平成23年7月22日
千葉市ことばを育てる会 吉田恵美子
高度感音難聴。平均聴力両耳共に100dBHL程度。現在、大学生。
1歳半のとき、高度感音難聴と診断される。難聴通園施設とA聾学校乳幼児教育相談に週3回程度通園する。3歳から就学前まで、同幼稚部で教育を受ける。年中から、地域の幼稚園に週1~2回通園する。
小学校は、地域の市立B小学校で学び、市内の市立C小学校の難聴学級に週2回程度通級する。
中学校は、市立D中学校で学び、E聾学校のサテライト教室(通級指導教室)に週1回通級する。
その後、県立高等学校に進学し、現在は大学在学中。
【早期発見・早期教育は、聴覚障害児が生きる第1歩として、非常に重要】
○1 早期発見された後の支援体制
まず、聴覚障害児の早期発見・早期教育の重要性を理解している耳鼻科医が少ない。そして、専門性の高い医師と難聴教育にかかわるエキスパートと連携できる体制をきちんとつくってほしい。
○2 保護者への適切な支援
新生児聴覚スクリーニングでは、産後1週間で聴覚障害の疑いが出る。そのときの保護者がどんな気持ちになるか・・・【保護者への我が子の障害受容のための支援、父母の心の安定が図れる体制が必要である。】
将来へ向けての積極的な子育てを促す場を提供してほしい。
<娘の場合>
1歳半で高度感音難聴と診断を受ける。
病気ではなく、障害! 治らない!・・・・・父母は衝撃を受ける。
しかし、1歳半までは、普通に不安なく笑顔で子育てできていたことは大きい。
近年は産後1週間で聴覚障害が発見される・・・これは良いことだろうが、適切な父母への支援・指導がなければ、かえってデメリットになる。
○3 早期支援・早期教育の場は、身近で!
【身近ならば密度の濃い支援、教育を受けられる。兄弟の負担軽減ができる。】
<娘の場合>
上記プロフィールの通り、たまたま通える範囲に頼れる教育機関があったので、非常にラッキーであった。
↓
子どもへの接し方、将来へ向けての不安の軽減、積極的な家庭教育への支援が受けられた。
○4 子どもの早期教育の重要性―乳児期~幼児期
この時期の教育なくして、小学校~大学までの通常学級で学ぶことは不可能だった。
日本語の習得、発音指導、読話力(口を読む力)などの教育は、通常学級で教育を受けられる土台である。
<娘の場合>
上記の教育を受けつつ、就学を意識してこの時期から地元の幼稚園に週1~2回2年間通園。この時期から地元の健常児と交流し、本人も周りの子どもたちと自然に交流し、理解し合えるように努力した。
○5 早期支援での要望
小学校就学へのアプローチ―通級支援を年中、年長からしてほしかった。
娘の頃は、聾学校幼稚部から地元の小学校への連携はできていなかったのが現実。
就学を判断するためにも就学前からのかかわりを希望する。特別支援教育がスタートし、徐々に進んできているようだが・・・。
学校での受け入れ体制づくりも必要である。
○1 難聴学級、通級指導教室の重要性←【精神的安定、支援の場】
難聴児が自分を理解してくれる先生がいてくれること。
心の安まる場、悩みを相談できる場があること。
父母への支援・指導の充実。
通常学級の先生、児童への踏み込んだ積極的アプローチ。
○2 難聴学級、難聴通級指導教室での
「きこえにくさ」を見つめる学習(障害認識)を実施することの重要性=小学校低学年~
<娘の場合>
小1から自然な形で自分を知ることができ、自らの障害について前向きに理解する土台つくり・基盤を本人の中につくる教育が行われることは、将来に向けて重要である。
○3 難聴学級、通級指導教室の先生が学校訪問を行い、難聴児と共に難聴理解授業を行うことの重要性
担当の先生は積極的に学級に踏み込み、学級、学年、そして学校に溶け込む。
本人と共に計画した難聴理解授業を行い、担任の先生の理解、クラスメイトの理解を促す。授業の中で本人自身からクラスに伝える場を設定することが大事である。難聴学級の先生は、難聴児だけの先生ではない感覚。
訪問した際、学級でのきこえの状況や友達関係をみる。本人の横に座ってノートテイクなどの情報保障を行ったり、放課後、関係の先生方と情報交換をしたりする。
学校訪問をしたときに、校長先生や養護教諭と話をし、理解を得る。
担当の先生が父母の思いを事前に聞いておき、学校訪問の際、父母の思いをもとに個別の教育支援計画を立てることが大切である。
→このように、さまざまなことを学校訪問した際、行ってくれることを望む。
<娘の場合>
小学校時
難聴学級の先生が年に2~3回程度、学級を訪問。
授業の感想をクラスメイトに書いてもらって交流。
↓
担当の先生がクラスメイトの中に溶け込むことは、クラスメイトも自然に難聴児を理解し、本人も素直に認識する助けになる。
○4 難聴理解の専門の先生と、学級担任の先生との密な連絡と、情報交換の重要性
<娘の場合>
→このように、さまざまな方法で連携しようと努め、わかりにくい『難聴』について理解啓発することを望む。
○5 学級での適切な配慮による指導の重要性【学習指導】
<娘の場合>
家庭学習の重要性
幼児期~小学校(低):個別的な塾
小学校(高)~高校:個人指導と少人数の塾に通っていた。
○1 難聴児がいたら必ず校内支援研修等で、校内全体で研修を行うことが必要である。
その校内研修体制つくりをしてほしい。
<娘の場合>
○2 ノートテイクのボランティア・支援員の導入の必要性 ―場合によっては手話ボランティア
担任の先生の話やクラスメイトの発表等の情報は、平等に与えられるべきである。
<娘の場合>
ボランティアや支援員の導入及びその人たちへの研修体制が必要
○1 FM補聴器のマイクの使用をきちんと
<娘の場合>
○2 パソコン要約筆記等の導入を
<娘の場合>
小学校からノートテイクやパソコン要約筆記の導入をしてほしい。
聞こえる子と同じ情報を得ることは、教育を平等に受ける権利につながると思う。
○3 難聴学級の施設設備の充実を
↓
難聴学級の教室は、防音設備が必要
○1 難聴学級及び通級指導教室の設置の少なさ
生活圏である身近なところに専門教育・指導の場が必要
その支援なくして、通常学級に難聴児が入るのは非常に不安である。
○2 近隣に難聴学級がなくて、言語学級に通級する際の支援体制も難聴学級と同様にしてほしい。
○3 どの難聴学級でも、言語学級でも、県内、全国どこでも同程度の支援が受けられる体制づくりをしてほしい。
○4 「学校に難聴児が1名」ということが多いため、『なかまの集い』等の難聴児の仲間作りが必要である。そういう地域の環境を整えてほしい。
○1 幼稚園→小学校→中学校→高校 それぞれの引き継ぎの徹底
○2 高校受検の配慮申請
<娘の場合>
通級の担当の先生と担任の先生で、申請の手助けをしてくださった。
(入学試験での座席の配慮、試験を受けるに当たっての説明の紙面配布等)
○1 難聴発見から、早期支援、小学校、中学校、高校・・・と、生活圏の範囲内(身近)で、支援体制が存在してくれることが重要。
通級等は、できれば、他校ではなく自校に存在し、きめ細かい的確な支援をしてほしい。
<娘の場合>
↓
どの難聴児にもこのようなきめ細かな指導・支援が行われることを望む。
○2 中学生以降の思春期の時期の支援の充実を
聾学校の通級指導教室や教育相談はあるが、地域にその時期の支援体制が非常に少ない。中高生の時期は、健常生徒でも心が揺れ動き、悩みが多い時期である。その中で、難聴児の友達関係やコミュニケーション上の問題に対して支援できる体制が必要である。
初等中等教育局特別支援教育課