特別支援教育の在り方に関する特別委員会(第12回) 議事録

1.日時

平成23年9月15日(木曜日)15時00分~18時00分

2.場所

文部科学省旧文部省庁舎6階 第2講堂

3.議題

  1. 合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループにおける審議状況について
  2. 教職員の確保及び専門性の向上について
  3. 交流及び共同学習(副次的な学籍を含む)、特別支援教室構想について
  4. その他

4.議事録

【宮﨑委員長】 ただいまから第12回中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方に関する特別委員会を開催いたします。
 本日は御多忙の中、また大変暑い中、御出席をいただきましてありがとうございます。
 本日の委員の出欠状況ですが、青山委員、安彦委員、大江委員、岡上委員、乙武委員、貝谷委員、露木委員が御欠席、また太田委員、山岡委員、山口委員、それから清原委員は遅れて御出席、そのほかの委員の方は御出席です。
 なお、本委員会においては、御発言される場合は必ず挙手をした上で、お名前を述べてから御発言いただきますようお願いをいたします。また、通訳の方のために、御発言の際はゆっくり御発言をお願いいたします。
 それでは議事に入ります。本日は、三つの議事がございます。一つ目が、合理的配慮等環境整備ワーキンググループにおける審議状況についてです。二つ目が、教職員の確保及び専門性の向上のための方策について。三つ目が、交流及び共同学習、特別支援教室構想等について。以上の3点について、御審議をいただく予定となっています。なお、三つ目の議事につきましては、各地域の教育委員会や学校から、それぞれの取組についての御説明をお伺いする予定になっています。御出席の方々につきましては、後ほど御紹介を申し上げたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局から配付資料の御確認をお願いします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。
 配付資料は議事次第のとおり、資料1から資料4まで、資料4につきましては4-1から4-6までございます。参考資料は、1と2の2点です。不足がありましたら、随時事務局までお申しつけください。以上です。

【宮﨑委員長】 それでは、続きまして合理的配慮等環境整備ワーキンググループにおける審議状況について、事務局より御説明をお願いいたします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。ワーキンググループの審議状況について報告いたします。
 資料1を御覧ください。前回の特別委員会でも報告させていただきましたが、資料1の1ページのとおりワーキンググループにおいては、まず障害種ごとに必要とされる配慮事項について、障害者本人、又は保護者からヒアリングを行っていただいたところです。それらを踏まえまして、それぞれの障害種の配慮事項について御整理いただきまして、ワーキングで障害種を越えた横断的な配慮事項についての審議検討を行うこととなっています。昨日、第4回のワーキンググループが開かれまして、一つは合理的配慮についての審議、そしてもう一つは、先ほど述べました横断的事項についての審議が行われたところです。
 2ページ目は、前回もお示ししましたが、ワーキンググループの名簿です。特別委員会の委員でもあられる尾崎委員に主査、河本委員に主査代理をそれぞれ御就任いただいているところです。
 3ページ以降が、障害種ごとの配慮事項を整理する前段階といたしまして、ワーキンググループで行ったヒアリングを整理したものです。これに基づき、障害種ごとの整理をワーキンググループの委員に御整理いただくことになっていまして、一番後ろのページ、恐縮ですが35ページに、それぞれの障害種にかかる配慮事項の整理をしていただく担当委員の一覧をお示ししているところです。
 3ページにお戻りください。各障害種の配慮事項の整理としまして、まず学校教育に求めること、次に配慮すべき事項と整理させていただいています。配慮すべき事項の中身としましては、1として教育内容・方法、それから4ページへお進みいただきますと、2として支援体制、3として施設・整備、4としてその他としています。
 一例ですが、今見ていただいている視覚障害で説明させていただきますと、また3ページに戻っていただいて恐縮ですが、学校教育に求めることとしまして、視覚障害についての専門性と、教科指導の専門性を備えた教員が、一人一人の視覚障害の状態に応じた指導を行うこと。それから、視覚障害を補って学ぶために必要な教材と経験が確保されること。視覚障害に加えて、ほかの障害にも対応した教育の場であること。自立と社会参加を目標とした指導を行うことと、整理しています。
 配慮すべき事項ですが、1の教育内容・方法では、自立活動の指導の充実、それから感覚を総合的に活用した概念形成への配慮、十分に教材を活用した各教科の指導の充実、視覚に頼らずとも視覚を補って、学習内容全体が理解できるようにする配慮、ICTを活用した能動的な学習の配慮。4ページにお進みいただいて、交流及び共同学習の充実。
 2の支援体制としましては、視覚障害を理解した専門性のある指導体制の確保、視覚障害に対応した教材・教具が作成できる人的・物的配置、視覚障害に対しての児童生徒及び職員の理解推進。
 3の施設・整備としまして、学校内の安全・安心の確保と照明の配慮等分かりやすい環境、視覚補助具等の充実、視覚障害に対応した教具等の整備、ICT環境の充実。
 4のその他としまして、早期からの教育支援について、学校外における支援について、幼、小、中、高等学校の各段階について、その他、ということで整理しています。
 以下、各障害種について同じような形でまとめさせていただいていますが、現段階では各障害種の横並びが必ずしもとれているものではなくて、ヒアリングを整理させていただいたものと御理解賜ればと思います。以上で、私からの説明を終わります。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。昨日のワーキンググループで整理されたものをお話しいただきました。
 このワーキンググループの主査をしていただいている尾崎先生より、補足の説明があればお願いいたします。

【尾崎委員】 全国特別支援学校長会、会長の尾崎です。合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループの主査を務めています。
 今、事務局から説明がありましたように、ワーキンググループにおいてはヒアリングを終え、それを踏まえて障害のある子どもたちのための学校における配慮はどのようなものかという観点から、審議検討をしています。
 昨日のワーキンググループにおきましては、まず合理的配慮についてどのように考えるかを討議いたしました。その中では、障害者の権利に関する条約における合理的配慮の定義や、労働政策審議会の障害者雇用分科会が昨年まとめました障害者権利条約への対応のあり方を参考にしつつ、例えば合理的配慮の内容は、個々の障害の状態に応じて多様、かつ個別性が高いものなので、具体的な配慮の内容等については配慮の視点を類型化しつつ、指針として定めてはどうかといった御意見。指針の中で好事例を示しつつ、必要なものを個別に考えていってはどうかといった御意見。ガイドラインがあると、学校も受け入れる心構えができて良いといった御意見。合理的配慮が提供される仕組みをきちんとつくっておいた方が良いといった御意見。合理的配慮にも必ずするべきものと、必要に応じて行うべきものがあるといった御意見。合理的配慮を本人、保護者と学校、教育委員会が、個別の教育支援計画や個別の指導計画といった形で形成していくことも、考えられるのではないかといった御意見があったと思います。これは、覚えている範囲のものを取り上げていることです。
 昨日、議論した内容については、事務局の方にも整理してもらい、ワーキンググループとして教育における合理的配慮の考え方について、次回以降も整理していく予定です。
 次に資料1の障害種ごとの整理をもとに、横断的に共通して配慮すべき事項について主に御議論いただきました。障害種ごとの整理は、ヒアリングを整理したものであり、見ていただいてお分かりになりますように、まだ障害種ごとに網羅的に記述されているものではありません。特別委員会の委員の何人かも、ワーキンググループに御参加いただいていますが、それぞれ障害種ごとに分担を決めまして、今検討を行っていただいているところです。
 昨日の議論の中では、障害種別に共通するもの、障害種ごとに異なるもの、さらに個別の障害のある子どもの状態等によって変わってくるものもあります。そのような観点から整理してはどうかという御意見がありました。それを受けまして、共通する事項を書いた上で、障害種ごとに異なることについて詳細を書くといった整理の方法についての指摘もありました。
 また、小学校などの通常の学級で行われるものと、特別支援学校、特別支援学級、通級で行われているものを、それぞれ書き分けられるものは書き分けた方が良いのではないかといった御意見、また重複障害は様々な組み合わせがありますが、その重複についての配慮についても、きちんとどこかで書いた方が良いといった御意見などが出されました。
 また、本日もこの会議で議題とされていますが、教員の専門性についての配慮事項なども、整理した方が良いのではないかといった御意見もありました。専門性の中では、例えば子どもの見立て、アセスメントをする人が必要といった御意見もありました。以上で、ワーキンググループの検討状況についての報告を終わりといたします。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。昨日行われたワーキンググループの状況について御説明いただきました。
 資料1につきましては、前2回、7月、8月でヒアリングを行ったものを、あくまでも整理をしたものということで、資料として出されているものです。それを受けて、昨日のワーキンググループが開かれたという御説明でした。様々にいろいろな御意見が出ていまして、これをさらにワーキンググループで整理をしていただくことになるわけですが。ここまでの主査、事務局からの御説明について、御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。どうぞ。
 中澤委員、お願いいたします。

【中澤委員】 横浜訓盲学院長の中澤です。
 昨日、ワーキンググループを傍聴させていただきまして、熱心な御討議を大変感心を持って聞かせていただきました。そのときに議論を聞いていまして、少し良く分からないことがございました。それは、山岡委員も質問されましたが、合理的配慮というのは、通常学校の中に障害のある方が入ったときの合理的配慮について話し合いをしているのか、特別支援学校も含めるのかということで、そのときのお返事は両方であると記憶しています。そうなってきますと、ディスカッションの内容が合理的配慮というよりも、教育制度全般に入っていって、焦点が十分に見えなくなった感じがいたしました。
 そこで、改めて御説明いただけるとありがたいのですが、現在ワーキンググループで討議している合理的配慮というものを、どういう形で位置付けているのか知りたいと思いました。
 例えば合理的配慮について、海外の例などをちょっとひもときますと、例えば通常学校での合理的配慮ですと、大きく分けて4点ぐらいに分けていることがあります。一つは、物理的なアクセスをできるようにすること。とにかく、クラスの子どもと同じように平等にアクセスできるようにするための配慮が重要かと思いますが、例えばそこには物理的な配慮、スロープを作るとか、情報が分かるような手立てを講じるとかもあります。それから、授業が分かるようにする手立てです。席が前の方に行くだけでも分かる配慮になるかもしれませんし、具体的な授業へのアクセスの配慮です。
 それから、もう一つとても大事で、今回取り上げられていないのは、テストへの合理的配慮です。中身の平等性を確保しながら、障害の方の配慮をしながらテストをするというのは、とても多く語られる内容ですが、これについては特に出ていませんでした。
 それからもう一つは、木舩先生もおっしゃっていましたが、雇用とか高等教育になりますと、中身については一切できるだけ手をつけないで、平等なアクセスを保証するということでクリアなんですが、義務教育や高校ぐらいまではカリキュラムへのアクセスをどう配慮するかが、どうしても通常学級に知的障害の方が入るときに検討しなければならない問題になります。そのほか、障害種ごとに特有な、欠けてしまうものをどう補うかという配慮、例えば視覚障害だったらば点字の学習や、それから歩行の学習を、通常の学校の時間に加えてしなければいけない、そういう側面が通常語られます。
 これは、あくまでも通常学校で、海外などで合理的配慮を検討するときに出される視点ではあります。そういう整理の仕方も、通常学校での合理的配慮をもし検討するのであれば必要であると思いました。
 ただ、特別支援学校を含めた障害種別の合理的配慮は、是非整理する必要があると思いました。と申しますのは、通常学校などでも行う配慮が、特別支援学校等で根拠がある、それによって生徒が安心して力を伸ばせるという根拠があるものであるということをきちんと整理する必要があるためでもあります。ということで、少し疑問に思った点を長くなりましたが述べさせていただきました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。これについては、少し何かコメントはありますか。
 引き続いて大南委員、お話をいただきます。

【大南委員】 全国特別支援教育推進連盟の大南です。3点お願いいたします。
 まず一つ目は、重複障害についてですが、重複障害についての項目が、知的障害・肢体不自由に関する重複障害と、それから視覚障害・聴覚障害の重複障害、こういう書き方になっていますが、盲学校、視覚障害の特別支援学校には、知的障害を伴う重複の子どもたちは結構いるはずです。それから、聴覚障害の特別支援学校にも、知的障害を伴う重複障害の子どもたちはいるはずです。3ページのところで、視覚障害については「視覚障害に加えて他の障害にも対応した教育の場であること」という、他の視覚障害以外の障害をあわせ有する児童生徒にも云々という、こうきちんと述べられているわけですが、聴覚のところには、それが明記されていないように思います。私はやはり、書くのであれば両方書いておいていただきたいと思うわけです。
 二つ目は、8ページの、知的障害のところで特別支援学級のことが述べられているわけですが、自閉症・情緒障害のところにも、8ページと同じような特別支援学級についての書き方が必要なのではないだろうかと思います。そのほかの障害についても、特別支援学級の位置付けというのをかなり明確にしておく必要があるのではないかと思います。それは、交流及び共同学習を考える上で、非常に大事な内容になってくるのではないかと思います。
 それから三つ目は、高等学校との関わりですが、21ページは、これは自閉症・情緒障害の部分ですが、高等学校には特別支援学級がないことなどについて、その必要について検討することが望ましいと述べられています。これは、もう何十年も言われてきたことですが、なかなか制度の上では位置付けられません。そうすると、また望ましいで終わってしまうのではなくて、例えば通級による指導ですと、現在入学をしている生徒に対する指導ができる。特別支援学級というのは別につくらなければならない、そして入試の問題をどう考えるかという、そこで行き詰まるわけですが。現在、高等学校に入っている特別な教育的支援を必要とする生徒について指導するのであれば、私は通級による指導の方がより効果的ですし、すぐ手がつけられるであろうと思います。そんな気がしますので、特別支援学級だけではなくて、通級による指導も是非加えていただけると幅が広くなるのではないかと思いました。以上です。どうもありがとうございました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございます。お願いいたします。

【佐竹委員】 全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会、佐竹です。先ほどの中澤先生のお話に、もうちょっと保護者として付け加えさせていただきたいことがございます。
 私も昨日のワーキンググループを傍聴してまいりましたが、特別支援学校は、すべての子どもたちの必要とする設備が全国的にそろっているかというと、そういうわけではありません。このことは、非常に誤解されている方も、もしかしたらいるのかもしれないなと思いました。先立っても、大阪の方の保護者とお話をしていましたときに、うちの学校のスクールバスには階段があるという話をしていました。肢体不自由校ですので、階段があっては大変困るということは、どなたにもお分かりになることだと思います。
 例えば私が常々言っている給食の4形態、初期食、中期食、後期食、普通食というものが必要だと言ってまいりましたが、これは全国的に必ずしも整備されているものではありません。特別支援学校においても、ハード面、ソフト面、教育面において、まだ不十分なところがあるということを、まず保護者として申し上げておきたいと思います。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。ほかにありますか。
 はい、齋藤委員。

【齋藤委員】 全国心臓病の子どもを守る会の会長であり、前足立区の教育長であったという立場からお話をさせていただきたいと思います。齋藤と申します。
 私も昨日、ワーキンググループにオブザーバーとして参加させていただきました。非常に熱心な御議論で、とても参考にさせていただけるものだと思っています。ただ、この事務局が出してくださった障害別のヒアリングの整理は、これがもっと整理されると非常に分かりやすくなるのかなと思います。
 例えば、昨日も議論に出ていましたが、共通事項としてハード面の問題とか、それから就学前の教育のあり方とか、様々のものがあるだろうと思います。それから、その障害別に特有なものも、やはりあると思います。その辺が整理されるだけでも随分違ってくると思いますので、それが終わってから、しっかりと中身を議論させていただいた方が合理的なんのではないかと思っています。次回以降、よろしくお願いしたいと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 何人かの委員の方々から、昨日の傍聴、それから今日の資料1を踏まえての御意見を頂戴いたしました。これについて、尾崎委員、お願いします。

【尾崎委員】 全国特別支援学校長会の尾崎です。
 昨日の説明の補足をさせていただきます。中澤委員からいただいた御意見ですが、合理的配慮については、通常の学校とそれから特別支援学級、特別支援学校について分けたらどうかという御意見が出ましたので、そういうことも受けて、これから整理されていくだろうと思います。
 それから、大南委員から出ました重複障害についても、御意見としては中では重複障害についても、その障害種別の中に取り出してきちんと記述した方が良いだろうという御意見が出ていましたので、今後は障害種別に分かれた資料を整理していく中で、そういうことも配慮されるだろうと考えています。
 それから、特別支援学級や通級指導による合理的配慮のあり方についても分けた方が良いという御意見もありましたので、そういう御意見も参考にして、今後整理をさせていただければと思います。
 それから、最後に齋藤委員から御指摘がありました、現在の状況がまさにそうで、共通事項を今挙げています。その共通事項を挙げる上で、ハード面、それから就学相談、あるいは早期教育も含むのではないかという御意見も出ました。共通事項としてどんなものを取り上げるかは、今後も各ワーキンググループの委員から御意見をいただいて、共通事項をつくっていきたいと考えています。
 以上で、まだ経過であるということで御理解いただければと思います。そして今日、今いただいた御意見も含めまして、また整理をしていきたいと考えています。

【宮﨑委員長】 よろしいでしょうか。久松委員、お願いします。

【久松委員】 全日本ろうあ連盟、久松です。
 発言の機会をありがとうございます。ワーキンググループの皆様、熱心な御議論に対して御礼を申し上げます。
 会議名が合理的配慮に関するとあるワーキンググループですが、今回の設問を読みますと、学校に求めること、配慮すべき事項と、2点に分かれて書かれていると思います。一般的に、私どもが合理的配慮という言葉を使うときは、いろいろなところで審議をしていますが、すべきこと、しなければならないことと、望ましい、努力していきたいこと、こういう配慮があることが望ましいというような使い方をします。配慮すべき事項というこの設問があった場合には、最低限これだけは用意しなければならないという意味で受けとめることが、一般的だと思います。
 やるべきことと、すべきことと、また、できるだけこのような形で整備してほしい、望ましいこと、このように言い方をする必要があるのではないかと思います。特別支援学校でやっているような学校教育環境の整備というものは、私ども聞こえない立場、また視覚障害者等の立場から情報アクセスについて見ますと、一般学校に比べれば整備されていると思います。やるべきこと、このやるべきことが、地域の学校の中ではどこまでやれることなのか、それを考えると問題も出てくると思います。やるべきことの基準を整理していく。予算上問題がありできないというような意見が出た場合、やるべきことではあるが、望ましいという言い方に留めるか、このあたりを整理していかないと、具体的に学校で、また教育を実施する立場において、やるべきだが、やるべきこととして努力するべきものなのか、望ましいことなのか、これを整理すべきだと思います。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。この点も、ワーキンググループで多分整理をする方向で検討がされたと思いますが、何かありますか。よろしいですか。
 今、久松委員がおっしゃったことを十分踏まえて、ワーキンググループが動いてくれると思っています。
 ありがとうございました。時間的なこともありますので、この点についてそれぞれの委員から御指摘いただいたところは、ワーキンググループで整理していただきたいと思います。

【中澤委員】 一つだけ良いですか、手短にいたします。

【宮﨑委員長】 はい。

【中澤委員】 横浜訓盲学院の中澤です。1点、手短に意見を述べさせていただきます。今、重複障害のことが問題に出まして、それに私自身の提案が絡んでいるので、少し説明をさせていただきたいと思います。
 重複障害が二つに分かれていまして、その中の一つが視覚障害と聴覚障害の重複で、別扱いになっています。それは、前々回のこの委員会において、盲聾が権利条約に名前が出ていますし、また非常に独自なニーズがありますので、それも障害種の中に入れていただいて検討していただきたいとお願いしまして、了解を得て入ったという経緯がございます。
 残念ながら、日本ではまだ重複障害の一つとみなされていますが、目と耳に障害がある場合、通常教育で使うのはほとんど目と耳の情報ですので、大変独自な配慮が必要な領域です。ただ、残念ながら、まだ重複障害の中に盲聾が入っているために、今回取り上げていただくときに、重複障害のパート2のような形で出ているという経緯がございます。イギリスでは、multi sensory disability、多感覚障害という名目で整理されていますし、アメリカではdeafblind、盲聾というふうに、重複障害と分けて対応するとなっている背景がございます。
 昨日も吉松委員から、視覚と聴覚が重なると、全く独自な障害になるというコメントもいただきましたが、そういった経緯があって、重複障害が二つ出ているというところを少し説明させていただきました。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。ワーキンググループの動き、ヒアリングを受けての整理、それから具体的にどんな形で今後整理したものを共通のもの、それから特有のものというふうに分けていくかの検討を、これからしていくということですので。各委員の御指摘をされたことも含めて、ワーキンググループでさらに検討をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
 それでは続きまして、前回に引き続き、教職員の確保及び専門性の向上のための方策についての審議をいただきたいと思います。
 これまでの審議を踏まえまして、私と石川委員長代理と事務局で、皆様に御議論いただく点を少し整理してみました。どうしても、この教職員の確保、専門性の向上ですと、少し分けて整理をして検討する必要性があろうかということで、こういう手法をとらせていただこうと考えたわけです。
 まず、事務局から資料の御説明をお願いいたします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。資料2を御覧ください。
 これまでの議論を踏まえて、さらに御審議を深めていただくために、宮﨑委員長、石川委員長代理に諮りつつ、論点をまとめました。まず、(1)総論といたしまして、昨年12月におまとめいただいた論点整理の中で、高発生頻度障害(発達障害等発生頻度が非常に高い障害)、低発生頻度障害(視覚障害、聴覚障害、重度・重複等)という整理を、例えばとう形で今後の検討としていましたが、この形で教員の専門性を分けて整理して進めていくべきかどうかについて、御議論を賜ればと考えています。
 次に、(2)の特別支援学校の教員の専門性です。こちらは特別支援学校教諭免許状の保有率の向上を図るということですが、今当分の間、特別支援学校教諭免許状を保有せずに、幼・小・中・高等学校の免許状のみで特別支援学校の教員となることが可能とされている制度について、どのような方向で見直ししていくべきか。例えば、現在の保有率の計画的な引き上げのための方策についてどのように考えるか。また、視覚障害、聴覚障害といった、大学において養成できる人数が限られている障害種についての教員確保のあり方について、どう考えるかということです。
 それから、(3)としまして、小・中学校の特別支援教育担当教員等(特別支援学級担任、通級指導担当教員)の専門性としています。小・中学校の特別支援学級担当教員、通級指導担当教員は、現在小・中学校の免許状のみで担当することができるが、それに加えた専門性について、どのように考えるか。例えば特別支援学校と特別支援学級の人事交流等により、特別支援学級担当教員を各学校の特別支援教育の中核として位置付けて、特別支援教育を推進するための方策といったものについて、どのように考えるかということです。
 (4)としまして、特別支援教育コーディネーターの専門性を挙げています。これについては、学校全体の特別支援教育の推進という観点から、どのような専門性が必要かということです。
 その次ですが、(5)としまして、特別支援教育担当教員以外の教員の専門性ということで、養成研修において、それぞれ何を身に付けるべきか。
 続きまして(6)としまして、特別支援教育支援員についてということで、特別支援教育支援員等の一層の活用を図るために、どのような研修を実施していくべきか。
 (7)としまして、教職員への障害のある者の採用・人事配置ということで、障害のある教職員の採用促進のために、どのようなことが考えられるか。
 (8)としまして、学校外の専門家、親の会、NPO、学校支援ボランティア等との連携ということで、外部専門家や関係団体等とどのように連携することが適当かとしています。
 2ページ以降につきましては、昨年12月におまとめいただいた論点整理の該当部分、2ページから5ページ目、それから6ページ以降につきましては、昨年の3月まで文部科学省で開いていました、特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議というものがありまして、そこで審議経過報告が取りまとめられていますので、その関係部分を参考として示しています。以上で説明を終わります。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、これからこの教職員の確保及び専門性の向上についての自由討議に入ります。30分ぐらい時間があろうかと思います。後ろに、これまでの審議をしてきたこと、論点整理で出されたもの、それから協力者会議の審議経過報告など、これまでの審議の状況について、改めてお目通しをいただければということで出してございます。8点ほど出してありますが、御発言されるときに、この部分のどことどこに該当する御意見だというふうに挙げてお話をしていただければありがたいと思います。どこからでも結構です。
 それでは、大南委員、尾崎委員、お願いします。

【大南委員】 全国特別支援教育推進連盟の大南です。(1)と、それから(3)、(4)について意見を述べます。
 まず(1)の特別支援教育の専門性についてですが、「高発生頻度障害は基本情報としてすべての教員が有し」、ここまでは私はこのとおりで良いと思いますが、例えば発達障害について、専門性が低くて良いかというと、そんなことはないので、低発生頻度障害と同じように、担当教員がやはり専門性は高めなければいけないことだと思います。ですから、多くの教員というか、すべての教員が持っている基礎的な部分と、それから専門性の高いものを持っている。この両方がないと、低発生頻度障害だけ専門性が高くて、高発生頻度障害は専門性が低くても良いという読み方に、これだとなってしまうと思います。ですから、やはりそうではなくて、両方持っていてほしいと思います。
 それから(3)のところです。前回も申し上げましたが、これからもし免許法が変わって、幼・小・中・高の学校の枠が外れて、特別支援教育教諭免許状ができれば、特別支援学級、通級指導教室担当教員もそれを持っていただくことができるわけですが、それが近い将来にできないとすれば、一つは、私は二種免レベルの内容のものを、特別支援学級を担当する教員には持っていてほしいと思います。
 それからもう一つは、現在特別支援学級や通級指導教室を持っている担任に対して、授業研究を中心として単位制というか、ポイント制のように、何時間そういう授業研究を講師について受けたら、例えば20ポイントぐらいになれば一つの資格が出てくるなど、ある程度それを考えてほしいと思います。単位ということになると、またちょっと免許法と絡んでくると思いますが、いわゆる授業をやりながら研修が深められる、あるいは専門性が高められることを考えていく必要があるだろうと思います。
 それから、(4)の特別支援教育コーディネーターの専門性です。これは、一つは障害についての専門性を高めるべきであるという声がありますが、障害についての専門性とは一体何かということです。例えば10の障害全部が分かる人なんていうのは、日本中に誰もいないわけです。障害についての専門性というのをどこまでコーディネーターに求めるのか。それは、ある程度どこかで、文章で整理しておく必要があると思うのが一つです。
 もう一つは、現在ある区ではいわゆる講義を聞くとか、あるいは何か資料をもとに研修をするというのではなくて、大体7、8人から10人以内がコーディネーターのグループに分かれて、そしてその中に3年以上の経験のあるコーディネーターと今年初めてコーディネーターになる人たちが一緒になって、実際に学校でどういうことでコーディネーターが苦労しているのか、あるいはコーディネーターとしてこういう情報を持っていなければいけないのかという、そういう研修の場を今つくりつつあります。
 専門性といったときに、私は一つは、障害については大事なことですが、もう一つは組織として、組織を動かせる人といいますか、自分で何でもやるのではなくて、まさしくコーディネートをして役割分担、誰さんにはこれをやってほしいという、そういうことができる、だから学校の中である程度組織を動かせるような専門性というか、仕事としての役割を担えるようになってほしいと願っています。以上です。どうもありがとうございました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは尾崎委員、お願いいたします。

【尾崎委員】 全国特別支援学校長会の尾崎です。私の方からは、1番と2番と3番について意見を述べさせていただきます。
 1番の特別支援教育の専門性の書き方ですが、これは確か2ページにございます(1)の丸2から引用された文章だと思います。ただしここでは、「例えば、米国や英国で行われているように」ということで、日本でも参考にする必要があるというような書き方で、高発生頻度障害と低発生頻度障害が書かれていると思います。私は、発達障害等発生頻度、発達障害等の「等」については、これは知的障害は入らないと考えたいと思っています。
 それから、そうではないと、これが入ることになりますと、知的障害についてはすべての教員が知らなければいけないことになりますので、入らないと考えています。それから、高発生頻度障害はどの程度を見るかといえば、文科省の調査では6.3%あったのが発達障害等だったと思いますので、そのときは知的障害は入っていなかったと考えていますので、入っていないと思います。
 それから低発生頻度障害の方に、視覚障害、聴覚障害、重度・重複等と書いてありますが、これは今、全特長の方も5障害の学校がありますし、専門とする学校がありますので、肢体不自由、それから病弱・知的障害も入れていくべきではないのかなと、等であらわす前にそれも入れていくべきだろうと考えます。
 それから、基本情報として発達障害等のすべての教員が保有するというのは、当然特別支援学校の教員も保有すべきもので、特別支援学校の教員は発達障害等、それから各障害にも両方対応できるという方向性で専門性を向上させていくというのが、特別支援学校のセンター的役割のことを考えれば当然必要かなと思います。それが1点目です。
 それから、2番の特別支援学校教員の専門性ですが、免許のことについては、これは必ず免許を持つという方向で検討をなされるべきだと思いますが、その前にやっぱり下に2点書かれていることについての解決をした後でないと、免許を持っていないが、どうしても特別支援学校の教員が必要となって配置されてしまうという状況が変わらなくなると思いますので、下の二つの方策に十分なめどをつけた上で、全員が免許を持てるような方向性をつけてほしいと考えます。
 それから3番目の小・中学校の特別支援学級等の専門性ですが、これも特別支援学級とか通級指導担当教員の免許の保有率をまず高めていくということを、制度化をして高めていくことがあった上で、特別支援学校と特別支援学級との交流が行われるべきではないかと思います。そうでないと、それぞれが専門性が薄くなってしまうという危険性があるのではないかと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 今、尾崎委員がおっしゃった特別支援教育の専門、特別支援学校教員の専門性の方策の二つ、それについての具体的な何か御意見をお持ちですか。あったら、それも重要なことなのでお願いします。

【尾崎委員】 (2)番ですか。

【宮﨑委員長】 (2)番です。

【尾崎委員】 はい。保有率の計画的な引き上げの方策としては、特別支援学校に転勤してきた、免許がなくて転勤した人には、必ず保有を義務付けるということを教育委員会が行うということです。現職の教員はすべて持てる方策をとるという方法が、一つ考えられるのではないかと思います。

【宮﨑委員長】 今現実に、各都道府県教育委員会が認定講習等を大学と協定を結んで進めていますが、そういったレベルの問題ではなくて、もう少し負荷をかけるという意味ですか。

【尾崎委員】 それは、大学と教育委員会で今一生懸命連携はしていますが、その予算措置も含めて、必ずとれる方策を教育委員会、国の施策としてやっていくというぐらいまでやらないといけないと思っています。今のままでも、毎年努力をして何人も免許講習に通っています。それもなかなか学校体制の中で非常に厳しい中でやっていますが、それが十分できるような体制づくりを、国の後押しも得ながらやっていくべきだと思っています。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは河本委員、お願いします。それから、齋藤委員お願いします。

【河本委員】 全国特別支援学級設置学校長協会の河本です。ありがとうございます。私からは、(3)番について、3番で2点、お話をさせていただきたいと思っています。
 1点目は、今の話、先ほどの大南委員と重複するところがありますが、特別支援学級の、あるいは通級指導学級の担任の免許の問題です。ここ数年、特別支援学校教諭の免許を、それぞれの学校で取るように教員たちには勧めています。しかし数年来、30%の前半部分を行ったり来たりしており、なかなか保有率が上がっていかないということが現状です。今の認定講習だとか、あるいは放送大学だとかで取る努力をしていますが、やはり仕事をしながら取るというのは、非常に困難なところがあるということが実態ということです。
 先ほどの大南先生のお話ではないですが、特別支援学校教諭の免許ではなくて、もう少し軽いというのは、表現があんまり良くないかもしれませんが、特別支援学級に適した免許といいますか、そういった免許制度があれば良いと感じています。これは、昨年度もそんなお話をさせていただいたことがあるだろうと思います。是非特別支援学校教諭の免許と、特別支援学級教諭の免許というあたりのところで、2系統といいますか、そんなことをこれから考えていっていただけると良いと思っています。
 それからもう1点、ここに管理職のことが書いていないですが、全国特別支援学級設置学校長協会では、それぞれの教員の専門性を高めることの重要性、それをかんがみて、研修制度であるだとか、あるいは様々な方法をとっており、一番の近道といいますか、重要視しなければならないのは、自校の校長がいかにそれぞれの学校の中の教員を指導できるか、できないか、そこが境目ではないかと思っています。ですから、教員の質を高めるためには、校長の質を高めるというあたりが、全特協ではこれを数年訴えているところです。
 校長のリーダーシップの発揮だとか、盛んに文言では言われますが、果たして校長のリーダーシップがそれだけ発揮できているかどうかということ。それから、校長のマネジメント、特別支援学級を含めた学校全体の経営方針がどうであるかも含めた校長のリーダー性を発揮するための底上げといいますか、そのあたりのところをどうするかが、これからの大きな問題になっていくんだろうと考えています。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは齋藤委員、そして清原委員というふうにお願いします。

【齋藤委員】 全国心臓病の子どもを守る会の会長をしています齋藤です。前足立区の教育長だった経験からのお話をさせていただきたいと思います。(3)と(4)について、お話をさせていただきたいと思います。
 私は、ここの人事交流を以前も主張した経緯がございます。この特別支援学校と、特別支援学級の人事交流です。これは、先ほどほかの委員の方がおっしゃったように、両方が少し専門性を持ってから人事交流を行うよりも、あまりにも今の現状の中で、こうでもしない限り特別支援学級の方の精度が上がらないだろうと、私は経験上考えています。
 足立区は現在、2,600人の教員を抱えていまして、そのうち今年度は200人、新規採用が入っています。校長先生は、本当にマネジメントしながら、その教員をいかに普通学級でしっかり40人、あるいは35人を見られる教員に育てるかで四苦八苦しています。
 そういう中で、学校によっては初任にも関わらず、特別支援学級に配置せざるを得ない学校もございます。こういうところですと、わずか2、3年で普通学級に人事異動させます。そうでないと、その教員がそこに4年間、あるいは6年間いますと、なかなか普通学級でこれから教員をやっていくのが難しいという、そういう、私は適切かどうか分かりませんが、配慮のもとの人事異動だと伺っています。
 そういうことを考えますと、全国でこの特別支援学級の担任で特別支援学校教諭の免許を持っていらっしゃる方が約30%というお話でしたが、おそらく東京都ということを言うと言い過ぎかもしれませんが、我が区においてはかなりのパーセントが低いだろうと思っています。一部の教員が、ずっと特別支援学級を幾つか回っている方がいらっしゃいますが、多くの教員は普通学級との間を行ったり来たりしているので、ここの中で長期間にわたって確保できるような専門性というのは、私はちょっと机上になってしまうという気がいたします。是非特別支援学校の方で、そういう人事交流ができるのであれば、その人が特別支援学級の担任の6、7人いる中に1人入るだけでも、随分日常的なOJTができるだろうと考えています。もちろん、障害別によっては全くどうだか良く分かりませんが、そういう意味でここの人事交流というのを書かせていただいています。
 それから、(4)の特別支援教育コーディネーターにつきましては、現在養護教諭を担当にしている学校が意外と多いのではないかと思いました。私もふたをあけたら、ほとんどが養護教諭だったということがありました。これはもう、複数制にしなくちゃいけないということで、養護教諭は教諭でやっぱり入らざるを得ないでしょうし、それに必ずプラスの、一定程度主幹クラスが望ましいですが、それもなかなかいません。最低でも主任クラスの人をつけるような、そういう経営上の配慮をしていかないと難しいだろうと思っています。
 それから、絡めて研修の件ですが、以前大南先生だったでしょうか、研修は外へ出て研修するというだけですと、非常に教員の負担になってしまうし、職場の仲間の負担になるというお話がありました。そこへ来てくださって研修をする、OJTの違うパターンだと思いますが、そういうことがコーディネーターが本来できれば良いのでしょうが、そういうことも含めてそこの場で研修をできるような、そういう制度とセットでお考えになった方が良いというように思っています。私は以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 清原委員、お願いします。

【清原委員】 ありがとうございます。三鷹市長の清原です。市長部局で障害者施策を担当している立場から、意見を申し上げます。
 いずれの項目にも共通することだと思いますが、先ほど冒頭御紹介いただきました、合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループで整理されつつある合理的配慮について、やはり特別支援教育の専門性の中にしっかりと位置付けていくことが必要だと思います。これは教員だけではなくて、コーディネーターであるとか、あるいは学校外のボランティアの皆様であるとか、そうした特別支援教育に関わる方はもちろんのこと、全体としてこの合理的配慮に対する認識を高めていくことは重要ですから、特に専門性と言わずとも、それこそ大げさではなく全国民が認識することが重要だとは思いますが、まずやはり特別支援教育に関わる教員や担い手は、合理的配慮についての認識と行動力というものを持っていただければというのが1点目です。
 2点目に、特別支援教育コーディネーターの専門性についてですが、これはこの場で三鷹市の事例もお話しいたしましたが、障害のある方を支援するということは教育の場だけではありません。したがって、教育が本当にその目的と機能を果たすために多様な支援が存在するわけです。実は、先ほどの合理的配慮等環境整備検討ワーキングチームのアンケートでも、その他というところに、早期からの教育支援や、学校外における支援というのを位置付けていらしたわけです。
 したがいまして、いわゆるコーディネーターというのは、先ほど齋藤委員もおっしゃいましたが、養護教諭というような資格を持って担当されることは、もちろん意義があるとは思いますが、やはり幅広い障害者をめぐる行政サービスであるとか、その他の制度であるとか、そういうことを把握した上で、その対象者の状況に応じたコーディネートができることが重要だと思います。その場合には、必ずしも行政が担う部分だけではなくて、民間が担う部分についても知っていることが有用だと思いますので、柔軟性を持って障害者をめぐるサービスについて認識しつつ、特別支援教育をコーディネートすることが、今後期待されていくと思います。
 そうしたことから、研修についてですが、これも齋藤委員が今御紹介されましたように、何か特別な場所に出向いていって、基本的に専門家のお話を聞くというような、そういう研修もあり得るでしょうが、私は、障害のある当事者のお声を多様に聞くような機会であるとか、あるいは保護者の皆さんの生の声を、保護者会というような形式ではなくて、障害者とともに過ごす時間が長い、いわゆる障害者と生きる専門家として関わっていただいても良いでしょうし、できる限り多様な障害種別を対象にした取組をしていくならば、多様なそうした当事者の立場や声が聞き取れ、それをケースワークというか、ケースカンファレンスというか、そういうこともできるような実質的な研修が組み立てられることが、現実的に児童生徒のために有用ではないかと思いました。
 今回、論点整理していただいた中には、総論の1番目の高発生頻度障害、低発生頻度障害と、こう分けるということなど、非常に難しい障害の現状に立っての問題提起もございまして、この辺は、障害者施策の中でも、なかなかきっぱりと整理しにくい状況があるかとも思います。特別支援学校や特別支援学級ではなく、通常学級にインクルーシブ教育という形で障害のある児童生徒が入ってくるときに、理念だけではなくて、具体、実態の中でどう対応できるかといったときに、今日整理していただいた論点というのはきっと需要になってくるのではないかと思います。座長、副座長の整理の御苦労を思いながら、あまり明快な1番については回答がありませんが、問題として重く受けとめたところです。以上です。ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは品川委員、それから中村委員という順番にお願いします。

【品川委員】 教育ジャーナリストの品川です。発言のチャンスをいただきありがとうございました。いただいた資料の1の総論、それから2、3はちょっと一緒に、あと5についてお話しさせていただければと思います。
 高発生頻度障害を基本情報とするということですが、私は是非これは実践していただきたいと考えています。実はこの夏、この間、宮﨑委員長もフィンランドに行かれたとおっしゃっておられたんですが、私もフィンランドに行ってまいりまして、幾つかの小学校、中学校、それから特別支援学校、あとPISAの専門家、大学の先生数名と、特別支援教育の専門家に会ってきました。
 そのとき、PISAの専門家が実際にデータを見せながらおっしゃっておられたのは、フィンランドの子どもたちの結果が良かったのは、成績が低学力群の子どもたちがOECD平均より少ないからだ、ということでした。ではなぜ低学力群の子どもたちが少ないかというと、読み書き障害や算数障害等LDの子どもたちの指導を早期から通常学級の中でも取り出してでも徹底してやっている、つまり個々の子どものニーズに応じた指導を徹底する特別支援教育に力を入れているから、PISAのデータが良かったと思っているというというようなことをおっしゃっておられました。我が国はこの一番低学力群の子どもたちがOECD平均よりも多いんですね。
 その際、フィンランド全国の小・中の先生に対して行ったアンケート調査を見せていただいたところ、いわゆるLD、ディスレクシアとかディスカリキュリアとか、協調性運動障害などの課題を持つ子どもへの指導については9割ほどの通常学級の先生が十分対応できる。一方、知的や盲聾といった低発生頻度障害については通常学級の先生で指導が十分できると答えた先生は2割くらいでした。
 発達障害についてもニーズに応じた指導を徹底するためには専門性、先ほど大南委員もおっしゃっていましたが、高度な専門性は必須です。同時に子どもたちは通常学級の中にいて、人数も多いのですから、通常学級の先生は全員、発達障害等高頻度発生障害の知識は持っていないと、教師の指導の問題でドロップアウトさせられてしまう子どもは出てきます。私はフィンランドの学校、授業を拝見して、非常に共感しました。是非我が国でも早急に導入していただきたいと考えています。それが1点目です。
 それから、もう一つが、これも大南委員のお話にも重なりますが、重複障害の件です。知的障害と盲とか、知的障害と聾ということもありますが、実は現場で取材していて、一番指導が徹底されていないと感じるのが、盲と自閉とか、聾と自閉とか、知的障害と自閉はまだ今まで歴史がありますが、そういった部分です。盲の指導は受けていてもそこにもし自閉的な要素があると、社会に出てから本当に苦労されます。今、私がそういう成人の方と関わっていますので、盲とか聾とかの先生たちに自閉症等もう一つ別の障害の指導ノウハウも身につけていただければと思っています。
 それから三つ目、特別支援学校、それから支援級の先生方の専門性ですが、これは先ほど尾崎委員もおっしゃっておられましたが、免許保有は義務付けしていただきたいと思っています。河本委員がおっしゃったように、二つの免許にするかどうかは、議論が分かれるところだろうとは考えますが、ここで先生方の専門性が担保されなければ、私たちがこの会議で言っている多様な学びの場が担保されないだろうと考えます。加えて、その免許を取る際も、やはりOJTをこれまで以上にしっかりやっていただけると良いと思います。
 それと、これはどうしてもお願いしたいことなのですが、現状、多くの自治体で通常学級の担任ができないから支援学級の教師にするというようなことが行われていますが、これは早急にやめていただきたいと思います。生得的な課題を持つ子ほどより高度な専門的指導が必要なのは言うまでもありません。専門的な指導をすればするだけ確実に伸びる子たちだからこそ、通常学級がつとまらないから、という配置は絶対許さないような制度にし、子どもたちの教育権を保障すべきです。
 それから、校長の指導、専門性がとても大事なのは言うまでもないことですが、もう一つお願いしたいのは、教育委員会の指導主事の方の専門性です。教育委員会の指導主事が、発達障害のことを何も御存じないまま、学校指導課とか生徒指導課におられるケースが非常に良くありますが、これでは適切な学校指導、生徒指導につながりません。
 例えば神戸市の場合でしたら、私が取材したのがもう10年以上も前ですが、特別支援教育を広めていくに当たり最初に何をやりましたかと聞いたら、指導主事の研修を徹底して行ったとおっしゃっておられ、それが今日の土台を築いたといえます。京都でも、生徒指導課が発達的な視点を持って、子どもの問題行動を理解し解決するということを積極的にやっています。教師だけではなく、校長だけでなく、行政も専門性を持ってやっていただきたい。それは、しっかり明記していただきたいと思います。
 それから専門外の教員の専門性ですが、御存じのように子どもたちはいろいろな疾患や障害をあわせ持ちやすい。ADHDと診断される子が実はアスペルガー症候群も併せ持っていて、さらにてんかんやアトピー性皮膚炎、アナフィラキシーがあるというのは決して珍しいケースではありません。しかし、取材していると特別支援教育のことは知っていても、アナフィラキシーや小児糖尿を持っていてLDやアスペルガー症候群があるなどという子どもの存在を知らない方も結構いらっしゃいます。例えば、特別支援教育に力を入れていることを自治体あげて宣伝しているところの教師が、LDとADHDのある子が小児糖尿で低血糖になったから授業中にお腹にインシュリンを打ったところ、ほかの生徒全員の前で「女子のくせにみっともないことをするな、甘えるな」と怒鳴りつけるとか・・・。ある子がパニックになったのは自閉症だからと機械論的な理解の仕方だけをしていると、背景に潜むアナフィラキシーだったり、他の疾患だったりという可能性を見落とし、子どものニーズに応じた適切な指導につながらなくなる可能性が高いのです。これは養護教諭とうまく連携ができれば対応可能なのでしょうが、連携以前にそういった子どもの病弱的な知識や指導についても是非、悉皆で教師校長全員に学んでいただく必要があると考えます。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは中村委員、お願いします。

【中村委員】 NPO法人若駒ライフサポートから参りました中村です。2番、3番の共通項目と6番に関して少し、私なりに保護者として感じたことを申し上げたいと思います。
 専門性の部分ですが、昨日のワーキングでも私、申し上げましたが、専門性の中でその子どもの教育を受ける前段階でのアセスメントがいかにどのぐらいされているかというのは、私は逆に一つ、項目として是非挙げていただきたいと思います。
 先ほど品川委員がおっしゃったことにもつながりますが、見立てが間違ってしまえば、その時点で子どもの教育は食い違ってまいります。ですから、その部分がもし教員として難しいのであったとしたら、そもそも学校としてはどれぐらい担保されているのかというのは、これは確実に押さえていただかなければならない部分であると思っています。
 6番の特別教育支援員ですが、こちらに関してはまず、今現状支援員がどのような支援を行っているのかを、まず押さえていただきたいと思います。正直、私の見聞きする範囲では、安全確保のための保育園に行かせてしまっている事例はとても多いです。だとすると、研修云々の部分が活かされている、活かされていない以前の問題のような気が私はいたします。支援員というのは、いかにどのような役割を担うべきなのか。そうなってくると、もしかするとその子どもの教育の内容をどうするかというところにまで、踏み込まなければならない内容かもしれません。しかし、現状がどうあるかは、是非きちんと検証いただきたいと思っています。
 あともう1点、コーディネーターの専門性の部分で、先ほど養護教員の先生がなされている例があるということをおっしゃられていましたが、私はこれは多分とても重要な意味合いがあって、養護教員の先生がなさっていることが多いのかなと感じます。一つとしては、まず教室に入れなくてもそこまでは行けるお子さんのための対応というのが大きいと思いますし、発達障害の方にとって、医療との窓口はとても重要です。しかし、この窓口を持たない方が、実はとても多いです。
 私、実は2年前に養護教員の先生方の研修会で、保護者として一言というお時間をいただいたものですから、そのときにあえて申し上げました。皆さんは、そういう子どもたちを医療につなげる窓口だという自覚を、是非持っていただきたいということを申し上げました。ですからこの養護教員の先生がなさっているところには、それなりの深い意味があることは、是非認識をいただきたいと思いました。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは山岡委員、引き続き久松委員に行きたいと思います。

【山岡委員】 日本発達障害ネットワークから参りました山岡です。既に、大南委員や河本委員からお話がありましたが、2番と3番についてです。
 この委員会でも何回か私は申し上げていますが、現状の特別支援学校教員免許状ではなくて、是非特別支援教育の免許状にしていただきたいと思います。その土台をつくった上で、おそらく専門性をその上に乗せていくような形が良いのではないかと思っています。
 以前も申し上げていますが、特に小・中学校における、例えば発達障害のお子さんに対する支援を考えたときに、特別支援学校の免許状、あるいは特別支援学校で行われている学習指導要領に準じて教育をすることはまず無理です。もともと、特別支援学校の学習指導要領においても免許状においても、特別支援学校という枠を土台にしているように思いますが、例えばLDやADHDや高機能自閉症を見た場合に、特別支援学校に該当するお子さんはいないわけですから、そこからひもとくことは難しいだろうと思います。
 それから、教員の数も、それから児童生徒の数も、おそらく今特別支援学校で支援を受けているお子さんよりも、小・中学校で支援を受けているお子さんの方が多くなってきていますので、そういうことを考えて、特別支援学級や、あるいは通級指導教室や、あるいは特別支援教育コーディネーターという先生方の専門性の向上をするためには、特別支援教育の教員免許状という形に是非していただきたいと思っています。
 以前、特別支援学校の先生方が、LDやADHDや高機能自閉症の子を見ることができないかという議論がありましたが、やってみると割とできるという話があります。なぜかというと、一人一人のお子さんが、LDだからどうこうと見るのではなくて、LDのお子さんに何を指導するかという場合に、例えば計算障害ですとか、文字の読み書きですとか、そういう指導をしていくときには、知的障害のお子さんで培われた色々なノウハウが活かせるのです。また、例えばADHDや、高機能自閉症のお子さんの行動面の問題を指導するときには、やっぱり知的障害のお子さんなどにも同じような症状があるということで、一つ一つの症状とそれに合わせた指導方法を考えていくと活かせるわけです。
 しかし、小・中学校の現場において指導することを考えた場合には、やはりもう少し特別支援教育全体のことを視野に入れて、小・中学校での指導にあわせたような免許状、あるいはそこにおける専門性をきちんと担保するような免許状に変えていただきたいと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、久松委員。

【久松委員】 全日本ろうあ連盟の久松です。発言の機会をいただいてありがとうございます。先ほど清原委員から、大切な御発言、御意見をいただきました。当事者の参加という問題について、意見を申し上げたいと思います。
 私たちが求める社会参加というのは、当事者、障害を持つ人が社会に参加できる状況をつくっていかなければならない。そのときには、私たち、私も当事者で、この委員会では石川先生も当事者でいらっしゃいますので、できれば石川先生からも積極的な御発言をいただきたいと思っております。
 アメリカでは、障害者種別ごとに社会参加をする人たちが何人いるか、データがなかなかなく把握できませんが、例えば耳の聞こえない人で、弁護士とか医者とか、今の日本の社会ではそういう資格を持つ人たちが何人いるのかといったときに、私自身の知っている範囲で言いますと、アメリカは日本の10倍から100倍あります。日本の大学で、聞こえない大学の先生というのは、私の知っている範囲では2人か3人ぐらいです。アメリカでは何百人もいらっしゃいます。また弁護士でも、日本では全く聞こえない弁護士というのは、今年司法試験に受かった人も含めますと、今後期待できる法律の専門家というのは3人、4人ぐらいです。まあ、5人ぐらいはいるかもしれませんが。でも、アメリカは何十人もいます。耳の聞こえない医師というのは、何百人もいます。
 当事者の声を聞くというのが、まだまだ日本の中ではそういう状況になっていません。当事者が政策決定に関わるということ、また大事な企画をつくっていく担い手になるということが、日本の社会ではなかなかありません。いつもこの議論をするときには一つのテーマとして入っていますが、全体の共通のテーマとして議論すべきで、当事者の大学教員の確保とか、また学校教育の現場に当事者の教員の確保というような見方をもっと強く出してほしいということです。専門的な知識を持った当事者の教職員がいること、この教職員から一般の教員が学ぶ、専門性を学ぶ、また障害それぞれの特性を学ぶこと、また環境整備ができること、外部で講習会を受けるということも大切かもしれませんが、現場で学べることが非常にたくさんありますので、そういう環境整備ができることを求めたいと思います。
 もう一つ、先ほど合理的な配慮の中で、言いそびれましたが、当事者の教職員を配置した場合、彼の合理的配慮も議論する必要があると思います。モデルになる学校の先生から学べること、当事者である学校の教職員がきちんとした教育活動ができるような環境を整備することも、合理的配慮の中に盛り込むべきだという議論を今しないといけませんし、こういうことを整理していく必要があると思います。
 さらに私が言いましたように盲聾についてはデータがないので私も聞いたことがありませんが、視覚障害児にも聾児にも発達障害を併せ持つ子どもが結構います。大学の教員養成で発達障害を共通のテーマとして学ばなければいけない。しかし、視覚障害と聴覚障害について、その専門性を学ぶことに非常に時間がかかりますし、経験もたくさん必要になります。やはり、特別支援教育の免許の枠の中に盛り込むのではなくて、別途個別の専門性の高いことを学べるような環境整備をするということ、これは分けて教員養成を図るべきだと思いますので、そのことを強くお願いしたいと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。ほかにありますか。
 はい、髙橋委員、お願いします。

【髙橋委員】 全国町村教育長会の髙橋です。教育委員会の立場ということで、意見を述べさせていただきます。
 先ほど品川委員から、教育委員会の指導主事の専門性を高めなければいけないという御意見、それから中村委員から出ました特別支援教育支援員の専門性の向上は、なるほどなと、そのとおり受けとめたいと思っています。それから、やっぱり人にものを教える、それから特別支援学級であれ特別支援学校であれ、そういう場合の専門性の向上、ましてや免許というのは非常に大事であると思っています。現在、一般の学校の特別支援学級で免許を持っているのは30%台となっていますが、これを引き上げていくというのは、喫緊の課題だろうと思っています。
 そこで、先ほど河本委員から出ました、もっと柔軟に免許制度を考えてもらえないかというのは、私もこれは考えて、これを考えていかないと、なかなか向上していかないだろうと思っています。総論の中の(3)に人事交流とありますが、人事交流を行うことはなかなか難しいです。これをやっていたのでは、なかなか専門性は向上していかないと思います。この免許制度に入るかもしれませんが、例えば車を運転するには免許状がもちろん必要です。ただ、それにも非常に条件がいろいろ多様にありまして、車、人を乗せる車、それから自分だけで乗る車、それから車の大きさ、営業用に使う免許、非常にたくさん分かれています。
 そういうふうな考え方でいきまして、やはり専門性の向上、しかも目に見える形で、目に見える形というのは、保護者の方の信頼を得るというためには、この免許制度をもっと、もう少し柔軟に、車と同じような感じで本当に一番最高級の免許、資格の免許もあるかもしれませんが、その1歩前、2歩前の免許。したがってそれは、今現在持っている担任の先生は、ここまでの免許は持っていますというようなことを示せるようにする。そうでないと、今担任していても、免許があるかないかは保護者は分からないことが非常に多いです。そういう意味では、早急に免許保持の割合を向上させていくというためには、何らかの形を考えていかないと、今のままではなかなか向上していくのは難しいだろうと考えています。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 様々に御意見を頂戴しました。話の中では、8番目の学校外の専門家ですとか、親の会、NPO法人、あるいは支援ボランティアとの連携など、御意見はここは出なかったんですが、また事務局に、これについては少し専門性についてまだ御意見があろうかと思いますので、メール等でお送りいただければありがたいと思います。この場は、これで一応終わりにしたいと思います。
 後ろの時計が25分ちょっと過ぎているところですが、35分まで休憩をさせていただいて、次のテーマに移りたいと思います。1回、休憩をとりたいと思います。35分には再開をいたしますので、よろしくお願いいたします。休憩にします。

( 休憩 )

【宮﨑委員長】 それでは、3点目の議題ですが、交流及び共同学習、特別支援教室構想等に関わっての御審議をお願いしたいと思います。
 会議の冒頭でも申し上げたとおり、各地域・学校より、それぞれの取組についてお話をお伺いすることとしています。それぞれ10分程度で説明をいただきたいと思います。そして、すべての御発表が終わった後に、最後にまとめて質疑応答・自由討議の時間をとりたいと思っています。
 まず事務局から資料の説明、それから御説明をいただく各地域の方々の御紹介もあわせてお願いいたします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。まず資料3を御覧ください。
 宮﨑委員長から今お話があったように、本日は教育委員会、学校における取組をお聞きすることとしています。資料3の日程のとおり行うこととしています。
 まずは上越市での取組について、佐囲東学校教育課指導主事より御発表いただきます。
 次に、埼玉県本庄特別支援学校、それから深谷市立本郷小学校の取組について、新井校長、村岡校長より御発表いただきます。
 次に、仙台市立小松島小学校の取組について、針持校長より御発表いただきます。
 次に、長野県立伊那養護学校の取組について、清水校長より御発表いただきます。
 それぞれ10分ずつ御発表いただきまして、最後にまとめて質疑応答をとらせていただくこととしています。
 続きまして、資料4-5を御覧ください。資料4-5ですが、論点整理で本日の議題に関係すると思われる1のインクルーシブ教育システムの構築に向けての特別支援教育の方向性についての(2)「『共に学ぶ』ことについて」。もう1ページおめくりいただきますと、同じく(3)「インクルーシブ教育システムと地域性」。それから5ページですが、3「インクルーシブ教育システム構築のための人的・物的な環境整備について」、(3)「交流及び共同学習」、(4)「特別支援学校のセンター的機能の活用」を抜粋してお示ししていますので、御参照ください。
 続きまして、資料4-6を御覧ください。資料4-6は、文部科学省に設置された学校教育の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議の報告の概要で、本年7月に公表されたものです。先ほどの論点整理のインクルーシブ教育システムと地域性にも関連するものですので、紹介いたします。最初に1の「議論の背景と問題意識」のところ、四角囲みの部分ですが、東日本大震災の被災地において、多くの学校は避難所として役割を担っていることは、地域における学校の役割を改めて強く認識させた。今後、すべての学校が小・中学校の連携・接続に留意しながら、地域の人々と目標を共有して、地域の人々と一体となって子どもたちを育んでいく、地域とともにある学校を目指すべきであるとしています。
 次のページ、2ページ目2の「地域とともにある学校」のところですが、中ほど、ポイントのところに(1)「目指すべき学校運営の在り方」として、地域とともにある学校づくりに必要なこととして2点、1として、地域でどのような子どもを育てていくのか、何を実現していくのかという目標を共有すること。2としまして、学校における教育活動や学校運営に、地域の人々が参画をして、その共有した目標に向かってともに活動していくこととしています。
 それから、その下の丸のところですが、学校運営には以下の機能が必要ということが書かれています。1として、関係者が当事者意識を持って、熟議を重ねることと、2としまして、学校と地域が共同して活動をすること。3としまして、学校の組織としてのマネジメントを発揮するということで、この中でも校長の強いリーダーシップを発揮するとか、学校と地域の人々をつなぐコーディネート機能の充実など、組織体制の構築といったものを挙げています。
 その下の丸ですが、目指すべき学校運営を実現するため、関係者の努力とともに取組を引き出す仕掛けが必要ということです。ここの例示のところでは、例えば学校運営協議会ですとか学校支援地域本部などの、地域と学校がつながりを持つ体制を作ることなどを挙げています。
 次に、(2)の「地域とともに学校づくりにより得られる成果」です。3ページの上のところですが、四つ挙げておりまして、1としまして、子どもたちの生きる力を育むことができるとしております。例えば多様な人々との関わりの中で、社会性の育ちが促進されるとか、地域の人々に支えられて学んでいくことで、地域への愛着が芽生えていくということです。2としまして、教職員、保護者、地域住民等がともに成長していく。3としまして、学校を核として、地域ネットワークが形成される。4としまして、地域コミュニティの基礎力が高まるといったことを挙げています。
 次に、(3)「学校の可能性」としまして、3ページの中ほどのところですが、学校の学習課題は地域の課題につながるものであり、今後学校が地域の課題を解決するための共同の場になるという視点が必要とされています。
 さらに、4ページ目ですが、それらのために国は何をしていくべきかにつきまして、役割としては今後の具体的な推進目標を打ち出すとともに、あらゆる角度からの支援を実施していくといったことが記述されています。
 今後の推進方針としましては五つ、4ページの中ほどから下のところですが、挙げていますが、1としまして、23年4月現在でコミュニティ・スクールが約800校あるわけですが、今後5年間で全公立小学校の1割に拡大していく。2の今後の学校運営の必須のツールとして、すべての学校で実効性ある学校関係者による評価を実施する。3としまして、中学校区を運営単位ととらえて、複数の小・中学校間の連携・接続に留意した運営体制を拡大する。4としまして、学校の組織運営の管理にとどまらないマネジメントを目指す。5としまして、被災地において地域コミュニティの核となる学校を創出するとしています。
 5ページでは、中長期的な課題としまして、学校のガバナンスに関する課題など、国において十分検討を要請すべきとしています。以上で説明を終わります。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、お待たせをいたしました。これからヒアリングをさせていただきます。まず、新潟県上越市教育委員会学校教育課の佐囲東指導主事より、御説明をお願いいたします。

【上越市教育委員会(佐囲東指導主事)】 お願いします。上越市教育委員会学校教育課の佐囲東彰といいます。この変わった字で「サイトウ」と読みます。よろしくお願いします。
 上越市は新潟県の南に位置する小さな都市です。人口約21万人、児童数が約1万1,000人、生徒数が中学生約5,500人、合計約1万6,000人の小・中学生がいます。小学校54校、中学校が22校あります。小学校は、54校中52校に117の特別支援学級、中学校は22校すべてに44の特別支援学級が設置されています。特別支援学級は小・中学校あわせて76校に157教室設置されています。現在、特別支援学級に在籍する児童生徒数は、合計744名、全体の約4.5%のお子さんたちが在籍しています。これは、特別支援学校に行かず、通常の学校に入るお子さんの増加や、実は発達障害系のお子さんがいらっしゃいまして、ごく少数の時間を特別支援学級で、感覚過敏の問題により学習がうまく成り立たないお子さん等の対応をしているために、このぐらいの人数になっています。
 また、当市は毎年、通常の学級に在籍しているお子さんの実態把握調査をしています。23年度1学期の結果は、697名、もしかしたら、発達障害を有する可能性のあるお子さんが約4.2%なのではないかと考えています。現在、特別支援学級に在籍のお子さんと通常学級在籍のお子さんをあわせて1,441名、全体の約8.5%の子どもたちが何らかの特別な支援を要する可能性があるのではないかと、上越市教育委員会では把握しています。
 上越市は2005年、平成の大合併で合併しました。実は調べてみたところ、東京都23区より広いのです。広いのですが、過疎地域は多いです。学校間の距離もとても離れています。人的な配置も十分とは言えません。しかし、そのために域内に住んでいる一人一人の子どもたちのニーズに対応することが難しい状況があります。すべての学校に特別支援学級はありますが、それだけでは間に合わず、システム、組織で対応するのが一つのやり方ではないかと考えています。上越市の特徴というのは、広いのですが、学校間の距離が離れているという状況があります。
 2番目からは、域内の教育的資源を活用した特別支援教育の対応です。主に三つの対応方法を実践しています。一つは、特別支援学級や、発達障害通級指導教室というものを利用した対応です。もう一つは、巡回相談や就学相談、就学支援委員会等の組織で対応するというやり方、三つ目は域内にある大学とか、特別支援学校等を使う対応の仕方です。
 最初(1)に特別支援教室構想と書いてありますが、特別支援学級での対応です。上越市は平成19年度から20年度、文科省の研究指定を受け、特別支援教室構想を実践、検証してまいりました。そのとき、二つのタイプを検証いたしました。一つでは、ある小学校の区域では通常の学級に在籍しているお子さんが対象ですが、そういうお子さんを対象に特別支援教室のようなものをつくり、個別指導や小集団指導を行い、その効果を実証しました。それがAタイプ、丸1のタイプです。
 丸2のタイプは、域内に特別支援学級がないために、ある小学校の特別支援学級にその域内のお子さんが集まり、そこの先生方が出向いて、B小学校からD小学校に行って、特別支援学級がない学級に出向いて、そこで対応していたというケースです。
 現在ですが、丸2のタイプ、先生方が出ていくタイプは現在のところありません。その理由は、すべての学校に特別支援学級等が設置されたために、その必要性がなくなってきたということがあります。現在残っているのは、減少していった通常学級のお子さんを対応するというタイプです。現在、対応しているやり方として、特別支援学級の担任が対応するのと、教育補助員といって、教員の資格を持っている教育補助員という方を雇っています。その方で対応する方式です。
 具体的には、特別支援学級の対応、少人数の場合ですが、通常学級に在籍しているLD的なお子さんや、高機能自閉症等を持っていて感覚過敏を持っているお子さんなどの通常学級在籍のお子さんを対応するケースです。それは、呼んで取り出し指導する場合もあれば、T.Tといって通常学級に出向いて対応するケースもあります。
 もう一つは、今年度試行的に行っていますが、教育補助員を使うやり方です。教員資格を持っている方ですが、教員が個別の指導計画に基づいてこんなやり方でという指示、説明をし、それに基づいて教育補助員が取り出し指導をしています。今のところ教育補助員、T.T指導をメーンにやっており、行動上の問題等では効果が出ることはありますが、学習上の課題に関して難しいこともあり、有効な使い方ということで、そのような形を考えています。現在のところ、特別支援学級を、特別支援教室構想と言えるかどうか分からないですが、柔軟な対応を考えている次第です。
 次です。もう一つのやり方として、発達障害通級指導教室の対応があります。上越市は、市内を3エリアに分けています。高田地区、直江津地区、もう一つは十三区地区といって、その後合併した地区に分けています。各エリアに4教室の発達障害の通級指導教室があります。その中で、通常学級に在籍しているお子さんたちの対応を行っています。もう一つは、本務校と兼務校というのを持っていて、小学校に本務校はありますが、中学校に兼務校を持っているというのも特徴です。
 もう1点は、センター校制をとっています。発達障害の方たちが、各エリアにばらばらに存在していると、教員の専門性や小集団指導等に困難が生じることがあります。個々で指導しても、社会性は育ちません。やはり、小集団である程度集めて、いろんな指導、ソーシャルスキルトレーニングをした方が効果があります。そのために、一カ所に集めて小集団指導を行う日を決めています。そうすることによって、子どもたちの社会性も高まり、発達障害通級指導教室担当の専門性が担保されます。A教室では、非常に専門性が高い、でもB教室ではまだ初任者などで専門性が低いということは避けたいと考えています。そのようなやり方でやっています。
 もう一つ、発達障害通級指導教室の特徴は、出ていく教室ということです。呼んでトレーニングしただけでは、子どもたちの行動は変わりません。巡回相談機能といって、校内委員会に一緒に参加し、そのお子さんの対応を検討する。また、出前授業といって、通級でやっている授業を通常学級に出向いて、再現をして、ソーシャルスキルなどを高めるという対応をしています。就学支援委員会も兼ねているという一面もあります。通級指導教室は、地域の核として今活動している次第です。
 三つ目ですが、巡回相談事業があります。先ほど、上越は3エリアに分かれていると申し上げましたが、3エリアを今度、中学校区を主体とした14ブロックに分けています。各ブロックに1名ずつの巡回相談員が配置されています。また、3エリアに分かれているので、3エリアに中学校担当の巡回相談員が配置されています。巡回相談というのは、通常学級に在籍している発達障害を有するお子さんたちへの対応の機能を持っていますが、実は特別支援学級にも特徴として、行動上の課題や非常に難しい学習上の課題を持っているお子さんもいらっしゃるので、特別支援学級に在籍しているお子さんに対応する巡回相談員を持っています。
 実は、そのように中学校区を主体とした巡回相談機能を持っていて、もう一つバックアップ機能があって、一時期的に対応する巡回相談員だけでは対応できないケースでは、発達障害通級指導教室の方と一緒に出向いて対応するケース、もう一つは我々指導主事と一緒に出向いて対応するというケースです。上越市は、発達障害系の担当をメインにしている私と、重度重複化というか、特別支援学校の方をメーンとしている指導主事、2名体制をとっています。それぞれの専門性が多少異なっていますので、その2名で対応しているということがあります。
 もう一つですが、4番目で就学支援委員会という機能も組織対応があります。これも基本的に、先ほど巡回相談に説明した14ブロックで対応しています。特徴として、今まで、ある一部の就学支援員のみがそのお子さんの実態を把握し、各学校に伝えていましたが、今年度から各学校に就学支援相談員を配置しました。ですから、73校で100名以上の就学相談員を配置しています。そして、そのお子さんがどんな点で困っているかを調査し、把握し、学校で対応することに役立てています。なかなかうまくいかないところはありますが、そのような対応に切りかえています。
 ただその場合、非常に問題があり、専門性を高める研修会という意味で、一つは先ほどいったブロック別に就学支援判断を行っています。14ブロックを8グループに分け、そこでそのお子さんの特性、どのような対応をすれば良いか、専門性の差異があるので、そういう少人数での対応検討会を行っています。
 もう一つは、厄介だったのは心理検査です。どうしても就学支援の場合、そのお子さんの認知特性を見るために、WISC-3、4、DN-CAS等の心理検査が必要です。各学校の相談員では実施できないので、ブロックごとに集まってできる教員の方から、細かく研修会等を開いて、専門性を高めるという対応をとっています。そのようにブロックごと、中学校ブロックを中心とした対応を今とっているところです。
 5番なんですが、その他です。実は上越は恵まれています。県立特別支援学校が三つ、大学が二つ、発達障害系を見てくれる病院が一つあり、県から月に1回、ドクターが来てくれる病院がもう一つあります。そういうドクターや大学教員等と連携しながら、研修会や就学支援会、巡回相談のスーパーバイザーとして対応していただくというのが、5番の丸1番です。
 もう一つ、就学前のお子さんを対応する発達支援センターというのがあります。それに関して、子ども課が対応していますが、幼児から、今度学校教育課は就学後なんですが、そのような対応できるセンターを持っています。
 あとは、上越市内には上越市立教育センターというものがあって、訪問カウンセラーがいます。あともう一つ、JAST、「上越安心サポートチーム」といって、弁護士、生徒指導主任、児相のソーシャルワーカー、あと特別支援の担当等が、私が入っていますが、虐待や非行案件等に迅速な対応をしているチームを持っているということもあります。
 3番、「おわりに」ですが、先ほども説明しましたように、上越市は非常に面積が広いです。でも、ニーズがなかなか追いついていない、細かく対応したいというところがあって、現在ある特別支援学級等の資源を利用するのと、あと組織で対応したいというのが総括です。
 横の広がりに関してですが、現在課題になっていることがあります。昨年度、上越市で就学相談が上がった案件は461案件です。今、課題になっているのは、境界線知能か、認知の凸凹によって学習が分からないという子どもたちです。このお子さんは、対応を誤ると、学年が上がっていくと非行案件とか、非行の案件等、2次的な障害が出る可能性がありますので、このお子さんへの対応を今、苦慮しているところです。
 縦のつながりですが、上越ばらばらに切れています。就学前が子ども課、さっき言いました発達支援センター、就学後は我々学校教育課、今度中学を卒業してしまうと、今度福祉課等の対応になっています。縦のつながり等も、横断的な支援システムの形成が必要と考えています。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、続きまして埼玉県本庄特別支援学校の新井校長先生、それから埼玉県深谷市本郷小学校の村岡校長先生から、御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【新井埼玉県立本庄特別支援学校長】 本庄特別支援学校の校長の新井です。埼玉県立本庄特別支援学校における取組について説明いたします。
 学校の概要ですが、本校は埼玉県北部に位置する開校32年目の小学部、中学部、高等部からなる知的障害の特別支援学校です。校内に自立活動部を設置し、組織的な自立活動の時間における指導を学校経営の柱として、障害の特性や教育的ニーズに応じた教育を推進することで、児童生徒の社会的自立を目指しています。
 また、地域の小・中学校等の地域支援に加え、就学前の幼児とその保護者を対象にした親子教室を設置し、地域に信頼される特別支援教育のセンター校としての取組を推進しています。
 現在、176名の児童生徒が在籍し、埼玉県の副次的な学籍である支援籍は22名、通常学級支援籍19名、特別支援学校支援籍3名の児童生徒が取得している状況です。
 それでは、最初に支援籍についてです。御案内のように、支援籍制度は埼玉県が平成16年度に試行的に実施し、平成18年度から本格的にスタートしたものです。支援籍は障害のある児童生徒が必要な学習活動を行うために、在籍する学校又は学級以外に置く埼玉県独自の学籍です。
 支援籍により行われる学習、支援籍学習は、障害のある児童生徒と、ない児童生徒とが一緒に学ぶ機会の拡大を図るもので、障害のある児童生徒にきめ細やかな教育の実現を図り、社会で自立できる自信と力を育むとともに、障害のない児童生徒に障害に対する心の障壁を取り除き、心のバリアフリーを育むものです。そして、特別支援学校に在籍する児童生徒にとっては、小・中学校の通常学級に支援籍を置くことで、地域とのつながりを広げ、深めることができます。
 支援籍には、その目的や内容によって、通常学級支援籍、特別支援学級支援籍、特別支援学校支援籍の三つの種類があります。本校では、在籍する児童生徒が、地元の小学校又は中学校に支援籍を置いて学習を行う通常学級支援籍と、学区内の小・中学校の通常学級や特別支援学級に在籍している特別な教育ニーズのある児童生徒が、より専門的な教育を受けるために本校に支援籍を置いて学習を行う特別支援学校支援籍を実施しているところです。
 本校の通常学級支援籍の取組ですが、保護者への説明会や支援籍取得の希望調査等を経て、個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成を行い、市長村教育委員会に支援籍学習希望者の報告を行います。その後、支援籍校とお互いの年間計画をもとに綿密な打ち合わせを行い、指導計画を立てて実施いたします。平成17年度より実施し、これまで述べ116名、小学部89名、中学部27名が取得して、支援籍学習を進めています。
 主な支援籍学習の内容ですが、運動会や音楽会などの学校行事や、音楽や図工などの教科等への参加、清掃や給食などの日常生活の交流や、ビデオレターなどの交換などの間接的な交流があります。
 本校の支援籍学習の通学は、保護者による送迎や、保護者の依頼による生活サポート等の福祉制度の活用による送迎により実施しています。
 また支援籍学習の指導・介助は、本校の担任等が当たっており、指導・介助のために担任等が抜けた本校の授業は、ボランティアの活用による後補充を行うことを基本としています。
 本校の支援籍学習の特色は、支援籍校での入学式への参加です。平成21年度より入学式への参加を実施して、これまでに小学部1年生に入学した児童の中で、7名が支援籍校での入学式に参加しています。入学式で支援籍学習を行うことは、本校へ入学する児童生徒の保護者にとって、地域の中でともに育つ子であることを実感できるとともに、入学の喜びを持てることです。また、支援籍校の保護者や地域の方々に理解を進めることになり、支援籍校に在籍する児童生徒に心のバリアフリーを育むこととなります。
 実施に当たりましては、市長村教育委員会が対象児童生徒の保護者に、入学式における支援籍学習についての説明や参加の意向聴取を行い、希望に基づいて支援籍校と実施に関わる打ち合わせを行っています。そのため本校の入学式は、支援籍校での入学式参加を進めるため、支援籍校での入学式とずらして実施しています。支援籍校での入学式では、学級名簿や写真撮影などに加わるとともに、校長の式辞の中で支援籍学習により入学式に参加していることについて触れていただいています。
 続いて、本校の特別支援学校支援籍の取組ですが、この取得につきましては、保護者の意向を基本に、当該児童生徒の在籍校の支援の方針等を踏まえて、市長村教育委員会から依頼を受け、その依頼に基づき本校の担当者を決め、在籍校の担任と支援期間、支援内容、実施日等について検討を行い、指導を開始しています。
 実施に当たりましては、個別の教育支援計画に基づき、個別の指導計画を作成し、計画的に実施しています。本校の自立活動部教員が障害の特性に応じて、児童生徒が抱える日常生活や学習上の困難さに対して専門的な学習支援を行っています。
 内容は、視覚記憶課題、聴覚記憶課題、目と手の協応動作に関する課題、コミュニケーションカードの使用に関する課題等です。また、教育的ニーズに応じて当該学年の学級の授業に参加することもあります。
 通学は保護者の責任において行い、在籍校の担任等の教員による指導・介助を依頼して、実施しています。
 実施状況ですが、平成18年から6年間で、延べ13名が特別支援学校支援籍を取得しています。
 次に、この支援籍を支えるボランティアの育成についてです。支援籍学習を普及させるためには、これを支えるボランティアの育成と活用が重要です。そのため本校では、支援籍学習を支えるボランティアの育成と活用に向けて、三つの事業に取り組んでいます。学区内の社会福祉協議会と連携した事業、近隣の大学と連携した事業、PTA組織と連携した事業です。
 社会福祉協議会と連携した事業では、平成16年度から社会福祉協議会と共催で支援ボランティア養成を行っており、主な内容は、障害の理解や保護者の講話、体験実習などです。平成22年度までに、支援籍学習に関わるボランティアの登録者は30名に及んでおり、講座に参加した人からは、障害のある子もない子も一緒に学び、お互いを認め合い、助け合える環境になるために、地域の理解や支えが大切だと思ったなどの感想が寄せられています。
 これらの事業をもとに、支援籍学習のとき、主に担任が支援籍校へ指導・介助に出た際、その後補充という形で給食準備や着替えの介助、授業の補助などの学習支援を行っています。またそれ以外にも、学校行事や学習支援に毎年多くのボランティア参加があり、昨年度は支援籍学習の後補充を24回実施しますとともに、延べ293名のボランティアの活動が行われました。
 さて、支援籍学習の成果ですが、通常学級支援籍におきましては、保護者からは、子どもが学校外でもあいさつなど関わることができたなどの子どもの変容に関することや、地域の子どもたちに名前を覚えられて安心した、周囲に助けられて感謝の気持ちを持ったなどの感想が寄せられました。
 小・中学校に在籍する児童生徒からは、自分よりもできることがある、一緒にダンスをすることができてうれしかったなどの感想が聞かれました。また、地域で会うと声をかける、遊びに行った児童がいる、どうしたら一緒に楽しめるかを考えるようになったなどの変容が見られました。
 支援籍校では、学級懇談会や学校便りなどで保護者への理解を進めてきており、支援籍校に在籍する児童生徒の保護者からは、幼稚園が一緒で仲が良かったので、こういう機会でまた一緒になれてよかったなどの感想が寄せられています。支援籍校の入学式に参加した保護者からは、幼稚園で一緒だった友達と会えなくなるのは寂しいと思っていましたが、地元の学校に行けるのは大変うれしいといった感想が寄せられています。
 特別支援学校支援籍におきましては、特別支援学級に在籍している児童生徒が中心であるため、少人数の特別支援学校の児童生徒の集団での活動機会の提供や、保護者の障害の理解、受容、就学先を考える機会になっています。また、在籍校の担任が指導・介助で入ることで、特別支援学級に戻っての指導の参考や、指導に関する相談の機会として機能しています。
 次に、小学部における交流学習についてです。近隣の小学校と年間4回の交流学習を実施しています。小学部1年生から3年生と交流先の小学校3年生による交流学習を、本校で1回、小学校で1回、同様に、小学部4年生から6年生と交流先の小学校5年生による交流学習を、本校で1回、小学校で1回実施しています。
 この交流学習は、一緒に活動する中で、お互いの理解と認識を深め、好ましい人間関係や思いやりの心を育て、助け合いながら交流活動を行い、経験領域を拡大し、仲間意識を高めるよう実施しています。活動内容は歌、ダンス、集団ゲーム等で、一緒に取り組める活動を用意することにより、お互い楽しく活動でき、歩くペースをあわせるなど、自然と相手を思いやる気持ちが育まれる様子が伺えています。
 交流学習を行う事前の交流活動としては、お互いの写真や自己紹介カードの交換などを行い、事後の交流活動としては、感想文の交換や児童生徒が製作した作品を贈るなどを行っています。
 続いて、センター的機能についてです。本校では、特別支援教育コーディネーターを専任で3名配置し、センター的機能の充実に努め、全職員で地域支援に取り組むことを重点目標に掲げています。相談・支援については、小・中学校の教員への支援として、特別な教育的配慮を必要とする児童生徒の指導方法や、教材の工夫、発達検査の実施や活用、個別の指導計画の作成などへの支援を行っています。平成22年度は151件、幼稚園・保育園26件、小学校105件、中学校15件、高等学校5件の相談・支援を行いました。また、保護者への支援として、巡回や来校による教育相談や、就学にかかる相談を行っており、平成22年度は341件、幼稚園・保育園22件、小学校256件、中学校62件、高等学校1件の相談・支援を行っています。
 早期支援については、本校では平成21年度から、発達に心配のある4歳から6歳の就学前の幼児とその保護者を対象として、「ハート教室(親子教室)」を行っています。第3火曜日を基本として、年間10回ほど実施しており、今年度までに46組の親子が参加しています。幼児へはリトミックや読み聞かせなどの集団での遊びや活動を行い、保護者へは本校教員、医師や臨床心理士などの外部専門家による学習会や教育相談を行っています。また、本校の保護者や卒業生の保護者を中心とした子育て応援団、「はーと&きずな」を活用し、保護者相談会や子育て体験談などの支援を行っています。親が親を支援するという活動です。
 研究・研修支援については、小・中学校等への研究・研修支援として、研修会への講師の派遣や公開講座などを実施しています。平成22年度は、研究・研修支援を21件行い、さらに今年度から自閉症の指導や自立活動、作業学習など、専門性の高い支援可能な分野の情報を地域の小・中学校等へ提供し、指導に役立つ支援を進めています。
 また、小・中学校の特別支援教育コーディネーターを対象とした、各種アセスメント検査の演習を行うコーディネーター研修会の実施や、学校公開講座、自立活動や生活単元学習等の校内研修会の公開、研究協議への参加など、30回ほど実施しています。
 関係機関との連携については、早期支援のために今年度、就学前関係機関連絡会議、保育園、幼稚園、保健所、障害者支援センター、福祉課等との協議会を2回実施し、早期支援のネットワークづくりや情報連携に努めています。また、就労及び移行支援の充実のため、本校の保護者や教職員を対象とした進路対策連絡協議会(企業、ハローワーク、就労支援センター、生活支援センター、福祉作業所等)を福祉就労と一般就労に分けて実施し、ネットワークづくりや情報連携を進めています。
 最後に、今後についてです。本校では引き続き小学部を中心に、交流学習などの充実に努めるとともに、埼玉県独自の学籍である支援籍を着実に実施し、定着できるように努め、児童生徒の心のバリアフリーを育み、障害のある児童生徒に社会で自立できる自信と力を育むとともに、障害のある児童生徒とない生徒がともに育ち、ともに生きる機会の拡大を図り、共生社会の実現を目指しています。
 そして、支援籍学習の充実・深化を図るため、一つ目に支援籍学習の内容の充実や質的・量的な向上を図ること。二つ目に、特別支援学校に在籍するすべての児童生徒が原則として支援籍を取得し、居住地の小・中学校で支援籍学習を実施できるようにすること。三つ目に、制度の整備を図り、支援籍を支える仕組みをさらに整えること。四つ目に、本人・保護者・支援籍を進める関係者、地域の人に対する支援籍制度の理解啓発をより一層推進することが重要であると考えています。
 今後も特別支援学校としての専門性や教員の力量を高め、在籍児童生徒の教育指導の充実に努めますとともに、幼児等の早期支援を大切にしながら、小・中学校等への地域支援の充実を図り、地域で信頼される特別支援教育のセンターとしてその使命を十分に果たせるよう取り組んでまいりたいと考えています。以上、本校の取組を御説明させていただきました。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 村岡先生。

【村岡深谷市立本郷小学校長】 私は、今発表した本庄特別支援学校から2名の支援籍を含め、3校の特別支援学校から7名の支援籍学習の児童を受け入れています。実際の学校現場での様子を、もし御質問があればと思いまして来ましたので、この後御質問等がありましたらお受けしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは続きまして、仙台市立小松島小学校の針持校長先生より、御説明をお願いいたします。時間の関係で大変恐縮ですが、10分程度でよろしくお願いいたします。

【針持仙台市立小松島小学校長】 仙台市立小松島小学校の針持です。本日は、本校の取組を報告する機会を頂戴しまして、深く感謝申し上げます。また、3月11日には体育館に1,000人、校庭の車の中に500人、避難民の方がいて、子どもたちは無事でした。その後、学校に対して、また、設営された避難所に対して全国各地の皆様から物心両面の御支援をいただきました。ありがとうございました。この場をお借りして、感謝申し上げます。
 さて、本校は平成18年度から20年度に、特別支援教育の研究開発学校の指定を受け、以来5年半にわたって障害者の権利に関する条約の理念に基づいた、平成15年の調査研究協力者会議の最終報告で提唱された特別支援教室構想に沿った取組を行ってまいりました。その指定研究の取組や成果、指定終了後の支援体制、また研究終了後も継続できた要因につきましては、お手元の資料4-3に述べたとおりです。ここでは、その4-3の資料との重複を可能なところは避けながら、大きく四つの点について報告してまいりたいと存じます。
 まず初めに申し上げたいことは、資料の3ページ目の表についてです。本校の場合、特別な教育の場を必要としていたり、あるいは通常の学級の中で担任が注意深く見守り、配慮したりしている児童が、全校の約3割に当たる150名近く在籍しているということです。言いかえれば、一般の公立の小学校には障害のある児童のほかにも、教育上特別な配慮を要する児童が数多く在籍しており、学校はその多様な課題に対して日々対応しているということです。本校では、先の研究指定を契機に、特別支援教育の対象を障害のみに関わらず、教育上特別な配慮を要するすべての児童としているところです。
 二つ目は、教員の配置についてです。本校の教員定数で他の小学校と違う点は、虐待や養育放棄を受けたため、県内外の児童相談所が福祉的な措置をして本校の学区内にある四カ所の児童福祉施設に入所した児童が60名あまり在籍していることから、児童生徒支援加配教員が県費で1名配置されていることです。それ以外は、他の小学校と全く同じ基準で教員定数が決められています。その中で、通常の学級を担任する教員は、児童が集団で学び、生活する中で、学びにくさや暮らしにくさのある児童それぞれの教育的ニーズに応えるべく、一斉指導の中で様々な配慮をしています。
 また、特別支援学級の担任や、児童生徒支援加配の教員、また少人数加配の2名の教員は、それぞれの専門性を活かして特別支援教室を担当し、必要な小集団指導や個別指導を行っています。この校内体制につきましては、資料の3ページ目の下の方で触れるとともに、7ページ目の図に示しています。
 このように、教員それぞれの役割を明確にし、知恵を出し合う支援体制と、自分の役割以外のことにも少しずつ時間や労力を出し合う指導体制を構築して、特別な教育的ニーズを持つ児童に対応しています。こうした体制がとれているのも、開校以来半世紀以上にわたって、施設に入所している児童を通常の学級の中に受け入れてきた積み重ねと、指定研究を通して得た教員の意識が受け継がれ、現在に至っているからだと考えています。
 三つ目は、特別支援教室構想のいわば限界とも言える点についてです。平成15年の調査研究協力者会議の最終報告は、その第4章で、特別支援学級や通級による指導の制度を、通常の学級に在籍した上で、必要な時間のみを特別支援教室の場で特別な指導を受けることを可能とする制度に一本化するための具体的な検討が必要とした上で、この場合、例えば小・中学校の障害のある児童生徒は、障害の状態等に応じて、できるだけ自らが在籍する学級において他の児童生徒とともに学習し、生活上の指導を受け、障害に配慮した特別な教科指導や、障害に起因する困難の改善克服に向けた自立活動といった特別な指導が必要な時間を、この特別支援教室において担当の教員から指導を受けることになると述べています。
 しかし、現在までの本校の実践の中では、例えば手洗いやトイレ、着替えや給食のときの係活動のように、毎日の生活の中で時間を保証して、一人一人の主体性やペースを大切にしながら繰り返し指導され、期間をかけて身に付けていく内容などは、通常の学級の持つ量や速さの中で指導するには、極めて難しい面も少なくありません。
 また、例えば30人、40人といった大きな集団では、刺激や情報が多過ぎて、その集団の中に入ることが困難な児童のように、現行制度の一般的な特別支援学級、すなわち生活や学習の中心を比較的小さな集団の中に置くことを必要としている児童がいることも、また事実です。そして、考えてみますと、一様な特別支援教室ではなくて、多様な特別支援教室が用意されていく必要があるのではないかと感じています。
 最後の点は、特別支援教育を進める上での教員の時間の確保についてです。教育上、特別の配慮を必要とする児童の指導は、以前は学級担任がそのすべてを担う形になっていました。しかし、特殊教育から特別支援教育の転換が図られた結果、学校内外の様々な人々や機関が関わりながら進めるようになってきています。本校におきましても、例えば児童が所属する通常の学級の担任、特別支援教室の担当の教員、担当のコーディネーター、それをまとめるチーフコーディネーターといった、その児童に関わる様々な職員が即時的、あるいは日常的にケース会議を持っています。
 それから、節目節目では、児童福祉施設、相談機関、その子どもさんが利用する支援事業所などとのケア会議も持たれます。この度の小学校学習指導要領の改訂に伴って、各学年の授業時数が週当たり1ないし2時間増え、特に4年生以上、上学年ではクラブ活動や委員会活動の日を含めると、6時間授業の日が週4日ほど設定されるようになりました。
 その一方で、この春から教員の就労時間は、仙台市の場合ですが、1日15分、週当たり1時間15分短くなりました。6時間授業の日は、3時半ころ下校させますが、担任が教室を片付けて職員室へ戻ってくるのは、早くても4時近くになります。そこから労働基準法上の休憩時間45分をとると、残された就業時間はわずか10分ないし15分程度ということになります。したがいまして、基本的に休み時間も教室から離れられない状況にある本校の職員は、翌日の授業や近づく行事の準備などのほか、この支援体制に不可欠な配慮を要する児童のケース会議、関係機関との連絡調整などのほとんどは、先ほどの労基法上の休憩時間内、もしくは時間外で行うことが常態化している現状にあります。
 こうした厳しい環境の中でも、職員は日々精一杯の取組を続けてくれています。これは、すべての児童に一人一人に合った学力を保証しながら、障害を含めた様々な要因によって、暮らしにくさ、学びにくさを持っている児童に対しても、一人一人の明日につながる実践を目指そうとする熱意と、特別支援教育について全国最先端の取組を試みている学校に奉職しているという自負に支えられているのだと、この学校を預かる校長として実感をし、職員に感謝しているところです。
 今、小学校は、50代の教員が大変多く、大量退職、大量採用の時代を迎えています。今後10年かけた大きな世代交代が、既に始まっています。そうした時代にあって、特別支援教育の不易な価値が受け継がれ、どの学校においても障害の有無に関わらず、教育上特別な配慮を必要とする児童が、一人一人の障害や課題に応じた適切な教育が受けられるように、そして新たに採用される先生方が、教師としてよりよい人材として集まり、保護者や社会の信頼を得ながら情熱を傾けられる、そうした新たな制度設計ができ上がることを期待しています。以上です。

【宮﨑委員長】 どうもありがとうございました。
 最後に、長野県伊那養護学校の清水校長先生より御説明をお願いいたします。また、長野県の教育長である山口委員からも、一言お願いできればと思います。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

【清水長野県伊那市養護学校長】 長野県伊那養護学校の清水と申します。本校は、長野県の南部にあります中央アルプスを背中に、南アルプスがきれいに見るところに位置しています。児童生徒数は212名です。
 今日は、お話しさせていただく機会を本当にありがたいと思っています。今回は、分教室における交流及び共同学習について、副学籍制度について、居住地校交流について、センター的機能についての4点をでお話しさせていただければと思います。
 本校の分教室ですが、小学部が分教室を開室して4年目になります。それから、中学部の分教室が2年目になります。県の事業の一環として、分教室という方向で来ているわけですが、現在小学部の分教室が8名、中学部の分教室が7名、それぞれの学年別ではなく、一緒に学習生活をしています。分教室があることによって、どういう成果があるのかということを端的にお伝えしたいと思います。
 資料では、「自然な」という言葉、あるいは「日常的な」という言葉を使わざるを得ない、そんな状況がありました。今までのいわゆる交流学習でも、そういう「自然な」という言葉がかなり出てきていると理解していますが、この「自然な」という言葉、あるいは「日常的な」という言葉がどのように意味を持つか、その意味を私自身が本当に実感している次第です。
 小学部の分教室、「はなももの里」、中学部もはなももの里といいますが、これは、白、ピンク、それから赤の三つの色がうまく混ざり合うという、そういう願いを込めての分教室の呼称です。中沢小学校との連携により時間割を合わせながら、休み時間を共有する、あるいは各学年に入って清掃を一緒にやっていくということです。
 その中で、我々職員みんなが大事にしているのが、「くらし」という、一つのキーワードです。同じ屋根の下で、同じ給食を食べながら、同じ活動を共有する部分を持ちながら「くらし」ていくということで、感覚的な言葉で申し訳ないのですが、分教室の子どもたちがその学校の中にいて当たり前という雰囲気を大変感じています。
 特に、小学部は開室4年目を迎えていますので、今の4年生までは分教室の子どもたちと一緒の生活をしてきているお子さんたちです。新1年生の学級が分教室と隣り合っていますので、4年生までは1年生の時に隣で生活している子どもたちです。音楽の授業、豆腐づくり、全校炭焼きなど、共同学習を本当にできていると思っています。
 両校の職員間ですが、今の「くらし」を感じながら職員連絡会を一緒に持っていただいたり、子どもの育ちを双方で分かち合っています。私も2回ほど職員会議に出させていただきましたが、いろいろ感じたことを伝えさせていただいたりしています。
 中沢小学校では、先週の土曜日に運動会がありましたが、校長先生のお話、児童会長さんのお話、PTA会長さんのお話の中に、はなももの里、分教室の話題が全部入れ込まれていました。そんなことからも、本当に温かさと分教室が中沢小学校に位置づいていることを感じています。
 また、地域の方ですが、分教室の子どもによって毎月届けられる「はなももカレンダー」を非常に楽しみにしている状況があります、私もカレンダーを配るときに、都合がつけば一緒に行くのですが、本当に待っていてくださる、温かい声をかけてくださる、そんなことが感じられています。
 課題ですが、現在行っている分教室における交流及び共同学習の成果をどう子どもたちの育ちにつなげるか、そこを丁寧に見ていく、その要因を明らかにしていく必要があると思っています。しかし、かなり長いスパンが必要ではないかということも感じています。今の小学生あるいは中学生の子どもたちが大人になって、その地域で暮らしていくときに、本校の子どもたちの関係がどうなっていくかということを楽しみにもしているところです。
 それから、授業づくりも共同学習ということで、双方のねらい、主眼をどうしっかり立てて授業を組み立てていくか。あるいは、通常級のいわゆるユニバーサルデザイン化された授業にも関与すると思いますので、そこも大事なものとしてこれから力を入れていきたいと思っています。
 運用面の課題ですが、両分教室とも駒ヶ根市に位置しています学校をお借りしています。協定の中で予算面等はかなりクリアできていると思っていますが、実際の分教室の動きの中で、本校と中沢小学校、中学部は東中学校との関係の中で行事をどう持つかというところはすり合わせが難しいと感じています。それは、職員が悩んだり、相談を受けているところです。
 それから、両校とも本校から片道45分、往復1時間半ぐらいの時間を要します。また、検診などはその小・中学校ではできないので、本校に来て検診をすることになります。そうすると、一日が検診のためになくなってしまう、そんな状況もあると思っています。
 分教室における実践例は資料に記載していますが、子どもたちの関わり、変容、それが本当に素朴に伝わってくるものです。本校の子どもたちのことで言えば、生きる力につながってくると思っています。当てにされている子どもたちとか、あるいは双方の中での豊かな関係が育っていると思います。
 中学部の分教室ですが、小学部の分教室のある学校を卒業した子どもたちが、中学部の分教室のある中学校に入っていきます。すると、その中学校の子どもたちの学年の3分の2ぐらいが、小学校時代に分教室の子どもたちを知っているという大変良い状況があります。
 Aさんという中学部1年生の女の子が、今度学校の文化祭で人気グループの「嵐」を呼びたいと言いました。その願いを受けて、中学校の友達たちが、じゃあどうしたら呼べるかを一生懸命考えてくれたりしました。実現は難しいと思いますが、私にも考えて欲しいと言われました。そういうつながりの温かさが、学校全体から生まれてきています。資料にはM君の事例を記載しています。彼はなかなか大きな集団に入っていけませんでしたが、少しずつ授業に参加したりという、そんな状況も見られています。
 分教室と分教室設置校との連携ですが、先ほど申し上げた職員連絡会等々を行っています。今年は小学校の校長先生が個別の指導計画を出してくれないかという話や、分教室児童生徒の理解等を職員みんなで共有したりというお話もいただきました。
 T.Tで共同学習を行っていますので、その中で、児童に対する配慮への理解というようなことも当然進んでいます。
 次ですが、二つ目、副学籍制度を活用した居住地校交流ということで、駒ヶ根市では、副学籍制度を平成19年度からシステムとして取り入れています。願いとしては、居住地校交流をよりスムーズに行いたいという市の願いの中で生まれた制度です。本校の子どもたちを入学式、あるいは卒業式、運動会等々、あるいは学級の居住地校交流、そこに呼んでいただいています。
 一番ありがたいのは、今までは特別支援学校から小・中学校にうちにこういう子どもさんがいるので、こういう交流をしたいと居住地校交流の働きかけをしていたのですが、それがこちらからのアプローチではなくて、小・中学校の側から言っていただいているということで、そこのところが違います。先生方の意識も違いますし、机があり、下駄箱があり、名札もあるということで、それは大きなところだと思っています。
 課題としては、親御さんの中には副学籍を希望されない方もおられます。家庭の中の事情、あるいは兄弟関係など、様々な気持ちがおありです。そういうお気持ちを大事にしながらも、この副学籍という制度を良い形で活用していきたいという願いを持っています。資料には、副学籍制度を活用した事例もありますので、お読みいただければと思います。
 居住地校交流に関わる成果と課題ですが、年に3回ぐらいしかできないと思っています。親御さんのニーズとしてはもう少しやってほしいという思いもあるわけですが、職員の動き、移動手段等々の課題もあり、現状としては、私の個人的な気持ちですが、正直言って限界があると思っています。先ほどボランティアの活用という良いお話をいただいたので、早速検討したいと思っています。
 本校のセンター的機能ということですが、地域の中で特別支援教育、あるいは子どもたちの支援の充実等、センター的機能を発揮していくことが必要と感じていましたが、今までは職員1人がこのことを抱えていました。しかし、学校という組織体でセンター的機能の役割を果たしていく必要があるということで、本年度から総合支援室という呼称で地域への支援を進めています。
 近年、高等学校へのニーズが非常に強くなってきていますので、いわゆる地域校における高等学校の方で発達障害等々を含めながら、進路相談も含めて、タイアップしながらという、そんな状況が生まれてきています。コーディネーターの先生方が力を付けてほしい、あるいは学校の中で、その学校の持ちうる資源、人材を活かしながら学校力を上げていく、そこにも本当大きく関与しているので、相談の中ではそこを根底に置きながらと思っています。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、山口委員。

【山口委員】 それでは、県の立場から若干説明申し上げたいと思います。2点にわたって、1点目は地域化推進という観点で申し上げたいと思います。
 私どもの県では、この間九つの分教室を、知的障害の小・中・高というところに地域バランスを考えまして配置してまいりました。この地域化の中で、私は画期的なものだと思っていますが、本県の北部に須坂市という市があり、ここにも分教室を設置したわけですが、首長さんの理解、それから保護者の方の地元で子どもを育てたいという強い、これらの気持ちが合致しまして、この分教室を市立の支援学校に今年から切りかえました。本県では、市立の支援学校ができたのは、今回が初めてです。
 そうしますと、今副学籍の話がありましたが、副学籍の中で一つの難しい点は、設置者の違いによる難しさがあります。この辺が、市立の学校ができることによって、具体化はまだしませんが、今までとは違った展開が期待できるのではないかと思っています。
 それから高等部も、随分要望が強いものがございます。これについては長野県はちょうど今高校再編を進めているところでして、高校再編と絡みながら、また特別支援学校の再編も同時に進めているのですが、それに絡めて行ってきています。高等部のこの分教室を今のところすべて農業高校の中に置きまして、農業高校の持っている農業実習を通じたノウハウを活用しまして、生徒同士、例えば3年生が分教室の子どもたちに農業実習、花とか野菜の栽培を指導するという、こういった交流を大事にしまして、やってきています。最初の卒業生は、一般の職場に就労する率が圧倒的に高いという成果も出てまいりました。こんな点が一つの特色です。
 ただ分教室の設置は、どこでもできるかといいますと、これはやっぱり課題もございます。入ってくる生徒さんを読み切れない、そうしたときに設備の十分な配置が難しい部分が、実際はあります。長野県は中山間地が非常に広いものがございますので、最近はこの分教室に限らない地域化の促進策、例えば巡回指導をすることによって、その機能を中山間地の少人数の要望があるところに提供するということも始めたところです。これが1点目の地域化の推進についてです。
 それから、今発表がございました駒ヶ根市を中心とする副次的な学籍システムですが、この駒ヶ根市がやはり市として非常にこの問題に積極的に取り組んでいただいております。まず平成16年から、子ども課という課を設置しまして、教育委員会に設置したのですが、そこに保健分野、それから福祉分野の人も組んで、要するにワンストップの体制をつくり上げました。しかも、生まれてから就学するまでの間に、切れ目がない形で独自の検診制度を確立しました。特に5歳、就学前の5歳児検診が非常に効果的であると思っています。
 この5歳児検診では、子ども課という新しく行政の組みかえを行ったわけですが、医師、歯科医師、歯科衛生士、臨床心理士、言語聴覚士、こういった方の協力を得ながら子ども課の保健士、保育士、栄養士、家庭児童相談員、教育相談員と、こういった関連部局の専門家が集まって、一人一人の子どもカルテをつくって、これを学校にまでつなげると、こういう形をやっています。子どもカルテは、実際の個別の教育支援計画に相当するものと受けとめていただいて結構です。
 こういった形で、就学前、それから就学、それから就学後というものが、地域として一つの連続した形でのサポート体制ができている。こういった中での副学籍のシステムですので、今校長から話がありましたが、実質的な成果につながっています。そういった土壌として、やっぱり首長部局と、それから教育委員会がどんなふうに連携を組むか、この辺が副学籍を考えるときにも、やっぱり基本になるんではないかということを感じています。
 駒ヶ根市は、長野県の南部のちょうど中間地帯にあるわけですが、ここに2市、3町、3村がございますが、この駒ヶ根市の今申し上げたような取組に刺激されて、二つの町それから一つの村にも、同様の仕組みづくりが進行しています。ということで、ここが長野県の実行力のうちの一つですが、こういった動きが広まれば、広域ごとに今申し上げたような体制ができてくるんではないかと考えています。そんなことを私の方では、知事部局とも連携しながら、市長村会とも連携しながら進めていかなければいけない、進めていこうと考えています。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 四つの事例について、自治体、それから学校現場からの事例を御発表いただきました。残された時間が10分ちょっとになってしまいましたが、まず、四つの事例についての御質問等をお受けしたいと思います。あるいは、御意見もあればと思います。
 はい、大南委員、太田委員、まずお二方お願いします。

【大南委員】 全国特別支援教育推進連盟の大南です。上越市とそれから伊那養護学校に、二つ御質問したいと思います。大変良い事例を御紹介いただきまして、ありがとうございました。
 まず上越市ですが、小学校が96%、中学校が100%の設置率で161学級ということは、担当教員は少なくとも161人必要なわけです。その教員の確保と研修をどのようになさっているかをお願いします。
 それから伊那養護学校ですが、これは校長先生と教育長、両方お答えいただければありがたいです。先ほど、交流及び共同学習等についても、家庭・地域の理解が必要だということだったわけですが、私は伊那養護学校に二度お伺いして、一度は交流の発表の後でした。帰りに小学校のあるところをちょうど車で送っていただきましたら、有線放送で、今日は何年生が伊那養護学校とこういう活動をしてきましたということが、地域全体に有線で伝わっていました。
 それから、飯田養護学校は喬木村の中に設置されていて、ここも私何回か伺っています。村の広報に養護学校の記事がかなり掲載されて、村民の方が日常的に養護学校へ出入りをされています。そういう中で、かなり地域の理解、あるいは家庭の理解というものは進んでいくのではないかと思います。大分私も時間がたっているものですから、今日のお話を伺いながら、今もそういう状態が続いていてほしいなと思いながら、どういう状態なのかお聞かせいただければと思います。ありがとうございます。

【宮﨑委員長】 まず、太田委員からのお話があってから、お答えいただきます。

【太田委員】 品川区立鈴ヶ森小学校の校長の太田です。前に、東京都教育委員会で副籍も担当していましたので、そのときの経験も含めて、それぞれのところにお伺いしたいと思います。
 東京都の場合、副籍をやっていて、そして特に準ずる課程を持つ盲学校のお子さんや、聾学校のお子さんについて教科の学習についてもできるだけその交流及び共同学習をというふうに取り組んでいこうとしたときに、やはりそれぞれの学習指導要領が違うとか、それからやはり学習をともにしていく上での評価基準の問題とか、様々な壁がすごく鮮明に出てきて、いわゆる知的障害の教育課程のお子さんの交流及び共同学習と、随分違う困難さを覚えたところがありました。ですので、今御発表の中で、もし準ずる教育課程のお子さんの交流及び共同学習や、そういう事例のことと、それの課題がありましたらまた教えていただきたいと思いました。

【宮﨑委員長】 それでは、今お二方から質問があったことをそれぞれ、まずは上越の佐囲東指導主事から。

【上越市教育委員会(佐囲東指導主事)】 今、御指摘のあったとおり、特別支援学級はそれだけの数があると、教員の専門性の問題に課題があります。2面で今やっています。一つは現場です。どういうことかというと、特別支援学級担任はほとんど全員が特別支援教育コーディネーター、あとは就学相談員になるケースがほとんどです。そうすると、校内委員会でそれに参加すること自体が、発達障害等の理解を深めることになります。就学支援委員会等では、就学相談を行い、かつブロック別判断会議に参加することが知的障害等の理解につながる、はたまた心理検査に関しては、ブロック別の研修会に参加する、現場での研修が一つ。
 もう一つは、上越にセンター等があります。センターで5年未満の教員を全員悉皆で集めて研修会等をする、要するに呼び出して行う研修です。その2面方向でやっていますが、正直なところ、痛い問題です。以上です。

【宮﨑委員長】 それでは、まず伊那養護学校の方から、先ほどの件、お願いいたします。

【清水長野県伊那養護学校長】 ありがとうございます。交流及び共同学習のことで、大南委員がおっしゃられたのは、本校の近くにある交流提携校の小学校のことですが、今回の報告は分教室ということで作成しましたので、この中には入れてございません。
 交流提携校には、小・中・高がありますが、本当に地域の中でも学校が、例えば30年近くなりますが、建築される前のところから本当に大事にされている、そんな状況がございます。有線放送もそうですが、本当に定期的に交流会を持ったりして、子どもたちがそこのグランドで遊ばせてもらったりとか、あるいは小学校の子どもたちがうちのところへ来て林で遊んだり、交流を持ちながら。それは、本当にずっと長年続いてきている、本当に継続している力だと、そんなことを思っています。ですので、地域の方も本当に温かく見ていただいて、学校さんにも本当に大勢おいでいただいている、そんな状況もございます。
 それから太田委員からは、教育課程のことでお話をいただきました。本校は知的障害の養護学校です。例えば小学校にしろ中学校にしろ、本校の子どもたちにとってのニーズといいますか、いわゆる指導計画に乗っかってくる教科性とか、あるいは自立活動的な面とか、そこをしっかり押さえながら、そこに評価としては返していく。通常級も、本校の子どもたちが来たから授業の妨げということは、当然あってはならないことですので、お互いに関係を高めながら、当然小学校なら小学校はその評価基準で落としていくという、そういうふうに私自身は理解しています。いわゆる総合的な学習の時間が結構多かったりとかという、そういう実情もあるかなと思っています。ありがとうございます。

【宮﨑委員長】 太田委員の質問に対して、新井先生、村岡先生、何かありましたらお願いします。

【新井県立本庄特別支援学校長】 本校は知的の特別支援学校ですが、本郷小学校へ、本校から2名行っていますが、本校の子どもたちは、基本的に先ほどお話ししましたように、年間計画等をお互い出しながら、特別活動だとかを基本に進めています。また、本郷小学校には、聾学校の児童も来ているということで、聾学校の例を含めてお願いします。

【村岡深谷市立本郷小学校】 深谷市立本郷小学校の校長の村岡と申します。よろしくお願いいたします。今日は新井先生の発表の、実際に本校で子どもたちを受け入れている側として、実際にどんなことを行っているかということで、同席させていただきました。
 本校は、児童生徒268名の小規模校です。その中で、先ほど説明があった支援籍交流を平成20年度から開始しました。ちょうど私が本郷小学校に校長として着任した年からですが、初年度が熊谷特別支援学校からの肢体不自由のお子さんですが、小学校1年生1名と2年生2名の合わせて3名のお子さん。それから平成21年度からは、坂戸ろう学園からの聴覚障害のお子さんが2名。それから平成22年度から、本庄特別支援学校のお子さんを2名、現在は3校で7名のお子さんを支援籍として受け入れています。
 その中で、ろう学園のお子さんのことについてお話ししたいと思います。この2名は三つ子のうちの2名です。初めは3名とも本郷小学校に入学しました。先ほど、色々教育課程の話もありましたが、当然通常の学校の教育課程で学んでいたわけですが、やはり聴覚に障害があるということで、三つ子のうち1名は初めから特別支援学級に入学しました。ほかの2名は通常の学級に入学しました。そのうち1名は、聴覚には障害がありませんので、ほかの子と同じような形で学習を進めていたわけですが、やはり聴覚に障害があるということで、1名は学習の遅れが目立ちました。それから、ほかの児童とコミュニケーションがなかなかとれないということが、入学してから日がたつにつれて起こりました。
 そういう中で、私も校長として初めて着任して、その子たちと一緒に入学したという形で、とても印象に残っておりますが、保護者の方も、やはり日に日にほかのお子さんと色々な部分で障害とか、あるいは差が出てきてしまいますので、話し合いを持つ中で、その中の1人は2年生になるときに、坂戸ろう学園、要するに聾学校に転校しました。それにあわせて、その年から支援籍を開始しました。三つ子のうち2名のもう1名は、3年生になるときに、ろう学園に転校しました。こちらについても、一緒に支援籍をやっています。
 今年で3年目を迎えるわけですが、やはり通常の学級で学んでいたときよりも、先ほど先生が言われましたように、いろんな手話とか、あるいはそれに伴って学力も上がってきましたので、支援籍としてまた本校に戻ってきたときに、より今まで以上に子どもたちとのコミュニケーションがうまくとれるようになりました。まさに、この支援籍制度というのが、これで生きたのかなという感じを受けています。本来ならば、同じ地域に住んでいるので、ほかの子たちもみんな本郷小学校に入学するわけです。そういったことがあったので、今実際に来ているんですが、子どもたちと良い関係ができている。職員にとっても、そういうふうなことがよかったと思います。
 それから、私も初めてこの支援籍を受け入れるに当たって、校長としてもやはり不安がありました。しかし、子どもたちは、先ほどの発表の中にありましたように、幼稚園までは地域で一緒にいました。特別支援学校に行っていて、家に帰ってきて、通常の学校に行って、家に帰っていっても、同じ隣同士だったりします。あと、今この7名のうち4名は、同じ学校に兄弟がいます。そういう中で、こういったちょっと話がずれてしまうのですが、支援籍ということで、同じ学校に来るということは、とてもその支援籍、毎日ではありませんが、年間に何回かなんですが、楽しみにしています。
 今日も、新井先生のところの児童を2名、校長室に迎えてから、この会議に出席したのですが、待っている間にその支援籍のクラスの子どもたちが、本当ににこにこしながら迎えに来て、2名の児童も教室へ行って、授業を始めました。それを見届けて、今日のこの会議に来ました。とても、今校長として、良い生徒でもっと受け入れを拡大していきたいと思っています。ちょっと答えにはならないかもしれないですが、一応今、私の学校で取り組んでいることについてお話ししました。よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 小松島小学校の針持先生、全体で何かございましたら。

【針持仙台市小松島小学校長】 私も知的障害の支援学校に10年ぐらいいたり、前任校では通常の学級に医療的ケアを必要とする子どもが、県のモデル事業で在籍していたり、様々なタイプの交流であるとか、共同学習を経験してきました。それぞれ良いところがあり、限界もあろうかと思います。
 良いところは、先ほども出ていますが、障害があったり暮らしにくさ、学びにくさを持った子どもたちとともに生活をしている周りの子どもたちの変化です。実際には、どの子も6年間の中には学びにくさ、暮らしにくい時期が必ずあるものと思っています。
 ある子供が今の学校で、いわゆる状況を受けとめられなかったようで、床に授業中にひっくり返って、パニックを起こして、混乱していました。それで、私が近づいていこうとしたら、周りの子が、「校長先生、今近づかない方が良い」って言いました。しばらく見ていたら少し落ち着いたので、「どう?」って言ったら、「うん、もう良いんじゃない」と言ってくれました。とても吸収力が育つと思います。この自然の生活の中で、学びの中で身に付けていくものだと思いました。
 その一方で、やはり一人一人、人というのは暮らし、学び、様々な場面でリズムや量や速さというものを持っています。これをそれぞれどう保証していくかというのが、大変なことだろうと今各実践をお聞きしながら、思い出しながら、感じていました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 約束の時間がちょっと延びてしまっていますが、資料4-5に、私どもの論点整理の、特に今回のことに関わる内容が出ていて、このあたりのことについて、今日の事例をもとに討議をするということをしたかったのです。それが十分できていません。なおかつ、資料4-6のところで、中教審の中で地域とともにある学校づくりの推進方策の概要をまとめました。この考え方は、いわゆるコミュニティ・スクールの考え方です。このことも含めて、私どもが考えてきた多様な学びの場を実現することと、インクルーシブ教育システムを構築していくための段階的な方策になるような部分というのが、かなりあると考えます。
 したがいまして、この点については、是非皆さんの御意見を頂戴しなければいけないんですが、今日はもう、これからやるのはかなり厳しいので、まずは事務局にメール等で出していただくことと、それをもとに少し協議をさせていただくということでお許しいただけますでしょうか。
 はい、杉山先生、お願いします。

【杉山委員】 浜松医科大学児童青年期精神医学講座の杉山です。児童精神科医です。今日、全然発言していなかったものですから、ちょっと最後に2点ほど。
 1点が、合理的配慮ですが、僕はここで当然話し合われると思ったのですが、全然出ていないようなので。それは、平常時のシステムではなくて、災害時のシステムです。継続的な災害支援の中で、例えば学校が避難所になって、しかし養護学校の在籍の子はそこにいられなくなって、自宅へ戻ってしまったとかいうことがありました。今後は、そういうことも考えておかないと、命に関わる問題だというのと、それの大きい問題というのは知覚過敏性の問題です。知覚過敏性への配慮というのは、日常への配慮にもなるものですから、この点の議論がちょっと足りないような印象を持ちました。合理的配慮のところに、その災害時のシステムを入れていただけないかというのが1点です。
 2点目が、専門性の問題です。今日の議論の中で、小松島小学校の針持先生から唯一出たのですが、虐待関連の問題です。資料4-3の3ページを見ると、I群という虐待の子が14.8%と一番高いです。先ほど地域的な配慮というのがありましたが、私はこれは分類をすると情緒障害になりますが、トラウマ関連発達障害という具合に考えるべきだと思います。そのトラブルの大きさ、それから指導の困難さ、それから非行への移行など転機の不良さ等、図を抜けていますし、それから21世紀になってから、脳にきちんとしたダメージが来るということがわかっていますので、発達障害という視点でこの虐待問題というのを、もう一度とらえ直す必要があるのではないかという具合に考えています。従来の情緒障害であるトラウマ発生の発達障害に関しても、今後専門性が必要になってくる時期が来るのではないかと考えます。この点、議論の中に是非加えていただきたいというのが2点です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それは、今の杉山委員の提起のあったことは、ワーキンググループでまた踏まえて御検討をお願いします。
 毎回、3時間の検討会議が、さらに30分以上延びるというめちゃくちゃな会議の運営をしてまいりまして、ちょっといろいろあちこちからひんしゅくを買っていて、申し訳ないです。今日は頑張って6時に終わろうと思ったのですが、やっぱり10分オーバーしてしまいました。本当に申し訳ありません。少し時間の整理などについて、私もきちんと心得てやりたいと思います。
 先ほど申し上げましたように、御意見がありましたら、事務局の方へお出しいただきたいと思います。
 本日の委員会は、これまでとしたいと思います。
 最後に事務局から、事務連絡をお願いいたします。

【前田特別支援教育課課長補佐】 課長補佐の前田です。
 次回の第13回の特別委員会の日程につきましては、また別途先生方にご連絡したいと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 それでは、本日はこれで閉会といたします。事例の報告をしていただいた校長先生方、教育委員会の方々、ありがとうございました。また、御出席をくださいました委員の皆様方には、改めて御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
 閉会にいたします。

 

―― 了 ――

 

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