資料6:第7~10回作業部会における主な御意見

1.小中連携、一貫教育の目的、効果

○ 学校間の接続が重要だと考えたのは、中学校進学時に心身に不調を来し、学習意欲が低下し不登校になっていく生徒に直面した時。今後の教育の在り方を考える中で、なぜ小中一貫教育を推進するのかを明確に再認識して審議したい。(7)
○ 重要なのは、何のための小中連携なのかということ。(7)
○ 小中学校間の乗り越え難いギャップとは何かをきちんと議論する必要がある。暴力行為やいじめ、不登校は現象であってこれを無くすことが目的なのかどうか。小中学校で共通の目的意識をもって臨めばうまくいく。ゴールや目的を何にするのかをきちんと議論する必要がある。(7)
○ 三鷹市では「三鷹の子どもたちをよりよく育てる」ことを目的としており、小中一貫教育やコミュニティスクールはツールである。目的に従って柔軟に変形していくことはあり得る。(7)
○ 小中一貫のねらいを学習指導上又は生徒指導上の成果としているところが多いが、ネックになっているのは教員の学力観の違い。これからの子どもたちが身につけなければいけない学力とは何なのかを明確にし、これまでの学力観から抜けきれない教員がいる場合は教員の意識改革が重要となる。(7)
○ 小中学校教員の風土・文化の違いをなくすのではなく、違いを認めることが重要。違いがあるからこそ学びあえる。(7)
○ 中学生段階の暴力行為やいじめ等への対応として小学校と中学校の交流に取り組んできた結果、中学生の自尊感情が高まり、暴力行為やいじめの件数は明らかに減少してきた。学校が落ち着いてくることにより、先生同士の情報共有が密になされるようになり良い循環となる。(7)
○ 小中連携を何のためにするかを考えたとき、多くの学校では中1ギャップの解決のために行っている。教育課程の在り方を変えて段差を別のところに設けたとしても、移行の危機はどこにでもあるのであり、そうした危機にいかに対応していくのかという観点が必要。(8)
○ なぜ小中一貫教育を実施するのかに関するセオリーを定めるべきである。そのことが教員の指導観や教科観に大きく影響を与えることとなる。(8)
○ 三鷹市や呉市で小中一貫教育が成功しているのは、関係者が共通の目標をもって取り組んでいるのが要因なのではないか。(8)
○ 関係者、特に教員の理解を得ながら小中連携を進めることが重要であるが、その際、小中一貫教育により実際に子どもたちの姿が変わってくるのを見ると、先生方の受け止め方も変わってくる。(8)
○ 教師の指導力向上という前に、教師の人間性を磨き、人として魅力的な者となり、子どもたちのモチベーションを上げさせるようにしている。(8)
○ 両市(三鷹市と呉市)とも小中一貫教育と地域との連携がセットになっている。一貫教育と地域の力を学校にということを何のためにやるか。これは確かな学力や生きる力を身につけるため、中1ギャップの解消を図る必要があるからだが、両市においては、市教育委員会としても方向性、目的を明確にした上で各学校もそれを意識して取組を進めてきている。これにより、先生方の意識が変わってきて、小中一貫教育がうまく機能しているのではないか。(8)
○ 三鷹市においては子どもに人間力・社会力を育成することを教育の目的としていたが、実は目指す子どもの姿の前に「教師を変える」ということがあるのではないか。(8)
○ 得られた成果として、生徒指導上の成果や学力向上それ自体も重要だが、新たに掲げられた義務教育の目標、目的への接近が問われることとなる。(8)
○ 三鷹市、呉市の育てる子どもの姿は、一方は「人間力・社会力の育成」といい、一方は「自尊感情の向上」と言っており、表現の違いはあるが共通している部分がある。平成18年大阪府で学力調査をしたときに、大阪大学の研究者が学力と何が相関関係にあるかという分析をし、小学校は授業態度と学校の取組となり、中学校は授業態度が直結し学校の取組が直結しない結果となった。授業態度の背景に何があるかというと自尊感情、自己達成感、受容感である。そのような意味で、教育の目指している目的は角度を変えれば共通している。(8)
○ 小中一貫をしないと自尊感情は育たないのか。呉市の発表にもあったが、子どもたちの発達が2年早まっているのは事実であるが、その改善は小中一貫教育をやらないとできないのか。小中一貫教育をやる前にやるべきことを確認してから取り組むべき。(8)
○ 三鷹市に関しては、教育の質を上げていくことを総合的に考えた場合に、町の核は小学校と中学校であり、地域に対しオープンマインドとなり地域の支援を得ながらやっていくのがいいと考えている。子どもたちをよくする、その成果をあげるためには、コミュニティスクールと小中一貫教育を合わせた形がベストなのでそのように取り組んでいる。(8)
○ 小学校と中学校がそれぞれ固有に保有している、教員を含めた諸資源をより効果的に活用するツールとして、小中一貫教育の意味があるのではないか。(8)
○ 現代は、子どもたちの価値観が大きく変わってきている一方、学校現場では旧態依然とした教え方をしており、対応できないので新しい方法(小中一貫教育)を導入し、うまくいっている。(8)
○ 少なくとも連携教育は小・中学校それぞれ別々だという前提の上で、例えば教育目標やカリキュラムの共通している部分を協力してやることになるのではないか。一貫教育となると、教育目標、目指す子ども像、カリキュラムも一緒に作るという話になってくる。その点において小中一貫教育と小中連携は異なるのではないか。(10)

2.教育課程の在り方

○ 中学校の3年間で学ぶことが多すぎるので、6-3制は今の時代には合っていないのではないか。中高一貫ならそれもうまく吸収できる。なるべく中学校で職業を意識できるよう、小中一貫教育の実施にあたっては、中学校に余裕を持たせたカリキュラムが必要なのではないか。中学校の貴重な3年間を有益なものとしていけるようにしたい。(7)
○ 小中連携に関しては中1ギャップに焦点を当てるべきだが、その解決のためにカリキュラムを変えるのは少し違うのではないか。(7)
○ 新指導要領は理数系の時数が多い。小学校は履修主義であり、一通り授業で取り上げないと保護者から批判されるのが実態である。小学校段階の学力をいかにつけるかが大きな課題であり、本作業部会のどこかで、履修主義と修得主義について取り上げないといけない。(7)
○ 指導要領上、例えば移行するのが困難と言われる算数と数学など、小学校と中学校の教科ごとのつながりを考えていくことが重要。(7)
○ 自分としては「段差」は必要であると思っている。といっても各教員の力量の差などによる段差は排除すべきだが、子どもにとって緩やかでいい刺激になるような段差は必要である。(8)
(○ 9年間の区切り方を各学区に任せている。市内に7学区22校があるが、学区によって実態がかなり異なるので、9年間の区切り方は各学区で決めた上で、保護者への説明責任は果たすようにしている。(8))
(○ 例えば、小・中学校において市歌や仰げば尊しを式典の時に歌わせたり、清掃活動も行ったりして小中共通の取組を行うことで、課程を一貫させている。(8))
○ 小学校5年生10歳はクリティカルポイントであり、小学校4年生が終了した時点で一つの区切りを迎えるのは大きなポイントであると思うが、4・3・2の区切りの「3」のブロックで分けることについて、発達段階、教育課程などを考えた中で、どのような義務教育の制度が良いのかを考えることは大事であるが、小中一貫教育をやれば今までの問題が全部解消するというのはよく分からない。(10)
○ 4・3・2の「3」の部分の「カリキュラム」にいろいろな要素が入っている。小中9年間一貫のカリキュラムの中の3年分という意味、呉市の発表にあったように生活の場としての「3」という意味、また、教科担任制を「3」に導入するという意味、中学校の入学時期を乗り入れるという意味が教育課程という言葉の中に含まれている。これらは、それぞれに効果を持っていると思うが、区別して考えるべき。(10)
○ 4・3・2の区分けの議論は、まだきちんと検証ができているわけではなく、一つの試みとして取組が進められている。今後様々な形で取り組んでいただき、その内容について検証しつつ、意義、成果を考えながら進めていくことになる。(10)
○ 大きな発達の区切りがあって6・3制があり、小学校5年生で区切るという考えもあり、高校や幼児教育をどのくらい射程に入れるのかということがある。(10)
○ 4・3・2の区切りについて、三鷹市では小中一貫教育を平成18年に始めたばかりなので、この段階で「これだ」と決め打ちするのはいかがなものか。これは、教育委員会のマネジメントの問題である。先生方が当事者意識を持って、いかにしっかり取り組んでくれるかということに重点を置いたときに、どうしたらとよいかということ。
○ 小学校と中学校が教育課程について相互理解できる仕組み、制度をどう作るのかということが大事ではないか。(10)
○ 学年区分については、確かに6・3制が成長等々の変化に対していろいろなことを露呈しているのは事実だろう。しかし、現在の小学校6年間という一つのゴールに向けて教育課程を作っており、6・3制以外にどういう効果的なものがあるかというのは現時点では見えにくいため、かなり議論がないと、教育課程の学年区分を定めることは難しい。(10)
○ 10年間ほどさかのぼって、いろいろな研究開発学校のカリキュラムの取組の経緯について掘り起こしてみると、知見を加えることができるのではないか。区切り方については、現場の知見の蓄積ということとともに、義務教育の目標を達成するための在り方を探ることが大目標ではないか。改めて9年間の義務教育の目標を達成するためのカリキュラムの在り方という観点からのカリキュラム開発の取組を考えるときに、一つの方向として、小中の関係者がもっとミックスされて、9年間の教科の積み重ね、くくり方について研究開発の余地がまだある。(10)
○ 小学校と中学校がそれぞれでやっていたところを小中一貫、小中つないで一緒にやれるような仕組み、そのような安定的な仕組みを考えていくことも一つの検討すべき課題ではないか。小学校と中学校の相互の理解を促すような、そのような仕組み作りというのは更に検討を重ねていったほうがよい。(10)
○ 学習指導要領の範囲内において小中一貫教育の目的の達成は十分に可能なのか、小中一貫教育と小中連携教育は違いがあり、学習指導要領の範囲内でも、何か違うものがあるのではないか。(10)
○ 小中一貫教育は、学習指導要領の枠があってできるかということよりは、義務教育であるため9年間全体では当然ながら学習指導要領が目指すものを実現するが、それに加えてどうするのかということ。現在の指導要領の範囲内では、小学校6年生で教えることと、中学校1年生で教えることを簡単には交換できないが、そのときに制度改正まで踏む込むべきか、あるいは教育課程特例校を活用した特例でできるか。これは丁寧に議論する必要がある。(10)

3.小・中学校教員による乗り入れ指導、教員免許の在り方

○ 教員免許の在り方が小中一貫教育を阻む要因としてよく挙げられるが、逆に「小学校と中学校の区切りを明確にさせるべき」という方向性もある。今後、そのような議論との整合性をどのようにとっていくかに留意しながら審議を進めていきたい。(7)
○ 現行制度の範囲内で、教員の研修を充実し、小学校教員の教科指導のレベルを上げていくことも考えられるのではないか。(7)
○ 小・中学校それぞれの校種の良いところを交流できるよう、免許制度の見直しというのも大切なことではないか。(7)
○ 教員が中学校から小学校に行くことはあっても小学校から中学校に行くことはほとんどない。また、東京都としては、小学校と中学校の教員の人事交流はほとんどない。各々の校種のよいところを修得できるような交流をやっていくことが非常に重要である。(7)
○ 学校間連携の方向性と教員養成、免許制度の在り方から見たところの小中連携、一貫教育の在り方という両方の議論があるといい。(8)
○ 小中連携、一貫教育に取り組む際には、例えば中学校の先生が小学校の授業に参観して緻密に分析をしたり、中学校の先生が小学校に行って乗り入れ指導を行ったり、取り組みやすいところから始めるのがよい。すると、例えば乗り入れ指導を行った中学校教員が小学生の反応から新鮮な気づきを得たりして、教員の意識が変わってくる。(8)
○ 小学校の先生は大抵中学校教員の免許を持っているが中学校の先生は小学校教員の免許を持っていないことが多い。小中一貫教育は、先生方が各学校種の先生であるということを飛び超えて、制度依存型専門性から、子どもの教育のための専門家、自ら新しい課題を追及していく専門家に変わっていくということなのではないか。(8)
○ 教師の専門性として、小学校においては学級経営、中学校においては教科指導という棲み分けが現在はあるわけだが、もう一度専門性とは何かについて見つめ直す必要がある。(8)
○ 現在小中一貫教育を行っていない一般の学校において、たくさんの教科がある中でこの教科から始めれば、小中一貫教育の効果があるということがあれば、一般化されるのではないか。(9)
○ どの教科について乗り入れ指導を行うかを検討する上で、現に小中一貫教育を実践している併設型なり一体型なりの学校の成果を提供することが必要である。(9)

4.小中連携、一貫教育の推進体制の在り方

○ 小中一貫教育をやらないと社会で活躍できる人材が育成できないだろう、また小中一貫教育を推進するのに労力がかかる点にも配慮した審議をしていく必要がある。(7)
○ スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、地域ボランティアなど、多様な方に小中連携の現場に入ってもらい、そういう人たちの力を借りて小中連携を進めていくことが必要なのではないか。(7)
○ 地域も巻き込みながら学校同士を連携させる推進役を担うことで、教育行政の役割も変化し、地域の教育の推進になくてはならないものとして住民の中に定着してきている。これもいい流れだ。(8)
○ 小中一貫教育を進める上で、教員の負担(特に中学校側)をどのようにしてこれ以上増やさないようにするか、全体的にどのようにして負担軽減を図るのかという観点が大切である。(9)
○ 教職員の多忙感は大きな課題であり、これを解消するために、システムとして県教委、市教委を含め、負担を増やさないように考えていく必要がある。(9)
○ 教員の負担増の解消策として、制度化された教員加配が必要ではないか。(9)
○ 教員の加配だけではなく、推進体制としてコーディネータのような教員が必要である。学校任せでは、小中一貫教育の推進体制が確立しないのではないか。(9)
○ 小中一貫教育の目的に対して連携体制をどのようにとるかという観点で進めていく必要があるのではないか。コーディネータのような役割が必要であるが、地域連携も含む別の形のコーディネータも必要となっているため、それを集約していく必要があるのではないか。(9)
○ 実状に応じたコーディネータの在り方について開発をしていくことが大切ではないか。(9)
○ 指導観や子ども観の共通理解のため、小中の教員の合同研修も必要ではないか。(9)
○ 小中一貫教育を行っていく上で、財政難で十分な教員配置ができなくなると、教育の質が変わってしまうおそれがあるため、何らかの恒常的な制度が必要ではないか。(9)
○ 小中一貫教育を進めていくときの肝の1つは、教育課程カリキュラム作りであるため、そのカリキュラムを作成するのに特化した人材が必要ではないか。(9)
○ 小中一貫教育では、教育課程を中心とした研究を柱にしていくことが必要である。これを推進するため、教員の負担増にならないような工夫をしながら、小中の全教職員が関われるような校内体制が必要である。(9)○ 小中連携において、軸となっているのは、中学校の校長である可能性が高いが、そうすると、これまでの中学校の校長の在り方と、この小中連携の取組における中学校の校長の在り方、周辺の学校との連携を取りながら体制を整えていく、その場合の中学校の校長の存在をどのようにしていくのか検討する必要があるのではないか。(9)

5.校地・校舎、通学区域面の制約を克服する工夫の在り方

○ 今後、地域の事情に応じた9年間の在り方、中学校区単位で学区や地域の諸機関との関係を踏まえる必要性、といった点に留意しながら審議を進めていきたい。(7)
○ 小中連携を進める際の学区の在り方をどのように考えるのか。小中一貫校とする場合、生活圏に近いところで子どもの成長を見守りながらやるのがいいのではないか。(7)
○ 一般に教育界においては学校同士の横の情報共有がなされていないことが多いので、ITを積極的に導入する必要がある。ITはハードが離れたところをソフトでつなぐツールとなる。(7)
○ 施設分離型でも一体型でも教室間等の移動時間は、教員、子ども双方の問題であり、どのように克服していくのかという観点が大切である。(9)
○ 学校事故を防止する観点からも施設に関わる動線に対する配慮が必要である。(9)
○ 多くの場合、4・3・2カリキュラムを掲げているが、それが現実の学校の校舎の配置、実際の状況等々を見ると、カリキュラムは4・3・2でありながら、運用、又は具体的な空間の設計は6・3という矛盾をどのように収束させていくのかについて、検討開発すべきではないか。(9)

6.「地域とともにある学校」づくりとの関係性

○ 地域との連携や信頼関係の構築を、コミュニティスクールや学校支援地域本部といった仕組みを導入することで推進していくことが重要。(7)
○ 平成23年度は市内全小・中学校の8000世帯に対し調査をかけたところ、90%以上が小中一貫教育に満足しているとの結果になっており、小中一貫教育を通じて地域社会の課題を皆で考えようという機運が高まっている。(7)
○ 今後、地域の事情に応じた9年間の在り方、中学校区単位で学区や地域の諸機関との関係を踏まえる必要性、といった点に留意しながら審議を進めていきたい。(再掲)(7)
○ 保護者に対し、コミュニティスクールを知っているか尋ねると91%が知らないと回答し、学校支援地域本部にしても4割は知らないと回答する現状を踏まえれば、まずは保護者の啓発から始める必要がある。(7)
○ 学校が統合するのは地域が統合するということ。各地域には歴史、自負、誇りを持っているので、これを踏まえながら対応する必要がある。(7)
○ 小中連携、一貫教育の取組に関する周知を的確に行い、変化していく子どもの姿をきっちり地域に見せることができれば、地域の信頼、支援が得られるのではないか。(8)
(○ コミュニティスクールにあえて取り組まなくとも、自治会など各地域がしっかりしており、地域見守り隊を作るなど、しっかりと学校を支援している。(8))

7.義務教育学校(仮称)について

 

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