参考資料3 大学入学者選抜の改善をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について(諮問)

24文科高第465号

中央教育審議会

 次に掲げる事項について、別紙理由を添えて諮問します。

 

 大学入学者選抜の改善をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について

 

 平成24年8月28日

文部科学大臣 平野 博文

 

 

(理由)
 グローバル化、情報化、少子高齢化など社会構造が大きく変化し、先を見通すことの難しい時代にあっては、生涯を通じ不断に主体的に学び考える力、予想外の事態を自らの力で乗り越えることのできる力、グローバル化に対応し活力ある社会づくりに貢献することのできる力などの育成が特に重要となる。
 このような力は、学校教育においては、各学校段階における質の高い教育と相互の有機的な連携を通じて育むべきものであり、そのために多くの関係者が努力を重ねている。
 しかし、特に高等学校教育と大学教育との接続・連携については、大学入学者選抜制度の在り方を含め様々な課題が指摘されており、国民からの期待に十分には応え切れていないと言わざるを得ない。
 高等学校教育、大学入学者選抜、大学教育は相互に密接に関連し合うものであり、そのいずれかに責任を帰すことによっては問題を解決することはできない。
 我が国の将来を担う生徒・学生が、これからの時代に求められる力を確実に身に付け、それぞれの持つ可能性を最大限に伸ばすためには、高等学校教育、大学入学者選抜、大学教育の在り方を一体としてとらえ、その円滑な接続と連携のもとに、高等学校教育の質保証、大学入学者選抜の改善、大学教育の質的転換を進めることが喫緊の課題となっている。
 このため、国内外の様々な教育の質保証のための仕組みや構想、高等学校教育及び大学教育に関する課題についての検討状況等を踏まえつつ、特に次の事項について、高等学校及び大学の関係者を含め、早急に議論を深める必要がある。

  • 大学入学者選抜の改善をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について

 

 

諮問理由説明

平成24年8月28日

  グローバル化、情報化、少子高齢化など社会構造が大きく変化し、先を見通すことの難しい時代にあっては、生涯を通じ不断に主体的に学び考える力、予想外の事態を自らの力で乗り越えることのできる力、グローバル化に対応し活力ある社会づくりに貢献することのできる力などの育成が特に重要となっております。
 それらをより具体的に言えば、豊かな経験・知識と社会や他者への関心・理解に裏付けられた教養と倫理観、常に学び自らを向上させようとする意欲や姿勢、不測の状況に置かれた時に課題を正しく把握しそれを克服・解決することのできる判断力・行動力、異なる価値観や思想を持つ多様な他者と良好な関係を結ぶことのできる協調性やリーダーシップ、他者や社会のために貢献しようとする公共心や実践力などであると考えます。
 このような力は、初等教育、中等教育、高等教育のすべての学校段階を通じ、それらの間における相互の有機的な連携を通じて育むべきものです。そのために多くの関係者が日々情熱を傾け努力していることは申すまでもありません。
 しかし、高等学校教育と大学教育との接続・連携については、大学入学者選抜制度の在り方や、それぞれの教育の質の保証などをめぐり様々な課題が指摘されており、国民からの期待に十分には応え切れていないと言わざるを得ません。
 高等学校教育と大学教育の接点である大学入学者選抜の在り方は、我が国の教育の在り方の全体に関わる大きな課題であります。従来、過度の受験競争の緩和を図る観点から、入試方法の多様化や評価尺度の多元化、受験機会の複数化を推進してきており、近年では大学入学者の約半数が推薦入試やAO入試により入学するなど各大学の取組が進んでいます。しかしながら、これらの入試方法においては、外形的・客観的な基準が乏しく事実上の学力不問となるなど、本来の趣旨と異なった運用がなされているのではないかとの懸念も示されております。一方で、選抜性の強い一部の大学を中心に、教科・科目の知識量を問う学力検査への偏重など必ずしも入試方法の多様化等が十分に進んでいないという現状もあり、グローバルに活躍する人材や次世代を担うリーダーを育成する観点から課題を指摘する声もあるところです。
 本来、大学入学者選抜も教育の一プロセスであり、児童・生徒・学生がこれからの時代に必要とされる力をしっかりと身に付けることを後押しするものであるべきです。そのためには、本年6月に文部科学省で取りまとめた「大学改革実行プラン」でも示しているように、「志願者の意欲・能力・適性等の多面的・総合的な評価に基づく入試へ」の転換が不可欠であると考えます。
 高等学校教育と大学教育との連携・接続に関しては、現在、初等中等教育分科会において、生徒の学力状況を多面的・客観的に把握する様々な仕組みによる高等学校教育の質保証について御検討いただいています。また大学分科会においては、主体的に学び、考え、行動する力を鍛える大学教育の質的転換について御審議いただき、まさに本日、その成果を「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」と題する答申としておまとめいただいたところです。
 この答申でも指摘されているとおり、高等学校教育、大学入学者選抜、大学教育は相互に密接に関連し合うものであり、どれか一つだけを取り上げることによっては問題を解決することはできません。
 我が国の将来を担う生徒・学生が、これからの時代に求められる力を確実に身に付け、それぞれの持つ可能性を最大限に伸ばしていくためには、高等学校教育、大学入学者選抜、大学教育の在り方を一体としてとらえ、その円滑な接続と連携のもとに、高等学校教育の質保証、大学入学者選抜の改善、大学教育の質的転換を進めていくことが必要です。
 以上のことから、中央教育審議会において、国内外の様々な教育の質保証のための仕組みや構想、また関係する分科会等における高等学校教育及び大学教育に関する課題についての検討状況等を踏まえつつ、「大学入学者選抜の改善をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について」早急に御審議いただくようお願いします。
 その際、例えば次の点に御留意いただくようお願いします。
(1)大学入試センター試験の在り方を含めた大学入学者選抜の改善方策について
(2)各学校段階での教育を通じこれからの時代に必要とされる力を育む観点から、大学入学者選抜と高等学校教育の質保証、大学教育の質的転換を一体的に行うための基本的な方向性、高等学校と大学との連携強化のための方策について
  よろしくお願いいたします。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)