資料4:労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する中間的なとりまとめについて

平成22年4月27日
労働政策審議会障害者雇用分科会

 当分科会においては、労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会における成果を踏まえ、障害者権利条約の批准が行われる場合には、これに合わせて障害者雇用促進法の改正を含めた対応を図ることとするため、昨年10月より、労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する具体的な検討を行ってきたところである。
 当分科会においては、昨年12月までに、労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する主要な論点について一通りの議論を行ってきたところであるので、今後の障害者雇用促進法の見直しに係る議論に資する観点から、以下のとおり、当分科会における障害者雇用促進法の見直しに係る主な議論の状況を中間的に取りまとめた。

第1 基本的枠組み

1 枠組みの全体像

 労働・雇用分野における障害を理由とする差別の禁止及び合理的配慮の提供については、実効性を担保するための仕組みを含めて国内法制に位置づけることが必要であることについて、異論はなかった。また、障害者雇用率制度について、障害者権利条約(以下「条約」という。)においては積極的差別是正措置をとるべきだということが盛り込まれており、また、我が国における障害者雇用率制度は成果を上げてきていることから、引き続き残すべきとの意見が出され、異論はなかった。

2 差別禁止等枠組みの対象範囲

(1)障害者の範囲

 差別禁止等の対象とする障害者の範囲は、現行の障害者雇用率制度の対象より広範囲なものとし、障害者雇用促進法第2条に規定する障害者としてはどうかとの意見が出され、異論はなかった。
 また、労働者代表委員から、発達障害者支援法第2条に規定する発達障害者についても障害の範囲に入れてはどうかとの意見が出された。
 使用者代表委員から、特定の労働者が障害者に含まれることについての予見の可能性が担保されるべきであるとの意見が出された。

(2)事業主の範囲

 労働者代表委員からは、差別禁止等を義務付ける事業主の範囲については全ての事業主とすべきとの意見が出された。
 これに対し、使用者代表委員からは、とりわけ中小企業事業主については、職場の就業環境や公的な支援機関の整備状況なども勘案しながら、段階的な実施も含め、一定の配慮が必要との意見が出された。

第2 障害を理由とする差別の禁止

1 基本的考え方

 障害を理由とする差別を禁止することについて、異論はなかった。
 また、労働者代表委員及び障害者代表委員から、差別禁止の実効性を担保するためには、企業での啓発的な活動を合理的配慮の内容に位置付けるべきではないかとの意見が出された。

2 禁止すべき差別

 条約においては、雇用に係るすべての事項を差別禁止対象としており、主な対象としては、募集・採用の機会、賃金その他の労働条件、昇進・配置その他の処遇、教育訓練、雇用の継続・終了(解雇・雇止め等)が考えられるとの意見が出され、異論はなかった。
 また、労働者代表委員から、禁止すべき差別の中に間接差別も含まれるのではないかとの意見が出された。これに対し、公益委員及び使用者代表委員から、具体的な判断基準を示すのは困難ではないかとの意見が出された。

3 その他

 労働者代表委員から、障害を理由とする解雇や雇止めなどを無効にするといった、私法上の効果を規定すべきとの意見が出された。

第3 職場における合理的配慮

1 合理的配慮の内容

(1)基本的考え方

 障害者に対して職場における合理的配慮の提供を事業主に義務付けることについて、異論はなかった。
 また、合理的配慮は個々の労働者の障害や職場の状況に応じて提供されるものであり、多様かつ個別性が高いものであるので、法律では合理的配慮の概念を定め、具体的な配慮の内容等については、配慮の視点を類型化しつつ、指針として定めることが適当であるとの意見が出され、異論はなかった。
 合理的配慮は、障害者の個々の事情と事業主側との相互理解の中で可能な限り提供されるべき性質のものであり、最初から細部まで固定した内容のものとすることは適切でないとの意見が出され、異論はなかった。

(2)合理的配慮提供の枠組み

 公益委員から、合理的配慮提供の枠組みとしては、例えば、施設・設備の整備、人的支援、職場のマネージメント及び医療に関する配慮といった枠組みで考えていくべきではないかとの意見が出された。

(3)合理的配慮の内容

 募集・採用の機会(採用の機会におけるコミュニケーション支援等を含む)が合理的配慮の内容に入るとの意見が出され、異論はなかった。公益委員から、教育訓練についても対象となるのではないかとの意見が出された。また、使用者代表委員からは、通勤時の移動支援等、労働時間外のものを合理的配慮の対象に含めることは適当でないとの意見が出された。

(4)合理的配慮提供の実効性担保

 合理的配慮提供の実効性を担保するためには、あまり確定的に権利義務関係で考えるのではなく、指針等により好事例を示しつつ、当事者間の話合いや第三者が入ってのアドバイスの中で、必要なものを個別に考えていくことが適切であるとの意見が出され、異論はなかった。
 労働者代表委員から、合理的配慮を求めた障害者に対する事業主の不利益取扱を禁止すべきであるとの意見が出された。
 労働者代表委員、使用者代表委員及び障害者代表委員から、障害者に対する合理的配慮を行う事業主の負担に対する助成の在り方を検討するべきではないかとの意見があった。

2 合理的配慮の提供のための仕組み

 相談体制も含め、合理的配慮が適切に提供されるための仕組みを検討する必要があるとの意見が出され、異論はなかった。
 また、公益委員及び障害者代表委員から、職場において、具体的にどのような合理的配慮が必要か、障害者本人が十分な意思表示をできない場合は、第三者が関与できるようにした上で、使用者と障害者が話し合えるようにする必要があるとの意見が出された。

3 過度の負担

(1)過度の負担の判断

 事業主にとって配慮の提供が過度の負担となる場合には、事業主が合理的配慮の提供義務を負わないということについて、異論はなかった。
 過度の負担については、合理的配慮と同様に非常に個別性が強いことから、企業の事業規模等を総合的に勘案して、個別に判断する必要があり、判断基準として一律の数値基準を設けることにはなじまないとの意見が出され、異論はなかった。また、使用者代表委員から、仮に指針において過度な負担の判断基準を記載するとしても、あくまで一つの参考情報として位置付け、基準に対応した事例の集積を待つことが適切であるとの意見が出された。
 使用者代表委員から、過度の負担か否かを判断する要素として、企業規模、企業がその時々に置かれている財政状況や経営環境全般が考慮されるべきであるとの意見が出された。
 障害者代表委員から、企業が新しく障害者を雇う際には、企業が提供可能な合理的配慮の限界を提示する必要があるとの意見が出された。
 労働者代表委員から、過度の負担に該当するかについては、使用者側がまず説明責任を負うべきではないかとの意見が出された。

(2)公的助成との関係

 労働者代表委員及び障害者代表委員から、公的な助成等を考慮した上で過度の負担か否かを判断すべきではないかとの意見が出された。

第4 権利保護(紛争解決手続)の在り方

1 企業内における紛争解決手続

 企業内における労使の十分な話し合いや相互理解等により、できる限り自主的に問題が解決されるべきであること、企業内で自主的に解決しない場合は、外部の第三者機関による解決を図るべきであるが、刑罰法規や準司法的手続のような判定的な形で行うのではなく、調整的な解決を重視すべきであるとの意見が出され、異論はなかった。

2 外部機関等による紛争解決手続

 紛争の早期解決、実効性を考えると、紛争解決手続として、既に存在する紛争調整委員会を活用した仕組みとすることが妥当であるとの意見が出され、異論はなかった。
 労働者代表委員から、仮に紛争調整委員会を活用する場合には、出頭命令を行いうることとした上で出頭命令に応じられない場合に過料を課す等の権限の付与や、勧告権限、企業名公表等の権限の付与が必要であるとの意見が出された。また、原告労働者に負担がかからないよう使用者との立証責任の配分をある程度決めておく必要があるとの意見が出された。
 公益委員及び労働者代表委員から、仮に紛争調整委員会を活用する場合には、労使代表、障害者雇用に関する専門家や障害当事者の関与を可能とすることが必要であるとの意見が出された。

 

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