障がい者制度改革推進会議における文部科学省ヒアリング(平成22年4月26日)追加質問項目に対する意見書

障がい者制度改革推進会議における文部科学省ヒアリング(平成22年4月26日)
追加質問項目に対する意見書

【府省名:文部科学省】

追加質問項目【総論-1】

1、4月26日の会議に提出された「ヒアリング項目に対する意見書」(以下、「意見書」)では、「文部科学省としては、インクルーシブ教育システムについて、理念だけではなく、人的、物的条件整備とセットでの議論が必要と考える」とし、意見書の別添○2で、「障害のある児童生徒への十分な教育に必要な人的体制・物的条件の整備について(義務教育段階)」としてインクルーシブ教育システムを構築するためのA、B2通りの想定で、必要なコストを試算している。このような試算を提示したことは、文部科学省としては、財源が確保できないために、想定で示されたようなインクルーシブ教育が実現できないと認識しているということか。財源があれば、このようなインクルーシブ教育が実現できるとの認識か。

回答

○障害者権利条約の理念であるインクルーシブ教育システムの構築を目指す上で、通常の学校を含めて、障害のある児童生徒の指導に係る専門性ある教員の確保・充実等の人的体制の整備、所要の施設・設備の充実等の環境整備を行うことが必要不可欠と考える。

○こうした人的体制や環境の整備のための財源確保が不可欠であるが、それに加えて、実際にインクルーシブ教育システムの構築を図るためには、通常の教育内容では指導が難しい知的障害のある児童生徒の教育をはじめとする、障害のある児童生徒全体の教育課程編成の在り方、教員の指導力の担保・向上、特別支援教室構想の具体化など、長期的視点から検討を要する課題が存するものと認識している。

○なお、コスト試算については、今後の検討に資するため、あくまで現時点での仮定として、二つのシナリオを想定した上で、それぞれインクルーシブ教育システムに係る基本的な考え方、及び必要となる条件整備の在り方を仮定し、当該前提の下で、必要となる経費について試算を行ったものであり、このような考え方及び試算の方法については今後更なる検討が必要と考える。

 

追加質問項目に対する意見書

【府省名:文部科学省】

追加質問項目【総論-2】

2.意見書では、障害者の権利条約の第24条第1項に掲げられた3つの目的((a)「自己の価値等の意識を十分に発達させ、人権、基本的自由、人間の多様性の尊重を強化させる」、(b)「能力を可能な最大限度まで発達させる」、(c)「自由な社会に効果的に参加する」)のうち、(b)について、教育の目的を1つだけを取り上げて回答しているが、このことは、取り上げていない他の2つの項目については考慮しないという意味に解してよいのか。この点について、ご意見を伺いたい。

回答

○権利条約第24条第1項(a)~(c)全体について考慮すべきと考える。

○なお、同項(a)については、新しい特別支援教育の理念として、近年の児童生徒の障害の重度・重複化及び多様化に伴い、一人一人の教育的ニーズに応じた適切な教育の実施がこれまで以上に求められていること等に鑑み、児童生徒の個々の教育的ニーズを適確に把握した上でこれに柔軟に対応し、適切な指導・支援を行うとの観点を重視している。更に、特別支援教育は、発達障害等も含め、特別な支援を必要とする児童生徒が在籍する全ての学校において実施すること等を通じ、障害のある児童生徒への教育に留まらず、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ、様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成の基礎となるものと認識している。

○また、同項(c)については、同じく特別支援教育の理念として、障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活・学習上の困難を改善又は克服することを主要な目的として掲げ、健康の保持、心理的安定、人間関係の形成等自立活動における種々の指導・支援、高等部における職業教育や就労支援等の強化を図っている。こうした取組は、「障害のある児童生徒の自由な社会への効果的参加を可能とする」という障害者権利条約における教育制度の目的の達成にも資するものと認識している。

 

(参考)障害者権利条約第24第1項(政府仮訳)

    1締約国は、教育についての障害者の権利を認める。締約国は、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、次のことを目的とするあらゆる段階における障害者を包容する教育制度及び生涯学習を確保する。

    (a)人間の潜在能力並びに尊厳及び自己の価値についての意識を十分に発達させ、並びに人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること。
    (b)障害者が、その人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。
    (c)障害者が自由な社会に効果的に参加することを可能とすること。

 

追加質問項目に対する意見書

【府省名:文部科学省】

追加質問項目【ヒアリング項目○1 教育基本法 差別禁止条項の不在】

1.教育基本法4条1項に教育上差別されない事由として「障害」が明示されていなくても障害の有無による差別は禁止されていると解され、権利条約に照らして特段の問題はないというのが文部科学省の意見だが、逆に、障害に基づく差別の禁止を明文化することには何か不都合があると考えるのか、ご意見を伺いたい。仮に、障害者基本法などの改正に合わせて同項を改正して障害に基づく差別の禁止を明記するとした場合には、不都合があると考えるのか。

回答

○第4条第1項は、憲法が定める法の下の平等や教育を受ける権利を保障するために、すべての国民が等しく教育の機会を与えられ、教育上差別されない旨を規定するものであり、教育基本法第4条第1項に掲げられている人種、信条、性別等はあくまでも例示であり、障害が明示されていなくても、同項の規定により障害の有無による差別は禁止されており、当該条文の解釈の明確化という観点からのみで法律改正を行うことは一般的に難しいと考える。

 

追加質問項目に対する意見書

【府省名:文部科学省】

追加質問項目【ヒアリング項目○3 特別支援学校の設置】

1.障害者の権利条約は、保護者の意に反する親子分離を原則として禁止している。例外は、裁判所等の司法機関が関与する場合だけであって、教育の場合を例外として認めていない。にもかかわらず、特別支援学校への就学指定に障害者やその親が反対している場合に、その意に反して寄宿舎で生活をせざるを得ない特別支援学校へ就学指定することは、権利条約の禁止する親子分離に違反しないといえるのか、ご意見を伺いたい。

回答

○特別支援学校に寄宿舎の設置を義務付けている趣旨は、保護者の意思に反し、特別支援学校に在籍する児童生徒をその保護者から分離するというものではなく、在籍児童生徒の通学区域が広域となる実態に鑑み、通学困難な児童生徒の便宜のために設置しているものと認識しており、このことが直ちに権利条約の趣旨に反するとは言えないと考える。また、この問題は、就学する学校の決定に関する本人・保護者の選択権の保障の問題と関連するものと考える。

○なお、近年では、交通手段の発達等に伴い、都市部を中心に寄宿舎を廃止・統合するケースも出てきているものと承知している。

 

(参考)障害者権利条約第23条第4項(政府仮訳)

 締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。いかなる場合にも、児童は、自己が障害を有すること又は父母の一方若しくは双方が障害を有することを理由として父母から分離されない。

 

追加質問項目に対する意見書

【府省名:文部科学省】

追加質問項目【ヒアリング項目○4 特別支援学級の設置】

1.交流教育の時限数の上限枠を一律に設けている(たとえば半数を超えてはいけないとか)、あるいは間接交流として年数回の手紙や通信での交流も交流であると認めている実態があるが、これは適正な運用と考えているのか、ご意見を伺いたい。

2.交流では、子どもと子どもの人間関係は、一時的なものでしかなく、常日頃の相互の関係を通して、共に育ちあうという教育の本来の目的は達することができない。そして、共に同じ地域に住むものとして仲間意識を形成することを疎外している実態もあるとの意見があるが、こうした考え方について、ご意見を伺いたい。

回答

○交流及び共同学習の推進については、平成16年の障害者基本法改正の趣旨を踏まえ、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒の相互理解の促進等を目的として、その積極的な推進を図ってきた。

○平成20年改訂の小・中学校の学習指導要領、及び平成21年改訂の特別支援学校の学習指導要領等においても、児童生徒の経験を広めて積極的な態度を養い、社会性や豊かな人間性を育むといった観点から、交流及び共同学習の実施を明確に位置づけたところ。

○各自治体や学校における実際の交流及び共同学習の状況については、児童生徒の実情・ニーズや保護者の希望等を踏まえ、各々の学校設置者ないし学校の判断により進められているものと考えており、文部科学省として現時点でその全国的な状況等について必ずしも詳細に承知しているわけではない。

○各自治体及び学校における具体的な交流及び共同学習の進め方については、手紙や通信等による間接的な交流の段階を経て、直接的な交流や協同的な学習(授業参加)の段階へと進んでいく事例もあるものと承知している。

○交流及び共同学習に係る教育課程上の位置付けをはじめとした実際の運用についても、学習指導要領の改訂等を踏まえ、各設置者において、児童生徒の障害の状態等に応じた検討・対応がなされているものと認識している。

 

追加質問項目に対する意見書

【府省名:文部科学省】

追加質問項目【ヒアリング項目○5-1 就学先決定の仕組み】

1.第171回通常国会に議員提案により参議院へ提出された「障がい者制度改革推進法案」第9条第1項は、「義務教育制度について、障がい者が障がい者以外の者と共に教育を受ける機会を確保することを基本とし、障がい者又はその保護者が希望するときは、特別支援学校又は特別支援学級における教育を受けることができるようにするものとする。」とある。この法案と文部科学省の意見書の内容とは、整合しないと考えられるが、文部科学省としても、同じ認識か、ご意見を伺いたい。

回答

○文部科学省としては、就学する学校の決定について、保護者に全面的に選択を委ねることについては慎重な検討が必要と考えている。

○一方、障害のある児童生徒の就学先の決定手続きについて、障害者権利条約の趣旨等を踏まえ、障害者又はその保護者の希望に最大限応えるとの観点から、今後改善・見直しを行う必要があるものと考えている。具体的な見直しの方向性に関しては、先日提出した意見書別添○1(P.2)に記載の通り、就学移行期における個別の教育支援計画の作成等を通じ、保護者への十分な情報提供や、より早期からのきめ細かい相談・支援を行っていくことなどにより、保護者との共通認識を醸成していくことが重要と考えている。

○いずれにせよ、就学先の決定手続きや保護者の実質的選択権の保障等については、推進会議でのご議論も十分踏まえつつ、子ども一人一人のニーズに応じた一貫した支援により、障害者権利条約にも示された「子どもの能力を可能な最大限度まで発達させる」との目的の達成が図られるよう、通常の学校を含めた専門性ある教員の確保・充実等人的体制の整備、所要の施設・設備の充実等の環境整備を行うことを前提として、制度改革の在り方について検討を行う必要があるものと考えている。

 

(参考)障がい者制度改革推進法案(第171回通常国会 民主党提出)-抄-

第九条 義務教育制度について、障がい者が障がい者以外の者と共に教育を受ける機会を確保することを基本とし、障がい者又はその保護者が希望するときは、特別支援学校又は特別支援学級における教育を受けることができるようにするものとする。

2 義務教育について、障がい者と障がい者以外の者の意思疎通を仲介する者の配置の促進、障がい者に係る教育に関する専門的知識を有する教員の充実等の人的体制の整備、障がい者が十分な教育を受けるために必要な学校の施設及び設備の充実、障がい者が使用するための教材の普及等の物的条件の整備その他の障がい者が教育を受ける環境の整備を行うものとする。

3 後期中等教育(中等教育のうち義務教育終了後に行われるものをいう。)、高等教育その他の義務教育以外の教育について、前二項の措置に準ずる措置を講ずるものとする。

 

追加質問項目に対する意見書

【府省名:文部科学省】

追加質問項目【ヒアリング項目○5-2 就学先決定の仕組み】

2.回答の第1項目では、就学先決定について見直すことを検討しているとし、回答の最終項目では、決定手続きを政令で定めていることについて「法体系上特段の問題があると考えてはいない」としている。これらを併せ読むと、施行令の改正を検討しているが、法律の改正は予定していないとも受け止めされるが、回答をそのように受け止めてよいか。
 回答の第2項目は、「保護者に全面的に選択を委ねることについては慎重な検討が必要と考える」とし、第3項目は、「決定主体は義務教育の実施責任を有する教育委員会とすることが法制度上必然であると考える」としている。これは、就学事務の決定権はあくまでも教育委員会にあり、その結果として、行政の決定権と保護者の選択権は、両立しえない関係になり得ることがあるという状況を改める必要はないと考えているということか。
 文部科学省の意見書の参考資料として添付されているフランスの場合、保護者が通常学校に登録し、その後、保護者が望めば、委員会が決定となっている。また、同じく「(参考)」として示されているアメリカの場合、教育の場を何処にするかも含めてIEP(個別教育計画)で決め、親の合意が必要とされている。このように、フランスやアメリカの制度では、行政の決定権が、親の同意ないし選択を前提としてなされている。
 こうした諸外国の制度の存在にもかかわらず、何故、「決定主体は義務教育の実施責任を有する教育委員会とすることが法制度上必然である」と言えるのか。立法府において提案された「障がい者制度改革推進法案」の内容は、そのようになっていないことも踏まえて、ご意見を伺いたい。

回答

○就学先の決定手続きの見直しに関して、現時点においては、必ずしも法改正が必要不可欠であるとは考えていない。

○また、就学先の決定に係る主体は、我が国の法制度上はあくまでも義務教育の実施責任を有し、学校の設置者である教育委員会とすることが至当であり、御指摘の点については、当該決定に当たり保護者の意向(選択)がどこまで反映されるか、または当該決定に当たり、それがなければ絶対に教育委員会は学校の決定ができないほどの強い同意が必要かどうかの問題であると考えている。

○文部科学省としては、保護者に全面的に就学先の選択を委ねることについては慎重な検討が必要と考えている。

○なお、障害のある児童生徒の就学先の決定手続きについては、障害者権利条約の趣旨等を踏まえ、今後改善・見直しを行う必要があるものと考える。具体的な見直しの方向性については、先日提出した意見書別添○1(P.2)に記載の通り、就学移行期における個別の教育支援計画の作成等を通じ、保護者への十分な情報提供や、より早期からのきめ細かい相談・支援を行っていくことなどにより、保護者との共通認識を醸成していくことが重要と考えている。

○いずれにせよ、就学先の決定手続きや保護者の実質的選択権の保障等については、推進会議でのご議論も十分踏まえつつ、子ども一人一人のニーズに応じた一貫した支援により、障害者権利条約にも示された「子どもの能力を可能な最大限度まで発達させる」との目的の達成が図られるよう、通常の学校を含めた専門性ある教員の確保・充実等人的体制の整備、所要の施設・設備の充実等の環境整備を行うことを前提として、制度改革の在り方について検討を行う必要があるものと考えている。

 

追加質問項目に対する意見書

【府省名:文部科学省】

追加質問項目【ヒアリング項目○5-3 就学先決定の仕組み】

3.「就学先決定の仕組みの見直し」で、保護者の意向の尊重が難しいケース例として、「他の児童生徒等への影響等に関する考慮が必要」をあげているが、「児童生徒等への影響」とは具体的にはどのようなことを指すのか。一つ以上の具体例を示してご説明頂きたい。

回答

○意見書添付の参考資料に記載している通り、例えばイギリスにおいては、就学先決定のプロセスについて、「他の子どもへの効果的な教育の提供と矛盾しない限りにおいて、通常学校で教育」するものとされていると承知している。

○就学先決定の手続きにおいて、保護者の意向の尊重が困難又は必ずしも適切ではないと考えられる事例については、今後更なる検討が必要であるが、意見書別添○1(P.2)に記載の通り、例えば行動・情緒面の障害等により、他の児童に重大な危害等が及ぶ恐れが強い場合等が挙げられる。

 

追加質問項目に対する意見書

【府省名:文部科学省】

追加質問項目【ヒアリング項目○6 合理的配慮の具体化】

1.合理的配慮の内容の議論に入る前に、合理的配慮は、本人側の権利であり、教育を提供する側の義務であること、それがなければ差別であると権利条約が明言していることをどのように考えているのか、ご意見を伺いたい。

2.三者による合意が形成できない場合に、本人、保護者の権利はどのように担保されるか、異議申し立て制度について、ご意見を伺いたい。

回答

○障害者権利条約の締約国には「合理的配慮が障害者に提供されることを確保すること」が求められるとともに、「合理的配慮の否定」は「障害を理由とする差別」に該当すると考える。

○なお、提供すべき合理的配慮の内容については、障害者権利条約第2条において、「合理的配慮」が、○1障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、○2特定の場合において必要とされるものであり、かつ、○3均衡を失した又は過度の負担を課さないもの、と規定されていることを踏まえ、今後検討が必要と考える。

○また、合理的配慮の内容等に関する異議申立て制度については、今後、教育以外の分野を含めた障がい者制度改革推進会議等における議論等を踏まえた検討が必要と考える。

 

追加質問項目に対する意見書

【府省名:文部科学省】

追加質問項目【ヒアリング項目○7-1 聴覚・視覚に障害がある場合の教育】

1.特別支援学校における専門性を強調しているが、現在、専門性が担保されていないことについて、どのように考えるか。例えば、盲学校には点字を知らない教員が半数以上であると言われるが、その実態に関するデータを文部科学省は持っておられるか。データがあれば具体的に示されたい。具体的なデータを持っておられるか否かにかかわらず、専門性の確保がされていないと指摘される現状についてどのように考えるのか、ご意見を伺いたい。

2.手話によるろう教育の実現について、どのように実現するのか。今後どのような取り組みをするのか、具体的施策を伺いたい。

回答

1.について

○全国盲学校長会によれば、点字指導は盲学校の教育の中心となるものであり、盲学校教員の専門性の中で最も重要な資質であることから、多くの学校では、年度当初の新規採用や人事異動で他校種から転入した教員を除いて、全教員が点字力や点字指導力を有しており、新規採用や人事異動で他校種から転入した教員に対しても、各盲学校においては、年度当初の研修を集中的に行って点字力や点字指導力を高めることにより、早期に全教員が点字指導の適格性を有するようにしている、とのことである。

○また、全国特別支援学校長会の調査によれば、盲学校を対象とした平成20年度の調査において、約8割の学校が「点字の指導力」を研修内容に含めた校内研修を実施しているものと承知している。

○文部科学省としては、視覚障害のある児童生徒について、それぞれの障害の状態や発達段階などに応じて、点字による指導に加え、触覚教材、拡大教材、音声教材等の活用を図るとともに、視覚補助具や情報機器等の活用を通じ、容易に情報の収集・処理ができるようにするなど、児童生徒の視覚障害の状態等を考慮した指導方法を工夫することが重要と考えている。

○視覚障害教育に係る専門性については、こうした実際の指導に当たっての考え方に立脚しつつ、視覚障害を対象とする特別支援学校における上述のような専門性確保・向上への取組、並びに各都道府県、国立特別支援教育総合研究所及び大学等における各般の研修プログラムの実施等を通じ、その確保・向上が図られているところであり、今後ともこうした取組を着実に推進していくことが重要と考えている。

 

2.について

○文部科学省としては、聴覚障害のある児童生徒については、それぞれの障害の状態や発達段階などに応じて、聴覚活用、発音・発語、文字、指文字、手話などの多様なコミュニケーション手段を適切に選択・活用した指導を行うことが重要と考えている。

○こうした考え方の下、平成21年改訂の特別支援学校小学部・中学部の学習指導要領においても「音声、文字、手話等のコミュニケーション手段を適切に活用して、意思の相互伝達が活発に行われるように指導方法を工夫すること」という形で手話を位置付けたところ。

○こうした方針を踏まえつつ、聴覚障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校においては、障害の状態等に応じた教育課程、少人数の学級編成、特別な配慮の下に作成された教科書や教材等を活用して指導が行われている。

○聴覚障害教育に係る専門性については、全国聾学校長会によれば、全国の聾学校において、初任者、転入者に対し、聴覚障害に関する理解、聴覚活用、言語指導、多様なコミュニケーション手段の内容、方法の理解および活用技術の習得、教科指導の内容・方法、職業教育に関する指導等に関する校内研修を定期的に実施し、日々の指導に対応できる聴覚障害教育の知識、技能を習得できるように工夫している、とのことである。

○加えて、全国聾学校校長会は、聾学校の専門性を中心に指導全般に関する必要な内容を「教員研修用テキスト」にまとめ、各学校の校内研修に活用できるようにしていると承知している。

○こうした取組に加え、聴覚障害教育に係る専門性の確保・向上に向け、各都道府県や大学等における各般の研修プログラムが実施されている。更に、国立特別支援教育総合研究所において、通常の学級での対応・支援も念頭に置きつつ、手話を含めた多様なコミュニケーション手段を活用した指導が行われるよう、都道府県の指導的立場にある教員等を対象として、手話を活用した指導法を含めた専門的な研修を行っているほか、聴覚障害のある児童生徒に応じた指導法に関する研究等を行い、その成果の普及を図っている。

○文部科学省としても、これらの取組を通じて、聴覚障害のある児童生徒について、手話を含めた多様なコミュニケーション手段を活用した指導の一層の充実が図られるよう、障がい者制度改革推進会議における議論等を踏まえつつ、指導内容・方法の改善や教員の専門性の向上に努めてまいりたい。

 

追加質問項目に対する意見書

【府省名:文部科学省】

追加質問項目【ヒアリング項目○7-2 聴覚・視覚に障害がある場合の教育】

3.文部科学省の平成20年度の調査では、聞こえに困っている子供は、特別支援学校に4,842人、特別支援学級に1,229人、通級による指導に1,915人在籍と報告されている。(いずれも小中学校)また、現在の学校教育施行令の就学基準は、聴覚障害の場合60デシベル程度と規定しているので、数十万と想定される難聴の子どものうち、軽・中度の難聴の子どもはほとんどが通常学級で学んでいると考えられる。しかし、その子どもへの教育はクローズアップされていない。コミュニケーション保障を超えた、普通学校での聞こえにくい子どもへの対応、特にその子達の言語形成の問題は非常に大きな課題である。この課題は、専門性をもって取り組む必要があり、教員、教育専門家、医療関係者、言語聴覚士などの関与が必要と考える。現在、特別支援教育支援員の拡充が進められているが、聴覚障害の場合、ノートテークサポートにとどまっているような話を聞く。通常学級では、なおさら聞こえにくい子どもの問題は放置されていると思われる。こうした実態を文部科学省として把握しているか。また、こうした主張がなされることについて、文部科学省として、どのように認識されるか。

回答

○通常の学級に在籍する軽度・中等度難聴の児童生徒については、その障害が外部からわかりにくいため、適切な教育的対応が遅れがちになることがあると認識している。
 文部科学省としては、言語発達等に顕著な遅れが指摘されない軽度・中等度難聴の児童生徒に対しては、学力面、コミュニケーション面に加え、心理的な側面等について、よりきめ細やかな教育的対応が必要であり、当該児童生徒の聴覚障害の状態等を踏まえ、教育的ニーズに応じた適切な指導・支援がなされることが重要と考えている。

○こうした考え方に立ち、文部科学省としては、これまで特別支援教育支援員の配置促進や通級による指導の拡充を行うとともに、聴覚障害のある児童生徒に対する教育に関する専門性を有する特別支援学校がセンター的機能を発揮し、教育相談等の機会を通じて、通常の学級の担当教員等への聴覚障害の特性を踏まえた指導方法や具体的な支援及び関係機関との連携等について、助言・援助するよう指導しているところ。

○また、今年度から、国立特別支援教育総合研究所において「軽度・中等度難聴児に対する指導と支援の在り方に関する研究」を開始したところであり、軽度・中等度難聴児の教育的対応・関係者支援の現状・課題の把握を含めた今後の当該研究の進捗に応じ、その成果の幅広い発信・普及啓発を図ってまいりたい。

 

追加質問項目に対する意見書

【府省名:文部科学省】

追加質問項目【ヒアリング項目○8-1 特別支援教育】

1.別添○2の想定AとBは前提が異なるが、インクルーシブ教育システムを念頭に置いて、それを実現するためには、膨大な予算を必要とするとされる想定Aからみると、障害者の権利条約のインクルーシブ教育が求める状況と現状の日本の教育状況には大きな隔たりがあると、文科省は認識しているのか。

回答

○権利条約においては、「インクルーシブ教育システム」の定義に係る明文での規定はなく、各国の解釈に委ねられているところであるが、文部科学省としては、条約締結に当たり、必ずしも想定Aのような条件整備が必須のものであるとは考えていない。今回のコスト試算は、今後の検討に資するため、あくまでも現時点での仮定として、二つのシナリオを想定した上で、それぞれインクルーシブ教育システムに係る基本的な考え方、及び必要となる条件整備の在り方を仮定し、当該前提の下で、必要となる経費について試算を行ったものであり、今後更なる検討が必要と考える。

○いずれにしても、文部科学省としては、インクルーシブ教育システムの構築という障害者権利条約の理念を踏まえ、諸外国の状況等も踏まえつつ、発達障害を含む障害のある子ども一人一人のニーズに応じた一貫した支援を行うために、関係機関等の連携の下、学校現場における特別支援教育の体制整備を進めるとともに、教員の特別支援教育に関わる専門性の向上等により、特別支援教育の更なる充実を図ってまいりたい。

 

追加質問項目に対する意見書

【府省名:文部科学省】

追加質問項目【ヒアリング項目○8-2 特別支援教育】

2.私たちの暮らす社会は、障害の有無に関わりなく、すべての人々が尊重され、ともに暮らすことのできる社会の実現が重要であり、そのためには、幼少時から、障害の有無に関わりなく、ともに育ち、ともに学ぶシステム構築が、必要な投資と考えるが、こうした考え方に対する見解と、現在の特別支援教育の整合性について、どのように考えていれるのか、ご意見を伺いたい。

回答

○指摘のように、障害の有無に関わりなく全ての人々が尊重され、共生できる社会の実現を目指す上で、幼少時から障害のある子どもと障害のない子どもの交流や相互理解の促進を図り、「心のバリアフリー化」を進めることは極めて重要と認識している。

○文部科学省としても、こうした考え方を踏まえ、通常の学校での障害のある児童生徒への指導・支援に係る体制整備・取組の強化と併せ、障害者基本法に基づき、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒の「交流及び共同学習」を進めている。「交流及び共同学習」については、平成20年改訂の小・中学校の学習指導要領及び平成21年改訂の特別支援学校の学習指導要領等において明確に位置付け、計画的・組織的かつ積極的に実施しているところ。

○更に、特別支援学校の児童生徒が各々の居住地域の小・中学校に副次的な籍を置き、交流及び共同学習を行う「居住地校交流」も多くの自治体で行われている。こうした取組は、将来のインクルーシブ教育システムの構築に向けての環境整備、漸進的取組としても非常に参考になるものと考えており、文部科学省としても、今後モデル事業の推進等を通じ、全国的な取組の促進を図っていくことが重要と考えている。

○いずれにせよ、インクルーシブ教育システムの構築に向けた取組と特別支援教育は相反するものではなく、同じ方向を目指したものであり、小・中学校等における校内体制の着実な整備、通級指導担当教員や特別支援教育支援員の拡充など必要な人的リソースの充実や、上述のような交流及び共同学習への取組を通じた環境整備をはじめ、時々の状況に応じて不断に特別支援教育の促進を図っていくことが必要と考える。

 

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)