資料2:特別支援教育の在り方に関する特別委員会報告骨子(委員長試案)

はじめに

  検討の経緯について説明

1.共生社会の形成に向けて

○障害者の権利に関する条約における「インクルーシブ教育システム(包容する教育制度)」の理念が重要であり、その構築に向けて着実に進んでいく必要がある。

○「インクルーシブ教育システム」においては、同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある児童生徒に対して、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる多様で柔軟な仕組みを整備することが重要。子ども一人一人の学習権を保障する観点から、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある「多様な学びの場」を用意しておくことが必要。

○障害のある子どもと障害のない子どもが共に学ぶことは、共生社会の形成に向けて望ましい。同じ社会に生きる人間として、お互いを正しく理解し、共に助け合い、支え合って生きていくことの大切さを学ぶなど、個人の価値を尊重する態度や自他の敬愛と協力を重んずる態度を養うことが期待できる。

○「インクルーシブ教育システム」構築に向けての今後の進め方については、短期と中長期に整理し段階的に実施していくことが必要。

(1)「インクルーシブ教育システム」の構築に向けて

○1 「インクルーシブ教育システム」の定義

○2 「インクルーシブ教育システム」と特別支援教育の関係

○3 「インクルーシブ教育システム」構築に向けての方向性

(2)「共に学ぶ」ことについて

○1 「共に学ぶ」ことの教育的効果

○2 「共に学ぶ」ことの現状と課題

(3)インクルーシブ教育システムと地域性

○1 学校を拠点とした地域づくりによるインクルーシブな社会の実現

○2 学校間連携による地域の教育資源の活用

○3 関係機関等との連携

2.就学相談・就学先決定の在り方について

○一人一人の教育的ニーズに応じた支援を保障する就学先を決定するため、また、本人・保護者、学校、教育委員会が円滑に合意形成を図るため、医療や福祉の関係部局等との連携を図りながら、障害のある子どもの教育相談・支援について乳幼児期を含め早期から行うことが必要。そのためのモデル事業を国は実施、それを参考にしながら、全国的に取り組んでいく必要がある。

○就学基準に該当する障害のある子どもは、特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改め、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、専門家の意見等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みとすることが適当。その際、本人・保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重し、本人・保護者と教育委員会、学校等が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とし、最終的には市町村教育委員会が決定。

○本人・保護者と教育委員会、学校等の意見が一致しない場合の調整の仕組みについては、各教育委員会において、第三者的な立場で関われるような相談できる体制を設置。また、行政不服審査制度による調整も考えられる。

○就学先決定後も、継続的な教育相談を行い、個別の教育支援計画を見直す中で、柔軟に就学先の見直しを図り適切な支援を行っていくことが適当。

○市町村教育委員会は、障害のある子ども本人・保護者に対して十分な相談・情報提供ができる体制を整備することが必要。その支援のために都道府県教育委員会は、専門的な相談・助言機能を充実・強化することが必要。

(1)早期からの教育相談・支援

○1 早期からの教育相談・支援の重要性

○2 早期からの教育相談・支援の充実

○3 市町村教育委員会と首長部局(医療や福祉等の関係部局)、教育関係者、地域との連携

(2)就学先決定の仕組み

○1 就学先の決定に関する制度改正

○2 本人・保護者への情報提供の充実

○3 市町村教育委員会の体制整備及び都道府県教育委員会による支援

○4 就学先決定についての本人・保護者の意見と行政の意見が一致しない場合の仕組み

(3)一貫した支援の仕組み

○1 関係機関が共有できる早期からの相談支援ファイル、個別の教育支援計画の活用

○2 個別の教育支援計画、個別の指導計画の作成促進

○3 保護者支援

(4)就学相談、就学先決定に係る国・都道府県教育委員会の役割

○1 都道府県教育委員会の就学先決定に係わる相談・助言機能の強化

○2 都道府県教育委員会による専門家派遣

○3 就学相談に関するモデル的事例の開発・普及

3.障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基礎となる環境整備

○条約の定義に照らし、「合理的配慮」とは、「障害のある子どもが、他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」であり、「学校の設置者及び学校に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」、とする。なお、障害者の権利に関する条約において、「合理的配慮」の否定は、障害を理由とする差別に含まれるとされていることに留意する必要がある。

○障害のある子どもに対する支援については、法令に基づき又は財政措置により、国は全国規模で、都道府県は各都道府県内で、市町村は各市町村内で、教育環境の整備をそれぞれ行う。これらは、合理的配慮の基礎となる環境整備であり、それを「基礎的環境整備」と呼ぶこととする。これらの環境整備は、その整備の状況により異なるところではあるが、これらを基に、設置者及び学校が、各学校において、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、「合理的配慮」を提供する。

○「合理的配慮」の決定に当たっては、障害者の権利に関する条約第24条第1項にある、人間の多様性の尊重等の強化、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加するといった目的に合致するかどうかの観点から検討が行われることが重要。

○「合理的配慮」は、一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されるもの。設置者・学校と本人・保護者により、発達の段階を考慮しつつ、「合理的配慮」の観点を踏まえ、「合理的配慮」について可能な限り合意形成を図った上で決定し、提供されることが望ましく、その内容を個別の教育支援計画に明記することが望ましい。なお、設置者・学校と本人・保護者の意見が一致しない場合には、第三者機関により、その解決を図ることが望ましい。また、学校・家庭・地域社会における教育が十分に連携し、相互に補完しつつ、一体となって営まれることが重要であることを共通理解とすることが重要。さらに、「合理的配慮」の決定後も、幼児児童生徒一人一人の発達の程度、適応の状況等を勘案しながら柔軟に見直しができることを共通理解とすることが重要。

○移行時における情報の引継ぎを行い、途切れることのない支援を提供することが必要。

○「合理的配慮」の充実を図るため、必要な財源を確保し、国、都道府県、市町村は、「基礎的環境整備」の充実を図っていくことが必要。「基礎的環境整備」については、「合理的配慮」と同様に体制面、財政面を勘案し、均衡を失した又は過度の負担を課さないよう留意することが必要。そのためには、共生社会の形成に向けた国民の共通理解を一層進め、インクルーシブ教育システム構築のための施策の優先順位を上げていくことが必要。

○「合理的配慮」の観点について整理するとともに、障害種別の「合理的配慮」は、その代表的なものと考えられるものを例示。示されているもの以外は提供する必要がないということではなく、一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されることが望ましい。また、現在必要とされている「合理的配慮」は何か、何を優先して提供するかなどについて関係者間で共通理解を図る必要がある。さらに、複数の種類の障害を併せ有する場合には、各障害種別の「合理的配慮」を柔軟に組み合わせることが適当。

(1)「合理的配慮」について

○1 「合理的配慮」の定義等

○2 「合理的配慮」の決定方法等

○3 「合理的配慮」についてのモデル的事例の開発・普及

(2)「基礎的環境整備」について

○1 ネットワークの形成・連続性のある多様な学びの場の活用

○2 専門性のある指導体制の確保

○3 個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成等による指導

○4 教材の確保

○5 施設・設備の整備

○6 専門性のある教員、支援員等の人的配置

○7 個に応じた指導や学びの場の設定等による特別な指導

○8 交流及び共同学習の推進

(3)学校における「合理的配慮」の観点

<「合理的配慮」の観点○1 教育内容・方法>

<○1-1 教育内容>

○1-1-1 学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮

○1-1-2 学習内容の変更・調整

<○1-2 教育方法>

○1-2-1 情報・コミュニケーション及び教材の配慮

○1-2-2 学習機会や体験の確保

○1-2-3 心理面・健康面の配慮

<「合理的配慮」の観点○2 支援体制>

○2-1 専門性のある指導体制の整備

○2-2 幼児児童生徒、教職員、保護者、地域の理解啓発を図るための配慮

○2-3 災害時等の支援体制の整備

<「合理的配慮」の観点○3 施設・設備>

○3-1 校内環境のバリアフリー化

○3-2 発達、障害の状態及び特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮

○3-3 災害時等への対応に必要な施設・設備の配慮

4.多様な学びの場の整備と学校間連携等の推進

○多様な学びの場の整備と学校間連携により特別支援教育を推進していくことが重要。また、医療、福祉、労働等の関係機関との連携を進めていくことも重要。

○特別支援学校と幼稚園、小・中・高等学校等との間で行われる交流及び共同学習を一層推進する。また、居住する地域における交流及び共同学習については、副次的な学籍を持たせるなど一層の工夫が必要。

○特別支援学校のセンター的機能を一層活用するため、各都道府県において、センター的機能の効果的な体制づくりを進めることが必要。

(1)多様な学びの場の整備と学校間連携による特別支援教育の推進

○1 多様な学びの場における体制整備

○2 学校間連携による地域の教育資源の活用

○3 通級による指導の一層の充実

○4 特別支援教室構想について

○5 幼稚園、高等学校段階の特別支援教育等の充実について

○6 関係機関等との連携

(2)交流及び共同学習の推進

○1 交流及び共同学習の意義

○2 居住地校交流の意義、副次的な学籍

○3 交流及び共同学習の体制充実

○4 同じ障害のある者との交流

(3)特別支援学校のセンター的機能の一層の活用

○各都道府県におけるセンター的機能の効果的な体制づくりの推進

5.信頼ある特別支援教育を担保するための教職員の確保及び専門性向上

○すべての教員は、特別支援教育に関する一定の知識・技能を有していることが求められる。特に発達障害についての一定の知識・技能については、必須である。これについては、養成段階で身に付けることが適当であるが、現職教員については、研修の受講により専門性向上を図る。

○担当教員の専門性向上の重要性については言うまでもないが、すべての教員がすべての専門性を身に付けることが困難なことから、必要に応じて、外部人材の活用も行い、学校全体として専門性を確保していくことが必要である。学校全体として、専門性を確保していく上で、校長等管理職のリーダーシップは欠かせない。また、各学校を支援する、教育委員会の指導主事等担当者の役割も大きい。このことから、校長等管理職、教育委員会担当者を対象とした研修の最優先に実施していく必要がある。

○特別支援学校の教員については特別支援学校教諭免許状の取得率の向上により、特別支援学級や通級による指導の担当教員については、専門的な研修の受講等により、それぞれ最低限の専門性の担保を図る。

○障害のある者の教職員への登用については、共生社会の形成に向けて意義がある。

(1)教職員の専門性の確保

○1 すべての教員が身に付けるべき基礎的な知識・技能

○2 外部人材の活用も含めた学校としての専門性の確保

(2)教職員の養成・研修制度の在り方

○1 校長等管理職、教育委員会担当者を対象とした研修

○2 すべての教員についての養成・研修

○3 特別支援学校教諭についての養成・研修

○4 小・中学校における特別支援学級や通級による指導の担当教員の養成・研修

○5 特別支援教育コーディネーターの研修

○6 特別支援教育支援員の研修

(3)教職員への障害のある者の採用・人事配置

○教職員への障害のある者の採用・人事配置の意義等

 

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)