資料1 高等学校教育における「コア」について

1 「課題の整理と検討の視点」における「コア」について

  「課題の整理と検討の視点」(平成24年8月10日高等学校教育部会)では、近い将来主権者となる全ての生徒に共通に最低限修得させるべき内容(=「コア」)について、次のように例示している。

  • 社会的・職業的自立、社会・職業への円滑な移行に必要な力(*)
  • 社会の一員として参画し貢献する意識などの市民性 等

 (*)中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」(平成23年1月)において示された力。具体的には、「基礎的・基本的な知識・技能」、「基礎的・汎用的能力」、「論理的思考力・創造力」、「意欲・態度及び価値観」、「専門的な知識・技能」を指す。

※ 高等学校教育における「コア」として身に付けるべきものについて、どのように考えるのか。

2 学校教育法における高等学校教育の位置付け

(1) 高等学校教育の目的及び目標として、以下を掲げている。

【目的】

  • 高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする

 ≪学校教育法第50条≫

【目標】

  1. 義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展拡充させて、豊かな人間性、創造性及び健やかな身体を養い、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと
  2. 社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき、個性に応じて将来の進路を決定させ、一般的な教養を高め、専門的な知識、技術及び技能を習得させること
  3. 個性の確立に努めるとともに、社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、社会の発展に寄与する態度を養うこと

≪学校教育法第51条≫

(2) また、小学校、中学校、高等学校を通じて、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、次の点に特に意を用いなければならないこととされている。

  1. 基礎的な知識及び技能を習得させること
  2. 基礎的な知識及び技能を活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくむこと
  3. 主体的に学習に取り組む態度を養うこと

≪学校教育法第30条第2項、第49条、第62条≫

(3) 加えて、上記目標の達成に資するよう、教育指導を行うに当たり、生徒の体験的な学習活動の充実(特にボランティア活動などの社会奉仕体験活動、自然体験活動その他の体験活動の一層の充実)に努めるとされている。

≪学校教育法第31条、第62条≫

※ 高等学校教育における「コア」として身に付けるべきものについては、上記の学校教育法の規定も踏まえて検討してはどうか。

3 「コア」の考え方について

(1) 2(1)で掲げた、
1.基礎的な知識及び技能、
2.課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力、
3.主体的に学習に取り組む態度
 という3つの要素から成る力について、「課題の整理と検討の視点」や学校教育法の規定における高等学校教育の目的及び目標を踏まえながら、中学校の教育の基礎の上に、高等学校教育段階において、「コア」としてどの程度のものを求めることにするのか。

(2) 2(1)で掲げた学力の三つの要素のほか、「豊かな人間性」、「健やかな身体」も高等学校教育において身に付けさせるべきものであるが、これらを育む観点から、特に、高等学校教育の目標を踏まえて、「コア」としてどのようなものが考えられるか。例えば、次のような力を「コア」として捉えることについて、どのように考えるか。

(例)

  • 社会の発展に寄与する態度を養うために必要な「公共心」や「倫理観」
  • 社会奉仕の精神、他者への思いやり
  • 健康の保持増進のための実践力

(3) 社会的・職業的自立や社会・職業への円滑な移行に必要な力を身に付けさせるため(キャリア教育の視点)、さらに、高等教育との接続の観点(学士力の視点)から、特に、高等学校教育段階で身に付けさせるべき「コア」としてどのようなものが考えられるか。例えば、次のような力を「コア」として捉えることについて、どのように考えるか。

(例)

  • 個性に応じて、生徒が将来の進路を決定するために必要な「勤労観・職業観」
  • 言語を活用して批判的に考える力、分かりやすく説明する力、議論する力
  • 多様な他者の考えや立場を理解する力やコミュニケーション力などを含めた「人間関係形成力」
  • 新たな価値観や考え方を創り出す力やものづくり力などを含めた「創造力」
  • 自ら課題に挑戦していく力などを含めた「主体的行動力」
  • 社会の一員として参画し貢献する意識などの「市民性」
  • 今後の自分自身の可能性を含めて自らを肯定的に理解するとともに、自らの思考や感情を律し、今後の成長のために進んで学ぼうとする「自己理解・自己管理力」

 

(別添)

参考資料(関係条文)

教育基本法(平成十八年十二月二十二日法律第百二十号)抄

(教育の目的)
第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

(教育の目標)
第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

(義務教育)
第五条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3・4 略

学校教育法(昭和二十二年三月三十一日法律第二十六号)抄

【義務教育関係部分】
第二十一条 義務教育として行われる普通教育は、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)第五条第二項に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
二 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
三 我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
四 家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。
五 読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。
六 生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
七 生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
八 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。
九 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。
十 職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。

第二十九条 小学校は、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すことを目的とする。

第三十条 小学校における教育は、前条に規定する目的を実現するために必要な程度において第二十一条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
2 前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。

第三十一条 小学校においては、前条第一項の規定による目標の達成に資するよう、教育指導を行うに当たり、児童の体験的な学習活動、特にボランティア活動など社会奉仕体験活動、自然体験活動その他の体験活動の充実に努めるものとする。この場合において、社会教育関係団体その他の関係団体及び関係機関との連携に十分配慮しなければならない。

第四十五条 中学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育を施すことを目的とする。

第四十六条 中学校における教育は、前条に規定する目的を実現するため、第二十一条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

第四十八条 中学校の教育課程に関する事項は、第四十五条及び第四十六条の規定並びに次条において読み替えて準用する第三十条第二項の規定に従い、文部科学大臣が定める。

第四十九条 第三十条第二項、第三十一条、第三十四条、第三十五条及び第三十七条から第四十四条までの規定は、中学校に準用する。この場合において、第三十条第二項中「前項」とあるのは「第四十六条」と、第三十一条中「前条第一項」とあるのは「第四十六条」と読み替えるものとする。

【高等学校関係部分】
第五十条 高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。

第五十一条 高等学校における教育は、前条に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展拡充させて、豊かな人間性、創造性及び健やかな身体を養い、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。
二 社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき、個性に応じて将来の進路を決定させ、一般的な教養を高め、専門的な知識、技術及び技能を習得させること。
三 個性の確立に努めるとともに、社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、社会の発展に寄与する態度を養うこと。

第五十二条 高等学校の学科及び教育課程に関する事項は、前二条の規定及び第六十二条において読み替えて準用する第三十条第二項の規定に従い、文部科学大臣が定める。

第六十二条 第三十条第二項、第三十一条、第三十四条、第三十七条第四項から第十七項まで及び第十九項並びに第四十二条から第四十四条までの規定は、高等学校に準用する。この場合において、第三十条第二項中「前項」とあるのは「第五十一条」と、第三十一条中「前条第一項」とあるのは、「第五十一条」と読み替えるものとする。

(読替後の規定)
第三十条 略
2 第五十一条の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。

第三十一条 高等学校においては、第五十一条の規定による目標の達成に資するよう、教育指導を行うに当たり、生徒の体験的な学習活動、特にボランティア活動など社会奉仕体験活動、自然体験活動その他の体験活動の充実に努めるものとする。この場合において、社会教育関係団体その他の関係団体及び関係機関との連携に十分配慮しなければならない。

(下線のうち、「第五十一条」は読替部分、「高等学校」「生徒」は準用による読替)

 

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