資料2:意見の整理を行う上での参考資料

○特色ある教育の展開について

○教育課程の特例の活用状況とその拡充の必要性について

○学力差やいわゆる「中だるみ」への懸念と学習意欲の向上を図る取組について

○入学者選抜の在り方と高等学校段階に進む時点での配慮について

○心身発達の差異や人間関係の固定化を踏まえた異年齢集団の活動について

○中高間の教職員の配置・交流と教職員の負担への対応について

○その他の論点

(参考)

※「実態調査結果」:中高一貫教育に関する実態調査(結果)

調査対象

  • 全国の中高一貫教育校(中等教育学校、併設型、連携型)
  • 中高一貫教育校を設置する都道府県・市町村教育委員会

調査項目

  1. 中高一貫教育の導入に係る経緯
  2. 教育課程の内容
  3. 教育活動の状況
  4. 入学者選抜の状況
  5. 教育委員会からの回答

調査時期

 平成22年3月

回収率

 99%、366校(平成21年度設置数 370校)

※「リアル熟議」:平成22年度全国高等学校教育改革研究協議会

  • 日時   平成22年10月15日 
  • 場所   国立オリンピック記念青少年総合センター
  • 主催   文部科学省
  • 参加者 都道府県知事部局、都道府県・政令市教育委員会担当者、国公私立高等学校の教職員 計271名(行政関係157名、教職員114名)

 

特色ある教育の展開について

実態調査結果

○ 全ての国立中高一貫教育校において「生徒一人一人の個性・創造性の伸長」を特色としているほか、公立・私立とも特色と据える学校が多い。
○ 「学習・進路指導」に関することは国公私立を問わず重要視されており、特に「学力・学習意欲の向上」を重視する学校の割合はいずれも70%を超える。生徒や保護者のニーズ、公立においては地域のニーズにも応えている結果と推察される。
○ 国立・私立においては、約6割の学校が「教育課程をより効率的・効果的に行う」ことを重視している。公立において割合が低いのは、特例の活用が難しい連携型が多いことに起因していると考えられる。中等教育学校と併設型に限定すれば50%を超える。
○ 国私立では、「国際化に対応するための教育」を重視する学校が多い。
○ 公立では「体験学習を重視」、「地域の特性を重視」を挙げる学校の割合が高い。地域との連携が多いのは、連携型のほとんどが公立であることにも起因。
○ 逆に、「情報化」、「環境」、「伝統文化」等を重視する学校は、公立、私立とも低調。
○ 公立について設置形態ごとに見ると、中等教育学校・併設型では、「学力・学習意欲の向上を重視」しているが、連携型では、「地域との連携を生かした教育の重視」、「地域の特性を重視」している学校の割合が高い。

委員及びヒアリング出席者の意見

○ 高校入試に振り向ける時間を活用して1ヶ月6冊程度の読書をしている。また、中学3年で英検2級に挑戦し合格する者もいる。また、中学3年の夏休みに海外研修に行くことを希望する者もいる。これは高校入試がないことにより、安心していろんなことに挑戦したり、意欲的な活動に取り組める時間的保証があるということではないか。
○ 中高間での生徒の交流を行うことが生徒の安心感にもつながっている。中学生が、高校生をよい手本として、自分がなるべく姿を高校生に見いだすことが、意欲的に学習できる大きな要素となっている。
○ 図書に関しても、中学生・高校生が読む本をしっかり整備している。中学生にとっては、高校生が読むような少しレベルの高い本があることが、知的好奇心の向上につながっている。
○ 高校入試がないため、中学3年で部活動を引退することなく高校でも部活動を継続できる。生徒は大変生き生きと活動している。
○ 中学校と高校の間で切れない6年間という期間の中で自分の好きなことに取り組め、社会に影響を及ぼすようなプロジェクトも実施できるということは、将来、大学進学後や卒業後も役に立つのではないか。
○ 6年間を通じて自分の将来を学ぶことによって、進路実現に意欲的に取り組むことができる。
○ 生徒側への調査結果によると、学習満足度や特色ある教育、探求心を育てる教育への評価などについては、在学中もプラス方向の評価で、卒業後にはそれがさらに意識されている。このことから、難関大学への進学のためではなく、大学進学後に伸びるような、自ら学習する力を、日本を変えていく力を養成するという、制度導入時の考え方・目的が、部分的には達成されているのではないか。
○ 卒業した生徒たちから見ると、詰め込み教育のようなものを受けたという意識はそれほどないようだ。
○ 生徒側も、中高一貫教育校で個に応じた教育を受けていたという認識はあると思う。
○ 中高一貫教育に関する自己効力感として、他の一般的な同世代の仲間達と比べて、自己評価すると、特に企画・創造や思考・探求に関して高く、卒業後はその意識がより高い。
○ 表現力など、世の中で生きていくための力を培ってきたことが、中高一貫教育の価値。
○ 特色ある教育に取り組んでいる教員の養成に対する支援が重要。

リアル熟議における意見

中等教育学校・併設型

【グループ別協議】
○ 中学3年の3月の取組に工夫が必要。外国への留学、スキー合宿等の行事を実施する学校もあれば、気持ちがゆるんでしまうという理由から特別なことはやめたという学校もある。
○ 学校設定教科の設置において、中高の教員の連携は必須である。
○ 外国語教育や理数教育に重点を置こうとすると、関連する教科の授業数が増加する。それに伴って総時間数が増え、7限授業や土曜日を活用する取組が増える。
○ 教員の交流が特色ある教育課程の編成に役立っている。
○ 高校生が中学生を指導するのは効果的。高校生のリーダーシップ育成につながっている。一方、中学生段階のリーダー体験が不足している。

【全体討議】
○ 授業の総時間数について、週1~2時間増加し、学校設定教科等により特色づくりを進めている例がある。
○ 特色ある中高一貫教育のためには、(1)目指す生徒像について目標の共有が必要、(2)学校行事を充実させることが必要、(3)生徒募集の観点で小・中学校、学習塾への広報を学校組織として行うことが必要、(4)中等教育学校と併設型の特徴を分けて考えることが必要(例えば、中等教育学校は、比較的規模が大きくないため人間関係が固定化しやすいことを考慮した教員の支援体制づくりが必要であり、併設型は、内進生と外進生が混在するため、高校入学時点で合同合宿をする等、外進生の目的意識の高さを内進生の刺激とするような工夫を考えることも必要である)。
○ 中高一貫教育校の最も良いところは6年間という長いスパンで一貫した教育を行うことが可能であるところである。その分、6年の間に目的意識を維持し続けることが課題となっている。

 

教育課程の特例の活用状況とその拡充の必要性について

実態調査結果

<教育課程の特例の活用状況>
○ 国立の中高一貫教育校では、中学校(前期課程)での選択教科による必修教科の代替、学校設定教科・科目に関する特例、中学校(前期課程)と高等学校(後期課程)の指導内容の一部入れ替えを活用する学校が多い。
○ 公立・私立では、高等学校(後期課程)から中学校(前期課程)への一部移行を行う学校が圧倒的に多い。中学校(前期課程)段階では、「選択教科の授業時間数の拡大」の特例が、「選択教科による必修教科の代替」の特例よりも多く活用されている。
○ 公立の連携型では、「学校設定教科・科目について卒業に必要な修得単位数に含めることのできる単位数の上限の拡大」の特例のみが活用されている。
<教育課程の特例を活用した結果>
○ いずれの特例についても、「特色ある教育課程の編成が可能」を成果として挙げる学校が多い。
○ 中学校における取組としては、「選択教科の授業時間数の拡大」の特例が「選択教科による必修教科の代替」の特例よりも成果があったとする学校が多い。
<教育課程の特例の活用にあたっての課題>
○ 国公私立ともに、「6年間一貫した指導計画(シラバス)の作成」を課題とする学校が多い。(国立6割、公立約4割、私立約5割)
○ 国公立では、「教員数の確保、持ち時間数の増加」を課題とする学校の割合が私立に比べて高い。(国公立約4割、私立約2割)
○ 公立では、「中高の教員間での打合せ時間の確保」を課題とする学校の割合が国私立に比べて高い。(国立なし、公立約4割、私立約2割)
○ 私立では、「内進生と外進生との学力差」、「中高一貫教育用教材の研究・作成」を課題とする学校の割合が、国公立に比べて高い。
○ 国公立では、特例の活用にあたり、教員の確保や打合せ時間の確保など、物理的側面における課題があり、私立では、内進生と外進生との学力差、中高一貫教育用教材の研究・作成など、教務的側面における課題を有する傾向にあると考えられる。
○ 公立について類型ごとに見ると、例えば中等教育学校では「中高間の重複内容と積み上げ内容の整理が必要」、「6年間一貫した指導計画(シラバス)の作成」、「時間割の編成」を課題とする学校の割合が高い。

委員及びヒアリング出席者の意見

○ 中高6年間を見据えた内容の厳選や組替えを行い、上限(30単位)に使い時間数を学校設定教科に当てているが、各教科で実施しようとした場合上限を超えてしまう。このため、学校設定教科・科目について卒業に必要な修得単位数に含めることの出来る単位数の上限を拡大すべき。
○ 学校設定教科・科目の単位数を増やすことは、各学校の特色を活かしたカリキュラムが可能になり、また、現在では日本の公教育の教育課程に位置づけられていない分野(例えば心理教育、表現教育、福祉教育など)を学校教育の中に位置づけられることは意義がある。
○ 前期課程の1・2年において、日本語理解が十分でない生徒のための国語(日本語)の選択2時間を確保するために、後期課程が実施している「月曜日の7時間授業」を前期課程でも実施し、合計で年間1085時間とすることを認めてほしい。
○ 新教育課程の実施に伴い、選択科目が廃止され、各教科の履修時間が示された。そのため、本校のような「特色ある教科」を設定している学校には、必修時間の枠が拡大されることにより、学校独自に設定できる時間数が縮小されたと感じている。この問題は中高一貫の特例制度とは直接につながらないと考えるが、必履修の時間数が拡大されれば、学校独自の設定できる時間数が減少・縮小するため、学校独自の特色(教科学習面での特色)をどのように工夫すべきかが難しいと感じている。
○ 連携型については、教育課程について、もう少し柔軟なものができないかとの指摘がある。
○ 連携型における教育課程の特例の拡充は難しいとは思うが、今後検討して欲しい。
○ 教科内容の中高の入れ替え等に伴う検定教科書の取り扱いについては、中高の別や学年を越えた使用、また、事前購入や継続使用等について柔軟に運用できるようにしていただければ、より円滑に進めることができると思う。

リアル熟議における意見

中等教育学校・併設型
【グループ別協議】
○ 先取り学習を実施している場合、高校段階での学級編制に影響が出る。内進生と外進を混合する場合には教科による学級編制が必要になる。
○ 学力が明らかに違うため、内外混合のクラスにできない。外進生へは特別指導等を行う努力が必要。先取り学習をいつの段階から始めるかといった悩みがある。
【全体討議】
○ 教育課程の先取りをしている学校としていない学校がある。先取りをしている学校は、保護者のニーズに対応することが出来ているが、外進生への対応(クラス別指導等)に苦慮している。一方、先取りをしていない学校は、そのことで倍率が下がる傾向があるが、特色を出すための工夫(教育内容を先取りせずに深く考える指導を行う、6年間を見通した系統的な学習に配慮する等)を進めることで保護者の理解を得るようにしている。

連携型
【全体討議】
○ 連携クラスでは、中学校の選択教科の時間を利用し、連携高校の教員がより進んだ内容の授業を行っているが、選択教科が新学習指導要領でなくなることから、今後の対応については検討が必要となる。
○ 中高が合同で6年間のシラバスを作成しているところもあった。
○ 連携型でも6年一貫のカリキュラム作成が必要。

 

学力差やいわゆる「中だるみ」への懸念と学習意欲の向上を図る取組について

実態調査結果

<学力差や学習意欲の向上について>
○ 公立の6割超、私立の8割超が、「学力の定着、向上を図る」ことをねらいとして中高一貫教育を導入している。
○ 「学力の定着、向上」については、国立・公立・私立とも、導入のねらいとしていた学校数に近い数の学校で、成果があったとしている。
○ 一方、「生徒間の学力差、個に応じた指導法の確立」に課題があるとする学校が多い。また、「高校入試がないため学習意欲の面で課題がある」として、課題を課したり別途試験を課したりするなどして対応している学校が多く見られる。
○ 公立の中高一貫教育校の設置者である教育委員会においても、多くは「中等教育の多様化・複線化」や「生徒・保護者の選択肢の拡大」を設置理由とし、設置したことの成果としてあげる一方で、生徒間の学力差や学習意欲の面を課題としている。
<中高間の交流授業について>
○ 国公私立を問わず、多くの学校で、中学校・高等学校双方の教員による交流授業が行われている。
○ 交流授業による成果として、「高校教員の中学校教育に対する理解の深まり」、「6年間生徒を育てるという意識の共有」、「生徒の継続的な把握・理解」を挙げる学校が多い。一方、「学力の定着・向上」を挙げる学校は必ずしも多くない。
○ 交流授業実施に当たっての課題として、公立の6割以上の学校が「中高間の教員の打合せ時間の確保」、「時間割の編成」、「教材研究、指導方法の工夫」を挙げているほか、全ての国立の学校も「時間割の編成」、「教材研究、指導方法の工夫」を挙げている。
<いわゆる内進生と外進生への対応について>
○ 併設型中学校以外からの入学者を受け入れている併設型高等学校においては、「内進生、外進生を混合してクラスを編成」、「学年によっては混合してクラスを編成」、「内進生と外進生を分けてクラスを編成」する学校がそれぞれ一定数見られる。
○ 授業の進め方の点では、何らかの形で「進路別に分けて授業を行ったり補講を行ったりする」学校の方が、「進路別に分けずに授業を行う」学校に比較して多い。

委員及びヒアリング出席者の意見

○ 「ゆとり」という言葉をとっても、趣旨を生かした展開をすれば個性の伸長となるが、必ずしもそうならない場合、いわゆる「中だるみ」となる。同じ事柄が指導によって長所になったり短所になったりする性格をもっている。
○ 6年間を通じて生徒の意欲、モチベーションを上げて生徒を育てるというところが、一番苦労するところである。
○ 生徒の理想や目的意識をどう中学生や高校生に提供し続けるか。これが一番大きな問題であり、それがうまくいかないときは「中だるみ」という形であらわれてくる。
○ 「中だるみ」については、在校生・卒業生・教員ともに認めているところである。
○ 6年間の間に学力差や学習意欲の差が大きくなるため、それらをいかに向上させるかが課題。中学3年生、高校1年生の段階において、いろんな行事を取り入れたり、修学旅行を行ったりするという工夫を行っている。
○ 特に後期課程における生徒の学力差に対応しつつ、中学・高校それぞれの目標を実現するために日々努力しているが、限られたスタッフの中では難しい。
○ 何をもって学力差とするのかを明確にすることが必要。基礎学力のみならず思考力・判断力・表現力というものも加味し、当初の目的である「生きる力」の基準を忘れてはいけない。
○ 決して知識・理解の部分だけで学力差が開いているわけではなく、思考力・探求心、表現力などを含めた広い意味での広義の学力について、差が出ているのが現実だと考える。
○ 学力差が生じないよう、学校の中でいかに教職員が頑張るかが重要。
○ 生徒側は「ゆとり」や「中だるみ」をむしろ自分を再構築する時期と積極的に評価している向きもある。一方、教員の側は緊張感の少なさとして指導上の重要課題と捉えており、認識に若干のずれを感じる。
○ 「中だるみ」は思春期の不安定さであり、決して悪いものではない。発達上大切であり、その意味でも中高一貫教育は重要。
○ 生徒の成長において、まさに中等教育の段階に青春としての初めての葛藤を経験する。学校を運営する側からはこれが「中だるみ」に見える。

リアル熟議における意見

中等教育学校・併設型
【グループ別協議】
○ 中学3年の3月の取組に工夫が必要。外国への留学、スキー合宿等の行事を実施する学校もあれば、気持ちがゆるんでしまうという理由から特別なことはやめたという学校もある。
○ 中学3年で高大連携、国内研修、高校1年で海外研修を実施する等して、学ぶということについて考えさせ、やる気を出させている。
○ 中学校の総合的な学習の時間において課題研究を実施し、発表会を行うことでモチベーションを高める。
○ 中学3年の1月に到達度テストを実施している。
○ 中学2年までの学習が重要。受験により勉強させるのではなく、自ら取り組むことができるようにすべき。
○ 中学校で学習習慣を身に付けさせることが大事。先取りよりも意欲を向上させることの方が重要。
○ 先取り学習を実施している場合、高校段階での学級編制に影響が出る。内進生と外進を混合する場合には教科による学級編制が必要になる。(再掲)
○ 学力が明らかに違うため、内外混合のクラスにできない。外進生へは特別指導等を行う努力が必要。先取り学習をいつの段階から始めるかといった悩みがある。(再掲)
【全体討議】
○ 中3時の中だるみ対策について、外国への留学等の行事を組むなどの取組がある一方、あえて特別なことはしないという学校もある。
○ 学力の向上をいかに図るか、すべての子どもに確かな学力をつけるにはどのようにするかということが課題である。先取りのほか、副教材の活用による学習内容の深化等に取り組んでいるが、内進生と外進生の学力差等の問題がある。例えば、内進生と外進生を混ぜてクラス編成する場合には、子どもの交流による人間性の涵養が期待できるが、教育課程の先取りは活用しづらい面がある。内進生と外進生を分けてクラス編成する場合には、学力差や保護者のニーズには対応しやすいが、交流の面で課題が残る。この点については、卒業後の進路がどうであるかという点から考えても、各学校においてジレンマがある。
○ 内進生は外進生と混合しても物怖じをしないので、あえて最初から混ぜているという例がある。また、1年だけ分けて2年から混在、3年間混在させない、内進生が外進生を挟む形で教室は配置をするなどさまざまな例がある。

連携型
【グループ別協議】
○ 連携高校への進学を希望する生徒には、つなぎ教材(橋わたし教材)を与える。
○ 学力検査のない入試を実施しているため、生徒の学習意欲・基礎学力の低下が懸念。
○ 卒業時に到達度テストを実施し、自信をつけさせたり、意欲をもたせる取組を実施している。
【全体討議】
○ 受験期になると、連携高校を希望した生徒には橋渡し教材を与えて勉強を促す。
○ 学力向上が課題であるが、入試のための学力のみではなく、主体的に学ぶ力を高めていくことが大事。また、地元の子どもを地元で育てるという意識を持ってやっていきたいという意見もあった。
○ 学力試験のない入試により、生徒の学習意欲の低下が懸念されている。
○ 合格内定後、課題を課したり、テストを実施したり、学力が足りない場合は春休み等を利用して補講を行ったりしている。
○ 中高一貫の本来のゆとりを持って育てていくという理念があるなかで、学力低下という課題との整合性をどのように考えていくか。試験がないことで多様な生徒の受入れが可能になっている面もある。

 

入学者選抜の在り方と高等学校段階に進む時点での配慮について

実態調査結果

<入学者選抜における実施項目について(中等教育学校・併設型中学校)>
○ 国公立では、8割以上の学校が、「面接」、「小学校からの調査書・推薦書」、「適性検査」による選抜を実施している。
○ 公立では、「作文」の実施率も75%と比較的高い。
○ 公立では、8割の学校が「適性検査」を実施しており、中等教育学校で67%、併設型で87%となっている。
○ 私立では、ほぼ全ての学校において「学力検査」を実施しているが、「面接」の実施率は国公立に比べてやや低く、作文の実施率はかなり低い。
○ 「抽選」を行っているのは公立のみ。
○ 「実技検査」は、国公私立のいずれにおいても低い。
○ 中等教育学校は「作文」、「小学校からの調査書・推薦書」による選抜を実施している学校も多い。
<入学者選抜における実施項目について(連携型高等学校)>
○ 連携型高等学校においては、ほぼ全ての学校で「面接」を行っている。
<入学者選抜における倍率について>
○ 中学校段階における入試については、国立の平均倍率が公立・私立に比して高い傾向。公立と私立に大きな差はうかがえないが、併設型に関しては、私立の方が比較的低倍率の学校が多い。
○ 一方、高等学校段階の入試では、私立の方が高倍率の学校が多い。
<高等学校(後期課程)への進学状況>
○ 中学校卒業者(前期課程修了者)の高等学校への進学状況は、公立の連携型を除けば、併設・連携高校(後期課程)への進学が圧倒的に多いが、一部、本人や保護者の意思の下に「他の高等学校等に進学」する例が見られる。

委員及びヒアリング出席者の意見

○ 中高一貫教育校への進学については、小学校という早い段階での進路選択が必要になるが、生徒側への調査結果においては、保護者ではなく自らが選択して進学したという傾向が高い。また、普段はなかなかない、自分の進路について保護者と話をする機会があったということは聞いている。
○ 受験産業が中高一貫教育校受験対策を講じ、売り物にしている点が気になる。
○ この12,3年、学力低下論や「内向き志向」など、教育に関する論点が変化し、「ゆとり」の考え方も変わってきた。これに伴い、中高一貫教育に対する期待も強まってきた。中高一貫教育の考え方として、生徒の思考力、判断力、表現力、探求心のある生徒を受け入れて更に伸ばしていくことが基本であるが、学力の中には教科の内容に即した理解も重要な要素であり、適性検査だけでこの点を問わなくてよいのかという問題意識がある。受験偏重をもたらしてはいけないが、教科の内容の勉強をするのは良いことであり、入学者選抜でそれを問うことを禁止している点は改めたほうがいい。思考力、判断力、表現力に優れた人材の育成の上でも最低限の基礎学力は問うた方がよいし、それによって中高一貫教育の目的が達成される。
○ 生徒全体に対してきっちりと授業を行い、学力向上を目指すためには、それなりの対象者がそろっていないと難しいのは事実。
○ ある程度学力がないと授業として成立しない場面もあるので、学力を問うことは必要条件としてやむを得ない。
○ 少子化の進展や経済状況の悪化の中で、国際競争力を持ったリーダーを育成する必要。複線型の目標を設定させ、入学後に多様な経験をさせるプログラムがあるという前提があれば、ある程度の選抜を行っても、受験エリート校化や受験競争の低年齢化にはつながらず、全く問題はない。
○ 学校の人材育成像、アドミッションポリシーが明確にされていれば、それにふさわしい選抜方法は当然あっていいし、その人材育成像にふさわしい選抜の方法において学力的な要素が必要であれば、学力を問うても良い。
○ 受験偏重の学校もあるが、そういう学校を社会でどう評価するかは、別の問題。
○ 選抜においてある程度は学力を問う必要。ただし、その学校の個性に応じた何らかのガイドラインは必要。
○ 一定の適性なり、学校の理念・目的に応じた選抜の方法を用いてよい。ただし、特に公立学校では、学力のみならず幅広い観点で適性を見るべき。
○ 実質無試験で誰でも入れるとなると、地域においてかえって評判が下がるなど、当初の中高一貫教育校の理念に反し、その存在意義が問われるような現実があるのではないかと思う。
○ いわゆるPISA型学力も学力であると位置づけられるようになってきた。学力での選抜は行っても良い。
○ 適性検査と言っても、基礎学力は求められている。
○ 学力検査であろうが、適性検査であろうが、その後の伸びは学校での教育いかんによる。
○ 中高一貫教育校ではない一般の中学校においても、義務教育としての学力保証は必要。
○ 6年間の伸びが教育の醍醐味であり、特に公立の中高一貫校の場合は、適性検査のような仕組みでよいのではないか。
○ 公立中高一貫校は、中学校から高校へ行く段階で囲い込みをしており、受験勉強が小学校に低年齢化している。公立の中高一貫教育とは何なのかが改めて問われている。
○ 先駆的に中高一貫教育を展開してきた私立学校を単に模倣するのではなく、それとは違う形での公立の在り方を考える必要。
○ 国語や算数、理科、社会などの知識・技能を総動員すれば、現在の適性検査をもっといろいろな能力・適性を調べる問題に作り替えることは可能だろうが、学力を問うてはならないため、その点の御苦労があるのでないか。
○ 基礎学力を問うと、難問奇問が出やすいとか、一定時間の中で多くの問題を解くために相当訓練が必要といった問題が生じる。一方、その場合に抽選を増やせばいいかというと、受験生へのショックもある。そういう意味で、基礎学力を問うて良いことにするとしても、本当に基礎の部分のチェック、いわゆる足切り、使える技能の制限というのは十分あり得る。
○ 基礎学力を問うことによりそのような勉強方法に集中してしまうことは中高一貫教育の理念と乖離してしまうことになるため、知識・理解と思考力・判断力・表現力とのバランスが重要ではないか。
○ 生徒側への調査結果によると、学力検査への賛否については、在校生はどちらとも言えない、卒業生は賛成ではないとの方向。学力検査ではなく、現在行われている適性検査でよいのではないかとの生徒達の考え方を反映しているように思われる。教職員側と評価が分かれる。
○ 生徒側への調査結果によると、入学者選抜の受験負担については、負担が少なかったとの回答が多い。
○ 受験への負担感については、中高一貫教育校に進学することが出来た子どもたちはあまり感じていないが、努力したけれども残念ながら受からなかった子どもたちの場合は、もしかしたらそうではないのかもしれない。
○ 適性検査は、実態として学力検査化しており、受験産業によって偏差値が示され、生徒へプレッシャーがかかっていると見るべき。生徒の負担が軽いとは言えない。
○ 小学校教育で必要条件である基礎・基本の獲得は担保されている。中高一貫教育の目的は、そういった基礎・基本を踏まえ、個性を伸ばす十分条件として、各学校の理念に基づいた教育環境を整えるということ。適性検査における総合力の確認は、子どもの個性であり、十分条件を伸ばせるかということではないか。
○ 抽選については、生徒の努力と関係ないところで結果が決まることになり、不公平感があり、果たしてそれでいいのかという意見もある。
○ 学力検査の是非について地域の状況を考慮する際には、一時点の判断ではなく、地域における環境、私学をめぐる環境の変化に考慮し、慎重に進めていただきたい。
○ 目指す人材育成像がないままに、単に次の段階の学校のネームバリューで評価する傾向が、教員にも保護者にも強い。この意識を変えない限り、解決はできない。
○ 実質的に修得主義ではなく履修主義になってしまっている点が問題。
○ 付加価値を出せない私学は衰退する。公立において模範になるような生徒や学校が出来て、それに負けないように私学が頑張るというのがあるべき姿。
○ 小学校教育においては、(1)基礎的・基本的な知識・技能の習得、(2)知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等、(3)主体的に学習に取り組む態度をバランスよく育むべく教育活動が行われており、入学者選抜を実施するのであれば、これを損なうことのないよう十分留意することが必要である。

リアル熟議における意見

中等教育学校・併設型
【グループ別協議】
○ (適性検査問題の内容について)単に学力を測るものとしない工夫が必要。聞き取り問題を取り入れたり、途中経過を書かせたり、考えたことを表現する力を見るものとする。
○ 学校で作成すると学校のニーズを反映した問題ができるが、業務量が増え教員の負担が大きくなる。また、チェック機能が働かないという問題もある。
○ 報告書及び適性検査において、何をみたいか、どんな力を測るのか、そのためにどのような問題が適切かについては検討が必要。
○ (抽選の在り方について)不公平感が強く、そこで不合格になるとショックも大きい。取り入れることが有効かどうかは検討が必要。
【全体討議】
○ 調査書を十分に活用することが必要。
○ 適性検査は、学力検査と明確に区別できるものとすることに各県では苦労をしている。単なる受験学力を測ることのないように工夫が必要である。例えば放送を聞き取り、その内容を絵に描いて表す等している。人の話を聞く力が落ちてきているということは多くの学校現場で感じられていることであり、聞き取り問題の有効性は大きいが、そこで何を聞くのか、何を評価するのかということについては十分な検討が必要である。
○ 抽選は不公平感が強いため、必ずしも取り入れることが有効とは限らない。
○ 入学者選抜においては、抽選のよしあし(不合格の理由にできる、保護者のショックの大きさ等)が共有された。また、適性検査の充実(適性検査の中で生徒の力を見る工夫)が求められる。また、受験生が大変多くなり、入試にかかる負担は非常に大きくなる場合がある。

連携型
【グループ別討議(Mグループ)】
○ 学力検査のない入試を実施しているため、生徒の学習意欲・基礎学力の低下が懸念。
【全体討議】
○ 学力試験のない入試により、生徒の学習意欲の低下が懸念されている。
○ 簡便な入試が制度上大きなハードルとなっている。学力の低下傾向。
○ 選抜の在り方は県によって対応が異なっている。作文が事実上口答試問となっているケースもあるのではないかとの意見があった。保護者等を中心に、入試のハードルがないと学習に向かわない、学力低下につながるとの指摘がある。それにどう応えるか。

 

心身発達の差異や人間関係の固定化を踏まえた異年齢集団の活動について

実態調査結果

<中高一貫教育導入のねらい、成果や課題として>
○ 教育活動の特色として「異年齢交流を重視」するとしている学校は、国立に多く、公立の学校は約半数。一方、私立では低位にとどまる。
○ 国公立の約半数、私立の3割が、「異年齢集団による活動」を行うことをねらいとして中高一貫教育を導入し、いずれもそれを上回る学校数で、「異年齢集団による生徒の育成」に成果があったとしている。一方、「心身発達の差異の大きい生徒を対象としており、学校運営に困難が生じている」とする学校はごく少数にとどまる。
○ 「生徒の人間関係の固定化」を課題として挙げる学校は、国公私ともに3割弱。
○ 「心身発達の差異」や「人間関係の固定化」に対する取組としては、スクールカウンセラーの活用や、内進生・外進生、学級、年齢の別を超えた活動、行事や部活動等での交流が行われている。
○ 公立の中高一貫教育校の設置者である教育委員会でも、「生徒の人間関係の固定化」を挙げる教育委員会は約2割、「心身発達の差異の大きい生徒を対象としており、学校運営に課題が生じている」とする教育委員会はごく少数にとどまる。
<中学校、高等学校の生徒が合同で行う活動(併設型、連携型のみ)>
○ 学校行事については、全ての国立に加え、多くの私立で、「儀式的行事(入学式・卒業式・終業式等)」、「学芸的行事(文化祭・学園祭・音楽祭等)」、「健康安全・体育的行事(運動会・体育会等)」を中高合同で行っている。
○ 公立においては、9割超の併設型の学校において、上記のいずれについても中高合同で行われている。一方、連携型においては、項目により大きな差が見られる。
○ 「勤労生産・奉仕的行事(校外清掃活動等)」については、公立・私立の4割弱の学校において、中高合同で行っている。
○ 学校行事以外の活動については、「部活動」や「生徒会活動」を中高の生徒が合同で行っているとする学校が比較的多い。

委員及びヒアリング出席者の意見

○ 深い人間関係が形成されたか否かについては、在校生・卒業生とも「そう思う」との回答である。その傾向は卒業後により高く、かつ比較的安定している。一方で、人間関係に不安定な時期があったとのデータもあり、人間関係が固定化することへの懸念も見られる。
○ 生徒が精神的に不安定になる時期がある。生徒同士や生徒と先生の関係、生徒自身の成長の度合いによってもかなり状況が変わる。

 

中高間の教職員の配置・交流と教職員の負担への対応について

実態調査結果

<中高間の交流授業について(再掲)>
○ 国公私立を問わず、多くの学校で、中学校・高等学校双方の教員による交流授業が行われている。
○ 交流授業による成果として、「高校教員の中学校教育に対する理解の深まり」、「6年間生徒を育てるという意識の共有」、「生徒の継続的な把握・理解」を挙げる学校が多い。一方、「学力の定着・向上」を挙げる学校は必ずしも多くない。
○ 交流授業実施に当たっての課題として、公立の6割以上の学校が「中高間の教員の打合せ時間の確保」、「時間割の編成」、「教材研究、指導方法の工夫」を挙げているほか、全ての国立の学校も「時間割の編成」、「教材研究、指導方法の工夫」を挙げている。
<教職員の負担について>
○ 「教職員の意識」という点では、中高一貫教育導入のねらいとする学校は必ずしも多くないが、公立を筆頭に、それを上回る学校数で、「教職員の意識改革・指導力の向上」に成果があったとしている。一方、特に国公立の学校では、「教職員の負担増」について多くの学校が課題としている。
○ 「教職員の負担増」に対する取組としては、分掌の統合、二人担任制の導入、教員の交流・情報共有などが行われているほか、中学校と高校が物理的に離れている連携型の場合は、職員の移動などの点で対応がとられている。
○ 公立の中高一貫教育校の設置者である教育委員会において、3割程度の教育委員会が、「教員の負担増」を課題として挙げている。

委員及びヒアリング出席者の意見

<教職員の人事配置・校務分掌>
○ 財政難とはいえ、教員の加配のための定数増や予算措置を講じるべき。
○ 高等学校の教員が積極的に中学校の授業に入るという形で教員の配置を行い、中学校段階でどこまで深く学習するかを高校教員が十分把握することによって、高校で学ぶ内容をより精選できる。
○ 昨年度中学3年生を担当していた中学校の教員が高校1年生の授業を受け持つことによって、生徒にとっては、自分たちの学力や理解力を十分把握している教員が担当してくれるとの安心感につながっている。高校入学後も安心して相談できる中学校教員がそばにいることが、教員に対する生徒の心の安心となっている。
○ 中学校の教科書と高等学校の教科書では全くスタイルが違う。その点の認識がないままでは、高校の教員が中学生を教えて理解が得られなかったり、中学校の教員が高校生を教えてまどろっこしくなったりする。
○ 連携型の場合、高等学校の教職員は都道府県の職員、中学校は市町村の職員であり、人事で難しい面もある。日頃の研修交流等が課題である。
○ 公立学校は、私立学校と異なり、教職員は短いスパンで異動している。
○ 国立の併設型であり、教員の半数は県や市からの異動。希望して来ていただくことが望ましいが、必ずしもそうではない方もいると思う。
○ 併設型中学校であり、高校籍と中学籍の教員はおよそ6:4。中学校の先生が本校に赴任することは晴れがましいものであると聞く。
○ 公立学校の条件整備としては、都道府県独自で加配措置を講じてきたものの、財政難の中でなかなか難しい状況がある。
○ 中学・高校の体制を合理化できる部分と独自に手厚くしなければいけない部分がある。私立学校の場合、経営上の問題と教育内容の改善という問題を、バランスをとりながら対応していかなければならず、困難な状況も一般的にはある。
<教職員の負担>
○ 多忙化の要因は、保護者の教育要求の高まり、スクールコンプライアンス、社会的要求、人身削減、生徒の多様化、異年齢集団に配慮したカリキュラムづくりや、中高一貫であることによる教員の知識や教養の高度化など。
○ 多忙化への対応策は難しいが、仕事の効率化、ITによる一括管理やデータの蓄積による省力化など。また、保護者の方が学校行事等に協力してくれる体制がある。
○ 職員研修の場を設け、全員が教員としての力量を伸ばしていけるよう取り組んでいる。
○ これまで各教科ごと、単年度でシラバスを作成していたが、6か年を見通したシラバスを作成した。始めたばかりの取組であるが、生徒への指導の一貫性を保ちつつ、指導法の継承や教員の負担軽減に資するのでないかと考える。
○ 中高一貫教育の意義を感じつつも、教材研究等で負担が増え、病欠等を取る教員も増えている中高一貫校もあるのではないか。
○ 何か新しいことを始める際に負担感を伴うのは当然。中高一貫教育校における教員の負担感は、中高一貫であることによる業務のみならず、そもそも教員の超過勤務の常態化といった背景があるのではないか。
○ 私学としては、中高一貫であることによる負担感は特に感じていない。むしろ、個性を出すためにやることが多く、教職員の負担は多い。
○ 中高一貫導入時は確かに大変だったが、今は負担感はない。要は、何をやっているかという目的意識が強ければ、さほど負担感はないとは経験則として言える。

リアル熟議における意見

中等教育学校・併設型
【グループ別協議】
○ 中学校は生徒指導と問題解決的な学習を主とし、高校は進学指導と講義型授業であり、中高間で一貫教育の共通理解がなかなか図れない。
○ 担任を中高6年間の持ち上がりとしたいが、なかなかできない。
【全体討議】
○ 中学校と高等学校の教員の相互理解が課題である。中学校と高等学校の文化の差を埋めるため、例えば職員室を同じにすること等により、互いの違いをわかり受け入れることが必要。また、中学校と高等学校の授業進度の違いを認識することが必要。
○ 教員の交流を行う場合には、中高の授業形態(選択幅の大きさ、習熟度熱授業等)の在り方、各教員の授業の持ち時間のやりくり、評価、卒業後の進路に関する指導の在り方等について共通理解を進めることが課題である。また、日常的なふれあいが必要である。
○ 教員の異動期間の問題があり、6年間持ち上がることができない場合が生じる。異動期間の弾力的運用も必要かもしれない。

連携型
【全体討議】
○ 教員が連携についてまず理解をし、学校として組織体制をつくっていくことが大事。
○ 学校規模の縮小、教員数の減少により、連携した教育活動の継続が難しい。
○ 中高が合同で6年間のシラバスを作成しているところもあった。
○ もっと連携しながら実施したいが、距離が離れていて時間が取れない。目の前の生徒への対応の時間も必要であり、ジレンマを感じる。
○ 複数の中学校と連携を行うために距離的な問題がある。

 

○その他の論点

<中高一貫教育校の整備>
○ 小学校を卒業する段階で際だった才能や意欲を明確に示している子どもが現実にいる。そのような中で、中高一貫教育を希望する子どもに対し、継続的に資質や能力を伸ばすための公立学校を整備していく必要がある。
○ 公立の中高一貫教育校はかなり高倍率になっている。少なくとも2倍程度までにおさまるように、生徒や保護者の願いを実現できるよう、学校数を増やす必要があるのではないか。
○ 小学校においては公立・私立の中高一貫教育校を受験する子どもが多く、保護者のニーズの高さを感じる。選択肢が増えることはよいが、経済的な問題で私立への進学が難しい子どももおり、公立の中高一貫教育校の人気は高い。
○ 中高一貫教育校の数がまだ少なく、入学を望む高校の受験の枠が少なくなってしまい、その結果、そこに入れない子どもが志願先を変更して高校進学したり、経済的には大変な中で私立に進学せざるを得なくなったりしている現状がある。
○ 公立の中学校と高等学校による連携型では設置者が異なり、その中でどうやって中高一貫教育の仕組みを推進していくか、という点に難しさがあるので工夫が必要。
○ 公立中高一貫校は、中学校から高校へ行く段階で囲い込みをしており、受験勉強が小学校に低年齢化している。公立の中高一貫教育とは何なのかが改めて問われている。(再掲)
○ 先駆的に中高一貫教育を展開してきた私立学校を単に模倣するのではなく、それとは違う形での公立の在り方を考える必要。(再掲)
○ 中高一貫教育の制度の導入以前から、私学は各学校が工夫をし、試行錯誤しながら中高一貫教育を行ってきた。制度が導入され、公立学校が中高一貫教育を行うようになり、その新たな枠組みに私立学校も加わるように求めても関係者の理解を得るのは難しい。
○ 私立学校においては、保護者の学費負担の大きさが課題であり、負担軽減策が必要。その点を少しずつ改善できれば、公立学校とも、あるいは私立学校間でもそれぞれの取組を(情報)交換して、お互いに切磋琢磨していけると考える。
○ 一口に中高一貫校と言っても、国公私立で全くビジネスモデルが違うと感じる。

<地域への影響>
○ 中等教育学校の場合は、新しい学校制度の選択が可能になった、学校が新しく一新され、地域の信頼が高まった、との指摘がある。
○ 中等教育学校や併設型では、市町村立中学校への影響を指摘する声もある。
○ 地域の核になっているような生徒が学区を超えて中高一貫教育校へ進学すると、その後、その地域の学校はどうなるのか、という点を、地域の教職員や保護者が懸念している。
○ 公立中学校への影響も見定める必要があるのではないか。中高一貫教育校以外の公立中学からリーダー層の子どもが大幅に抜けるために公立中学が荒廃しては困るのであり検討が必要。
○ 連携型では、小・中・高の連携が発展した地域もあるが、進学率が必ずしも高くない学校もある。
○ 中高一貫教育校で地域のリーダーを育てる旨が設置者から宣伝されている。そうすると公立の中学校はいかにあるべきなのか。
○ 本校が核となり、地域全体の取組として、中学校と高等学校が情報提供を密にする観点からの中高連携を進めている。 

<連携型>
○ 連携型を中等教育学校や併設型と同列には論じられない。
○ 連携型は様々な問題を抱えており、教育委員会や保護者が地域ぐるみで取り組んでいる。その意欲と取組をサポートできる仕組みを考えるべき。
○ 連携型の学校数が伸び悩んでいるのは、中学校と高校の距離が離れているという物理的な環境の下で、教員を支えるような体制ができていないことによる。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

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