高等学校教育部会(第2回) 議事録

1.日時

平成23年11月29日(火曜日)15時~17時

2.場所

中央合同庁舎第7号館(文部科学省)東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 個々の生徒の学習進度・理解等に応じた学びのシステムの構築について
  2. その他

4.議事録

【小川部会長】

 定刻になりましたので、ただいまから中央教育審議会初中分科会の高等学校教育部会、第2回目を開催したいと思います。
 委員の皆様には、お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございました。
 それでは、まず今日の会議資料の確認を事務局からお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】

 本日の配付資料は、議事次第にございますように、資料1から6まで、参考資料1から3までとなっております。また、机上資料には前回お配りしたものにつけ加えまして、前回第1回の配付資料をとじ込んでおります。不足等ございましたら、事務局までお申し出ください。

【小川部会長】

 それでは、次に、今日の議題に入る前に、前回御欠席の委員が今日お見えになっておりますので、事務局から紹介をお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】

 それでは、御紹介をさせていただきます。公益社団法人日本青年会議所グローバルリーダー創造会議議長、加藤栄作委員でございます。埼玉県立大宮中央高等学校長、渡邉洋一委員でございます。

【小川部会長】

 ありがとうございました。それでは、これから、今日の議事に入っていきたいと思います。前回の部会では、第1回目の会合であるということで、出席された委員の皆様からそれぞれ高校教育の全体、及びこの部会の運営等々について様々な御意見をいただきました。委員の皆様からいただいた御意見を事務局で整理してもらいまして、本部会で今後検討していくべき検討課題については、参考資料3のようにまとめております。一応この検討課題に即して、今日からこの柱別に議論を進めていきたいと思いますが、今日は、前回の議論も踏まえまして、参考資料3の検討課題のうちの1、「個々の生徒の学習進度・理解等に応じた学びのシステムの構築」、この点について審議していきたいと思います。
 それでは、審議に先立ちまして、この議題1に関わって、事務局から関連資料の説明をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】

 それでは、説明させていただきます。今回は資料1から5まで検討用の資料として御用意いたしております。資料1は、先ほど部会長からお話のございました本日の論点につきまして、具体的には、生徒一人一人の能力、適性等や卒業後の進路の対応した高校教育の在り方をどうすべきかということ、そして、高校教育での生徒の学力をどのように保証するかということについて、関連する資料を添付いたしました。
 このほか、御参考といたしまして、前回御説明いたしました内容とも重複いたしますが、資料2は、前回御説明いたしました高等学校の現状について、主なデータをまとめてお示しし、資料3におきましては、高等学校の基本的な制度について整理してお示しをさせていただいております。また、資料4では、「高等学校の多様化」と題しまして、前回御説明しました進学率の上昇に伴う生徒の多様化ですとか、高等学校制度の多様化に加えまして、学習指導要領の大綱化についての資料を御用意させていただいております。そして、資料5では、本日の論点について関連するこれまでの御意見をまとめてお示しをさせていただいております。
 いずれの資料も、委員の皆様には事前に送付をさせていただいておりますので、資料1を中心に、そのほかの資料で適宜補わせていただきながら、ポイントとなる部分について簡単に御説明させていただきたいと思っております。
 それでは、資料1をおめくりいただきまして、それぞれのスライドの右端にページ番号を打っておりますが、1を御覧いただきたいと思います。今、中学校卒業者の98%程度が進学しております高等学校におきましては、約7割の制度が普通科に進学しているところでございます。このうち、資料3として「高等学校制度の概要」という形で整理をさせていただいておりますが、高等学校の制度の概要の目的・目標にありますように、高等学校は制度上、中学校における教育の基礎の上に高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的としておりまして、3つの学科がございます。このうち普通教育を主とするのが普通科ということでございます。
 この普通科のうち、そこに実際に通っている生徒の入学の動機についてというのが2ページ目の資料でございますが、こちらは日本進路指導協会の調査によるものでございますけれども、6割の生徒は自分の学力に合っているとは考えておりますものの、自分の個性を伸ばすことができると考えている生徒や、自分のやりたい勉強ができると考えている生徒は1割程度となっております。また、進学に有利と考えている生徒は3分の1程度とさほど多くはなく、また、就職に有利となると、2.5%と。そして、将来希望する職業に役立つ知識や技術が身につくとなると、5%と非常に少ない割合となっております。
 1枚おめくりいただきまして、このことに符合するかのように、3ページ目でございますけれども、普通科卒で就職する方、これは4ページ目にございますように、大体普通科では7.5%の方が就職をされているわけでございますけれども、この普通科卒で就職される生徒の正社員比率というものを見てみますと、男子では専門学科や総合学科卒の大体3分の2程度ぐらい、女子ではさらに割合が低くなって4割程度といったような状況になっております。
 また、5ページのほうのスライドを御覧いただきますと、卒業後に進学も就職もしていない者という者もおりますが、これは普通科卒の生徒は5.9%と。これは生徒数が少ない総合学科卒と比べれば割合は若干低くなっておりますけれども、ある程度の規模がある専門学科卒の生徒と比べてはやはり割合が高くなっているという状況がございました。
 また、前回の部会で金子委員より、高校生の学校外での学習時間の短さについて御指摘がございました。これに関連しまして、ベネッセ教育研究開発センターの調査結果になりますけれども、6ページ、7ページに関連する資料をお付けしております。7ページの図で全体的に短いほうにシフトしていることがわかりますけれども、特に6ページの図を御覧いただきたいと思いますけれども、こちらにございますように、同じ高校生でも、実は偏差値45から55ぐらいのいわゆる中間層といったあたりの生徒の勉強時間が中でも大きく減少しているということが明らかになります。
 この点につきましては、資料3を御覧いただきたいんですけれども、高等学校は、先ほど御説明しました目的を実現するために、達成すべき目標として3点、1から3まで、これは法律で規定をしておりまして、さらに※印で示しておりますけれども、こうした目標を達成するために、小学校、中学校とこれは共通した内容でございますが、「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を修得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない」というふうに法で規定しております。ただ、実態としては、こういった6ページ、7ページのような資料に示されているような状態にあるというわけでございます。
 また、高等学校は、先ほど申し上げましたように、中学校における教育の基礎の上に教育を施すことを目的としておりますので、この資料3の2、3にございますように、中学校等の卒業を入学資格として、各学校におきまして、入学者選抜を経た上で、校長が入学者を決定するという制度になっております。
 ただし、実態といたしましては、98%程度の方が進学するということでございますので、また、恐れ入ります、資料1の今度は8ページを御覧いただきたいんですけれども、実際に入学される生徒の学力の状況について見ますと、これは15歳、日本の場合は高校1年生の6月に実施されますOECDの生徒の学習到達度調査の結果、読解力の結果でございますが、こちらのような形で、レベル1からレベル5までこのような分布になっております。これは、日本と同程度の成績であった韓国ですとかフィンランドと比較してみますと、レベル2以下の下位層が多いというのが日本の特徴として見てとれますし、また、さらに高1の6月の時点で既に学びについての興味がある生徒の割合というのが、こちらに科学について学ぶことに興味がある、数学で学ぶ内容に興味があるといったものの割合を記述してございますけれども、OECDの平均と比較してかなり低いということがわかります。
 したがいまして、1つ目の今回の具体的な論点として、特にボリュームゾーンである中間層の学習意欲の向上について、この後、御意見交換、御審議いただければと思っております。
 また、さらに前回安彦委員や北城委員からは、高校教育と大学入試との関係についての御指摘がございました。大学入試の関係でございますと、9ページ以降に資料を少し用意させていただいておりますが、近年大学におきまして、こちらにございますように、一般入試の割合が減少している一方で、11ページには、しかしながら、入学後に初年次教育が必要ということで、初年次教育を導入している大学が増えているというような状況がございます。
 この点に関連しましては、12ページにございますように、平成20年の中央教育審議会答申におきまして、こちら、四角囲みの中の1の(1)の1のウのところに該当しますが、大学入試の存在自体が大学進学希望者の学習意欲を喚起し、高等学校の指導と相乗して学力を定着させることが困難になりつつあるといった現状認識に立ちまして、その次のページのスライドの(3)、具体的な改善方策というところにございますように、高等学校段階での学力を客観的に把握する方法の1つとして、高等学校の指導改善や大学の初年次教育、大学入試などに高等学校、大学が任意に活用できる学力検査、高大接続テスト(仮称)となっておりますが、これに関して、高等学校、大学の関係者が十分に協議、研究するように促すということを提言いただいております。
 その後、北海道大学を中心として、高大関係者による高大接続テストの在り方等については研究がなされているところでございます。
 14ページの資料は、その研究代表者である佐々木先生が作成されたものでございますけれども、欧米では大学入学の際における学力の把握につきましては、資格試験ですとか、任意の共通テストで行われておりまして、そこで一定の学力の保証がなされているということから、基本的には各大学では個別の学力試験なしの選抜という形で実施をされております。
 その一方で、日本の場合は、高校生の卒業を各学校の校長が決定し、学習成果の保証が各校長に委ねられているというのが特徴だと思います。これに関連いたしましては、資料の4を御覧いただきたいと思います。
 資料4、「高等学校の多様化」の中で、最後のほうの10ページでございますけれども、こちらのほうで少し教育課程の関係について御説明をさせていただきたいと思います。10ページは、平成25年度から実施される新学習指導要領における必履修教科・科目等を示したものでございます。高等学校の卒業に必要な単位は、74単位以上となっておりますが、こちらにありますように、例えば普通科ですと、必履修教科・科目ということで、31単位分のものは必履修となっております。これに加えまして、総合的な学習の時間が2単位ほど必修となっておりますので、11ページにございますように、高等学校の卒業に最低限必要な知識・技能と教養の幅を確保するために、全ての高校生が履修するということを共通に求められておりますのは、卒業単位を74単位といたしますと、大体45%程度というふうになっております。しかも、必履修教科・科目といいますのは、制度上、必ず全ての教科・科目を履修しなければならず、履修させる以上は、もちろん修得を目指して履修させるわけでございますが、全てについて修得するということを必ずしも制度上求めているものではございません。例えばある生徒が履修の結果として修得できなかった必履修教科・科目があったとしても、他の教科・科目を履修して、74単位以上取得すれば、校長は、自らの判断で卒業を認めることができるという仕組みになっております。
 また、学習指導要領では、特に必要がある場合には、教科・科目の目標の範囲を損なわない範囲内で、各教科・科目の内容に関する事項について、基礎的・基本的な事項に重点を置くなど、その内容を適切に選択して指導するということを認めておりまして、学習指導要領において掲げられている事項についても、指導する内容について、一定程度学校の裁量を認めていると、そういった仕組みになっております。
 こういった裁量を認めている中で、校長は生徒一人一人の卒業を認定するという制度になっておりますので、制度上、日本の普通科の高校卒業者の学習成果について保証しているのは、33単位分の必履修教科・科目等を履修しているということです。そして、少なくとも74単位分は、何らかの教科・科目等の内容を修得しているということになります。高校を卒業すれば大学入学資格を得られますので、各大学はそのような前提のもとで個別に生徒の学力等を判定して、入学者を選抜している。これが日本の制度ということになります。
 この卒業に必要な単位数の74単位ということ、それから、その中に占める必履修教科・科目の割合につきましては、もう1枚次のスライドの12ページのほうのスライドになりますけれども、昭和30年代からの推移をお示ししておりますが、一時は85単位以上あって、必履修教科・科目自体が70から76単位といったような、今の卒業に必要な単位分ぐらいに相当するような時期もございましたが、だんだんと減少して、現在の形に至っておるということになっております。
 したがいまして、高校教育の質の保証ということにつきましては、先ほど御説明しました高大接続テストのような共通テストを導入することによって、多様な学習の成果を別のところで評価する形で保証するといった、そういった可能性も考えられると思いますし、教育課程の編成実施の段階、あるいは、校長の卒業認定の段階において、共通性だとか透明性を高めるといったような形で保証するという、そういった可能性も考えられるのではないかと思います。
 また、これまでの御説明では、普通科や大学への進学に関連した部分を中心に御説明をいたしましたが、いろいろデータを計上しております資料2「数字で見る高等学校」の7にございますように、高等学校卒業者106万9,000人のうち大学等に進学する者は50万1,000人ということでございまして、その他、専門学校等への進学する者もおり、さらに就職される方も16万7,000人いらっしゃるということでございますので、こうした状況も踏まえていただきながら、高校教育において何を学び、何を身につけることが必要なのかといったこと、そして、生徒の学力をどのように保証するのかといったこと、そのために現行のシステムについて、資料3では、先ほどまで触れましたもののほかに、教科書の使用義務ですとか、あるいは、教員の資格や数といったことですとか、あるいは、学校評価等の制度についてもお示しをしておりますが、これら高等学校の教育システムを構成するそれぞれの要素につきまして、どのように改善すべきかなどについても御審議いただければと思います。 私からは以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。今日の論点、「個々の生徒の学習進度・理解等に応じた学びのシステムの構築について」に関係した関係資料やデータを御説明いただきました。これから早速議論に入っていきますが、少し論点を幾つかの柱に整理して、課題を分けて議論していただければと思っています。
 まず、今日の議論の趣旨ですけれども、高校生の学びとか、学力保証といっても、皆さん御承知のとおり、学力のレベルとか、進路等々が多様であるというふうな現状を踏まえますと、それを全体として議論するというのは非常に難しいですので、今日は、先ほどの事務局からの説明にもありましたとおり、普通と言ったらちょっと語弊がありますけれども、中位レベルの生徒を想定して、高校生の学びや学力保証に関わる論議をしていただけないかと思っています。次回以後に、それ以外、例えば優秀なトップレベルの生徒の問題とか、あとはまた逆に、低学力層の生徒の学びと学力保証の課題等々について、別途時間をとって議論をしていただきたいと思っています。
 今日は、そうしたあらゆる層の問題を議論すると非常に議論が広がりますので、今言いましたように、おおよそ中位レベルの生徒を想定した上での高校生の学びの現状、課題、そしてそれをどう改善していくか、そのシステムの在り方等々について議論していただければと思います。
 また、議論の方向ですけれども、一応本日の論点ということで、2つ丸ということで書いていますけれども、最初のほうは、高校生の学びの現状と問題ですね。つまり、生徒の学びを阻害しているものというのは一体どこに起因しているのか、高校の制度に起因するものなのか、その他の起因、要因によるものなのか、また、生徒の入学時の能力、適性とか、卒業後の進路がそれぞれ異なる中で、生徒は高校教育において何を履修し、何を修得すべきなのか、さらには、高等学校卒業後の進路として、大学、専門学校への進学者が約7割、そしてその他3割が就職等々していくわけですけれども、そういう多様な進路選択の中で、どのような能力を高校教育の共通な教育として身に付けさせていくことが必要なのかということも含めて、生徒一人一人の能力、適性等、ないしは卒業後の進路に対応した高校教育の在り方というのを、学びの現状や問題をどう改善していくか、それに関わるいろんな議論をまずやっていただきたいと思っています。
 それを大体45分程度やった上で、そうした現状、問題、課題に取り組んでいくために、どのような制度、システムの見直しが必要なのか。例えば、これはもう既に第1回目のこの会合でも委員の皆様から指摘されていましたけれども、例えば、修得主義、履修主義というふうな考え方を現時点でどういうふうに考えていくのかとか、学習指導要領の在り方の問題、さらには、先ほどの事務局からの説明にありましたように、高校、大学の接続に関わって、高大接続テスト等々の在り方等々、そうした問題を次の後半の45分程度で皆さんの御意見を賜りたいと思っています。
 おおよそそういう前半と後半に分けて議論を進めさせていただければと思います。当然この中身は密接に関わって、そう簡単に分けて議論できないことは重々承知ですけれども、議論を分散させないためにも、少しそういうふうに論点の置き方を変えて、前半、後半という形で議論を進めさせていただければと思います。
 では、最初に、第1の柱、高校生の学びの現状、問題、また学力の中身等々について、皆さんから御意見をいただければと思います。よろしくお願いします。では、長南委員からお願いします。

【長南委員】

 どこから話を進めていったらいいのか、ちょっと不安ですけれども、中学校3年間で随分学力の差というのはつくのでないのか。その学力の差のある高校生が、今度高校入試の選抜の段階で、大体全県一本でテストをしているわけですね。その入試の在り方もどうなのかなと。しかも、入試の問題の作成に当たる方というのは、ごく一部の方であって、その学校の教員たちの手はなかなか触れることができない。ですので、まず一人一人の学力を伸ばすために、保証するために、まずとる段階から考える必要があるのでないのか。確かに一斉でやっていたテスト、学校ごとに入試を行うというのは非常に難しいことかもしれませんけれども、でも、学校の教職員の意識が随分違ってくるのではないかと思いますね。
 ですので、まず伸ばす前の段階で、どういった生徒を入学させるかということをもっともっと各学校が吟味をして、それに合った入試選抜の方法をとるということが私は一番のことでないのかなと思うんですね。

【小川部会長】

 ありがとうございました。小杉委員、よろしくお願いします。

【小杉委員】

 現状の問題ということで、労働市場の側から常に見ている者として、職業教育について非常に問題を感じております。卒業後、就職も進学もしない層、あるいは就職したとしても、安定的な進路になかなかいつけない、そういうタイプの学生が、今の労働市場側の要因が大変大きいんですけれども、輩出せざるを得ないような環境になっている中で、まず普通科教育を受けてフリーターになるという層が非常に多くて、普通科教育において職業準備が全くできていないという問題ですね。そこが1つ。
 それから、職業教育学校についても、今のところ工業高校と労働市場との接続がいいので、工業高校での就職状況はいいですが、それ以外の職業高校は決していいとは言えない。今回職業と普通との対比、資料では2つにしか分けてございませんが、これを商業とか農業とかに分けますと、工業以外の職業高校は決して市場との接続がいいとは言えないという状況があると思います。そういう労働市場の需要等のマッチングにおいて、職業教育が職業高校でも十分できていないのではないかという状況。それから、普通科教育において、実際にはそのまま労働市場に輩出されざるを得ない若者たちが十分職業準備教育を受けていない。このことが大変大きな課題だと思います。
 それから、もう1点、高校というのは多様に進路が分岐されるところだと思うんですが、今の高校生が勉強しないという話がずっと今出ていますが、1つの大きな要因は、勉強することの意味がわからないというところがいろんな調査で言われているところだと思います。そのあたりがきちんとメッセージで伝わってない状況が多分大きな課題だろうと。
 例えば学力というのは非常に重要で、今の大卒の就職の現状を見ますと、エントリーシートから面接に入る段階で、ここで完全に学力足切りが行われているんですね。そのことを例えば高校から大学に入る若者たちは、実はそこで足切りされている学力というのは何かというと、中学、高校時代のレベルです。そのレベルのウェブテストが行われて、それで足切りが行われているという現状があります。実際、労働市場に出る時というのは、学力というのはかなりいろいろな形で、彼らの選択の幅を狭めてしまう要因になっているんですが、そういう事態が実は高校生には十分わかっていない。学校で学ぶことが実は将来先々の自分の進路をかなり規定するんだという、そういうメッセージがきちんと伝わってない状況というのも大変問題じゃないかと思います。以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。今、長南委員と小杉委員のほうから御意見がありましたけれども、ほかにどうでしょうか。和田委員ですね。

【和田委員】

 前回のときにも少し申しましたけれども、高校での教育内容というのは非常に濃いといいますか、厳しくて、普通の中学校の卒業レベルではなかなか初めから対応できないような内容になっているのではないかなというのが一番強く感じるところです。ですから、それを改善できないというのであれば、高校の授業時数といいますか、年数とまで言ってもいいかもしれませんけれども、それをもう少し長くする必要がある。そうでないと、本当のところ、今高校のカリキュラムで与えられているものを3年間できっちりこなして、大学なり、あるいは職業につく人、そういう市場なりの要求に応えられる学力をなかなか保証するのは本当は本質的には難しいのではないかなという気がします。
 逆に、中学校と高校とのカリキュラムの連関性をもう少し考え直せば、高校で初めて習うようなことでも、中学校で十分わかるようなことはいっぱいあるわけですから、そういうものをもっと中学校の内容にも落とし込んで、逆に中学校で難しいようなことは高校で後でやってもいいと思うんですけれども、そこをもう一度見直してあげたほうがいい。高校入試が済むまでは中学校の内容を何とかこなせば高校には入るわけですけれども、入った後、高校の内容が急に難しいと感じて、学習意欲がそこでなくなっている。あるいは、中学校の段階で、易しいことばかりやってきてしまったために、知的好奇心がそがれてしまっているということがあると思うので、中高のカリキュラムの在り方を見直すというのも絶対必要ではないかなという気がしております。

【小川部会長】

 ありがとうございました。小林委員よろしくお願いします。

【小林委員】

 私もいろいろな観点から考えてきましたけれども、一番は、小学校、中学校、高校と全ての段階で厳しさを追求する教育がおろそかになったのではないかと思います。私どもの工業高校は、ある程度の技術力を持って卒業させますので、そこで機械なり、電気なり、そういうのを教えていく段階で、時間厳守、あるいは提出厳守などの課題を与えますと、中学校まではそういうことが今は行われていませんので、出そうが出すまいが成績がついて、ところてん方式に卒業していきます。けれども、工業高校に来ると、毎週毎週実習があり、その実習課題をこなすのに四苦八苦してしまう。そういうようなところの、わずかなところの厳しさでも耐えられない子供たちが増えているだろうと私は思います。
 そうしますと、今日の論議になっている中堅の子たちにも、やはりそれは十分に伝わっていて、例えば高校の定期テストをやろうとすると、普通の中堅グループの子供たちは、授業の中でしっかりと聞いていると、定期考査の前に一夜漬けで、ほとんどの子が合格点をとれちゃいます。その中で、5段階評価の5とか4をとろうとすると、もうちょっと勉強する子がいますけれども、とりあえず合格点をとろうといえば、一夜漬けで十分なくらいに高校の教員はレベルを下げてしまうおそれがあります。
 そうしますと、子供は見抜いてしまいますので、家庭学習をする時間は、クラブ活動なり、アルバイトなり、自分の自由な時間に費やしてしまう高校生が今あります。ですから、全体的に覆っている教育に対する厳しさというんですかね、そこら辺は応援していただければありがたいなと思っています。
 もう一つが、先ほど小杉委員から出ましたけれども、今、全体の2割しか専門高校ございません。その中で、労働市場はかなりあるんだろうと思うんですけれども、普通高校の生徒諸君を見ると、キャリア教育はされていますけれども、実際的な職業教育は十分にさせられていないので、職業観、就労観、それらの育成がやはりおろそかになっている現実はあろうかと思います。ですから、そこら辺も議論していただければありがたいなと思っています。

【小川部会長】

 ありがとうございました。よろしくお願いします。

【長塚委員】

 今、議長のほうから出されている課題は、学びを阻害しているものは何かという、そういう論点だと思うのですが、学力がそもそも低下しているのかという、学力低下論というのはここずっと話題にされていたわけですけれども、それは国際的な学力調査によって、そうでもないというような、あるいは回復しているというようなことが言われてきて、ちょっと安心しているところではないかと思います。しかし、学習に対する意欲が低下しているということが問題だと言われているわけです。その中で、今、高校生の中程度の生徒たちのまさに学習に対する意欲が低下している。これはどうなっているのだろう、どうしたらいいんだろうということで、私ども、現場にいる者としては、当然そのようなことを実感しているわけであります。
 ただ、この間、高校教育の制度的な多様化というのを進めてきて、そこで期待していたのは、画一的な教育を脱して、あるいは、必修科目も、先ほどの説明のように、できるだけ絞って、自由な新しい教育内容を各学校が特色を持って行うことができるようにした。その多様化は成功したのかもしれませんけれども、結果としてどうだったかというと、学習意欲は決して高まっていない。学力低下というふうにはなっていないかもしれないけれども、学習への意欲、あるいは学校への満足度、高校生活への満足度といったものは必ずしも上がってない。
 例えば最近、都立高校が特にこの10年間教育改革をしてきて、教育委員会で調査をしました。その結果として、満足度はどうだったかというと、公と私の比較をそこでしていますけれども、公立高校の保護者の満足度は総合的に5割、私立高校は8割でした。生徒本人は、公立高校がやはり5割で、私立高校は7割という結果が、10年間の結果として出ているわけです。
 多様化を本当に推し進めてきた中で、満足する、高校生活あるいは学校に満足するかどうかということがあまり高まっているような感じには、少なくとも公立高校全体の中においては、言えないんじゃないかな。あまりその辺を無視して話をしてもしようがないような気がしています。実態がどうなのかというと、多様化が決して功を奏しているようには私には見えません。
 というのも、相変わらず入学段階で、あるいは卒業段階での序列構造というのがあり、高校教育の多様化とはいいながらも、序列構造は排除されていない。そういう中で、一つの閉塞感は決して脱皮できておらず、満足度や学習意欲が高まっていないんじゃないのかなと思います。
 もう一つ、多様化というのは、個性重視、あるいは教育の自由化といった一連の改革だったと思うのですけれども、結局は振り分けられた途端に、結局は自由を奪われてしまう。あるいは、反対に言えば、安心してしまうと言ってもいいのかもしれませんが、そういうところにとどまってしまうという状況が多様化の結果として今はまだあるのじゃないかと思うんですね。
 本来価値の多様化の時代に必要な教育というのは、個々人が多様な考え方とか価値観を理解したり、あるいはこれを共有できることにあったはずで、つまり、学校の役割が画一的な内容を一方的な手法で教え込むという従来の知識獲得型から、多様な考えを学び合うというような創造的な思考型に転換すべきであった。そのこと抜きに高等学校の教育をどうこうしようと言っていても、本質的なところで多様な教育の本当の意味での必要性というところに至っていないのではないか、そんな気がしております。以上です。

【小川部会長】

 今まで既にいろんな論点が出されています。高校入試の在り方、あとは職業教育の問題ですね。さらに、勉強する意味というものを高校生にきちっと伝えられてないのではないかとか、あと、中学と高校のカリキュラムの連続性の問題ですね。そして、教育全体としての厳しさを求めるという、教育が全体としておろそかになっているのではないかとか、さらに今は、多様化というようなねらいはある面では成功しているかもしれないけれども、多様化によって果たして生徒の学力や学習意欲や満足度というのは本当に高められているのかどうか。その辺のところで多様化に対する捉え直し等々、非常に多様な論点が指摘されていますけれども、ほかにどうでしょうか。

【川嶋委員】

 意見ではないんですけれども、高校の側の委員の先生にお聞きしたいんですが、先ほど和田委員のほうから、今も部会長のほうから整理がありましたけれども、中学のカリキュラムと高校のカリキュラムの間に断絶というか、ギャップがあるのではないかというお話だったんですが、私はよく存じませんのでお聞きしたいんですが、そもそも名目上のカリキュラム、つまり学習指導要領自体、中学校の学習指導要領の内容、水準と高校の学習指導要領の内容、水準の間にそもそもギャップがあるのか。そうではなくて、カリキュラム上は連続しているんだけれども、中学校教育の現実といいますか、学習到達度が十分ではないために高等学校のカリキュラムと現実には接続していないのか、そのあたり、少しお聞きしたいと思います。
 といいますのは、本日の資料3の一番最初に、先ほど紹介ありました高等学校の目的・目標のところで、高等学校は中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的としていると。こういう目的があれば、基礎の上にということですから、教育課程上は積み上げていますから、連続しているという設計になっているはずなんですが、そのあたり、少し高校の先生側の御意見をお聞きしたい。

【小川部会長】

 和田委員と、あと、ほかに高校の関係者もいらっしゃいますので、もしも今のような論点でさらに何かつけ加えることがあれば、高校関係の委員の方からもお話を伺いたいんですけれども。まず、和田委員、何かお話しいただけないでしょうか。

【和田委員】

 私も全科目を教えているわけでなくて、高校では当然自分の科目というのが中心になって考えるんですけれども、例えば私の場合は英語をずっと教えてきたわけですが、中学校の英語の検定教科書というのは、表現は悪いですけれども、漫画みたいなもので、ほとんど絵が多くて、そこにちょこちょこっと会話文なんかが入っていてというのがずっと続くわけですね。それから、高校の、まあ、学校によって選択する教科書にもよるでしょうけれども、同じ英語Ⅰといってもかなりレベルの差があって、場合によってはいきなり文章がずらっと並んでいる教科書に入っていくわけです。そういう形の勉強をあまり中学校のほうではされていないと思うので、そうすると、既にそこで英語が嫌いになってしまうというような形が見られるのではないかな。本校の場合は中高一貫ですので、そういうこととは無縁ではあるんですけれども、教科書の内容なんかを見ていますと、既にそういうような感じがします。
 もう一つ、理科なんかでは、先生方がよく仰っているのは、今の中学校の教科書というのは、実験なんかも出てくるんですけれども、理屈の説明は全部高校へ回されているために、実験をやっても、手品を見ているだけで、種明かしのない手品を見せられているだけで、わあ、すごいなということでは終わるんだけれども、例えば、じゃあ、こういうふうに違う物質に変えてみたらどうなるんだろうかというようなところはあまり考えられない。したがって、そういう知的好奇心がそれ以上進んでいかないというような欠点があるのではないかと。昔だったら、化学記号とか、あるいは化学式とかいうようなことも中学校の内容にはきっちり入っていたんですけれども、今習うとしても、中3ぐらいになってやっと始まるような感じで、その間にも理科というのがわけわからないというような印象を持ってしまって、理科嫌いにつながっているのではないかというようなことをうちの先生方も仰っています。
 表面上は、中等教育の前期と後期というのはカリキュラム上つながっているようにはつくられているとは思うんですけれども、特に例のゆとり教育3割減のときの指導要領で、随分中学校は荒っぽく3割減して、その一部は高校へ回したわけですが、残りはカットされたような状態。そういう状態で、高校のさらに発展した内容へ来るときに、カットされている部分で随分実は必要だったようなことがあったはずなんですけれども、その辺が、例の一律3割減の指導要領をつくったときに随分抜け落ちたような気がしております。

【小川部会長】

 ありがとうございました。ほかに高校の関係者の方、いかがでしょうか。じゃあ、荒瀬委員、そしてあと上野委員ということで、お願いします。

【荒瀬委員】

 今和田委員がおっしゃったことは、公立高校でも非常に強く感じているところです。うちは公立中学校から大半の生徒が来ますので、公立中学校でどんなことをやっているかということに乗っかって、そこで指導していこうと思うと、1年生に入学しました最初の2、3カ月、あるいは場合によったら半年ぐらいは、生徒たちの知識の部分もそうですし、あるいは、具体的にどういうふうに取り組むかという工夫の面ですとか、学ぶ姿勢ですとか、そういった部分についての調整を図っているという現状があります。
 ただ、中学校は、今まで議論は高等学校が多様化しているといいますが、中学生はもっと多様化しているわけで、それが1つの教室の中にいるわけですから、だから、おのずと授業の在り方というのが、学習指導要領であるとか、あるいは教科書であるとかといったこととは別の要素で、現状に対する対応というところで動かざるを得ない面というのが、これは特に公立中学校は強くあると思います。
 今回の学習指導要領の改訂に当たって議論していたときにも、高等学校はなかなかまとまらないんですが、小学校、中学校はわりとまとまりやすい印象を私は横で見ていて思ったのですけれども、それは、全国津々浦々で、小学校教育も中学校教育も同じことが等しく行われているという前提に立っているからであって、実態はそういう前提なんていうのはないわけですね。
 したがいまして、一方では、これも京都市の場合は、1週間にどういった授業を展開して、どんなふうに進めていくかというような週案といったような取組も相当進んでいますから、教室の中では、決められたことを決められたスピードでやっていかないといけない。それに対して生徒の理解がどうなっているかということは、もちろん重視されるわけですけれども、どちらかというと、大体これぐらいできればいいかというような形で、幾つも幾つも落としてきているものがあるのではないかなと。あるいはまた、早く生徒たちが理解したというふうにするために、ちょっとこれは暴言かもしれませんが、答えを早く教えようというような傾向もあるのではないか。それが例えば実験などにつながっていかない、理科の実験につながっていかないというようなこともあるのではないかと思います。
 しかし、これは、中学校教育が本当に多様な生徒を対象にやっておられるということを考えますと、ある程度は致し方がないのかなと思います。だから、高等学校教育を考えるときには、当然中学校教育に対して注文もいっぱい出したがるのが高校の側だとは思うんですが、注文は出しつつ、じゃあ、高等学校で入ってきた生徒たちにどんなふうな教育をやっているのかといいますと、先ほどのお話につながりますが、私は阻害しているものは高等学校教育そのものでもあると思っています。高校生が学ぶ意欲を持たないのは高等学校が学ぶ意欲を持てるような教育をしていないからではないかなということも思っていますので、ですから、中学校にだけ原因を求めることはできない。本当は話がどんどんでかくなりますが、社会のありようとか、一生懸命やらなくたっていいような風潮があるわけでして、一生懸命やったところで将来どうなるのかみたいな雰囲気が大変あるわけですね。
 先日韓国へ行っていろいろ伺ってきて、大変興味深かったのは、韓国は就職が非常に厳しいそうで、したがって、がんがん勉強して、大学へ行って、留学していかないと就職できないというような、何か日本はそんな感じでもないですし、本当に学ぶことの大切さみたいなことを、今回この高等学校教育部会というのができたわけですから、高校生にどういうところから学ぶ楽しさとか学ぶことの意義みたいなものをしっかりと考えられるような高校教育をするのかというのが私はとても大事だと思っております。

【小川部会長】

じゃあ、上野委員、よろしいですか。

【上野委員】

 いろいろなレベルの生徒さんがいる中で、今ここでは大多数を占める中くらいのレベルの人たちの教育についてということで、私も高校の生徒さんを全て知っているわけじゃありませんけれども、結構いろんなことで接した経験がありますので、学力に欠けるというのは、これは事実としてあるわけですね。それが制度によるところもあるでしょうし、制度以外によるところもあるだろうと。
 制度以外のところで少しお話しさせていただきますと、おそらく気力とか、待つことができないとか、すぐ結果が出ないと嫌になっちゃうとか、そういうのが培われちゃったんだと思います。多分生徒さんによっては、場を与えてあげれば伸びていく生徒さんもいるだろうし、極めて特殊な努力を教育的に加えないといけないグループもいますけれども、今の中くらいのところというのは大多数を占めていますよね。そこに対してどれだけの時間をかければいいかということは、多分一番教育効果として大事なところだと思います。教育が教育として本当に生きるところなんだろうと思います。
 そのために、教師は何をしないといけないかというと、例えば何で勉強が必要かということを説明するにしても、1クラス全員に対してある説明をしたとしても、これはなかなかうまくいかないんですね。なぜうまくいかないかというと、生徒は十人十色ですから、A君にはあることを言ってあげないといけないし、B君には別なことで言ってあげないといけない。そうすると、先生が普通の授業もそうですけれども、授業以外の機会を使って、どれだけそういうふうな生徒さんに合ったような意見を言ってあげるかということだと思うんです。そのためには十分な時間が要りますね。おそらく1つはそういう十分な時間がどんどん、どんどん減ってきた結果だと思います。ですから、それは制度を変えるということではなくて、どういうふうにして学校運営を、校長先生がかなり今裁量を持っておられるので、進めるかということです。
 もう一つは、生徒さんに対して、あまりにもいろんなことを準備し過ぎているんだと思います。これはどういうことかといいますと、生徒さんは常に決められたかごの中で教育されているんですね。例えば大学に行ったり社会に出るときには突然そのかごの扉が開くわけですね。で、外へ出るわけです。そうしたら、えさの食べ方がわからないんですね。いつも与えられているから。待っているんです、外へ一歩出て行っても。そうすると、そうならないような新たな教育が、例えば社会として、もしくは大学として必要になってくるんですね。
 ですから、学校教育、例えば高等学校教育の中で、生徒さんが、こういう言い方してよろしいでしょうか、少し小さなけがをするような機会をつくってあげたほうがいい。それには、自分で判断して、何かをやらせる。例えば先ほど理科の実験の話が出ましたね。見ているだけだと。要するに自分でやらせなくなったんですね。それはやらせないほうが、簡単に準備して教育できますからね。だから、制度もそうですけれども、どういうふうにして普段から授業なり、課外活動も含めてやっていくかということだと思います。
 あるときに、私、全国高等学校長協会の代表をやっておられる方に、4、5年前だったと思いますけれども、こういう質問をしたんです。「こういう質問をして申し訳ないかもしれないけれども、先生の立場から見て、例えば全国の高等学校の中で、そういうふうなことを一生懸命なさっている先生は一体何人ぐらいいらっしゃるんでしょうね」と聞いたことがあるんです。そのときに、その先生、しばらくお考えになって、「20%程度でしょうか」とおっしゃいましたね。20%程度ということは、実際はもっと少ないということですね。
 ということは、多分忙し過ぎて、先生自身が、例えば生徒のある程度個性に応じたような助言をしてあげようとしても、その時間がないんじゃなかろうかと。そういうことが、別に高等学校に限らず、ずっとあるような気がします。すなわち、先生の情熱が下がってくるんですね、忙し過ぎて。そうすると、だんだん、だんだんそういうふうになっていっちゃう、というような気がしております。

【小川部会長】

 ありがとうございました。今、中学校、高校のカリキュラムの連続、断絶の話で、和田委員とか荒瀬委員から少しお話しいただいたんですけれども、それに関わって、質問された川嶋先生のほうから何かございますか。

【川嶋委員】

 ありがとうございました。今お聞きして、1つは、表面的な理解かもしれませんけれども、小中高で、教材、教科書の在り方と教育方法というんですかね、逆に生徒から見ると学びの方法が不連続になっているんじゃないかというような印象を受けました。それで、全体を見直しますと、先ほど御紹介ありましたように、大学は初年次教育で高校教育のやり直しとはまでは言いませんけれども、高校生を大学生にすると、よく高校4年生と私たちは言うんですけれども、それを大学1年生にしていくということを初年次教育でやると。高等学校は今度の学習指導要領から義務教育の復習もやってよいというようなことになって、非常に日本の教育システム全体として無駄が出ていると思うんですね。ですから、ここは高校教育部会ですけれども、全体を連続した形の中で、それぞれきちんとやるべきことをやって、次の学校段階に生徒や学生として送り込んでいくという、そういう教育に携わる者の構えといいますか、覚悟が要るんじゃないかなと思いました。以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。先ほどの上野委員も、制度に起因する以外の日々の指導や授業の中での生徒との関わり、その辺のところの時間の劣化というか、先生方、多忙化の中で、そういうところに少し注目した発言だったかと思います。
 先ほどお手が挙がっていたのが、野上委員、加藤委員、及川委員、金子委員ということで、お願いします。じゃあ、野上委員から。

【野上委員】

 私は産業界から来ておりますので、カリキュラムがどうのこうのというような点については知識がないものですから、違った観点から申し上げますと、私がおります埼玉県経営者協会は平成15年、2003年から高校生の進路選択時に四者面談を企業人を加えてやっております。これは、通常、生徒、保護者、教員の三者面談で進路相談をするわけですけれども、そこに企業人を加えて四者面談という事業を今日までやってまいりましたが去年からこの事業は県教育局の主催事業となり、全県下の公立高校を対象にして行なわれるようになりました。
 私が、この事業を始めたきっかけは、高校生が大学に入っても中退する生徒がたくさんいたり、また就職した場合にも、七五三現象があるということで何かもったいないと感じたことが事の発端で、この四者面談を始めたわけです。十年近く実施してきて現在確信めいたことを感じています。登場人物4人1組が1時間個室に入って生徒の進路を話させるわけですけれども、実施の結果わかったことは、本人を含めて、保護者、それから先生の三者が、その子が本当にやりたいこと、何に興味があるのか本人も含め残念なことですけれども、よくわかっていない。ということは、これまで自分史、自分を探求することがきっと少なかったのではと思うのです。保護者の多くは大体寄らば大樹で、大学名は知っていても、どういう学部、学科があるのかがわかりません。そして、就職を希望する生徒の保護者にしても、我が県でいえば本田技研のような大企業は知っていても、中小企業については一切知らない。
 というような状況の中で、進学にしろ、就職をするにしろ、自分がどんな分野に行きたいかをこの四者面談の中で、企業人、経営者を交えて相談・検討させるのであります。その中で企業人は、「何だ、君はそういうことがやりたかったのか。そのためには、どこの学校に行けばよいのかな」と意地悪い質問をすると、「何々大学です」「じゃあ、そこの何学部で、何学科かな」と問い掛けると、もうここでばたっと行き止まるわけです。「そうじゃないだろう。何がやりたい、どういう学科に進みたいということが先に来なけりゃ、だめなんじゃないの」というようなことから面談は始まります。そして生徒が語ったことを実現させるためにはと云うことで、「ちょっと悪いけど、通信簿の数学、理科の成績を教えてくれよ」と言うことになる。その後、「それ成績じゃ無理じゃないの。頑張らなくちゃな」と言うようなやりとりになるわけです。高校2年のときに四者による進路相談があるわけですが、残る1年で進路が大きく変わった子、それから成績が残る1年でここまで伸びるのかと先生方から驚きの結果報告がありますから、四者面談に意義を感じております。
 こうしたことからしても興味というか、自分を発見する機会を是非外部人材を活用して設けていただきたいと思います。私どもは教育のプロではありませんので本質的なところはわかりませんけれども、そのお子さんが持っている資質、知識レベルは我々世代にくらべ今のお子さんのほうがはるかにあります。ただし、それが顕在化されない。そのお助けは我々経済界、産業界ができるわけですよね。
 他方、先生も卒業後すぐ先生になりますから、一般社会の体験がございませんので、激変する今の環境には疎いかもしれません。というようなことから、外部を活用して、お子さんの自分探求の機会と時間を設けていただければ幸いであります。今日いただいたテーマ、一人一人の能力を伸ばすにしても、興味があれば、勉強もしますし、先ほど申し上げたように成績も上がりますし、そして更なる知識欲につながりますので、生徒さんの希望も実現するのではないのかなと思っております。

【小川部会長】

 ありがとうございました。では、加藤委員お願いします。

【加藤委員】

 私、日本青年会議所というボランティア団体を代表して来ておるのですが、この団体は、主に中小企業から大企業までの経営者の中から出てきてやっているんですが、そんな中、私は1999年から経験させていただいておりますけれども、ほとんど起業家だったり、二代目だったりという中で経験したことから言いますと、今の中級レベルぐらいの学生たちがなぜ勉強しなければならないかということを明確に伝えなければならないだろうなと感じます。
 まず、基本的には、皆さんからお話出ましたけれども、原始時代であれば、衣食住は、マンモスを狩るとか、畑を耕すとか、それで済んだわけですけれども、今この世の中に出た以上は、どこかに勤めるか、あるいは、何かを創るかしてお金を稼がなければこの世では生きていけないという、誰しも関わっている現実があるわけじゃないですか。そういうことをしっかりと伝えていく。その先にさらに何があるのかということを伝えていかなければ、目の前にある勉強を何のためにやっているのかということに気づかないんじゃないのかなと。
 それは先ほど仰っていたように、パターンは対象者によってそれぞれ違うかもしれないけれども、さらには、その中で、どのステージからでも、いわゆる今の学力のレベルのどのステージからも、将来にわたって大きく夢を持てるんだということをしっかりと伝えていくことが重要じゃないのかなと。その夢というのは、ある意味ビル・ゲイツであったりとか起業も含めて、そういったことをしっかりと、どのステージからでも、今目の前で学んでいることは将来に生きていくんだということをしっかり伝えていくことによって、今目の前にある、なぜ勉強しなければならないかということをしっかり理解していくんじゃないのかなと。
 それと、言ったように、決して高収入だけが将来の幸せというわけではないですけれども、そういったことを伝えていくためのツールをしっかりとそろえていくということも大事なのかなと。その中の1つとして、起業するということも加えていっていただければ、どのステージからでも夢が見られるということを伝えていけるんじゃないのかなと私は思います。以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。及川委員、よろしくお願いします。

【及川委員】

 先ほどの中学校とのカリキュラムの整合性の問題ですけれども、中学校、高校と、それぞれ学習指導要領の各教科とかの文言を読んでいる限りでは、発達段階を踏まえた形でよく整合性というのか、連続性を保たれているような学習指導要領になっていると私は思います。それに基づいて出来上がってくる実際の教科書はどうかということはまた1つあると思うんですが、ただ、学習指導要領の部分で発達段階を踏まえて整合性、中高の整合性はあったとしても、それとやっぱり生徒の実態というのはかなりかけ離れている状況が出ている。つまり、中学校の段階で、先ほどからも出ているように、多様化がかなり進んでいるということだと思います。
 結局、高校は義務教育ではないので、入学者選抜を行う。中学校の段階でできている多様化している現状、学力の面での現状を、残念ながら今の高校入試の入学者選抜がそれを固定化してしまっているというような働きを示しているのではないかなと思います。
 そういう意味では、高校に入って、肝心の学ぶ意欲というものをどう引き出すかというところでは、どういう入学者選抜をするかということはかなり大きいのではないか。要するに、どういう生徒を求めるかというメッセージをどれだけ込めた入学者選抜ができるかというのはやっぱり大きいんじゃないかなと思うんですね。
 そういう意味では、推薦入試ですよね。こういう生徒を求めるというメッセージを強く発するということで、各県、推薦入試というのはとり行われているだろうと思います。
 ところが、今日配られた資料で見ますと、埼玉県が、入学者選抜に関するアンケート結果というのがございますよね。それで見ると、これは要するに推薦入試をやめたということですよね。推薦入試をやめて、学力検査で全部高校入試を一本化した。その結果どうであったのかということのアンケート結果だと思うんですが、学力検査で統一をしたことによって学習習慣の定着を図ることができたという回答が非常に多いんですね。本来こういう生徒を求めるという選抜制度というのは、推薦入試だと思うんですけれども、それとは違う学力検査のほうがむしろ学習習慣の定着を図ることができたという。高校の側もそういうふうに答えているわけですけれども、これをどういうふうに読み取ったらいいのかというふうに、ちょっと質問も含めてなんですけれども、お伺いしたいなというところが1つあります。
 それから、学力検査という場合には、いわゆる共通問題でやる場合と自校作成の問題というのがあると思うんですが、自校作成の場合には、やはりこういう学力像を持った生徒を求めるという、そういうメッセージというのははっきり出せるんじゃないかなと思います。中高一貫校で行われている適性検査ですかね、ああいう問題を見てみますと、どういう学力を持ったどういう生徒を求めるかって、非常にメッセージ性がはっきりしている。やはり入り口の段階でそういう入学者選抜を行っていくということが入学後の主体的な学びにつながっていく側面があるのではないかなと私は考えております。以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。じゃあ、金子委員、よろしくお願いします。

【金子委員】

 1つ入試についですが、こういう議論があると、必ず入試をどうするかという議論が出てきて、私、今仰っていたこと、大変そうだろうと思うんですが、一般的には正しいんだろうと思いますが、ただ、例えば推薦入試をやれば、必ずそれに対応する動きが出てきて、例えば学力が損なわれるとか、そういったことが出てくるわけです。
 私ども、大学入学者と、それから高校3年生からずっと追跡した調査をやっているんですが、大学の場合は少なくとも、推薦入試とか特色入試というものをやっても、結局プラスもマイナスも全然どちらも出てこないですね。例えばさっき仰っていたように、自分が何をやりたいのかというのがはっきりしているとか、そういうことについても実はあまり入試が新しい方法をとったからといって効果が出るというふうなことは、少なくとも出ていない。
 仰っていること、間違いだとは思いませんが、実際に入試をいじるということは、実は必ずいろんなところでほかの効果が出てきて、期待した結果が出るということはまず、私は非常に少ないのではないかなと思っています。
 ただ、私、最初の議論に戻りますが、中堅の高校生の学習時間が少なくなった。事務局が用意していただいたベネッセのデータですと、20年間で中堅くらいの高校生の学習時間が半分になっている。これはものすごい大変な事態だと思うんですね。やっぱりこれは正面から見なければ……。今までは大体こういうことがわかっていながら騒がないというのはなぜ、どこも何も言わなかったのはなぜなのか、私は非常に不思議でしようがないんですが、PISAの調査で少し下がった、上がったといって、あれは毎年の変化はそんなに統計的に信頼できるものではないんですが、あれについては新聞でどんどん騒ぐわけですが、勉強時間が下がっていることについてはほとんど何も言わない。どこも取り上げてこなかった。これは私はなぜなのかよくわからないですね。ただ、少なくとも言えるのは、今それは非常に重要な問題であるということです。
 それはなぜかというと、私はやっぱり基本的には大学入試は、仰るとおり、入試は大切で、大切なところは、入試が変わったからです。特に1990年代からは、厳しい学力試験を通らなくても大体入学できるような大学が増えてきましたから、明らか非常に競争的な選抜をする大学を受ける高校生が少なくなった。
 私、前回も高校生には競争的選抜に対応している高校生と、非競争的な進学者と、それから就職という、3つぐらいタイプがあるんだと。特に非競争的な進学者に今非常に大きな問題があると申し上げたんですが、その人たちが大学入試に向けて勉強しなくなっているわけですね。ところが、高校のカリキュラムは、多様化したんですけれども、結局はやはりそれは教科型であって、大学入試の科目に対応している。ですから、高校生が自分たちの目的としていることと高校の中で勉強していることの編成の原理とがもう対応しなくなっているわけで、私は今そこに最大の問題点があるのではないかなと思います。
 そこで何が必要なのかということですが、私は1つは、多様化が、例えば英語A、英語Bというような、難易度のような多様化をすることによって、本当にそれが高校生のニーズに対応するのだろうかというと、私は必ずしもそうではない。先ほど小杉委員も仰っていましたが、どこが例えば就職で足りないのかというと、むしろ非常に基礎的な学力で、それは教科で出される学力ではなくて、むしろコンピテンスといいますか、いろんな議論をする能力とか、文章を書いたり読んだりする、そういう能力が非常に今ニードがあるわけで、それをどのような形で形成するのかが問題だと私は思います。それをすることによって、生徒にとっての自分の目的と努力というのが結びついてくる。双方を考えるというのが非常に重要なんじゃないかと思うんですね。
 私は高校が専門ではありませんので、よくわかりませんが、大学について、私ども、かなり同じような問題意識を持っていまして、やっぱり勉強しなくなっているわけですから、どうしたら勉強するかということを考えるわけですが、1つ非常にわかりましたのは、授業の方法というのはやっぱり非常に重要です。学生に参加させるとか、生徒が書いてきたものをきちんと見て、直して返してやるとか、非常に学生の勉強意識が変わってくるんですね。
 そういったことは、私は多分高校でもそうなんじゃないかなと思うんですが、そういった形で、個々の授業の専門性も大切ですが、そういった形で授業に参加することが一種のコンピテンスといいますか、一般的な能力をつくっていく。それがやっぱり重要なんじゃないかと思うんですけれども、そういったことを高校でも一部では多分始められているんだろうと思うんですね。
 ただ、高校の先生なんかとお話しすると、もうやっていますよと仰る先生も結構いらっしゃるんですが、少なくとも私は聞いている限りは、そういったことをまとめて――まとめるというか、どういう方法がいいのか。あるいは、どういうカリキュラムの編成の仕方が私的な学びに結びつき、それから、先ほどお話に出ていましたように、自分がやりたいことを見つけていくような行動に結びつくのか。そういうことについて、必ずしも体系的な分析とか、そういったもの、情報のフィードバックというのは行われてない。
 これは私、教育学者ですので、やっぱり教育学者の責任であると思います。教育学者が高校を専門にしている人が少ないというのは、そういう意味では問題のところで、教育学者にも責任はあると思いますが、そういった意味で、内容とか、授業の仕方自体でかなり解決できるというか、解決すべき問題も相当あるはずなので、そういったことについての知識の蓄積とかフィードバックとかということは求められるものである。
 高校の先生で、もちろん授業で努力されている方は多いんですが、あれはやっぱりかなり教科の問題として捉えられていることが多くて、今申し上げたいのは、少し広い意味での高校生の学力という意味での考え方がまだやはり足りないのかな。そういったところで努力をしていく。あるいは行政の政策上もやっぱり何かやることがあるのではないかなと思います。以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。第1の柱に関して、議論の予定時間を大分オーバーしております。今の金子委員のご発言も含め、何人かの委員のほうから改善の方向性等についてもご意見がでておりますので、その流れの中で、できれば第2の柱、制度とか、ステムの問題まで少し広げて、議論を進めて行って頂ければと思います。ただ、第1の問題にも関係しますので、第1の点について、さらに御発言される方がおりましたら、どうぞ。じゃあ、相川委員と和田委員、お2人ということで。じゃあ、伊藤委員ということで。できましたら、だんだん第2の柱の方にも少し意識しながら御発言いただければと思います。相川委員、どうぞ。

【相川委員】

 私は具体的な指導要領だとか、そういうことに関しては、高校の先生方のほうが御専門なので、ただ、前回もお話ししましたけれども、一人一人の能力に向き合うというところからすると、先生方が非常に多忙すぎて、一人一人に向き合う時間がないのか、それとも、生徒の人数が多くて向き合えないのかとかということ。指導内容の部分でも検討は必要ですけれども、その外枠の部分で、生徒の人数削減をすることにより向き合うことができるのではないかと思っています。生徒数を減にすることも1つの方法として考えることができるのではないかと感じています。
 そして、先ほどから言っているように、高校というのは小中の基礎の上にあるということです。学習能力が中程度の生徒さんでも、小中の基礎が十分でないというのがあるとすれば、当然そこは小中との連携充実ということが図られなければならないと思います。高大の連携接続も大事ですが、まずは小中の連携は欠かせないのではないかなという感じがしています。
 必修科目というところはどうなのか、ちょっとわかりませんけれども、必修科目が多くて、生徒が興味を持った方面の学習を行いたくても、できない状況にあるのかどうかというのは、高校の先生からちょっと教えていただければありがたいなとは思っております。

【小川部会長】

 よろしいでしょうか。ありがとうございました。では、渡邉委員、よろしくお願いします。

【渡邉委員】

 埼玉なものですから、先ほど御質問があった件について一たんお答えをさせていただきたいと思います。22年度からいわゆる学力検査全てがペーパーテストを実施するということで行われました。それまでの推薦では、調査書と面接ということですので、学力検査がペーパーテストがなかったわけですね。そういう意味では、中学生にとっては、1つのハードルを越えなきゃならないということで、学習の習慣は定着したと私自身も判断をしております。
 それからもう1点だけ、申し訳ございません。中程度の生徒の学習意欲の問題で今いろいろ議論いただいているわけですけれども、中程度の生徒が入ったとしても、やはりその中で上下があるわけですね。かなりの差が出てくるわけです。その中で、高校の教員としますと、ある程度のところに照準を合わせて授業をやっていくということで、中程度の学校であっても、上位の生徒は、そこでは若干暇な時間ができてしまうというか、そういう状況が出てくると思うんですね。先ほど小林委員さんだったでしょうか、厳しさが足らないという御意見がございましたけれども、私もそういうふうな気がいたします。上の生徒にどれだけ厳しくできるか。どうしても我々高校の教員は、中程度のところにレベルを合わせて授業をやっていく。教材も精選してしまう。そうすると、上が少し楽になってくる。そういうのは学校の中には現実問題としてあると思います。以上です。

【小川部会長】

ありがとうございました。最後、伊藤委員、よろしくお願いします。

【伊藤委員】

 中学校ということで、中学校の話題も出ましたので、まず中学校、高校のカリキュラム連携ですけれども、中学校では来年度から新学習指導要領、そして高等学校は25年度からだと思いますけれども、その新しい学習指導要領では、かなり連携といいましょうか、接続については、工夫、改善されていて、今移行措置でも始まっていますけれども、私たち中学校としては、来年度の新学習指導要領の全面実施に向けて、各学校で準備をしているところがあります。
 高校に入ったときの生徒の実態ということで言えば、中学校は中学校でまた、小学校から上がってくるお子さんの実態がかなり多様化しているところはあります。高校でもかなり多様化されていると思いますけれども、例えば本校でいいますと、数学検定2級を取るお子さんもいれば、四足計算がまだおぼつかないような生徒、それから英語検定2級を取るお子さんもいれば、同じ学年に英単語がなかなか覚えきれないようなお子さんまでいます。そういった実態の中で、私たちは生きる力を目指す学習指導要領の定着に力を入れ、様々な方法で現在学力向上を図っているところがあります。
 さらに、ほぼ全員が高校へ進学しますので、卒業後の進路に向けては、一人一人、中1の段階から対応しているところがあります。高校進学後の学力向上という点では、前回もお話ししましたけれども、もっともっと中学校と高校との日常的な連携も大切だと感じています。
 それから、金子先生のほうから授業改善が非常に大事だということで、本当にまさにそうだと思います。中学校でも、学力向上ではやっぱり授業が本当に大きなポイントだということで、どの学校でも今授業改善の研修会に様々に取り組んでいるところです。
 それから、例えば本校で言えば、学校にいる時間が全て学びの時間というふうに考えておりまして、朝は朝読書から、そして授業を受け、そして放課後には補習体制を整えてやっていたりします。また、長期休業中も、中学校も高校も、補習体制でやっているようなところがありますけれども、さらに家庭学習の問題も出ていましたけれども、家庭学習は本当に大切だと思います。学校でわかっていても、それを定着するにはやはり家庭学習が非常に大切なわけで、中学校では例えば毎日ノートに、今日は何を家庭学習したかといったことを次の日に提出させて、それを担任がコメントを書いたりするようなこともやっていますし、定期考査の前には計画表を出させて、何を何分勉強したといったような、そういった地道な努力で学力というのは身につけていっているのかなと思っています。以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。今まで第1の柱で、高校生の学びの現状、問題、また、そうした問題をどう改善していくかということも少し含みながら議論してきました。これまでの議論の中では、例えば入試とかいったシステムのレベルとは違う視点から、授業の改善とか、進路指導とか、そういう日々の指導をもう少し充実していけば可能ではないかとか、あと、そうした取組に十分時間を割けない教員の多忙化の問題ということも少し視野に入れて検討すべきじゃないかとか等、多様なご意見が出てきましたけれども、今までの議論を少し踏まえながら、これまであんまり触れられてこなかったシステムの問題、制度の問題や課題に関して、少し皆さんの御意見を伺いたいと思います。
 第1回の皆さんからの意見の中でも、例えば履修主義、修得主義という捉え方の問題、さらに、学習指導要領の在り方、あと、高大の接続の在り方では、高大接続テストの可能性を指摘される方もいらっしゃいましたけれども、他方で、高大接続テストを大学入学の資格として実施することは難しいのではないか、さらには、大学入試の合否に関係しないところで、高校生の学習の目標設定や仕組みを考えて、それを活用する方法もあるのではないかなど、いろいろな意見が第1回の会合でも出されていたように思います。
 そうしたシステムとか制度の改善等々について、少し皆さんから時間をとって少しもんでもらうというか、いろいろな論点を出していただければと思います。時間が残り30分程度で、少し短いのですけれども、今日は第1回目ということで、また今日出てきた問題については継続して次回以降も適宜議論していきたと思いますので、よろしくお願いします。じゃあ、荒瀬委員。

【荒瀬委員】

 学ぶ意欲を高めていくために学習指導要領は有効かどうかというのを考えると、私は実は大変有効であると思っています。ただ、それができるか、できないかというと、なかなか現実の問題としてできていないというところがあります。教科書を進むことはできても、生徒自身が自分でものを考えるとか、先ほどから出ています参加型の授業とか、そういったことをしない理由をいっぱい学校は持っています。例えば教員の多忙化と言いますけれども、一体何が多忙なのかということの分析というのがきちっとできているのかどうか。もちろん多忙です。教育委員会からあまり意味を感じないような書類がいっぱい来たりとか、あるいは、決まっているからということで研修に行かなければならなかったりとか、そういった、ちょっと考え直してみてもいいのではないかと思うようなこともあるんですけれども、それ以外の条件的なもので言えば、例えば部活なんていうのも、これももう少し社会体育的なものに変えられないかと思いますが、しかし、そういったことがあったとしても、実は生徒と向き合って生徒の中にある、学ぼうという気持ちを引き出すということは、これはできないことでは決してない。ところが、やっていないという現状があります。
 何をやってないかというと、そもそも教科の指導自体がやれていない。せめて教科の指導、基礎的な教科の指導からスタートしないと、ものを考えるための材料がない状態では駄目なわけで、ものを考えるための材料というのを教科の指導を通して学んでいって、そこから、それらの教科の枠にははまらないような、総合的な力であるとか、あるいは活用的な力であるとかといったものを身につけさせていこうというのが、今、多分学習指導要領が目指しているものであると思うのです。ところが、そこになかなか行っていないという現状がある。
 じゃあ、その現状をどうしたらいいのかというと、私は2つあると思っていまして、1つは、教育委員会、公立学校であれば、教育委員会がどういう姿勢であるのかということが多分問われているんだろうと思うんですね。
 もう一つは、それぞれの学校で、教員、特にその学校の教育に責任を持つ。先ほど権限がたくさんあるというお話が出ましたが、実は公立高校の校長は権限なんていうのはほとんどなくて、責任は大変たくさんありますけれども、もう少し権限をいただきたいと思いますが、校長がどのような形で学校の教育活動を含めた経営方針をきちっと出して、具体化していく方向で持っていくか。そこのところが大変問われている。それをやっている学校というのは全国に実はたくさんあって、ところが、困ったことに、学校というのは、あまりよその学校がやっていることを真似しない。だから、よその学校がやっているいいことをもっと真似しましょうよとか、共有してやっていきましょうというような場をどうして作っていくのかというのが1つ大きな課題としてあるのではないかなということを思います。

【小川部会長】

 ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。じゃあ、眞砂委員、よろしくお願いします。

【眞砂委員】

 中高の現場の立場から、今までいろんな質問も出たと思いますので、話してみたいと思います。学習指導要領という制度があって、これを守ろうとすると、日本の先生たちは非常にまじめですから、きっちりやろうとして、さっき出てきましたけれども、非常に忙しい。授業準備で忙しいんですね。授業の50分とか45分の中でやろうとすることを一生懸命用意してやろうとすると、授業に行ったら、先生が一方的に生徒に、これ教えなきゃ、あれ教えなきゃと一方的に話をするような授業になってしまっている。それはやっぱり学習指導要領がたくさん内容があるからだと思いますけれども、やはり生徒の学ぶ力というのは、自分から出てくるようなものだと思うんですね。今学ぶ力が落ちているというように思いますけれども、実際に生徒にはあるはずなんです。携帯いじったり、デジタル機器とか、本当に好きなことはどんどんやっていますよね。そういうのを勉強のほうにもっと向けさせるような、授業がおもしろくなきゃいけないと思いますね。
 ですから、生徒たちに発言させるとか、書かせる。さっき言われたように、書いたものをちゃんと見てあげる。宿題を管理するというよりは、生徒が出してきたもの、発言したものに対してちゃんと教員が答えてあげる。そういう授業であれば、生徒は授業に乗ってきますし、おもしろいと思えば生徒は自分から勉強すると思いますね。そういう授業であることが絶対に必要だと思います。

【小川部会長】

 よろしいでしょうか。ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。安彦委員。

【安彦部会長代理】

 私は、高校生全体としては、中学校から、あるいは小学校の高学年あたりから段階的には同じ傾向を持った子供たちだと思うんですね。子供のほうから見た場合、特に一部御意見ももう出ているようですけれども、思春期以後の高校生までのこの時期の青年前期の子供たちがどういう問題を抱えるか、ということに正面から対応してあげないといけない。どうもこういう、何といいますか、すぐ教育の議論とか、指導の在り方とか、授業の仕方とかというんじゃなくて、まず子供自身、その時期の子供自身がどういう状態の、発達的に、あるいは成熟の度合い、社会性の度合い等々、まずどういう時期の子供なのかを把握した上で議論をしなければいけないと思うんですね。
 そういうことも前提にしますと、先ほどからご意見のある、教科中心に見てはいけないとか、全体的な視野で子供を見なきゃいけないとかということが、やっぱり出てくるんだと思うんですけど。
 そういう意味でいうと、一番目を留めておかなきゃならないのは、思春期以後の自尊感情の変化だと思うんです。自尊感情が小学校の4年生ぐらいまでは割合のんきで、自分は価値がある存在だ、いい子だというふうに周りも認めてくれていると、のんきに思っていますけれども、思春期以後、自尊感情が逆転しまして、自分はだめな子だ、生きている意味があるんだろうかという、非常にマイナスの自尊感情になります。それは大体中学から高校の前半ぐらいまで継続します。
 そういうときの子供の変化は非常にいろんな形でマイナスの出来事として出てきます。例えば不登校、あるいはいじめ、まあ、暴力行為まではすぐは出ないでしょうけれども、あるいは鬱病等の子供たちの状況が、形として出てきます。
 そういう子供の状態を念頭に置きますと、先ほどからお話あるような、進路等に応じて云々とか、あるいは、今のような授業をどうするかとういようなことについて、一番子供のそういう核になるようなところを、本当に改善できるかどうかかがポイントになりまして、そこが相変わらず解決されなければ、やはり子供は伸びやかな、晴れやかな顔で学習に取り組まない、意欲も生まれない、そういう状況になるんだろうと思っています。
 そこのところで、是非そういう意味では、中学と高校の、まあ、小学校高学年からと申しましたけれども、この青年前期の子供たちの実態といいますか、まずそれをどういうふうに捉えるか。というあたりで、情報とか、現場でのいろんな先生方の経験とか、子供の様子を知らせるデータが欲しいですね。
 改めてそういう面から考えますと、私はどっちかというと中学校が専門なので、高校の話で先ほど、研究者がいないと言いましたけれども、一昔前は高校の研究者ばっかりだったんです。一世代前の私の10年上ぐらいの方たちは、どちらかといいますと、高校のほうにウエートがありまして、中学は逆にやる人がいなかったんですね。どういうわけだか、高校進学率が7割を超えるあたりから、研究者がいなくなりました。
 つまり、一言で言えば、歴史的な背景がありまして、日教組を中心とする高校全入運動なんかがあったときは、進学率がなかなか上がらないのが不満で、もっと高校まで入れろという声を推進したいために、研究者もたくさんそういうことを前提にして研究を進めていたわけですが、ある程度、1974年、5年あたりから、90%を超えるような段階になりますと、もう論点としては大きなものがなくなるものですから、高校研究者というのは逆にいなくなりまして、それで今この時点では、先ほどから御意見があるような状況になっているわけです。
 逆に言うと、1974年、75年あたりのことを思い出しますと、森山眞弓文部大臣のころ、昭和50年前後の、あの頃なんですけれども、森山さんがやはりはっきりと、これからは高校教育は質が問題だと。量は一定程度もう来ていかるから、質が問題だと言い始めたわけですね。
 そのあたりで本気になって、そういう子供たちの状況を踏まえた、新しい高校の質をちゃんと備えた高校ということで、しっかりとした議論がなされればよかったんですけれども、多様化とういことで、多様化の意味合いというのがある意味でぼけたまま進み、かつ、他方で大学進学率も上がってきましたから、今度は大学のほうにまた目が行ってしまいまして、高校はある意味で置き去りにされた。多様化路線のほうを前面に出してきて、その上での大学入試の議論のほうが主要な流れになってしまった。
 そういう意味でいうと、高校が抱えた問題というものを、誰も注目しないで、今まで過ぎてしまったということが一つの大きな流れだったんだと思います。実際問題として、今のようなお話を伺っていて、中学、高校、つまり中等教育の子供たちの望ましい発達とか成長とかということについて、本気になって、この間、どこも、誰もといいますか、主要な関心を持って対応してこなくて、全て大学入試を中心にして、それを前提にした教育の在り方のほうに視点が移ってしまったんだという、そういう状況だったと思うんですね。
 ですから、改めて今先生方のお話を伺っていても、あまり個別的なことよりは、かなり基本的なところで議論をしなければいけないんじゃないか。そういう意味でいきますと、システムの面で言えば、学校教育法の改正で、先ほどもお話ありましたように、目的・目標の規定が50条、51条にありますけれども、これはどれほど議論されたかわかりませんが、旧学校教育法では高等普通教育及び専門教育になっていたわけです。これが「高度な」というふうになったことの意味合いというのは、私はかなり微妙なといいますか、かなり議論があっていいと思っていまして、こういうことも含めて、目標全体をどういうふうに捉えるかということが、私たちのこの時期の子供たちの捉え方の中心的なところに影響してくると思っています。
 普通教育と言っていますけれども、これは天野郁夫先生が、私たちに、小学校6年と中高の6年、同じ6年なのに、中等教育だけ前期と後期があって、初等教育には何で前期、後期がないのか。逆に中等教育にはあるということの意味は何かと問われたときに、この条文を出されまして、中学校は中等普通教育と、高校のほうは高等普通教育という言葉を使っていたわけですね、旧学校教育法で。その違いは何だと言われて困ったことがあります。天野先生もストレートに答えを出したわけじゃないんですけれども、結局普通教育といっても、中等教育までは義務教育なわけですね。ですから、中等教育で義務教育が完成するわけですね。
 それに対して、高等普通教育というのは何かと言われれば、これは簡単に言えば、専門教育に入る前の導入教育ですよね。それ以外ちょっと考えられません。国民的義務教育の完成じゃないはずですね。ただ、現在の準義務教育化した高等学校の普通教育は、ほぼそれに近いんじゃないかと言われれば、それはそういう解釈としてはあり得ると思いますが、今回「高度な普通教育」と定めたということは、ある意味では初等、中等、高等という普通教育のネーミングを変えてしまったわけですから、単線型の学校体系を表現する用語ではなくなったということなんですね。
 改めて、その辺も含めて、先ほどからの議論で、能力、適性等に応じて、どういう学力を保証するのかといったときに、先ほど金子先生が言われたような、コンピテンシーなのか、どういうふうに表現したらいいのかわかりませんが、従来型の学力ではない、何か一つの新しい学力観を高等学校で出さなきゃいけないのかなという感じもいたします。私はそこら辺がまだはっきりしませんけれども。
 ただ、単線型の学校体系は、やはり守るべきものでして、高等学校が高等学校であって、専門学校とは違うんだということは明確にしておかないといけないと思っています。専門学校その他は、基本的に国の基準というのが、学習指導要領のようなものがないわけですから、そういう意味でははっきりと性格の違うものですので、一部、高校の校長会その他で、多様化、あるいは選択も増やして、必修をなくす方向でというような声がありましたけれども、私はそれは単線型の学校体系の最後に位置づく高等学校としては、専門学校のように無際限に多様化していいとは思っておりません。やはりそれは今後も出てくる声かと思いますけれども、学力の核になるものは、小中高と重ねた一定のものというのを、それは教科を超えて云々というのは、コンピテンシー概念なのかどうかわかりませんけれども、何かそういうある種の基礎的、あるいは汎用的というんでしょうか、そういうようなものを私たちがちゃんとイメージできて、打ち出せればいいなと思っているんですけど。この点は是非先生方からも御意見やら、あるいは御助言をいただきたいなと思います。
 そういう流れの中で、今、以上のようなことを考えておりまして、そういう面から、また別な論点が出てきそうでしたら、是非出していただきたいと思います。

【小川部会長】

 ありがとうございました。じゃあ、あとお2人でよろしいでしょうか。じゃあ、小杉委員、小林委員ということでよろしくお願いします。

【小杉委員】

 システムということで、相変わらず私は職業教育なんですけれども、労働力需要のない職業教育というのを作ってしまう理由は何か。やっぱりシステムの問題だと思います。地域の労働力需要というのを教育に反映するような、そういう仕組みが多分組み込まれてないということが非常に大きいのではないか。それはどこかで、教育はもちろん教育としてきちんと積み重ねるものがありますが、一方で、職業教育というからには、一方で労働力需要との見合いも必要なので、その部分が現在の仕組みには組み込まれてないんじゃないかということが非常に私としては大事なところじゃないかなと思っているところです。以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。じゃあ、最後になりますけれども、小林委員、お願いします。

【小林委員】

 資料2の「数字で見る高等学校」の中に、6番で中退者数5万3,000人というのがあります。私の学校では結構これが問題の学校ですので、一言だけ言わせていただきますと、システムの問題として、高校に入ったけれども、不本意入学で入ってしまって、やっぱり違うところで学びたいという子供たちもたくさんいます。その子供たちが再スタートできるような制度を持っていただかないと、この5万3,000人なり、その上にある不登校生徒が、まあ、これ、ダブっている部分もあるんですけれども、こういう子たちがしっかりと学べる場所というのは、システムでつくっていただかないと、完全にこれは高校から見放されている子供たちですので、労働の中では劣悪な労働につく以外にないというところですね。ですから、今の日本の中では、高校卒という1つの免許はかなり重要な部分を占めていますので、そうしますと、中退した生徒が再スタートできるような方法を論じていただけると大変ありがたいと思います。以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。北城委員、よろしくお願いします。

【北城委員】

 子供たちの意欲に関することなんですが、資料1の8ページにPISAから見た児童・生徒の状況の中で、例えば趣味で読書をすることがない生徒の割合が日本は高いとか、数学で学ぶ内容に興味がある生徒の割合が日本は33%、OECD53%。別な資料の2のほうの11番を見ると、数学的リテラシーは40カ国中40位。要するに興味があるかどうかということに関しては日本は非常に低いのです。
 したがって、成績で学力が身についたということを評価するとか、あるいは、先ほど埼玉の学校の話が出ていましたけれども、試験があるからあるいは、学力テストがあるから、それで学力が定着したという見方をすべきではないと思います。要するに、成績がよければ、それがいいことだという要素は確かに基礎学力の中にはあるんですけれども、やはり高校とか、大学を出て、社会に出ていったときに、自分で考えるとか、自分で意欲を持って何かを学ぶというような意識をつくるような教育をしないと、単に成績がいいことだけでは社会の役に立たないという視点をもっと高校教育の中で考えていく必要があると思います。
 ですから、システムを設計するときにも、半分以上が大学に進学しますから、大学に進学する子供に関しても、ともかく教科で与えられた知識をよく知っているということが大事だという発想そのものを変えなければなりません、実際に企業に出て働くときには、知識を持っているのも大事ですけれども、意欲があるとか、行動するとか、自分で考えるとかいう能力が求められます。これはさっき野上さんがおっしゃったようなこととも関連するんですが、そういうことを高校の中でどうシステムとして実現していくのか。その中には、確かに授業方法としては、対話型とか、自分で意見を言わせるとか、自分の考え方に対して先生がいろんな批判をするとか、アドバイスするとか、そういう実際の教育方法は大事なんですが、なぜそういうことが必要なのか。なぜ学ぶことが必要なのか。なぜ自分で考えなければいけないのか。そういうことを教えていかないと、学ぶ意欲がない子供たちに無理やり教科の成績だけ上げさせても、実際社会では役に立たないし、そういうことでは活躍できない環境に今なってきていると思います。

【小川部会長】

 ありがとうございました。もう時間がないんですが、ほかに御発言のある方。じゃあ、荒瀬委員、最後に和田委員ということで、今回の会議は終わらせていただきたいと思います。では、どうぞ、荒瀬委員。

【荒瀬委員】

 ありがとうございます。仰ること、今北城委員のおっしゃったことも大変よくわかるんですけれども、しかし、教科の知識を教えるということ、今現状ではそれをやっています。この現状でやっている中で、工夫できることが私はたくさんあると思っています。現に学習指導要領が示すところ――学習指導要領に私は全て操を立てているわけではありませんけれども、しかし、学習指導要領が求めているものは、結局学力の重要な3要素、基礎的・基本的な知識・技能の修得と、それらを活用する思考力、判断力、表現力等、そして学習意欲であると。だから、この3つというのは切っても切れない関係にあるということが、これは法律上、1つ、私は仮説のような気もいたしますけれども、規定されているわけで、それが具現化されているという前提で学習指導要領を読めば、その基礎的・基本的な知識・技能を修得する中にも、学習意欲を培える部分というのはきっとあって、それは授業の方法とかの工夫によってもできるし、あるいは、学校全体の方向性の中でも実現できるんじゃないかなということを思っております。以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。では、最後、よろしくお願いいたします。

【和田委員】

 1つだけ質問なんですけれども、先ほどのベネッセの資料の家庭での学習時間が半分になったというのですが、この家庭での学習時間というのは、学校でもなく、家庭でもないところでたくさん勉強している、塾とかのが入っているのかどうか調べといていただきたいなと思うんです。意外と本当に我々の実感として半分になっているというのはちょっと行き過ぎているのではないかなというのが正直なところです。
 システムと関係するとは思うんですけれども、結局、荒瀬先生がおっしゃったように、授業の工夫とか、生徒との対話とか、いろんな形で幾らでもやり方はあると思うんですけれども、そのためには、教員と生徒との信頼関係ということが一番基本になるんですね。いきなり1時間目の授業からディベートするというのはまず不可能で、やはり先生と生徒たちの間の人間関係を構築する必要がある。そのためには多少の時間がかかるので、1年ごとに教科を教える人がかわるとか、そういうやり方はやっぱりよくない。本校の場合は、併設型の中高一貫校であることを利用して、中学校から高校3年生までできるだけ1つの教科・科目を1人でもって上がるし、学年担任団としても、生活指導もずっと見て上がるというシステムで、人間関係を先に構築してから、そういういろんな授業、例えば教科書を少し外れたようなことをしても、生徒はついてくるというようなことができているのではないかなと思います。
 そういうことがシステムとしてできるのかどうか。学校それぞれの裁量でしょうけれども、できるだけ長い間同じ生徒と先生がつき合っていけるようなシステムをつくられるのがいいのではないかなと。
 もう一つは、校長先生の権限もありますけれども、校長先生の期限も県によってはちょっと短過ぎるのではないかなと。1つの方向性を持っていかれるには、5年、10年同じ先生が校長をしてリードしていくような形でないと、先生が変わったらまたシステムが変わるというような学校では、なかなか生徒も落ちついて勉強できないのではないかなという気はしております。

【小川部会長】

 ありがとうございました。事務局のほう、今の質問で、ベネッセの家庭学習の中に塾等々の時間が入っているのか、入ってないのかというのは、今わかりますか。

【小谷教育制度改革室長】

 わかります。6、7ページに掲載しております家庭における学習時間の推移は、先ほど御指摘があった学習塾とか予備校だとか、そういったものも含まれているということでございます。結果の表し方が6ページと7ページは違っておりますので、このような形で紹介させていただきました。

【小川部会長】

 和田委員、よろしいでしょうか。

【和田委員】

 はい。ありがとうございます。

【小川部会長】

 ありがとうございました。もう時間が来てしまいましたので、今日の議論はこの辺で終わりたいと思います。
 今日の大きなテーマであった「個々の生徒の学習進度・理解等に応じた学びのシステムの構築について」ということで、一応2つの柱を設定させていただいて議論してきました。第1の柱については、皆さんから、現状、そして課題、またその問題、課題を解決していくためにどのような取組が大切なのかという、そういう視点での御意見はかなり多く出たように思います。
 ただ、時間の関係もありまして、第2の生徒の学力をどのように保証するかという点に関わっては、制度やシステムの在り方と関係させて議論するということについては、今日、残念ながら、幾つか重要な視点は出てきたんですけれども、十分時間をとることができませんでしたので、またこれは改めて時間を設けて適宜また議論をしていければなと思っています。今日はどうもありがとうございました。
 では、次回の予定について、事務局のほうから御説明ください。

【小谷教育制度改革室長】

 次回の予定につきましては、資料6にお配りしておりますけれども、12月27日、火曜日、13時から15時、旧文部省庁舎6階第2講堂で会議を予定しております。年末で恐縮でございますが、どうぞよろしくお願いします。

【小川部会長】

 年末の本当にお忙しい時期ですけれども、重要なテーマでもありますので、是非スケジュールを御調整の上、御出席いただければありがたく存じます。よろしくお願いいたします。
 では、今日の会議はこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。

 

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(初等中等教育局初等中等教育企画課教)