資料2 高等学校教育部会(第7回)において出された主な意見

1.高等学校教育制度について

  • 検討にあたって、後期中等教育の視点は外せない。高校生の現状は多様であるというが、子どもに視点を置いて考えれば、共通の発達特性を示すのであり、子どもの側から共通性を追求する視点を残すことが好ましい。
  • 小・中・高等学校の基本的な学校体系の上で考えなければならない。中学校における「普通教育」とは、国民共通の基礎を身に付けるものであり、高等学校における「普通教育」とは、専門教育への基礎を身に付けるものであって、各分野や子どもの志望によってこれらは異なり多様であると考えるべき。 

2.質保証の仕組みについて 

  • 学習時間の減少は生徒が学習の必要性を感じられていないためだが、自分が何を身に付けたかを確認できなければ学習の必要性は感じられない。
  • 高大接続テストについては、AO入試・推薦入試の外形基準としては有効。ただし、思考力・表現力・判断力も含めて判定できるものにしなければ質保証の仕組みとしては不十分。
  • 中学校卒業生の98%が高校に入学してくる現状においては、入学時の力を明確に把握して担保することが困難になっており、入り口段階ではなく出口で質を担保すべき。ほぼ「履修主義」の現状だという捉え方ではなく、出口で質を担保する制度が必要であり、本来の「修得主義」に立ち返るべき。
  • 学年制と単位制の併用の建前については、修得主義の考え方に拠ることとし、必ずしも18歳で卒業せずとも修得に何年かけてもよいのではないか。
  • 大学へ入学するにあたって、必要とされる能力を確認するためのテストが必要ではないか。ただし、テストと卒業認定は分けて考えるべき。大学入試センター試験は順位を付ける競争テストであり、例えば目標準拠型にするなど、修得度をしっかりと把握するための仕組みづくりが必要。
  • 自己評価と学校関係者評価は、各学校にそのやり方が委ねられているので、実際のやり方は区々であり、細かい学校もあればそうでない学校もある。
  • 質の保証の検討にあたっては、「高校の修了」と「大学に進学する子どものレベル」を分けて考えて良い。高等学校の修了においては、職業への準備教育と一定の学力を身に付けることが重要。義務教育ではないので、自立と個性を育てられれば、それ以上のことについては、本人に任せればよい。一方、子どもが、進路に応じて学校を利用し、学びたい内容を主体的に学んで決める視点もあってよい。
  • 到達度を把握するための何らかの基準を検討するにあたっては、個々の学校ごとに生徒の状況が異なるものであるため、生徒の状況に応じて各学校で考えていかなければならない。

3.身に付けるべき能力について

  •  成熟した社会においては、自ら考え課題を解決する能力、コミュニケーション能力、知識・技能の基盤が必要。
  • 東京都では、これまでは学校不適合の生徒を減らすために多様化路線の政策を行ってきたが、これからは生徒一人一人の能力を高める観点で振興していくことが必要だと考えている。その中で、教科学力については、各学校ごとに学力スタンダードを設定するなど、一定の到達度を把握する試験のようなものを考えていきたい。これに加えて、教科学力を超えた思考力・判断力・表現力をどのように育成し、それを測るのかが重要になってくる。
  • 高等学校では社会性を高める教育が不足しているため、諸外国と比べて幼い印象。中学校ではこの10年間で指導の見直しを行ったが、高等学校では大学受験に影響され、社会性を身に付ける授業が不足しており、このことについても考えていく必要がある。
  • 社会に出た働くことの現実や社会で働くための心構えを教えることが重要。専門学科でも上手く伝わらないので普通科では相当の工夫が必要だろう。
  • 高校では、卒業後の次のステージで何を叶えるかという視点で高校時点において必要な能力を身に付けさせることが重要であり、就職した者であっても学び続けることができる能力や自らの学びをマネジメントできる能力が重要。 

4.単位認定の在り方について

  •  高校教育の現状は卒業に必要な単位数のみを決めているに過ぎず、いわゆる履修主義であり、各学校も履修させることに重点を置き、修得を弾力的に扱っているのが現状だが、これを修得主義に転換していく必要がある。
  • 高校は今でも修得をもとに単位を認定しており、74単位は修得しなければならないはずである。問題は、修得内容が同じ科目名であっても学校によって異なっているということ。一律に2単位とすることが質保証に繋がるかのは疑問である。
  • 学年制では、留年した時点でその年次の単位が白紙になってしまう現状がある。単位の積み重ねを認めていくことは総合学科・単位制になるということであり、一律には議論できないのではないか。
  • 修得したかどうかの裏付けがあってこその単位であり、今後は、単位数や時間数ではなく、何を身に付けたかというアウトカムが共通のものさしになるだろう。

5.修得の徹底と中途退学との関係について 

  • 修得主義を徹底することにより、中途退学者が増加する恐れがあることを踏まえた仕組みを構築する必要。
  • 中退が増える危険性はあるが、修得主義に立ち返ることにより、社会的にも高校への不信感を解消し、信頼を高めることができる。その中で、如何に中退を減らすことに注力できるかが重要。
  • 中退者が増加するのではないかという点については、例えばフィンランドなどでは自主落第が3~5%いると言われている。また、ある目標の修得にあたって、他の者に比べて時間がかかる者もいる。中退が増えることを恐れるよりも、何を身に付け、何が出来るようになるかに重点を置いて考えるべき。
  • 修得主義にすると中退が増えるという意見は違うのではないか。きちんと学べないから中退するのであって、学ぶことを軸において生徒が主体的に学ぶことができるような議論を進めていくべき。

6.高校と大学との接続について

  •  高校の抱える課題は大学とも共通するものであるが、高校の方が深刻。
  • 大学教育部会の審議まとめにある、「生涯学び続け、主体的に考える力」は、大学生が身に付けるべき必須の力。大学生の学修時間が減少していることが課題として浮き上がっているが、30万人程度が「大学入試のための勉強」をして入学し、入学後も学習せずに卒業していくという状況には大いに危機感がある。
  • 高校生の中間層の勉強時間が大きく減少しているなど、高校の課題とも共通する部分がある。大学分科会としても初中分科会とタイアップして高校生と大学生の学びを連続して支援する取組をやっていきたい。
  • 日本の高等学校卒業者の大学進学率は他国と比べて特に高いというわけではないが、普通科の7割は大学に進学しており、それを前提として、高大接続の観点から方策を考えるべき。
  • 点数で振り分けるような大学入試はアメリカでは行われていない。自ら学ぶ能力等を大学入試の指標に加える等して、大学入試を抜本的に変えることで高校教育も変わるのであり、大学入試に関する議論をすべき。
  • 大学入試の在り方についても、アメリカでは内申書とインタビューをもとに行われており、特にインタビューに重点を置いている。日本の大学入試の在り方を変える必要。

7.高校生の学びの在り方について

  • 学力の重要な三要素のうち、基礎・基本の知識・技能や思考力・表現力・判断力の程度については、学校や生徒によって異なっているものだと考えるが、一方、学習意欲については、生徒ごとの違いはないのではないか。加えて、学習意欲の向上がこれらの教育において必要なことであり、これを前提に考えていく必要がある。
  • 学ぶ意欲を育て、生徒が授業を自ら選んで組み立てていけるようにすることが重要。
  • 平成25年度からの新学習指導要領の完全実施に拘われることなく、卒業した生徒の能力が次につながり、社会で受け入れられるためにはどうすべきかという視点で検討すべき。
  • 学習意欲の向上のためには、学ぶ楽しさを感じられるようにするなど授業の質をよくするための工夫が必要。
  • 学校だけでなく地域の力を活用して学びを内生化するための仕組みが必要。
  • 高校の3年間において大学進学や就職という目先のことだけではなく、3年後、5年後にどうなっていたいか、つまり、進学後社会に出てどのようになりたかを見せて考えさせて興味を高めていくための働きかけがあってもいい。

8.類型の分け方について 

  • 高等学校は職業的自立に向けた基礎を作る時期。しかしながら、数年で社会のニーズは変化し、生徒の希望も変化するものであり、このような変化に対応できる仕組みにしていくことが必要。
  • 「・・・を目指す学校」という類型は違和感がある。学力の三要素を基に考えるのは分かるが、最初から「・・・を目指す学校」と区分していいのか。学校ごとに目指すべきものが異なり、出口も異なるため、移動できる仕組みを確保するにも限度があるのではないか。また、地方では一つの学校に難関大学進学を目指す生徒もいれば就職する生徒もおり、かといって総合学科にできるかというと総合学科も上手くいっていないところもある。
  • 類型に分けることが序列化を生まないようにすべきとあるが、題目で終わってしまわないように実質的に担保できるのか懸念している。 

9.教員の資質能力の向上・学校マネジメントについて

  • 高校教育をより良くしていくためには、良い教員の育成が重要な要素である。一方、教育委員会事務局と高校との関わりにおいて、校長に裁量が与えられている場合とそうでない場合、実際には与えられているのに校長が判断できない場合など、校長によって学校の運営は大きく異なっている。校長の資質は教員に大きな影響を与えるものであり、このような問題についても議論が必要。
  • 教員が、生徒の学力や人間性をしっかり評価して進級させるべきか判断するべき。
  • 学校が目標を掲げて、取組内容を公表し、教員の評価も行うことが必要。その上で、人事と予算配分の権限を校長に移していくべき。 

10.その他

  •  一括りの学習指導要領では無理があり、専門学科でも十分な技能を修得させようとすれば、専門教科・科目は25単位ではなく少なくとも30単位以上修得させることが必要。

 

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