資料5-5:乙武洋匡委員提出資料

特別支援教育の在り方に関する特別委員会・合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ
「肢体不自由教育」に関する意見表明

2011年7月22日
乙武 洋匡

(1)子どもの成長のために学校教育に期待すること

    • 子どもの人生は、学校生活のみで終わるわけではない。学校を卒業したあとは、障害のある人も、障害のない人も、ともに同じ社会で生きていくのだという将来を見通した教育を期待したい。

    「その時だけ、かわいがることはいくらでもできる。でも、それが本当にこの子のためになるのか」

(2)早期からの教育支援についての配慮事項

    • 意図を持って、「後手に回る」という視点も必要。すべての設備を整え、すべて手を貸すことで、本人の成長を妨げることもある。本人がどこまでできるのか、どこまでできるようになるのかを見極めながら支援していくことが、早期からの教育支援を行う際に必要なことではないだろうか。

(3)教育内容・方法についての配慮事項

◆小学校時代の担任は二人いて、正反対の指導法だった。

    • A先生(一~四年担任)……「何でも、みんなと同じように」
      • → ズボンを濡らしながら雑巾がけ。口でゴミ拾い。

    • B先生(五・六年担任)……「できないことは仕方ない。できることで貢献を」
      • → 掃除免除の代わりに、ワープロで掲示物作成。

    ⇒ 模範解答はない。当該児童・生徒の性格や発達段階に合わせて、担任を中心に考える。

(4)学校における支援体制についての配慮事項

◆指導方針の共有を図ることが重要。

    • 指導計画の作成……担任と特別支援担当を中心に作成。
    • 指導計画の実施……全教職員で共有。

    ⇒ 各教職員の指導方針が一致せず、児童が混乱することは避けたい。

※教科担任制となる中学・高校では、ますますその重要性が増す。

(5)施設・設備についての配慮事項

◆障害のある児童・生徒が必要とする施設・設備が整うことが重要だが、優先順位を整理する。

    • トイレなど必要不可欠なものは、優先的に設置する。
    • スロープなど「あれば便利」でも、予算が足りないこともある。

    ⇒ 不便な環境が、自身を成長させたり、クラスメイトとの結びつきを生み出すこともある。

(6)学校外における支援体制についての配慮事項

◆学生ボランティアだけでなく、地域からの支援も積極的に受け入れていく。

    • 発達障害と異なり、そこまで支援員を固定化する必要がない。
    • 学校外での生活において、その存在が認識され、どんな支援が必要なのか理解が深まる。

(7)幼、小、中、高等学校の各段階における配慮事項

    • 個人差はあるが、小学校高学年あたりから思春期に差しかかり、介助員の存在が友人とのコミュニケーションの妨げとなる場合があることに留意する。
    • とくに家族の付き添いについては、児童・生徒の精神面での発達という観点から、慎重に考えるべきである。

(8)その他の配慮事項

    • 肢体不自由児への合理的配慮および環境整備について考えるとき、施設・設備の存在が、当該児童・生徒にとって、物理的観点だけでなく、心理的観点からも、どのような影響を及ぼすことになるのか。しっかりと検討したうえで進めていく必要性を感じる。

以上

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)