○特別支援教育の専門性について
○特別支援学校教諭免許状の保有率向上を図り、「当分の間、特別支援学校教諭免許状を保有せずに幼・小・中・高等学校の免許状のみで特別支援学校の教員となることが可能とされている制度」について、どのような方向で見直していくべきか。
○小中学校の特別支援学級担任、通級指導担当教員は、現在、小・中学校の免許状のみで担当となることができるが、それに加えた専門性について、どう考えるか。
○特別支援教育コーディネーターについては、学校全体の特別支援教育の推進という観点から、どのような専門性が必要か。
○担当教員以外の教員の専門性について、養成・研修において、それぞれ何を身に付けるべきか。
○特別支援教育支援員等の一層活用を図るため、どのような研修を実施していくべきか。
○障害のある教職員の採用促進のためにどのようなことが考えられるか。
○外部専門家や関係団体等とどのように連携することが適当か。
○インクルーシブ教育システムの構築のため、教職員の確保や教員の専門性の向上を図るための具体的方策として、大学での教員養成の在り方、管理職を含めた現職教職員の研修体系、採用・配置などについて、今後検討していくことが必要。 |
○教職員の専門性の確保については、特別支援学校教諭免許状の取得率が特別支援学校の教員で約7割、特別支援学級担当教員で約3割と、現在の特別支援教育の大きな課題となっている。また、現職の教員の資質向上のためには、特別支援教育についての研修は喫緊の課題であり、効率的で有効な研修を行うことが重要である。また、教職員への障害のある者の採用・人事配置は課題となっている。
○1 すべての子どもに実質的に効果のある教育を実践するためには、まずは受け入れる側の教員の専門性を確実にあげ、指導技術を担保することが必須要件である。その際、知識だけでなく様々なスキルをどう高めていくか、そのためには何が必要かということが大きなテーマである。
○2 特別支援教育の専門性について、例えば、米国や英国で行われているように、高発生頻度障害(発達障害等発生頻度が非常に高い障害)については基本の情報として、すべての教員が有することとし、低発生頻度障害(視覚障害、聴覚障害、重度・重複等)については担当教員が専門性を高めるという形で、高発生頻度と低発生頻度を分けて専門性を向上させる取組を日本でも参考にする必要がある。
○3 小・中学校等の特別支援教育担当教員は、特別支援教育の重要な担い手であり、その教育の質を支えるとともに、その専門性が校内に与える影響は大きいことから、特別支援学校における勤務等により特別支援教育の中核となる教員を養成し、そういった人材を障害のある子どもの教育的ニーズや学校の状況に応じ、各学校に配置するなど人事上の配慮を行うことが考えられる。また、特別支援学校としての障害種ごとの専門性を確保していくことを考慮した上で、同一校における教員の在職年数の延長など弾力的な人事上の配慮を行うことも考えられる。
○4 特別支援教育コーディネーターについては、専門性を持った教員が専任で配置されることで、学校全体の教員の資質・能力の向上に指導的な役割を果たすことが期待できることから、専門性を高めるための方策について今後検討していく必要がある。例えば、専門的な知識・技能に加えて、地域のネットワークの中で、効果的な支援ができるよう調整する能力を向上するための研修を実施することも考えられる。また、各学校において、特別支援教育の体制充実のための組織強化を図る学校経営を行うとともに、その評価を検討していく必要がある。
○1 すべての教員が特別支援教育についての専門性を持っていることが望ましい。現在、教員養成段階で、特別支援教育に関する内容を取り扱うことになっているが、通常の学級の担任、特別支援学級担当教員について何らかの専門性向上のための方策を検討していく必要がある。例えば、通常の学級の教員については、大学で特別支援教育関係の単位を修得することが望ましい。また、小・中学校等において特別支援教育を担当する教員(特別支援学級や通級による指導の担当教員、特別支援教育コーディネーター)のための免許状を創設することなども考えられる。さらに、特別支援学校教諭の免許状を保有せずに特別支援学校の教員となることが可能とされている現行制度の見直しを検討する必要がある。今後、教員免許制度全般についての検討の中で、特別支援教育関係の単位修得や免許制度の在り方等について検討される必要がある。
○2 都道府県や市町村での特別支援教育に関する研修をすべての教職員に必要なものとして実施するか検討が必要である。まずは、校長等管理職を対象として、特別支援教育、特に発達障害に関する研修を集中的に行うことが必要である。特別支援教育についての多様な研修とともに、学級経営、学校経営といった研修においても特別支援教育を意識して取り組む必要がある。この場合、多忙な教員に配慮した効果的・効率的な研修の実施が求められる。また、教育委員会が主催する研修の実施に当たっては、国・私立学校関係者や保育所関係者も受講できるようにすることが望ましい。(参考資料21:教員の特別支援教育に関する研修の受講状況)
○3 特別支援教育に関する教職員の資質、能力としては、すべての教職員が最低限身に付けていなければならない特別支援教育の理念及び障害に対する基本的な知識・技能等や、実際に特別支援教育に携わる場合に身に付けるべき専門的な知識・技能等を、経験年次別研修や職務別研修を通して、身に付けられるようにしていくべきである。例えば、特別支援学級の新任担当者研修の形で実施することも考えられる。また、免許状更新講習の中により明確に位置付けて実施することも考えられる。
○4 校内研修等での教職経験豊かな教員を中心とした教員間の学び合い、支え合いにより、学校内で専門的知識・技能等を受け継いでいくことが重要である。国の事業として実施している「特別支援教育総合推進事業」により、校内研修を支援しており、各学校で抱える様々な課題について、特別支援学校や特別支援教育センターが助言、協議する研修を組んでいる。ただし、校内における研修は重要であるものの、OJT(On the job training、職場内研修)だけでは、体系的な知識が身に付かないことから、研修と実践を効果的に組み合わせることが適当である。(参考資料22:特別支援教育総合推進事業)
○5 発達障害に対応できる大学関係者、精神科医、小児神経科医などが地域で不足しているといった現状もあり、その対応策としても、各地域にある特別支援学校が巡回相談や研修会の実施といったセンター的機能を果たしていくことも重要である。
○6 特別支援教育の支援員の活用を図るということも、各都道府県教育委員会で行われているが、支援員の質の向上が課題であり、研修を計画的に実施していく必要がある。
○7 全国的に特別支援教育の質の向上を図るため、特別支援教育のナショナルセンターである独立行政法人国立特別支援教育総合研究所が実施する研究事業、研修事業、情報普及事業等を一層推進していく必要がある。また、各大学における取組を国立特別支援教育総合研究所が促進していくとともに、関係者に情報提供していく必要がある。さらに、通信制大学においても、特別支援学校の教諭免許状取得に活用できる科目が開設されており、更なる充実・活用が求められる。
○8 特別支援学校については、専門性の向上のため、地域の関係機関との連携による研修、大学等との研修を実施していくことが重要である。
○1 児童生徒等にとって、障害のある教職員が身近にいることは、障害のある人に対する知識が深まるとともに、障害のある児童生徒等にとってのロールモデル(具体的な行動技術や行動事例を模倣・学習する対象となる人材)となるなどの効果が期待されるので、特別支援学校をはじめ様々な学校において、障害のある当事者の教職員が確保されるよう、採用や人事配置について配慮する必要がある。
○特別支援学校教員に関する免許制度
特別支援学校教員については、幼・小・中・高等学校の教諭の免許状を基礎として特別支援学校教諭免許状を保有することが必要であり(*1) 、特別支援学校教諭免許状には5つの教育領域(視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱)がある。
ただし、幼・小・中・高等学校の教諭の免許状を有する者は、当分の間、特別支援学校教諭免許状を保有しなくても特別支援学校の教員になることが可能とされている(教育職員免許法附則第16項)。
(*1)
なお、特別支援学校教員の免許状の種類としては、特別支援学校教諭免許状のほか、特別支援学校自立教科教諭免許状及び特別支援学校自立活動教諭免許状がある(ただし、幼・小・中・高等学校の教諭の免許状を基礎としているわけではない)。
○研修による専門性の確保への対応
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所における都道府県等の指導的立場にある者を対象とした研修のほか、各都道府県等の教育委員会主催の研修、各学校における校内研修等により専門性の向上を図っているところである。
○特別支援学校教員に求められる専門性
特別支援学校教員に求められる専門性について、平成19年4月の教育職員免許法改正において次のとおり整理した。
○現状・これまでの取組
平成19年4月の特別支援学校制度化に伴い、従来の盲学校・聾学校・養護学校ごとの免許状が特別支援学校の免許状に一本化されたところであるが、平成20年度の特別支援学校における特別支援学校教諭免許状保有率は69.0%である。
さらに、特別支援学校教員の専門性確保に関する国の取組は次のとおりである。
また、都道府県等の取組は次のとおりである。
○検討の方向性及び課題
(特別支援学校の専門性の確保)
特別支援学校教員の専門性については、教員の養成、採用、配置(人事異動)、研修等を通じ、組織的かつ体系的に専門性の向上を図るべきである。
特に、複数の障害を対象とする特別支援学校として整備を行う際には、それぞれの障害種ごとの専門性を担保することが必要である。
(教員免許)
特別支援教育に係る教員免許制度の在り方に関しては、次のとおり様々な意見があるが、現在、文部科学省において、教員の資質向上方策について抜本的に見直すこととしており、特別支援学校教諭免許状の在り方についても、その動向を踏まえて検討する必要がある。
(採用・配置(人事異動))
特別支援学校の専門性については、教員養成や採用、人事異動が強く影響するため、教員の採用や人事異動に当たっては、特別支援学校としての専門性の確保を考慮することが重要である。具体的には、特別支援教育を推進する上で、担当教員が短期間で異動することは大きな影響を生ずるため、各地方公共団体の判断により、特別支援学校としての障害種ごとの専門性の確保を考慮しつつ、同一校内における教員の在職年数の延長や特別支援学校間の適切な異動など弾力的な人事上の配慮を行うことが求められるほか、人材が限られている分野については、広域単位での採用も検討すべきである。
また、特別支援学校の障害種に対応した教育領域について、在籍教員の免許状保有率の向上を図ることに加えて、将来の人事異動を念頭に置き、他の障害種の免許状の取得についても計画的に促進すべきである。
さらに、障害の重度・重複化に対応し、自立活動を主として指導する場合の授業づくりについて、経験ある教員を育成すべきである。
(研修)
通常の学校との間での人事異動の多い特別支援学校においては、異動してきた教員が、可能な限り短期間に日々の教育において必要とされる専門性を身に付けることができるよう、研修の充実を図ることが必要である。
また、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所は、各地域・自治体レベルでは対応の難しい高い専門性が要求される障害種への指導・支援の在り方をはじめ、国全体の特別支援教育に関する研修システムを調整する役割が求められている。このため中央における研修同様、地方における研修の質及び量を充実させるべく、同研究所を中核として、各自治体の教育センターや地方の大学との連携による研修ネットワークの構築を図ることが期待される。
○小・中学校の特別支援学級担任、通級指導担当教員に関する免許制度
現行制度では、幼・小・中・高等学校の免許状を保有していれば特別支援学級担任、通級指導担当教員になることが可能であり、その他特別の免許状の所持は必要とされていない。
ただし、幼・小・中・高等学校の免許状取得に当たっては、教職に関する科目(「教育の基礎理論に関する科目」)中、「幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」において、「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」を学ぶこととされている(*2)。
また、実態としては、教科又は教職に関する科目において、特別支援教育に特化した内容の科目を開設している大学も見受けられる。
なお、特別支援教育コーディネーターについても、その他特別の免許状の所持は必要とされていない。
(*2)
参考資料54頁:教育職員免許法施行規則第6条の表中、第3欄を参照。
○研修による専門性の確保への対応
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所における都道府県等の指導的立場にある者を対象とした研修、都道府県等の教育委員会主催の研修、各学校における校内研修等により、専門性の確保・向上を図っているところである。
○特別支援学級担任、通級指導担当教員、特別支援教育コーディネーターに求められる専門性
特別支援学級担任、通級指導担当教員、特別支援教育コーディネーターに求められる専門性については、次のとおり整理した。
○現状・これまでの取組
平成20年度の特別支援学級担当教員の特別支援学校教諭免許状保有率は32.0%である。
文部科学省においては、「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」により、都道府県等の研修開催を促進している。
また、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所において指導的立場にある者を対象とした各種の研修を実施しているほか、各教育委員会や学校においても特別支援教育に関する教員研修や校内研修を開催している。
○検討の方向性及び課題
(専門性)
小・中学校においても、特別支援学級担任や通級指導担当教員の専門性の向上等により、各障害種の専門性を担保できる仕組みをつくることが求められる。特に、特別支援学級が増加する中で、特別支援教育の経験の少ない若い教員への支援の仕組みについて検討する必要がある。
また、小・中学校の学習指導要領の改訂により、必要に応じて個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成する旨規定されたが、その作成のため、専門性のある者が支援する体制の確立を図ることが重要である。
さらに、特別支援教育コーディネーターについても、その機能、役割を踏まえた専門性の確保が必要であり、3(2)に述べた配置の在り方も念頭に置きつつ、具体的な専門性確保の方策について検討すべきである。
(教員養成・免許)
特別支援学級担任等についても、特別支援学校教諭免許状の取得を促進することが有効であり、免許状を取得しやすい環境の醸成を図ることが必要である。
さらに、特別支援学級担任及び通級指導担当教員の養成の在り方や専門性の担保の在り方についても検討すべきであるとの意見があった。
(採用・配置(人事異動))
特別支援学級担任等について、採用、配置、研修等を通じた専門性の向上方策について検討すべきである。
また、特別支援教育を推進する上で、短期間での人事異動は大きな影響があるため、各地方公共団体の判断により、校内の特別支援教育の専門性の確保を考慮しつつ、同一校内における特別支援教育の専門性を有する教員の在職年数の延長や特別支援学校との適切な人事交流など、弾力的な人事上の配慮を行うことが必要である。
(研修)
特別支援学級担任について専門的な研修を受ける機会を増やすことが必要である。特に、特別支援学級担任の授業力、学級経営力を育成するため、教育委員会が中心となり、研究授業等を内容とする研修システムについて検討すべきである。
また、特別支援教育コーディネーターについても、専門性の確保が必要であるが、特別支援学級担任や通級指導担当教員と同様、校内における人員が少ないがゆえに特別支援学校教諭免許状を取得するための時間を確保することが困難な状況にある。このため、これらの者が免許を取得しやすい環境の醸成を図ることが必要である。
さらに、民間主催の研修会や自主的な研究会を奨励し、特別支援教育コーディネーターの資質向上や連携協力を図ることも併せて検討すべきであるとの意見があった。
○小・中学校等の教員に関する免許制度
学校教育法上は、幼・小・中・高等学校においても特別支援教育を行う旨規定されているが、教員免許については、特別支援学級担任等と同様、幼・小・中・高等学校の免許状の保有で足り、その他の免許状の所持は必要とされていない。
また、幼・小・中・高等学校の免許取得に係る教職に関する科目における特別支援教育の内容としては、(2)で述べたとおり、「教育の基礎理論に関する科目」中の「幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」において、「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」を学ぶこととされているように、内容は示されているものの時間数は示されていない。
このため、小・中学校等の免許状を取得する者が特別支援教育について一層学べるよう工夫することが重要である。
なお、実態としては、各大学において、教科又は教職に関する科目の中で、特別支援教育に特化した内容の科目を開設している例も見受けられる。
○研修による専門性の確保への対応
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所における都道府県等の指導的立場にある者を対象とした研修、都道府県等の教育委員会主催の研修、各学校における校内研修等により、専門性の確保・向上を図っているところである。
○小・中学校等の通常の学級担任に求められる専門性
小・中学校等の通常の学級担任に求められる専門性については、次のとおり整理した。
○現状・これまでの取組
国公私立の小・中学校教員のうち、平成15年4月1日から平成20年9月1日までの間に特別支援教育に関する研修を受けた者の割合は58.8%である(*3)。
文部科学省においては、「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」により、都道府県等の研修開催を促進している。
また、教育委員会や学校においては、特別支援教育に関する教員研修や校内研修を実施している。
(*3)
平成20年度特別支援教育体制整備状況調査結果(文部科学省調査)による。
○検討の方向性及び課題
(専門性)
多くの通常の学級の教員は、発達障害等の理解や知識、経験が不足しているとの声が聞かれる。また、その一方で、特別支援教育固有の視点のみでは特別支援教育の推進は困難であり、学級経営力、授業力、人間形成力など教員としての基本的資質の総合力が求められるものである。加えて、各教科などに特別支援教育の視点を加えた授業力や、特別支援教育について最低限必要な知識・理解の上での応用力・判断力・対応力等も重要である。
そのため、小・中学校等においても、学校組織としての専門性をどのように担保するか、養成、採用、配置、研修の在り方について体系的に考える必要がある。
また、小・中学校等の学習指導要領が改訂され、必要に応じて個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成する旨が示されたが、通常の学級においても、その適切な作成ができるよう専門性を備えた者が支援する体制の確立に関する検討が必要である。
(教員養成・免許)
教育職員免許法施行規則第6条に規定される小学校教諭等免許状の取得に係る教職に関する科目等における特別支援教育に関する内容の位置付けについて、例えば、「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」として取り扱うべき内容を具体化する等の検討をすることが必要であると考えられる。
併せて、教員免許更新制度に関して、教員から大学に対して特別支援教育に関する講習開設の要望が強いこと等も踏まえ、教員養成及び資質向上方策における特別支援教育に関する内容について検討することも考えられる。
(研修)
小・中学校等の教員についても、研修等を通じた特別支援教育に関する基礎知識の修得が必要であり、これらの教員を対象とした特別支援教育に関する校内研修や教育委員会等の主催する研修を充実すべきである。
また、通常の学級で特別支援教育を推進するためには、学級経営力や児童生徒への的確な対応力が求められており、研修もより具体的で実践的な内容にすべきである。例えば、気になる児童生徒について、教員と専門医等が連携しながらケーススタディを行うことは、教員の理解を高める上で効果的である。
学校において質の高い特別支援教育を進めるためには、医師、看護師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)等の外部の専門家を総合的に活用することや、医療、保健、福祉、労働等の関係機関等との連携協力を進めることが必要である。
○現状・これまでの取組
文部科学省においては、「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」により、地域の関係機関の連携協議会、専門家による巡回指導等の体制整備を推進してきた。また、「PT、OT、ST等の外部専門家を活用した指導方法等の改善に関する実践研究事業」 (*4)により、特別支援学校における医学、心理学等の専門家を活用した指導内容・方法等の改善についての実践研究を行ってきた。
また、特別支援学校学習指導要領において、医療、福祉、保健、労働等の業務を行う機関との連携を図るために個別の教育支援計画を作成する旨を規定したほか、小・中学校等の学習指導要領においても、必要に応じ、医療、福祉等の業務を行う関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成する旨を示したところである。
(*4)
参考資料51頁:「特別支援学校等の指導充実事業」中の「PT、OT、ST等の外部専門家を活用した指導方法等の改善に関する実践研究事業」参照。
○検討の方向性及び課題
国及び地方公共団体は、各学校と地域における医療、保健、福祉、労働等との効果的かつ効率的な連携・協力や連携協議会等の在り方について検討する必要がある。
また、教員と外部専門家の連携・協力による指導の在り方や外部専門家を活用した校内研修による教員の専門性の向上を図るべきである。
なお、現在の制度や仕組みの中で、通常の学級の教員が特別支援教育で要求されるすべてのことに対応することは極めて困難である。このため、通常の学級では、教員の資質向上だけでなく、外部のPT、OT、ST、心理学の専門家の活用など教員を支えるシステム作りや、学校単位での専門性の担保、地域単位での支援体制の整備等に関する検討を行うことが必要である。
また、生涯にわたり一貫した支援体制を確立するため、学校において作成される個別の教育支援計画と関係機関において作成される個別の支援計画等との関係を整理し、一貫性・整合性ある計画となるようにする必要がある。特に、ライフステージを通じた相談・支援については、移行期における支援が重要であり、支援の繋がりに切れ目が生じないよう関係者の連携強化が必要である。さらに、どの時期に誰が責任をもって担当するのか、窓口の一本化やサポートする者は必要か等、具体的な検討が必要であり、これまでの各自治体の取組状況を見ながら整理すべきである。
学校が総合的な特別支援教育体制を確立するためには、学校や教育委員会のみの対応では十分ではなく、「新しい公共」の視点も踏まえつつ、学校が関係機関等と連携するとともに、親の会やNPO、学校支援ボランティア等とも連携し、その活用を図ることが必要である。
○現状・これまでの取組
文部科学省においては、「発達障害を含む特別支援教育におけるNPO等活動体系化事業」 (*5)により、民間団体における教育支援活動について、ネットワークの構築等団体間の連携、情報共有、支援活動の互助を推進している。また、発達障害のある幼児児童生徒への教育・支援に関係する教育団体、関係機関、保護者団体等が一堂に会し、連携協力体制の構築のための情報交換等を行う「特別支援教育ネットワーク推進委員会」を開催してきた。
(*5)
参考資料52頁:「発達障害を含む特別支援教育におけるNPO等活動体系化事業」参照。
○検討の方向性及び課題
幼児児童生徒の個々のニーズに応じたよりきめ細かなサービス提供のため、各地域における親の会、NPO、学校支援ボランティア等の活用を推進すべきである。
特に、保護者の立場にある者が中心となったNPOが行政において相応の役割を担うことは、保護者の新しい役割として高く評価できる。一方、そのような団体は教育委員会等行政機関とは直接話ができる関係にあるものの、保護者という立場から、学校とは本音で話しにくい傾向があるとの声も聞かれており、学校や行政においても改善を図っていくことが重要である。
親の会、NPO、学校支援ボランティア等の活用を進めるに当たっては、これら組織の特性である機動性・先駆性等を生かした事業展開を活用し、地域において個に応じた支援を実現するための仕組みの構築を図ることが必要であり、これらの業務が維持・定着できるような予算措置及び事業化について検討が必要である。
また、企画力や組織の継続性に不安のあるNPO等の育成・支援の在り方についても検討すべきである。
さらに、「新しい公共」の視点も踏まえつつ、教育機関や福祉等の関係機関、親の会、NPO等の間の連携と有機的なネットワークの構築、学校支援ボランティアの育成を図ることが大切である。
初等中等教育局特別支援教育課