高等学校教育部会(第1回) 議事録

1.日時

平成23年11月4日(金曜日) 15時~17時

2.場所

中央合同庁舎第7号館(文部科学省)東館16階 特別会議室

3.議題

  1. 高等学校教育部会長の選任等について
  2. 高等学校教育部会運営規則等について
  3. 高等学校教育の現状等について

4.議事録

○部会長について、小川委員が適任である旨了承された。
○小川部会長から、安彦委員が部会長代理に指名された。
○本部会の公開及び傍聴について、本部会運営規則に沿って取り扱うことについて了承された。
 

【小川部会長】

 審議に先立ちまして、私のほうから本部会の運営等に関わって、少し御挨拶をさせていただきたいと思います。
 今日から、この部会で高等学校の教育についての審議を開始することになりました。この間、高等学校の教育をめぐっては、様々なところで、また、様々な機会に議論が行われてきたわけですけれども、中央教育審議会として高校教育をメインテーマに取り上げて、そして答申をまとめたのは確か1991年、平成3年の「新しい時代に対応した教育の諸制度の改革について」という答申であったと思っております。この1991年の中教審答申以降、高等学校改革の具体的な取組は、都道府県とか政令市、そして各学校法人などの設置者が主体的に、地域の状況とか環境変化に対応しながら多面的に展開してきたわけですけれども、中央教育審議会としては、1991年の中教審答申以来、実に20年ぶりに高校教育を真正面に据えて検討を進めるということになります。
 高等学校の教育をめぐっては、先ほど局長のほうからのお話もありましたとおり、非常に多くの論点、議論もありますけれども、本部会としては、まずは、特に1991年の中教審答申以降、全国各地で取り組まれてきた高等学校の改革の動向、その現状を丁寧にフォローしながら、何が問題なのかということと、今後取り上げるべき課題をこの部会委員の間でしっかり共有していけるように審議を進めていければなというふうに考えております。
 そのため、本年度中は、問題の整理と取り上げるべき課題、そして方向性を明確にしていけるような作業と審議を行い、来年度から個々の課題を深めながら、取組の基本的な方向、そして方策を打ち出していけるような審議ができればと思っております。恐らく1年以上を超える長丁場になるかと思いますけれども、どうかよろしくお願いいたします。
 それでは、今日の議事(3)高等学校教育の現状等についてに入っていきたいと思います。事務局から配付資料の説明をお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】

 それでは、配付資料につきまして、御説明をさせていただきます。
 まず、資料4の「教育振興基本計画における高等学校教育等に関する記述について」、御説明させていただきます。委員の皆様方には事前に送付をさせていただいておりますので、簡単に御説明させていただきますので、御了承いただきたいと思います。
 資料4は、平成20年7月に決定されました、教育振興基本計画における高校教育に係る記述を抜粋したものです。この計画は、平成24年度までの計画となっておりますけれども、現在、中央教育審議会の教育振興基本計画部会におきまして、25年度からスタートする次期計画のための御審議が進められております。ここでの御審議も、こういった基本計画の動向も踏まえたスケジュールでの御審議をお願いしたいと思っております。
 現行の基本計画におきましては、今後10年間を通じて目指すべき教育の姿として、アの中にございますように、高等学校については、多様化する生徒の実情を踏まえつつ、高校生の学習成果を多面的・客観的に評価する取組を進めるとともに、その結果を高等学校の指導改善等に活用することなどを通じて教育の質を保証し、向上を図ること、また、将来の進路や職業とのかかわりに関する教育を重視することが明記されております。そして、高等学校につきましても、多様化する生徒の実情を踏まえつつ、学習成果を多面的・客観的に評価する取組を推進する、あるいは、裏面でございますけれども、高等学校と大学との接続の円滑化、こういったことがこの5年間、24年度までに取り組む事項として明記されているところでございます。
 この教育振興基本計画のほかにも、先ほど部会長から御紹介いただきました、中央教育審議会答申等関連する答申、あるいは昨今の政府の各種会議の提言などにつきましては、こちらの机上資料としてつづらせていただいておりますので、適宜御覧いただければというふうに思っております。
 続きまして、資料の5-1を御覧いただきたいと思います。「高等学校教育の現状」と題しまして、現状のデータを整理させていただいておりますので、これも簡単に御紹介をさせていただきます。
 各ページに2枚ずつスライドがありまして、そのスライドの右下にページ番号が打ってございます。1枚めくっていただきまして、4ページ目のスライドを御覧いただきたいと思います。高等学校等への進学率は着実に向上しておりまして、昭和49年度に90%を超えまして、現在は約98%に達しております。
 その隣のページの6でございますけれども、学校数は5,000校を超えて推移しておりますが、平成以降は少子化の影響もございまして、微減傾向にあるという状況でございます。
 おめくりいただきまして、7ページでございます。生徒数は平成初期の約580万人をピークに減少傾向を示しておりまして、現在約356万人という状況でございます。
 次の8枚目、9枚目のスライドで学科の状況を示しております。学科別生徒数を見ますと、普通科はほとんど変化しておりませんけれども、職業系の専門学科から総合学科に生徒数が移っている構造であることがおわかりいただけると思います。
 また、おめくりいただきまして、12枚目のスライドでございます。定時制・通信制の課程についてお示しをしておりますが、定時制課程の学校数は微減、生徒数は横ばいとなっておりまして、通信制課程はいずれも微増傾向にございます。高校全体としては生徒数が減少している中で、こういった状況になっているということは定時制・通信制の特徴ではないかと思っております。
 また、13ページにつきましては、これは高等学校部門に特化したデータではございませんけれども、初等中等教育におけるOECD各国の公財政支出対GNP比を示したものでございます。平均と比較しましても、順位といたしましても、我が国が低い位置にあるということはおわかりいただけるのではないかと思います。
 そして、15ぺージからは、近年の高校教育改革についてお示しをしております。関係する中教審の答申なども紹介させていただいておりますが、18枚目のスライドにて経年でそれを踏まえた具体的な制度改正を整理しております。昭和63年に単位制高校の導入、平成5年には学校外活動の単位認定、その翌年には総合学科の設置、そして平成11年には中高一貫教育制度の導入というような形で、生徒の多様化に応じて特色ある学校づくりを可能とするという観点からずっと改革のほうを進めてきております。
 そして、19ページにございますように、このような形で進めてきました高校教育改革で新たに設置されました総合学科についてでございますが、これは現在、約350校を数えておりまして、単位制につきましては900校を超えている状況でございます。
 また、20ページにございますように、中高一貫教育校は、平成11年度の制度導入以来、学校数が着実に増加しておりまして、現在では420校に至っているというような状況でございます。
 21ページでは、学校外の学習を単位認定する学校数の推移を示させていただいておりますが、これにつきましても、近年実施学校数が着実に増加していることが見てとれます。
 22ページ、23ページでは、卒業後の進路を示しております。大学・短大への進学率が上昇する一方で、専修学校・各種学校への進学率や就職率は減少しているということになっております。特に普通科における就職率は1割を切っているというような状況でございます。
 少し飛びまして、25ページ目からでございますが、ここからは高校生の状況に関するデータを掲載させていただいております。
 まず、学力や学習意欲の面で見ますと、学習時間が短くなっているということ、それから学力低位層の増加が見られて、学習意欲ですとか学力向上が課題となっているところがうかがえます。
 それから、少し飛びますけれども、28ページにございますように職業との関係ということで見ますと、仕事がつまらないですとか、向いていないといったような理由で離職しているという人が多く見てとれます。
 その一方で、29ページ、30ページにありますように、高卒者の学科別の就職状況を見ますと、普通科において厳しい状況に置かれているということが最近の傾向であることに加えまして、正社員比率も低い状況にあるということで、高卒で就職される方の状況は非常に厳しいというところが見てとれます。
 また、31ページ目にございますように、高卒者の5%程度の方が卒業後に進学も就職もしていないといったような状況であることもわかります。
 32ページ目からは、暴力行為ですとか、いじめ、不登校といった事項を挙げております。これらにつきましては、減少傾向ではあることがうかがえますが、依然として相当数見られます。
 また、37ページ目からは、中途退学についての状況について掲げております。その理由につきましては、経済的理由で中退する方の割合が、平成22年度の調査において1.9%と過去最低になりましたが、高等学校実質無償化の効果も今後出てくるのではないかというふうに思っているところでございます。
 駆け足の説明でしたが、5-1はこれくらいにさせていただきます。
 続きまして、資料5-2を御覧いただきたいと思います。「今後の高校教育の在り方」につきましては、事務局の検討に資するために、昨年以降、200人規模の高校の教員、自治体の行政担当者によるリアル熟議を2回実施しましたほか、こちらの資料に掲げておりますように、有識者をお招きしての副大臣や大臣政務官の主導で行いましたヒアリングですとか、あるいは各都道府県の教育委員の皆様に御協力いただきました書面による意見聴取ですとか、私ども職員が学校に訪問してインタビューを行う、そういった様々な形で多くの関係者から御意見を伺ってまいりました。ヒアリングでお招きしました委員の方々は別添のとおりでございますし、資料に掲載しておりますように文部科学省のホームページにおきまして、いただいた御意見はすべて御紹介をしております。また、本日の配付資料としてもファイルでとじ込んだものを配付させていただいております。
 次の資料の5-3は、ヒアリング等において頂戴しました意見を便宜的に事項を整理しながら取りまとめたものでございます。個々の生徒の学習進度・理解等に応じた学びのシステムの構築という視点、社会の要請に応える人材養成機関としての機能の充実という視点、個々の人格形成の場としての機能の再構築といった視点、そしてその他という形で整理をしておりまして、それぞれにつきましてヒアリングで頂戴した意見、都道府県の教育委員から頂戴した意見、インタビューで伺った御意見という順で整理をさせていただいております。
 まず、「個々の生徒の学習進度・理解等に応じた学びのシステムの構築」ということでございますが、表紙をおめくりいただきまして、1ページ目、こちらからヒアリングで頂戴した御意見、そして、めくっていただきますと3ページ目からは都道府県の教育委員から頂戴した御意見、また1枚めくっていただきまして、5ページ目の中ほど、後段のあたりから職員のインタビューによる意見を掲載しております。すべて御紹介していると時間がございませんので、かいつまんで申し上げますと、1ページ目の上段にございますように、普通科から専門高校に転換していくべきだと、全日制、定時制、通信制という形で序列ができているけれども、学校の特色によって分類する仕組みに変えるべきといった、学科や課程に関する御意見ですとか、1ページ目の下段、4ページ目、6ページ目にございますような学習指導要領の大綱化ですとか、逆に高校教育としての統一性を求めるといった御意見、土曜日の活用に関する御意見など、教育課程に関する御意見、あるいは2ページ目の上段、前後して恐縮ですが、5ページ目の前半のほうにございますように、高校卒業段階での修得状況を確認するためのテストの導入ですとか、大学入試の改善、飛び級の採用、大学教員による高校での授業の実施といった学習の到達度や高大接続に関する御意見もいただいております。それから、2ページ目の後半以降、また6ページ目の中ほどにございますが、特別支援教育に関しまして、支援員、介助員の配置、専門性のある教員の配置といったような御意見もございました。
 続きまして、2つ目の観点でございます。8ページ目からでございます。「社会の要請に応える人材養成機関としての機能の充実」ということで整理をさせていただいております。8ページ目からがヒアリングの御意見、9ページ目の中ほどから都道府県の教育委員からいただいた御意見、そして12ページ目の下のほうからですけれども、職員がインタビューで伺った意見というような形で紹介をさせていただいております。この項目では、9ページ目、13ページ目の中ほどにございますけれども、学級編制基準の引き下げですとか、教職員定数の見直し、あるいはスクールカウンセラーやキャリアカウンセラーの配置など、教職員定数などについての御意見ですとか、また、10ページの前半、13ページ目から14ページ目にかけてございますように産業社会と人間の全校必修化、就業体験を求めるといったキャリア教育に関する御意見、ちょっと戻っていただいて、前後して恐縮ですが、9ページ目の前半、11ページ目、14ページ目の後段にございますような総合学校の条件整備についての御意見、それから11ページ目の前半のほうになりますけれども、職業教育について、産業構造の変化に対応した学科の設置や、社会の変化に対応した施設や設備の充実を求める御意見、同じくその下段にございますように、11ページから12ページにかけてでございますけれども、高校でも地域との連携を求める御意見、また12ページ目の後半ですとか、14ページ目から15ページにかけてございますように、教員の養成や免許あるいは研修の在り方についての御意見などがございました。
 続きまして、3つ目の観点でございます。こちらは個々の人格形成の場としての機能の再構築という形で、16ページ目から掲載をさせていただいております。同じ16ページの後段のほうから都道府県教育委員からの意見、17ページで職員のインタビューで伺った御意見もございます。こちらでは、例えば、16ページの中ほどにございますけれども、社会的自立につながるまでの居場所づくりについての御意見ですとか、市民性教育を取り入れてストレス耐性やコミュニケーション能力を育むべきといった御意見、あるいは奉仕を教科として設定して必修化すべしといったような御意見、それからお隣の17ページにございますような専門的な進路等総合アドバイザーを設置するといった御意見がございました。
 このほかにも、おめくりいただきまして18ページ目の中ほどにありますように、グローバル化を踏まえた外国語教育の充実ですとか、海外留学の促進といった御意見、あるいは19ページにございますように経済的な支援の必要性、高校再編に関する御意見がございました。最後20ページには部活動の在り方、定時制高校の生徒への指導に関する児童相談所等との関係機関との連携、総合学習の時間への支援と、非常に多岐にわたる観点から多くに御意見をいただいたところでございます。
 続きまして、資料の6を御覧いただきたいと思います。資料6は、初等中等教育分科会、この部会が設置しているいわば親会議に相当する会議になりますが、そちらにご所属いただいております委員の先生方に御審議いただきましたときにちょうだいした御意見を、簡単に整理をして書かせていただいております。
 まず、高等学校教育制度に着目した御意見で、普通科の割合をどう捉えていくのかといったこと、あるいは3つ目の○にございますように、全日制、定時制というレッテル張りではなく、単位を取得するという考え方に切り替えていくべきではないかといった御意見、また、高校入試の科目の在り方についての御意見、それから教育課程につきましても学習指導要領をもっと大綱化してはどうかですとか、学習指導要領と実際の学力との乖離について考えていくべきといった御意見、その下にございますように、大学入試についての御意見、さらに裏面をめくっていただきまして、高大接続といった概念からの御意見、高校の再編に着目した御意見ですとか、その他の意見ということで特別支援教育に関する御意見ですとか、教職員の専門職性に関しての御意見などをいただいているところでございます。
 こういったこれまで私どものほうで伺ってきました御意見ですとか、初等中等教育分科会でちょうだいしました御意見を参考にさせていただきまして、資料7という形で、検討課題の例として、この部会で御検討いただくべき事項としてこういったものがあるのではないということを端的に列記させていただいております。こちら4つの柱に分けさせていただいておりまして、簡単に○でそれぞれの視点を書かせていただいておりますが、これからの御審議の中で、こういった課題の設定の仕方から御意見のほうを頂戴できればというふうに思っております。
 私からは以上でございます。

【小川部会長】

 ありがとうございました。
 今、資料、いろんなデータに基づいて、現状と論点、検討すべき事項等々についての初中分科会での発言等御説明いただきましたけれども、それに基づいて、事務局のほうからこの本部会で今後検討していっていいのではないかと考えられる検討事項・検討課題について、資料7という形で提案させていただいております。ただ、この資料7の検討課題(例)というのは、事務局のほうでこれまで初中分科会、ヒアリング等々で整理した問題・課題を大きく柱立てしたものですので、本部会としては、これをあくまで1つのたたき台の材料としていただいて、皆さんからこれから様々な意見をいただきながら、本部会として検討していくべき事項・課題を整理していきたいと思っています。
 また、高等学校教育の検討課題といっても、国が重点的に取り組むべき課題、都道府県などの設置者が検討すべき課題、個々の高等学校が努力すべき課題、それはまたいろいろありますので、そういうことも少し出していただきながら、本部会として検討していくべき事項・課題を数回いろいろ意見交換しながら、整理していきたいと思っています。
 今日は、第1回目ですので、各委員の自己紹介も兼ねて、できましたら各委員一人一人、高校教育の問題・課題について御意見があるかと思いますので、そうしたことを含めて、本部会で検討すべき課題、また本部会の運営の在り方等についても御意見があればお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 できれば、今日は最初ですので、今言ったように自己紹介を兼ねて一人一人御意見を順番にお聞かせいただければと思っています。よろしくお願いします。
 最初に、今日お仕事の都合で途中退席をせざるを得ない委員が3名いらっしゃいます。安彦委員、安西委員、川嶋委員ということで、最初に御発言を求めたいと思います。よろしくお願いいたします。

【安彦部会長代理】

 それでは最初に意見を言わせていただきます。私は、今回の学習指導要領の改訂にも関わりました関係で、そのときに高校部会の座長もいたしましたが、直接は高校教育全体に対する議論がそこではできませんでしたので、今回大学分科会のメンバーも入ったこういう場が用意されたということは、大変有意義なことだと思っておりまして、大変期待をしております。
 そういう観点から、いくつか申し上げたいのですが、まず1点目は高校教育と大学との関係であります。最近、東京大学の浜田総長から9月入学などを議論する動きがありますけれども、私は前から、正直言いまして、何も学校側が高校生を大学に入れなければならない義務はないと思っております。この辺は、今回9月入学のことなど考えた場合に半年ほどの猶予がありますけれども、改めて、大学というところはそれぞれの高校生が自分の志望・希望をもとに行くべきところでありまして、それをもちろん、できるだけボランティアとして応援することは高校の先生方もなさっているし、私などはそういう恩恵を受けてきましたけれども、最近はボランティアで先生方が高校生を支援するというよりは、学校があたかも義務でなければならないかのように、大学入学を目標値まで掲げてやっているという事態が見られます。
 正直言って、こういうことは、私の見るところでは一段階、状況が変わったと思っております。今の大学との関係を改めて考えていただきたいのです。大学分科会との関係もありましたので、この点は前から個人的に考えておりました。大学との関係が絶対というものではありません。高校の半数の子供たちは大学に来ておりません。高校というところは後期中等教育をきちっとなすべきところでありまして、何も大学に対する入学準備教育を本分とするところではないはずであります。もし、そう考えるのであれば、予備校のほうがむしろ直接にそのことをやっているわけであります。そこの部分で是非大学と高校との関係について、改めて正面からしっかりと議論していただきたいと思います。
 その点の議論の仕方の一つとして、2点目ですけれど、私はこのところずっとそういうことを申し上げているのですが、この10年ぐらいの間、家庭教育とか地域の教育が、社会状況・社会構造の変化もありまして、あまり役に立っていないと言いますか、効果を生んでいない。そのために、学校に何もかも教育を求めるような風潮が高まってきました。こういう状況について、私は非常に心配をしております。このまま進むと社会の方はますます教育的な香り、潤いのない干からびた社会になりまして、学校だけが教育をやっているという非常におかしな社会になっていくと心配をいたします。
 そういうことをどういうふうな視点から見るかというと、はっきり言いまして、公教育と私教育の区別であります。この間、そういう面から見ますと、私教育が死にかけているというので心配したんですけれども、高校を見た場合には逆でありまして、先ほど申し上げた大学準備教育、進学教育という、ある意味では予備校でもやっているような私教育に、公教育が絡め取られそうだという心配をいたします。改めて、そういう意味では、公教育としての高校教育をどうするか、その上で、希望する個々の子供たちの高校生の大学進学の志望にどう応えるのか、という問題が付随して起きることは当然ですけれども、公教育そのものがそういうことをするものではないと思います。むしろ公教育は、青年期の若者たちの教育というものを、私としては「自立と個性」という視点で改めてきちっと構成する視点を持っていただきたいと思っています。 以上でございます。

【小川部会長】

 ありがとうございました。

【安西委員】

 安西でございます。現在、中教審の大学分科会のまとめ役をやっております。
 今、安彦先生が言われた高大接続の問題はもちろん非常に大事な問題であります。第一に申し上げておきたいのは、家庭環境あるいは地域社会のいろんな環境等のことで、高等学校での学びがなかなか立ち行かない生徒たちのためのセーフティネットをどこまできちっと整えるべきなのか、高校の無償化の問題は全体を括るわけですけれども、セーフティネットとして、お金だけの問題ではなく、どこまで何をやるべきかということをきちんと捉えることは、大学と関係ないかもしれませんけれども、非常に大事なことだと思っています。そこは割とぼんやりととらえられているように思います。どこまでというのは非常に難しいことで、そこは大事なポイントではないかと思っております。
 それから、大学に関しましては、先ほど局長からもありましたように、入試というのはほとんど意味を持たなくなってきている、マクロには今そういう状況で、高校、特に普通科の生徒は、高校でも勉強しない、入試もほとんどなきに等しい、それで私立大学等々に行くと勉強しない、大学の学生が勉強しないというのは、金子先生のデータでも知られているかと思うんですけれども、勉強しない。一方で、就職活動は大学に入ったときから始めないといいところに就職できない。もう追われ追われて就職活動をする。ある意味マジョリティというのか、そういう子たちが非常に多くなっていることも共有しなければいけないことだと思います。
 中教審大学分科会では、1つは、既に短大を含めて1,000を超えている大学の在り方について、いわゆるトップと言われる大学から短大までを一括して大学とは何かということを議論することはもうできない。機能別に分けて大学とはこうあるべきだということを、ある意味、自分なんかは制度の問題として捉えなければいけないんじゃないかとさえ思っておりますけれども、そういうふうなことまで考えていかなければいけないというので、相当長いこと議論をしてきております。大学の機能別分化と言われる問題でございます。
 もう一つは、大学の教育の質の問題であります。大学教育の質が他国に比べてなかなか立ち行かない。勉強しなくても卒業できる。そういう中で現実には高校生が大学に行ったとして、社会に出て行ってしまうということは、是非捉えておいていただきたい。それに対しての特効薬というのは、今、50数%が大学に行っているわけですけれども、トップレベルの大学に行くのはごく一部で、75%は私大に行っているわけですね。私大がいけないというわけじゃないですけれども。大学がそれぞれ機能別にどういう教育をしていくべきかという方策を早くきちっと出さないと、高等学校の教育と連動するんじゃないかというのが自分の見方でございます。
 高校の卒業生もまだまだ高校から社会に出る子は相当減っているわけですけれども、大学卒業生も含めて、社会での受け取り方ですね、それもまた非常に問題がありますので、ここまでにいたしますけれども、そういう基本的な構造をここにおられる委員の方々が共有する必要があると思うんですね。それぞれの方、みんな背後に何か背負っておられるので、どうしてもそういうところからばっかりそれぞれが見るようになるんですけれども、そのシステム的な像をきちんと共有するようにしないと、高等学校の問題というのは、なかなか具体的には解決していかないだろうし、逆に、もし、システムとして委員の皆様が基本的なところが共有できれば、いい結果が出てくるのではないかということを期待しております。 以上にさせていただきます。

【小川部会長】

 ありがとうございました。では、川嶋委員、お願いします。

【川嶋委員】

 川嶋でございます。もうすぐ退席しますので、言いっ放しになりますが、御容赦ください。
 私も安西先生のもとで大学分科会のほうで議論に参加させていただいておりますが、3点お話しさせていただきたいと思います。
 1つは、先ほどの安彦先生の御意見と同じなんですが、日本の学校教育制度の中で高校教育をどう位置付けるのかという問題であります。別の観点から言いますと、アメリカは非常に教育が多様化、分化していますので、高校教育の中身も州、地域によって非常に違っているわけですが、それを今は全体の教育の底上げということで、コモンカリキュラム運動、コモンスタンダードというような取組を各州が進めていて、できるだけ高校教育の水準を一定にしようという取組をしております。
 他方、日本は、学習指導要領があって、コモンスタンダードがあるにもかかわらず、実態は非常に多様化しているという現象がある中で、高校教育をどういうふうに考えていったらいいのかというのが、少し見えてこない、落ちつく先が見えないということであります。
 このことを別の言い方をしますと、高校教育は義務教育ではありません。98%近くの中学の卒業生が進学するんですけれども、制度的には義務教育ではありません。一方で、学習指導要領という国の定めたものがありまして、これに従わなければいけない。中学校までは義務教育ですので、学習指導要領に従って教育課程を組むのは当然なんですが、義務教育でないにもかかわらず、高校教育は学習指導要領に従わなければいけないことと、100%に近い進学率による、例えば多様化といった現実との齟齬が、制度的な見直しを今必要としていると思います。
 2点目は、大学と高校との関係です。これも今の学習指導要領の観点から申しますと、学習指導要領の改訂に伴って理科・数学は27年度、それ以外の科目は28年度から新しい大学入試が始まるわけですが、その際つくづく感じたのは、例えば入試センター試験をとりますと、高校の学習指導要領が変わったことに対応して大学入試のセンター試験の在り方を変えていかなければいけない。まず、高校教育のカリキュラムがあって、入試センターの内容あるいは各個別大学の入試の内容が決まってくる。しかし、他方で、センター試験にどのような科目・内容を出すのか、個別の大学はどういう入試をするのかによって現場の高校のカリキュラムが規定されるという、何て言うんですか、両にらみというか、高校の学習内容と大学の入試の間に双方向的な両にらみの関係ができている。これも先ほどの安彦先生ではありませんけれども、すっきりさせる必要があって、大学が高校生、進学者に対して求める能力というのは果たして、高等学校の教育内容にかなり依存すべきなのか、もっと独立した内容であってもいいのかということの検討が必要だろうというふうに思います。これも先ほどの学習指導要領を含む高校教育の制度上の位置付けの問題にかかわってくることだろうと思います。
 最後に、これも既に、2人の先生方の御意見と同じことですけれども、高等学校教育だけに限らず、グローバル化とか国際的な競争力の観点から言うと、国として日本という社会がどういう人材・人間を育成したいのかということを共通認識した上で、それぞれの学校段階・学校種が役割分担をしていくという形で考えていかないと、それぞれの学校段階・学校種ごと、パーツパーツで個別の議論をしていても、なかなか日本の競争力強化にはつながらないのではないか。ですから、是非、この場は高校教育ですけど、中学と高校の接続の問題とか、小学校と中学の接続の問題等、既に初等中等分科会で議論されているようにお聞きしておりますけれども、そういうもの全体に傘をかけるような形の議論も今後必要になってくるのではないかと思っています。 以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。
 途中退席の3名の方に最初御発言いただきました。もう既に重要ないろんな争点というか論点が出てきていますので、本当はそういうことについて意見交換したいんですが、今日は初めてということですので、お一人ずつ、御意見をお伺いしていきたいと思います。
 では、金子委員のほうから、よろしくお願いします。 

【金子委員】

 金子でございます。私は高等教育専門の研究者でございまして、あまり高校のことを知りませんので、是非、この場で勉強させていただきたいと思います。総会で私は、高校教育についてもっと検討すべきだと言ったのが悪かったらしいんですが、いろいろと勉強させていただければと思います。
 今までの高校教育の経緯を少し見てみますと、高校教育が大衆化するに従って、制度、教育課程の多様化によって対応してきた、それが基本的な筋だったのではないかと思いますが、結果として、高校教育は何を目標とするのか、何がスタンダードであるのかということが非常にあいまいになってしまった。その問題が今、出ているのではないかと思います。
 高校生というのを私の大学の目から見ていますと、3つに分かれるのではないかと思います。高校3年生の勉強時間を調査したのですが、それを見ますと、1つは、競争的大学進学者、これは3分の1くらいです。1日に2時間から3時間以上、勉強している。真ん中の3分の1は非競争的進学者。大学に進学するんですが、あまり勉強していない。あとの3分の1は就職という3つのタイプがあると思うんです。特に、非競争的進学者と就職者の学習時間が非常に低い。さらに、ベネッセの調査に出ていましたけれども、それが10年くらい、さらに下がりつつあるというのが現在の状況です。
 これは非常にゆゆしい事態であると思います。なぜかといえば、高校というのは教育の最後の段階である生徒が3分の1ぐらい、大学に行かない人は半分なわけですから、国民的な教養という観点から問題である。
 もう一つは、家で勉強しないということは、学校で授業に出ているだけですから、自律的な学習の癖ができていない。それでこれからのグローバル化された社会に生きていけるのかという意味で、非常に大きな、非常に深刻な問題を内包していると思います。
 そういった意味で、高校教育の制度的、あるいは教育課程の問題よりも、むしろ、プラクティスといいますか、どういった学び方を生徒がするのかというところに焦点を当てて、そういった発想から議論をもう一回考え直す必要があるのではないかと思います。
 そういう意味で、そういった議論がされることを望むわけでありますけれども、去年、一昨年あたり、高大接続テストという議論がありました。これはいろいろな背景があって出てきたと思うんですが、大学入学資格として接続テストをするのは不可能といいますか、非常に難しいと思います。ただ、高校生として一定の程度、どの程度の学力を有しているのかということについて、何らかの標準化された試験みたいなものは考えてみてもよろしいのではないか。一種の高校段階での達成度テスト。これは何回受けてもいいし、教科の達成度とは独立に、国民として身につけておかなければいけない一定の段階の知識を何らかの形で試す。しかも、それは合否ではなくて一定の段階を示す。こういったものも、一つ検討の対象としてはあるのではないかと思います。そういったことによって学習の目標を一つ設定するということは、今の高校教育にとっては非常に重要な点ではないか。ほかにもいろいろと方法はあるかもしれません。
 いずれにしても、私は、ここに参加させていただいて、高校教育、高校生の学習というのは今、どうやって成り立っていて、それをどういう形で実質化させていくことができるのかという点で議論に関わらせていただければいいと思います。 以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。 では、北城委員、よろしくお願いします。

【北城委員】

 私は、大学分科会にも属していますが、一つは、金子委員がおっしゃったように、高校というのは日本の教育の中でどういう水準を持った学生を育てるのかというのが非常に重要な視点で、最低限の水準を決めた上で多様化はあっていいと思うので、それはこれから議論していきたいと思います。
 もう一つは、高校生として身につけるべき水準を達成しても、3分の1の競争的な進学を求める子供たちにとって、それで十分、大学進学が達成できるかというと、そうではないので、特に、競争的な環境で学生を受け入れているような大学の入学試験の在り方をどうするのかということも一緒に検討する必要があります。いくら高校教育であるべき高校教育の姿を実現しても、それでは希望する大学に入れないとなると、現実には、予備校化とは言いませんけれども、高校は希望する大学に受かるような教育もしなければいけないという二面性を持っています。この仕組み自体を変えようとすれば、いわゆる有力大学の入試の仕方をどうするのかということも一緒に考える必要があります。それを高等学校教育部会でできるのかという問題があります。こちらから大学分科会に要求するとともに、大学側もどういう学生を求めているのかという意見を出してもらって、両方で議論しないと一方だけでは済まないので是非、そういう機会も考えていただきたい。
 特に、一つの具体例で言うと、日本の英語教育は、大学を卒業して国際社会で活躍する人間にとっては不十分です。要するに、国際社会で活躍できるような英語力を身に付けていない。それは大学入試の英語の試験問題に通る能力と、国際社会で活躍できる英語能力に差があるです。競争的な環境に置かれた、有力大学に進む子供たちの英語の勉強というのは、入学試験に通る英語の勉強をしているので、それでは国際社会で活躍できる人材が育たないということを考えても、やはり、有力な大学の入学試験の在り方も一緒に考えないと、高校教育のゆがみ、特に有力な大学に進学しようとする子供たちの教育のゆがみは治らないと思います。是非、高大接続の問題も取り上げていただきたい。

【小川部会長】

 では、相川委員、よろしくお願いします。

【相川委員】

 私は全国の高P連の保護者の立場ということですので、保護者として自分の子供たちが高校に何を求めて、どういうふうに学んでいるかというところで考えますと、進学校と言われる学校に入っている子供たち、そして、就職というところで学んでいる子供たち、いろいろいるわけです。そして、私たちの組織の中には定時制、通信制もありますし、私立の保護者、特別支援学校の保護者もおります。そういういろいろな、幅広い保護者の声を私たちは聞きながら、いろいろな関係機関に要望させていただいているんですが、3年生になって就職の時期とかになりますと、いろいろな会合で関係の企業様からよく言われることは、高校生の離職の問題です。就職についても離職率が高い、コミュニケーション能力が不足している、ということは毎年指摘を受けて、では、これは私たち保護者が家庭教育の中でどういうふうにしていけばいいんだろうかということを議論していますけれども、高校生になって、いきなりこうだよね、こうしていけばいいんだよねということは難しい話で、家庭教育の部分は小さいときからの積み重ねというところがあるんだろうなというところでは、私たち高P連のほうも小中高それぞれ連携して、この問題に取り組まなければならないんだなと感じております。
 そして、私たちの組織として、毎年、アンケート調査を全国の9ブロックに行っております。それは高校2年生を対象にした生活の意識調査という形でアンケート調査をさせていただいておりますが、先ほどから少し出ていました家庭での学習時間というのは、私たちの調査でも、高校2年生全体の1日の帰宅後の平均学習時間は、男子で35分、女子で36分、それくらいしかないと。これはここ5年ほど調査してあまり変わっていない数字でございます。
 そして、高校2年生の授業の理解度ということで、授業についていけるかどうかということを確認していきますと、ついていけないことがよくあるという生徒は男女とも25%に達している。ということは、自分が選んで学校に進んだ。そこが入りたい学校なのか、自分の学力に合った学校なのか。入りたい学校は本当は別にあったんだけれども、入れないからと……。特に地方の場合は、公立高校、私立高校の絡みからいくと、保護者としては経済的なものを考えると公立高校に進んでほしいという意識がまだありますので、点数が足りないから、本当は子供はここに入りたいんだけれども、中学校の進路指導の段階で、こちらの違うほうに一つランクを下げてという指導が入るわけです。そういうところで、入った後の子供の学習意欲は当然そこでダウンするわけです。そういう問題も出てくるのかなという感じを受けております。
 今回、私はこの部会に参加させていただいて、まず、高校の在り方を皆さんに議論していただけるということは本当に感謝しております。私自身、皆様の御意見を全国の保護者にフィードバックしていきながら、私たちの基本となる家庭教育というところ、よく学校、家庭、地域の連携と叫ばれますが、その辺のところを考えていかなければいけないかなと思っております。
 私は、現場の先生方と接していて一番感じるのは、現場の先生方は非常に忙しいなと。この原因は何なのかなというところを感じておりますので、その辺の先生方の職員配置ですとか、そういう問題もあるのかなと感じております。以上でございます。

【小川部会長】

 ありがとうございました。では、荒瀬委員、どうぞ。

【荒瀬委員】

 私は、京都の堀川高校というところの校長をしておりますので、高等教育というと、どうしても自分の学校のことを一番身近に考えるわけですが、堀川高校というのは、マスコミなどに出てくるときには、大学進学、探求活動といったことで取り上げていただくんですけれども、うちは3つの学校があると言われている学校です。地元の普通科に行くための学校であるということ、通学圏が京都市内は2つに分かれていますけれども、通学圏の中で希望して行く学校、京都府内全域から希望して来る学校という3つの学校があります。
 ですから、先ほどからお話が出ています、3分の1、3分の1、3分の1という点でいうと、就職する生徒がほとんどいませんから、その意味では3分の1、3分の1の2つの3分の1がうちの学校にはいるんだと思います。
 私も安彦先生と御一緒に新しい学習指導要領をどうしていくかということの議論の席に加えていただいて、結局は高等学校についてはよくわからなかったんです。共通性と多様性ということをいかにクリアするかということなんですが、そもそも共通性と多様性というのはクリアできる命題なのかということがありました。
 ただ、私は一つ、自分の学校の生徒を見ていて自分なりに答えを考えたのは、多様性というのは中学校までの学習の状況、基礎的、基本的な知識・技能の習得であると。その習得がなければ、活用能力に影響いたしますので、その部分については多様であるかもしれないけれども、学力の重要な要素と言われているものの3つ目の学習意欲という点においては、これは必ずしも偏差値的に高い生徒に意欲があって、低い生徒に意欲がないということはないということは、日常的に生徒を見ていまして確信しています。そういう点から、共通性という点でいえば、学習意欲をどのように育てていくのかということを考えるのは非常に大事なことだと思っています。
 それをするための具体的な取組というのは、いろいろな学校で既になされていますし、うちでも試行錯誤をしながら進めているわけでありますが、そういったことを考えるときに、今回の学習指導要領でいえば、キャリア教育の観点でもって考えていく、あるいは言語力の育成ということが非常に重要な要素として入っていまして、高等学校の次というと、次の学校種であるとか、就職して社会に出るということではなくて、高等学校の次というのは入社試験であったり、入学試験であったりする面というのがどうしてもあると思うんですが、その次を見ない。だから、就職してからとか、あるいは大学に行ってからを見ないといけないでしょうし、あるいは、もうちょっと先で言いますと、大学に行った人はその後、社会に出ていくわけですから、その部分についても高等学校がすべて保証することはできないわけですけれども、そこに行くための基礎的な力、学習意欲を向上させながら、そういう基本の部分は高等学校でつけていかないといけないのではないかと。先ほどからお話が出ていました後期中等教育の務めというのは、そういったものではないかと思っています。
 それを考えていくに当たって、先ほどの資料6にも出ていますけれども、私が思いますのは、一つは、取組というのは、学習指導要領であったり、あるいは様々な先進的な取組から高等学校は教員が勉強するわけです。しかしながら、それをどのように具体化していくかというときに、高等学校の生徒は決して無関係ではないと思っています。公立高校の場合は校長は2年か3年で異動いたします。あるいは高等学校の校長、特に公立高校の校長は責任は大変大きいですが、どういう権限を持っているのかということを考えますと、学校を経営していくという観点から高等学校教育についてのアプローチも考えていかないと、内容的なものというのはとても大事ですし、それは大いに議論すべきだし、具体化すべきだと思うんですけれども、もう一方で、組織の在り方、もっと言えば、教員の養成といったことも含めた取組の部分に対するアプローチも必要ではないかと思っています。 以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。長南委員、よろしくお願いします。

【長南委員】

 私は、幾つかの中教審の部会に入って議論をしておりますけれども、今回の高等学校部会については第6期からですので、まだ出席の回数は少ないです。
 私は、2つのことをお話ししたいと思います。
 まず1つは、皆さん、今まで何名か意見を言われましたけれども、学習指導要領と少人数学級編制の検討をお話ししたい。
 山形県は平成14年から33人以下の学級編制で進めてきまして、今年、中学3年に導入しました。小学校1年生から中学校3年生まで、すべてが33人以下の学級であるという状況です。こういう生徒たちが高校に進学していくと突然40人の編制になるというところで、学習意欲の問題、学力の問題、いろいろな取組の仕方があると思いますが、教職員定数の問題もあるのでないか。今年から国レベルでも小学校1年生が35人以下の学級が実施されました。これがどんどん進んでいくと将来、中学まで行って高校に行くような場合に、このことがきっと問題として出てくるのではないかと思います。
 すべての高校を40人以下の学級にできるかどうかという意味では、その学校によって定員の決め方を自由にできるようなシステムはできないのかということを考えています。一般的な高校と指導困難校によっては、定員の違いがあってもいいのではないかと考えております。
 2つ目は、定時制・通信制教育の課題です。最近、定通教育については、本来は働きながら学ぶ生徒の学習の場としてきたわけですけれども、最近は不登校の生徒が学ぶために入学するという場合が結構あるわけです。そういう場合も含めて、平成9年から山形県では昼間の定時制高校をつくりました。霞城学園高校と言いますけれども、駅の中にあります。駅のそばに24階のビルがありまして、その5階と6階を高校にしているわけです。そういう高校もつくっております。
 ですから、定通教育についてもこの部会で検討していければと思っています。人的な配置、いろいろな問題があるわけです。そういう点についてもよろしくお願いしたいと思っています。

【小川部会長】

 では、アキレス委員。

【アキレス委員】

 私自身はこのような学校教育に関する委員会は初めてですので、素朴な疑問も含めて、発言させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 まず、資料7の検討課題、2の「グローバル人材をどのように育成すべきか」。これについては、私も問題意識を強く持っております。個人的な話を少ししますと、私自身も日本の学校教育を高校まで受けて、その後、日本の大学、アメリカの大学、両方を経験しています。娘が二人おりまして、二人とも日本の保育園に行って、小学校から高校まではアメリカンスクール、大学はアメリカということで、私自身も、娘二人も、日本と海外両方の教育を受けました。その経験から、「グローバルな人材の育成」のために英語教育だけを充実させるだけでは不十分で、異なる文化、考え方などの理解が重要だと感じています。
 高校というのは既に義務教育を終えて、ある程度自由な中身をつくれるところだと思います。高校の普通科に進んでいる方たちが、大学進学を目指し、そのための準備をするという部分にかなり力点を置いているとしたら、その進学先は日本の大学である必要はないわけです。
 一つの例ですが、高校の中に「グローバル進学コース」といったコースがあって、その中で日本のカリキュラムに縛られない学習を行い、その後、海外の大学に留学するような進路があってもいいと思います。そのように、広い意味で、グローバルな人材の育成を考えたほうがいいのではないか、と思います。
 2点目は、「キャリア教育」についてです。私はいろいろな会社の人事部門で、採用や教育を担当してきました。その立場から考えるのは、キャリア教育と言うけれども、本当に働く楽しさを生徒の皆さんが実感できるような教育をされているかどうか、ということです。
 例えば、弊社(株式会社 資生堂)では「女子中高生の理系進路選択支援活動」という活動を今年度から始めており、中学や高校にお邪魔して、いわゆる「Rikejo」(理系の女子)の進学を奨励すべく、弊社の女性研究員が実際の仕事内容と研究員自身のキャリアについて語っています。そうすると、生徒の皆さんは本当に引きつけられて、ある高校では「理系に進むことを考えたい」という生徒のパーセントが2桁増になりました。このような実践的な内容がもっと取り入れられてもよいと思います。
 3番目は、コミュニケーション能力。将来、日本企業、外資系企業を問わず、企業に就職を希望する人に求められる非常に基本的なスキルです。言葉には威力があり、これは英語、日本語を問いません。たとえば、この資料を見たとき、最初に私の目を引いたのは、高校の「普通科」という名称です。普通ということがよいというニュアンスがあるのかもしれませんが、文化が違うと普通であることが特によいとは限らないこともあります。もう少し、意欲的なネーミングにしたらどうかと思いました。
 コミュニケーション能力については、当然、言葉やネーミングだけではなくて、いかに人の話を聞いて、自分の考えを明確に、ロジカルに伝えることができるかということが重要で、もっと教育の中に取り入れるべきではないかと思います。
 最後のポイントは、「高校教育での生徒の学習の質をどう保証するか」についてです。教育の使命が、個人の学びと成長をいかに支援していくかということにあるとしたら、成長する機会は学校の授業だけに限らず、課外活動や家庭での働きかけもあります。それにも増して大事なのが、一人一人の生徒が個人の時間をどのように膨らませて持っているか、それをいかに有効に、自発的に学べる時間にしていくかというところです。この点についても学習カリキュラムにとどまらず、総合的かつ具体的に議論したほうがいいと思います。以上です

【小川部会長】

 ありがとうございました。では、伊藤委員、お願いします。

【伊藤委員】

 私は中学校からということで、港区立赤坂中学校校長の伊藤でございます。よろしくお願いいたします。
 日ごろ感じている高校教育のことで4点、お話をさせていただきます。
 中学校とか高校とかいう前に、教育というのは一人の人間を育てる大切な場と考えておりまして、知・徳・体のバランスのよい発達と成長をどのところでも、その発達段階に応じて教育をすることが必要だと考えております。
 今、中一ギャップという課題があり、小学校と中学校の連携とか、一貫ということで小と中の連携を進めてきております。入試という壁がありますけれども、もっともっと中学校と高校との連携を深めていきたいということを校長としては考えております。
 2点目が学習意欲とも関係するのですけれども、なぜ学習するのかということ、自分がどう生きるのかということ、将来の夢や目標は何なのかということをきちんと持たせることが大切だと考えています。中学校段階でも様々なことをしながら、何のために今、勉強するのかということがよくわかっている生徒は非常によく学習にも取り組んでいる気がします。やらされているという感覚での学習では、どこかで限界になってしまうのかなと思っています。高校でも同じだと思います。自分の将来をどうするのかというところをきちんと考えさせて、そのために今、どんな勉強が必要なのかということで学習ということにはきちんと向かわせることが、中学校でも高校でも同じように大切だと思っています。
 3点目は、入試ということがありまして、不本意ながら目指していたところでないところに入学せざるを得ない生徒もいるのですけれども、そういった生徒も、学校に来たときに話を聞いてみると、そこでまた新たな目標を持って、リスタートしているような生徒も非常に多いです。入試といったこともありますけれども、是非、高校で再スタートができるように、新たな目標を持って力強く生きられるように高校でしていただければ大変ありがたいと思っています。
 最後に4点目ですけれども、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、すべて、教育は人なりだと思います。ここで議論していただいて、すばらしい制度やカリキュラムなどができると思いますけれども、それを実現できるような、高校教育の目的をよく理解し、具現化できるような高校の教育者、人材をきちんと育てることが、これはどの校種でも同じなのですけれども、大切だと考えています。 以上です。

【小川部会長】

 上野委員、よろしくお願いします。

【上野委員】

 千葉大学の上野でございます。
 私、大学におりますので、そういう観点から意見を今後の会議で申し上げるようになると思いますけれども、どういうことを経験してきたかということだけ御紹介しておきたいと思います。 私、大学におりますので、特に教育分野を専門にしているわけではなくて、21世紀COEですとか、その次のグローバルCOEのリーダーを務めております。それが私の本務です。そういうことに関連して、多分、御存じだと思いますけれども、高校3年生を経ずに大学へ入る飛び入学を開拓しております。
 もう随分以前になりますけれども、これは最初、大学をよくするためにという議論の中から出たものですけれども、結果として、それだけではそういうアイデアは出てこなくて、国家の中で大学として何をなすべきかという議論に転換したときに、入学制度から変えていくというアイデアが出てきた結果であります。そういうことを踏まえて、いろいろなことをやってまいりました。
 その中の一つは、高等学校の生徒諸君が自分の自由裁量で研究をやる機会をもっと増やそうという取組をやりました。これは今、ジャパン・サイエンス&エンジニアリング・チャレンジというもので朝日新聞でやっていただいておりますけれども、理科研究発表会みたいなもの、コンクールです。読売新聞社さんの日本学生科学賞というのがありまして、選考基準を変えております。そういう中から、いろいろなことがありまして、アメリカで行われる国際大会へ高校生諸君をできるだけたくさん送りましょうと、外国を経験するというためだけでもレポーターと称して送っております。できるだけたくさん送るということをやってきております。
 もう一つ大事なことは、その過程で得られたことは高校の先生方を連れていかないとだめだと。それにも朝日新聞社の御協力を得て、行っていただいております。かつ、千葉大学からもいろいろな事情があって、千葉県内の先生方をできるだけそれにジョイントしていただいて、連れていくというのをやっております。なぜ、そうする必要があったかというのは、多分、これからここで議論されることといろいろな関連があることがあったからであります。そういう観点から御参考になればと思う意見を今後、申し上げていきたいと思っております。 以上です。

【小川部会長】

 ありがとうございました。 では、及川委員、よろしくお願いします。

【及川委員】

 私、全国の普通科高等学校長会の高校基本問題検討委員を務めておりまして、特に、普通科高校における高校改革の問題は今、検討している課題です。その中で、今日の資料7の検討課題にある高校教育での生徒の学力をどのように保証するか。特に普通科高校でというところで読み換えて、関心を持っております。生徒の学力をどのように保証するかという点は、資料4に出ている言葉でいいますと、「教育の質の保証」といった「質の保証」という言葉が出ているかと思うのですが、この点に関して私が考えていることを2点だけお話ししたいと思います。
 質の保証ということであれば、私は高校教育は履修主義ではなくて修得主義に立つべきだと思っています。適格者主義というのが前提ではなくなっている現状の中で、高校教育の質をどこで保証するか。それは修得主義ではないかと思います。生徒の多様化があって、それに対応して履修主義ということがあるわけですけれども、適格者主義のところがそういう現実ではなくなっている状況を考えて、そういう方向性が考えられるのではないか。
 とはいえ、入り口の段階で総則に義務教育の学び直しということが明記されるような状態の中で、学習指導要領は既に大綱化が進んでいると思います。必要最低限のところをしているわけなので。そういう意味では、必履修科目数が少なくなっているという点でも大綱化は進んでいるかと思います。
 もっと現実的なことでいうと、学習指導要領のミニマムの部分をさらに水準といいますか、内容といいますか、それをもっと緩やかにする必要性があるのではないか。義務教育の学び直しということを前提にすれば、ミニマムをもっと緩やかなものにするということは一つ、それを前提とした上で、修得主義というところで、それこそ、それぞれの生徒の実態にあわせた形での質の保証になるのではないかと考えます。それが1点目です。
 もう1点は、いわゆる質の保証の仕組みというか、その部分です。先ほど、金子先生からも出ていた高校教育の達成度テストのようなものがあってもいいのではないか。これが高校における学習の目標になっていくという点は確かにあると思います。そういう生徒の学習の目標になるような一定の達成度テストのようなものは仕組みとして必要になるだろうと思います。
 ただ、私は普通科のほうですので詳しくはわかりませんけれども、例えば、全国の商業高校で全商1級とか、工業高校ですとジュニアマイスター顕彰制度、それぞれの商業高校、工業高校で商業教育、工業教育の質の保証という観点で達成度テストのような性格だと思うんですけれども、そういうものができていると。生徒自身にとって目標になる部分があると思うんです。ところが、全商1級、ジュニアマイスター顕彰制度といった一定の質保証の仕組みが社会的にどれだけ認知されているのか、どれだけ評価されているのかということは非常に大きいのではないかと思います。
 ある商業高校の校長先生から聞いたところによると、全商1級を取ったということが、昨今では質の保証としてどれだけ保証されたものとなっているかという点は、かつてに比べるとちょっと弱くなっているという話を聞いたものですから、達成度テストのようなものをつくったとしても、それがどれだけ社会的に認知され、そういうものになり得るかどうかというのが鍵ではないかと思っています。 以上です。

【小川部会長】

 小杉委員、よろしくお願いします。

【小杉委員】

 労働政策研究・研修機構の小杉と申します。私は労働市場に出て働いている若者と、働きたくても働けない若者たちの働き方、キャリア、意識の実態調査をしています。
 実態調査から言えること。まず第1に、高校中退とか学校を卒業しても就職も進学もしない層のその後が大変厳しいということです。安定的な仕事になかなかつけない結果として、自立して食べていけるだけの収入がなかなか得られないという状態が長く続くということが起こっています。1つには労働市場の側の要因もあるんですが、もう一つは、高校から社会に出ていく、進学しないで何らかの形で学校を離れていく子供たちに対する職業準備教育がかなり不十分だということがあると思います。普通科の生徒で進学も就職もしない層がかなり厳しいことがあるというのが1つ。
 それから、職業科、専門高校だからといって、決して全てが上手くいっているわけではない。労働力需要として、現場の製造工程の人への需要はまだまだありますので、工業高校の場合には今のところ、需給はある程度いい状態にありますけれども、女子のほうの無業率をとってみると、実は普通科よりも職業高校卒業者のほうが無業化しやすいんです。つまり、労働力需要に合っていない産業教育がまだまだあるんじゃないか。そこのところをどうしていくかというのは、職業準備教育、特に専門高校の場合には地域の労働力需要とどういうふうにマッチした教育にしていくのか、その仕組みは考えていかなければいけないんじゃないかと思います。
 もう一つ、今、学力とか学習習慣という話が出ておりますが、働く側の若者たちの現状から見てもそれがすごく大事です。
 1つは、フリーターから正社員になるときに学習習慣のある人が正社員になりやすいというファインディグスがあることが1つ。
 もう一つ、これは生産現場の労働者の調査、30代、40代の方の調査をやっているんですが、その方たちの中で実際に職業能力開発をちゃんとやっているタイプの人はどういう人かというと、学校時代、自分は成績がよかったと思う人がよくやっているんです。それは学習習慣なのか学力なのかどちらかわかりませんけれども、30代、40代まで高校時代に学んでいたか、学んで自分はやったと思ったかというのは効いているという事実です。
 こうしたことから、高校教育を労働市場との接点側からも、是非、見詰めていきたいなと思っています。よろしくお願いします。

【小川部会長】

 ありがとうございました。小林委員、よろしくお願いします。

【小林委員】

 工業高校の校長をやっております小林といいます。
 皆さんのお手元にこのようなパンフレットを差し上げました。これで御説明させていただきます。
 今、及川委員、あるいは小杉委員がいろいろお話しされておりますけれども、中に「きらめく工業高校」というのがありまして、その中にジュニアマイスターなど、資格検定のこととか大会のこととかございます。最後のところに、我々は「ものづくりの甲子園」と呼んでいますけれども、コンテストが今月20日に東京で行われます。是非、工業高校生のすばらしい取組を大勢の先生方に見ていただければ大変ありがたいと思っています。
 私がこの委員に選ばれたのは、多分、検討課題(例)の2番の専門学科等における職業教育をどのように充実すべきかという点にあるかと思います。今後、いろいろなところで発言させていただきたいと思います。時間がないので、今日はこの辺で。どうぞよろしくお願いします。

【小川部会長】

 御協力、ありがとうございました。では、直原委員、よろしくお願いします。

【直原委員】

 私は東京都教育委員会で都立高校を担当している者です。
 都立高校についてはこの十数年来、高校改革を進めてまいりました。それは十数年前、進学の面でもそうですし、生活指導の面でも都立高校の評判が非常に悪かったということを受けて、何とか信頼を回復しようということで、これは国全体の流れを受けてのことでもあったと思いますけれども、学校の特色化を図ろう、あるいは新しいタイプの学校をつくろうということで、生徒から見て自分に合った学校が少しでも選べるようにと、そういう意味では、不適合を減らしていこうという趣旨でこの十数年間、取り組んでまいりました。一定の成果はあったと思いますけれども、ちょっと別の角度から今の都立高校の現状を見てみると、この十数年間、日本社会はものすごく変わってしまいまして、国際的にも厳しい状況になっている。今、多くの人が日本社会の次の世代の人材育成はちゃんとできているのかという危機感を持っています。人材育成というのは様々なセクションがやっていかなければいけないのですが、当然、高校もその中の一つの役割を負っていると思っています。そういう観点から見ると、都立高校にはまだまだ非常に大きな課題があると思っていまして、今、これからの都立高校の改革計画の策定作業に入っているところです。
 今日、資料の中で幾つかの論点が出されておりますけれども、都立高校においても、その中でキャリア教育のことが書いてありますが、高校は公立高校の場合、非常に勉強のできる生徒もいれば、中学の勉強も実はできていなかったんだという生徒を全部抱えながらやっておりますけれども、いずれにしても高校というのは中等教育の最後の段階なわけですので、何とか高校を卒業する時点で、その後、進学する生徒もいれば、就職する生徒もいるわけですけれども、自分なりに、将来、自分はどういう人間として社会の一員になっていくのかについて一定の認識は持って卒業できるように何とかしていきたい。ここでいうキャリア教育の目標だと思いますが、これを大きな一つの課題として捉えているところです。この会議で様々なディスカッションができればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

【小川部会長】

 ありがとうございました。長塚委員、よろしくお願いします。

【長塚委員】

 私は私立高校の校長として私立団体から出させてもらっております。御案内のように大学では75%が私大ですが、高校では30%の生徒が私立高校にいるという、意外とウエートが大きいということが案外知られていない様に感じています。私立高校の50%は大学附属や系列であることも関係してか、大学進学率だけ見ますと、公立高校の生徒は50%が大学進学、私立高校は65%が大学進学しているという現状があります。つまり、学校種という単純な区分で見ないで私立という括りで見ますと、小学校から大学まであるような学園もあったりして、一つの別種の流れがあると言っていいのだろうと思います。
 私はそのようなことを踏まえて、多様化という高等学校教育の流れに関しては3点ほど、課題としたいと思っております。
 1点目は、多様化と公平感の問題です。今申し上げたような私立の存在ですが、実は、小学校から大学まで行くに当たって大きな学費がかかるということで、学費負担の格差というのが大きな問題となっています。世界的には今や経済力競争の時代から教育力競争の時代になろうとしているのに、教育投資というのを社会がどれだけ担うべきか、まさに高校教育においては公も私も問わず、もっと教育費投資があっていいのではないかというのが1点目。多様化を進めたときに、公平感が失われているようなことがあってはいけないという思いから課題としております。
 2点目は、多様化と質保証という観点です。1つ例を挙げますと、定時制と通信制課程の問題がいろいろな方からも出されておりましたが、定時制や通信制は今、生徒は全体の1割弱ですけれども、学校に夜行ったり、たまに行くというのではなくて、実態は昼間に毎日のように学校に行っているというのが昼間型定時制だったり、通学型通信制であったりするわけで、ほとんど全日制化しています。
 また、広域通信制というのは特に私学に多いんです。これは公立では県の境を超えられないので、文科省から各都道府県に委ねられて私学の広域通信制がたくさんできた。その結果として実際には民間のサポート校などがそれを支援している形で、全日制と同様のことをしているという実態がある。ここに質保証があるのかどうかというのが、実は懸念なんです。多様化はいいのですが、質が保証されていることの確認をしっかりしないといけない。これがセットになっていないといけないという多様化と質保証の問題ということで2点目。
 3点目は、多様化と教育の役割です。私学はもとより公立でできないような、画一的な教育でない、より多様な教育をしたいという思いで、寄附行為ででき上がっているわけです。その多様性のある意味では原点のようなものがあります。社会のニーズにより応えようという教育の役割があります。ですから、産業界の求める英語教育なども私学はいち早く取り組んできています。
 しかし、さらに、社会のニーズに応えるだけではなくて、自由化、多様化、個別化していったときに起きているいろいろな弊害に対処する、社会を変えて行くような教育の役割もあります。もっときちんとしなきゃいけないといういろいろな問題点が提議されていますけれども、多様化を進めていったときに起きている問題をしっかりとフォローしていく論議をさせていただきたいと思っております。以上でございます。

【小川部会長】

 野上委員、お願いします。

【野上委員】

 私は経団連の地方組織をバックにしている立場の者ですが、今回いただいたテーマを見ますと、この十数年間、これらのテーマについては十分討議されてきたのではなかろうかなという素朴な疑問があるのですが、地方・地域の経済人として考えることは、現在の若者を見たとき、潜在的な知識とか能力は我々世代と比べれば数段上位にあると思います。問題はその潜在的な知識と能力が生かされていないということであります。本日はいろいろ申し上げたいことがございますが、資料7にございますグローバル人材の件について触れてみたいと思います。
 戦後の二十数年間を考えてみますと、我々世代の知識水準は現在の若者に比べればはるかに低かったと思いますけれども、当時の若者、つまり、我々世代は、昨日よりは今日、今日よりは明日、よりよい人生を送ろうということで機会、チャンスさえあれば、他人に言われずともみずからの意思で、国内はもとより海外へと雄飛したものであります。とにかく、当時の若者がエネルギッシュだったからこそ、今日の日本があると思っております。
 ところが、教育環境や社会環境が好転した現在、我々世代に比べて格段にまさる能力を持ちながらも、若者が積極的に外の世界に雄飛しない状況にあるのは一体どうしてなのだろうかという大きな疑問を持ちますとともに嘆いているわけです。このような状況が続けば、せっかく世界のトップレベルの国になったにもかかわらず、早晩、お隣の国中国や、新興国にも追い抜かれて、持続的発展は到底おぼつかないだろうと思っております。
 私は、経済界におりますが、できることから取り組もうということで、埼玉県内のことではありますけれども、あらゆる機会にグローバル人材の育成問題に取り組んでまいりました。幸いにして埼玉県では知事の肝入りで本年4月、県が10億円の基金を拠出して、グローバル人材の育成基金を創設し、脱内向き人材、つまり、グローバル人材の育成に乗り出して、内向き志向の若者を積極人間に改造する取組を我々経済界をも巻き込みながら推し進めているところであります。
 この取組には高校生、あるいは社会人になった若い人たちの海外への留学、そして海外企業研修などが組み込まれています。私はこれらの取組を通して、戦後教育のおかげで豊かな知識と能力を持つ内向き傾向にある若者に、いま一度、我々世代がかつて持ち合わせた開拓魂とか貪欲さを持っていただき、その知識・能力を顕在化してもらいたいと願っています。そのため産業界の人間として、このテーマにどう向き合って、かかわっていけるのかを今回の会議を通じて学びますとともに、皆さんに実情をお知らせして、日本を再び、活力に富み、魅力あふれる国にしたいとの思いでこの会議に参加させていただいております。よろしくお願いいたします。

【小川部会長】

 眞砂委員、よろしくお願いします。

【眞砂委員】

 私は大阪の私立中・高の校長をしております。この学校の特徴は1つの校舎の中に大阪インターナショナルスクールという別の学校があり、別の校長がいますけれども、2つの学校が1つの校舎の中で、授業もなるべく共同で、学校行事、課外活動なども一緒にやるという特徴がある学校です。
 ということで、英語教育とかいろいろ言いたいんですけれども、まず、根本は授業そのものだと思っています。一つ、資料7にあるような課題を解決するには、少人数教育がうまく働けば、かなりの問題が解決するかなと思います。
 日本が教育にお金をかけないという資料がありまして、それはとても驚くのですけれども、少しお金をかけて、少人数教育をうまくやらないとだめだと思います。少人数教育をやっても、結局、教員が一方的に生徒に話をしているだけでは、今までの大学入試でいい成果を上げるにはよかった。逆に、効率はよかったと思いますけれども、そうではなくて、生徒の言葉、教員の言葉、考えが行ったり来たり、キャッチボールするようなコミュニケーションができる授業をすることがすごく大事だと思います。
 そのためには日本の教員はなかなか慣れていないので、実は、インターナショナルスクールの教員などのノウハウを使うと非常にいいものが得られたりもします。鎖国が終わって明治のころに海外からクラーク博士とかいろいろな方が来ましたよね。ああいうときにちょっと立ち戻って、そういう教育をもう一回、日本に取り入れたらどうか。外国人が単に発音だけで英語の授業に加わっているのではなくて、インターナショナルスクールできちんと授業ができるような教員の授業を日本の生徒に受けさせてみるようなことをやると、本当のいい授業というのを日本の教員たちも学べるかなと思います。コミュニケーション能力がそこで養われると思います。
 20年前の中教審が出している答申でも、実際にはこれが達成されればいいと思うんですけれども、結局、達成されてこなかった。これをもっと具体的に達成できるようなものをこの会議でつくれたらいいなという夢があります。よろしくお願いします。

【小川部会長】

 最後、お待たせしました。和田委員、よろしくお願いします。

【和田委員】

 私の学校は、神戸の難中学校・高等学校なんですけれども、現在、併設型の6年一貫教育を行っている学校ということで参加させていただいているんだと思っております。
 ただ、進学のほうで名前が出過ぎているんですけれども、もともと旧制中学校として創設されたときに嘉納治五郎を顧問に迎えました。文部省のお役人ですが、柔道の講道館の創設者でもあります。その嘉納先生の「精力善用」「自他共栄」という教え、これを涵養するための学校だというふうに今も我々は位置付けやっております。
 自分自身の力を最大限に利用し、自分一人ではなくて、周りの人とともに幸せになっていこうという教えでありますけれども、それを実現するために何が必要かというと、自分の特徴、長所、短所を見つけるために自由ということは大事、自由時間が大事だということと、自主性や自分を律するという自律も大事だと、そういう形でやっております。
 もう一つの特徴として、生徒同士、教員と生徒という人的なつながりを持つために、本校は6年一貫ということがメリットであるんですけれども、6年、完全に教員団がチームとして生徒を持って上がる。もちろん、勉強面だけでなくて生活指導面で非常に効率よくいけるように、中学1年生から高校3年生までをずっと見て上がるという形で、人のつながりということを大事にやっております。それがわりあい上手くいっているのではないかと思っております。
 もう一つ、カリキュラム的な面で見ますと、併設型の学校というのは中等教育学校と同じように、いろいろな特例を認められております。本校はまだ特例は利用していないんですけれども、例えば、高等学校でやるべき内容を中学校の中に内容としておろしてよろしい。そして、高校ではそれを再び履修しなくてもよろしいという特例があるわけです。その特例が設けられているということを考えれば、今の高校の内容は非常に大変である、3年間で教え切れる内容なのかというところは一番感じているところであります。
 旧制は5年でやっていて、今は中学校と高等学校と3年、3年になっているんですけれども、文科省の担当局でもあわせて中等教育と呼ばれているのに、教育内容として3年、3年と分かれていて、そこの連関性というのは非常に少ない。あるいは、内容によっては本当に中学校の内容が希薄であるために、今のカリキュラム、高校にすごいしわ寄せが来ているのではないか。その辺のところをもう一度検討していただく必要があるのではないかと思います。
 高校へ入ってきたときに、高校の内容がわからないということがあるというのは現実だと思うんです。本校のような6年一貫校では中学校からいるから、その部分でかなり高校のことも噛みしめながらやっていけるので、高校の内容になってもついていけていると私は思っているので、公立中学校から公立高校に上がった場合、高校へ入ってすぐの段階で内容がちんぷんかんぷんだという形。そして、その中で大学を目指したり、単位を習得したりしなければならない。数学だったら数学Ⅱぐらいまではやるわけですけれども、その内容はずっとわからないままで3年間いる生徒もいるんじゃないかという気がしておりまして、それが意欲も低下させますし、学校へも通いにくくなるという現象を起こしているのではないかという気がしております。教育課程は別の部会でやっておられるかもしれませんけれども、それを抜きにしてはここでは議論できないのではないかと思っております。
 ちょっと長くなりますが、最後に、大学の入試に関してですが、例えば、京都大学の総長の松本先生とお話ししますと、大学なども新たな仕組みを考えて、もっと人物を見るとか、そういう形の入試をどんどん取り入れたいと。ただし、そのためには定員ぎちぎちで採るというシステムでは無理だと。やはり3割とか4割程度余分に採って、中でふるい落としていけるようなシステムにしたいなとおっしゃっていたので、その辺も、高大接続の問題として考えていただければなと思っているところです。

【小川部会長】

 ありがとうございました。今日は初回ということで出席された全員の方から、これから検討していきたいという課題について多くのコメントをいただきました。かなり多様な検討事項を挙げていただきましたけれども、教育の質保証の課題を中心に幾つかの大きな柱に整理できるのかなという印象を持ちながら聞いていました。次回以降、今日いただいた皆さんからの御意見、検討事項については幾つかの柱に再整理して、さらに審議を深めていけるような内容として次回の会議に御提案させて頂きたいと思っています。よろしくお願いいたします。
 そうした絞り込みをしつつ、課題を整理して、さらに、その課題でどういうふうなより具体的な検討をしていくのかということを、数回そうしたことを繰り返しながら、課題を深めた形で整理していければと思っています。これはまた今後、事務局とも相談しながら、次回以降の審議の在り方についてはご相談しつつ、進めていければと思っていますので、御協力をお願いいたします。
 それでは、若干、時間が過ぎましたけれども、今日はこのあたりで終わりたいと思います。
 次回の予定について、事務局のほうからお願します。

【小谷教育制度改革室長】

 次回の日程でございます。資料8をお配りしておりますが、次回は11月29日火曜日、15時から17時、この文部科学省3階の3F1特別会議室でございます。また、開催通知により御案内させていただきますので、よろしくお願いいたします。

【小川部会長】

 それでは、今日はこれで閉会いたします。ありがとうございました。

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