平成23年12月16日
○1 「障害者の権利に関する条約」の批准に向けた検討のため、平成21年12月に、内閣総理大臣を本部長とし、文部科学大臣も含め全閣僚で構成される「障がい者制度改革推進本部」が設置された。同本部は、当面5年間を障害者制度改革の集中期間と位置付け、改革の推進に関する総合調整、改革推進の基本的な方針の案の作成及び推進に関する検討等を行うこととしている。同本部の下に、障害者施策の推進に関する事項について意見を求めるために「障がい者制度改革推進会議」が設置され、平成22年6月7日、同会議による第一次意見が取りまとめられた。上記第一次意見を踏まえた平成22年6月29日の閣議決定において、各個別分野については、事項ごとに関係府省において検討することとされ、平成22年7月12日に、文部科学省より中央教育審議会初等中等教育分科会に対し審議要請があり、同分科会の下に、「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」が設置された。同特別委員会においては、8回に渡り検討を経て、平成22年12月に、その審議を「論点整理」として取りまとめたところである。
○2 同特別委員会は、「論点整理」において今後の検討課題とされていた、合理的配慮等の環境整備について、
の二つについて検討事項を審議するため、平成23年5月27日、本ワーキンググループを設置することを決定した。
○3 本ワーキンググループにおいては、まず、障害当事者・保護者より、障害種別における「合理的配慮」を含む配慮すべき事項について聴取し、その内容を整理した。その上で、委員による障害種別の検討を行いつつ、それら障害種を超えた共通事項を整理する過程の中で、「合理的配慮」の観点を抽出した。また併行して、障害者の権利に関する条約における「合理的配慮」について、本ワーキンググループとしての定義を行った。本報告は、○回に渡る審議について整理し、特別委員会に報告するものである。
○4 学校教育においては、設置者・学校により、これまでも個々の幼児児童生徒の発達や年齢に応じた個別の配慮が行われてきたところである。教育基本法第6条第2項においても、「(前略)教育の目的が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずると共に、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行わなければならない。」とされている。
○5 今般、障害者の権利に関する条約の批准のための障害者基本法の改正により、障害者に対して、合理的な配慮を行うことが示された。また、教育分野においては、第16条第1項で、国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない、こととされた。さらに、第16条第4項で国及び地方公共団体は、障害者の教育に関し、調査及び研究並びに人材の確保及び資質の向上、適切な教材等の提供、学校施設の整備その他の環境の整備を促進しなければならない、とされている。
○6 「合理的配慮」は新しい概念であり、また、上記のとおり、障害者基本法において、新たに「可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ」と規定された趣旨を踏まえて、本ワーキンググループにおいて、障害のある子どもに対する「合理的配慮」の観点について整理を行った。学校教育においてこれまでも行われてきた配慮を、今回、本ワーキンググループにおいて「合理的配慮」の観点により整理したことで、それぞれの学校における障害のある子どもたちの教育が一層充実したものになっていくことを願ってやまない。また、「合理的配慮」については、教育委員会、学校、各教員が正しく認識しなければならないことは言うまでもないが、保護者、当事者も含めて、地域における理解は進んでおらず、理解促進のための啓発活動が必要である。
○1 「合理的配慮」についての条約上の定義
「障害者の権利に関する条約」においては、 第24条(教育)において、教育についての障害者の権利を認め、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、障害者を包容する教育制度(インクルーシブ教育システム;inclusive
education system)等を確保することとし、その権利の実現に当たり確保するものの一つとして、「個人に必要とされる合理的配慮が提供されること」とされている。
また、第2条の定義において、「合理的配慮」とは、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」とされている。なお、「負担」については、「変更及び調整」を行う主体に課される負担を指すとされている。
さらに、第2条(定義)において、「障害を理由とする差別」として、障害を理由とするあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害を理由とする差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む、としている。
○2 本ワーキンググループにおける「合理的配慮」の定義
上記の定義に照らし、本ワーキンググループにおける「合理的配慮」とは、「障害のある子どもが、他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」であり、「学校の設置者及び学校に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」、とする。
○3 「均衡を失した」又は「過度の」負担について
「合理的配慮」の提供に当たっては、各学校の設置者及び学校が体制面、財政面をも勘案し、「均衡を失した」又は「過度の」負担について、個別に判断することとなる。各学校の設置者及び学校は、障害のある子どもと障害のない子どもが共に教育を受けるというインクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として、「合理的配慮」の提供に努める必要がある。
○1 障害のある子どもに対する支援については、法令に基づき又は財政措置により、国は全国規模で、都道府県は各都道府県内で、市町村は各市町村内で、共通的な教育環境の整備をそれぞれ行っている。これらを「共通的環境整備」と呼ぶ。これらの「共通的環境整備」を前提として、設置者及び学校が、各学校において、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、「合理的配慮」を提供している。(図参照)
○2 学校の設置者・学校は、個々の障害のある子どもに対し、「合理的配慮」を提供する。「合理的配慮」を各学校の設置者・学校が行う上で、国、都道府県、市町村による「共通的環境整備」は重要であり、本ワーキンググループにおいては、個別に「合理的配慮」を提供する前提となる「共通的環境整備」について現状と課題を整理した。
○3 また、「合理的配慮」については、個別の状況に応じて提供されるものであり、これを具体的かつ網羅的に記述することは困難であることから、本ワーキンググループにおいては、「合理的配慮」を提供するに当たっての観点を「合理的配慮」の観点として、○1 教育内容・方法、○2 支援体制、○3 施設・設備について、それを列挙・類型化すると共に、各「合理的配慮」の観点に、障害に応じた具体的な配慮を例示するという構成で整理した。
○1 本ワーキンググループにおいては、「合理的配慮」を行う前提として、学校教育に求めるものを以下のとおり整理した。
(ア)障害のある子どもと障害のない子どもが共に学び共に育つ理念を共有する教育
(イ)一人一人の状態を把握し、一人一人の能力の最大限の伸長を図る教育(確かな学力の育成を含む)
(ウ)健康状態の維持・改善を図り、生涯にわたる健康の基盤をつくる教育
(エ)コミュニケーション及び人との関わりを広げる教育
(オ)自己理解を深め自立し、社会参加を目標にした教育
(カ)自己肯定感を高めていく教育
○2 これらは、障害者の権利に関する条約第24条第1項の目的である、
(a)人間の潜在能力並びに尊厳及び自己の価値についての意識を十分に発達させ、並びに人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること。
(b)障害者が、その人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。
(c)障害者が自由な社会に効果的に参加することを可能とすること。
と方向性を同じくするものであり、「合理的配慮」の決定に当たっては、これらの目的に合致するかどうかの観点から検討が行われることが重要である。
「合理的配慮」は、一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されるものであり、その検討の前提として、設置者・学校は、興味・関心、学習上又は生活上の困難、健康状態等の当該幼児児童生徒の状態把握を行う必要がある。このため、設置者・学校と本人・保護者により、個別の教育支援計画を作成する中で、「合理的配慮」の観点を踏まえ、可能な限り「合理的配慮」について合意形成を図った上で決定し、提供されることが望ましく、その内容を個別の教育支援計画に明記することが望ましい。なお、設置者・学校と本人・保護者の意見が一致しない場合には、第三者機関により、その解決を図ることが望ましい。各学校の設置者及び学校が体制面、財政面をも勘案し、「均衡を失した」又は「過度の」負担について、個別に判断することとなる。その際は、合理的配慮を決定する際において、現在必要とされている「合理的配慮」は何か、全てできないとすれば何を優先するか、について意識共有を図る必要がある。
就学時に「合理的配慮」を決定した後も、児童生徒一人一人の発達の程度、適応の状況等を勘案しながら柔軟に見直しができることを共通理解とすることが重要である。定期的に教育相談や個別の教育支援計画に基づく関係者による会議などを行い、必要に応じて「合理的配慮」を見直していくことが適当である。
○1 移行時における情報の引継ぎを行い、途切れることのない支援を提供することが必要である。個別の教育支援計画の引継ぎ、学校間や関係機関も含めた情報交換等により、「合理的配慮」の引継ぎを行うことが必要である。
○2 発達や年齢に応じた配慮を意識することが必要である。子どもの精神面の発達を考慮して、家族や介助員の付添い等を検討する。また、年齢に応じ、徐々に自己理解ができるようにし、その上で、自分の得意な面を活かし、苦手なことを乗り越える方法を身に付けられようにする。さらに、自己理解に加えて、大多数の人々がどのように行動するか他者理解できるようにする。特に、知的発達に遅れがある場合には、幼少期や小学校段階では基礎的な学力の習得、年齢が高まるにつれて社会生活スキルの習得を重点的に行うなど、卒業後の生活を見据えた教育を行う。
○3 私立学校に在籍する幼児児童生徒についても、公立学校と同様の支援が受けられることが望ましい。
○1 「合理的配慮」は、各学校において、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、個別に提供されるものであるのに対し、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校の設置は、「共通的環境整備」として行われているものである。
○2 通常の学級のみならず、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校においても、「合理的配慮」として、「障害のある子どもが、他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行う」ことが必要である。
○3 通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校それぞれの学び場における「合理的配慮」は、前述の「合理的配慮」の観点を踏まえ、個別に決定されることとなるが、それぞれの学びの場における「共通的環境整備」を前提とした上で提供されるため、それぞれに提供される「合理的配慮」は異なることとなる。
○4 障害のある子どもが通常の学級に学ぶことを可能な限り配慮していくことが重要であるが、十分な教育を受けられるようにするためには、本人・保護者の理解を得ながら、必ずしも通常の学級で全ての教育を行うのではなく、通級による指導など多様な学びの場を活用した取り出し指導を柔軟に行うことも必要な支援と考えられる。例えば、通常の学級に在籍している障害のある児童生徒に支援員を配置したものの、他の子どものための教室の学習環境の維持であったり、本人の安全面の補助のためだけになり、十分な教育を受けられるようにするための支援になっていない場合などは、通級による指導を行ったり、特別支援学級、特別支援学校と連携して指導することなどの方が効果的と考えられる。
障害のある保護者との意思疎通を図る際の「合理的配慮」や障害のある教職員を配置した場合の「合理的配慮」についても、必要に応じ、関係者間で検討されることが望ましい。
「合理的配慮」の充実を図る上で、その前提となる「共通的環境整備」の充実は欠かせない。そのため、必要な財源を確保し、国、都道府県、市町村は、障害のある子どもと障害のない子どもが共に教育を受けるというインクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として、「共通的環境整備」の充実を図っていく必要がある。その際も、「合理的配慮」と同様に体制面、財政面を勘案し、均衡を失した又は過度の負担を課さないよう留意する必要がある。現在の財政状況に鑑みると、そのためには、共生社会の形成に向けた国民の共通理解を一層進め、社会的な機運を醸成していくことが必要であり、それにより、財政的な措置を図る観点を含めインクルーシブ教育システム構築のための施策の優先順位を上げていく必要がある。
(ア)現状
義務教育段階においては、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった多様な学びの場を確保している。幼稚園、高等学校段階については、通常の学級、特別支援学校により対応している。
また、各教育委員会が専門家による巡回相談を行っているほか、特別支援学校はセンター的機能として幼、小、中、高等学校等への助言・援助を行っている。
さらに、「特別支援連携協議会」の開催等により、教育機関のみならず医療、福祉、労働等の各関係機関との連携が進められている。
一部の自治体では、特別支援学校に主籍を置き、副籍を地域の学校に置く、又は逆の形などの弾力的な取組を行っている。
(イ)課題
障害のある子どもが十分な教育を受けられるようにするためには、個別の教育的ニーズのある児童生徒に対して、その時点で教育的ニーズに最も的確にこたえる指導を提供できる多様で柔軟な仕組みを整備していく必要がある。
(ア)現状
文部科学省の平成22年度体制整備状況調査によれば、全体として体制整備が進んでおり、とりわけ、公立の小・中学校においては、「校内委員会の設置」、「特別支援教育コーディネーターの指名」といった基礎的な支援体制はほぼ整備されている。また、各教育委員会の巡回相談、特別支援学校のセンター的機能等外部の専門家を活用した専門性のある指導体制が進められている。
(イ)課題
公立の小中学校における体制整備は進んでいるが、幼稚園、高等学校における体制整備や国立・私立の学校における体制整備を一層進める必要がある。
(ア)現状
特別支援学校においては、個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成することが学習指導要領等に明記されている。特別支援学校以外の学校についても、指導についての計画や家庭、医療、福祉等の業務を行う関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成することなどにより、個々の子どもの障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行うよう、学習指導要領に明記されている。
(イ)課題
個別の教育支援計画、個別の指導計画については、現在、特別支援学校の学習指導要領等には作成が明記されているが、幼・小・中・高等学校等で学ぶ障害のある児童生徒等については、必要に応じて作成されることとなっており、必ず作成することとなっていない。これを障害のある児童生徒等全てに拡大していくことが望ましい。
(ア)現状
小・中・高等学校等や特別支援学校では、教科書を使用するほか、各学校の判断により有益適切な教材を使用することができ、国は教材整備費について地方財政措置を講じている。
教科書については、文部科学省において、視覚障害者用の点字教科書、聴覚障害者用の言語指導や音楽の教科書、知的障害者用の国語、算数、音楽の教科書を作成している。
また、「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」に基づき、教科書発行者の発行する検定教科書に対応した拡大教科書のうち、小学校用の拡大教科書はその全点が発行されており、中学校用の拡大教科書についても、平成24年度以降、全点が発行される予定である。さらに、同法に基づき、教科書発行者が保有する教科書のデジタルデータを、文部科学省等を通じて、ボランティア団体等に対して提供し、拡大教科書等の作成に係る負担の軽減が図られている。
(イ)課題
発達障害等のある児童生徒が使用する教材等の整備充実を図ることが求められる。また、高等学校用の拡大教科書の発行の促進が求められる。
(ア)現状
各学校の設置者が、施設・設備の整備を行っている。公立の幼、小、中、特別支援学校等の施設整備に要する経費については、国がその一部を補助している。
(イ)課題
各学校におけるバリアフリー対策の推進が求められる。また、特別支援学校については、児童生徒数の増加に伴う、教室不足を解消することが求められる。
(ア)現状
公立の小・中学校においては、小学校第1学年の学級編制の標準が35人であり、それ以外の学年の学級編制の標準は40人とされている。また、特別支援学級については、学級編制の標準は8人とされている。さらに、特別支援学校の学級編制の標準は、小・中学部において6人、高等部において8人、重複障害児童生徒の場合は3人とされている。また、通級による指導のための教職員定数の改善、特別支援学校が地域の特別支援教育のセンター的機能を果たすための教職員定数の改善が、それぞれ進められているところである。さらに、特別支援教育支援員の配置が地方財政措置されているところである。
(イ)課題
公立小・中学校における少人数学級の推進は、子ども一人一人に対するきめ細かい指導の充実や家庭との連携を緊密にする効果があることから、特別支援教育の推進にも資するものであり、一層の教育環境の充実を図っていくことが求められる。また、通級による指導のための教職員定数の改善、特別支援学校が地域の特別支援教育のセンター的機能を果たすための教職員定数の一層改善が求められる。さらに、教員、支援員等の一層の資質能力の向上を図ることが求められる。
(ア)現状
小・中学校については、取り出し指導に加えて、通級による指導、特別支援学級における指導が可能である。通級による指導、特別支援学級においては、特別の教育課程による教育を行うことができる。
特別支援学校については、取り出し指導に加えて、特別の教育課程による教育を行うことができる。
(イ)課題
通常の学級で指導を行う場合、現在、障害のある児童生徒でも、各小・中学校は、小・中学校の学習指導要領に基づく教育課程を編成・実施する必要がある。通常の学級で学ぶ障害のある児童生徒一人一人に応じた特別の指導の在り方について検討する必要がある。
(ア)現状
学習指導要領に基づき、交流及び共同学習の機会等を設けることとされている。
(イ)課題
改正障害者基本法の理念に基づき、障害のある子どもと障害のない子どもが可能な限り共に教育を受けられるように配慮する観点から、交流及び共同学習を一層推進していくことが重要である。また、一部の自治体で実施している居住地校に副次的な学籍を置くことについては、居住地域との結びつきを強め、居住地校との交流及び共同学習を推進する上で意義がある。この場合、児童生徒の付添いや時間割の調整などが課題であり、それらについて検討していく必要がある。
○1 障害のある幼児児童生徒については、障害の状態が多様なだけでなく、障害を併せ有する場合や、障害の状態や病状が変化する場合もあることから、個々の状態や時間的な経緯により必要な支援が異なることに留意する必要がある。また、障害の状態等に応じた「合理的配慮」を決定する上で、ICF(国際生活機能分類)を活用することが考えられる。(参考資料参照)
○2 各学校の設置者及び学校が体制面、財政面をも勘案し、「均衡を失した」又は「過度の」負担について、個別に判断することとなる。その際は、合理的配慮を決定する際において、現在必要とされている「合理的配慮」は何か、全てできないとすれば何を優先するか、について関係者間で意識共有を図る必要がある。
○3 「合理的配慮」の観点は、全ての場合を網羅することはできないため、その代表的なものと考えられるものを以下に示す。また、障害種別に応じた配慮を例示しているが、障害を併せ有する場合には、各障害に応じた配慮を柔軟に組み合わせることが適当である。
(1)-1-1 学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮
その障害によって、日常生活や学習場面において様々なつまずきや困難が生じることから、小・中学校等の通常の教育課程による教育にとどまらず、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度、習慣を養うことへの配慮を行う。
例:
視覚障害 |
見えにくさからの学習上又は生活上の困難を改善・克服する配慮(座席を前にする、教材や掲示物の明確なコントラストや文字サイズの配慮、分かりやすい板書、採光の調整、見えやすい用具(太字のペン、表示が大きなものさしなど)や視覚補助具(弱視レンズ、拡大読書器など)の活用) |
---|---|
聴覚障害 |
聴覚障害に起因する情報不足を補うための配慮(教師の話が受容しやすい座席の位置、板書及び視覚的教材の活用、児童生徒の聴覚障害の状態に応じたコミュニケーション手段の選択と活用) |
言語障害 |
発音の明瞭度を向上させるための指導(一斉指導における発音の指導への配慮、個別指導による構音指導) |
LD |
文字を見て瞬間的にその読みを想起することや形の弁別などの未発達な能力を向上させるための指導(平仮名の読み練習や形を弁別する力を高めるための指導、音韻意識を高める指導 など) |
(1)-1-2 指導目標の設定
法律等で定められている教育の目的、学校の目的、学習指導要領に示されている各教科等の目標を前提とし、教育委員会の規則等に従い、地域や学校及び幼児児童生徒の実態に即した学校における指導目標を設定すると共に、幼児児童生徒の障害の状態に応じて、評価規準の調整、指導方法の変更、学習内容の調整、さらには指導目標・指導内容の個別設定を行う。
例:
知的障害 |
年齢を考慮しつつ、生活指導などにおいて、できるだけ実生活につながる技術や態度のための指導目標を設定(分担した係仕事をこなす、簡単な調理ができる、小遣い帳を付けることができる、家庭内の仕事ができるなど) |
---|---|
肢体不自由 |
肢体不自由の状態により、操作を伴う学習等が困難な場合、評価方法を工夫する。(算数で作図が困難な場合、作図の方法を口頭で説明する等) |
言語障害 |
言語障害以外の他の障害が原因で言語障害を伴う場合には、特別支援学校、特別支援学級など児童生徒の支援を行っている関係機関と連携し、実態把握を行った上での障害の状態に応じた指導目標を設定する。 |
(1)-1-3 学習内容の変更・調整
一人一人の障害の状態に配慮し、学習内容の変更や、学習の量・時間の調整を行う。
例:
視覚障害 |
視覚障害に配慮した学習内容の調整や変更(詳しい説明(状況や対象物の様子、変化)を加える、十分な時間延長をする、図示がある教材は工夫して点字教材を作成する、漢字は意味や使い方に重点を置いて学習する、筆算はそろばんを使う、実験は結果が音で分かるようにする、観察は触ることができるようにする、体育は視覚障害に応じた内容で行う、安全を確保する) |
---|---|
聴覚障害 |
聴覚障害の状態に応じた学習内容の変更・調整(外国語のヒアリングなどにおける音量調整、学習室の変更、文字による代替問題の用意など) |
知的障害 |
教科内容の理解の程度などに応じて、学習内容の焦点化を図り、基礎的で基本的な事項を身に付けられるようにする。 |
肢体不自由 |
肢体不自由の状態により、学習の量や学習時間の調整をする。(課題数を減らす、時間を延長する等) |
LD |
学習内容の精選(基礎・基本的な内容の習得に重点をかける。習熟のための時間が不足する場合は宿題などで定着を図る など) |
(1)-2-1 感覚と体験を総合的に活用した概念形成への配慮
一人一人の認知特性を把握し、それに応じた感覚と体験を総合的に活用できる学習活動を通じて、概念形成を促進するよう配慮を行う。
例:
視覚障害 |
模型や実物に触るなど能動的な学習活動を十分にできるように配慮すると共に、学習活動を自分で最初から最後まで行い、手順やポイントの理解を明確にできるようにする。 |
---|---|
聴覚障害 |
言語経験が少ないことによる、体験と言葉の結びつきの弱さを補うための指導(経験したことを日記・作文などにまとめる、話合いの内容を確認するため書いて提示し読ませる、慣用句など言葉の表記と意味が別の言いまわしになる言葉の取り立て指導など) |
病弱 |
幼少時からの入退院の繰り返しなどによる日常生活上体験が不足、友だちとの遊びなどによる集団としての活動体験が不足しているため、学習に必要な概念が形成できていないことを理解し、それに配慮して指導 |
(1)-2-2 情報保障の配慮
一人一人の障害の状態に応じた情報保障を行うと共に、コミュニケーションの方法を検討するなど一人一人に適した配慮を行う。
例:
視覚障害 |
見えにくい児童生徒に提供する情報の配慮(小さな文字を使わない配慮、拡大コピーや、拡大文字を用いた資料の提供) 見えない児童生徒に対する情報の配慮(聞くことで内容が理解できる説明、点字及び点図資料、音声による資料提供) |
---|---|
聴覚障害 |
聴覚障害の状態に応じた視覚的情報保障の提供(分かりやすい板書、教科書の音読箇所の位置の明示、授業の流れが分かるワークシートなどの準備、中学生などでは授業の要点をプリントにしたものを提供、ノートテイクなど、教師やクラスメイトによる多様なコミュニケーション手段の使用) |
自閉症・情緒障害 |
自閉症の認知特性に応じて、視覚による理解を促すなどする(写真や図面、模型、実物など) |
LD |
読み書きに関する補助手段の提供(アンダーライン、拡大、振り仮名など) |
(1)-2-3 認知の特性や身体の動き等に応じた教材の配慮
一人一人の認知特性、身体の動き等に応じた教材の配慮を行う。
例:
視覚障害 |
見えにくさに応じた教材の配慮(視力に応じた拡大教科書の提供、教材に小さな字を使わない配慮、拡大コピーした教材の提供、拡大文字を用いてレイアウト変更した教材の提供) |
---|---|
聴覚障害 |
視覚的な情報、文字情報の積極的な活用(板書、掲示物を多くする配慮、発言を文字に残す、手話などによる説明、文字カードなどの教材の活用、手話・字幕放送(ビデオ)などの活用) |
LD |
目で見て動作を細かく調整することが困難であることへの配慮(使用方法が容易で、器用さをあまり要求しないもの。大きな升目のノートや使いやすい定規など) |
(1)-2-4 ICTや補助用具等の活用
一人一人の障害の状態に応じて、ICTや補助用具等を活用し、学習の充実を図る。
例:
視覚障害 |
視覚障害を補う視覚補助具などやICT活用(画面拡大や色の調整、音声ソフトウェア)情報収集(辞書、辞典などを活用する)などで問題解決的な学習に主体的に取り組めたりできるようにする。 |
---|---|
聴覚障害 |
視覚的文字情報の活用(字幕放送(ビデオ)などの活用、プレゼンテーション用ソフトを活用した教材の利用、PCなどを活用した情報保障の活用、行事におけるプロジェクタの活用) |
知的障害 |
知的障害の状態に応じて、数量や言語などの理解のための教材などを活用する(フラッシュカード、文字や数カード、数え棒、パソコンなど) |
肢体不自由 |
肢体不自由の状態により、自助具や補助具の使用を認める(固定されたはさみや包丁、握りやすくした筆記具、片手用の笛など) |
病弱 |
病気のため移動範囲が制限されていたり、活動量が制限されていたりする場合にICTなどを活用して指導 |
(1)-2-5 学習機会や体験の意図的な確保
治療やリハビリテーションのため不足している学習や障害の特性から不足している体験等の機会を補うことができるよう、学習内容・活動を設定する。
例:
視覚障害 |
見えにくさから気づきにくい事柄(遠いもの、速く動くもの、小さなもの、たくさんの中にあるもの、コントラストのはっきりしないもの)を知らせ、学習できるようにする(よく見る、触察で補うこと、体験する) |
---|---|
聴覚障害 |
聞こえにくさから気付きにくい事柄があれば、知らせるように配慮する(食事中の音、ドアの開閉音など、他者が迷惑に感じることなどの指導) |
(1)-3-1 他の子どもと比べ時間を要することへの配慮
障害の状態により、他の子どもと比べ時間を要することについては、本人の能力の発達を妨げないように、授業や試験について時間等の配慮を行う。
例:
視覚障害 |
視覚障害の状況に応じて時間の配慮をする(複雑な図の理解や理科実験など、触察や順序立てた理解への配慮) |
---|---|
聴覚障害 |
発音練習、聴き取りの練習などの個別対応(教科書などの音読の練習、九九の発音などの予習復習時間の確保など、個別指導場所の確保) |
肢体不自由 |
肢体不自由の状態により、学習の量や学習時間を調整する(課題数を減らす、時間を延長するなど) |
病弱 |
病気や学習空白などのため、操作などに時間を必要とする活動や、理解に時間がかかる場合の配慮 |
ADHD |
十分な時間の確保(活動に取り掛かるまでの時間や活動が断続的になり易いことへの配慮) |
(1)-3-2 実施が困難な活動への補助や指導上の配慮
障害の状態により、実施が困難な活動についての活動内容・方法の工夫、指導上の配慮を行う。
例:
視覚障害 |
見えにくい児童生徒に、基礎的な練習を十分に行う(ボール運動や器械運動で個別指導を多くする、描く経験を多くする) |
---|---|
聴覚障害 |
聴覚障害の状態に応じた補助と配慮(外国語のヒアリングなどにおける音量調整、学習室の変更、文字による代替問題の用意など) |
肢体不自由 |
肢体不自由の状態により、実施の困難な活動での参加の工夫をする(体育のゲームや音楽の器楽などへの参加が難しい場合にはルールや役割分担などの工夫など) |
(1)-3-3 予測できる学習活動の実施など学習に見通しが持てる配慮
学習予定を分かりやすい方法で知らせておくことや、それを確認できるようにすることで、心理的不安を取り除くと共に、その都度、状況を判断できるようにする。
例:
視覚障害 |
学習予定をあらかじめ知らせておく、終了時のまとめを十分に行う配慮、学習の過程や状況をその都度説明することで、状況を判断できるようにする配慮。 |
---|---|
知的障害 |
学習活動などの予定などを視覚化して分かりやすく表示(図や写真を活用した日課表、活動予定表など)すると共に、予定や準備物を確認できる活動を取り入れる。 |
自閉症・情緒障害 |
学習内容などの順序などを分かりやすくする(活動予定表などの活用) |
ADHD |
学習活動の順序を一定にし、次の活動が予測できるようにする。 |
(1)-3-4 人間関係の構築への配慮
集団におけるコミュニケーションについて配慮すると共に、他の子どもに対して障害特性等について理解を深めるような教育を行う。
例:
視覚障害 |
かかわりが受動的にならないように助言する。 |
---|---|
聴覚障害 |
相手に応じて伝わりやすいコミュニケーション手段の選択及び活用ができる力の育成(手話などで伝える、絵や図で伝える、文字で伝えるなど) |
知的障害 |
集団の一員として帰属意識がもてるように工夫すると共に、年齢段階を考慮しつつ、徐々に友人関係を築くことが難しくなることに配慮する。 |
自閉症・情緒障害 |
人間関係の形成のための技術や態度の獲得を重視する。 |
(1)-3-5 心理状態・健康状態への配慮
障害の状態と健康状態により指導の内容・方法を柔軟に調整する。障害を起因とした不安感や孤独感を解消し、自尊心を高める配慮を行う。
例:
肢体不自由 |
肢体不自由の状態と健康状態により指導の内容・方法を柔軟に調整する。 |
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病弱 |
病気の子どもの気持ちを理解し、状態に応じて弾力的に指導(入院時の不安、病気の進行への不安、手術への不安、退院後の不安など) |
自閉症・情緒障害 |
二次的な障害(情緒不安や不登校、ひきこもりなど)が起きやすいことから、予防に努めると共に、二次障害を早期に発見する。 |
ADHD |
怒りや衝動性への配慮(怒りを抑える方法や自分がしたい行動を我慢する方法、ストレスを解消する方法などの指導) |
(1)-3-6 自立と社会参加に必要な指導内容の設定
障害の状態や年齢を考慮しつつ、人間関係作り、学校、家庭、地域での役割作りに配慮する。卒業後の生活や進路を見据えて、一貫したキャリア教育の充実を図る。そのため、体験的活動や就業体験を充実させると共に、本人が自己選択・自己判断する機会を増やし、自分なりの生き方を考え、主体的に進路を選択できるようする。また、それぞれの発達の進んでいる側面を伸ばすことにより、自分の長所の自覚を促す。さらに、社会適応に必要な技術や態度が身に付くよう指導内容を工夫する。
例:
知的障害 |
学校生活において、年齢段階を考慮しつつ、知的発達の遅れやそれまでの経験などに応じた役割を分担できるようにする。 |
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ADHD |
社会生活上のルールの理解と行動の仕方についての指導(謝罪や依頼の仕方、思ったことをすぐに言ってはいけないことなど) |
(1)-3-7 共生の理念の涵養
それぞれの障害について、周囲の児童生徒や教職員が理解を深め、配慮や支援の環境作りを行う。また、障害の状態により集団活動への参加が難しい時には、集団を構成するメンバーで障害のある児童生徒の参加の方法を考える機会を設定する。さらに、障害のない児童生徒が支援する機会を設定する(教室移動、日常生活動作、学習活動、学級の係活動等)。
例:
視覚障害 |
見えにくいこと、見えないことについての理解(できることと支援が必要なこと)及び、配慮や支援の環境作り |
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自閉症・情緒障害 |
「いじめ」に遭遇しやすいことに対応する。 |
(2)-1 専門性のある指導体制の整備
校長がリーダーシップを発揮すると共に、学校全体として専門性の確保に努める。そのため、個別の教育支援計画、個別の指導計画を作成し、指導についての校内の教職員の共通理解を図り、学習の場面等を考慮した役割分担を行う。必要に応じ、学校内の資源(通級による指導、特別支援学級等)を活用したり、適切な人的配置(支援員等)を行う。
(2)-2 医療的ケアを行うための体制整備
医療的ケアを安全に行うことができるよう体制を整備する。
例:
肢体不自由 |
医療的ケア及び肢体不自由の状態に考慮して、医療的ケアを実施する場所や施設などを整備する(保健室、教室、障害者用トイレなど) |
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(2)-3 心理的負担を軽減できる学校・学級における配慮
障害のある子どもの不安等の心理的負担を軽減できるよう、全体の学習活動に支障のない範囲で学習環境の整備等を行う。
例:
視覚障害 |
視覚障害があっても分かりやすい環境作り(下駄箱、ロッカーなどよく使うものの位置など)とそれを支援できる友達関係作り |
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聴覚障害 |
通常の学級での指導に加え、聴覚に障害がある児童生徒が集まって指導を受けたり交流したりする機会の確保(難聴児童生徒対象のサマーキャンプ、交流会、学習会など) |
病弱 |
心身症や精神疾患などの心のケアを必要とする子どもの増加に対応するため、必要に応じて心理の専門家からの指導・助言を得る |
ADHD |
接し方の配慮(学校教職員全員に最も適切なかかわり方が理解されている) |
(2)-4 障害に対する児童生徒、教職員、保護者、地域の理解推進を図るための配慮
障害のある子どもについて、他の子どもの理解を推進する。必要に応じて、全員に、その障害特性等について理解を深めるような教育を行う(障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習、福祉施設等の連携を図った指導など)。教職員、保護者、地域に対しても理解増進を図るような活動を行う。
例:
聴覚障害 |
聞こえにくさの障害について、学校での様々な指導場面を利用して理解啓発に努める。 |
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知的障害 |
外部から分かりにくく、かつ体験が困難な知的障害の特性、及びそれに応じた教育内容などを十分に理解できるように配慮する。 |
LD |
様々な個性があることや特定の感覚が過敏な人がいることなどについて理解するための学校全体での教育 |
(2)-5 他の学校からの支援体制の整備
必要に応じ、特別支援学校のセンター的機能や他校の通級による指導、特別支援学級を活用するなど域内の教育資源を活用して支援体制を整備する(特別支援学校の施設・設備等の活用)。また、障害の状態により、小・中学校では困難な活動を特別支援学校でできるようにする(自立活動、作業学習等)。さらに、教育にかかわる学校のネットワークによるノウハウの共有を行う。
(2)-6 関係機関や外部専門家等との連携
教育センター等地域にある教育資源を最大限活用すると共に、医療、福祉、労働等の関係機関と連携する、あるいは、都道府県等の特別支援教育に係る専門家チームが校内委員会に助言するなどの配慮を行う。
例:
視覚障害 |
点字図書館など地域資源の活用 |
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言語障害 |
児童生徒を取り巻く環境の整備(言葉を育てる親の会などとの連携による、理解啓発のための学習会、言語障害のある児童生徒同士の交流会、サマーキャンプなど) |
自閉症・情緒障害 |
発達障害者支援センターなどの職員などとケース会議を開くなどする。 |
(2)-7 緊急時の支援体制の整備
緊急時の対応について、人の動き、避難誘導、危機の予測、避難の方法、避難時の人的体制等、校内体制の確立のためのマニュアルを整備し、一人一人への対応を考える。また、緊急時の対応が十分にできるように避難訓練等に取り組む。
例:
病弱 |
病院への搬送や人工呼吸、心肺蘇生、AEDやエピペンの使用などの緊急対応が予想される病気の子どもについて、学校の教職員がすぐに対応できるように支援体制を整備する。 |
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自閉症・情緒障害 |
自閉症などのある児童生徒の緊急時における心理状態(変化に対応できずパニックを起こすなど)を十分に把握しておき、一般の住民と同様には扱えないことに最大限の注意を払う。 |
ADHD |
衝動性、多動性に配慮した避難指示 |
(3)-1 校内環境のバリアフリー化
障害のある幼児児童生徒、教職員等が安全かつ円滑に学校生活を送ることができるよう、障害の状態や特性、個別のニーズに応じた環境にするために、スロープ、手すり、便所、出入口、エレベーター等の施設の整備計画時に配慮を行う。また、既存学校施設のバリアフリー化についても、障害のある幼児児童生徒の在籍状況等を踏まえ、所管する学校施設に関する合理的な整備計画を策定し、計画的にバリアフリー化を推進することが重要である。
例:
視覚障害 |
状況に応じ、下駄箱や教室のロッカーを分かりやすい位置にしたり固定したりする。各教室などに分かりやすい目印(色の変化、大きな文字での表示、点字の表示)を付ける。 |
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肢体不自由 |
肢体不自由の状態により、校内の移動ができるよう工夫する(教室配置の工夫、教職員などの協力など |
自閉症・情緒障害 |
自閉症などの特性(形が統一されていたり、写真や図面を用意したりしたほうが理解しやすい)を考慮し、建物そのものを分かりやすい配置にすること、及び視覚的に動線が理解できるよう配慮を行う。 |
(3)-2 発達、障害の状態及び特性等に応じた施設・設備の配慮
一人一人の幼児児童生徒の発達、障害の状態及び特性等に応じた指導内容・方法が十分に展開できるよう、自立活動等の学習指導を支援する様々な教育機器等の導入や施設整備を必要に応じて行う。
また、幼児児童生徒が、それぞれの障害の認知特性、行動特性、感覚等に応じて、能力を最大限活用して自主的、自発的に学習や生活ができるよう、各教室等の施設・設備について、見えやすさ、分かりやすさなどに配慮を行う。
さらに、幼児児童生徒の学習及び生活の場として、日照、室温、音の影響等に配慮した良好な環境を確保するよう配慮を行う。特に、幼児児童生徒の障害の状態や特性等に配慮しつつ、その健康の保持増進に配慮した快適な空間とすることが重要である。
また、幼児児童生徒が心にゆとりをもって学校生活を送ることができ、他者との関わりの中で豊かな人間性を育成することができるよう、生活の場として快適な居場所を確保するよう心のケアを必要とする子どもへの配慮を行う。
例:
聴覚障害 |
指導環境の整備(机・椅子の脚へのノイズ対策のための使用済みテニスボールの利用、絨毯・畳の指導室、防音・遮音式の個別指導教室や通級指導教室などの設置) |
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知的障害 |
衝動的な行動などに対して安全性を確保する(高所からの落下防止など) |
肢体不自由 |
肢体不自由の状態に応じた休養や活動ができるスペースを確保する(休養と身体の動きの機能回復のため臥位になることができるスペース、マットやベッド、姿勢を確認をするための鏡、機器の充電や調整のための装置など) |
病弱 |
相談室や箱庭などを使用して指導できる施設・設備の整備 |
言語障害 |
防音・遮音式の個別指導教室や通級指導教室などの設置 |
自閉症・情緒障害 |
衝動的な行動などに対して安全性を確保する。 |
LD |
教室環境の整備(過剰な情報を精選する、掲示物や表示物の字体や大きさへの配慮 など) |
ADHD |
注意の困難さに配慮した教室環境の整備(過剰な情報を精選する、掲示物や表示物の整理 など) |
(3)-3 災害等への対応に必要な施設・設備の配慮
地震等の災害発生時に障害の特性に応じた施設・設備を整備する。
例:
聴覚障害 |
緊急放送を視覚的に受容することができるシステムの整備 |
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医療的ケアが必要な場合 |
非常用電源や手動で使える機器の整備 |
以下の事項については、障害種別における「合理的配慮」をまとめる際に、併せて整理を行ったものであり、特別委員会において検討されることが望まれる。
○1 生活行動の基礎を築く早期の専門教育が重要であり、適切なコミュニケーション手段、社会生活技能の獲得に向けて最大限に発達を促すよう配慮することが望ましい。本人の意欲・関心を育て、積極的に物事に関わるように配慮しつつ、どこまでできるようになるのかを見極めながら支援することが望ましい。また、保護者が障害に気付いた際に保護者への支援と適切な情報提供が求められる。
○2 体験や経験が十分にできるように配慮することが望ましい。能動的な体験や経験ができるよう支援する。また、多様な実態に対応できるよう体験や経験を準備する。特に、視覚障害について、自分で最初から最後まで行い、手順やポイントの理解を明確にできるようにする。経験したことを言語化して、次の活動の予測につなげられるようする。
○3 保護者の障害理解や心理的安定を図るため、支援の充実を図ることが望ましい。保護者の気持ちに寄り添いながら支援を行う、預かり保育や行事等への付添いの代理等の支援の充実、先輩保護者の話を聞く機会の提供、悩みを聞くなどの相談の実施、障害の理解のための研修の実施などが考えられる。また、障害のある子どもが、できるようになったことを共有し成長を確認したりすることも考えられる。
○4 個別の教育支援計画を活用し、医療、保健、福祉の各機関等の関係機関が連携し、情報共有を図ることが望ましい。また、親の会や学校等関係機関とも連携することが望ましい。
○5 教育行政と福祉行政が連携を更に密にして、早期教育について具体的に取り組むことが必要である。
○1 学校が放課後支援サービスや外部機関との連絡を密にし、児童生徒等の生活を一層充実させることが望ましい。その際、障害について理解のある者が配置されるよう配慮する。
○2 通学時の移動支援や通訳介助者等について、福祉サービスの活用や社会的支援の整備等の支援の充実を図ることが望ましい。
○3 生涯学習等の機会が確保されることが望ましい。具体的には、職業教育に関する学習の機会が確保されること、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する方法についてあらかじめ在学中に指導しアフターケアを行うこと、学習教室や成人学校など生涯学習に関する情報が本人や保護者に届くようにすること、引継ぎがなされることなどが望ましい。
○1 教員の専門性については、特に子どもの見立てが重要である。重複障害についても、子どもの見立てができることが基本になる。
○2 「合理的配慮」については、特別支援教育の専門性として位置付けていくことが必要である。これは担当教員、特別支援教育コーディネーター、学校外のボランティアといった特別支援教育に関わる者はもちろんのこと、全体として、「合理的配慮」に対する認識を高めていくことが重要である。全国民が認識することが重要ではあるが、まず、特別支援教育に関わる教員や担い手は、「合理的配慮」についての認識と行動力を持つべきである。
○3 専門性のある教員の確保と併せて、教員の養成課程において、障害児教育や特別支援教育のことなどを、学び体験できるような場を確保するべきである。
○4 インクルーシブ教育システムを構築する上で、障害当事者である教員を確保することも大きな意味がある。
初等中等教育局特別支援教育課