資料2 これまでの高等学校教育部会等における委員からの主な御意見

1 全ての生徒に共通に最低限修得させるべき内容(=「コア」)について

1)学力等に関する意見

  • 小・中・高等学校の基本的な学校体系の上で考えなければならない。中学校における「普通教育」とは、国民共通の基礎を身に付けるものであり、高等学校における「普通教育」とは、専門教育への基礎を身に付けるものであって、各分野や子どもの志望によってこれらは異なり多様であると考えるべき。
  • 日本の高等学校に求められる資質・能力は学力だけでなく、学校教育法第51条が達成できているのかを考える必要があり、これを担保していく必要がある。
  • 学力の重要な三要素のうち、基礎・基本の知識・技能や思考力・表現力・判断力の程度については、学校や生徒によって異なっているものだと考えるが、一方、学習意欲については、生徒ごとの違いはないのではないか。加えて、学習意欲の向上がこれらの教育において必要なことであり、これを前提に考えていく必要がある。
  • 各教科の内容を理解したかどうかという教科の学力ではなく、文章を書く、読み取るなどの基礎的な能力が不足している。コンピテンシーをどう形成すべきかが重要。
  • 類型ごとにルートはいろいろだが、共通するものは学力の三要素。その中でも学習意欲については、どの教科に意欲があるかといった差異はあったとしても、どのような高校生でも同様に育む必要があるもの。これをどのように培うかが重要。
  • 学校での教育は教科を中心に作られており、その中で子供の能力を引き出すことや考える力を引き出していくことが重要であり、それがコアの在り方だと考える。これは、総合学習やキャリア教育に入れるのではなく、各教科でどう引き出すのかが問題。
  • 昔は知識吸収が重要で、社会に貢献できたが、今は知識の活用が求められており、教育の仕組みが時代に対応していない。基礎力は必要だが、考える力、挑戦する力も必要。
  • これまで知識偏重であったのを、思考力を鍛えるようにする必要がある。週30時間で3年間だと、まず知識の習得に集中せざるを得ないが、得た知識をいかに応用して思考力を鍛えるか。範囲を厳選し、活用することに方向を変えていく必要がある。
  • 学習だけではなく考えることが必要という点は、今の高校に欠けていること。日本の古典、漢文の中にもそのような考え方はあるが、身に付いておらず、今教えている教育を、如何に考えさせるように変えていくかが重要。このような考え方はコアに取り入れるべき。
  • 批判的思考として、一つは問題意識を持ち、深く考えること。2点目は、多面的な考え方・思考の広がり。3点目として先を見る力、何が起こるかを考えることで、それをわかりやすく人に説明できるコミュニケーション力。これらはこれからのグローバル社会で必要な能力である。
  • コミュニケーション能力が重要という意見が多いが、前提として伝えたいメッセージがないといけない。幅広い経験だけでなく、論理的思考力を鍛える必要がある。
  • コアと必履修科目はイコールであってはいけないが、必履修科目のうちの5科目はコアとなるのではないか。
  • コアは身につけるべき能力や態度だけでなく、指導内容も入るのではないか。
  • ジェネリックスキルやコンピテンシーというものもコアなのではないか。
  • 戦後、何故日本がここまで発達したのかを考えると、それは日本人が固有に持つ誠実さや信頼性のおかげであると気付く。コアにこのような論点も入れて欲しい。

2)社会的・職業的自立等に関する意見

  • 高等学校は最後の学びの場であり、社会で自立していくためにどのような学びをすべきかを議論することが必要。
  • これまで下からの積み上げで作ってきたが、これからは逆に将来から見下ろして、何を身に付けさせるかということを考えていく必要がある。
  • コミュニケーション能力、規範意識、社会参画の態度などは、社会人・職業人として自立するために必要な能力であり、高等学校段階で身に付けておかなければならない。
  • 成熟した社会においては、自ら考え課題を解決する能力、コミュニケーション能力、知識・技能の基盤が必要。
  • 高校では、卒業後の次のステージで何を叶えるかという視点で高校時点において必要な能力を身に付けさせることが重要であり、就職した者であっても学び続けることができる能力や自らの学びをマネジメントできる能力が重要。
  • 「社会経済活動の基盤を担う人材に必要な資質・能力の育成」と「自立して社会生活・職業生活を営むための基礎的な能力の育成」については、高校である以上すべてに求められているのではないか。
  • 社会に出た働くことの現実や社会で働くための心構えを教えることが重要。
  • 企業にどのような学生が欲しいか訊ねると、技能がある方が当然有難いが、それよりも入社した後も学び続ける人材が欲しいという。
  • 高等学校では社会性を高める教育が不足しているため、諸外国と比べて幼い印象。中学校ではこの10年間で指導の見直しを行ったが、高等学校では大学受験に影響され、社会性を身に付ける授業が不足しており、このことについても考えていく必要がある。
  • 18歳は責任を持った大人というニュアンスをもっと強く出すべき。「市民性を育む」ためにはどうするべきか。自分の権利・義務も含めて社会人として自立するための社会性、市民性教育について強調してほしい。
  • 公教育としての高校教育において、青年期の子どもたちを自立と個性という視点で育成することが必要。
  • 自己肯定感が低いのは、小中と学力だけで評価されてきたことが原因であり、体験学習や成功体験を導入することで肯定感は高まるのではないか。成功体験をコアの内容として取り入れられないか。

2 高等学校教育の質保証等に関する意見

1)高等学校教育の質保証の仕組みに関する意見

  • 大学入試は知識を問うものが多く、入試の在り方を考えないといけない。アメリカの有力大学は、推薦や高校の成績等による多様な評価で行われ、入学試験はないと聞いている。学習指導要領を変えるのも重要だが、選抜を変えることが重要。
  • コアは、質の保証といった時に、全ての生徒に共通に最低限修得させるコアについての議論なのか、コア以外の各学校毎に取り組む内容の質保証なのかわかりづらい。
  • 高等学校は単位制であるので、修得主義を厳しく求めて良いはずである。質の保証を議論する上では、中学校卒業者のうち98%が進学してきている状況なので、入り口ではなく出口で質の担保すべき。そのような考え方を前提とすれば、留年する生徒が出るのは当然で、2~3年遅れて卒業しても良いし、逆に飛び級ができる生徒も出てくるはずである。
  • 各学校毎に質保証を行うことには違和感がある。質保証は各学校とも共通なのではないか。
  • 大学への進学率が約5割、商業高校などの専門高校からの進学率も高まっている状況において、どのように多様化路線を変更していくか。そのための方法としては、大学進学者に対しては、接続テストが構想されていたが、これは大学入試に問題を矮小化しすぎている。むしろ、高校段階で勉強する環境を作ることが課題。例えば、アメリカでは小学校から大学までで個人個人がどのような内容を学んでいるかをデータベース化してトータルで考えようという動きがある。一定の学力を保証するためのプラットフォームを作ることも非常に重要。
  • 質保証の仕組みについては、既に、全国工業高等学校協会が行っているジュニアマイスター顕彰制度や全国商業高等学校協会がやっている全商一級・二級等の各種検定など、学習の成果を測る仕組みがある。しかしながら、社会の認知度が非常に低いため、これらを文部科学省がオーソライズしてはどうか。
  • 学習時間の減少は生徒が学習の必要性を感じられていないためだが、自分が何を身に付けたかを確認できなければ学習の必要性は感じられない。
  • 高大接続テストについては、AO入試・推薦入試の外形基準としては有効。ただし、思考力・表現力・判断力も含めて判定できるものにしなければ質保証の仕組みとしては不十分。
  • 中学校卒業生の98%が高校に入学してくる現状においては、入学時の力を明確に把握して担保することが困難になっており、入り口段階ではなく出口で質を担保すべき。
  • 大学へ入学するにあたって、必要とされる能力を確認するためのテストが必要ではないか。ただし、テストと卒業認定は分けて考えるべき。大学入試センター試験は順位を付ける競争テストであり、例えば目標準拠型にするなど、修得度をしっかりと把握するための仕組みづくりが必要。
  • 質の保証の検討にあたっては、「高校の修了」と「大学に進学する子どものレベル」を分けて考えて良い。高等学校の修了においては、職業への準備教育と一定の学力を身に付けることが重要。義務教育ではないので、自立と個性を育てられれば、それ以上のことについては、本人に任せればよい。一方、子どもが、進路に応じて学校を利用し、学びたい内容を主体的に学んで決める視点もあってよい。
  • 到達度を把握するための何らかの基準を検討するにあたっては、個々の学校ごとに生徒の状況が異なるものであるため、生徒の状況に応じて各学校で考えていかなければならない。
  • 高校教育の到達度テストといった生徒の学習の目標になるような仕組みは必要だが、どれだけ社会的に認知されるかが成否の鍵ではないか。
  • 高大接続テストを大学入学資格としてやるのは難しいが、高校生としてどのような学力を有しているか測る意義はある。国民として身に付けておくべき一定の知識の達成度テスト等、大学の合否に関係しないところで高校生の学習の目標設定として活用すれば良い。

2)授業の仕方など教育方法の改善に関する意見

  • 身に付けるべき能力、態度、チャレンジする力など、新学習指導要領でも記載されており、総合的な学習の時間はそれを想定しているもの。各学校で行う総合的な学習の時間を見直すことで相当変わっていくと思う。プロジェクト・ベースド・ラーニングに変えていく事が必要。
  • 体験や失敗等で色々学ばせる必要があるが、学校では授業の中で知識を蓄えさせるだけで、失敗する機会がない。自ら発表し、上手くいかないから改善し、そして達成するという生徒を中心とした授業形態に変えていく必要がある。
  • 基礎力とそれを活用する能力を身に付けさせることが必要だが、生徒は発言や知識の応用等が好きではないという結果が出ており、授業の在り方を変えていく必要がある。
  • チャレンジすることが大切であり、どの生徒にもチャレンジさせたい。そのためには学校がプログラムを準備し、過程や失敗等を評価し、生徒に試行錯誤させるなどの経験をさせる必要があり、授業もわかるとかできるということが大事。
  • これまで知識偏重であったのを、思考力を鍛えるようにする必要がある。週30時間で3年間だと、まず知識の習得に集中せざるを得ないが、得た知識をいかに応用して思考力を鍛えるか。範囲を厳選し、活用することに方向を変えていく必要がある。
  • 成績による評価だけだと生徒のやる気は出ない。新しい学習指導要領にあるように、体験学習は重要で、こうしたらうまくいくといった経験を得ていくことが大切。教科の学習を含め、十分頑張れば達成できるという体験を得ることが重要。
  • 社会的・職業的自立、社会・職業への円滑な移行に必要な力の例に産業社会と人間を記載しているが、総合的な学習の時間をどう活用していくのかも考えるポイントである。
  • 学習意欲の向上のためには、学ぶ楽しさを感じられるようにするなど授業の質をよくするための工夫が必要。
  • イベントとしてのキャリア教育も重要だが、それを効果的なものにするためには、日々の教育活動における意識が大切である。教職員全体が年間指導シラバスを作るような体制により、学校行事や総合的な学習の時間、教科ごとの学習指導においてキャリア教育について取り組んでいくことが必要。
  • コミュニケーションを高めるためには、自らの意見を述べ、他者の意見を聞くという主体性と協調性が必要である。生徒は、比較的協調性はあるように感じられるが、主体性が不足しているのではないか。授業を一斉授業という一方向型から参加型・双方向型の学びの仕組みに変えていくことが必要ではないか。
  • 批判的思考を高めるため、授業ではこれまで正解が一つしかない問題を教えていたが、答えが一つでない問題を授業に取り込み、みんなで解決策を議論するなどの方法が考えられる。
  • 効率優先ではなく、一人一人に合った教育方法を行うため、例えば、ゼミのようなものを導入するなど、先生が一方的に教えるのではなく、一緒に学び合うことがあるといい。

 

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