資料7 高等学校教育部会及びこれまでの有識者ヒアリング等において出された主な意見(抜粋)

個々の人格形成の場としての機能の再構築

(高等学校教育部会において出された主な意見)

○家庭環境等の理由により高等学校における学びが立ちゆかない生徒について、その学びを、どこまでどのように学校でカバーしていくかについて捉えることが重要。

○定時制課程・通信制課程は不登校の生徒が増えてきており、全日制課程を中退した者などが多く通っている。昼間定時制といった形態も出てきているなど多様化しているおり、人的配置など様々な課題を抱えている。

○広域通信制については質保証がなされているかの評価をやっていく必要がある。

○中退者が5万3千人いるが、高等学校卒業資格を取得していることは社会において重要な意味を持つ。不本意入学の生徒でもしっかりと学べるシステムを作って欲しい。

  • 子どもの「社会的排除」が深刻化し、子どもの置かれる立場が厳しくなっている。
    一方では、学歴を保険として取る傾向にあり一種の教育のモラトリアム現象が生じている。排除型社会では、マクドナルドで働くしか仕事がないという厳しい現実に多くの人が置かれざるを得なくなっており、社会に出てからも自分の能力を形成していかなければならない現実にある。高校は、そのような能力を育て得る最後の砦である。
  • 授業を受ける気がない生徒に対しては、初期指導(生活指導)と人間関係の構築が必要である。
    (市民性教育、規範意識の育成等に関する意見)
  • 狭い職業イメージを持つことに嫌悪感を持つ子供も多いため、普通科のイメージを残しつつ市民性教育をカリキュラム化して身の丈にあった実践を行うことが必要。
  • 教育の大きな目的の一つは生徒が社会人になった際に、市民として自立し、生きていくための礎を築くことにある。精神的な自立は高校教育のあらゆる場面で育まれていくが、一方、経済的自立については、高校教育が実社会とは異なる環境にあることから理念で考えざるを得ず、あまりに実社会について知らな過ぎる若者が多い。高校卒業後に就職する生徒はもとより、進学する生徒もやがては実社会に出て行くものであり、高校における進路選択がその後の人生をかなりの程度で方向付けてしまう。このため、進路指導や就職指導を超えて、「市民として自立し、生きていける」ように、専門的な「進路等総合アドバイザー」を設けて、進路相談にあたる体制が整う制度構築を願う。
  • スウェーデンで70年代に取り組まれた改革では、「女性参加型経済、上質な就学前教育の提供、リカレント教育の構築」を進め、社会福祉国家としての戦略をとった。教育については、教育の職業的意義を強調し一端社会に出て働き、その後自分に向いた職業についての見通しを得てから高等教育へ進学する仕組みを導入した。
  • 高等学校は、最後の市民教育の場であり、専門教育だけではなく、中堅的な市民して様々な場で活躍する人材を育てることが必要。教育課程のなかで市民性の実践を取り入れ、教科学習がその上に乗るようなカリキュラムを特に中堅校でやっていくこと。それによって、ストレス耐性やコミュニケーション能力などを育てることが必要。
  • 教育活動全体を通じて行う道徳教育や特別活動における体験的な活動により、継続して規範意識の醸成に努めることが必要。
  • 「奉仕」を教科として設定し必履修とすること。キャリア教育を必修化するなど抜本的な対策を検討すること。
  • 規範意識・コミュニケーション能力・基本的な生活習慣の向上・確立のために、道徳教育を教科化し、専門の教師や人生経験が豊富な社会人を採用し、奉仕活動、自然体験、職場体験、芸術・文化体験等を実施する。
  • 挨拶、礼儀(マナー)、倫理観を身に付けさせるべき。
  • 社会人として自立するための基礎的学力とライフスキルを身に付け、社会に出て働くことへの意欲を育てることが必要。就職・進学を含め社会で経済的にも精神的にも自立して生活するために必要な基礎的な知識・技能・態度を習得する教育が必要。
  • 進路指導等の充実を図るため、高等学校へのキャリアアドバイザーの配置について財源措置を講じることが必要。
  • 高校進学率の上昇に伴い、生徒の学力差が明らかに拡大している。相談体制の充実や特別な支援を必要とする生徒へ対応するため、スクールカウンセラーなどの新たな職種を学校教育法に位置付けることについて検討していくことが必要である。
  • 教育相談機能の充実、個別計画に基づく指導、中学校との連携強化、スクールカウンセラーの増員のための財政措置が必要。また、生徒指導に特化した教員の配置が望まれる。
  • 生徒の健全育成を学校のみで担うことは難しい。警察や青少年センター、福祉機関等との連携が重要だが、その努力が生徒指導主任や個々の教員に委ねられ、学校全体として機能しないなど、実効あるものになっていない。このため、各機関とどのように連携を図るかについてあらかじめ検討し、研究を重ねるとともに、各機関と情報を共有化することが必要。
  • 生徒によっては精神的に自分をコントロールすることが難しく通常の授業を受けられないケースがある。このため、養護教諭のいる保健室とは別にカウンセラーのいる部屋を設けている。また、中1ギャップは大きな問題で、そもそも生活のリズムがしっかりできていない生徒がいる。元気のいい、目立つような生徒でも、周囲の生徒からのリアクションに対し自分の行動をコントロールできないケースがあり、この場合は、学校生活などに関しメンタルな面での指導が必要となってくる。

    (高校中退に関する意見)
  • 高校を中退する子どもは、親の代から続く不安定雇用や低賃金など、深刻な貧困にあえいでいる。中退する子どもが増加することは社会の不安定要因を増加させることに繋がる。これを解消するためには、社会的自立につながるまでの日常生活の自立を含め、家庭に代わって行政や社会が居場所作りを行う必要がある。
  • 学校は中退を防ぐとともに学び直しができる機能を持つべきであり、団塊世代の有能な人材の力を借りて、公民館等の場所で補習学級を行う等、コミュニティネットワークを生かした場所を作ることが必要。
  • ソーシャルキャピタルとして、ナナメの関係を縦横に作っていくことが大変重要。高校を中退した者も、再び社会の複雑なネットワークに入り直していくものであり、その時に、ナナメの関係がソーシャルキャピタルとして非常に大きな役割を果たしている。
  • 高校は、中退した子どもが再度やり直せる機関であるべき。教員の配置も含めて特別な手当が必要。
  • 少子化により生徒数が大幅に減少しているにもかかわらず、高校の定員は大きく減っていないため、進学校の中でも学力・学習意欲に大きな差がでてしまい、授業についていけずにドロップアウトしてしまう子どもも少なからずいる。一度入学した後も、様々な進路変更を可能にするシステムを構築することが必要。

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