資料3:合理的配慮について

1.障害者の権利に関する条約における「合理的配慮」

(1)障害者の権利に関する条約「第二十四条 教育」においては、教育についての障害者の権利を認め、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、障害者を包容する教育制度(inclusive education system)等を確保することとし、その権利の実現に当たり確保するものの一つとして、「個人に必要とされる合理的配慮が提供されること。」を位置付けている。

(2)同条約「第二条 定義」においては、「合理的配慮」とは、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」と定義されている。

2.「合理的配慮」の提供として考えられる事項

(1)障害のある児童生徒等に対する教育を小・中学校等で行う場合には、「合理的配慮」として以下のことが考えられる。

 (ア)教員、支援員等の確保

 (イ)施設・設備の整備

 (ウ)個別の教育支援計画や個別の指導計画に対応した柔軟な教育課程の編成や教材等の配慮

(2)障害のある児童生徒等に対する教育を小・中学校等で行う場合の「合理的配慮」は、特別支援学校等で行われているものを参考とすると、具体的には別紙2ようなものが考えられる。

(3)「合理的配慮」について条約にいう、「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」についての考慮事項としてどのようなものが考えられるか(例えば、児童生徒一人一人の障害の状態及び教育的ニーズ、学校の状況、地域の状況、体制面、財政面等)。

(別紙1)
公立小・中学校についての国、都道府県、市町村、学校・校長等の役割分担

(ア)教員、支援員等の確保

(a)教員の給与負担・定数

給与費の1/3国庫負担
教職員定数の総数の標準を設定(特別支援学級、通級指導担当教員) 

都道府県

給与負担(実質2/3)
 教職員定数の設定(特別支援学級、通級指導担当教員)

(b)教員の研修

指導者層養成のための研修の計画・実施

都道府県

研修の計画・実施

市町村

研修の実施、都道府県が行う研修への協力

学校・校長

校内研修の実施

(参考)公立小・中学校の特別支援学級担当教員の特別支援学校教諭免許状保有率(H22.5.1)

小学校

33.0%

中学校

27.4%

合計

31.3%

 ※公立特別支援学校教員の特別支援学校教諭免許状及び自立教科等の教諭免許状保有率 70.0%(H22.5.1)

(参考)公立小・中学校における特別支援教育に関する教員研修の受講状況 (平成15年4月1日~平成22年9月1日の間に研修を受講した教員の割合)

小学校

73.2%

小学校管理職

80.4%

中学校

58.2%

中学校管理職

73.8%

(c)支援員の配置

地方財政措置

市町村

特別支援教育支援員の配置

 (参考)
 公立小・中学校における特別支援教育支援員の地方財政措置  34,000人(H22年度)
 公立小・中学校における特別支援教育支援員活用状況  34,132人(H22.5.1)

(d)医療的ケア

看護師等については地方財政措置はない。

 (参考)
 公立特別支援学校小・中学部における医療的ケアが必要な児童生徒数  5,433人(H22.5.1)
  ※公立特別支援学校小・中学部全在籍者の約8.8%
  ※公立特別支援学校における看護師等については、都道府県等が措置

(イ)施設・設備の整備

(a)施設・設備の整備

学校施設・設備の整備に要する経費の国庫負担(1/3又は1/2)
(バリアフリー設備の整備を含む) 

市町村

学校施設・設備の整備に要する経費の負担(実質1/2又は2/3)

(b)施設・設備の維持修繕

維持修繕費として地方財政措置

市町村

維持修繕の実施

(ウ)個別の教育支援計画や個別の指導計画に対応した柔軟な教育課程の編成や教材等の配慮

(a)教育課程編成

教育課程の基準の設定(学習指導要領等)

市町村

教育課程の管理

学校・校長

教育課程の編成

(b)教科書

検定、無償給与、文部科学省著作教科書の作成

都道府県

採択についての指導、助言、援助

市町村

採択

(c)教材

地方財政措置

市町村

教材の届出又は承認

学校

教材の決定

 

(別紙2)
「合理的配慮」の例

1.共通

  • バリアフリー・ユニバーサルデザインの観点を踏まえた障害の状態に応じた適切な施設整備
  • 障害の状態に応じた身体活動スペースや遊具・運動器具等の確保
  • 障害の状態に応じた専門性を有する教員等の配置
  • 移動や日常生活の介助及び学習面を支援する人材の配置
  • 障害の状態を踏まえた指導の方法等について指導・助言する理学療法士、作業療法士、言語聴覚士及び心理学の専門家等の確保
  • 点字、手話、デジタル教材等のコミュニケーション手段を確保
  • 一人一人の状態に応じた教材等の確保(デジタル教材、ICT機器等の利用)
  • 障害の状態に応じた教科における配慮(例えば、視覚障害の図工・美術、聴覚障害の音楽、肢体不自由の体育等)

2.視覚障害

  • 教室での拡大読書器や書見台の利用、十分な光源の確保と調整(弱視)
  • 音声信号、点字ブロック等の安全設備の敷設(学校内・通学路とも)
  • 障害物を取り除いた安全な環境の整備(例えば、廊下に物を置かないなど)
  • 教科書、教材、図書等の拡大版及び点字版の確保

3.聴覚障害

  • FM式補聴器などの補聴環境の整備
  • 教材用ビデオ等への字幕挿入

4.知的障害

  • 生活能力や職業能力を育むための生活訓練室や日常生活用具、作業室等の確保
  • 漢字の読みなどに対する補完的な対応

5.肢体不自由

  • 医療的ケアが必要な児童生徒がいる場合の部屋や設備の確保
  • 医療的支援体制(医療機関との連携、指導医、看護師の配置等)の整備
  • 車いす・ストレッチャー等を使用できる施設設備の確保
  • 障害の状態に応じた給食の提供

6.病弱・身体虚弱

  • 個別学習や情緒安定のための小部屋等の確保
  • 車いす・ストレッチャー等を使用できる施設設備の確保
  • 入院、定期受診等により授業に参加できなかった期間の学習内容の補完
  • 学校で医療的ケアを必要とする子どものための看護師の配置
  • 障害の状態に応じた給食の提供

7.言語障害

  • スピーチについての配慮(構音障害等により発音が不明瞭な場合)

8.情緒障害

  • 個別学習や情緒安定のための小部屋等の確保
  • 対人関係の状態に対する配慮(選択性かん黙や自信喪失などにより人前では話せない場合など)

9.LD、ADHD、自閉症等の発達障害

  • 個別指導のためのコンピュータ、デジタル教材、小部屋等の確保
  • クールダウンするための小部屋等の確保
  • 口頭による指導だけでなく、板書、メモ等による情報掲示

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)