資料5-7:小林美夏氏提出資料

「合理的配慮ワーキンググループ」のヒアリングについて

全国病弱虚弱教育学校PTA連合会
小林 美夏

1 子どもの成長のために学校教育に期待すること

◇生徒児童一人一人のニーズにあった教育。病状や能力に合った学校生活をおくれるように支援して欲しい。

◇病弱に加えて、複合的に様々な障害のある生徒児童は多い。個々の生徒児童に合った自立支援等のきめ細やかな指導の充実が必要。

◇病弱生徒児童を持つ家庭では、親子共に自立する機会が提供されることが必要。全寮制の病弱特別支援学校は、生徒児童が家庭を離れ生活することで自立の一歩となる。

◇社会性、コミュニケーションなどの能力向上。外部社会との関わりが不足しているため、コミュニケーション能力を身につける教育を期待する。

◇A-通常の学校(市町村立)、B-教育委員会、C-特別支援学校(病弱)の連携を密にし、互いに責任を押し付けることのないよう、国が各教育機関に指導してほしい。

◇専門性確保を担保できる研修体制の確立や医教連携の充実を目指してのスタッフ会議の充実。

2 早期からの教育支援についての配慮事項

◇小児病棟を持つ病院については、院内学級の設置義務化を希望する。専門的な医療を受けるために、国公立病院のみならず、私立病院に通う場合も多い。国公立私立問わずどこの病院に入院しても教育が受けることができることが理想。(現在、訪問学級制度も充実しつつありますが、現状はまだまだです)

◇幼児のために幼稚部を設置し、病気療養児の就学前の教育を保障する。

◇就学相談、乳幼児教育相談については、福祉・保健機関・医療機関等関係機関との連携を綿密に。

◇障害を発する子どもを早期に見分ける。

◇学校全体で早期に特別支援を行う。

    (例)従来の時間割を一部、変更して午後の授業に特別支援クラスを設け、指導者が交替で特別支援授業をする。

◇保護者に適切なカウンセリングを行う。

◇専門治療を行える医療機関、公共の子ども相談センタ-、特別支援学校の紹介が大切であり、そのために各指導者が各機関について調査、周知しておく。

◇幼稚部の設置状況は全国一校のみにとどまっている。現状では多くの学校でサービス指導で対応している。

3 教育内容・方法についての配慮事項

◇病気療養による学習の遅れだけではなく、個々の生徒児童が抱える「学習のしにくさ」に対する適切な学習方法、機器の開発、設備の充実を推進。

◇教員の専門性向上。外部専門家との連携。

◇特別支援教育コーディネーター専任教員の配置。

◇学習の遅れだけではなく、学習障害や病気や薬の影響による認知・記憶・集中力などに障害を持つ場合、高次機能障害が起きている場合等さまざまな「学習のしにくさ」を抱えている生徒児童は多い。個々の生徒児童にあった専門的且つ最適な学習が必要。場合によっては、外部専門家よる指導も必要。

◇病状及び治療方針により、通常の授業時数が確保できない状況にあり、高い専門性を持った教師による効率性の良い授業展開が望まれる。

4 学校における支援体制についての配慮事項

◇教員配当については、在校生徒児童の病状や障害に応じて柔軟に考慮する。生徒児童人数あたりの画一的な配置でなく、(寄宿舎指導員については特に不足)1対1の介助や見守りが必要な子供も多く、教員配当は慢性的に不足している。寄宿舎においては、学校よりも生徒児童の状況把握が困難なため、指導員を現状より増やす必要がある。

◇必要に応じて、臨床心理士・理学療法士・作業療法士等の配置。

◇寄宿舎のある学校では24時間体制での対応に看護師が絶対的に不足している。看護師の増員が必要。

◇寄宿舎での給食について、1名の栄養士で毎日3食を提供するには仕事の負荷が著しく高く、増員が必要。現在、都立の病弱の支援学校では、生徒児童全員に同一のカロリーコントロールがされた食事が提供されている。カロリー制限が不要な生徒児童には、食事の量が足りない場合は量を増やすことができるようになっている。ところが、食の細い生徒児童にとっては、量が多くカロリーが低いため、十分摂取できない場合には体重が減少することがあるため、よりカロリーの高い食事が必要な場合も多い。また、制限食の必要な生徒児童(アレルギーなど)の入学・転入も考えられ、以上のような複数の献立を提供するには栄養士が絶対的に不足している。

◇スクールカウンセラーの配置。通常校には常任のカウンセラーが配置されており、生徒児童、保護者が相談できるようになっているが、特別支援学校には配置されておらず、精神面において問題を抱えている生徒児童の多い学校にこそ、専門家による相談窓口が必要である。

◇特別支援学校、通常学校を問わず、指導者不足は否めない。指導者の充実を期待する。どの種別の学校でも少人数制が充実した教育の基本である。

◇「心のケア」を必要とする児童生徒が増えてきているため、カウンセラー及び「医ケア」対応のできる看護師の派遣が望まれる。

5 施設・設備についての配慮事項

◇学校間での格差が生まれないよう、施設・設備については基準を設ける。(院内学級についても同様)様々な条件の生徒児童の入学、転入に対応できるよう、そのつど柔軟かつ迅速な対応が必要。

◇電力不足の中、日常の処置に使う医療機器が使えないことのないよう、また、冷暖房が使用できないことがないように、自家発電設備の充実も求める。

◇病気や障害、薬の副作用等により体温の調節ができない生徒児童が多いため、校舎や寄宿舎内の温度調節は非常に大切であるが、現在、わが校では東京都の基準に合わせているため、温度の変更や期間の変更が認められない不便さがある。特別措置を受けられるようにしてもらいたい。

◇心身症・精神疾患の児童生徒に対してのクールダウンできる部屋の設置や、各教科の進度に伴う個別指導のできる小教室の増設が望まれる。

6 学校外における支援体制についての配慮事項

◇特別支援学校卒業後の進学先の確保と進学先の条件整備。

◇医療機関の医師に教育や進学のことを相談する場合も多く、医師や病院内の福祉相談室(ソーシャルワーカー)などへの情報提供を積極的にして欲しい。病弱特別支援学校の存在を知らない人も多い。

◇地域活動の充実のための支援体制の確立。
 病気を理由にして長期欠席をしている児童生徒が全国に約5万人いるため、地域の学校に病弱特別支援学校の専門性を提供できるようなシステム作りが望まれる。
 副籍の活用により転出入の手続きの簡略化や学校間の指導体制の協力化が実現しやすい。

7 幼、小、中、高等学校の各段階における配慮事項

◇幼:幼児教育を受けられる教育機関の整備。幼児のために幼稚部を設置し、病気療養児の就学前の教育を保障する。((2)にも併記)親から離れた状況下で、教師や同年代の子供とのかかわりの中で育まれるたくさんの学びが大きな成長の糧となる。支援や介助を必要とする児童は、保育園や幼稚園に入園することは難しい場合が多い。また家庭に問題がある場合には子供の教育は遅れがちになる。適切な教育を受けさせるため、場合によっては福祉・保健機関の介入も必要。

◇小・中・高:進学・就職への配慮。病弱児はその特性ゆえ、一般就労がほとんどであるが、通院・入院時の欠勤遅刻早退などを企業に配慮してもらわなければいけないことも多々ある。また、進学においても、通常の高校卒業の生徒よりも不利な点が多い。混雑した電車での通学などが困難な場合もある。

◇前籍復帰に伴う配慮事項についての関係者会議開催や、進級・卒業認定に関する単位認定及び単位互換についての確認が必要である。

8 その他の配慮事項

◇福祉、教育について、地域格差が大きい。特別支援教育については、都道府県または市区町村による格差があり、実際に転居して入学・転入するケースもある。どこでも同じレベルの教育を受けられる必要がある。

◇転入手続きについて、合理化が必要。東京都の場合、地域の小中学校から都立の特別支援学校への移動となる。教育委員会も市区から都に変わるため、手続きに手間も時間もかかる傾向がある。場合によっては転院して診断が必要と聞いたこともある。

*ある学校の様子

  • 心身症や発達障害をベースにした適応障害を主に対象としている。
  • 身体的病気で通学する子どもは少数。適応障害を発する子どもに共通する事は環境の変化、特にクラス内の児童・生徒数の増加に弱く、落ち着いて学校生活を送ることが困難となることが多い。
  • 原籍の通常校で特別支援の配慮が薄く、特別支援学校(病弱)に駆け込み寺の様な状態で転入してくる場合が多く、既に在籍している子どもたちと馴染めず、ストレス を与える事象が多くみられる。

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)