資料5-3:西滝憲彦委員提出資料

ヒアリング項目(合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ)

西滝憲彦

(1)子どもの成長のために学校教育に期待すること

 当然のことですが、学校生活の中で、子どもと子ども、子どもと教師、子どもと職員などが「自由な会話」あるいは「分かる授業」を通して学び・育っていきます。聴覚障害児にとっては、この「自由な会話」「分かる授業」に障害があることを直視しなければなりません。この障害を克服する手立てをこの合理的配慮等環境整備ワーキンググループで整備していかねばなりません。
 また、内閣府が昨年6月に示した障害者制度改革のために基本的な方向性、すなわち「言語としての手話」を教育の中で大いに生かし、「手話に通じた教員の養成・専門性の向上」を図ることが課題になっています。

(2)早期からの教育支援についての配慮事項

 新生児聴覚スクリーニングの普及により、出生時から障害が発見される現状に合わせた早期支援が求められています。保護者への障害についての様々の情報の提供や相談支援が重要ですが、制度的に行われるには至っていません。ろう学校が相談支援の重要な役割を果たすために、行政や病院・情報提供施設・成人聴覚障害者団体などと支援のネットワークを制度的に保障することが求められています。

(3)教育内容・方法についての配慮事項

 私自身は、地域の学校で学びましたが、学校の中では友人もできず、授業も全く分からず、ただただ、みんなに合わせて通学する毎日でした。そんな僕を見かねてか、担任の先生が僕を図書室に連れて行き「西滝君約束してね、ここの本を全部読むのよ」と読書をすすめてくれました。児童文学からたくさんのことを学びました。何よりも生き抜く勇気を与えられたと思います。また、たくさんの言葉を覚え、リテラシーの力を育ててくれました。子どもの読書量が著しく減少している昨今、読書指導を見つめ直すことも必要でしょう。

(4)学校における支援体制についての配慮事項

 中学に入学すると、毎週土曜日の午後からろう学校で一般校に通う生徒を対象の読唇教室を開いているとの情報を校長が教えてくれました。生まれて初めてろう学校に行き、聞こえないのは自分だけではないことを知り、同世代の生徒と友だちになり手話も覚えることができました。障害を受容し、手話を身につけることで友人ができ、自由なおしゃべりが可能になりました。ろう学校に通ったことは自分の人生の大きな分岐点でした。

(5)施設・設備についての配慮事項

 聴覚障害児にとっては目で見てわかる環境が重要です。授業のチャイムや朝礼、授業その他すべてに目で見てわかる伝え方が必要です。設備面だけでなくソフト面、たとえば、現在、文部科学省が全国の学校に配布している拉致問題啓発ビデオ『めぐみ』等には聴覚障害児が見てわかる字幕がついていません。子どもたちの中には音声を理解できない子どもたちがいることを文部行政は常に意識してほしいです。

(6)学校外における支援体制についての配慮事項

 手話を知らないときは学校外でも孤立していました。家庭の中でも父母兄弟とは会話のない毎日でした。兄弟と話せないでどうして近所の子どもと話ができるでしょうか。手話を覚え、そして周囲に教え、会話を可能にしていく取り組みを自分一人の努力で済ませるのは大変です。子ども会や児童デイサービスなど、様々の機関が聴覚障害児のニーズをつかみ適切な支援を行うことが求められています。

(7)幼、小、中、高等学校の各段階における配慮事項

 教員の資質や能力、専門性の充実が各段階で求められています。特に今後は「手話」についての知識や技能も、ろう学校教員のみならず、地域の学校の教員も必要です。その取得を可能にする研修や大学での教員養成カリキュラム、それに免許制度が必要です。
 また、自ら聴覚障害を持つ教員を各段階の学校に配属し、ともに学ぶ共生社会を教育段階で築いていくことも重要な取組です。

(8)その他の配慮事項

 子どもに「集団」を保障することが「教育」を保障します。「集団」を形成するためには「コミュニケーション」があってこそです。「自由なコミュニケーション」は聴覚障害児には何と言っても「手話」が一番自然で通じやすいものです。「手話」を教育段階に取り入れること、それも、「教科」として全ての学校で実施することがインクルーシブ社会の発展に大きく寄与することになります。

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)