資料5-8:山下明氏提出資料

平成23年7月22日

言語障害(構音障害)の子どもの教育に期待すること

NPO法人全国ことばを育む親の会 山下 明

【構音障害について】

 構音障害とは

【教室の説明】

 私の住んでいる地域のことば・きこえの教室について少し説明させていただきます。
 A区には八つの小学校があります。
 B小学校にことばの教室、C小学校にことばの教室ときこえの教室があります。
 B小学校ことばの教室では、校内通級児は、ほぼ午前の授業時間に通級しています。校外通級児童は、午後、保護者の送迎により通級指導を受けています。
 C小学校ことばの教室では、全て授業時間に通級しています。校外の児童については、ことばの教室の教員が他校に出向き、学校の一室を利用し、巡回指導を行っています。
 C小学校きこえの教室は、在籍学級ですが、国語と算数のみの通級の形をとっています。
 指導後、連絡帳に指導内容が記され、担任と保護者が確認できるようになっております。
 家庭内では、先生の指導の復習が出来ます。
 担任は、ことばの教室の教員と連携を取りながら、通級児童がことばの教室へ行く際に、他の児童や通級児童に配慮したり、授業を抜けた通級児童の補習も心掛けています。通常学級での授業でも指導のあった部分と関わるところには特に配慮しています。

【将来に向けて学校教育に期待すること】

 健常児童の保護者よりも、言葉を育む親の会会員である保護者の方が、様々な場面での負担を感じない傾向にある他、担任やことばの教室の教員に対して信頼感を持っていると感じます。
 このようなことから、構音障害を持つ通級児童にとって、通級指導のスタイルによって専門のことばの教室の教員による助けを得てご支援戴き、障害を早期克服することが最もふさわしいと考えます。
 また、保護者にとってことばの教室の教員・担任と様々な角度から子供を支えることが出来るので、安心できます。
 将来的にも、現状を崩すことなく支援戴くことが、最も希望することであり、重要なことと考えます。

【早期からの教育支援についての配慮事項】

 3歳児健康診断を保健センターで受ける際、ことばの教室の教員は、保護者の感情を察してお話頂きます。
 指導の必要あり、という現実を受け入れた保護者は、幼児ことばの教室で子供に指導を受けさせることが出来ます。しかしながら、誰もが「うちの子に限って・・・」や「自然に治るだろう」と思っています。長男のことは覚えておりませんが、おそらく多少の遅れだろうと見過ごしたのではと思っております。

 保護者が真摯に受け止められる指導の在り方と、早期に支援を受けることの大切さを告知するという配慮をいただけると、保護者の覚悟も違うのではないかと思います。また、保育園や幼稚園へ、伝達できる方式も検討する余地があるのではないかと感じます。
 ちなみに、小学校のことばの教室に通級する児童は、幼児ことばの教室からの継続者と就学時健診で支援の必要がある児童です。

【教育内容・方法についての配慮事項】

 教育の環境を考える中で、現在のような通級指導というスタイルが保護者・担任・ことばの教室の教員にとって最もふさわしいことは、前段で述べましたが、教室が自校にある保護者の中には、学級の授業を抜けることによる学習の遅れを心配するが故に、授業に支障が無い放課後や土日の指導を望む方もいます。
 また、教室の無い学校からの通級は、両親が共稼ぎの場合、ことばの指導を受けたくても受けられないという現状もあります。
 しかしながら、担任の配慮によって補習時間を設けたり、ことばの教室の教員が巡回指導という方法をとることによって、誰でも指導が受けられることは、問題点を解消する配慮を受けていると実感します。
 今後は、通級する事前に、保護者の不安を取り除くための説明会を設けたり、親の会の中で経験者からの体験談などを意見交換する場を設けることがとても重要であると考えます。現在、ことばの相談会で個別に懇談したり、4月に通級説明会を行ってはいますが、保護者の当初の感情は、拒否的なところが多く、しばらくしてやっと支援の有り難さを感じ、協力的になります。
 教育内容や方法については、専門かつベテランのことばの教室の教員の確保と担当になる教員の専門研修などによる育成を配慮して欲しいと思います。
 また、他学校へ移動する子供たちの心の動揺が無いよう、理想では各学校に教室を設置して欲しいと思います。自分の学校で受けられる安心は勿論のこと、巡回指導することばの教室の教員にとっても教材等を持ち運ばなく、或いは忘れることもなく必要に応じて様々な教材を的確に使用できるからです。
 巡回指導の問題点は、ことばの教室の教員と通級児童保護者とのコミュニケーションが難しいことです。また、巡回先の学校では必ずしも指導に適した教室ではないため、制約などもあり効果が上がらない場合もあることです。ことばの教室の教員としても個人の車での移動や、通勤経路の複雑化、給食の計画など精神的や時間的な負担が大きく、通級児童に影響を与える可能性があることを心配します。
 以上を鑑みると、各学校に適切な教室の配置と専門のことばの教室の教員の配置がなされ、学級での授業に影響が無い時間帯に指導を受けることが最大の理想と言えます。
 指導内容や方法は、ベテランのことばの教室の教員が行う以上、保護者は信頼するのみです。長男が一年間の指導で、障害を克服できたことは、とても評価できます。保護者が信頼を得るのは、指導参観や親の会主催の懇親会等でことばの教室の教員とコミュニケーションがなされたからと考えれば、連携をとれる体制を整えていくことが今後の課題となりそうです。

【学校における支援体制についての配慮事項】

 校内に教室のある通常学級の担任は、ことばの指導風景を参観し、通級児童の状態を理解し、支援してくれます。学級の友達にも「いってらっしゃい」と元気に送り出してもらい、通級に対する意欲を盛り上げ、精神的負担がないよう配慮戴いております。抜けた時間の学習を休み時間や放課後に補習していただけることは有り難く思います。他校の教室へ保護者が送迎する場合は、担任は、担任参観日はありますが、通常は連絡帳でしか指導風景を推測できません。できれば指導風景を何度も参観でき、通級児童を理解しうる余裕を担任に与えて頂ければ有り難いです。通級児童を支えるためには、ことばの教室の教員・担任・保護者の連携がとても重要だからです。

【施設設備についての配慮事項】

 ことばの教室は、防音壁になっています。ことばやきこえの指導には外部の音は指導効果を引き下げるからです。冷房が設置されていないために、夏は窓を開け、更には扇風機を回します。せっかくの指導がもったいないと思います。C小学校のきこえの教室は、ことばの教室事務室で行っています。防音壁ではありません。きこえの教室こそ防音環境が必要です。巡回校は専用の教室ではなく、一室を借用して指導されています。保護者としては、指導を受けるのであれば、適切な環境・施設で受けさせ、早期の障害克服を切に願っています。

【幼稚園・保育園・小学校・中学校・高等学校における配慮事項】

 早ければ、3歳児健診で障害の有無を知ることが出来ます。専門のことばの教室の教員との関わりが早期にできるよう幼稚園・保育園との連携が必要です。県ことばを育む親の会では園や保健師などへの研修講座を毎年一回開催しておりますが、たくさんの先生方が出られるような支援や配慮が必要です。
 園へのことばの教室の教員の巡回も保護者からの希望があれば行えるような体制づくりを検討する必要もあるように感じます。
 また、小・中・高との連携によって、支援を継続する配慮も必要と感じます。支援が無くなると、保護者の負担が大きくなり、その結果、子供に悪い影響を与えるからです。多くの方々の支援によって、障害をもつ子供達を支えることが、保護者も子供も生きる勇気が与えられるのです。

【その他の配慮事項】

 ここでお話することではないかもしれませんが、私の住むA区ことばを育む親の会には、きこえの教室に子供を通わせる親も会員です。構音障害の子をもつ親としては、現状の指導環境を継続改善することこそが、今後、障害を抱え教室に通う子供たちに、必要な支援だと実感しています。
 しかし、同じ会の中に、悩みを抱える親がいます。経済的な悩みです。きこえの教室には二人通級しており、一人は重度であり、一人は中度です。二人の耳に付ける補聴器は体の一部です。重度の子は補聴器を購入する際に補助を得ます。46万円です。中度の子は全額個人負担です。この負担の差に愕然とします。片方は重度だと悩み、片方は経済的負担を悩みます。同じ会員としてなんとかせねばならないと思うのは至極当然です。学齢期の子供たちにとって、言語の獲得とそれに負う学力の向上は、本人の一生を左右する重大な事柄です。補助を受けられないばかりに言語獲得の適切な時期に補聴器をつけられず、支障をきたすこともあるでしょう。特に学齢期に当たる子を持つ親は、若年であることも多く、出来れば教育的介入をし、支援・補助する必要はあると認識します。
 何か配慮して頂けることがあればと思い、また、福祉国家である日本が、世界の難聴基準より厳しいことは存じておりましたので、そのことにも改善を切に希望しながら、お話をさせて戴きました。

 以上、ご清聴頂きありがとうございました。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)