資料7-3:濱川浩子氏 提出資料

平成23年8月18日

第3回 合理的配慮等環境整備検討WGヒアリング資料

全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会
会長  濱川  浩子

 私の子は、肢体不自由の特別支援学校に毎日元気で通っています。障害は脳性まひによる四肢体幹機能障害です。日常的にも介助が必要な子どもです。
 私は、居住地校に学籍を置くことを原則とし、特別支援学校へ行きたい人は行けばいい、と言う意見には疑問を覚えます。
 なにか、居住地校へ行くことが本道であり、特別支援学校を選ぶのは外れていることのような気がしてなりません。これは差別的な見方と言えないでしょうか。
 子どもに合った教育環境や学習方針を求めて、小学校、中学校でも私立を選ぶこともあるし、国立へ行く子もいます。子どもの視点に立ち、より良い学習環境を選択することが親の役割です。
 特別支援学校へ通わせている、私たち保護者がよく非難されることのひとつに、見も知らぬ方から「子ども自身は普通校を望んでいるのに、親は障害があるからと特別支援学校へ入れている」と、言われます。
 一度も見たことのない子どもの何を知っていて、そのように言われるのか理解できません。意思表示が出来ないのは、小学校入学時では健常児であっても、障害を持っている子でも、変わりません。親が我が子にとって、一番良い選択をしているのです。それを普通校へ行けというのは、特別支援学校へのご理解がないのではないかと思います。
 普通校でも、特別支援学校でも、子どもが成長する教育環境を求めて選択できることが、一番良いと思います。
 特別支援学校は、本人が主体的に取り組むことを大切にし、障害の重さで能力や学力を判断するのではなく、「やりたい」気持ちを引き出す、また、「できる」ためには何が必要か、どんな工夫が必要か、と言うところから支援が始まります。
 ゆったりとした時間と子どもたちの特性を見守り、育てる環境があります。これは、普通校にない特別支援学校の良さです。それをもっと知ってほしいと思います。
 私たち保護者には、法律や条例で特別支援学校へ追いやられたという思いはありません。

(1)子どもの成長のために学校教育に期待すること

○1 成長に合わせたカリキュラム、個のニーズに応じた個別の教育支援等を活用した教育制度を整備すること。

○2 子どもの特性を受け入れる特別支援学校は、子どもに必要な教育環境であり、大事な居場所です。

○3 自立活動は子どもたちの教育にとって必要であり、障害の特性や個々の発達の段階を踏まえての自立活動は大変重要であり、より一層の充実を求めます。

(2)早期からの教育支援についての配慮事項

○1 乳幼児期からの必要に応じた家族支援が必要です。乳幼児期に障害と診断されると、保護者は経験のない将来の不安から、子どもの障害を否定したり、障害を将来に渡り受け入れられない心情になりやすく、その結果、子どもを虐待したりなど家族崩壊にもつながります。

○2 障害のある子を育てていく保護者の気持ちに寄り添った、医療体制、福祉制度、教育支援体制の連携のあり方が、家族支援の最初の一歩です。この頃、私たち保護者は経験のない子育てに戸惑っています。

○3 幼児期の小集団における未熟な言動を見守ること。幼児期においては、気になる言動も半年~1年単位で驚くほどの成長を見る場合があります。大事なことは気づきと適切な支援です。この時期に安易に「障害」と決めつけることは成長の妨げです。

○4 医療機関と福祉相談、保護者の連携が不可欠です、特に出生時においては医療側からの支援や医療的なリハビリは親自身が障害のある子どもを理解するために重要です。

(3)教育内容・方法についての配慮事項

○1 保護者に判りやすい、個別の教育支援計画の作成とその内容の充実を図ること。

○2 本人と保護者に教育内容や指導計画の見通し、目標を説明すること。

○3 個別の指導計画の作成と活用、個のニーズに応じた指導を系統的に行うことを望んでいます。

○4 子どもの姿勢や身体の動きを調整しながら、学習しやすい環境を整えること。

○5 AACなどを活用し、子どものコミュニケーションの力を最大限引き出す、指導が必要です。

○6 障害の重い子どもだから、学習ができないのではなく、どんなことでも「やりたい」と思えるような状況を作る、支援側の「わかる」「できる」工夫の配慮。

○7 自己実現を支えるための、自己のもつ可能性を最大限に生かす工夫をしてほしい。

○8 子どもの健康状態に気を配る、学校生活のリズムを整えることも必要です。

○9 保護者は子どもの生活状況などの情報提供者として、担当教員に伝えること、教員は保護者の気持ちを大事に受け取ること、それが家族支援にも繋がります。

○10 教職員の専門性の向上、研修制度の充実。

(4)学校における支援体制についての配慮事項

○1 プール指導の充実。障害の重い子どもにとってプール指導は有効であり、重力から解放される、有意義な体験です。これは、泳ぐことを目標にしたプール指導だけではありません。無理をしないリハビリにもなります。

○2 個々の障害を緩和するため、個々の力を伸ばすため、自立活動の充実。

○3 相互理解ですので、小学校や中学校で学ぶ障害のある子も特別支援学校へ交流へ来ることが必要です。

○4 小学校や中学校で体育などの授業に参加できない場合は、特別支援学校で自立活動に参加できるよう配慮が必要、特に高等部では授業の単位として認めるような配慮が必要です。

(5)施設・設備についての配慮事項

○1 車いす乗車が可能な送迎用のスクールバスが必要です。

○2 送迎の為の屋根付き駐車場の確保、自家用車、スクールバスの乗降に必要なスペースと雨天の際に乗降できるようにスクールバス駐車場に屋根を設置すること。

○3 保護者の待機室を確保。

○4 自立活動に必要な設備と室の確保。また自立活動教員の確保、PT、OT等の専門職員も必要です。

○5 給食室の整備。初期食、中期食、後期食、普通食、アレルギー食の調理のために必要です。また、衛生管理の徹底をすること。

○6 保健室には、ベット数台、医療的ケアに必要な医療機器等の設備が必要。また、普通校の3倍程度のスペースの確保。(ストレッチャー型の車いすのまま入室)

○7 教室内に発汗の調節機能が低下している子どものための、加湿器や空気清浄器などの設置が必要です。

○8 緊急用の吸引器、酸素ボンベ(機器)の設置が必要です。

○9 温水プールの整備は必要。現在でも、プールは温水の未整備が多く、屋根がない場合には、利用の頻度が下がる傾向にあります。また、排泄器官に障害のある子が多く、浄化設備にも配慮が必要です。

○10 プールの設備では、併置校などでは、知的発達障害の子どもと同じプールを使うため、水温が低く、プールの深さなどにも問題が生じている。肢体不自由児が利用できる設備に配慮が必要です。

○11 ストレッチャー型の車いすが入る、奥行きのあるエレベーターの設置すること。

○12 スロープの設置、車いすの自力走行が可能な勾配に配慮が必要です。

○13 車いすで利用可能な手すり等を整備したトイレ(ウオシュレット、暖房便座)。また、オムツ交換に必要な簡易ベットの設置、シャワーの設置、トイレ内にドアやカーテンなどを利用しての個室化に配慮すること。

○14 教室および体育館ホール等の冷暖房の整備が必要です。

○15 寄宿舎の整備を図ること。自治体によっては、財政難を理由に廃止されている寄宿舎ですが、3月11日の東日本大震災の際には、不自由な子どもたちを一時保護するなど、寄宿舎があって良かったとの声が寄せられています。

(6)学校外における支援体制についての配慮事項

○1 交流および共同学習の充実が必要です。現在は、希望に応じて保護者の付添いの下、交流等が行われていますが、移動支援など福祉の制度を利用できるようにしてください。また、個々の努力では交流に限界があります。学校間での交流を進めてほしい。

○2 学校と医療機関(医師)との連携は医療的ケアを安全に進めて行くために重要です。

○3 学校と各市町村の福祉事務所(支援センター)等の連携は、卒後の進路を考える上で重要です。

○4 副籍が進んでいます。居住地に住んでいることを地域に周知されることは大事なこと。今後の交流を進めるため在籍校に籍を置き、副籍を居住地校に置くのが自然です。

○5 センター的機能を活用して、特別支援学校のノウハウを広く社会へ活用すること。

○6 小学校や中学校に在籍している支援の必要な子どもたちへの教育支援の充実が必要。

○7 障害のある本人が自分なりの生き方を考え、主体的に進路を選択できるように、校内の体制作り、家庭や福祉、労働(就労)の機関(企業等)との連携を十分に図ること。

○8 私たちは、障害のある子どもの親であり、健常児の親でもあります。どちらの子どもも大切に思っています。障害のある子の特別支援学校も必要ですし、また小学校や中学校の子どもの学校もより良い教育ができるように、学校運営の充実を求めます。

○9 特別支援学校が努力し、普通校へ出かけていく交流が多いが、相互理解が必要なことから、特別支援学校の近隣の小、中、高等学校は積極的に特別支援学校を訪問してほしい。

(7)幼、小、中、高等学校段階における配慮事項

○1 12年間を通した、連携の取れた指導体制をつくること。

○2 それぞれの成長段階に応じた、教育指導体制の確立を望みます。

○3 卒業後の就職などの困難さから、特別支援学校の高等部に進学する生徒が増えています。卒業後に向けた進路指導の充実を図ると共に、就職先である企業との連携を図る。

(8)その他の配慮事項

○1 教育は障害のある子、本人のために必要なことであり、どこの場にいても第3者のためではないと考える。よく、小学校や中学校に障害のある子どもがいることで、他の子によい影響があったと話題になるが、それは本人の教育環境の枝葉の効果でなくてはならない。障害のある子自身が成長するための教育環境が大切です。

○2 障害のある子どもにとって、学校環境がストレスにならないように配慮が必要です。

○3 特別支援学校には、医療的ケアを必要とする子どもたちがいます。全国には7千人と言われていますが、教育の現場に望まれることは「学習や教育を受けるための体調管理を含めた医療的ケア」であり、校内で医療的ケアが行われていることは教育を支えるための手段であること。

○4 登校時にはバイタルチェックを記録し、発作の兆候がないか等、健康状況を見極めながら教室へ行きます。特別支援学校では、睡眠リズム、食欲、呼吸(無呼吸発作)などにも配慮が必要です。

○5 教育の体制整備が進むと共に、重度の子どもの訪問教育が確立し、訪問教育はスクーリング制度もあり、週単位、月単位で学校へ通う中、体調の維持が確保できる段階で日数を増やし、徐々に通学へと移行するなど、きめ細やかな教育がなされてきました。諸外国に例はないと言われる訪問教育を大切にしてほしいです。

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)