかりますので、非常に気がつきやすい。そして、今言ったように、担任がチームで見ていますので、チームとして問題に対処ができるという形であります。
 おかげで、学年ごとにまとまっているので、管理職としては非常に処理がしやすいといいますか、大概のことは学年に任せて、そして全体として関わることに集中できるというように、非常にメリットが多い方法だと思っております。
 それから、学習進度の話ですが、進度が早くて高等学校のことをどんどん中学校でやっているかのように思われがちですけれども、進むというほうの進度ではなくて、むしろ深さのほうの深度が深いというふうにお考えいただきたいです。6年ゆったりありますので、それこそ、最近、テレビでも99歳の元教員が取り上げられ、横道にそれた授業というようなことが話題になっていますけれども、そういう授業展開が非常にしやすい。もちろん、指導要領で規定されていることは、ミニマムスタンダードとしてわかっているんですけれども、それにプラスアルファするところで非常に各教員の自由度が多く、その先生、その先生のやり方が生かしやすいということがあります。
 生徒のほうからいうと、自由と自律といいますか、自分で考えて、そして自分で規制をかける。自己規制ですね。これはまさに精力善用の具現化だと思うんですけれども。勉強方法でも、友達がやっているやり方が必ずしも自分に合うわけではなくて、自分に合ったものを6年のうちのできるだけ早い段階で見つけて身につけてもらうように指導しています。
 本校に入ってくる生徒の場合、例えば小学校で漢字を覚えるときに、1回で覚えられるのに何回も書かされるというようなことで勉強が嫌になっているような生徒もいるわけですね。だから、ちゃんと覚えたどうかという結果は問うんですけれども、その結果に至る勉強方法は、自分に合ったものを工夫してやればいい。なにも20回書いたものを提出するというのがすべてではないというふうに思います。百ます計算も同じようなことで、そういうことが必要な生徒には有効ですけれども、そこまでしなくてもできる生徒には、もっとほかにしたいことがあるわけで、そういう点は自由にすればよいと考えております。
 そういう形で、カリキュラムも、パンフレットの教育課程のところにありますように、いわゆる私学の進学校としては時間数的にさほど多いわけではありません。その分、個性を伸ばす時間的余裕といいますか、そういうものを十分に与えているわけです。
 偏差値でいうと、高い生徒が入ってきてありがたいんですけれども、偏差値というのは必ずしも、能力というか学力が高いという意味だけではなくて、偏っているという意味なので、非常に個性的に偏っている生徒が多いことは間違いないわけですけれども、そのいい個性を削ってしまうというような管理教育は本校には向かないので、できるだけ自由さを持たせて、それぞれのよい個性はどんどん伸ばしていけるような、そういう余裕。それこそゆとり教育ではないかというふうに考えて、無理にたくさんの授業をしたり補習をしたりはしないという方向でおります。
 そのおかげで先ほど話題に出ていた国際科学オリンピックでも毎年数名のメダル獲得者を輩出しております。ただ、去年ですか、科学技術振興機構からSSHに是非という話もあったんですけれども、今言いましたように、学校全体として何か制度にはめるということはなかなか難しい形の学校ですので、今のところは少し保留をさせていただいているところであります。むしろ放課後の時間で、そういうことをしたい生徒が集まっていろいろと切磋琢磨して挑戦しているという姿ですので、それを学校としてはサポートしてあげる。一方で、運動とか芸術とかで自分の個性を伸ばしている子は、そういう形で伸ばしてあげるというのがいいのではないかなというふうに思っております。
 実際、東京大学の理科三類と東京芸術大学とを天秤に掛けて、東京芸大のピアノ科へ入って大学院を首席で出たとかいうような生徒もいますし、本当にそれぞれの個性を持っている生徒がいます。また、本校の中でレゴの組み立てに非常に興味を持っていまして、本校在学中に等身大のドラえもんをレゴでつくったりしたんですけれども、その技術を持って東大の理工に行きまして、東大では安田講堂をレゴでつくって、去年、総長賞をもらったというような生徒も出ておりますし、そういう意味で、本当に優秀な個性というものはそれをゆったり伸ばしてあげる余裕が必要ではないかなというふうに思っております。
 同様の趣旨で、教員も、先ほども言いましたように、独自性を持てるようにできるだけ校務も効率化して、授業の準備とか生徒と向き合う時間、それを十分に取れるようにという配慮をしております。
 そういう形で生徒との触れ合いが深くなればなるほど、やりがいも出てきます、職場愛も出てきます。そして、やめていかないといいますか、学校への定着が図れるということもありますので、そういうことを我々は大事だなというふうに思っております。
 最後ですけれども、職業教育問題もこの部会のテーマになると思いますが、本校の場合はOBに優秀な方がおられるので、そういう方を中心に土曜日に、自分の仕事の内容とか、あるいは本校を出てからどういう経緯でそういう道を選ぶことになったとか、そういうような話をしていただいたり、最近はどんどん拡大して、OBのおられる大学医学部の解剖教室の見学とか、あるいは春休みなどに東京へ出てきて、東京で活躍している方々の職場を回るとかそういうようなこともやっております。が、これも本校の場合、制度としてやっているのではなく、有志が集まってという形をバックアップする形にしております。
 それから、もう1つの柱として、グローバル人材の育成があります。もちろん、ネイティブの専任教員を2人抱えていること以外にも、多くの学校でも最近やられています、英国への異文化研修なども行っております。それ以外に、英国のウインチェスターという学校からの呼びかけで始まったのですけれども、全世界から10カ国の私学の優秀な学校が集まったシンポジウムというのが内々で行われており、ここ3年ほど連続して参加しております。また、クラブとかグループ単位で交流ということで、今度の春休みには柔道部とラグビー部がイギリスのハロー校との交流に出かけるというような形で、学校全体の制度としてではなくて、それぞれの創意工夫でいろんなことをやっていこうということであります。
 簡単ですけれども、特別に何か制度をつくってやっているのではなくて、もともとあります普通科という枠組みの中で、できることをやっているということの御紹介で終わらせていただきます。

【小川部会長】

 ありがとうございました。2つの報告は非常に詳細な報告でありまして、少し討論の時間が短くなっていますけれども、最大でも20分ぐらいは時間をとって意見交換をしたいと思います。
 今の2つの報告に対する質問もあるかと思いますけれども、その質問を含めて皆様から御意見をいただければと思います。それではどうぞ皆さんから自由に御意見をお願いします。
 じゃあ、長南委員。他にございますか。じゃあ、安西委員。どうぞ。

【長南委員】

 今、荒瀬委員と和田委員さんのお話を聞いて、SSH、スーパーサイエンスハイスクールの良さを本当に実感しました。山形県でも第1期のときに1校、指定を受けたのです。その学校が、3年後になって第2期のときに、実は校長が代わって継続の審査に出さなかったのですね。私はその当時、教育委員会にいましたので、非常に残念に思ったんです。
 実は、山形県の場合は理数科の生き残り――生き残りという言い方はちょっとよくないですけれども、以前より人気がなくなってきて、理数科の生き残りを何とかしなきゃならないということで、スーパーサイエンスハイスクールのこの事業に応募したのですね。それで、うまく受かって3年間やったところで校長がかわった。なぜそこで第2期、もう少し頑張ってできなかったのかなと、今でも思うとちょっと悔しい思いをするのですけれども。
 県内のある高等学校なんですけど、この地域は、地域に工場がいっぱいあって、工場のための敷地を準備して市が態勢を整えているというところなんです。ですから、高等学校と地域との関係、それから、もちろん子供たちとの関係なんかも、これは十分考えたわけですけれども、一番大事なのは校長の気持ち、意志ではないのかなと。校長の意志が決まればなんとかできるのではないかというふうに思うのです。
 ですので、まず校長の意志と、職員の中では全員まで気持ちが一致しなくても、二、三人の職員が何とかやろうという気持ちがあれば、できると思うのですね。ですので、そういう体制が整ったら、是非このスーパーサイエンスハイスクールについては、やってみたらどうかなというふうに思うのです。
 第2期のときに、なぜできなかったのか。いろいろ教育委員会としての支援姿勢とか気持ちもあったかと思うのですけれども、そこのところを県の教育委員会と学校とが一体となって進めていくという、そういう方針が必要なのかなというふうに思います。
 ですので、200校を目指すということですけれども、200校を指定する際の指定の仕方もですけれども、競争的な部分もあってもいいと思います。でも、県の教育委員会と学校との連携姿勢をちゃんと整えることができる県がもしあった場合には、そういうような特別の指定、枠外の指定みたいなものですね、そういう指定の仕方もあってもいいのではないかなというふうに思います。

【小川部会長】

 ありがとうございました。じゃ、安西委員、よろしくお願いします。

【安西委員】

 今の堀川高校、また灘中・灘校のお話は大変感銘を受けるところがございまして、若い人たちが本当に優れた才能を花開かせるような、そういう場というのはこれからの日本にとって大変大事に、ますますなっていくと思います。
 その上でのことなんですけれども、これまで一流大学といわれていた、そういう大学の出身者等々が、今般の津波、原発の事故等々の中で、ある意味、エスタブリッシュメントとして本当に日本の機能を担ってきているのか、きていたのかということが問われている時代になっているように思われますし、また、これからの時代に、経済的にも内需の問題等々、日本が本当に立ち行くのかどうかということが懸念されている、そういう今、時代になってきているわけですね。
 そういう中で、これまで大学が主なターゲットになるとは思いますけれども、これまでの高校教育、また大学教育の在り方というのが、もう従来のような、従来いわれていた、一流大学の方向を目指すという、そういうことで本当にいけるのかどうかということを、やはりここで一度は考えていただきたいなというふうに思うところがございます。
 これは社会構造の長年の蓄積があるものですから、もちろん簡単な問題ではございませんけれども、生徒の優れた才能や個性というのが、従来の優れた才能や個性ということで今後も通用するのかということについて、今日ということではございませんが、是非こういう機会にお考えいただければありがたいなというふうに思っております。
 長くなりますけれども、私自身は大学という場は、答えのない問題にみずから答えを見つけ出していく、それの訓練をする場に違いないというふうに考えておりますけれども、優れた高等学校の教育が、もちろん高校で卒業して社会に出る若い人たちもたくさんいるわけでありますけれども、大学に行くのであれば、今申し上げたようなこれからの時代の学びの在り方というんでしょうか、そういうことを是非念頭に置いてお考えいただければありがたいなというのが、個人的な考え方でございます。
 ありがとうございました。

【小川部会長】

 ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。

【川嶋委員】

 よろしいでしょうか。

【小川部会長】

 じゃあ、川嶋委員と野上委員、そして長塚委員、お願いします。

【川嶋委員】

 ありがとうございました。2つの学校の取組が非常にすばらしいということには異議はございませんけれども、しかし、これまでの、議論を踏まえますと、高等学校教育システム全体としては非常に多様化しているということでした。
 それで、SSHに指定されている学校、あるいは灘高等学校のように、ある意味、特別なというか、生徒自身、多様性の中にもある一定のレベルの生徒が集まっている高校で、これらの様々な優れた取組が行われる。特にやる気と能力を持っている生徒に対してしっかりと支援されるというのは、それはそれですばらしいことだと思うんですが、一方で普通の、いわゆる多様化している高校の中にも、多様化ということにベクトルが2つあるわけで、その中には、いわゆるタレンテッドな生徒もいっぱいいますし、個性的な生徒もいっぱいいるわけです。そういう生徒に対して、一般の高等学校でどうやって才能を伸ばしていくような支援ができるのかも考えることが必要ではないでしょうか。
 あるいは、次の課題である早修問題とも絡んでくると思いますが、既に多くの大学と高校の間で高大連携の取組があるわけですけれども、大学の授業ないしは大学の先生が、能力と意欲のある生徒に対して大学レベルの授業を提供するというようなことを既に多くの大学が実施しています。しかし、必ずしも高校のスケジュールと大学のスケジュールが合わなかったり、あるいは単発的な授業であったりして、高校教育と大学教育の接続という観点から、必ずしも十分な効果を上げていないように思われる。
 そこで、アメリカにはアドバンスド・プレ-スメントという取組があります。高校の先生が大学レベルの授業をそれぞれ高等学校で行うことによって、大学に出かけなくても高校生が高校で大学レベルの授業を受けて、試験に合格すれば単位が付与され、大学に行ってそれが大学の単位として認定されるというような仕組みもあるわけです。SSHのように特定の生徒に集中的に後押しするということも、これからは必要だと思いますが、それ以外にも多くの高校生を対象として高度な授業や体験が提供できる方途としてアドバンスド・プレースメント的な取組を高校と大学側が共同して実施していくということも、これからの1つの方向性としては、あるんじゃないかというふうに思います。 以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。今日の2つの報告は、SSHとかある一定レベル以上の生徒が集まる学校に関する支援の取り組みでしたが、そうした支援も必要ですけれども、普通の高校の中でも優秀な生徒がいるわけですので、そうした普通の高校にいる生徒の優れた個性を、どういうふうに支援して伸ばしていくか、そういう視点も必要ではないかという問題提起だったと思います。当然、そういう視点はこの作業部会でも重要だと思いますので、是非そういう視点からもいろんな問題提案をしていただければと思います。
 それでは、野上委員、お願いします。

【野上委員】

 今、座長が言われたような生徒さんの問題なのでございますけれども、私、生徒の才能とか個性を伸ばすためには、教科、カリキュラムに言及する話ではないのですが、感性教育の充実が極めて重要だと思っております。
 それはなぜかといえば、最近、産業界に入ってくる若者を観察しておりますと、見ても感じず、聞いても感じず、触れても感じずの、いわゆる無感動人間が多いことに、多くの経営者が嘆いています。
 例えば、こうした若者が従事するものづくりの職場では、自分のつくった製品がよいものなのか、問題あるものなのか、また自分が生産しているものが社会的なものなのか、反社会的なものなのか、ということに極めて無関心、無感動なるがゆえに、職場の改善が図られないとか、あるいはイノベーションが起こってこないというのです。
 もちろん、こうした現象の原因を教育界だけに、私は求めるものではございません。産業界にもその大きな原因が実はございます。それは皆さん御承知のように、現代の産業現場と云えば、経済優先や生産効率優先の下で、ベルト上を部品が流れるライン生産やロボット生産など、いわゆる分業生産が主流でございます。現場で働く若者の多くは、したがって仕事の一部分しか分担せず、生産の全体像がよく見えません。例えば、今、つくっているものが何のためにつくられて、どのような役割を果たすのかも、理解できないまま働いていることが結構多いのでございます。
 したがって、自分が関わる仕事の意義もわからずじまいで、結果として若者は使命感も達成感も得られないということになっているのではとのじくじたる思いが、実は産業界側、企業界側に極めて高い反省としてございます。
 このようなことから、現在、多くの企業が、一見非効率に見えるセル方式という、多くの部品を1人で組み立てさせる生産方式に移しておりまして、自分がどのような製品をつくっているのかを実感、体得をさせているのが現状ございます。
 このような試みからもわかりますように、見て感ずる、聞いて感ずる、触れて感ずる人材を、是非学校段階、とりわけ社会に一番近い高校教育段階から育成することが極めて重要なのだろうと思います。
 そのためには、見て感ずるにしても、優れたもの、本物を是非見せていただきたいですし、聞いて感ずるにしても斯界の一流の人の話を聞かせるべきですし、また、触れて感ずるにしても優れたものに触れさせるべきだと思うんです。そのようなことで、物の本質に触れる実体験をすれば、恐らく我々産業界が望む違いのわかるディファレンスな若者を育成することができるのではなかろうかと思います。
 そのためには、プレゼンスやディスカッションにたけ、プレゼンテーションに精通した知識欲旺盛な若者を養成していただきたいというのが、産業界、企業社会の願いであります。

【小川部会長】

 ありがとうございました。長塚委員、どうぞ。

【長塚委員】

 2つの学校の御報告を聞いていて、生徒たちに特にじっくりと学ぶ時間を与えているという、そういうことの大事さを改めて感じました。
 ただ、SSHというシステムの中では、そうはいっても、指定されている学校の中でもごく一部の生徒がそれに関わっているというような実態もありますので、じっくりと学ぶ仕組みというのでしょうか。そういう普段の授業の在り方というのをもっと考えるべきだと感じます。つまりこのSSHのような、課題研究というのでしょうか、あるいは参加型やプロジェクト型とでもいっていいのだと思いますが、大学でも今、そういう方法の授業が増えていると聞きますが、高校の段階もそういう方向をもっと模索していくことが、非常に大事なのではないかなと思います。いかにSSHのようなことができる生徒が増えていくか、そこにこれからの課題があるのかなと思います。
 非常によい試みをされているわけですが、その広がりはまだまだではないかという気がしております。
 特に、大学との連携が一つの大きなかぎになっているというふうに聞くわけですが、大学そのものがこのSSHにどれだけ関わってきてくれているのか。私立でいいますと大学付属校がたくさんありますので、その大学付属校の中では、実は自前で、以前から大学とのつながりでSSHのような取組をしているようにも、私は感じています。
 ですから、もっと大学がオープンになって、より多くの生徒、多くの学校の高校生たちにそういう連携を持てるような形を提供してくれることが大事じゃないかなと思います。
 つい先週、東京でSSHの発表会がありまして、そこには大学関係者で、興味のある方が来ていただいていて、卒業後の進路は自分の大学でなくてもいいから、ほかの大学に行ってもいいから研究室にいらっしゃいとか、声を掛けてくれているようなんですが、ごく一部のその場にいる生徒たちだけの話になっているわけです。これがもっと広がればいいなということを感じているところでございます。 以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。では、アキレス委員、そして北城委員、小杉委員、そして及川委員という順でやらせていただきたいと思います。では、どうぞ。

【アキレス委員】

 まず、2つの学校の試みは、大変すばらしいと思います。SSHが広がりつつあることを今回初めて知りましたが、基本的には、子供たちの「知りたい」という気持ちを、いかに芽を摘まずに伸ばしていくか、そのために学校はいかに最適な環境を提供していくか、ということだと思います。
 その点で1つ重要だと思うのは、子供がそうした「知りたい」という気持ちを持ったり、「やりたい」と思うものを見つけていくときに、周りの環境として、教師の方々がどのような言葉をかけてコミュニケーションをとっていったら、その子のやる気につながっていくのかというところです。今までの教育の仕方では、なかなかそこまで追えなかったと思いますが、子供たちの意欲を高めるコミュニケーションの取り方について、教師の方々がどのような研修を受けているのか、興味がございます。
 それから、もう1つ、すばらしいと思ったのは、言語教育も大事にされているところです。私も仕事上、いろいろなサイエンティストと接する機会がありますが、本当に優れた方は話がとてもわかりやすいという共通点がございます。非常に難しいことを研究なさっていても、素人の私にでもわかるように説明することができるのです。そういう意味で、言語教育を重視されるということは、大変良いところに目をつけられたと思いました。
 それから、灘高等学校さんは、昔から伝統があり、非常に優れた人材を輩出されていて、それはやはり中高一貫教育により、長い目で見て子供たちを育てることができるからだと思いました。
 一方で、今、企業で話題になっている「多様性」という観点から見ると、確かに外国人や海外との交流の機会を設けていらっしゃいますが、多様性の一つとして、優れた女性の人たちと、どのような交流の機会を持っていらっしゃいますでしょうか。男子校ということで工夫をされている部分がありましたら、伺いたいと思います。 以上です。

【小川部会長】

 今の発言で、荒瀬委員と和田委員に幾つか質問があるんですけど、これは全体が終わって、皆さんの御質問を引き取ったうえで最後に御発言いただければと思いますので、よろしくお願いします。
 では、北城委員、どうぞ。

【北城委員】

 2つの高校の話はいずれも感銘を受けて伺いました。堀川高校の荒瀬先生の話の中で、ハチがすごく好きな子供の話とか、天文学というか宇宙の誕生に興味を持つ子供がいるというお話を伺って、それぞれの子供が、自分の興味を探究するためにスーパーサイエンスハイスクールという仕組みは非常に成果を上げたと思います。こういうように、何か1つのことに秀でている子供を伸ばすことは大切です。特に科学技術は日本の将来のために非常に重要な分野なので、科学技術について関心を持っている子供がさらにその才能を伸ばせる環境を作ることは大切です。一方ではある程度の基礎的な知識も吸収しないと、なかなか学問として花開かないところもあるので、ある程度の基礎も必要です。
 そこでスーパーサイエンスハイスクールは成果を出していると思いますが、荒瀬先生がおっしゃった、その上に大学受験のための勉強もしなきゃいけないという問題についてです。できる子は両方できると思うし、基礎を学ぶ中で大学受験もできるんでしょうけど、一方で、もしそれがうまく機能しないと、そういう子供は大学受験の段階でつまずいてしまいます。希望するところに行けなくなってしまうと、せっかく伸ばした芽が伸びなくなる可能性があることからすると、高校と大学の接続で、優れた子供が才能を伸ばせるような機会を与える高大接続についても考える必要があります。先ほど大学入試は永遠の課題だとのお話がありましたけれども、永遠の課題でほうっておいてはいけないと思います。もし荒瀬先生が高大接続に関して、こういう才能のある子供を伸ばす上でどういうことが必要かというお話があれば、伺いたいと思いました。

【小川部会長】

 ありがとうございました。じゃ、小杉委員。どうぞ。

【小杉委員】

 これは文科省への質問かもしれません。スーパーサイエンスハイスクールの事業評価をどんなふうにされているか。増やすという方向なので、きっと評価されて増やせるんだと思いますが、その点。
 それから、ここでは特に予算をつけて新しいカリキュラムを開発したり、非常に優れたカリキュラムを開発されているなと思いましたが、そこで思ったことは、学びの基礎とか言語能力とか、これってスーパーサイエンスハイスクールだけの話じゃないですよね。今の日本の階層化された高校の構造で、トップのほうですごくいい実践をしやすいし、非常にいいものが生まれているので、これをもうちょっとより一般化できる仕組みというのはできないものか。スーパーサイエンスハイスクールで、ここでいいプログラムができてカリキュラムが開発されて、それをそこだけにとどまらずにですね。やっぱり川嶋先生がおっしゃったことと同じことなんですけれども、階層化されてトップの、ある合格レベルで入った子以外のところでも、環境によっては十分伸びる子たちがいて、その子たちを伸ばすプログラム。ひょっとしたら今、堀川高校で開発されたプログラムも、もっと幅広くいろんなところでできるようになると、もっと伸びてくる子がそこからも生まれてくるんじゃないか。よいプログラムがほかのところでもできるような、そういう何か仕組みというのは、これは組んでいけないものか。事業の評価というのは、ひょっとしたらこのSSHだけじゃなくて、その成果をより広く広げるという方向の評価もあり得るんじゃないかなということです。

【小川部会長】

 そうですね。今の質問は、後で事務局から答えていただきたいと思います。
 では、最後、及川委員、どうぞ。

【及川委員】

 今日の議題は、生徒の優れた才能や個性を伸ばす学習機会の充実ということで、これに関連してSSHの紹介があったかと思います。質問を含みますけど、堀川高校の場合に、SSHではなくて探求科のプログラムそのものが、このテーマにあるような、たたき台にあるような部分でどういう役割を果たしているのかなということを、是非お伺いしたいなと思います。
 と申しますのは、私が勤務している学校は普通科高校ですけれども、今年度から総合的な学習の時間に、課題研究というのを取り入れたんですね。本校は、ユネスコスクールであるとか、帰国者の受け入れを行っているとか、そういった教育資源を生かして、国際理解教育とか環境学習だとか人権教育とかいったところを、総合的な学習の時間を通して行っている、展開しています。今年度は、そういう課題領域を踏まえて、自ら課題を設定して云々という課題研究に取り組ませているところなんです。
 ただ、それを行っている時間というのは総合的な学習の時間になりますので、その時間の中だけで目指している課題研究をやっていくということは、なかなか厳しい状況にあるんですね。
 そうしたときに、堀川高校のカリキュラムを見ましたが、先ほどお話しいただいたような探究活動が、探求1とか2とかという時間の中だけで恐らく行われているわけではないんだろうと思うんです。それ以外の時間の中でどのように行われていて、まさに課題意識を持たせたりとか生徒の優れた才能、個性を伸ばすという意味での学習機会につながっているのかどうかというところを、是非お伺いしたいなと思います。その辺のところが明らかになってくると、政策的に支援ができることなのか、あくまでも学校がそういう課題意識を持って取り組んでいくべきプログラムなのかというところが出てくるんじゃないかなというふうに思います。
 以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。ほかにも御意見があると思うんですけど、時間がもうありませんので、高等学校における取組、特にSSHと、灘中・高等学校のような取組を含めた議論については、一応、ここで終わらせていただきます。ただ、幾つか質問も出ておりますので、最初に事務局の方のほうに、SSHの評価をどうなされているのかということを、まず答えていただきたいと思います。
 もう1つは、今日の今までの議論を簡単に総括すると、SSHの意義、さらにそれを拡大していく必要性ということは皆さんから御指摘されたんですけれども、先ほど川嶋委員とか小杉委員からも出たように、SSHで取り組まれている課題そのものはそういう優れた学校だけの問題ではなくて、一般の他の普通の高校においても、やはり取り組まれるべき課題であるわけだから、そうしたSSHなんかで取り組まれている課題の成果を、どういうふうにして他の普通の高校でもできるようにしていくか。そういう支援の在り方とか、そういうふうなことを少し考えるべきだというご指摘もありました。
 そして、3つ目に、高いレベルの生徒を対象にこういう優れた才能とか個性を伸ばす教育指導をやっても、大学受験という別の問題、壁もあり、高校と大学の接続ということをもう少し工夫する必要があるのではないか。そういったような指摘があったかと思います。
 それら指摘の中には幾つか、和田委員と荒瀬委員のほうに質問という形でのご意見もありましたので、後ほど質問に答えていただければと存じます。
 まず、事務方のほうからお願い致します。

【小谷教育制度改革室長】

 SSHの評価、そしてその成果の普及という御視点だったと思うんですけれども、SSHは5年間という研究指定期間を設けておりますので、当然、その都度、節目に応じて経過の成果につきまして報告書を提出していただいております。それにつきましては、SSHのホームページという形で、科学技術振興機構のほうでスーパーサイエンスハイスクール支援事業の一環といたしまして情報提供させていただいて、この課題研究のデータベースで、SSHの参加による調査結果がきちんと閲覧できるですとか、学校の報告書につきましてもきちんと御覧いただけますし、SSHにつきましては生徒研究発表会という発表大会も設けておりまして、こちらにつきましては各地域の代表のほうから発表していただいて、文部科学大臣表彰ですとか独立行政法人科学技術振興機構の理事長賞などの賞なども設けておりますが、そういった内容につきましても御覧いただけるようにさせていただいて、それについての取組の普及を図っているといったような形でございます。

【小川部会長】

 一応、そういう答えでよろしいですね。また後で詳しく。
 じゃ、最後、どちらからにしましょうかね。じゃ、和田委員のほうに、先ほどアキレス委員から多様な人材育成という点で、何か留意されている取組があるかということでした。

【和田委員】

 一番痛いところを突かれてまして。正直、6年一貫の男子校でありますが、男子校にこだわっているというよりも、旧制中学校は男子校であって、それをそのまま流してきたということで、また生徒募集もそれなりに順調ですので、女性を入れるということは今まであまり考えたことがありませんでした。もちろん、男女雇用機会均等法とかもできまして、共同参画のことはよくわかっております。
 しかし、そうはいいながら、教員についても、養護とか司書とか家庭科とか、何人かは女性を採用しているんですけれども、やはり男同士のつきあいというようなことは昔からありまして、教員も昔から男性が中心だということなので、女性との交流について学校としてこういうことをしているというのは、なかなか申し上げにくいところです、正直なところ。
 ただ、阪神間には逆に女子校も非常に多くて、そういうところとの生徒会をはじめとしてのつき合い、あるいは文化部――運動部はめったに交流しませんけれども――文化部を通しての交流会なんかは非常に盛んです。例えばESSは、阪神間の男子校、女子校ばかりが集まって阪神ESSユニオンというのをつくっていまして、毎年、自分たちで運営する弁論大会を行ったりしておりますし、あるいは新聞部などの男子校・女子校の交流というのは、思われているよりも頻繁に行われております。
 それと同時に、男女だけでなくて、特別支援教育の一環としてですけれども、道徳や、家庭科の授業を通して障碍者を講師に招いたり、あるいは、川向こうに重度の障害者学校があるんですけれども、文化祭にそこの児童・生徒たちを招待するなどの交流は頻繁に行ったりして、多様な人たちの交流ということを積極的に図っているところです。

【小川部会長】

 よろしいですね。
 じゃ、最後に、荒瀬委員、いろんな方から取組に関わって御質問があるんですけれども、それに全部答えると時間がありませんので、主に、例えば北城委員から出た高大接続の実績について、何か考えられることがあるか。あと及川委員から出た、SSH前に、探求科そのものが重要だと思うので、どういう役割を果たしているか。あと、何人かの委員の中には、SSHの取組の課題や成果こそ、むしろ一般の高校や大学で取り組むべき問題であると。そういうものを普通の高校で取り組む場合には、どういうふうな支援や工夫が必要かというような、そういうことが何人かの委員から共通の御意見としてあったので、そういうことにもちょっと触れていただいて、お答えできる範囲でお答えいただければと思うんですけれども。

【荒瀬委員】

 ありがとうございます。今、お話には出なかったですけれども、教員を育てているとアキレス委員に言っていただいたんですが、多分、教員を育てているのは生徒ですね。
 もう1つは、大学との接続というか連携の中で、これはちょっと申し訳ないんですが、本校では、大学の先生には今ほとんど来ていただいていません。来ていただくと、先ほど川嶋委員もおっしゃいましたけど、単発的な、しかも丸投げ状態になってしまうので、うちは大学院生をスーパーサイエンスハイスクールのお金で来てもらっています。大学院生と共にうちの教員が学ぶということが非常に大きいと。生徒とも、ですから一緒に学ぶというか、生徒が指摘をしてくれて生徒が教員を育てるという、とてもきれいなお話で終わってしまいそうな話なんですけど、これは現実にそういうふうになっています。
 そのこととよく似ているんですが、高校生というのはいわゆる学力、基礎的な学力がどうであるかということは当然、影響しますけれども、多くの生徒たちはやっぱり美しいものを見たら感動しますし、よくないものを見たら憤りを持ちますし、あるいはまた、よいものを見たら切磋琢磨しようとするんですね。ところが、どうもそれを私たちは決めつけてしまっているように思います。特に高等学校は入学試験がありますから、この高校に入った生徒たちは優秀、この子たちはだめと。うちの生徒たちが町で、自転車で横にずらっと並んで乗っていたりすると、おまえのところの学校の生徒は勉強はできるかもしれないけど、人間的にはなってないとか、そんな苦情をいただきます。別に勉強できる子ばかりではありませんし、また、人間的になってないかどうかというのは、若気の至りというのもあるわけで、そういったことに対して何か決めつけがある。
 だから、堀川でやっていることについていえば、これはうちができたというのは、当然のことながら、SSHの指定を受けているとか、あるいは京都市教育委員会の非常に大きなバックアップがあるとかいうことはもちろんあるんですが、そういう条件を整えていけばできると思うんです。逆にいえば条件を整えていくのが、これからの教育を考えたときに非常に重要だと思うのです。手間・暇・金です。手間・暇・金かければ大抵のことはできると思うんですね。ただ、それがどうしてもできないのはなぜかというと、私たちの中、大人の中に決めつけがやっぱりあって、このレベルの生徒たちは伸ばせばできるけれども、この生徒たちは多分、伸びないだろうというふうなことを思っている。
 私は、都立のエンカレッジスクールで高校生が小学校3年生とか4年生の問題を解いて、できたときにものすごく喜んでいるのを何度も見ましたけれども、あれが高校生ですよね。知らないことは知りたいと思うわけで、ただ、そのチャンスが十分に与えられていない。そのチャンスをその子に合った形で与えるというのと、その合った形というときに、また決めつけてしまって、この子にはこれが合うんだというんじゃなくて、その子の中にあるものを引き出していくという、まさに教育基本法に書いてある、各人の有する能力を引き出していくということに、私たちがもう1度、その基本に立ち返らなければいけないということを思っています。
 入学試験、大学入試についていえば、私は現行の大学入試があったって、別に構わないと思っています。が、2つ申し上げれば、基礎的な学力があるならば入れてくれるという大学がいっぱいあったらいいなと思います。その基礎的な学力は、やはり一定の水準――一定の水準というのは、これは段階が幾つかあると思うんですけど、それでもって測る必要はあるんだと思うんですが、そういった方式の入学試験があればいいなと思う。
 もう1つは、本気のAO入試。この本気のAO入試は雇用の創出にもなると思うんです。大学がたくさんの人を抱えなければならないので大変ですが、私立の大学であれば援助をいっぱいしていただかないといけないけれども、AO入試をするための人を雇っていって、そのことが雇用にもつながり、この国の将来をつくっていくことにもつながるとしたら、本当に成長戦略として、私は非常に重要なポイントだというふうに思います。それができればいいなと。うちの生徒でも、AO入試があって行っている生徒は何人かいるんですね。パンフレットにも載っていますが、神戸大学医学部のAO入試は、医学部の授業を本当に受けさせて、その後ディスカッションさせて、その中から適性を見ていくというようなことを丁寧になさっています。そういう入試の在り方というのが大事です。もう1つは、やっぱり基礎学力があれば入れる大学をたくさんつくっていただくというのもあっても別に構わないというふうに思っております。
 あと、探求科のプログラムについての御質問をいただきましたけれども、まさにおっしゃるとおりで、探求科の思想というのは――思想というか、そんな大層なものでもないんですが、京都の公立高校がどんどん市民から低い評価を受けるようになっていった。これは、大学には入れないということとともに、ほったらかしであるという。私たちは、だけど、手取り足取り見るのが教育、特に高校教育であるとは思ってはいなかったんですけれども、じゃあ、生徒たちのまさに力を引き出しながら、生徒たちが自主的に活動するようなところまで持っていくのにはどうしたらいいのかということを考えたときに、この探求の取組というのが重要なんじゃないかなと。彼らは、ですから全体像を実は見ています。部分部分じゃなくて全体像を見て、これをやっていこうと思うから、おもしろいからやっていく。もっと言えば、これは、単純な言い方をしますと、現行の受験体制に大変有用です。全体像を見て、それに向けて計画を立てて進めていく。
 だからその意味では、今現在も多くの高等学校の皆さんの御訪問を受けておりますし、研究大会というのを11月に毎年いたしますけど、全国から400~500人の高等学校関係者の方が来られて、いろいろと御質問なんかもいただいています。だから、うちが何も優等生であるというわけではありませんが、私たちは――これはちょっと誤解を招くと困るんですけれども、京都の公立高校は本当にだめだと言われたところから、じゃあ、どうしたらいいのかというのを考えましたので、結果的にそういう取組が生まれてきた。こういう取組は少なからずいろんなところでなさっています。
 ですから、時間はかけます。土曜日は授業をしておりませんので、その土曜日に生徒たちはこの探求の取組をしに学校に来ますし、ずっと放課後もやっている生徒もいます。部活動との両立というのは大変難しいですが、やってみたら何とかなるものだということを、一方で私たちは経験的に学びました。

【小川部会長】

 ありがとうございました。今の荒瀬委員のお話に対してまたいろんな御意見あるかと思いますけれども、ここでいったん打ち切らせてください。次が残っていますので、すみません。
 今の議論の中で高大接続の話も出てきましたけれども、それに関係して2つ目のテーマに移っていきたいと思います。早修制度の話です。
 これについては、飛び入学等々でもう既に先駆的に取り組まれている千葉大学の上野委員のほうから、この制度の現状ですね。それと効用、また課題等々について、すみませんけれども10分程度ぐらいでお話しいただければと思います。よろしくお願いします。

【上野委員】

 上野でございます。いわゆる高校2年生からの飛び入学の概要を、今お手元に配布していただいている来年度に向けてのパンフレット――もう第1回目の入試は終わりましたけれども、これに従って簡単に説明させていただきます。
 まず、4ページを見ていただけますでしょうか。恐らく委員の皆様方が気になると思われるのは、一体どれぐらいの人が入って、どうなっているんだということだと思いますので、まず、これまでの概要と人数的なことを御紹介いたします。
 平成6年に、実は、大学が国家の将来を担う人材を育てるための最高学府として必要なことは大学院の充実であるというふうにして考えたところから、最終的に入試改革へいったわけであります。その過程のポイントは、当時、私たちも、自分たちの大学院をよくするために考えていたんですけれども、結局、それだとなかなかうまくいかない。大学というのが国家の中でどういうふうな位置付けでないといけないかということも併せて考えてゆき、そうして最もいい方法というのは、大学の1年生に入るときの入試を改革するしかないと行き着いたわけであります。
 そのときに、こういう言い方をして許してください、わかりやすい言い方をします。高等学校に任せておけないということになったんです。そのために、早くより広い場所へ来ていただいて、より活動領域といいましょうか――時間的にも空間的にも――広げていただく。そうすると、例えばコイという魚は小さな金魚鉢で育てるとその金魚鉢のサイズに応じた大きさにしかなりませんけれども、もっと大きな水槽に入れるともっと大きくなります。もっと大きな川で育てますと、巨大な魚に育つんですね。それと同じようなことを考えておりました。
 その結果、平成9年に特別措置として飛び入学が可能になったということがありまして、すべての準備を整えて、平成10年の4月に第1期生が入学いたしました。その後、いろんな発展的な組織改革をしております。4ページの棒グラフを見ていただきますと、今年の春までに志願した者が青、入学した者、許可された者は赤で示してあります。でこぼこはしておりますけれども、着実に成果を上げております。
 現在、入試を2回しております。来年4月入学のための第1回目の入試が、つい先日終了したところであります。要するに、高校2年生の12月に第1回目を行うわけですね。その1回目の志願者数は14名でございました。来年の2月から3月にかけて、第2回目の別方式の入試をやりますけれども、その受験生数を合計しますと、23年度で減りましたけれども、24年度はもう少し回復しているという格好になろうかと思います。
 日本全国、どういうところから来ているのかを集計したのが、右側に日本地図に書いたものでございます。これまで、海外から3名。そのほかに、日本の中では今そこで書いたような、色が塗ってあるところから受験生がいらっしゃっているということです。白いところからは、まだ受験生が来ておりません。一応、日本全国から来るようになっております。非常に興味深いのは、当初これをスタートさせたときに、県を挙げて反対したといいましょうか、そういうところからも今は来ていただいております。
 その下の円グラフを見ていただきますと、卒業時の進路というので、どういう大学院に行ったり、どういう会社へ就職したかというのをまとめてございます。基本的には、千葉大に3分の1程度。東大に3分の1程度。あと、その他3分の1程度ということになっておりまして、例えば修士から海外へ行った者も結構おります。右側の四角いところに卒業生の進路というものを書いてございますが、千差万別だということがおわかりいただけると思います。
 1つおもしろいのは、去年集計したデータですけれども、修士課程から博士課程へ、理工系の分野でどれぐらい進学しているかというのを集計した結果がございます。例えば数字だけ御覧いただきましょう。書いてはございません。口で申し上げます。例えば、東京大学の理学系研究科では47%ですね。工学系研究科では18%。例えば京都大学では、理学系研究科で49%が博士課程へ行っている。工学系研究科が12%です。先進科学プログラムでは、68.4%が博士課程へ進学しております。
 この数字はどういうことを言っておるかといいますと、非常に向上心があるといいましょうか、そういうことを反映していると思われます。断トツの数字です。
 そういうふうなことがありますけれども、1枚めくっていただいて、6ページを少し御覧いただきましょうか。当初、工学系の物理系、いわゆる応用物理系で始めたわけでありますけれども、その後で特別措置が撤廃されるということがございまして、すぐにいろんな分野で受け入れるということを行っております。その結果、現在では、今そこに書いてありますように、物理学コース、物理化学コース、フロンティアテクノロジーコース、人間探求コースと4つのコースを開設しております。物理学コースは理学部物理学科が担当いたします。物理化学コースは理学部化学科が担当いたします。フロンティアテクノロジーコースは工学部の9学科が担当しております。人間探求コースは文学部の行動科学科が担当しておりまして、3学部12学科がこの飛び入学を受け入れております。
 それでは、少し飛びまして、11ページを御覧いただきましょうか。当初、1年早く大学に入るということで、教育界及び社会もそうだったんですけれども、極めて皆さん心配されました。そのために、当初は極めて手厚い教育体制を取る必要がございましたけれども、実際にはそれほど特殊な教育をしているわけではございません。現在行っている教育の体系をそこに書いてございます。
 赤く点で囲んだ中が教育ですけれども、両側に独自科目18単位と書いてございますね。これが特別に開講しているセミナー等です。大事なことは、普通の学生とほとんど同じ授業を受けております。最初に力を入れたことは、入った夏休みに1カ月、必ずアメリカに送ると。そこでいろいろ経験していただく。それは今でもずっと続けております。
 そういうふうにしてこれまで、平成10年から23年まで13年間続けておりますけれども、たった1つだけ言わせていただきますと、私たちが当初心配した「1年早いから非常に心配である」ということは、実はほとんどないということを実感しております。
 もう1つ、入試についてだけ簡単に御説明いたしますと、その資料で16ページを御覧ください。当初は高校2年生の12月に、丸1日かけた筆記試験。それから実験もやっておりました。それと、1時間程度の面接。その後、実験というのはほとんど高等学校でやってないということもあって、途中で実験をやめて丸1日の筆記試験。その中で、課題に関係する現物を触ったりすることができるようなことを含めて行っておりました。
 選抜において1時間の面接をするというのが非常に役に立ったということがあります。評価は、いいところを考えてあげること。それを議論する入試委員は、非常に少ない合格者数ですけれども、50人を超え、みんながそれぞれ自分の観点からいいところをピックアップする意見を言うこと。もちろんネガティブな意見も出ます。
 現在は、その12月の試験に加え、個別試験を併用した試験方式――16ページに方式2と書いてございますけれども、これを2,3月に入って行っております。個別試験を受けないといけないので、2月に個別試験を受けていただくということで行っております。これによって、より多様な才能を持った人をできるだけ見る努力をして入学していただくという方式をとっております。
 簡単ですけれども、概要を説明させていただきました。

【小川部会長】

 ありがとうございました。では、今の上野委員の御報告も含めて、早修制度について少し皆さんから御意見等々をお伺いしたいと思います。時間があまりありませんけれども、御意見が続くようであれば、少し、5分10分程度は会議の時間を延ばさせていただければ幸いですけれども、そのようによろしくお願いします。
 では、どうぞ。相川委員、よろしくお願いします。

【相川委員】

 ありがとうございます。次の会合が3時から入っておりますので、一言だけお話をさせていただいて、退席をさせていただきたいと思います。
 私はこの飛び級ということに関して否定するものでもございませんし、優秀な生徒さんの芽を伸ばすということに関しては、その制度、飛び級のことに関してはありなんだろうなということは感じておりますが、今、先生のお話の中で、ほとんど心配はないと感じているというお話もありましたけれども、一保護者としては、多くの生徒を考えたときに、高校2年生から大学への飛び級をする生徒に対しては、これまでもいろいろな対処をされてきたと思いますけれども、果たしてどうなんだろうという疑問がございます。
 それは、高校の段階というのは、私が子供たちを見るに、高校3年間の生活というのは学習面だけではなくて、先生方はご存じのとおり、本当に社会で生きていく力をつける大事な期間なんだということです。ほかの生徒との生活の中で学び得るものは大きいのではないかなと思っています。
 ですから、高校生活をしっかり3年間を送って、その中で自分の進路を見極めて、大学に進学する。その後に、大学システムの中で留学なり飛び級なりという対応のほうが自然な形なのではないかと感じております。
 そして、知識としての才能はあっても、私たち保護者として心配なのは、やはり子供のメンタルな部分でございます。このメンタルな部分でどのようなサポートがされて、それが順調にいけばいいですけれども、途中で進路を変更するようなことになったときの子供たちのメンタルな部分をどうケアしていくのかということも、やはり一つ考えておかなければいけないことかなというふうに感じております。
 飛び級に対しては、保護者のほうでは特に望んでいるというような声はあまり聞かれませんので、特に必要……、このような言い方をするとあれなんですが、必要であるなら、大学が社会にそれなりの周知をしていって、これまでの検証をしっかりしていただいてこの制度を運用していく、普及していくということがいいのかなと思います。
 だから、保護者としてやはり心配なところはまだあるということでございます。

【小川部会長】

 ほかにどうでしょうか。それと、あと、上野委員のほうからもしも今のような御意見に対して、何かお考えがあれば、後で構いませんので、よろしくお願いします。
 じゃ、和田委員。どうぞ。

【和田委員】

 失礼します。飛び級制度がどういう形で認められるようになったのかわからないんですけれども、高校卒業程度認定試験と飛び級とが一緒になって、いろんな大学が生徒集めのためにどんどん飛び級制度を利用していくということになれば、逆に高校が空洞化するというようなことが、高校の教員の間でかなり話題になった時期があります。実際にそういう形には今はなっていなくて、千葉大学のように本当にその素質を見抜いた者だけを集めていくというような形で行われていますが、たがが外れてしまっていろんな大学がとにかくどんどん飛び級で採っていくという形にならないように、どうある程度の制限を加えていけるのかどうかというのが、一番問題だなと思っております。
 実際、本校でも、物理のオリンピックで2年連続で金メダルを取って、そして東京大学に進学したんですけれども、東大の場合は初めに教養期間が1年半ございますので、その間が非常に退屈で退屈で、というような話がありました。たまたま本校出身の物理の先生が専門課程におられたので、教養に籍を置きながらそこの研究室へ入り込ませていただいてその好奇心を満たしているという生徒がいましたけれども、そういう自分が目指している研究のほうで少しでも早くやりたいという人もいるかと思います。そういう生徒を拾い上げるという限りにおいては、飛び級制度も意味があるのではないかなと思っております。

【小川部会長】

 ありがとうございました。ほかに。じゃ、長塚委員ですか。よろしくお願いします。

【長塚委員】

 身近に国内のこういう体験をした学生を知らないのですが、アメリカで普及していると資料にありますように、たまたま私の学校にいるネイティブスピーカーの中に、19歳でアメリカの州立大学を卒業しているという者がおります。その上で、日本でALTをしながらアメリカの大学院を卒業しているということなので、学び方が日本の場合と違って、高校に在籍しながら大学の勉強をしていたというようなことを聞いております。高校を2年で卒業させるかさせないかということより、例えば高校では1年間海外に行く場合に、30単位ほどは認めているという留学制度でありますから、高校3年次は大学に行ってじっくりと学んでもらってもいいというような、高校卒業と大学進学というのをあまり窮屈に分けないような制度のほうが、もっと活用しやすいんじゃないかなというような気がしております。
 一方で、同じネイティブスピーカーで高校にいる教員ですが、イギリスのギャップイヤー制度で高校卒業後に本校に来ている学生のうちの1人が、大学卒業後にネイティブスピーカーになりました。つまり、高校を卒業して、ゆっくりと1年間ボランティア活動をして、それから大学で何を学ぶかということを選んで進学するというような、そういうことをやっているわけです。
 両方合わせて考えると、どうも日本の高校の仕組み、大学入試の仕組みはアメリカやイギリスのように修得主義に変えていければいいですね。つまり、先ほど荒瀬委員からもありましたけど、あまり入試のハードルを上げないような、ある程度の、一定の到達度に達していたら入れてあげるような、そういう前提でいないと、大学入試ばかり気にして、学び方を早くしたりゆっくりしたりするということができないのではないかと思います。その辺に大きな問題がやはりあるのではないかということを、改めて感じております。
 以上でございます。

【小川部会長】

 ありがとうございました。時間もあまりないんですけれども、ほかに早修制度について何か御意見ございませんか。じゃあ、金子委員。最後にお願いします。

【金子委員】

 今日は大変おもしろい先進的な試みを聞かせていただいて、大変おもしろかったんですが、ただ、この委員会に私が出ています主たる理由は、やっぱり高校教育全体についてどう考えるかということで、非常に今、危機だと繰り返し申し上げておりますが、そういった観点から今日のお話をどう伺ったかということです。
 日本には大体330万人ぐらい高校生がいて、5,000校ぐらい高校があるわけで、この全体がどういうふうな状況になっているかというは我々の大きな関心事で、しかも、相当な部分のところに問題があるということだと思うんです。
 飛び級についても、これは大変おもしろい試みで、こういったことがあって独自の高校にしているということ自体は非常に重要だと思いますが、ただ、システム全体として考えますと、飛び級どころか、日本の高校生は大体、毎年10万近く浪人しているわけですね。早く行くより、むしろ逆に1年余計に使っているわけです。今日、灘校のパンフレットを見せていただくと、大変立派な進学実績ですが、その灘校でさえも浪人率6割――このパンフレットから計算しますと大体6割ぐらい。非常に優秀な高校の生徒のほうが、むしろそういうふうにして1年余計に使っているという状況があるわけです。
 それについて、いろんなおもしろい子がいるんだから、大学側が、基礎学力さえあれば入れてやればいいんじゃないかというお話もありましたが、ただ逆にいうと、私はこの問題は、大学が入れるか入れないかというよりは、むしろ高校の側がこだわるかどうかということではないかと思います。どういう大学でも勉強をさせてくれるところに行って、そこで勉強すればそれなりにチャンスあるところはいっぱい、私はあるのではないかと思うので、そういう意味では、改めて情報公開といいますか、どういうことが大学でできるのかということがむしろ問題。接続は試験の問題というよりも、むしろ、情報が何を求めるのかということの問題ではないかと。
 そういう意味では、高校の進路指導の在り方も、私は少し考えるべきなのではないかと思います。さっきのお話にもありましたが、大学院レベルで進路を変えるというケースも随分あるわけで、そういった意味で、非常に進路が多様化しているにも関わらず、むしろ進路選択が高校の段階で、何と言いますか、硬化しているところもあるように私は思いました。
 しかし、最も重要なのは、やはり勉強時間と、高校生の学習をどう保証するかということで、基本的に教科を中心として、その教科と入試が結びついて今まで高校生に勉強させていたわけですけれども、それではどうもちゃんとモチベーションを上げられないということがこの前指摘されているわけですが、今日の堀川高校のお話を聞いていますと、やはり何か一種のテーマを持つとか、先ほどお話がありましたが、参加型とか、課題研究、それからプロジェクト研究とか、そういったタイプの枠組みを導入することによって、教科型の学習にも一種のモチベーションが出てくる。そういう形で活性化することができるということで、これは、お話が出ていましたように、必ずしも生徒が非常に優秀な高校でなくてもできる方法なのかもしれません。そういった意味では、もうちょっと大きい問題に広がるところはあるのかなと思います。
 ただ、もう一方でかなり問題だと思いますのは、かなりコアになるような基礎学力のようなものをつくるにはどうしたらいいのかということで、これは前回から大きな問題になっていたと思うのですが、そこのところは、例えばスーパーサイエンスハイスクールのような形のアプローチでやるべきなのか、それとここのところはもうちょっと別に考えるべきなのか。そういったところもやはり議論になってくるのではないかなと思いました。
 以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。今日の全体の議論で、最後、何か御意見があればお伺いしたいと。

【和田委員】

 訂正だけというか、表の見方だけ、金子先生に。

【小川部会長】

 はい。

【和田委員】

 私立大学には同じ生徒が重複して数えられておりますので、6割が浪人しているというのはちょっと誤解です。むしろ、大体6割が現役で行って、残り4割が浪人している。それでも浪人しているのは結構いるということは間違いありませんが、それだけご理解をよろしくお願いします。

【小川部会長】

 ありがとうございました。ほかに。
 じゃあ、なければ、最後に上野委員。早修制度について幾つかの御意見がありましたので、それに対する何かお考えとか、また、早修制度をさらに進めるために、また効果を上げるために、今後、何が必要なのかということも、もしも何かお考えがあれば御意見を伺えれば。それで最後にしたいと思います。

【上野委員】

 簡単に。まず、御質問にお答えしないといけないということがございますね。
 相川先生の心配の点につきましては、全員入れてしまうということを考えたら、そういう心配が出ます。ある程度、それを行ってもやっていける人を受入れるんですね。保護者の方々と、随分私たちも個別に相談したりしましたけれども、基本的な心配は、こういうのがありましたですね。もしも大学を卒業せずに――飛び入学した後ですね、ほかへ行くようなことになったときに、中学卒業でしかないと。これはすごい心配なんだそうです。ですから、例えば高2から大学へ入って、大学である程度単位を取った場合に、それを高3に振りかえるか何かをして高校卒業資格を認めてあげることができれば、システムとしてはもっといいのだろうと思っております。
 それから、和田先生の御意見とも関係するんですけれども、私たちは当初、いろいろ議論した中で、千葉大学がこういうことをやって、社会に対して申し訳が立つんだろうかということまで議論いたしました。それはですね、こういうことをやろうとするのは、大学院までちゃんと持った、研究活動をちゃんとやれている大学がやるべきだろうと。私たちは自分たちの評価をそれなりにしてきたわけですけれども、当時、大学が748ぐらいありましたでしょうか。その中で千葉大学は、海外の調査機関が示した研究レベルでのランキングで、日本の国内で11、12、13……、12番ぐらいだったと思いますけれども、結構研究はやられているんですね。
 問題は、そのランクは大体組織の大きさによっています。最近では某大学から調査が出て、千葉大学の、例えば投入された予算に対する研究ランキングは日本でトップですね。その数値は、先々日の国会による仕分けのために財務当局が準備された資料に、一部出ておりました。で、私たちは高校の先生方にそういうこともお伝えして、私たちは研究をやるムードの中でちゃんと教育しますよと。それから、入った学生さんのメンテナンスも、かなりの教員が周りにおりますので、厳しくもやりつつ、仏の手のひらも用意していると。そういうふうなシステムをつくっております。
 大事なことは、大学学長4代にわたって、大学の執行部がやるべき責任と現場の教員が分担すべき責任をわきまえてやっているというのが、極めて大事なことでありました。これによって長く持続的に続けることができました。
 それからもう1つ。途中で大学の意識が変わったことがございます。それは、1年間早く大学に入って、中には、さらに1年間短縮して大学を卒業して大学院に行く者がおります。その数値はお手元の資料にも書いてございます。それで、1年及び2年早く世の中に出るということをしたときのメリットとは、一体何だろうかと。
 例えば、1年早く大学に入って1年上の学生と同じ成績――断トツでなくてです、同じ成績で卒業したとしたら、それはすばらしいことなのではなかろうかというふうな考えに、大学の中枢部は至っております。そうすると、1年間という時間を手にすることができます。問題は、その1年間をどれだけ有効に使うかという指導をちゃんとすること、これも非常に大きなことです。それで、早いということだけがいいと言っているのではありません。当然、遅くても構わないのです。たまたま早いのがなかったので、私たちはそれを開拓したんです。
 1年をいかに有効に使うかという観点を私たちが持ったときに、新しい展望が開けてまいりました。いいでしょうか。1年余分に持つんです。そうすると、新しい経験を繰り返すことができます。実際にそれをやった者がおります。すばらしいことですね。人間としての広がりが増えるという非常に大きなことを手中にすることができるわけですね、若者が。
 以上でよろしいでしょうか。

【小川部会長】

 ありがとうございました。
 では、今日の議論をこの辺で終わりたいと思います。また個々に深めるべき問題はあるかと思いますけど、またそれは3月以降、再度、課題を整理した中でまたその対応をします。よろしくお願いします。
 では、これで終わりたいと思います。次回の日程について、では、事務局から御説明ください。

【小谷教育制度改革室長】

 次回の日程でございますが、資料としてあげさせていただいております。新年明けまして、1月31日火曜日15時から、同じこの旧庁舎6階の第二講堂で予定をしております。どうぞよろしくお願いします。

【小川部会長】

 はい。では、これで終わります。よいお年をお迎えください。

 

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