資料5-2:鶴東光子氏提出資料

特別支援教育の在り方に関する特別委員会
合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ(第2回)資料

特定非営利活動法人 オレンジライン
鶴東 光子

★見えにくい児童生徒への合理的配慮を考えるために

見えにくい子どもの保護者の立場から

    生後3ヶ月:目に異常に気づく
    2歳半:区立保育園入園
    4~5歳:平行して都立盲学校幼稚部通級(週2日)
    小学校:区立小学校入学(弱視学級に週2日8時間通級)
    中学校:区立中学校入学(弱視学級に校内通級、区立盲学校に通級指導)
    高等学校:都立盲学校普通科、専攻科
    卒業後、治療院で働くが閉店のために失職
    現在26歳、オレンジラインにて施術の研修及び就活中。身体障害者手帳1種1級(網膜色素変性症)

(1)子どもの成長のために学校教育に期待すること

  • 「見えない」「見にくい」児童生徒たちが安心して社会自立を目標にした教育が受けられること。
  • 教科の専門性・障害特性への対応・個々への対応ができる教育が受けられること。

(2)早期からの教育支援についての配慮

  • 視覚障害は情報障害とも言われていることから、乳幼児期からの発達段階に基づいた実体験を中心にした活動を行うことが大切です。
  • 保護者が安心を得られる場所として、乳幼児期からの教育相談をする場の確保と保護者に寄り添った指導体制の充実が必要です。

(3)教育内容・方法についての配慮事項

  • 点字を理解し指導力を備えた教員の配置が必要です。特別支援学級(弱視学級)へ通級する児童生徒への対応については、普通学級との密接な連携をとり進めて行き、見え方の補い方など専門性ある指導が必要です。
  • 歩行指導の充実を図る。自分で行きたいところには1人でも行ける歩行力の育成が大切です。
  • 実体験に通ずる触る教材の充実と、それぞれの児童生徒の視力の状態や発達段階に応じた教材や拡大教材の充実が大切です。
  • 職業教育については、あはき国家資格取得後の進路指導(働く場の確保)と、生涯教育の視点からの「技術力の維持と最新医学知識の習得」の継続が必要です。

(4)学校における支援体制についての配慮事項

  • 盲学校の専攻科では、成人してから視覚障害になった人も社会復帰を目指して学んでいます。生徒であり保護者という立場の人も多く在籍しているので就学を保障する就学奨励費の継続が必要です。
  • 盲学校は障害種別が混在した学校ではなく、視覚障害に特化した学校であるべきだと思います。障害種別によってニーズや指導方法、生活環境が違うため複数障害種の特別支援学校でもしっかりと障害別に部門は分けることが大切です。
  • 教員の人事異動において、専門性の高い教員は学校内での核となる人材です。教員の育成もかんがみた専門性の高い教員の配置・また専門性が流失しないよう異動については十分な配慮を望みます。

(5)設備・施設についての配慮事項

  • 「見えない」「見えにくい」中での移動となるので、場の情報を事前に提供しておくとよい。
  • 廊下には物を置かない、廊下のセンターに突起のあるラインを引くなど、明暗をはっきりと分け、ランドマーク(目印・手がかり)を分かりやすくすると良い。例えば、ドアと壁の色を変えたり、階段の側面と床面の色を変えることで、弱視の人には、場の変化の情報が取り入れやすくなります。横断歩道には、エスコートゾーンや音響信号機の設置をすることで、恐怖感が取れて歩きやすくなります。
  • 拡大読書器、書見台、拡大教材などがそろっているなど勉強が行いやすい環境が必要です。
  • 防災面と防犯面においては、見えにくい、見えない者にとって、いち早く身の安全が確保できる施設・設備が必要。

(6)学校外における支援体制についての配慮事項

  • ユビキタス社会が更に広がり、視覚障害者の人もひとりで安全に歩くことができるような環境が望まれています。
  • 視覚障害者が社会生活をする上で困る事は情報収集の「障害」です。
    弱視だと1人で十分に歩けるように思われがちですが、困ることがたくさんあります。
    例えば、トイレ男女別表示、銀行のATM操作、エスカレーターの上下、入り口ドアの形、混雑した駅やバス停の行列などの最後尾がわからない。十分な光源の確保が必要で、明暗がはっきりと分かれていると歩行しやすい、また、ランドマーク(目印・手がかり)を分かりやすくすることや、横断歩道のエスコートゾーンや音響信号機の設置は弱視児童生徒にも必要です。地域や学校周辺の環境整備は重要です。
  • 放課後などの地域支援などの地域環境の活用については、活動する場面に応じての支援があると良いです。
  • 1人通学が困難な児童生徒たちの学校への送迎について、最近では、福祉サービスの利用で移動支援(ガイドヘルプ)やボランティアの活用が広がってきています。居住する区市により、有償・無償の違いがあるので統一されると良いです。

(7)幼稚園、小、中、高等学校の各段階における配慮事項

  • 幼稚部では、視覚障害を補うために、さまざまな遊びを中心に興味関心を持たせて、意欲を引き出し、達成感を味あわせる取り組みが大切です。障害の有無に関係ない友達関係も広げ、人との関わりを学べると良いと思います。
  • 弱視の児童生徒が通常の学級において学ぶ場合、教科書や黒板の文字が見えにくいため、拡大本や補装具(ルーペ)を使用して学んでいます。見え方を補う教育の場である特別支援学級(弱視学級)の指導が重要となっています。
  • 高等部では、キャリア教育の実施と進路指導の推進が大切です。(進路先として、普通科は福祉就労、一般企業就労、上級学校への進学など。専攻科は施術所・治療院・ヘルスキーパーなど。)国家資格取得と技術の修得を図り社会自立にむけての指導が大切です。
  • 一般就労については、以前は職能開発校や訓練校を経て就労するケースがほとんどでしたが、最近ではインターンシップ(職場等の体験実習)を経験して、企業への理解を深め、就労へと結びついていくケースが増えてきています。ジョブコーチ制度を活用することで、職場定着が図れます。
  • 大学進学については、点字受験や弱視の人への配慮(時間延長・視力に応じ文字の拡大等)が必要です。また、学校内の移動や様々な課題への対処などにはクラスメイトの協力や朗読ボランティアの活用など積極的に自ら行動することも必要です。

(8)その他

  • 周囲の理解と協力と安全な環境整備が必要です。視覚障害の児童生徒が使用する教科書や教材等がほかの児童生徒と異なる場合、担任及び学校全体の配慮が必要です。
  • 障害者に対しての関わり方(声のかけ方、誘導の仕方)を学ぶ授業があるとよいと思います。
  • 学校全体で考えていくところから始めると良い。皆が問題意識を持ち、その後の学校生活での安定が図れます。

★障害の種別によって合理的配慮は異なりますが、障害のある子どもたちの将来が明るく広がっていくような配慮となりますことを願っております。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)