資料5:障がい者制度改革推進会議差別禁止部会(第12回)議事録

(2012年1月27日)第2コーナー議事録(議事:教育)

○棟居部会長 それでは、時間が参りましたので、再開させていただきます。
 第2のコーナーは80分で、文部科学省からのヒアリングでございます。
 なお、先ほどの繰り返しになりますが、改めて申し上げます。ヒアリングに先立ちまして、確認しておくべき事項がございます。本日の部会は、教育分野の施策の全般について検討を行う場ではありません。現状を踏まえた上で、差別禁止法制がどうあるべきかについて議論を収れんさせていくことが必要です。この点を御注意ください。また、新たな施策の実施や施策の変更に当たっては、文部科学省であれば中教審の検討を経る必要があるため、本日のヒアリングでは文部科学省の今後の対応について確定的な回答を期待できないこともあるかと思います。以上の点、よろしくお願いします。再度確認させていただきました。
 それでは、初等中等教育局特別支援教育課より千原由幸課長においでいただいております。まず、千原課長様より20分程度で御説明をいただきますので、よろしくお願いします。
 よろしくお願いします。

○千原課長 座ったままで大変失礼をいたします。ただいま部会長より御紹介をいただきました文部科学省特別支援教育課長の千原でございます。本日は、この場にお呼びいただきまして大変ありがとうございます。
 本日は、今、部会長から御紹介がございました中教審、そのもとに「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」というものが設置されております。更に、その委員会のもとに「合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ」というものが設置されておりまして、そちらの方で合理的配慮あるいは環境整備ということにつきまして議論をしてまいりましたので、その状況を御報告に上がらせていただきました。
 お手元に資料2-1から2-3がございますけれども、まず、これまでの審議経過等を御紹介するために資料2-3をごらんいただけますでしょうか。こちらにございますように、特別委員会の方で去年の5月に決定をしております。1ページ目でございます。「1 検討事項」ということで、特別委員会の方では、更にその前の22年の年末にいわゆる論点整理というものをまとめました。その論点整理におきましては、就学先決定の在り方、あるいはインクルーシブ教育システムということについて議論がまとめられておりますけれども、その際、合理的配慮あるいは環境整備、そういったことについては、ありていに申し上げますと、引き続き検討という形になりました。
 年が明けまして23年から具体的に積み残した課題を特別委員会の方でも議論をしておりますけれども、その際、やはり合理的配慮等につきましては、いろいろ障害種別でも違うだろうし、またソフト面、ハード面からも議論が必要だといった議論がございまして、こちらにあるような委員会決定としてワーキンググループの設置が決められました。
 検討事項にありますように、「(1)合理的配慮について(障害種別並びにこれら障害種に共通する事項)」ということについて、「(2)その他の環境整備について」ということで、ワーキンググループが議論を開始してございます。
 1枚おめくりいただきまして2ページ目でございますが、こちらがワーキンググループの委員名簿でございます。全部で14名ということで、尾崎主査、河本主査代理を中心に14名の委員で構成されてございます。
 また、下の方のオブザーバーは、特別委員会の委員長及び委員長代理ということで、石川委員、宮﨑委員ということでございます。
 1枚おめくりいただけますでしょうか。3ページ目でございます。5月に設置が決定されまして、第1回7月から第8回、本年の1月まで8回にわたりまして議論が進められてまいりました。第1回目は、こういったワーキンググループにおける検討事項について議論をいただき、顔合わせ的な会議でございますが、その後、第2回、第3回と障害者御本人あるいはその保護者の方から障害種別でヒアリングをさせていただきました。そして、第4回、こういったそれぞれの障害種別のヒアリングの結果をまとめながらも、また障害種別を超えた共通的な事項というのはどういうのがあるかというようなことについて、また、そもそも合理的配慮というのは新しい概念でございますので、合理的配慮ということについて、一体どういうことか、そういったことについての議論をしていただきまして、第7回目、第8回目でワーキンググループ報告について御議論をいただいて、1月の第8回で主査一任という形になってございます。
 本日、資料2-1、2-2としてお持ちいたしましたのは、そのときの第8回目の主査一任になりました資料でございます。第8回におきましても、るる御議論がございまして、一任にはなっておりますが、したがいまして、今、お手元の資料2-1、2-2は最終版ではございません。現在、主査、主査代理が第8回の御議論を踏まえて、どう修正するかということを今、詰めているという状況にございます。
 では、早速報告(案)の方に移らせていただきたいと思います。資料2-1は概要版でございまして、資料2-2の方が報告(案)本体となっておりますので、恐縮ではございますが、資料2-2の本体の方をかいつまんで御説明させていただくという形にしたいと思っております。
 おめくりいただきまして、最初の方に目次ということでございます。「はじめに」、それから1ポツとして「『合理的配慮』の定義等について」、2ポツ「『合理的配慮』の決定方法等について」、3ポツとして「基礎的環境整備について」、4ポツとして「学校における『合理的配慮』の観点」、5ポツで「関連事項」となっております。それぞれ中を見ながら、どういうことかを御紹介させていただきたいと思います。
 また1ページおめくりください。1ページ、「はじめに」のところから、飛ばしながらで恐縮ですが、全体を追いたいと思っております。
 まず、1ページの○2にありますことは、先ほどの設置紙に書いてありました2点について、検討、審議するということで、ワーキンググループが設置されましたと。
 そして○3でございますが、今、御紹介したこととかぶりますけれども、障害御当事者・保護者の方からヒアリングをさせていただき、委員による障害種別の検討を行って、また、障害種別を超えた共通的な事項を整理するというような経過をとりました。その中で合理的配慮の観点ということを整理していただいております。また、これと並行して条約における合理的配慮ということを踏まえながら、本ワーキンググループとしての定義を決めていただきました。
 2ページに行きまして○6のところに飛ばせていただきますけれども、「『合理的配慮』というものは新しい概念である」と。その上に書いてございますけれども、「障害者基本法において、『可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮ししつ』」ということを規定していただいた趣旨を踏まえて、本ワーキンググループにおいて条約の理念を踏まえた障害のある子どもに対する『合理的配慮』の観点というものの整理を行った」ということでございます。
 今回、本ワーキンググループにおきましては、合理的配慮の観点を改めて整理をして、ワーキンググループとしての思いということになりますけれども、これを踏まえて、「それぞれの学校における障害のある子どもへの教育が一層充実したものになっていくことを願ってやまない」というまとめになってございます。また、「合理的配慮については、教育委員会、学校、各教員が正しく認識しなければならない」ということと、また、「地域における理解」ということについても「理解促進のための啓発活動が必要」というふうにまとめていただいております。
 その下、2ページの1ポツからが「『合理的配慮』の定義等について」ということでございます。(1)○1のところは条約上の定義を書いてございますので、省略をさせていただきますが、これを踏まえまして次の3ページをごらんください。○2というところで本ワーキンググループにおける「合理的配慮」の定義をさせていただいております。1行目の最後にありますように、本ワーキンググループにおいては、「障害のある子どもが、他の子どもと平等に『教育を受ける権利』を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」であり、「学校の設置者及び学校に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」という定義とされてございます。この際、「条約において、『合理的配慮』の否定は、障害を理由とする差別に含まれるとされていることに留意する必要がある」というふうに指摘されてございます。
 また、今、出てまいりました「均衡を失した又は過度の負担」ということにつきましては、○3、「各学校の設置者及び学校が体制面、財政面をも勘案し、『「均衡を失した』又は『過度』の負担について、個別に判断することとなる。各学校の設置者及び学校は、障害のある子どもと障害のない子どもが共に教育を受けるというインクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として、『合理的配慮』の提供に努める必要がある」という指摘になってございます。
 次の(2)のところでございます。先ほど見ていただきましたように、本ワーキンググループは、合理的配慮、その他の環境整備、この2つを議論するということで、また、合理的配慮というのは新しい概念で、委員それぞれの中にもいろいろな思いがあったようでございますが、それを議論する中で、「合理的配慮」と「基礎的環境整備」というふうに位置づけるというような方向になりました。
 まず、○1のところで、障害のある子どもに対する支援については、法令に基づき又は財政措置により、国、都道府県あるいは市町村で教育環境の整備をそれぞれ行う。これらは、『合理的配慮』の基礎となる環境整備であり、それを『基礎的環境整備』と呼ぶ、というふうに本ワーキンググループでは御指摘をいただきました。この環境整備というのは、その状況によって異なるところではございますが、これらをもとに、各学校において、障害のある子どもに対し、その状況に応じて『合理的配慮』を提供する、というまとめになってございます。
 1つ飛ばさせていただきまして、○3は「合理的配慮」の観点というものを書いた部分になりますが、個別の状況に応じて提供されるものであって、これを具体的かつ網羅的にすべて記述するというのは困難であるということで、本ワーキンググループにおきましては、合理的配慮を提供するに当たっての観点を「合理的配慮」の観点というふうにとらえまして、○1 教育内容・方法、○2 支援体制、○3 施設・設備、それぞれを類型化する、そして、次の4ページですけれども、各「合理的配慮」の観点ごとに各障害種に応じた「合理的配慮」を例示するというような構成で整理をいただきました。
 次の「2.『合理的配慮』の決定方法等について」でございます。(1)基本的な考え方というところは、合理的配慮を行う前提として、学校教育に求めるもの、そこの下にありますけれども、時間の関係で読み上げませんが、(ア)から(カ)に当たるようなことを求めていく教育というのが大事であると。
 ○2、これらは、障害者の権利に関する条約24条第1項の目的と方向性を同じくするものであり、「合理的配慮」の決定に当たっては、こうした目的に合致するかどうかの観点から検討することが重要であるという御指摘でございます。
 具体的な決定方法につきましては、(2)の○1のところでございますが、「合理的配慮」は、一人一人の障害の状態、教育的ニーズ等に応じて決定されるものであります。その検討の前提として、設置者・学校は、御本人の興味・関心、学習上又は生活上の困難、健康状態等、そういった子どもさんの状態把握を行う必要がある。これを踏まえた上で、学校現場におきましては、障害のあるお子様について個別の教育支援計画というものを作成してまいりますけれども、それを作成する中で、「合理的配慮」の観点を踏まえまして、「合理的配慮」について可能な限り合意形成を図った上で決定して、提供していくことが望ましい、その内容が個別の教育支援計画に明記されることが望ましいというおまとめになってございます。
 次、4ページから5ページに参りますけれども、そうした合理的配慮の決定に当たって、5ページの上に飛ばせていただきますが、設置者・学校と本人・保護者の御意見が一致しない場合には、第三者機関により、その解決を図ることが望ましいというおまとめでございます。
 1つ飛ばしまして、「(3)『合理的配慮』の見直しについて」でございますけれども、「合理的配慮」が決定された後も、一人一人の発達の程度、状況等を勘案しながら柔軟に見直しができることを共通理解とすることが重要であるという御指摘。
 その次の「(4)一貫した支援のための留意事項」ということで、○1、例えば小学校から中学校に移行するような場合の情報の引継ぎということの重要性、その際の「合理的配慮」の引継ぎを行うことが必要であるという御指摘。
 ○2では、発達や年齢に応じた配慮を意識することが必要であるという御指摘。
 ○3では、例えば高等学校においては入学者選抜ということが行われますけれども、そういったものに対して、一層の配慮を行うということ。選抜方法の多様化ですとか評価尺度の多元化というというような御指摘。更にはキャリア教育あるいは就労支援の充実を図っていくことが大事だという御指摘をいただいております。
 続きまして、6ページに飛ばさせていただきまして、「(5)通級による指導、特別支援学級、特別支援学校と『合理的配慮』の関係について」というところでございます。合理的配慮について、委員の御意見、最初、意識合わせの段階ではさまざまございましたが、例えばこういう通級による指導、特別支援学級、特別支援学校と「合理的配慮」の関係をどう整理するかという議論がございました。結論は○1の2行目からでございますが、通級による指導等の設置というのは、多様な学びの場の確保のための「基礎的環境整備」として行われているものである、というおまとめでございます。
 そして、○2に飛ばせていただきますけれども、通常の学級のみならず、通級による指導等においても、「合理的配慮」として、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことが必要だ、というおまとめになってございます。
 ○3、それぞれの学びの場における「合理的配慮」というのは、この後に具体的には出てまいりますけれども、「合理的配慮」の観点を踏まえて、個別に決定されることとなりますが、「基礎的環境整備」を基に提供されるために、「基礎的環境整備」の状況により提供される「合理的配慮」は異なることとなる、というふうに御指摘をいただいています。
 ○4、「障害のある子どもが通常の学級で学ぶことを可能な限り配慮していくことが重要である。他方、十分な教育を受けられるようにするためには、本人・保護者の御理解を得ながら、必ずしも通常の学級で全ての教育を行うのではなく、通級による指導等多様な学びの場を活用した取り出し指導を柔軟に行うことも必要な支援と考えられる」というおまとめになってございます。
 続きまして、下の方に行かせていただきまして「3.基礎的環境整備について」のところでございます。「『合理的配慮』の充実を図る上で、『基礎的環境整備』の充実は欠かせない。そのため、必要な財源を確保し、国、都道府県、市町村は、(中略)共に教育を受けるというインクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として、『基礎的環境整備』の充実を図っていく必要がある」というふうに指摘をいただいております。
 その際ということで、○2、「現在の財政事情に鑑みると、そのためには、共生社会の形成に向けた国民の共通理解を一層進め、社会的な機運を醸成していくことが必要であり、それにより、財政的な措置を図る観点を含めてインクルーシブ教育システム構築のための施策の優先順位を上げていく必要がある」というふうにいただいております。
 その先、「基礎的環境整備」につきまして、(1)~(8)までまとめてございますけれども、時間の関係で飛ばさせていただきますが、それぞれの視点について、現状と課題をまとめていただきました。
 飛んで恐縮でございますが、10ページの一番下、「4.学校における『合理的配慮』の観点」というところでございます。これが今回の報告書のサブタイトルにもなってございますけれども、○1、「合理的配慮」は、個々の障害のあるお子さんの状況に応じて提供されるもので、多様かつ個別性が高いものであることから、本ワーキンググループについては、その観点について整理をいたしました。どういう観点を念頭に置いて合理的配慮を提供するのかというその観点をまとめたということでございます。
 合理的配慮を提供する際に当たっては、○3、「体制面、財政面をも勘案し、『均衡を失した』又は『過度の』負担について、個別に判断する」と。ここのところについては第8回のときも議論がございましたが、「『合理的配慮』を決定する際において、現在必要とされている『合理的配慮』は何か、全てできないとすれば何を優先するか、について関係者間で共通理解を図る必要がある」という御指摘がございました。
 また、「合理的配慮」については、先ほども少し出てまいりましたが、○4、「全ての場合を網羅することはできないため、その代表的なものと考える例を以下に示す」ということでございます。「ここに示されているもの以外は『合理的配慮』として提供する必要がないということではなく、一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されることが望ましい。」また、「障害を併せ有する場合には、各障害種別に例示している「合理的配慮」を柔軟に組み合わせることが適当である」ということでございます。
 その下、網かけのところ、「『合理的配慮』の観点(1)教育内容・方法」ということで、それぞれに幾つか枝分かれしている部分もございまして、(1)-1は教育内容でございます。
 12ページに飛んでいただきまして、(1)-2では「教育方法」ということでございます。
 その下では「『合理的配慮』の観点(2)支援体制」ということです。それぞれについて(2)-1からございます。言い忘れましたが、別表というのが後ろについてございまして、ここには配慮の観点としてタイトルがあり、それを解説するような文章が下に並んでおりますが、更にそれぞれについて、各別表に例として、それぞれの障害の場合、「合理的配慮」の観点の下に連なることとして、こういうようなことが例として挙げられるということで、別表がついてございます。
 更に、13ページの方に参りまして、「『合理的配慮』の観点(3)施設・設備」というところでございます。13ページの5ポツは「関連事項」ということで、ここの下にありますように、今回、「合理的配慮」をまとめる際に、併せて委員の方々から御意見のあった中で、特別委員会において検討することが望まれることということで、早期からの教育支援、学校外・放課後における支援、教職員の確保、専門性の向上ということで、3点まとめさせていただきました。
 少し時間を超過しておるかもしれません。申し訳ございません。
 今後でございますけれども、ワーキンググループとしては、主査一任ということになってございますので、8回の議論をもってワーキンググループの方は開催が終了したというふうに思っております。
 今後、主査、主査代理が相談をされて、今、見ていただいた報告書(案)を最終化していただきまして、これを親の委員会でございます「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」の方に報告をいたしまして、委員会の方で、引き続き議論をしなければならない教職員の専門性の向上ですとか、今、5ポツに出てきたようなことを含め御議論をしていただくというような流れというふうに事務局、庶務としては考えてございます。
 冒頭、大変雑駁な御説明で恐縮でございましたが、以上でございます。

○棟居部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、質疑及び議論に入らせていただきます。時間は60分を予定しております。
 太田委員、どうぞ。

○太田委員 ありがとうございます。
 今、御説明いただきましたが、私が理解できる部分と理解できない部分がありました。合理的配慮というのは、他の人たちと同等に暮らせるための支援、配慮、それを怠れば差別であるということを文部科学省さんもここできちんとおっしゃられているということは評価したいと思います。
 現実には、障害の重い人が地域の学校に行きたいと言っても、断られてしまう、行けないということで、裁判になっているのは何件かございます。合理的配慮というものと教育というものを一緒に同じところで論理立てされてしまっているので、私の理解を超えてしまうのだろうと思います。合理的配慮は、環境をつくる、配慮を怠れば差別であるというあれは、そういう人的な保障や設備的な保障をするということは、まず第一にそういうことを行っていかなければならないだろうと私は思います。
 例えば交通機関の問題で言えば、重度の障害者は、「あなたは重度だから、一般交通機関ではなくて、ハンディキャブのような輸送車で」と、それをもって合理的配慮としましょうというのは筋が通らない話であって、一般公共交通機関もタクシーもバスもすべてを障害者が利用できる仕組みとなり、それをどう使うかは本人の選択。私は電車で行く方がよいとか、私はリフトタクシーで行く方がよいとか、それは本人の選択権に託す問題になるのだろうと思います。
 この2つを見た感じでは、重度の障害者はハンディキャブでいいと。リフトタクシーではなくて、ハンディキャブですよ、そういうふうな福祉的なニュアンスが感じられます。それは、差別禁止法、権利条約で言えば、私は差別だと思います。すべてを整備していくことが大事だと思います。
 そして、多分合理的配慮は過度な負担を超えない範囲ということをおっしゃるかもしれませんが、小学校、中学校は義務教育であり、地方自治体や国が設置するものだと思います。過度な負担という場合は、企業や事業者がそれを負担することによって経営ができなくなるとか倒産してしまう状態を過度な負担というふうに認識をしています。
 そういうところが合理的配慮と教育の現実と障害児教育がごちゃごちゃにされて、文部科学省は一体何をされようとしているのかについて、再度伺いたいと思います。

○棟居部会長 ありがとうございました。
 本人の選択の自由を保障すべきであると。つまり、権利性、権利条約の考え方をちゃんと受けとめることが大事であるという御指摘、それから過度な負担ということについて、最後、私自身はよく理解できなかった面がありますけれども、小学校、中学校という義務教育で企業や事業者に言われる過度の負担という考え方をそもそも入れるのがおかしいという御指摘ですか。

○太田委員 小学校、中学校ですが、地方自治体や国が財政を出しているわけで、障害児の支援、合理的配慮をすることによってその自治体がつぶれるということは考えにくい。もしつぶれそうな場合は過度な負担になるでしょうということです。だから、過度な負担という議論を持ち込まないでいただきたいなという意味です。

○棟居部会長 わかりました。ありがとうございました。
 それでは、千原課長、お願いします。

○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
 太田委員からの御指摘、ありがとうございました。
 私、ワーキンググループの庶務、事務局でございますので、今回の報告書(案)について、代表としてこういうことですというふうに言える状況にはないのでございますが、ただ、近くで庶務を詰めさせていただいた観点から、やや事務局の見解というふうになるかもしれませんことは、先ほど部会長もおっしゃっていただきましたが、お許しいただければと思います。
 まず、1点目の差別ということについては、この報告書(案)、先ほども見ていただきましたが、2ページのところに「障害者の権利に関する条約」の定義を書かせていただく中で、最後のところでございますが、「障害を理由とする差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含むとされている」ということをうたった上で、○2のパラの最後でございますが、「なお、障害者の権利に関する条約において、『合理的配慮』の否定は、障害を理由とする差別に含まれるとされていることに留意する必要がある」ということで、ワーキンググループの委員もそのことをしっかり認識して議論をされております。また、文部科学省としても、この条約はそのとおりというふうにちゃんと理解をしているつもりでございます。
 もう一点は、いわゆる私企業とかそういったところが「均衡を失した」又は「過度の」負担ということについての御意見だと思いますので、そのことについても受けとめさせていただきました。ワーキンググループでも、私の記憶ではそのような御議論がありまして、例えば労働分野のことと一般的な公教育といったこととでは、「均衡を失した」又は「過度の」負担ということについても、やはり差があるのではないかという御議論もございました。差があるのではないかというのは、より公教育の方が、過度の負担と言ってもしっかりやらなければいけないのではないかという議論があったというふうに趣旨として思い起こしております。
 ただ、一方で、委員の中には、やはり現場の教育長の方とかもいらっしゃいまして、さはさりながら、実際には地方公共団体においてもなかなか財政事情が厳しくてというような御議論もあったというふうに承知しております。
 そういった議論を積み重ねる中で、本ワーキンググループでは、その下の○3、「均衡を失した」又は「過度の」負担ということについては、このようなまとめになってきておる、そういう状況でございます。
 ただ、この報告はまだ案でございますので、これをまた特別委員会の方でも詰めていただき、そういった報告を受け取る際には、国としてこのことを受けとめてやっていかなければならないということでございますが、現時点でのこの報告(案)を拝見するに、このまとめでは、合理的配慮を合理的配慮の観点で提供する際の土台といいますか、基礎として基礎的環境整備を国はしっかりやっていくのだというふうに受けとめております。また、これは法令に基づき、あるいは財政的な措置に基づいてやっていくということで、そのことがしっかりなされる方向で文部科学省、私どもとしてはしっかりやっていきたい。そのことについて、インクルーシブ教育システムの構築に向けて合理的配慮の提供ということはしっかりやらなければいけないというのが、この報告(案)の全編を貫く考え方だろうというふうに思ってございます。

○棟居部会長 ありがとうございました。
 大谷委員、お願いします。

○大谷委員 大谷です。
 いろいろ質問が多いので、正直申し上げて、今日、私の資料として3点提出させていただきました。事前に読ませていただいた今日の案に対して、余りにも質問が多いものですから、書面で出させていただいたので、時間の配分上、これに全部お答えいただくわけにはいかないというふうに思われますので、ここから主要なところだけをこの場で聞かせていただきたいと思います。
 併せて、私の個人的な見解を述べておりますが、これは私の個人的な見解ですから、今日は意見を述べる機会ではないので、これは後で読んでいただければと思います。ただ、それに添付する形で、私ども、この間、「学校教育における差別体験」というアンケート調査をいたしました。これを踏まえて2~3質問をさせていただきたいと思います。
 「学校教育における差別体験」。通し番号で言うと14ページ以降なのですけれども、差別禁止部会で教育における差別が問題になろうかということで、去年の年末、1か月強の期間、メーリングリスト等で集めただけで一気に211件の差別事例。勿論、差別と意識したということで、当事者、主要には保護者の方からのアンケート結果です。
 「就学先の決定にかかわる差別」が64件、「障害に基づく異別取り扱い」が66件、「合理的配慮の欠如と思われるもの」、自分はそういうふうに感じるということですけれども、101件、「虐待及びハラスメント」が39件ということで、もう少し細かく集計したいと思いますが、本日に間に合わせるために、「就学先の決定」と「異別取り扱い」にかかわる差別を今日ここに持ってきました。これを見ると、合理的配慮の欠如に絡むことも多々あります。ざっと見ていただければ本当にわかると思うのですけれども、就学先を決定するに当たって、そこではこういうことをされません、何にもしてあげませんよというようなことを言われて、事実上、就学強制がされる。地域の学校に入れなかったという訴えがある。それから、入った以降も、それは「異別取り扱い」という形でまとめさせていただきましたけれども、主要には保護者の付き添いがなければ何にもしてもらえない、個別教科においても保護者の付き添いが強要されるというような実態の中で、普通学級に入ったはいいけれども、実質的な教育が保障されないというような形の差別の訴えが本当に多いのです。
 これを今後、具体的にどういうふうに制度的もしくは個別的、合理的配慮として解決していくかということが今、問われているのだろうと思います。その観点でこのまとめも案も出されたのだと思いますけれども、具体的な質問をさせていただきます。
 ざっと読ませていただいた形では、既に今、行われている配慮を合理的配慮もしくはインクルーシブ教育の方向に向けて整理し直したというふうにされておりますけれども、現に通常学級で行われている配慮、実際あるという形でどのように取り上げていただいたのかどうかということがちょっと見えてこない。
 加えれば、通常学級における合理的配慮、学校における合理的配慮として、すべてが必要だという形で学校における合理的配慮という形でまとめておられますけれども、一方、基礎的環境整備があるところとないところでは合理的配慮の多寡が違う。多い少ないは異なってくるだろうというようなまとめもされております。
 とすると、基礎的環境整備があるのは、どうやらまとめを見ますと、特別支援学校、特別支援学級において基礎的環境整備が既にこれだけありますというようにまとめておられるようですので、基礎的環境整備がいまだ不十分である通常学級においては、合理的配慮がかなり必要になってくる場面があろうかと思いますが、そういった観点での学校における合理的配慮という形でとりまとめ、意識がされたのかどうか。これを2点目にお伺いさせていただきたい。
 もう一つだけ。私が全部聞いてしまうと時間をとってしまうので、余り聞かないようにしますけれども、合理的配慮をニーズ把握という形でいろいろその観点から精査するというふうに言っておられますが、これは、請求に基づいて合理的配慮というものが精査され、決定されていくというふうにお考えなのか、何らかの機関、学校側が、あなたの配慮はこれですという形で決めていくものなのかどうかということに関して、これは一応「合意形成を図る」というふうに言っておられますけれども、保護者の意に反した形での合理的配慮というようなものが想定されるのかどうかということも併せて伺わせていただきたい。
 もう一点だけ。太田委員と一緒です。先ほど来から合理的配慮に関しては学校と設置者の義務であるというふうに言っておられますけれども、学校と設置者ということになりますと、市町村の財政状況によって、市町村でかなり差が出てきてしまうというようなことにもなりかねない。とすると、基礎的環境整備は国の責任であるというふうに明確に言っておられますから、基礎的環境整備を十全にする。そして合理的配慮一つひとつにとっても国の責任というものを意識されているのかどうか。合理的配慮は、特に義務教育段階においては、いわゆる条件整備として国が整備すべきものであるというような御意見はそこでは出なかったかどうかということも併せて聞かせていただければと思います。
 私からはたくさん出ていますけれども、せめてこの4点だけはここで口頭で答えていただければと思っております。
 以上、お願いします。

○棟居部会長 ありがとうございました。
 では、お願いします。

○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
 大谷委員、ありがとうございます。
 的確にお答えできるかどうか自信はございませんが、頑張ってみたいと思います。
 まず、1点目は、いわゆる就学先決定の制度の関係のことのお問い合わせかというふうに理解をいたしました。14ページから始まる大谷委員がお示しいただいた差別の事例ということで、こういうことについて、本来は双方の御意見を承ってということではありますが、ただ、少なくともそのようにお感じになられていらっしゃる御本人、保護者がいらっしゃるということは、私としても個人的には非常に残念というふうに思います。こういったことがないように国としてもしっかりやっていくということが基本だろうと思っています。
 特に就学先決定にかかわるところについては、むしろこのワーキンググループということではなく、その上の委員会の方で、大谷委員も御案内かと思いますが、論点整理をまとめる中で、これまで特別支援学校に通うことができる目安としての学校教育法施行令22条3というのがございますが、そこに該当しますと特別支援学校の方に就学するという今の仕組み。これはその後の通知等で、そういうことではなくて、論点整理に示されたような総合的に判断をするようにという方向で進めていただいていますが、仕組み上は、特別支援学校に行っていただくという仕組みを改めて、本人・保護者の御意見、専門家の御意見、そういったことを踏まえて総合的に判断していくのだというふうになってございます。
 また、さきの通常国会で御議論をいただき、成立いたしました改正障害者基本法では、「可能な限り障害のある子とない子が共に教育を受けられるよう配慮しつつ」という条項が加わってございます。また、第2項においては、情報の提供、本人・保護者の意見を可能な限り尊重ということが入ってまいりましたので、文部科学省の方としては、そういったことを踏まえてその仕組みを改めるということを今、検討している状況にございます。

○横井企画官 1点目について、今、課長から説明がありましたけれども、私からも事務局としての説明になりますが、ヒアリングを第2回、第3回で行いましたが、その中では、特別支援学校で教育を受けられた方以外にも、小学校、中学校で教育を受けられた経験のある方からもヒアリングを行いました。
 また、先ほど課長からも紹介がありましたが、16ページ以降の例示につきましても、特別支援学校でしかできないような配慮を書くのではなく、通常の学級でもできるものを意識して各委員にそれぞれ障害種別のものについて作業をいただきました。そのような形でまとめさせていただいたところでございます。
 以上です。

○棟居部会長 ありがとうございました。
 千原課長。

○千原課長 今、横井の方は、既に大谷委員の2番目の御質問に入ったかと思いますけれども、ワーキンググループでの御議論でも、本来、合理的配慮というのは通常の学級で行われることを想定するのではないかという御意見がありました。また、一方で、いやいや、特別支援学級あるいは特別支援学校でも合理的配慮というのは必要であろうというような御意見もございました。今、横井が申し上げましたように、ヒアリングでは通常の学級に通っていらっしゃる方からもヒアリングをいたしましたし、また、先ほど申し上げた前者の御意見の方もいらっしゃいまして、通常の学級での合理的配慮ということにも十分配慮をして御議論いただいて、例えば後ろにある別表の例示というところには入ってきてございます。
 ただ、合理的配慮の観点ということでは、通常の学級も通級による指導も特別支援学級も特別支援学校も共通をするといいますか、ちゃんと合理的配慮を提供するに当たっては、そういった観点を頭に置きながら、チェックリスト的なといいましょうか、そういうことで合理的配慮を提供していくのだというような御議論があったというふうに理解してございます。
 3番目のニーズ把握に基づいて、特別支援教育というのは、一人一人の障害の状態、あるいは教育的ニーズ等を踏まえて、自立、社会参加を目指すために本人の能力を最大限に伸ばしていくということでございますけれども、ニーズ把握という観点では、請求がなければしないのかという御質問かと思いますが、そこは、事務局としてはそういうことではなくて、本人あるいは保護者の方から何かこういう配慮をしてくださいというような請求がないと動かないということではなくて、当然学校の設置者あるいは学校が御本人のニーズを見た上で、適切に、自発的にそういった合理的配慮を提供していくべきであると。私どもは、この報告書、まとめていただく御議論を踏まえるとそういうふうに考えてございます。
 したがいまして、意に反してという御指摘もございましたが、そこのところは、先ほど合理的配慮の決定のところに記述がございますけれども、4ページ(2)○1でございます。特に個別の教育支援計画を作成する中で、合理的配慮の観点を踏まえて、合理的配慮について、可能な限り合意形成を図った上で決定していくということでございますので、そういうような方向でやっていかないといけない。
 繰り返しになりますが、その下の○2の5ページの方で、もし合理的配慮の提供に当たって御意見が一致しない場合は、第三者機関でその解決を図ると。この第三者機関については、まだ議論がされている状況で、今、この場で具体的にどういうものだというのをお示しする状況にはございませんけれども、おっしゃるように、皆様が理解、合意を図っていくように努めるということだろうというふうに思ってございます。
 4番目、合理的配慮あるいは基礎的環境整備、こちらの提供ということについての設置者は、先ほど太田委員から御指摘がありましたけれども、より公教育あるいは義務教育というものは提供義務があるのではないかという御趣旨かというふうに思っております。基本的には、国としては、この報告書(案)に基づけば、合理的配慮を提供するための基礎となるものが基礎的環境整備である。それをしっかり充実させていくということが国として合理的配慮をしっかりさせていくための大事なポイントだろうというふうに考えてございます。
 以上でございます。

○棟居部会長 ありがとうございました。
 山崎委員、お願いします。

○山崎委員 山崎です。ありがとうございます。
 まず、私のお尋ねとも関わるのですが、冒頭の太田委員の御指摘の中で、一部お答えになってらっしゃらないのがあると思いますので、再度指摘させていただきます。
 太田委員がいろいろおっしゃっていた中で私が感じるところの1つのポイントは、全体としてこのワーキンググループ報告を眺めた場合に、福祉的ニュアンスが強いというようなことをおっしゃっていたと認識しております。実は私も、そういう言い方はしませんが、同じような印象を持っております。同じことは実は大谷委員もニーズ把握とかということを、要するに個別対応が勝っているのではないかという御指摘をされています。
 私の言葉を使えば、2ページ目の合理的配慮の定義等についての(1)の○1の数行目にある「個人に必要とされる」というキーワードです。こういうものを見ますと、どうやら、医学モデル的な発想とは申しませんが、どちらかというと、現場としたら個々の児童・生徒さんの具体的なニーズ、要望に対応することが強調されていると思います。これは当然のことだと思うのですが、これをおっしゃるのであれば、あと幾つかのポイント、例えば改正障害者基本法4条2項の「社会的障壁の除去」というキーワードにも言及すべだと思います。先ほどの御説明の中にもこのキーワードは表れてこないのですね。その割には「可能な限り」という言葉は何回か拝聴したような記憶があります。
 そういう意味で、せっかく改正された日本の現行法の中に「社会的障壁の除去」ということが繰り返し出てきておりますので、こうした文章をおまとめになるという際には、社会モデル的な認識をされていることも表現された方が良いと思います。つまり副題のタイトルで言えば「観点」という言葉ですが、高い広い観点に立っておまとめになっているということであれば、現行の日本法、ごく最近に直に関わる改正障害者基本法の中のかなり重要なキーワードも網羅していただいた方が適切ではないかという気がしておりますので、これを策定された委員会にそのような旨をお伝えいただければ幸いでございます。
 以上です。

○棟居部会長 ありがとうございました。
 コメントされますか。では、千原課長、お願いします。

○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
 山崎委員、ありがとうございました。
 今の社会的障壁という観点、社会モデルという観点について触れるべきではないかということで、今の御指摘、御意見と受け止めましたので、そのことは、ワーキンググループ自体は先ほど申し上げましたように議論は終了しておりますので、今後、この報告が最終版になったときに特別委員会の方に報告するものでございますから、その際に、そういう御指摘をいただいたということを事務局の方から特別委員会の方に御紹介させていただくということで御理解いただければありがたいと思います。
 1点、先ほど省略させていただいた部分でございますが、お手元の資料2-2の11ページの○2の3行目からの「また、障害の状態等に応じた『合理的配慮』を決定する上で、ICF(国際生活機能分類)を活用することが考えられる」ということで、これは御案内のようにICFということで、これは参考資料6でも付けてございますが、37ページからございますけれども、特別支援学校の学習指導要領解説自立活動編にこういうICF、いわゆる医学モデルと社会モデルというような両方があるということを踏まえて対応しなければならないということと私は理解しておりますが、そういったことを踏まえて、先ほどの11ページでございますけれども、活用して対応するということは委員の念頭にあったとは考えてございます。
 以上です。

○棟居部会長 ありがとうございました。
 先ほどお手が挙がっていました伊藤委員、お願いします。

○伊藤委員 では、3点ほど質問したいのですが、「基礎的環境整備」という言葉がまだ十分理解できていないものですから、もう少し詳しく教えていただきたいのですが、「合理的配慮」の基礎となる環境整備という説明が3ページのところにありまして、特に2-2の6ページの(5)の○1のところの理解の仕方なのですけれども、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校の設置は「基礎的環境整備」として行われているものであるということからすると、通学先として特別支援学校等があるということだけをもってして合理的配慮をしているということにはならないということでよろしいですね。
 また、「合理的配慮」は、特別支援学級等、ここで例示している通級等による指導とかの中においても、個別に必要だということで、設置者への義務については余り書いてないのですけれども、こういうことを行うことが求められるということになるという理解なのでしょうかというのが1つです。
 あと、4ページの2.の(2)の○1の辺りは、合理的配慮を行うことについて、「望ましい」「望ましい」ということが繰り返し書いてあるのですけれども、そういった対応で合理的配慮義務と言われていることが達成できるというように考えられているのか。そちらでの検討ではどのようにされているのかということを教えていただければと思います。
 最後、行ったり来たりで申し訳ないのですが、5ページ一番下の私立学校のことなのですけれども、よく私立学校については建学の精神と公平性といったような観点とのバランス、どちらが優先されるべきかといったことがよく問題になると思うのですけれども、この障害児の考え方については、建学の精神との関係について議論があったのか、なかったのか。そこは完全に乗り越えてインクルーシブ教育がすべての学校について、初等中等教育においては行うのだということがきちんと共有されているのかどうかということを確認させていただきたいのです。

○棟居部会長 では、お願いします。

○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
 伊藤委員、ありがとうございます。
 まず1点目の6ページの(5)○1のところに関連いたしましてですが、特別支援学級あるいは特別支援学校に行くことをもって、それが合理的配慮だということではないと解釈してございます。また、通常の学級、通級、特別支援学級、特別支援学校、それぞれにおいて合理的配慮が必要だと私ども理解しております。
 2点目は、4ページの(2)の○1のところで「望ましい」「望ましい」という記述で、これで合理的配慮が担保できるのかというような御指摘かと思います。合理的配慮について先ほども御指摘がございましたが、その前の3ページの○2の最後のところでありますように、条約を踏まえて定義をする中で、合理的配慮の否定というのは障害を理由とする差別に含まれるということについて、ワーキンググループの委員は念頭にしっかり認識した上で御議論をしておりまして、ここの(2)の○1、私、先ほど申しましたように、代表する立場にはございませんが、私の解釈は、ここは決定方法で合理的配慮を決定する際に個別に教育支援計画を作成する中で、ここの合理的配慮について決定していく、明記する、そういったところに望ましいというところがかかっていくのかなとは感じてございます。合理的配慮が否定されることはあってはならないということはそのとおりだと思っております。
 5ページの私立学校についてでございますが、私の記憶が間違っておりましたら、横井にも発言してもらいますが、建学の精神ということについて踏まえてどうするかという御議論は、ワーキンググループの方ではなかったように記憶してございます。
 ただ、当然、インクルーシブ教育システムということについては、私立、公立、国立、そういうことを問わず、改正障害者基本法で16条第1項にそういうワーディングが入りまして、そこには特に何か私立だから除外とかそういうことはないというふうに理解しておりますので、初等中等教育においては、そういうインクルーシブ教育システムというものがちゃんと構築されていかなければならないと認識してございます。
 以上です。

○棟居部会長 ありがとうございました。
 時間があと15分少々しかございませんので、それぞれの御質問、できればコンパクトにお願いします。
 松井委員、お願いします。

○松井委員 ありがとうございます。私は既に資料を提出しておりますので、具体的な内容はこれを読んでいただきたいのですけれども、限られているので2~3だけ絞って質問させていただきます。
 1つは、合理的配慮という場合に、しないことは差別であるということですけれども、できない場合に優先順位をつけるという考え方は基本的にはないのではないかと思うのです。勿論、学校設置主体に対する財政支援をきちんと国としてやる必要があると思いますけれども、少なくともそういう考え方の問題。
 合理的配慮に関して、学校設置者と本人、保護者の間に意見の一致がない場合に、第三者機関によって解決を図ることが望ましいということになっておりますけれども、この第三者機関というのは具体的に何をイメージされているのか、あるいはどういうものを設置することと考えられているのかです。
 もう一つ、最後は、今回、特別支援学校を中心というような感じはするのですけれども、少なくともこの合理的配慮というのは、全教育というか、生涯にわたって関わってくることなので、特定の期間だけの問題ではなくて、それ以外についてどう考えるのかということも併せて検討する必要があるのではないかと思います。
 特にインクルーシブ教育ということで言えば、制度全体に関わってくることではないのか。その意味では、この中でインクルーシブ教育というのは、ともに育つ理念を共有する教育というような、この理念を共有という限定にされておりますけれども、インクルーシブ教育というのは、まさにともに育つ教育そのものを言っているわけで、必ずしも理念ではないのではないかということを指摘させていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

○棟居部会長 どうもありがとうございました。
 千原課長、お願いできますでしょうか。

○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
 松井委員、ありがとうございました。
 御指摘の中には、御意見といいましょうか、そういうこともございましたので、御意見の部分は先ほど山崎委員の話と同様、特別委員会の方に報告をさせていただくということで御理解いただければと思います。
 御質問に関するところで、第三者機関についてどういうイメージ、何を設置するのかという御指摘をいただきました。これについては、先ほど大谷委員の御質問の中でお答えしたかちょっと失念しましたが、どういうものになるか具体的な検討は正直なところはこれからでございます。ただ、議論の過程で、本ワーキングあるいはこの第三者機関ということについては、特別委員会の論点整理で、就学先決定について意見が一致しない場合にもやはり第三者機関ということが出ていまして、その双方でいろいろなやり方があるのではないかという議論がございました。
 事務局の方からも、今、内閣府等で御議論をいただいております行政不服審査制度でこういう議論がございますというような紹介をいたしましたり、あるいは海外の例で仲介者が入って、何かもつれてしまった場合にうまく調整をする仕組みというのがありますという御紹介などもさせていただきましたが、そういったことを踏まえて、こういう第三者機関というのはどういうものがあるのかというのを議論したいと思ってございます。検討したいと思います。
 ただ、どちらのワーキンググループか特別委員会かちょっと記憶が定かでないのですが、その御議論の中では、裁判とかそういったところに至ってしまう手前のところといいましょうか、そういうところで解決できるものというような御指摘もあったことを御紹介させていただきます。
 今回、この特別委員会は、先ほど御説明を端折ってしまいましたが、特別委員会自体は中教審の初等中等教育分科会に属してございまして、ある意味、守備範囲は初等中等教育ということでございますが、ただ、生涯にわたってインクルーシブ教育システムということはしっかりやっていかなければいけないという委員の御指摘はそのとおりかと私も思ってございます。
 その観点では、このワーキンググループの議論の中でも、卒業後のことですとか早期ということで、やや初等中等教育のエリアを超える部分についてもそのような御意見があったと思ってございます。
 簡単ですが、以上でございます。

○棟居部会長 ありがとうございました。
 それでは、お待たせしました。西村委員、先ほど来から手を挙げておられますのでお願いします。

○西村委員 西村です。ありがとうございます。
 私も委員提出資料ということで21ページに載せさせていただいております。多くの委員の方たちからの意見もありましたけれども、ここに書いていますとおり、この報告書を見る中で、やはり社会モデルとしての視点が非常に弱いのではないか。あるいは合理的配慮の必要性が大事だと言いながら非常にあいまいではないかという印象を受けています。
 やはり障害者権利条約と基本法にうたわれていることを考えたときに、こうした部分をもっときちんと真正面からとらえる必要があると思います。今までいろいろ御意見をいただいているので、特にお答えは結構です。
 ただ、最後に私の方で書かせていただいています、障害の有無によって分けないことを原則とするべきではないかと。つまり、障害者権利条約では、あらゆる区別を否定している。基本法では分け隔てられないことを強調している、であれば、必ずしも特別支援教育だとか特別支援学級を否定するわけではないですけれども、通常学級の中で必要な配慮などを受けられる、障害の有無によって分けられない、それがこの報告書でも出てきているインクルーシブ教育システムの原則とすべきと思っていますが、どうもこの報告書の中を見ると、そうではないように受け止められます。そこら辺につきましての考え方等々があれば教えていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○棟居部会長 ありがとうございました。
 では、その最後の点、お答えになりますでしょうか。千原課長、お願いします。

○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
 西村委員、ありがとうございました。
 1点目、お答えが要らないということでございました。先ほど来、申し上げさせていただいておりますように、こうしたいただいた御意見は特別委員会の方に報告をさせていただきたいと思っております。
 障害の有無によって分けないことを原則とすることということについて、この報告書はそうではない感じがあるのではないかということで、これもどちらかというと御指摘に近いのかなと思いながらお聞きしてございました。
 先ほど大谷委員からの御質問、御指摘の中でも申し上げさせていただいたことにまた重複しますが、就学先の決定の在り方というところに結局はたどりつくのかなと思ってございます。論点整理の中ではこれまでの仕組みを改めて、保護者の御意見、専門家の御意見、また本人のニーズ、その他を踏まえて総合的に判断するようにすべきであるという御指摘をいただきましたので、また、今お話がございましたように、改正障害者基本法が成立してございますので、そういったものを踏まえて文部科学省としても対応していきたいと思ってございます。ありがとうございます。

○棟居部会長 済みません、時間がないのですが、1点だけ関連で確認させていただきたいのですが、このインクルーシブ教育とか特別支援学校あるいは学級ということを考える場合に、障害者の子どもと健常者の子どもを混ぜることで、健常者の子どもが将来例えば企業で働くときに合理的配慮がどういうものなのかとわかりやすくなる、やりやすくなるという健常者の側のプラス面というのは御配慮に入っておるのでしょうか。

○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
 その観点につきましては、ワーキンググループの報告書案でいきますと、別表の方を見ていただいた方がわかりやすいかと思いますが、22ページ、(2)の2、申し訳ございません。これはちょっと外れるかもしれませんが、言い出してしまったので少し申し上げさせていただきますと、これは22ページの(2)の2、これは第8回のときにも御議論はありまして、少し多分主査はお変えになられるかなとは思いますが、要は障害のあるお子様がいらっしゃって、その周りのお子さん、先生、保護者、地域の方々が障害のあるお子様に対してどう合理的配慮をするときにしなければいけないかというような合理的配慮の観点を記したところが、(2)の2ということになってございます。
 今、ちょっと横井からアドバイスをいただきましたが、その2行目のところでございますけれども、障害のない幼児児童生徒が考え実践する機会や障害のある幼児児童生徒が障害について周囲の人に理解を広げる方法等を考え実践する機会を設定すると、そういったところに部会長御指摘の観点が少し含まれますのと、あと特別委員会の論点整理の方では、そういう障害のないお子さんが障害のあるお子さんと共に学ぶことによって、将来の共生社会とか社会的な自立とか、そういったことを学ぶ機会になると論じているところがございまして、お手元に資料を配っていなくて恐縮ですが、簡単に読ませていただくと、障害のある子どもと障害のない子どもが共に学ぶことは、共生社会の形成に向けて望ましいと考えられる。同じ社会に生きる人間として、お互いを正しく理解し、共に助け合い、支え合って生きていくことの大切さを学ぶなど、個人の価値を尊重する態度や自他の敬愛と協力を重んずる態度を養うことが期待できる、というような御指摘がございます。ありがとうございます。

○棟居部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、時間を押しておりまして、この後の5分少々の時間を、ちょっと段取りを申し上げるのも不規則かもわかりませんが、まず伊東副部会長に御質問あるいは御指摘を1つ伺う。その後、川島委員に手短にお願いします。済みません。それから、東室長から少し補充的な御質問。そういう順番で進めさせていただきたいと思います。
 では、伊東副部会長、お願いします。

○伊東副部会長 伊東でございます。千原課長さんは初等中等教育特別支援教育課であり、ただいまのお話も特別支援教育に関する内容でした。本日は文部科学省ヒアリングということですのでうかがいたいのですが、文部科学省において、心身に障害のある子どもたちの大学教育について、どのような課題や対応をしておられるのか、差別禁止法あるいは国連の権利条約がらみで何か検討されておられるのかどうか、あるいはしていないのか、その辺のところを是非お聞かせいただきたい。大学、大学院といった高等教育は障害のある人たちの大きな問題、課題であります。自分の選択、志望があってもなかなか受けられないという現状があります。文部科学省の取組みがどうなっているかについて御回答いただければありがたいです。

○棟居部会長 ありがとうございました。よろしくお願いします。

○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
 副部会長様、ありがとうございました。
 今、ちょっと横井とも話をしたのですが、帰りまして確認をさせていただけますでしょうか。恐縮ながら、大学での障害者の関係は、高等教育局が担当でございまして、私自身、初等中等教育局なものですから、どのようなことをされているか、今、にわかに申し訳ございませんが、お答えができません。お許しください。

○棟居部会長 では、川島委員、お願いします。

○川島委員 ありがとうございます。簡潔に質問させていただきます。
 まず3ページのところで、ワーキンググループにおける合理的配慮の定義というのがありますが、これは○2のところですけれども、ほぼ障害者権利条約に沿ったもので、合理的配慮の概念というのは個別的に行われる、当事者の要求に応じてある意味事後的に、当事者の要求があって初めて相手側がそれに応じた配慮をしていくという個別的、事後的な性格を記していると思うのですけれども、ここから質問なのですが、基礎的環境整備と合理的配慮との関係が、すごく重要になってくると思うのですけれども、3ページの(2)の○1のところで、合理的配慮の基礎となる環境整備が基礎的環境整備ということで、つまり、合理的配慮の実効性を確保するために、あらかじめさまざまな障害種別を考慮に入れてインフラ整備をするというか、環境を整えるというのが基礎的環境整備だという理解でよろしいのかというところです。
 そうすると、次に問題になってくるのが、同じ3ページの○3のところで、合理的配慮を提供するに当たっての観点というところが出てきまして、○1○2○3とありますね。この○1○2○3の内容が11~13ページ以降に出ているのですけれども、これを読みますと、合理的配慮それ自体の内容を整理したのか、基礎的環境整備を整理した内容なのかが、私が読んだ限りではわからなかったのです。合理的配慮を提供するに当たっての観点という意味がよくわからなかったのと、○1○2○3という整理の仕方がどういう観点から、つまり分類というのは何らかの目的があって行うと思うのですけれども、どういう観点からこの3つに整理したのかが、実はこれも読んだ限りでわからなかったので、時間がないところで申し訳ございませんが、御教示いただければ幸いです。

○棟居部会長 ありがとうございました。
 では、お願いします。

○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
 川島委員、ありがとうございます。
 場合により、横井から少し解説をさせていただく可能性もお許しください。
 まず1点目でございます。質問なのですがと言われたちょっと手前のところからなのでございますが、合理的配慮については、本ワーキンググループにおいては、個別にという点はおっしゃるとおりの議論だったと思っております。
 ただ、要求があって事後的にというところは、このワーキンググループでは、先ほど大谷委員の御質問でもお答えを申し上げたつもりなのですが、2ページの○6の真ん中辺りでございますけれども、学校教育においてこれまでも行われてきた配慮、ということで、合理的配慮も含まれるわけですが、学校現場の場合には、先ほど申しましたように、保護者本人の方から請求というか要求がなくてもやはりニーズを踏まえてしっかりやっていくということが大事だと思っておりまして、そこのところはコメントをさせていただきます。
 基礎的環境整備と合理的配慮の関係ということで、そういう意味では基礎的環境整備はこれの3.にるる(1)~(8)まで書いてあるわけですが、例えば通常の学級においても、特別支援学校においても、そういう意味ではあらかじめといいますか、教育をするために必要な環境整備というのは既になされている。それぞれの状況においてまちまちになる部分はありますが、ある意味、土台となるところというか、そういうのはあらかじめ整備がされているものであるという理解をしております。
 ただ、この御議論の中では、当然それについて現状があるけれども、課題もあるよというところで、そういったところは国あるいは都道府県がしっかりさらなる整備を図っていかなければいけないという御指摘だと思います。
 合理的配慮の内容なのか、基礎的環境整備の内容なのか、ちょっとわかりづらいという御指摘、また3つの観点はなぜこうなったかということですが、これはワーキンググループで御議論をしていただくに当たってヒアリングとかをしたわけですが、その際にこういう観点で、例えば教育内容、方法あるいは支援体制、施設整備、学校のいろいろな環境整備といった全般を見ると、この3つでまとめていくというのがわかりやすいのかなという形で、たしか事務局の方から御提示をして、この3点でヒアリングあるいはこういうまとめをさせていただいていいでしょうかということで御議論いただいた結果、そういうことでということで、この3つの観点はさせていただきました。
 あと合理的配慮の内容なのか、基礎的環境整備の内容なのかちょっとわかりにくいというところは、御指摘として受け止めさせていただきます。

○棟居部会長 千原課長、どうもありがとうございました。
 それでは、最後に、東室長の方からお願いします。

○東室長 担当室の東です。若干質問をさせていただきたいのですが、時間もありませんので、一問一答的な形で端的にお答えいただければと思っております。
 まず、合理的配慮の定義に関する問題として、合理的配慮は学校が「必要かつ適当な変更・調整を行う」ことであるとは書いてありますが、提供義務者がだれかということは、必ずしもこの定義からは出てこないのですけれども、議論の前提としては、当然、学校の設置者及び学校が提供の義務を負うという前提での議論だったかどうか、お願いします。

○千原課長 そのとおりと理解しております。

○東室長 では、その提供義務の中身なのですが、それは行政法上の義務として考えられているのか、それとも端的に障害者本人もしくは保護者も入るかもしれませんけれども、障害者本人の権利に対応する障害者本人に対する義務としてお考えなのでしょうかという点についてはどうでしょうか。

○棟居部会長 この点をお願いします。

○東室長 その議論がなければ、議論していただければと思っております。

○千原課長 千原でございます。
 ワーキンググループの方では、今、東室長がおっしゃったような具体的な議論はございませんでした。

○東室長 この点は非常に大事な点です。それが差別禁止と言えるのか、言えないかといった違いをもたらすところなのです。行政政策として行政が学校及び設置者に義務づける、単にそれだけでは差別禁止と言えないのです。差別禁止は本人の権利ですから、あくまで本人に対する義務という形で議論されなければならないといったところについて御議論いただければと思います。
 次に、どういう義務かは御議論していただくとして、義務があるということであれば、合理的配慮は提供に努めるといったものではなくて、提供しなければならないという表現が適切だと思うのですが、資料2-2の3ページの上の○3の中で、「合理的配慮の提供に努める必要がある」というような形で結論付けられておられるのです。これは義務があるという前提であれば、この部分の文章はいかがかといった疑問が出てくるのですね。その疑問についてはどんなふうにお答えられますか。お願いします。

○千原課長 ありがとうございます。千原でございます。
 今、東室長からの御意見ということで承らせていただければと思います。

○東室長 では、次に、定義の中で「学校」とありますけれども、これは学校教育法上の「学校」、すなわち、「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校」という定義があるわけですけれども、それを指しているのかどうかという点です。

○千原課長 学校といった場合にはそういう定義になろうかと思いますが、今回、このワーキンググループが設置されたところが初等中等教育分科会ということもありまして、その守備範囲を念頭に議論していただいております。

○東室長 ということは、小学校、中学校、特別支援学校というのが念頭にあるということですか。

○千原課長 あと高校、幼稚園が含まれる。

○東室長 わかりました。
 次に合理的配慮に関する国の責任についてはいろいろ出ましたけれども、障害者権利条約の5条3項には、「締約国は、平等を促進し、及び差別を撤廃することを目的として、合理的配慮が提供されることを確保するためのすべての適当な措置を取る。」と書いてあります。この適当な措置の中には、財政的な支援というのが勿論入るわけですけれども、基礎的な環境については国の責務といったことが触れてあるのですが、合理的配慮の確保自体についての国の責務といった部分については、議論はなかったのでしょうか。

○千原課長 本ワーキンググループの議論、今の報告書案の方向としては、合理的配慮の提供は先ほど室長がおっしゃられたように、設置者及び学校ということで、その合理的配慮の基となる基礎的環境整備は国または都道府県、あと市町村という議論だったということでございます。

○東室長 ただ、権利条約上の国の責務といったものについて、御議論がなければ御議論していただければと思います。
 次に、「合理的配慮の決定方法等について」という部分についてなのですが、合理的配慮の「決定に当たっての基本的考え方」ということで、条約の24条1項を引用して議論されております。けれども、合理的配慮というのはあくまでも差別禁止という部分に本籍を持つ考え方なのです。差別禁止というのは憲法でもそうですけれども、一番基本的な古典的な価値というのは、機会の均等なのです。合理的配慮というのは機会の均等をどう実質化していくかという観点からつくられてきた概念であるわけですから、その合理的配慮を決定するに当たっては、機会の均等ということが一番最初に考えるべき事項ではなかろうかと思うのです。その点がほとんど触れられていないという点について疑義を持っているわけですが、そういった点に御議論がなければ御議論していただきたいと思います。よろしゅうございますか。

○千原課長 よろしいですか。室長から御指摘いただいた御意見ということについては、特別委員会の方にお諮りというか、御報告をさせていただくということでございます。

○東室長 もう少しあるので済みませんが、合理的配慮と基礎的環境整備の関係ですけれども、「『合理的配慮』の充実を図る上で、『基礎的環境整備』の充実は欠かせない。」という前提の下に、6ページの上の方に「通級による指導、特別支援学級、特別支援学校の設置は、多様な学びの場の確保のため『基礎的環境整備』として行われているものである」と書いてあります。普通、差別禁止の事例などで、例えばアメリカなどで見ますと、地下鉄が使えないという場合に、障害者も同じように機会均等に地下鉄を使えるようにするかというのが合理的配慮として議論されているわけですね。しかし、なかなか物理的に難しいところは、代替バスなどを走らせることによって、結果的には何とか行けるという状況をつくっているわけですけれども、その代替手段を合理的配慮としては位置づけられていないのです。あくまでも地下鉄を同じようにどうやったら使えるのか、これが合理的配慮の本体的な議論だと思います。
 ですから、合理的配慮を確保するための基礎的環境として、今述べたようなことが入ると合理的配慮は一体何なのかと非常に不明確になってしまうといったようなことが、差別禁止という観点からは出てくるのですが、そのような視点についての御議論はあるのでしょうか。

○千原課長 今回、ワーキンググループでは先ほど申し上げた2点、合理的配慮、その他の環境整備ということについて、委員会の方から指示を受けて議論があって、こういう議論の形にまとめていただいたというところでございます。
 今、室長の御質問に正面でどう答えたらいいのかわからないのですが、差別ということというよりは、合理的配慮がしっかりと学校現場で提供されて、教育が十分受けられるようにというような観点でこの報告書をまとめていただいておると思っておりまして、差別ということについては、まさにこの差別禁止部会で御議論されているのかなとは思ってございます。

○東室長 済みません、あと1点だけです。「学校における合理的配慮の観点」という標題の中の「支援体制」の部分、これは合理的配慮の例示として書かれている部分ですが、合理的配慮というのはやはり障害者本人に対してどう支援するかといったことがメインの問題になるわけですけれども、「指導体制」とか「地域の理解」といったものは、最終的には本人にいい影響があるかもしれませんけれども、そういうような一般的な啓発活動とか、指導体制の確立といったものまでも合理的配慮に含めると、合理的配慮の概念が非常にあいまいとなってしまう危険性がある。それは逆に言えば、権利性が弱まるといった危惧があるわけですけれども、この部分を合理的配慮という形で言えるのか、基礎的環境の方に入れるのかといった御議論はなかったのでしょうか。

○千原課長 今の点につきましては、ワーキンググループの方では、今、室長の御指摘はそのような御指摘と受け止めさせていただきましたけれども、議論の結果、当然、基礎的環境整備とは何か、合理的配慮というのは何かというのを議論した結果、ワーキンググループとしてはそういった今指摘のあったことも踏まえて、合理的配慮の観点というところに落ち着けるということだと理解しています。

○棟居部会長 では、企画官、どうぞ。

○横井企画官 済みません、お時間ないところ。今、東室長から御指摘いただいた点は、全般的なことは合理的配慮ではないということで、ワーキンググループでも話し合われており、例示のところで、その子に対して何らかの配慮をする、という観点から少し書き直した方が良いのではないかといった指摘も第8回のワーキングではありましたことを報告いたします。

○棟居部会長 ありがとうございました。
 それでは、少々時間を超えてしまいましたが、太田委員、一言お願いします。

○太田委員 今日はとても有意義な時間でしたが、合理的配慮という概念について、まだ共有しなければならないと思っています。是非、差別禁止部会と文科省と厚生労働省の間で差別禁止の中核をなす合理的配慮という概念の統一をする方向で議論をお願いしたいと思います。

○棟居部会長 ありがとうございました。
 それでは、以上で第2のコーナーを終わらせていただきます。
 ヒアリングに御協力いただきました千原課長、お忙しい中、どうもありがとうございました。
 それでは、ここで15分間の休憩を取らせていただきます。15分休憩しますと、再開は35分ということになりますが、15分より少し早めにお集まりいただければありがたく存じます。

 

(以上)

 

委員提出資料(PDF:442KB)(※内閣府ホームページへリンク)
※本会議配付資料は、大谷委員提出資料(P1~19)、西村委員提出資料(P21)、松井委員提出資料(P23~25)のみ。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

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(初等中等教育局特別支援教育課)