特別支援教育委員会
1 学狡の状況について 73
2 発達障害のある児童の指導で困っていること 74
3 通常の学級に在籍する発達障害のある児童への教育的支援 75
4 通常の学級に在籍する発達障害のある児童への教育を推進する上での困難点 78
5 就学相談について 80
6 障害のある児童と障害のない児童との交流及び共同学習の実施状況について 81
特別支援教育が実施され4年目を迎え,通常の学級に在籍するLD,ADHD,高機能自閉症等の児童を含めた障害のある児童への教育的支援体制を学校全体として構築し,個に応じた教育を一層推進することが求められている。
本委員会は,これまでの経年調査において各学校の実情を把握し,小学校における支援体制を整備するに当たっての様々な課題を明らかにすることによって,全国各地の取組の参考に供してきた。
今年度も,発達障害のある児童に対する指導体制,指導内容,継続した就学相談,交流及び共同学習の実態及び実施状況の調査を実施した。
今年度は,以下の項目を調査した。
○1 通常の学級に在籍する発達障害のある児童及び発達障害の疑いのある児童の人数,○2 個別の教育支援計画の策定状況,○3 発達障害のある児童に対する学級担任が実施している個別的な配慮の内容別対応人数と週に費やした時間の合計,一人当たりの週平均時間,○4 取り出し指導を行う指導者の人数と週の指導時数,○5 発達障害のある児童に対する教育を推進する上での困難点,○6 継続的な就学相談が必要な児童の人数,○7 障害のある児童と障害のない児童との交流及び共同学習の実施状況等
本調査の実施に当たり,各都道府県小学校長会並びに同事務局の皆様,調査協力校の校長の皆様に大変なご尽力とご協力をいただいた。ここに調査結果をご報告し,関係各位に心よりお礼申し上げる次第である。
小学校における特別支援教育を推進するため全連小としての意見や提言をまとめ,各都道府県・各地域における取組を進めるための資料として参考に供する。
(1)通常の学級に在籍する発達障害のある児童の人数,個別の教育支援計画の策定状況等
(2)通常の学級に在籍する発達障害のある児童に対する具体的な支援内容等
(3)継続的な就学相談の状況
(4)交流及び共同学習の実施状況等
各都道府県で2年以上同一校に勤務している校長の在籍校で調査対象校を選定し,各都道府県小学校数の4%の学校(特別支援学級,通級指導教室設置校を含む)849校に依頼した。
回答校 845校 回答率 99.5%(小数第2位以下は四捨五入)
平成22年7月7日から8月25日 質問紙による回答
表1 通常の学級に在籍する発達障害のある児童の学校規模及び特別支援学級設置の有無による比率
学級数 |
校数 |
在籍人数 |
発達障害人数 |
在籍比率 |
特支援有 |
在籍比率 |
特支援無 |
在籍比率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6学級以下 |
242校 |
23,341名 |
923名 |
4.0% |
552名 |
2.4% |
371名 |
1.6% |
12学級以下 |
258校 |
67,880名 |
2,461名 |
3.6% |
1,374名 |
2.0% |
1,087名 |
1.6% |
18学級以下 |
196校 |
88,594名 |
4,634名 |
5.2% |
1,482名 |
1.7% |
3,152名 |
3.6% |
24学級以下 |
111校 |
72,176名 |
2,147名 |
3.0% |
1,028名 |
1.4% |
1,119名 |
1.6% |
25学級以上 |
37校 |
32,977名 |
1,028名 |
3.1% |
354名 |
1.1% |
674名 |
2.0% |
未記入 |
1校 |
|
9名 |
|
|
|
9名 |
|
合計 |
845校 |
284,968名 |
11,202名 |
3.9% |
4,790名 |
1.7% |
6,412名 |
2.3% |
調査対象校849校中845校からの回答があり,そのうち,760校(89.9%)に11,202名の発達障害のある児童が在籍している。調査対象校全児童数284,968名に対する割合は3.9%であり,昨年度と比較すると人数で2,338名,在籍比率で0.9ポイント増加している。学校規模による在籍比率の違いには大きな変化はないものの,発達障害のある児童の在籍比率別校数には若干の増減が見られる。昨年度と比較すると,3%以上の在籍校の数が多い傾向となっている。全体として,発達障害の疑いのある児童も含めた調査であることを勘案しても増加傾向にあるといえる。
特別支援学級を設置している学校と未設置の学校との違いを見ると,昨年度は,設置校の在籍比率が学校規模に関係なく高かったが,今年度の調査結果からはそのような顕著な差を見取ることができなかった。
調査対象校の在籍比率別校数の割合(%)
|
未記入 |
0% |
0.1~0.9 |
1~1.9 |
2~2.9 |
3~3.9 |
4~4.9 |
5~5.9 |
6~6.9 |
7~7.9 |
8~8.9 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
H22年度 |
7.1 |
3.0 |
10.2 |
20.9 |
16.1 |
11.2 |
7.8 |
6.3 |
4.6 |
4.3 |
8.5 |
H21年度 |
1.0 |
7.7 |
13.7 |
23.4 |
16.7 |
10.0 |
7.1 |
4.7 |
5.9 |
2.4 |
7.4 |
H20年度 |
4.2 |
10.4 |
16.3 |
21.8 |
17.0 |
8.8 |
6.6 |
3.8 |
4.1 |
2.2 |
4.8 |
※【グラフ】通常の学級に在籍する発達障害のある児童の在籍比率別校数(略)
紙面の都合で(2)(3)についてはグラフ等の掲載は無いが,医師により「発達障害」と診断された児童は,11,202名中2,726名(24.3%)であった。昨年度と比較すると127名増加するが,比率では5.0ポイント減少している。
乳幼児期から学校卒業まで一貫した支援を行うための教育的支援の目標や内容等を関係機関との連携の上策定する個別の教育支援計画が,発達障害のある児童が在籍している760校中530校(69.7%)で策定され,昨年度より4.8ポイント増加している。しかし,児童数では,11,202名中2,095名(18.7%)の策定に留まり,昨年度より4.0ポイント減少している。
本年度は,調査対象校845校中760校に発達障害がある児童が在籍しており,昨年度と比較すると半数近くの項目で割合が増加している。また,残りの項目もほぼ同程度の割合となっている。特に,「友だちとのトラブルが絶えない」が69.3%で3.8ポイント,「授業に参加できない学習についていけない」が77.2%で3.0ポイント,「その児童の行動が原因となり学級の授業に支障が生じている」が63.3%で1.4ポイントと増え,対応に苦慮している学校の実態がうかがえる。加えて,それらの項目については,平成20年度から学校数,割合ともに年々増加しており,今後も増加の傾向が続くのではないかと考えられる。
3年間の割合の比較
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
H22年度 |
77.2 |
69.3 |
63.6 |
63.3 |
59.3 |
52.9 |
51.3 |
34.3 |
21.8 |
7.5 |
H21年度 |
74.2 |
65.5 |
62.7 |
61.9 |
59.7 |
54.6 |
51.7 |
34.2 |
21.9 |
6.5 |
H20年度 |
72.0 |
57.2 |
60.5 |
55.0 |
58.1 |
51.8 |
47.8 |
35.7 |
20.7 |
7.3 |
※【グラフ】発達障害のある児童に対する指導で困っている内容(略)
校内における教育的支援の対応別件数とその割合を見ると,3年間とも「学級担任の個別的対応」56.9%が最も多く,以下「介助員,指導補助員」16.1%,「取り出し指導の時間を取る」11.1%,「特別支援学級の担当者」4.5%,「別の教員が付き添う」4.3%,「特に手だてを講じられない」2.5%,「その他」4.6%となっている。
※【グラフ】通常の学級に在籍する発達障害のある児童に対しての教育的支援の対応別件数(略)
本調査において,調査対象校845校中,溌達障害のある児童が在籍する760校のうち,有効回答のあった689校中530校(77.0%)で休み時間や放課後などに個別指導,333校(48.3%)で個に応じた教材を作成・指導,252校(36.6%)で個に応じた家庭学習を準備している。その他では,授業中における個別の指導・支援や家庭との連携の緊密化,担任以外がもう一人付いての指導などがある。以下,それらの指導にかかわる人数や時間数等を次頁の表にしてまとめた。各設問の項目毎にグラフの校数の数値と下の表の校数の数値が異なるのは,教員数は記載されているが,費やした時間や平均時間が未記入であったりと有効回答数が異なったため,下表の数値は確実に三つの項目の数値が記載されたものを集計したためである。
※【グラフ】個別的な配慮の内容(略)
※【表】個別的な配慮にかかわる,教員数・費やした時間の合計・一人当たりの週平均時間(略)
上記の調査A表から;331校(43.6%)の学校で,「教材等を個に応じて作成」に1,820人の教員が1週間にのべ3,953時間を費やしている。1校当たり5.5人が対応し,1人当たり2.2時間を費やし,1校当たり1週間に11.9時間を費やしている。
B表から;「休み時間や放課後などに個別指導している」実態として,472校(62.1%)で,2,754人の教員が1週間にのべ4,534時間を費やしている。1校平均5.8人の教員が,1.6時間の指導をし,1校当たり1週間に9.6時間を費やしている。
C表から;「個に応じた家庭学習の準備」については,215校(28.3%)で,1,109人の教員が1週間にのべ1,460時間を費やしている。1校平均5.6人の教員が,1.3時間の準備をし,1校当たり1週間に6.8時間を費やしていることがわかる。
D表から;「その他」では
○授業中における個別の指導や支援・座席の配慮・言葉かけ・視覚的な工夫などの支援
○学級担任とその他の1名での指導
○家庭との連携の緊密化
などに,72校(9.5%)で,369人の教員が1週間にのべ1,854時間を費やしている。1校平均5.1人の教員が,5.0時間の準備や指導等をし,1校当たり1週間に25.8時間を費やしている。
この調査は,発達障害のある児童が在籍し,取り出し指導を実施している347校の各指導者のそれぞれ延べ人数を明らかにしたものである。一番多いのは加配教員であり,次いで特別支援学級担任と続く。一人一人の教育的ニーズに応じた指導の経験を期待されてのことと理解できる。
週の合計指導時間で見ると,一番多いのは指導補助員・介助員等1,209時間である。取り出し指導の内容は調査項目にないため詳細は不明だが,指導補助員や介助員等が多いことから,個別のきめ細かな指導に加え,パニック等への緊急対応も多いのではないかと推測できる。以下,加配教員1,026時間,特別支援学級担任852時間,非常勤講師633時間が上位を占める。
指導補助員・介助員等は7.3時間である。緊急対応の時間も加算されていると推測できる。調査対象校を個別に見てみると,学校によっては,週20時間のケースもあった。また,10時間程度の学校も数校ある。
このような事例は,取り出し指導の範囲を超えるかなり重いケースであり,通常の学級での一斉指導では対応しきれない児童が在籍していることを物語っている。更に,指導者不足から,管理職である校長や教頭も週2時間から3時間近く取り出し指導にかかわっている現状であった。
※【グラフ】指導者の人数(略)
※【グラフ】週の合計指導時間数(略)
※【グラフ】週一人当たりの平均指導時間(略)
本年度の調査でも,昨年度に続き,発達障害のある児童への指導内容や方法がわからない「指導上の困難」319校(42.0%)が学校現場が一番困っていることとしてあげられた。次は,指導できる人材がいない「指導体制の困難」288校(37.9%)だった。この二つが群を抜いていて,その両方をあげる学校も60校(7.9%)あった。
また,「理解啓発の困難」をあげた学校が157校(20.7%)と昨年度の124校(16%)と比べると大きく増加している。
これらを,学校規模別に見てみると,「指導上の困難」や「指導体制の困難」をあげる学校は,学級数に関係なく高い割合を占めている。また,他の項目については学級数が多くなるにつれて,困難とする学校が多くなる傾向があることもわかる。
「指導上の困難」は,3年連続で高い割合を占め,毎年わずかずつではあるが増加している。さらに,「就学指導の問題」も毎年増加している。「パニックや教室からの飛び出し等で安全管理上の困難」は,ある程度整えられてきていると考えられるが,依然として2割近くの学校が,深刻で困難な状況を抱えていることがうかがえる。
特別支援教育では,一人一人のニーズに適切に対応することが求められるため,関係機関との連携や校内研修での事例研究等を通して,個別支援の一層の充実を図っていくことが必要である。学校現場は今後も引き続き,指導ができる人材の育成に努めることが求められる。
困難点 |
指導上の困難 |
指導体制の困難 |
理解啓発の困難 |
施設設備の困難 |
就学指導の問題 |
安全管理上の対応困難 |
---|---|---|---|---|---|---|
学級数 |
||||||
6学級以下 |
33 |
25 |
16 |
4 |
13 |
10 |
12学級以下 |
40 |
41 |
19 |
4 |
18 |
13 |
18学級以下 |
38 |
36 |
19 |
11 |
26 |
22 |
24学級以下 |
41 |
34 |
20 |
7 |
22 |
17 |
25学級以上 |
38 |
38 |
27 |
16 |
41 |
24 |
(%)
※【グラフ】通常の学級に在籍する発達障害または、その疑いのある児童の教育を推進する上で一番困難なこと(略)
項目別に見ると,「指導できる教員の増配置」への要望が576校(75.8%)で一番多い。次は,「指導補助員,介助員,学生支援等の配置」471校(62.0%)である。これらと同様に,人の配置を要望するのが,6位の「コーディネーターの加配配置」213校(28.0%)である。また,回答に,この三つのいずれか一つまたは複数をあげた学校は,701校(92.2%)に及ぶ。昨年度が90.8%であったので,年々多くの学校で,発達障害のある児童への対応に,教員や支援員等の増配置やコーディネーターの加配を強く望んでいることが明らかになった。また,人の配置を望む傾向は,学校規模に関係なく,あらゆる学校で強く希望していることが右表からわかる。加えて,一人一人へのきめ細かな対応を図る「1学級の人致を減らすこと」が昨年度272校(35.1%)から333校(43.8%)と8.7ポイントの増があることは見逃せない。また,個別の支援を行う専門機関との連携を図る「通級できる学級の設置」231校(30.4%)等も増加傾向にあり,その実現には教員の増員が伴うため,これらも人的配置を望んでいるということになる。
次に,「研修の充実を図り担任の指導力の向上を図ること」287校(37.8%)は,昨年度比4.8ポイントの増加が見られ,「校内体制を整備し,教職員の協力体制の強化」205校(27.0%)は、1.9ポイントの減少となっている。一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導や必要な支援を行うため,教員の指導力向上を図る研修の充実とチームによる支援を行う協力体制の整備は欠かせない。いずれも,人的配置の要望に次ぐ高い割合だったのは,当然の結果と考える。
以上のことから,個に応じた教育が実践されるためには,人的な整備を図りながら,教職員の質的向上を目指す必要がある。このことは,現場の切実な願いを反映しているだけでなく,特別支援教育を推進する上で必要な条件でもある。
一方,前述の困難と感じている「理解啓発の困難」が大きく増加していたにもかかわらず,「理解啓発のための印刷物等の配布」は低い割合を示している。通常の学級に在籍する障害のある児童の実態の違いをいかに理解してもらうか試行錯誤する学校現場の悩みがうかがえる。
対応 |
通級できる学級の設備 |
指導できる教員の増配置 |
コーディネータの加配配置 |
指導補助員等の配置 |
担任の指導力向上 |
1学級の人数を減らす |
---|---|---|---|---|---|---|
学級数 |
||||||
6学級以下 |
19 |
50 |
17 |
42 |
29 |
15 |
12学級以下 |
26 |
75 |
25 |
63 |
32 |
41 |
18学級以下 |
35 |
77 |
32 |
59 |
38 |
53 |
24学級以下 |
34 |
77 |
30 |
61 |
43 |
58 |
25学級以上 |
30 |
73 |
35 |
62 |
41 |
60 |
(%)
※【グラフ】困難を解決するための対応(略)
全調査校845校中,「入学後も継続的な就学相談が必要な児童」が在籍している学校は666校(78.8%)で昨年度と比較すると2.6ポイントの増加,この2年間で9.3ポイント増加したことになる。その学校に在籍する「入学後も継続的な就学相談が必要な児童」の人数も2,912人で,昨年度より92名の増加であり,今後も幼・保・小の就学相談の連携が必要である。
一昨年度より選択項目を増やして調査した結果が右のグラフである。
これによると,「定期的に保護者との面談を継続」が455校(68.3%),「校内委員会に定期的に報告し指導計画の作成・実施・評価を行う」が342校(51.4%)で,保護者の理解・啓発とともに児童の実態に合わせた指導の努力がされている。また,「特別支援学級への在籍または,「通級による指導」による支援」は昨年度に比べて4.3ポイント減ってはいるが,「補助員,介助員,支援員等を配置」が363校(54.5%)となって昨年度より5.2ポイント増加していることや「巡回相談等の専門家に定期的に診断を受け指導実施」が288校(43.2%)と昨年度に比べて2.2ポイント増加していることからも指導の努力がうかがえる。しかし,「適切な支援の為の就学先変更について保護者の理解が得られない」が昨年度より2.3ポイント増加したことは,就学指導においてやはり保護者の理解を得ることの困難さが推測される。
その他の対応としては「担任による個別指導」「専門機関等との相談」など学校の実態に応じて工夫している様子がうかがえる。
就学相談が必要な児童への適切な対応のためには,発達状況に合わせた専門的指導が児童の成長につながることを保護者が理解するための啓発活動を幼・保・小が連携し指導体制を整えて取り組むことが必要である。
※【グラフ】継続的な就学相談が必要な児童に対しての対応(略)
全調査校中,「交流及び共同学習」を実施していない学校は118校(14.0%)で,ほとんどの学校で実施されている。実施していると回答した727校中,実施形態は,校内での実施が671校(79.4%)で交流及び共同学習の中心となっており,特別支援学校との交流及び共同学習をしている学校は216校(25.6%)であった。障害のある児童とない児童との交流及び共同学習の重要性を認識して,ほとんどの学校で実施されていることがわかる。
※【グラフ】障害のある児童とない児童との交流及び共同学習の実態(略)
「交流及び共同学習」を実施している学校727校中,708校(97.4%)で「授業や行事の共同実施等」の方法がとられており,児童同士が直接に触れ合って学習活動を共にし,お互いに学び合い理解し合うことを重視していることがうかがえる。
※【グラフ】交流及び共同学習の実施方法(略)
本調査は昨年度から行っているものである。
通常の学級の児童にとっての成果としては,「交流及び共同学習」の実施校727校のうち487校(67.0%)が,「障害のある児童たちと触れ合うことに抵抗感がなくなった」と回答し,486校(66.9%)が「障害に対する正しい理解と認識を深めることができた」と回答している。
一方,特別支援学校や特別支援学級の児童にとっての成果としては,422校(58.0%)が「自立や社会参加の意欲の向上が図られた」と回答し,370
校(50.9%)が「同世代の児童との触れ合いに地域の一員としての自覚が芽生えた」と回答している。
障害のない児童とある児童がお互いを理解し合って,同じ学校や同じ地域の子どもとして共に生活するために,直接的方法で交流及び共同学習をすることが重視されているといえる。そして,交流及び共同学習によって通常の学級の児童は障害に対する理解と実践力が育っており,特別支援学校や特別支援学級の児童は自立と人間関係を広げようとする力が育っていることがうかがえる。
※【グラフ】通常の学級の児童の成果(略)
※【グラフ】特別支援学校や特別支援学級の児童の成果(略)
全調査校845校の中で,「交流及び共同学習」を実施していない学校(118校)の理由としては,「相手となる特別支援学級がない」が61校(51.7%)で最も多く,「相手となる特別支援学校がない」は38校(32.2%)で,身近に特別支援学級や特別支援学校がないことが,交流や共同学習を実施しない主な理由となっている。また,「年間スケジュール上,新たに実施することが難しい」と回答した学校が34校(28.8%)あった。その他では,「交流をするための予算措置がない」「交通手段の確保が困難」といったものや「対人関係に問題があり実施が難しい」といった理由で実施していない学校が37校(31.4%)あった。障害のある児童とない児童が共に生きる教育は,様々な機会をとらえ推進していくことが必要である。
※【グラフ】実施していない理由(略)
交流及び共同学習を実施する上で今年度多くあげられた課題としては,昨年度と同様「教員の特別支援教育に関する専門性を高めること」が406校(48.0%)で最も多かったが,この三年間を見ると徐々に減少している。また,「交流及び共同学習を通して児童に障害に対する理解を深めさせること」が405校(47.9%),「継続的に交流及び共同学習を実施すること」が315校(37.3%)であった。そして,「担当教員同士の打合せの時間が確保できないこと」が340校(40.2%)と増加しており,その他にも,「打合せの時間の確保」や「交流のための時間を生み出すこと」といった意見があったことから多忙化している学校現場の状況を見ることができる。
そうした中でも,交流及び共同学習では学校や地域の状況により様々な取組を行い一定の成果をあげている。今後も,障害のある児童への指導方法や交流活動のあり方,特別支援教育に対する教職員への研修,保護者や児童,地域への理解啓発の推進と充実を一層図っていかなければならないものと考える。
※【グラフ】交流及び共同学習を実施する上での課題(略)
初等中等教育局特別支援教育課