資料5-3 有識者ヒアリング・都道府県教育委員からの意見聴取・職員インタビューにおいて出された主な意見について

<目次>

  1. 個々の生徒の学習進度・理解等に応じた学びのシステムの構築
  2. 社会の要請に応える人材養成機関としての機能の充実
  3. 個々の人格形成の場としての機能の再構築
  4. その他 

1.個々の生徒の学習進度・理解等に応じた学びのシステムの構築

 今後の高校教育の在り方に関するヒアリング

(学科・課程)

  •  高校生の4人に3人が普通科に在籍していること、また普通科の中で非常に学力格差が発生してしまっていることは問題。高校の教育課程の内容も特に普通科において、高校生にとって自分の現在や将来の生活、社会生活にとって意義あるものと感じられるようにするべき。また、普通科から転換して、専門高校あるいは専門学校的な特徴をもつ普通科をもっと増やしていくべき。さらには、専門高校からの大学進学機会をもっと拡大すべき。
  •  夜間に授業を行う従来の定時制課程の概念とは異なる、「昼夜間定時制」高校の数が増えてきており、全日制と同様に昼間から授業を行っている。全日制・定時制・通信制という形で序列ができあがっているが、学校の特色によって分類する仕組みに変えていかないと、子どもたちの中に不必要な劣等感や差別意識が生まれてくる。全・定・通の在り方そのものを変えていく必要があるのではないか。

(子どもの傾向・学習意欲)

  •  学生の勉強に対するパッションがない。何のために勉強しているのかというのを考えさせるようにしないといけない。
  •  高校生の問題は、自身も意欲もない状態。「自分をだめな人間だと思う」、「人並みの能力があると思わない」と考える生徒が大変多いという現状。
  •  高校は小中学校に比べて閉鎖的。地域の人も高校に興味がなく、そのような高校に入学する生徒は、まず自己肯定感を損なう。家庭でも両親とうまく話せず、生徒にとって、刺激を得たり新しい見識を得る機会を意欲的に持つことが難しい。
  •  高校生の平均学習時間は70分程度だが、実際にはほとんど学習していないと考えてよい。教科書を持ち帰らず手ぶらで登校するような状態。
  •  高校生を大人として扱い、高校生でも世界を変えることができるいう自己肯定感をあらゆる場面で繰り返すことが必要。
  •  高校生にインパクトを与え、厳しい受験競争の中で、異質な質の高い経験をさせることによって、勉強の意味を高校生たち自身に考えさせる仕組みが必要。

(教育課程)

  •  高校の実態として、カリキュラムが非常に硬直的であることが問題。特に全日制普通科においては、進学校も指導困難校もほとんど同じである。指導困難な生徒は、1日6時間の授業を椅子に座って聞き続けるエネルギーはないが、午後は、勉強を遊びに置き換えて行うような授業を配置し、とにかく学校で授業を受けさせるという考えで取り組んだ。このような柔軟なカリキュラム編成は、総合学科ではない普通科でも十分可能。
  •  高校入試、大学入試のために高校の教育内容は非常に均一化されている。多様性のある学校を日本 にたくさんつくって欲しい。
  •  大学合格がゴールで大学に入学したら勉強しなくなってしまう生徒がいる。1つの教科ごとの勉強ではなく、何かやりたいことがあるからこの教科とこの教科を使うんだというような、教科間の連携が学校の中では必要。
  •  高校の実態は主要教科に重点を置きすぎている。中等教育は、単なる教科指導ではなく、教科間の連携や地域との連携など立体的に考えることが必要。
  •  広い意味で民主主義社会に参加できるような市民としての能力(市民性教育)が必要。広い市民性を持っていなければ社会に適用できない。

(学習の到達度・高大接続)

  •  高校卒業段階で高校卒業程度認定試験のように、これだけは習得しておいて欲しいことを習得できているかどうかを確認する制度が必要。
  •  日本の大学入試の選抜機能による学力保証がなされてきたが、高校の教育課程の弾力化や大学進学率の上昇、少数科目入試などに伴い、この機能が失われてきている。少人数科目入試などによる普通教育の欠落も課題。高校の基礎的教科・科目の履修と達成を促し、同時に個別入試の限界を克服するものとして「高大接続テスト」を導入すべき。
  •  高校卒業までに身に付けさせる基礎学力の水準を明確化し、基礎学力の定着状況を測定する全国レベルでの評価テストの作成と活用を検討すべき。
  •  アメリカのノーベル賞受賞者のうち21歳以下で大学を卒業している人たちは80パーセントであり、何らかの飛び級・早期教育を経験している。日本では飛び入学にあたり、高校からの推薦状が本当の推薦状として機能しない(その子どものここが素晴らしいということを書けない)のが課題。また、飛び入学が始まった当時は、17歳であり大学生活にはついていけないだろうと特別なケアが社会から大学に要求されたが、実際には、普通の入学生に比べると平気でいろいろな人と話ができ、あっという間になじむ。
  •  飛び入学の効果は、高校教員の意識を変えていくとができたこと。高校教員と連携するネットワークを作り、ひとつひとつこちらの考えを伝えていくことにより、生徒に受験を進める教員が増えており、受験生が減らないという状況である。

(特別支援教育)

  •  広汎性発達障害、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害、学習障害など発達障害を含む多様な障がいのある特別支援学級の生徒は毎年20パーセントで増加し、10年で3倍となり、特別支援学級への入学希望者が増加している。高等学校においても、支援員や介助員を配置するための財政措置の充実や専門性のある教員の加配が必要である。
  •  支援の必要な生徒に対する授業中の学習のサポートや予測できない行動への対応など、教員一人だけでは必要な支援が困難な状況がある。このことから高等学校にも、特別支援教育支援員が配置できるよう、十分な地方財政措置を講ずる必要がある。
     さらに、一人一人の障害の特性に配慮し、必要に応じた指導・支援ができるよう、少人数指導を行うための教員の加配や、特別な教育課程を編成しての特別支援学級や通級指導教室の設置も視野に入れた制度面の検討が必要である。
  •  特別支援教育支援員の配置の一層の充実、施設・設備の充実、特別な教育課程によること、通級指導教室の配置とその制度の整備等について検討すべき。
  •  特別支援教育については、義務教育段階と比べて体制整備が遅れている。管理職を始め教員の特別支援教育に対する理解と認識の深化に向けた研修会の実施や大学の教員養成課程における特別支援教育の必修化などの早急な対応が必要。さらに特別支援教育コーディネーターの授業時数の軽減や加配教員の配置など財政措置の拡充、高校入学者選抜制度における特別な配慮や支援、幼稚園から高校卒業まで一貫した教育的支援ができる教育システムの導入を早期に実現願いたい。
  •  発達障害等の生徒に対する教職員研修の充実とスクールカウンセラー配置のさらなる充実を図るべき。
  •  高校に在籍する特別な支援が必要な生徒には、これまでの自校中心の取組から、各地区に拠点校を設けてコーディネーターを配置し、各校の担当者が特別支援学校の教員と連携することで教員の専門性を高めていく仕組みに移行させ、学習支援や就労・進学支援の向上を図る。
  •  幼稚園から小・中・高等学校への生徒に関する診断、支援、発達成長に伴う課題の変化等、共有できる記録簿の作成が必要。

都道府県教育委員からの意見聴取

  •  高校教育の選択肢は、1.制度としての複線化をはかるか、2.単一の高等学校制度を維持した上で質保証政策を進めるかのいずれかである。前者は、これまで高校が、高校内部での「機能分化」によって多様化に対応してきたことを改め、「制度的分化」、すなわち、機能とカリキュラムを異にする複数の水平的に分化した学校への制度的に再編し、その各々が質保証を図る道。後者は、後期中等教育機関が実質高校一本である現行制度を維持した上で、高等学校教育のoutcomeにおけるミニマムを維持(回復)向上しようとする道である。具体的には、高大接続テストの導入、高校卒業資格の国家試験制などが想定できる。高校教育課程の多様化・自由化が同時に何がしかの質保証制度を伴わないのであれば、我が国の高等学校卒業証書の価値は国際的に低落し、ひいては高等教育学位の国際的価値の低下にも歯止めがかからないだろう。
  •  教育課程全体の充実・見直しを含め、社会の現状と将来を展望した新たな高校教育の基本理念を明確にし、日本の未来を切り拓く人材の育成に向けた教育の実現に取り組む必要がある。
  •  教育には、最先端の技術・情報など新しいものや考え方を取り入れることが必要であると同時に、伝統的な価値観など我が国の教育が守ってきた不易なものをしかりと伝える義務がある。改革を検討するに当たっては、守り引き継ぐものが何なのかという価値を整理した上で議論すべきである。
     また、少子化が進み、経済力等の国力を落とすイメージを払拭することは容易ではないが、人数は少なくとも優れた能力や人間性を育てる観点で、今まで以上に一人ひとりに向き合い、教育的ニーズに合ったきめ細かな指導が展開できる制度設計が必要である。
  •  学制を含めた高等学校教育の在り方や高等学校に対する国の責務(役割)について、また学習指導要領の大綱化など学校や設置者の裁量の確保・拡大を前提に、高等学校教育における最低水準を確保する施策の検討を行うべき。
  •  様々な課題や困難な状況にある生徒を受け入れて柔軟に教育できる学校や教育システムを作ることが求められる。そのためには、全・定・通の枠を取り払い、自由な教育課程が編成できる高校づくりが必要。
  •  高校教育は義務教育ではないため、例えばドイツのように、学力向上を目指す課程と職業人養成課程を明確に分けた上で、職業人養成課程には企業を参加させ、現場さながらの実践教育を行うこととし、そのために学校設置基準を緩和すべき。
  •  高校教育に対するニーズの多様化に伴い、既存の高校では対応が厳しくなっている。高校教育の基本的な枠組みについて再定義が必要である。
  •  PISA調査で成果の出ている他国の教育制度を常に研究調査し、国家間の競争を視野に入れた高校教育改革を推進すべき。

(子どもの傾向・学習意欲)

  •  一部、不本意入学をした生徒が目的意識のないまま無気力な生活を送ることが課題。これらの生徒には、入学後の早い段階で生き方・なぜ学ぶのかといったことを考えさせるとともに、教え込むことが重要。
  •  経済統計で言う「生産年齢」に達しているにもかかわらず、自ら働いて自立した生活を営むことへの展望、意欲に乏しい生徒が多い。また、競争に耐え、困難に挑戦していくたくましさに乏しい生徒が増えている。規律を守り、他を思いやる気持ちを持つことが社会で自立していくために不可欠であることも理解しなければならない。このような問題への解決の一つとして、高校の教員が生徒の「多様な価値観」におもねったり振り回されることなく主体性を持つべきである。そして、周囲の狭い社会に閉じこもって安穏としないように生徒を導き、社会の将来の展望を教えることによって、無用な不安感を取り除くべき。
  •  学習や社会貢献活動に対する意欲・関心が低く、また、精神的に孤立した状況にある高校生が増加している。このため、授業等における学ぶ意義を実感させる工夫(授業改善によりわかる授業、興味関心を引き起こす授業の実現)や、高校生が社会とつながる機会の設定(部活動を単位としてボランティア活動を行う等将来にわたって積極的に社会に関わる態度の育成)などが必要。

(教育課程)

  •  高等学校の学習指導要領は、義務教育との連続性を重視した形で定められているが、そのことが高等学校の特色づくりをやりにくくする要因になっている。高校教育は義務教育の目指すものとは異なり、社会への準備段階の指導が柔軟にできるよう教育課程を編成する必要がある。連続であることの必要性を整理し、柔軟な対応ができる学習指導要領を検討してほしい。
  •  卒業後就職しようとする生徒についても、進学した上で実社会に入っていく生徒についても、職業世界との接続を図る観点から教育課程の再編が必要。前者には、職業資格と関連づけた教育課程の再編が有効。シンガポールのITEが参考となる。後者には、大学受験を超えて大学入学後、さらには社会に出た後で有効な教育を構想することが必要。リテラシー等の学力の国際標準や「活用」力の育成を目指し、大胆な教育方法上の革新が不可欠。
  •  義務教育段階の学習内容が十分に定着していない生徒に対して、学び直しに加え新たに高校段階の学習内容を理解させてその定着を求めることは現実には難しいところもある。学習指導要領に定められた必履修科目に一律に縛られることなく、学校の独自判断で生徒の実態にあった弾力的な教育課程を編成することを可能としてはどうか。
  •  必履修科目・標準単位数の見直しによる自由な教育課程の編成が必要。
  •  必履修教科・科目の更なる精選により教育課程の編成を一層弾力化するとともに、高等学校と大学の接続の在り方、学校教育と社会の接続の在り方など、中等教育や高等教育において十分な学習環境を担保できる仕組みづくりを社会全体で考えていくことが必要。
  •  優れた能力を一層伸ばす教育や障害のある生徒等への指導の更なる充実を可能とするため、高等学校学習指導要領を超える教育課程の特例措置を都道府県の判断で行えるようにする。
  •  高等学校学習指導要領の大綱化など、学校や設置者の裁量の確保・拡大を前提に、高等学校教育における最低基準を確保する施策の検討が必要。
  •  高等学校学習指導要領の運用の弾力化や教育施設等の環境整備などについて格段の配慮をお願いしたい。
  •  生徒の実態に即して多様な教育課程が編成できるように、必履修科目は、日本史、体育、保健以外は、各教科で1科目として科目設定に柔軟性を持たせること。また大学入試後を見据えて高校で学ぶべき科目等の内容を示す等の改善を図ること。日本史(A又はB)を必履修とすること。
  •  グローバル社会で活動する日本人は、日本の伝統・文化、歴史の教育を通じて日本人としての誇りを持つことが必要である。このため、例えば日本史を必修化してはどうか。
  •  資源のない日本は技術を糧に国際社会で生きるしかなく、トップクラスの学力を向上させるとともに、ベースラインの学力も向上させる必要がある。そのための一案として、土曜日授業を復活させるべき。
  •  学校週5日制により休業日になっている土曜日の取扱いについて、学校や生徒の実態に応じて柔軟に扱えるようにすることが必要。
  •  土曜授業を復活して授業時数を増やすべき。

(高大接続・大学入試)

  •  「高大接続テスト」で議論されているように、何らかの形で質の担保をすべき。
  •  高大の接続について再検討が必要である。大学入試に関して、高大接続テストの在り方、高校卒業資格と大学入学資格の関係の見直し等が考えられる。
  •  大学入試制度の在り方を検討し、入試問題を思考力・判断力・表現力を重視する内容に見直すこと。
  •  「高大接続テスト(仮称)」の導入に関する議論を高校における学習改善の観点や大学入試制度の改善の観点だけにとどめてしまえば、大学教育全体を見直す機会を逸することになり、ひいては高校教育の質の向上につなげる機会を失うと考える。 ついては、大学の単位認定の在り方を含め、大学生の学力の多様化に対応した指導の改善等、大学教育全体の改革を平行して行うことを前提とし、高校側と大学側が慎重に協議したうえで行うべき。
  •  大学入試を見直す時期はとうに来ている。例えば、高校卒業試験を行う、大学受験資格試験でマッチングにより大学進学させ、大学の教育内容を充実させる、大学を卒業するハードルをより高くするなどを検討してはどうか。
  •  公費負担によるエリート育成課程を作るとともに、飛び級を採用すべき。
  •  大学教員による高校での講義や大学での高校生対象講座のみならず、多様な高大連携の在り方を考えることが必要。例えば、高大連携授業参加者に対する大学入学後の単位認定、大学の公開講座等への参加の単位認定、大学入学後の基礎学力補充のための講座の高校での開講と単位認定など。
  •  9月に高校を卒業する生徒が大学へ進学する場合に、10月から入学できる大学が限られている。10月入学の拡充などの大学入試制度の改善が必要。
  •  大学など高等教育の入学期を9月とし、4~8月の間、就業体験をさせる。 

職員によるインタビュー

  •  戦後の高校教育の理念と現実の間に乖離がある。現実に理念を近づける方向性を持ったほうがよく、より生徒の実態に即した教育課程を編成・改善していく体制を保証し、現場での知恵の働かせ方を支援する体制が必要。
  •  新制高等学校の発足当時の理念は、後期中等教育や高等教育への教育の機会の拡大であったが、それはひとまず達成されたといってよく、新たな理念をどのように盛り込むかということであり、高校教育や高等教育を下支えする義務教育段階の在り方も問われてくる。高等学校の学習指導要領にもリメディアルの要素が入ってきているが、中学までに基礎的な知識・技術を定着させることが高校教育を支えていくことになる。
  •  普通科の改革という時に専門高校にすれば良いという意見も研究者等に見られるが、必ずしもそうではない。普通科のままであってもやり方によっては、逆に力を付けられるケースがあり、現実社会と向き合う場を提供する中で、人として生きていくための様々な力を付けていくことができる。
  •  学科の在り方については、うまくいった事例とそうでない事例などのカリキュラムを評価しながら見直していくことが必要。古い学科体制は時代に合わないからダメだということではなく、成功している学科はどのようなものかを見ていくことが必要。

(教育課程)

  •  高等学校は、多様化・弾力化の方向で改革されており、結果として、「高校教育の統一性」を失っている。これを必履修科目との関連で言えば、履修と修得が分かれており、必修得とはされていないことから、「高校教育の統一性」を必履修科目でもって持たせられるのかということもある。必履修科目に頼らずに考えるとすれば、「産業社会と人間」のような個人のキャリア形成を支えていくようなもの、つまり一人前の市民になっていく上で必須なものなど、教科とは言わないまでも、必履修にして高校教育をアイデンティファイするものを位置づけて、学校と社会をどうつなぐかという観点から共通して必要とされることを盛り込んでいくことで高校教育に統一性を持たせることが必要。
  •  現場の創意工夫が生かせるような形で自由度を持たせていく方向性が良いが、高等学校は、教育課程の編成に関して言えば、他の学校種に比べて動かないところがあり、そのような中で現場に任せると、旧来の受験指導に偏る傾向が強い。ただ現場に任せるのではなく、カリキュラムづくりのエキスパートを育てるという長期的なビジョンを持つことが必要。
  •  学習指導要領の大綱化については、教員が指導要領をどのように受け止めるかという問題であり、生徒が身に付けるべき力へのこだわりを曖昧でいい加減にして良いという意味ではない。教員の意識と制度改革の趣旨の間にあるズレを埋めること、制度の趣旨を教員に上手く伝えることが肝要。
  •  新高等学校学習指導要領は、学校現場におけるカリキュラム編成に要する時間があまり考慮されておらず、対応に苦慮している。早朝や放課後等の勤務時間外に指導することで乗り切っているが、内容・単位時間数を考えるとかなり厳しく、週5日制がネックである。

(特別支援教育)

  •  身体的障害の人に対するバリアフリーはこれまでも言われてきたが、発達障害についてはまだ対策がなされていない。小・中学校においては理解が進み対策もとられているが、高校ではほとんど配慮がなされていない。入学させた生徒を卒業させるために必要な特別支援的な発想や専門家の配慮などが重要。
  •  例えば、進学校としても有名な灘高校では、校内委員会の設置・特別支援教育コーディネーターの指名・教職員研修はもちろんのこと、「気になる生徒」に関する情報は随時、教職員により収集され、養護教諭によってポートフォリオ形式で一括管理されている。教職員や保護者に対する研修のほか、人権・道徳教育の一環として障害当事者を講師に招聘して生徒に対する障害理解教育などを年間を通じて積極的に実施されており好事例である。
  •  特別な配慮を要する生徒の進路は、生徒自身やその保護者の努力に委ねられている部分が多いが、これは高校側が、十分な進路・就労に関する情報を持ち合わせておらず、適切な進路指導ができていないためである。しかし、障害者手帳の取得や外部の専門機関との連携が生徒の将来を切り開くきっかけになり得ることから、高校も発達障害者支援センターや就労支援センター等の専門機関と連携する必要がある。

(定時制高校)

  •  定時制高校は、内面に悩みや心の病をかかえ中学時代に不登校であった生徒や、他の高校を中退した生徒、一人親家庭、経済的に困窮する家庭など、生徒は多様な背景を抱えている。また、発達障害や学習障害など、年々サポートを必要とする生徒が増加しており、養護教諭の負担が非常に大きくなっている。教員では対応が難しいケースも見られるため、 特別支援教育の専門家を配置してほしい。
  •  最近は保護者の希望で特別支援学校を避け、普通科に進学してくる生徒もおり、そのような生徒の保護者から過度な要求を受けるケースもあるため、特別支援教育の専門家でない教員では対応が困難である。定時制課程に特別な支援を必要とする生徒が多く進学している実態を考えると、特に管理職において、特別支援教育の経験者を幅広い人事交流により活用すべきと考える。

2.社会の要請に応える人材養成機関としての機能の充実

今後の高校教育の在り方に関するヒアリング

  •  高校ごとのミッションを見える化していくことが必要。市民教養を多く配分する高校と高等教育への準備教育を多く配分する高校など、市民性教育を入れる度合いによって3パターンに分けてはどうか。
  •  高校・大学関係者の中で、教育は国家の存亡に関わる礎であるという感覚が極めて希薄になってしまっている。
  •  教育の主流が大学入試を軸として動いている。ほとんどの生徒は日本の大学を目指すが、海外の大学を目指すという選択肢もあるはず。今の高校生の英語力では到底海外の一流大学は受験できないが、これを解消してやれば子どもの選択肢は広がり、大学も国際競争の中で生きようとするのではないか。
  •  高校の改革には、地域の教育資源を発掘してコラボレーションすることが必要。足立新田高校の場合には、都民ゴルフ場を活用した体育の授業や、高齢問題に対応してホームヘルパー養成のための授業をカリキュラムに組み込み授業を地域にも開放した。
  •  教育の役割は就業・労働市場へと導いていくこと。普通科教育に偏しているが、地域産業と関連性の強い職業教育を重視すべきである。
  •  教員の多くは非常に情熱的であるが、今という時代は、10年前とは全く違い、普通に就職することがいかに難しく、仕事も働き方も就職事情も全く変わっているかということを知らないという意味で、良い先生とは言えない。やりたくもないキャリア教育を教員に無理にやらせるよりも、例えば、企業から学校に人材を派遣してキャリア教育を担ってもらうことが効果的ではないか。
  •  教員は教員以外の職業を経験していないため、キャリア教育を行うには自ずと無理がある。国際理解教育も同様である。特別非常勤講師や特別免許状制度が設けられているが、周囲にそれを活用している人はおらず、実用に供されていない。

(学校運営)

  •  教員のモチベーションをいかに向上させるか、校長のリーダーシップを発揮できるかが大切。
  •  授業力に差があって力量のない人材について、民間企業の場合には、その人材を切れば済む話であるが、学校は、学校全体として力を発揮しており、単に授業力のない教員を切ると他の教員の士気が落ちる。ダメな教員をどうするという話ではなく、今いる人員の中で如何に効果的に運営していくかという校長の手腕が問われている。
  •  教員の人事制度に踏み込まないと根本的な解決にならない。勤続20年で定期昇給を停止し役割手当を創設してはどうか。
  •  現場を任せられる校長を育てるためには、副校長が、1年程度民間企業や私立学校で研修する等の経営戦略を学べるゆとりと機会を持たせることが必要。校長への任用年齢を下げて若い段階で修羅場を経験させるとともに、55歳程度で退任し、後進育成にあたらせるのが望ましい。
  •  校長の育成のためには、他の高等学校の校長の下で2ヶ月間のインターンシップをすることにより、直にリーダーシップの取り方・決断の仕方を学ばせることが有効。
  •  教員は保護者対応や各種調査・書類の作成に時間を取られすぎている。本来の教育に能力を発揮できるようにすべき。
  •  教員ごとの授業のムラは、ある程度のティーチングメソッドのカリキュラムがないためである。ハーバードビジネススクールでは、教員を前にした授業の作り込みをする。授業を作り込むことが日本の教育に欠けているのではないか。
  •  校長の1校の在籍年数を延長し、5年単位で高校のビジョンを示し、その高校のマネージャーになるようにすれば根本的に変わる。
  •  今は、校長は上がりのポジションになってしまっているが、一度退職して5年の任期付き(再任用可)ポストにすることがよい。
  •  企業の40代の脂の乗ったエースが学校に来てくれれば良い。1社から1人出ると日本の会社の数だけ教育界にばらまかれることになる。半年でもいいので来てもらうことによって学校には凄くインパクトがある。

(総合学科)

  •  総合学科は非常に中途半端になってしまっている。自分で科目を選択するものの、何の関連性も専門性もないような科目を選んでしまいがちであることが問題。
  •  総合学科がエンカレッジスクールとなってしまっているのは問題。総合学科は生徒に多様なメニューを示しつつも、読み・書き・計算といった基礎学力についてもしっかり教えていかなければいけない。
  •  総合学科は、教員は普通科の1.5倍必要でありコストがかかる。また、教員にとっては、複数の科目を担当することになり一つの科目を同じ時間数持つことと比べて負担が大きい。柔軟なカリキュラムがもたらす複雑な授業展開は教員の負担であり、改革のブレーキになりつつある。 

都道府県教育委員からの意見聴取

(教職員定数)

  •  高等学校の教育環境と授業改善を推進するために、1学級の規模と教職員定数を見直す必要がある。
  •  特色ある高校教育を推進し、質の高い教育を実現するため、また学校経営機能の強化を図るためには、目的的な定数加配とともに、学級編制標準の引き下げを行うべき。
  •  北海道の郡部の小規模普通科には多様な生徒が入学するため、進学のみならず、地域の実情に応じたキャリア教育・職業教育も必要であり、このような学校において職業系類型コースを設置する場合の教員加配を積極的に推進して欲しい。
  •  教職員の多忙化が進み、本務に専念することが困難な高校が増えつつあるとともに、教職員の精神疾患も確実に増えている。このような問題を解決するためには、高校にも少人数学級編成を導入するための教職員定数の改善を進めるべきと考える。 少なくとも、義務教育を少人数学級で受けた生徒が、高校に入学するときまでには、ぜひ実現してほしい。短期的には、現在の種々の加配措置を維持しつつ、さらに、特別教育支援員や特別支援コーディネーターの加配措置、スクールカウンセラーの全校配置(常勤)など、「専門職員」の充実を図ってほしい。キャリア教育の一層の充実のため、勤労観や職業観の育成ならびに個別の進路相談ができる資格と経験を備えた「キャリアカウンセラー」を配置してほしい。
  •  高等学校において特別支援教育について専門性の高い教員の確保ができるよう教職員定数の増加を検討する。
  •  定時制課程の学級規模を標準20人とするなど、高校標準法を速やかに改正すること。

(キャリア教育)

  •  キャリア教育の内容が具体的に伝わっておらず、進路指導とどのように違うのか理解されていない。社会全体が過保護にしすぎており、失敗や挫折をおそれ、自分自身で考えて行動することが苦手な若者が増えている。身近な大人に魅力を感じることで夢を持ち、将来の目標が持てるのであり、教員が生き生きと仕事をしていることが重要。そのための教員の質の向上及び労働環境改善も必要。
  •  高校のカリキュラムが現実社会とのレリバンスを持たず、「社会への準備」をしっかりと行うという高校教育の基本的機能や使命が果たされていない。
  •  各高校の評価について、「進学校」や「底辺校」等という社会の意識を変えることが必要。そのような言葉や見方が生徒の無気力感を助長する。
  •  高校教育は、経済界から、社会の変化に沿った教育を求められるあまり、本来身に付けさせるべき教養、人間としての基礎力を育成することに十分な時間がとれず、社会の発展に寄与できる真に必要とされる人材を送り出すことができないという状況にある。
  •  高校卒業後、進学であれ就職であれ、次の段階への接続が課題である。将来、自分が社会と主体的にどのように関わっていくべきかということを考える時間を重視し充実すべき。自分の将来を見据えてどのように学ぶのか、どのような職に就くのかということを考えることに繋がる教育をすべき。
  •  中学校の教師は専門高校の内容をよく知らず、保護者も根拠のない普通高校志向があり、何となく普通高校に進学した生徒の学習意欲が低く離職率も高い。これを解決するためには、中学校における進路指導を見直すべき。中学校の教員が専門高校の内容を理解させることを必須とするとともに、専門高校の魅力を高める工夫をするべき。

(普通科におけるキャリア教育等)

  •  普通科は、より高度な学問を志向する者が学ぶ場として大学教育を見据えた教科指導を徹底すべきであり、専門学科は、実社会で活用できる知識や技能を取得する場として、産業界のニーズも踏まえながら、働くことへの関心や意欲を引き出し、産業界の求める人材の育成を目的とした職業教育を重視すべきであると考えるが、制度的にも学習指導要領における教科指導の制限が大きく、十分な進路指導が行われないまま安易な職業選択による就職のミスマッチを引き起こしている。
  •  普通科においては、大学進学実績を意識した教育ではなく、将来の職業として何が向いているのかに気づかせ、どのような学問をすべきかについて高校段階で気づかせるべき。専門学科においては、日本の産業が国内において目指す方向を定め、それに見合う人材を育成すべき。
  •  特に普通科・定時制における教育課程にキャリア教育をしっかりと位置付ける。
  •  普通科におけるキャリア教育の推進のため、例えば「産業社会と人間」の全校必修化など、キャリア形成のベースとなる科目を設定し必修化すべき。
  •  普通科におけるキャリア教育として、卒業するまでに生徒一人が必ず国際的に通用する資格・免許を1つ取得させる。例えばEQFなどの国際比較可能な資格フレームの整備を行い、高校レベルで一部履修が可能なものの導入を推進すべき。

(職業体験・インターンシップ)

  •  職業人としての基本的な能力の低下や職業意識の未熟さが指摘できる。勤労観・職業観とともに人間力・コミュニケーション能力を高めるため、職業体験を教育課程に位置づけ充実を図るべき。
  •  在学中に自らの将来を真剣に考え、必要な情報の収集に努め、実社会で通用する資格や就業体験を支援する履修科目を設置し、地元企業との協力の下で企業実習等の職業教育を行い、卒業後に社会で就業する姿を想像できるような指導が必要。
  •  普通高校においてもインターンシップ等の体験活動を重視し、勤労観、職業観の育成や資格取得を目指すなど特色ある魅力的な教育課程の編成や、近隣の専門高校との連携による職業教育の導入や各種資格取得の支援など、スキルアップのための方策について学校間での連携が必要。
  •  工業高校や商業高校などで行われてきたインターンシップなどの学校外の資源を活用した取組を学科を問わずに全ての高校で実施する。
  •  インターンシップやデュアルシステムで生徒を受け入れる企業等への支援策を講じてほしい。
  •  インターンシップの職種や機関などを更に充実させることが必要。
  •  インターンシップの一層の充実が必要。職場体験やインターンシップにより、勤労観・職業観を育み、自立できる能力を付ける必要がある。そのための受入れ企業の開拓においては、教員が企業を訪問する等して行っており、生徒の職業意識の育成のみならず学校への理解も深まっているが、取組を進めるためには、受入れ企業に対する助成制度など受入れをスムーズに行う仕組みが必要。

(職業教育の充実)

  •  従来の農業高校、工業高校、商業高校等の括りではなく、産業構造の変化に対応した、調理、芸術、デザイン、美容、スポーツ、福祉、音楽、演劇、芸能、言語、IT等といった学科を設置することができる新しい産業教育の実施が必要。
  •  地域の産業を担う人材の育成に向けて、インターンシップの実施期間の延長や、デュアルシステムの内容の充実、実施校の拡充を図るべき。また、産業構造の変化や科学技術の進歩等に対応するため、大学・研究機関等との連携を図り、新たに求められる教育内容・方法を取り入れるべき。
  •  専門高校における教育に対し、産業界と行政が関心と予算を持たないことが課題。教育予算とともに、知事部局の地場産業振興系の人材育成の観点からも予算をつけるとともに、現場技術者の契約講師化とカリキュラムの作成が必要。
  •  卒業後に即戦力として地域産業を支え地域社会に貢献する人材を育成すること、卒業後に上級学校に進学後、専門的知識を深めた上で郷土の地域社会を支える人材を育成することがこれまで以上に重要であり、郷土に対する誇りと愛着を育むとともに、専門高校を一層充実させることが必要。
  •  産業技術の高度化やIT化等、社会の変化に対応した施設・設備の充実を図るべき。

(総合学科)

  •  多様な分野の学習機会を保障するための条件整備として、施設・設備等の改善・充実はもとより、一人一人の教員の力量を高めるとともに、専門性を持った教員の適切な配置が求められる。
  •  総合学科への進学希望者が多く、入学した生徒の満足度も高い。一方、全体の生徒数が減少する中で、教科担当が減少し、「幅広い科目の中から生徒の個性にあった科目を選択履修できる」という、発足当初の趣旨が達成困難な事態も予想され、さらなる人的配置が必要ではないか。

(地域との連携)

  •  高校は、生徒に対して社会の一員として生活し、職業などを通じて社会を支えるための知識・能力を習得する場である。地域が学校に対してどのような協力をできるのかを知って、キャリア教育などに活用するためにも、学校も地域社会の一員であるという自覚を持って欲しい。地域との接点(同窓会や保護者会)を大切にし、生徒が地域で生きるなかで人間関係を築く場となるようにしてほしい。そのような3年間が将来の地域社会を支えることになる。
  •  地域社会を巻き込んだ学校運営を行うことが望まれる。地域の経営者等の社会人のボランティア教員制度を設け、高校生に対して「志」等様々な示唆を提供するカリキュラムを必須とする。
  •  高校教育の中で地域を支え築いていく人間を育てる側面があるべき。地域に高校生が出て行き、ふれあい、つながりを持ちながら活動する経験を学業や部活動と同等の重みで推進すべき。

(教員の採用・養成)

  •  教員に生徒と関わる余裕がなくなっている。生徒と向き合う時間を確保するとともに、メリハリのある給与体系で教員のモチベーション向上につながる取り組みをお願いしたい。また、教員の社会的地位の向上に社会全体で取り組むべき。
  •  教員養成期間を延長し、専門職として資質の向上を図るとともに、それに見合った待遇をすることが必要。
  •  大学において、特別支援教育に関する単位の修得を義務付けるなど教員養成の在り方を検討するとともに、特別支援学校教員の免許状を有する者を積極的に高等学校教員として採用し、特別支援学校と高等学校との人事交流を推進する必要がある。
  •  特別支援学校中学部、高等部における教員の特別支援学校教員免許状所持率が低い。適切な指導・支援ができるよう、教育系大学における免許所取得のためのカリキュラムの改善等について検討をお願いしたい。
  •  自分の専門科目を教えることだけではなく、生徒指導や教育相談の力量を向上させることが必要。特に不登校や発達障害について理解を深め対応できるような教員を増やしていくことが必要。
  •  教職及び社会人経験のない新規採用教員が配置されている学校に、生徒指導・進路指導等に長けたベテラン教員を「新人育成教員」として配置し実践的に育成する仕組みを国において法制化するとともに、予算・定数措置を行うこと。
  •  教員の資質能力の向上は、養成・採用・育成を一体のものとして検討すべきであり、初めに「修士レベル化」ありきではなく、現行制度についてきちんと検証し、「4年制」の枠内で養成課程における学部教育の充実を図ること。
  •  国際感覚涵養のため、国レベルで諸外国と日本の教員の交換交流を行う仕組みを構築すること。

(教員の研修)

  •  教員は、授業のほかに課外指導や土日の部活動の指導、保護者対応などに追われ、教材研究すら十分に出来ない状況にある。教育実践力を高めるための研修の機会を持たせる工夫が必要。
  •  高大連携等を含めた質の高い教育を推進するにあたり、教員の資質向上のための研修が必要。多忙化を理由として教員の研修意欲は必ずしも高いとは言えない。高い専門性・技術を獲得するための研修、グローバルな視点を持つための海外や企業における研修、組織マネジメントを身に付けるための教職大学院等への研修派遣などが必要。
  •  研修方法の改善を行う必要がある。教科指導、生徒指導等に関する専門的研修を適宜行い、時代に即した指導ができるようにすることが必要。
  •  キャリア教育に対する教職員の捉え方に幅がある。教職員の意識改革を図るために、例えば、一定期間学校を離れて行う他県や異業種での研修の充実、学校外で地域交流や行事に積極的に参加するよう奨励すべき。
  •  地方の小規模校の若手教員の指導力向上を図るため、優れた教科指導力を有する教員を講師とした実践的な研修を実施するなど、教員研修の充実を図るべき。

職員によるインタビュー

  •  高校教育はアカデミックなカリキュラムを中軸とすべきという意識は教員の中に根強く存在するが、この伝統的な価値観にそぐわない、あるいはその準備が十分でない生徒は、義務教育ではない高等学校においては、ともすると自己責任の名の下に十分な手立てを講じられにくい傾向がある。
     このことについては、就職問題において特に深刻であり、生徒が卒業する時に、本当の意味で生きる力を身に付けているのかということを、今までの高校教育の論理ではなく、観点を組み直して再吟味することが必要。
  •  これからの世界はネットワークで国境を越えてすべてつながっていくことになるが、日本のGDPや国際競争力は年々下がっている。こうした状況の中で、グローバル社会における日本人の競争力はどうなっていくのか、世界規模での高度情報化社会化の中で日本人はどう戦っていけるのかという視点で日本の教育について考えることが必要。
  •  卒業後就職する生徒にどういうインセンティブを与えていくかだが、例えば、「商品開発」という科目にあるように、学業成績だけでは捉えられない「パフォーマンス」とそれを「形にすること」を大事にし、職業教育の中にそのような「有形化」を位置づけていくということが以前とは異なる職業教育の一つの姿になるのではないかと考えている。

(教職員定数)

  •  多様な生徒一人一人に応じたきめ細かい指導を行うためには、30~35人学級を実現してほしい。
  •  通信制課程では発達障害などの支援を必要とする生徒が多くなっているが、制度上養護教諭が定数化されておらず、時間雇用の臨時教諭を採用するなどして対応しているが、通信制課程の現状を踏まえ、養護教諭を定数措置できるよう制度改正を行って欲しい。
  •  現代に求められている学力育成のためには、授業の在り方も問題解決型・参加型・発信型・討議型等の様式を取り入れて、学びあう力を高めることが求められる。その実現のためには、これまで以上に、高い指導力を持つ充分な教員数の確保と授業時数の回復が必要であり、一講座の生徒数を25~30人程度まで抑え充分に指導が行き届くよう教員数を確保するとともに、不断に指導力向上が図れるよう教員研修やリカレント教育の機会が保障されるべきである。

(キャリア教育・職業教育)

  •  諸外国に比べて高校の専門学科在籍者の比率は、著しく低い傾向にあるが、日本企業の雇用慣行(新卒一括採用、終身雇用、年功序列、企業内教育など)が崩れた今、職業教育・専門教育の位置づけを再検討することが必要。例えばアメリカでは、ハイスクールの後半2年間の専門教育とコミュニティカレッジ2年間の職業教育を結合したテック・プレップが存在し、さらには、4年制大学の専門教育に繋がるハイスクールの専門教育もある。また、4年制大学の工学部における「工学予備」(プレ・エンジニアリング)教育として、工学部進学者のために、ハイスクールで高度な数学や理科を教授するとともに、基礎的な工学の授業を行っており、早い段階からの工学準備教育により技術者を養成している。このような例を参考にしながら、進学するなら普通科、就職なら専門学科という固定観念を変えていかなければならない。
  •  キャリア教育の典型とも言える「産業社会と人間」のような科目は、総合学科のみならず、他の高校でももっと真剣に受け止めてられてしかるべき。
  •  「産業社会と人間」はどの教科にも属さないため、どの教員も専門家ではなく、普通科から異動してきた教員などもすぐに対応できない。学校運営上、指導できる教員を育てていくことが課題となっている。また、「産業社会と人間」についての指導マニュアルがあると良いのではないか。
  •  キャリア教育を推進していく上で、学校内でキャリアカウンセリングの専門家を育成することの困難さを感じている。総合学科における教科・科目のガイダンス機能や進路相談機能をより充実させるためにも、国はキャリアカウンセラーの養成に力を入れて欲しい。
  •  専門高校の先行きは厳しいが、総合産業高校のような形で複数学科を持つ一定以上の規模の学校とするのが良い。
  •  普通科進学校で就業体験の実施率が低いのは問題である。日本の大学は専門教育を行う場所であり、大学進学者といえども大学における専攻を決めるためには、関連する職場における就業体験が必要。
  •  公立高校は再編により専門学科を減らしており、専修学校という場はあるものの授業料が高額であり、公費による職業教育の保障が必要である。
  •  専門高校においては、専門教科、特に実習をより本格的に取り入れ、実習の内容を座学で補うという形にするのが良い。学校によっては、専門科目が極端に少ないカリキュラム構成だったり、進学を念頭に置いた学校経営をしているが、行き先の大半は専門技能・技術を学ぶ大学・専門学校である。それならば、高校で専門教育を行い、就職を見据えた上で実務を経験しながら必要に応じて学ぶ(必ずしも高等教育機関に限らない)ほうが良い。
  •  5年一貫の看護の専門高校においては、高校で、生徒一人ひとりの理解力に応じたきめ細かな指導のもとで、生徒が普通教科と看護教科の基礎的・基本的内容を学び、専攻科では、既習の高校の学習内容の中でも、特に重要な科目について重点的に時間を配当したり、実習病院の医師や看護師などの外部講師による専門性の高い講義を実施したりするなど、生徒の年齢、発達段階に応じて、5年間の系統的なカリキュラムを組むことができる点メリットである。一方、専攻科を含めて5年間学んでも、学歴としては高卒であり、誇りが持てなかったり、コンプレックスや劣等感を抱えたりしている生徒もいる。入学後も大学に進学したい意向を持ち続ける生徒もいるので、大学への編入が認められるとよい。早くから看護の道を目指した時点で、高等教育への道が奪われているのが実情である。

(総合学科)

  •  総合学科に入学してくる生徒は入学後に様々な科目を履修し、吟味した上で進路を選択できると思っているが、実際は、次年度の教科書需要表の提出時期までに2年次の系列科目を決定せねばならず、あまり時間的余裕がないのが実態である。
  •  生徒は、「高等学校で学ぶ中で将来について考える」ことを期待して入学しているにもかかわらず、実際は、教科書の採択・需要数の報告時期から考えると、1年次の秋には次年度の選択科目を決定しなければならず、時間的な制約がある。また、講座開設の可否やそれに伴う教員配置の問題等により、途中で科目の選択希望が変わってもなかなか対応できない。
  •  総合学科は、興味・関心がある分野を自由に選択できる「多様性」という特色がある一方で、積み重ね学習が不足しがちで、大学入試で問われるような学力を定着させることが課題となっている。

(教員養成・採用)

  •  高校では専門知識が必要となるため専門学部出身者を採用したいが、これらの者は、多くの場合、中学校の免許を有していない。中高一貫校である本校では、採用後に取得させている。また、理系の優秀な人材は教員になりたがらない。優秀な人材を採用するために、例えば企業でキャリアを積んだ人材がすぐにでも学校で教壇に立てるようにすることが必要である。そのためには、免許状制度を弾力化すべきである。現行制度では、正式な免許を持たない企業出身者は専任教員にはなれず、特別非常勤講師などで雇用することになるが、企業をやめてまで非常勤で働こうとはなかなか思わない。また、生徒との信頼関係を築きながら教えるためにも、専任教員としてクラス担任を持つことが重要である。
  •  教員自身が学校という狭い社会に閉じこもっている感があり、高度情報化社会・グローバル社会に対応していくために授業を変えていくという発想をなかなか持ち得ないのではないか。アメリカでは企業での経験をつんだ者が教員になったり、あるいはその逆もあったりと、教員と他の業種との間の入れ替えが多い。日本でも、社会人経験者がもっと教員になりやすくなるような工夫が必要。

3.個々の人格形成の場としての機能の再構築

今後の高校教育の在り方に関するヒアリング

  •  高校は、中退した子どもが再度やり直せる機関であるべき。教員の配置も含めて特別な手当が必要。
  •  子どもの「社会的排除」が深刻化し、子どもの置かれる立場が厳しくなっている。一方では、学歴を保険として取る傾向にあり一種の教育のモラトリアム現象が生じている。排除型社会では、マクドナルドで働くしか仕事がないという厳しい現実に多くの人が置かれざるを得なくなっており、社会に出てからも自分の能力を形成していかなければならない現実にある。高校は、そのような能力を育て得る最後の砦である。
  •  授業を受ける気がない生徒に対しては、初期指導(生活指導)と人間関係の構築が必要である。
  •  高校を中退する子どもは、親の代から続く不安定雇用や低賃金など、深刻な貧困にあえいでいる。中退する子どもが増加することは社会の不安定要因を増加させることに繋がる。これを解消するためには、社会的自立につながるまでの日常生活の自立を含め、家庭に代わって行政や社会が居場所作りを行う必要がある。
  •  学校は中退を防ぐとともに学び直しができる機能を持つべきであり、団塊世代の有能な人材の力を借りて、公民館等の場所で補習学級を行う等、コミュニティネットワークを生かした場所を作ることが必要。
  •  ソーシャルキャピタルとして、ナナメの関係を縦横に作っていくことが大変重要。高校を中退した者も、再び社会の複雑なネットワークに入り直していくものであり、その時に、ナナメの関係がソーシャルキャピタルとして非常に大きな役割を果たしている。
  •  狭い職業イメージを持つことに嫌悪感を持つ子供も多いため、普通科のイメージを残しつつ市民性教育をカリキュラム化して身の丈にあった実践を行うことが必要。
  •  スウェーデンで70年代に取り組まれた改革では、「女性参加型経済、上質な就学前教育の提供、リカレント教育の構築」を進め、社会福祉国家としての戦略をとった。教育については、教育の職業的意義を強調し一端社会に出て働き、その後自分に向いた職業についての見通しを得てから高等教育へ進学する仕組みを導入した。

都道府県教育委員からの意見聴取

  •  高等学校は、最後の市民教育の場であり、専門教育だけではなく、中堅的な市民として様々な場で活躍する人材を育てることが必要。教育課程のなかで市民性の実践を取り入れ、教科学習がその上に乗るようなカリキュラムを特に中堅校でやっていくこと。それによって、ストレス耐性やコミュニケーション能力などを育てることが必要。
  •  少子化により生徒数が大幅に減少しているにもかかわらず、高校の定員は大きく減っていないため、進学校の中でも学力・学習意欲に大きな差がでてしまい、授業についていけずにドロップアウトしてしまう子どもも少なからずいる。一度入学した後も、様々な進路変更を可能にするシステムを構築することが必要。
  •  教育活動全体を通じて行う道徳教育や特別活動における体験的な活動により、継続して規範意識の醸成に努めることが必要。
  •  「奉仕」を教科として設定し必履修とすること。キャリア教育を必修化するなど抜本的な対策を検討すること。
  •  規範意識・コミュニケーション能力・基本的な生活習慣の向上・確立のために、道徳教育を教科化し、専門の教師や人生経験が豊富な社会人を採用し、奉仕活動、自然体験、職場体験、芸術・文化体験等を実施する。
  •  挨拶、礼儀(マナー)、倫理観を身に付けさせるべき。
  •  教育の大きな目的の一つは生徒が社会人になった際に、市民として自立し、生きていくための礎を築くことにある。精神的な自立は高校教育のあらゆる場面で育まれていくが、一方、経済的自立については、高校教育が実社会とは異なる環境にあることから理念で考えざるを得ず、あまりに実社会について知らな過ぎる若者が多い。高校卒業後に就職する生徒はもとより、進学する生徒もやがては実社会に出て行くものであり、高校における進路選択がその後の人生をかなりの程度で方向付けてしまう。このため、進路指導や就職指導を超えて、「市民として自立し、生きていける」ように、専門的な「進路等総合アドバイザー」を設けて、進路相談にあたる体制が整う制度構築を願う。
  •  社会人として自立するための基礎的学力とライフスキルを身に付け、社会に出て働くことへの意欲を育てることが必要。就職・進学を含め社会で経済的にも精神的にも自立して生活するために必要な基礎的な知識・技能・態度を習得する教育が必要。
  •  進路指導等の充実を図るため、高等学校へのキャリアアドバイザーの配置について財源措置を講じることが必要。
  •  高校進学率の上昇に伴い、生徒の学力差が明らかに拡大している。相談体制の充実や特別な支援を必要とする生徒へ対応するため、スクールカウンセラーなどの新たな職種を学校教育法に位置付けることについて検討していくことが必要である。
  •  教育相談機能の充実、個別計画に基づく指導、中学校との連携強化、スクールカウンセラーの増員のための財政措置が必要。また、生徒指導に特化した教員の配置が望まれる。
  •  生徒の健全育成を学校のみで担うことは難しい。警察や青少年センター、福祉機関等との連携が重要だが、その努力が生徒指導主任や個々の教員に委ねられ、学校全体として機能しないなど、実効あるものになっていない。このため、各機関とどのように連携を図るかについてあらかじめ検討し、研究を重ねるとともに、各機関と情報を共有化することが必要。

職員によるインタビュー

  •  高等学校は、最後の市民教育の場であり、専門教育だけではなく、中堅的な市民として様々な場で活躍する人材を育てることが必要。教育課程のなかで市民性の実践を取り入れ、教科学習がその上に乗るようなカリキュラムを特に中堅校でやっていくこと。それによって、ストレス耐性やコミュニケーション能力などを育てることが必要。
  •  生徒によっては精神的に自分をコントロールすることが難しく通常の授業を受けられないケースがある。このため、養護教諭のいる保健室とは別にカウンセラーのいる部屋を設けている。また、中1ギャップは大きな問題で、そもそも生活のリズムがしっかりできていない生徒がいる。元気のいい、目立つような生徒でも、周囲の生徒からのリアクションに対し自分の行動をコントロールできないケースがあり、この場合は、学校生活などに関しメンタルな面での指導が必要となってくる。

4.その他

今後の高校教育の在り方に関するヒアリング 

  •  「ゆとり教育」により学力の差が広がっている。現場主義に基づいた政策展開をして欲しい。
  •  NIE(ニュースペーパー・イン・エデュケーション)を導入し、子どもたちの関心を外に向けさせるべき。
  •  海外で勉強することは大事。日本はOECDの中で見ても海外で勉強する学生が割合的に非常に少ない。
  •  失敗は逆にプラスになる。教育においては、失敗してもいいという環境を小学校レベルでつくらなければいけない。
  •  教育と福祉がいかに連携できるかが鍵。就学前教育の充実だけではうまくいかない。家庭外から支援できる人材が必要。
  •  これまでは会社が潰れない仕組みであり、能力形成は企業特殊的熟練等、会社でなされてきたが、これが崩壊しているにもかかわらず22歳までの教育と社会保障の仕組みは変わっていない。教育改革も含めなければ社会保障改革は成り立たない。

都道府県教育委員からの意見聴取

(海外留学等)

  •  初等中等教育から高等教育に至るまで、体系的な国際関係また外国語についての教育が必要であり、国際人として必要な、日本国についての正しい歴史観を持ち、日本人としての自覚と誇りを持った人間形成を行うことが必要である。
  •  生徒の国際感覚涵養と国際理解促進のため、国として海外への留学又は短期滞在を行う仕組みを構築すること。
  •  現在の我が国の教育体制では、海外留学から帰国した際、例えば大学入試等においてマイナスとなる要因も内積されている。留学が本人にとって不利とならないよう、国も含めた制度的なフォーローアップが必要であり、こういった問題の解消に向けて、制度的な整備等の検討を是非お願いしたい。
  •  留学の促進を前提とした教育カリキュラムを用意し、より多くの若者が日本の大学ではなかなか達成できない国際的な感覚、国際競争力の概念の習得を海外で学ばせる環境を整えるべき。
  •  国際社会で活躍できる人材の育成を図るため、SELHiのような先進的な英語教育について研究する事業、SSHの一層の拡充、国際科学オリンピック参加への支援の充実を図るべき。
  •  グローバル化時代への対応として、例えば、アジアの言葉を選択的に学ぶ、アジアの国への修学旅行を積極的に展開する等のアジアを意識したグローバル化への対応が求められる。
  •  生徒減少、人口減少を食い止めるために、アジアから高校生の留学や移民を積極的に受け入れる体制をつくるべき。

(中高の接続)

  •  近隣中学と連携して入学後における指導の在り方や授業の進め方を研究するなど、中高接続プログラム等を作成し、弱点克服や学び直し等の学習指導に活用することが必要である。
  •  中高の接続について再検討が必要である。特に高校入学段階における推薦入試の必要性の見直し等が考えられる。
  •  希望する高校を主体的に選択できる入学者選抜制度が必要。このため、学び直しを可能にする制度、都道府県の枠を超えて受験可能な制度が必要。

(経済的支援)

  •  生徒一人ひとりが安心して充実した高校生活を送ることができるよう、国による経済的サポートや奨学金制度の拡充など、現実的な助成の制度化を強く望む。
  •  家庭の経済的文化的環境による高等教育進学機会の格差が見られる。その背景には、高校在学時の進路希望、学力達成、在学する高校のタイプ・ランク等における社会階層間格差が存在し、中学校以前の学校段階における学力格差と連続している。低所得世帯への給付型奨学金の創設、高等学校就学支援金の拡充のほか、幼児教育から高校教育までをカバーする福祉政策、所得再配分政策と連携した家庭教育支援施策が必要。
  •  高校の授業料無償化が実現されたが、その他の校納金の額が授業料相当額ないしそれを上回る状況であり、経済的に余裕のある家庭でなければ学習塾に通わせることは不可能である。従って、保護者の経済格差がそのまま教育格差につながってしまうという問題が生じており、低所得世帯への給付型奨学金の創設、高等学校就学支援金の拡充が必要である。
  •  給付型奨学金制度の創設とともに、貸与額や未納額の増加を考慮すると、国から府県への交付金の増額と併せて、運用面で返還金回収の厳格化や貸与基準の見直し等の検討が必要。具体的には、貸し付けを民間に任せ、回収業務においてノウハウを有するプロが行うようにする一方、審査基準を厳しくして給付に切り替えるなど。

(高校再編)

  •  普通科小規模校の充実が喫緊の課題。小学校・中学校と連携した教育課程の編成や授業研究など過疎地域の高等学校が果たす役割は大きく、地域文化の拠点となっている。
  •  同一県内でも、人口が比較的多い地域と急激な人口減少、少子化が進む地域とでは中学生が進路先として選択できる高校数には大きな差がある。少子化が進む地域では高校が限られており、成績上位層から下位層まで同一の高校に進学することになり、学力面での多様化が一層顕著であり多くの問題を投げかけている。
  •  過疎・中山間地域の生徒の学習機会の確保に留意しつつ、学校規模の適正化、学校の適性配置を推進することとあわせて、社会環境の変化に対応する特色ある学科を適性に配置することにより、教育環境の充実を図る改革を推進することが必要。
  •  生徒減少に伴い、学校の統廃合もしくは小規模校化がみられる。地域における学校の役割等を総合的に勘案して、学校・学科を適性に配置し教育水準の維持向上を図る必要がある。
  •  高校再編に伴い遠距離通学等となる場合の通学費や下宿費にかかる保護者の経済的負担を軽減し、生徒の修学機会を確保するため、通学費等補助の財源措置を講じてほしい。
  •  少子化により、県内中学卒業生がピーク時(平成元年3月)の6割程度まで減少し、県立高校の小規模化が進んでおり、生徒の多様なニーズに対応した科目、部活動、多様な教師、友達との出会い等が可能な魅力ある県立学校づくりについて検討が必要となっており、再編整備に着手している。
  •  小規模校は、専門性を持つ教員の確保が困難、カリキュラムが画一的になる、課外活動等の学校生活において切磋琢磨しながら社会性や協調性を培うことあ限定的になるという課題がある。このため、ある程度の広域で統合し、望ましい規模に再編することが必要。国には、高校再編に伴う施設整備等に係る経費や通学支援に係る経費の助成制度の創設してほしい。
  •  高校が地域社会に果たす役割、生徒の広域的な通学の便や通学等に係る家庭の教育費負担への考慮とともに各地域における高校教育を受ける機会の確保と教育水準の維持・向上を図っていくため、学校規模や生徒募集定員を弾力的に考え、更なる再編を極力回避し、小規模校化する中で一定の教育環境を維持していくことが必要であり、そのための教員加配や通学費補助等に対する国としての支援を希望する。

(部活動の在り方)

  •  部活動への外部指導者の導入促進や学校における部活動を社会体育へ移行させることなどを検討していく必要がある。当面は外部人材をより活用しやすい制度(公的機関が主催する講習や研修を受けたコーチ等が、顧問不在でも単独で部活動を指導できる資格を認めるなど)を設けてほしい。
  •  生徒の体力の向上に高校の部活動が果たしてきた役割は大きいが、その一方で教員が多忙化している。外部指導者の活用や部活動を社会体育へ移行させることなどを検討していく必要がある。

(その他)

  •  公立の中等教育学校及び併設型中高一貫校については、学校教育法施行規則において入学者選抜において学力検査を禁止されているが、入学者の適性を多様な方法で評価できるように入学者選抜方法の改善について検討が必要。
  •  十分な学力をつけずに高校に進学せざるを得なかった子どもたちにも丁寧に指導できる昼間定時の単独校や通信制課程を併置する定時制高校を県内全域でカバーできる程度整備すべき。
  •  医療や理科系研究者、社会のリーダーを育成する公立のスーパーハイスクールへの支援が必要。

職員によるインタビュー

  •  大学入学後、また大学卒業後に学び続ける力を高校と大学でいかに育てるかというスケールで検討することが必要。アメリカのコミュニティカレッジのように、地域の中から学びたい人が集まり、生涯学習のカリキュラムを再生できるような工夫が必要。大学も、研究大学院から地域の人が学ぶものまで幅が広がっているので、高等教育との関連の上で高校教育を考えていく視点を持つべき。
  •  教員は授業だけでなく、土日、長期休業中の課外授業、部活動などの対応に追われ、恒常的に多忙である。特に運動部活動系の指導を社会教育と連動させて、教員の負担を軽減するとともに生徒が専門家の指導を受けられるようにしてほしい。
  •  定時制高校に通う生徒の学力や目的意識の差が大きい。小学校レベルの漢字でつまづいている生徒がいる一方で大学受験を目指す生徒もいる。また、高卒資格だけが目的で登校する者や不登校・ひきこもりからようやく抜け出した者や仕事と学業の両立に必死に頑張る者もおり、加えて家庭環境・経済状況にも課題を抱えている。このような状況にあっては、教職員だけではなく、児童相談所等の関係機関やスクールソーシャルワーカーなどの専門家との連携が必要。また奨学金をはじめとする経済的支援の一層の拡充が欠かせない。
  •  総合的な学習の時間については、各学校で学校の実情に応じた教材を開発することも重要であるが、様々な教材を集約し参考事例として提供してくれる場が必要である。
  •  中学校時とのギャップが、学校への不適応を誘発し中途退学や不登校などを生み出す場合もあり、それを未然に防ぐ意味においても、授業改善は喫緊の課題。また、キャリア教育の観点での適切な進路指導による円滑な校種間接続を行うことも必要。
     そのための取組のひとつが、学校種の枠を超えた縦の連携である。中学校、高等学校双方の先生方が互いの授業を参観したり、その授業内容をもとに研究協議を行うことにより、目の前の生徒たちの過去を理解したり将来を展望することは、指導の連続性の観点から大切な取組である。

お問合せ先

初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育企画課教育制度改革室)