資料8 高等学校教育部会及びこれまでの有識者ヒアリング等において出された主な意見(抜粋)

(高等学校教育部会において出された主な意見)

○普通科の生徒に対する職業準備教育が不足している。専門学科についても地域の労働力需要にマッチした仕組みにしていかなければならない。

(キャリア教育)

  • 教員の多くは非常に情熱的であるが、今という時代は、10年前とは全く違い、普通に就職することがいかに難しく、仕事も働き方も就職事情も全く変わっているかということを知らないという意味で、良い先生とは言えない。やりたくもないキャリア教育を教員に無理にやらせるよりも、例えば、企業から学校に人材を派遣してキャリア教育を担ってもらうことが効果的ではないか。
  • 教員は教員以外の職業を経験していないため、キャリア教育を行うには自ずと無理がある。国際理解教育も同様である。特別非常勤講師や特別免許状制度が設けられているが、周囲にそれを活用している人はおらず、実用に供されていない。
  • キャリア教育の内容が具体的に伝わっておらず、進路指導とどのように違うのか理解されていない。社会全体が過保護にしすぎており、失敗や挫折をおそれ、自分自身で考えて行動することが苦手な若者が増えている。身近な大人に魅力を感じることで夢を持ち、将来の目標が持てるのであり、教員が生き生きと仕事をしていることが重要。そのための教員の質の向上及び労働環境改善も必要。
  • 高校のカリキュラムが現実社会とのレリバンスを持たず、「社会への準備」をしっかりと行うという高校教育の基本的機能や使命が果たされていない。  
  • 各高校の評価について、「進学校」や「底辺校」等という社会の意識を変えることが必要。そのような言葉や見方が生徒の無気力感を助長する。
  • 高校教育は、経済界から、社会の変化に沿った教育を求められるあまり、本来身に付けさせるべき教養、人間としての基礎力を育成することに十分な時間がとれず、社会の発展に寄与できる真に必要とされる人材を送り出すことができないという状況にある。
  • 高校卒業後、進学であれ就職であれ、次の段階への接続が課題である。将来、自分が社会と主体的にどのように関わっていくべきかということを考える時間を重視し充実すべき。自分の将来を見据えてどのように学ぶのか、どのような職に就くのかということを考えることに繋がる教育をすべき。
  • 中学校の教師は専門高校の内容をよく知らず、保護者も根拠のない普通高校志向があり、何となく普通高校に進学した生徒の学習意欲が低く離職率も高い。これを解決するためには、中学校における進路指導を見直すべき。中学校の教員が専門高校の内容を理解させることを必須とするとともに、専門高校の魅力を高める工夫をするべき。
  • キャリア教育の典型とも言える「産業社会と人間」のような科目は、総合学科のみならず、他の高校でももっと真剣に受け止めてられてしかるべき。
  • 「産業社会と人間」はどの教科にも属さないため、どの教員も専門家ではなく、普通科から異動してきた教員などもすぐに対応できない。学校運営上、指導できる教員を育てていくことが課題となっている。また、「産業社会と人間」についての指導マニュアルがあると良いのではないか。
  • キャリア教育を推進していく上で、学校内でキャリアカウンセリングの専門家を育成することの困難さを感じている。総合学科における教科・科目のガイダンス機能や進路相談機能をより充実させるためにも、国はキャリアカウンセラーの養成に力を入れて欲しい。

(普通科におけるキャリア教育等)

  • 普通科は、より高度な学問を志向する者が学ぶ場として大学教育を見据えた教科指導を徹底すべきであり、専門学科は、実社会で活用できる知識や技能を取得する場として、産業界のニーズも踏まえながら、働くことへの関心や意欲を引き出し、産業界の求める人材の育成を目的とした職業教育を重視すべきであると考えるが、制度的にも学習指導要領における教科指導の制限が大きく、十分な進路指導が行われないまま安易な職業選択による就職のミスマッチを引き起こしている。
  • 普通科においては、大学進学実績を意識した教育ではなく、将来の職業として何が向いているのかに気づかせ、どのような学問をすべきかについて高校段階で気づかせるべき。専門学科においては、日本の産業が国内において目指す方向を定め、それに見合う人材を育成すべき。
  • 特に普通科・定時制における教育課程にキャリア教育をしっかりと位置付ける。
  • 普通科におけるキャリア教育の推進のため、例えば「産業社会と人間」の全校必修化など、キャリア形成のベースとなる科目を設定し必修化すべき。
  • 普通科におけるキャリア教育として、卒業するまでに生徒一人が必ず国際的に通用する資格・免許を1つ取得させる。例えばEQFなどの国際比較可能な資格フレームの整備を行い、高校レベルで一部履修が可能なものの導入を推進すべき。

(職業体験・インターンシップ)

  • 教育の役割は就業・労働市場へと導いていくこと。普通科教育に偏しているが、地域産業と関連性の強い職業教育を重視すべきである。
  • 職業人としての基本的な能力の低下や職業意識の未熟さが指摘できる。勤労観・職業観とともに人間力・コミュニケーション能力を高めるため、職業体験を教育課程に位置づけ充実を図るべき。
  • 在学中に自らの将来を真剣に考え、必要な情報の収集に努め、実社会で通用する資格や就業体験を支援する履修科目を設置し、地元企業との協力の下で企業実習等の職業教育を行い、卒業後に社会で就業する姿を想像できるような指導が必要。
  • 普通高校においてもインターンシップ等の体験活動を重視し、勤労観、職業観の育成や資格取得を目指すなど特色ある魅力的な教育課程の編成や、近隣の専門高校との連携による職業教育の導入や各種資格取得の支援など、スキルアップのための方策について学校間での連携が必要。
  • 工業高校や商業高校などで行われてきたインターンシップなどの学校外の資源を活用した取組を学科を問わずに全ての高校で実施する。
  • インターンシップやデュアルシステムで生徒を受け入れる企業等への支援策を講じてほしい。
  • インターンシップの職種や機関などを更に充実させることが必要。
  • インターンシップの一層の充実が必要。職場体験やインターンシップにより、勤労観・職業観を育み、自立できる能力を付ける必要がある。そのための受入れ企業の開拓においては、教員が企業を訪問する等して行っており、生徒の職業意識の育成のみならず学校への理解も深まっているが、取組を進めるためには、受入れ企業に対する助成制度など受入れをスムーズに行う仕組みが必要。

(職業教育の充実)

  • 従来の農業高校、工業高校、商業高校等の括りではなく、産業構造の変化に対応した、調理、芸術、デザイン、美容、スポーツ、福祉、音楽、演劇、芸能、言語、IT等といった学科を設置することができる新しい産業教育の実施が必要。
  • 地域の産業を担う人材の育成に向けて、インターンシップの実施期間の延長や、デュアルシステムの内容の充実、実施校の拡充を図るべき。また、産業構造の変化や科学技術の進歩等に対応するため、大学・研究機関等との連携を図り、新たに求められる教育内容・方法を取り入れるべき。
  • 専門高校における教育に対し、産業界と行政が関心と予算を持たないことが課題。教育予算とともに、知事部局の地場産業振興系の人材育成の観点からも予算をつけるとともに、現場技術者の契約講師化とカリキュラムの作成が必要。
  • 卒業後に即戦力として地域産業を支え地域社会に貢献する人材を育成すること、卒業後に上級学校に進学後、専門的知識を深めた上で郷土の地域社会を支える人材を育成することがこれまで以上に重要であり、郷土に対する誇りと愛着を育むとともに、専門高校を一層充実させることが必要。
  • 産業技術の高度化やIT化等、社会の変化に対応した施設・設備の充実を図るべき。
  • 諸外国に比べて高校の専門学科在籍者の比率は、著しく低い傾向にあるが、日本企業の雇用慣行(新卒一括採用、終身雇用、年功序列、企業内教育など)が崩れた今、職業教育・専門教育の位置づけを再検討することが必要。例えばアメリカでは、ハイスクールの後半2年間の専門教育とコミュニティカレッジ2年間の職業教育を結合したテック・プレップが存在し、さらには、4年制大学の専門教育に繋がるハイスクールの専門教育もある。また、4年制大学の工学部における「工学予備」(プレ・エンジニアリング)教育として、工学部進学者のために、ハイスクールで高度な数学や理科を教授するとともに、基礎的な工学の授業を行っており、早い段階からの工学準備教育により技術者を養成している。このような例を参考にしながら、進学するなら普通科、就職なら専門学科という固定観念を変えていかなければならない。
  • 専門高校の先行きは厳しいが、総合産業高校のような形で複数学科を持つ一定以上の規模の学校とするのが良い。
  • 普通科進学校で就業体験の実施率が低いのは問題である。日本の大学は専門教育を行う場所であり、大学進学者といえども大学における専攻を決めるためには、関連する職場における就業体験が必要。
  • 公立高校は再編により専門学科を減らしており、専修学校という場はあるものの授業料が高額であり、公費による職業教育の保障が必要である。
  • 専門高校においては、専門教科、特に実習をより本格的に取り入れ、実習の内容を座学で補うという形にするのが良い。学校によっては、専門科目が極端に少ないカリキュラム構成だったり、進学を念頭に置いた学校経営をしているが、行き先の大半は専門技能・技術を学ぶ大学・専門学校である。それならば、高校で専門教育を行い、就職を見据えた上で実務を経験しながら必要に応じて学ぶ(必ずしも高等教育機関に限らない)ほうが良い。
  • 5年一貫の看護の専門高校においては、高校で、生徒一人ひとりの理解力に応じたきめ細かな指導のもとで、生徒が普通教科と看護教科の基礎的・基本的内容を学び、専攻科では、既習の高校の学習内容の中でも、特に重要な科目について重点的に時間を配当したり、実習病院の医師や看護師などの外部講師による専門性の高い講義を実施したりするなど、生徒の年齢、発達段階に応じて、5年間の系統的なカリキュラムを組むことができる点メリットである。一方、専攻科を含めて5年間学んでも、学歴としては高卒であり、誇りが持てなかったり、コンプレックスや劣等感を抱えたりしている生徒もいる。入学後も大学に進学したい意向を持ち続ける生徒もいるので、大学への編入が認められるとよい。早くから看護の道を目指した時点で、高等教育への道が奪われているのが実情である。

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