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資料6:西滝委員 提出資料

合理的配慮および必要な支援について

財団法人全日本ろうあ連盟 西滝憲彦

 障害者権利条約において、締約国は教育についての障害者の権利を実現するにあたり、「個人の必要とされる合理的配慮が提供されること」(第24条2項(c))と定めています。

 また、第5条「平等及び無差別」3項においても、「平等を促進し、及び差別を撤廃することを目的として、合理的配慮が提供されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。」とあります。

 即ち、どのような実情や制限があろうと、それぞれの障害者個人に対する合理的配慮が施行されないのであれば、それは障害者権利条約に違反し、障害者の権利を妨げる差別となります。

 合理的配慮を提供するための措置、または、その合理的配慮が提供されなかった場合の「差別」に対する救済措置を講じる必要があります。本会議にて合理的配慮とはどこからどこまでの範囲かという審議がありましたが、特別支援教育の在り方を検討する発端となった障害者権利条約にて定められていることを原点とし、そのうえで審議することが適当であると考えます。

【インクルーシブ教育における必要な支援】

1.全ての障害に共通する事項

○1 全ての障害に共通する合理的配慮および必要な支援

  • 学級を構成する児童・生徒全員が参加できるよう教授方法の創意・工夫
  • 試験方法の工夫、試験時間の延長、試験環境の整備および評価方法の工夫
  • 点字、手話、デイジー教材(注1)等のデジタル教材等のコミュニケーション方法および手段の確保
  • 個々の障害の状態やニーズに対応した教科における配慮(例:視覚障害の図工・美術・体育、聴覚障害の音楽・体育・英語、肢体不自由の図工・美術・音楽・体育等)
  • バリアフリーおよびユニバーサルデザインの観点を踏まえた個々の障害の状態やニーズに対応した適切な施設整備
  • 障害の状態やニーズに対応した身体活動(行動)スペースや遊具・運動器具等の確保
  • 個々の障害やニーズに対応した教材等の確保(例:デジタル教材、ICT機器等の利用)
  • 学級担当教員(担任)への負荷が集中しないための副担任の配置
  • 障害の状態やニーズに対応した専門性を有する教員、カウンセラー等の配置
  • 移動や日常生活の介助、情報やコミュニケーション保障及び学習面を支援する人材の配置
  • 個々の障害の状態やニーズに対応した指導方法等について指導・助言する理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、精神保健福祉士等専門家等の確保
  • カウンセラー、専門性を有する教員、支援する人材および上記専門家等の配置や条件整備をコーデイネートするコーデネイターの配置

○2 全ての障害に共通する条件整備

  • 介助員、通訳者、カウンセラー、専門家等の人材養成、派遣、配置制度の整備
  • 移動、交通バリアフリー法、著作権法、放送法、総合福祉法、情報・コミュニケーション法等の法整備
  • 関係機関(障害者支援センター、情報提供施設、医療機関等)との連携
  • 個々の障害の状態やニーズに対応した支援や指導システムについての研修制度の整備
  • 個々の障害の状態やニーズに対応したコミュニケーションツール(点字、手話等)の学習・研修体制整備

注1:
DAISY(Digital Accessible Information System、日本では『アクセシブルな情報システム』と訳されている)図書は、視覚障害、学習障害、知的障害、精神障害の児童生徒に有効であり、聴覚障害児にとっても、日本語の読み書きにハンディを持つ場合は効果がある。デイジー図書・教材を整備するため著作権法を改正し、デイジー図書・教材とそのための機器を整備していく事業が必要である。

2.視覚障害に関する事項

○1 視覚障害者への合理的配慮および必要な支援

  • 教室での拡大読書器や書見台の利用、十分な光源の確保と調整
  • 障害物を取り除いた安全な環境の整備(例:廊下に物を置かないなど)
  • 通学路、学校内等の移動およびコミュニケーション支援
  • 音声による説明・対面朗読(「その」「あの」等指示語を使わない等の配慮)
  • 触覚を利用した教材の活用(地球儀・地図・漢字表示)
  • 体育・生活科・美術等の実技強化における授業指導の配慮
  • パソコン、点字プリンタ、音声読み上げ等ツールの活用
  • 学校内や通学路における音声信号、点字ブロック等の安全設備の敷設
  • 支援者等が行動するためのスペースの確保

○2 視覚障害者に対する条件整備

  • 教科書、教材、図書等のデジタル版、拡大文字版および点字版を作成するツールと人的保障
  • 対面朗読、音訳者、移動およびコミュニケーション支援者の人材養成、派遣制度
  • 拡大読書器、点字デイスプレイ、印刷物の音声・点字変換出力等の補助機器の貸与
  • 支援者等派遣システムやデジタル化対応のための法整備(著作権法改正、総合福祉法制定、情報・コミュニケーション法制定、教科書バリアフリー法改正等)
  • 点字学習システムの環境整備
  • 視覚障害者情報提供施設等との連携

3.聴覚障害に関する事項

○1 聴覚障害者への合理的配慮および必要な支援

  • 手話通訳、パソコン文字通訳、ノートテイク等の配置
  • 音声を使用する教材(例:ビデオ教材等)への字幕挿入、文字説明
  • 授業や行事等での音声情報を、視覚的に確認したり文字情報で伝えたりする配慮(板書、メモ書き、文字情報掲示板の設置等)
  • 英語、体育、音楽等の教科での授業指導の工夫
  • 磁気ループやFM式補聴器などの補聴環境の整備
  • 聴覚活用に関する聴覚障害を持つ当事者の専門家の確保(注2)
  • 通訳者等が行動するためのスペースの確保

○2 聴覚障害者に対する条件整備

  • 手話通訳者、パソコン文字通訳者、要約筆記通訳者、ノートテイク等の人材養成、派遣制度の整備
  • 上記人材養成、派遣制度の整備や情報・コミュニケーションバリアフリーに対応するための法整備(著作権法改正、総合福祉法制定、情報・コミュニケーション法制定等)
  • 手話学習システムの環境整備(注3)
  • 聴覚障害者情報提供施設および全国手話研修センター等との連携

注2:
補聴器の活用、磁気ループや赤外線、FM補聴器等の集団補聴システムの活用、あるいは人工内耳装着等、様々な聴覚活用について、重要なことは、いかなる方法でも健聴者と同等の聞こえは補償できないことである。ろう難聴の立場での聴覚活用であり、健聴者の考える聴覚活用とはスタンスが違うものである。健聴者はろう難聴(児)者の聞こえは体験できない。疑似体験により少しでも理解してもらわなければならないが、障害当事者による聞こえの専門家が必要である。ろう難聴の立場での聴覚活用を、自らの経験と豊富な聴覚活用の知識・技術により、ろう難聴児をサポートするとともに、聞こえる教職員・保護者への啓発を担う専門家を確保する必要がある。

注3:
現在は、聴覚活用と発音発語指導に偏っているため、保護者とろう難聴児が手話言語でコミュニケーションを確実にとることができるよう、手話言語の習得システムの整備が必要である。聴覚スクリーニングにより聴覚に障害があると判明した時点で、すぐに聴覚障害者情報提供施設とろう学校が連携して、保護者支援と保護者とろう難聴児のための手話言語習得プログラムを実施する事業を創設すること等、ろう難聴児や保護者に対し、就学前からの言語・コミュニケーション支援を行うことが必要である。

4.盲ろう者に関する事項(弱視ろう・弱視難聴・盲難聴含む)

○1 盲ろう者への合理的配慮および必要な支援

  • 指点字・触手話等、個々の状態やニーズに対応したコミュニケーション保障
  • 個々の状態やニーズに対応した視覚機能や聴覚機能に関する情報保障
  • 触覚を利用した教材の活用(地球儀・地図・漢字表示)
  • 英語・体育・生活科・美術・音楽等の教科における授業指導の配慮
  • 教室での拡大読書器や書見台の利用、十分な光源の確保と調整
  • 障害物を取り除いた安全な環境の整備(例:廊下に物を置かないなど)
  • 学校内、通学路等の移動およびコミュニケーション支援
  • 音声による説明・対面朗読(「その」「あの」等指示語を使わない等の配慮)
  • パソコン、点字プリンタ、音声読み上げ等ツールの活用
  • 学校内や通学路における音声信号、点字ブロック等の安全設備の敷設
  • 音声を使用する教材(例:ビデオ教材等)への拡大字幕挿入、拡大文字説明
  • 磁気ループやFM式補聴器などの補聴環境の整備
  • 通訳者、支援者等が行動するためのスペース

○2 盲ろう者に対する条件整備

  • 指点字通訳、触手話通訳の人材養成、派遣制度の整備
  • 盲ろう者へのパソコン等ITツール操作を教授できる指導者の養成
  • 上記人材養成、派遣制度の整備や情報・コミュニケーションバリアフリーに対応するための法整備(著作権法改正、総合福祉法制定、情報・コミュニケーション法制定等)
  • 指点字、触手話学習システムの環境整備
  • 盲ろう者支援センター、視覚・聴覚障害者情報提供施設等との連携

5.知的障害に関する事項

○1 知的障害者への合理的配慮および必要な支援

  • 介助員の派遣、配置
  • 生活能力や職業能力を育むための生活訓練室や日常生活用具、作業室等の確保
  • 授業における指導方法の創意工夫
  • 漢字の読みなどに対する補完的な対応(ルビ付与、分かりやすい説明文等)
  • 試験方法、評価方法の創意工夫

○2 知的障害者に対する条件整備

  • 介助員の人材養成、派遣制度の整備
  • 総合福祉法、情報・コミュニケーション法の整備
  • 知的障害者支援センターとの連携

6.肢体不自由に関する事項

○1 肢体不自由者への合理的配慮および必要な支援

  • 学校内、通学路等の移動支援
  • 介助員の派遣、配置
  • 医療的ケアが必要な場合の部屋や設備の確保
  • 指導医、看護師等の配置
  • 車いす等を使用できる施設設備の確保
  • 障害の状態に応じた給食の提供
  • パソコン等ITツールの活用
  • 体育・生活科等の実技教科における授業指導
  • 運動会、体育祭等での競技参加の工夫
  • 障害物を取り除いた安全な環境の整備(例:廊下に物を置かないなど)

○2 肢体不自由者に対する条件整備

  • 学校設備のバリアフリー化
  • 医療的支援体制(医療機関との連携等)の整備
  • 交通・移動バリアフリー法、総合福祉法等の整備
  • 介助員の養成・派遣制度の整備
  • 障害者支援センター等との連携

7.病弱・身体虚弱に関する事項

○1 病弱・身体虚弱者への合理的配慮および必要な支援

  • 学校内、通学路等の移動支援
  • 介助員の派遣、配置
  • 障害物を取り除いた安全な環境の整備(例:廊下に物を置かないなど)
  • 車いす等を使用できる施設設備の確保
  • 入院、定期受診等により授業に参加できない期間の授業内容の補完
  • 学校で医療的ケアを必要とする子どものための指導医・看護師の配置
  • 障害の状態に対応した給食の提供
  • パソコン等ITツールの活用
  • 体育・生活科等の実技教科における授業指導
  • 運動会、体育祭等での競技参加の工夫
  • 障害物を取り除いた安全な環境の整備(例:廊下に物を置かないなど)

○2 病弱・身体虚弱者に対する条件整備

  • 学校設備のバリアフリー化
  • 医療的支援体制(医療機関との連携等)の整備
  • 交通・移動バリアフリー法、総合福祉法等の整備
  • 介助員の養成・派遣制度の整備
  • 障害者支援センター等との連携

8.言語障害に関する事項

○1 言語障害者への合理的配慮および必要な支援

  • スピーチについての創意工夫(構音障害等により発音が不明瞭な場合)
  • スピーチ方法の選択保障(代読、パソコンの活用等)

○2 言語障害者に対する条件整備

  • 情報・コミュニケーション法、総合福祉法等の整備
  • 障害者支援センター等との連携

9.情緒障害に関する事項

○1 情緒障害者への合理的配慮および必要な支援

  • 介助員等の派遣、配置
  • 個別学習や情緒安定のための小部屋等の確保
  • 対人関係の状態に対応した創意工夫
  • 口頭による指導の他、板書、メモ等による情報の掲示

○2 情緒障害者に対する条件整備

  • 介助員の人材養成、派遣制度の整備
  • 総合福祉法等の整備
  • 障害者支援センター、発達障害者支援センター等との連携

10.LD、ADHD、自閉症等の発達障害に関する事項

○1 発達障害者への合理的配慮および必要な支援

  • 個別指導のためのコンピュータ、デジタル教材の確保
  • 障害物を取り除いた安全な環境の整備(例:廊下に物を置かないなど)
  • 個別学習や情緒安定のための小部屋等の確保
  • 対人関係の状態に応じた工夫
  • 口頭による指導の他、板書、メモ等による情報の掲示

○2 発達障害者に対する条件整備

  • 総合福祉法、情報・コミュニケーション法等の整備
  • 発達障害者支援センターとの連携

11.障害をもつ教職員等の配置と合理的配慮

 障害を持つ児童生徒のロールモデルであり、かつ学校卒業後の社会生活への道先案内人となるべく同じ障害を持つ教員、支援員、職員を特別支援学校、特別支援学級、寄宿舎あるいは障害を持つ児童生徒が在籍する一般学級のある学校に一定数配置することが必要である。

 例えば、聴覚障害をもつ教職員に対する合理的配慮として、同僚の教職員が文字(筆談)、手話、聴覚活用により直接的なコミュニケーションを取れるように研修を受けること、職員会議、部会議、授業研究等の場では、文字(要約筆記、パソコン筆記)、手話、聴覚活用、手話通訳者・要約筆記者の派遣により情報・コミュニケーションを保障すること。保護者との話し合い・連絡・懇談会や校外学習、交流学習等で本人が必要とするコミュニケーション支援を保障すること。

 また、障害のない教職員が、聴覚障害のある児童生徒・教職員との関わりに役立つよう、大学における養成カリキュラム、また現任研修において、聴覚障害者協会、聴覚障害者情報提供施設に出向いての実習を行うこと。手話言語・要約筆記の習得のため教職員を対象とする研修プログラムを夏休みの期間に集中的に実施すること。

12.合理的配慮が施行されなかった「差別」への救済措置

  • モニタリング機能を持つ機関の確保
  • 相談窓口の設置
  • 関係者および障害者本人と面談し、障害者本人の意思を優先とした合理的配慮の在り方を検討する支援員の確保
  • 対象となる教育機関および地方行政への指導

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成23年10月 --