参考資料 障害のある児童生徒の就学及び教育・支援に関する各国の現状等について

【参考資料】

障害のある児童生徒の就学及び教育・支援に関する各国の現状等について

(※本資料は聞き取り等に基づき整理したものであり、今後精査を要する。)

 

英国

(1)関係法令:特別な教育ニーズ・障害法(2001年)

(2)障害のある児童生徒の就学先/学齢期児童生徒総数に対する在籍率

    ステートメント保持者(幼~高等部):221,670人(2.7%)
    ステートメント不保持の特別なニーズ教育対象者:1,433,940人(17.8%)
    特別学校:85,320人
    通級指導教室(PRU):15,230人
    (2009年)

      ※ステートメントとは、児童生徒のあらゆる特別な教育的ニーズ及びそのために必要な支援を記述した法的な判定書。重度の障害のある場合やスクール・アクション・プラスまでの支援では当該児童生徒のニーズに応じられないと判断された場合に地方当局が作成する。ステートメント不保持の場合には、スクール・アクション及びスクール・アクション・プラスという段階的な支援の枠組みがある。特別な教育的ニーズ(SEN)が軽い子どもについては、スクール・アクションで対応(IEPの作成・評価、校内資源の活用)。スクール・アクションで効果が十分ではない場合は、スクール・アクション・プラス(スクール・アクションで行う内容に加え、地方当局等からの資金援助や巡回教師などの外部専門家の活用)で対応する。

(3)就学猶予・免除率又は保健医療機関での受入れ状況:

    • 最重度の子どもも保健医療機関ではなく、学校に就学させるようになっており、初等教育就学率は99%。
    • 非行や乱暴などの問題で退学させられ、かつ、どの学校からも受入拒否されている状態になっている子どももいるが、基本的に就学猶予や免除はない。

(4)就学先決定者:地方行政局の教育担当部局

(5)就学先決定プロセス:

    ステートメント作成の子どもは、地方行政局の教育担当部局が保護者の意見聴取を行い、親の意向または他の子どもへの効果的な教育の提供と矛盾しない限り、通常学校で教育

(6)学級編制基準:

    初等教育学校第1~2学年 上限30人、それ以降の学年については特に定めていない。

(7)1学級当たり児童生徒数:

    初等教育平均24.6人(2007年)
    前期中等教育平均22.6人(2007年)

 

フランス

(1)関係法令:

    障害者の権利・機会・参加及び市民権の平等のための法律(2005年)
    教育法典(2008年改正)

(2)障害のある児童生徒の就学先/学齢期児童生徒総数に対する在籍率

    通常学校(国民教育省所管)の就学者:188,000人(1.48%)

      うち特別支援学級:54,725人(0.43%)

    厚生省管轄の施設での通年就学者:76,000人(0.59%)
    (2008年度)

      ※フランスの通常学校とは国民教育省管轄の学校を指し、障害のある子どもが学業不振児のための適応教育・職業教育を専門に行う学校及び部門(中等教育段階)に就学している場合や知的障害以外の単一障害のための特別学校(全国で8校)に就学している場合も、通常学校への就学として扱われている。

(3)就学猶予・免除率又は保健医療機関での受入れ状況

    • フランスでは家庭で義務教育が可能であるが、障害があり未就学が推定5,000人(学齢児の0.04%)
    • 厚生省管轄の施設で未就学が推定15,000人(学齢児の0.12%)(2005年度)

(4)就学先決定者:保護者(ただし、障害に応じた教育を受ける意思がある場合には、障害者事務所(MDPH)の委員会が就学先及びその支援内容を決定)

(5)就学先決定プロセス:

    • 保護者が、居住地に最も近い通常学校に学籍登録。その後保護者の意思で、県の障害者事務所(MDPH:県議会議長が設置する独立機関)に個別就学計画の立案のための評価を申請。専門家チームが保護者と緊密に通常教育を第一に計画を立案し、障害者事務所内の委員会が決定。
    • 個別就学計画ではできる限り通常学校での就学が実現されるように支援が立案される。通常学級に入る場合、学校支援員などの支援を受けて通常学級に入る場合、通常学校内の特別なクラスに入る場合などがある。これらが難しい場合には,通常学校の学籍を残したまま厚生省管轄の施設で療育と合わせた就学となる。
    • 学籍を登録された学校長は必要に応じ保護者にMDPHへの申請を文書で推奨。4ヶ月反応なければ教育行政部門から MDPHにその旨を連絡し、保護者と連絡をとるために必要な手段を講ずる。

(6)学級編制基準:上限人数無し

(7)1学級当たり児童生徒数:

    初等教育平均22.6人(2007年)
    前期中等教育平均24.3人(2007年)

 

ドイツ

(1)関係法令:

    ドイツ連邦共和国における特別支援学校に関する勧告(1994年)
    各州が法律的責任

(2)障害のある児童生徒の就学先/学齢期児童生徒総数に対する在籍率

    特別な教育ニーズのある生徒:479,795人(5.7%)

      うち特別支援学校:407,170人(4.8%)
      うち通常学級:72,625人(0.9%)

    (2006年)

(3)就学猶予・免除率又は保健医療機関での受入れ状況

    [ノルトライン・ヴェストファーレン州の場合]
    障害の状態等によって就学義務を免除、または猶予する仕組みはない。

(4)就学先決定者:市町村の学校監督委員会

(5)就学先決定プロセス:

    • 保護者、学校等が、各障害の特殊教育教師等によって構成される市町村の学校監督委員会に申請する。
    • 学校監督委員会が就学手続きの責任を有し、障害及び特別な教育的ニーズの特定、必要な支援、教育課程、就学先の決定をする。

(6)学級編制基準(上限人数):

    [ノルトライン・ヴェストファーレン州の場合]
    初等教育24人(範囲18-30人)
    前期中等教育24~28人(範囲18-30人)

(7)1学級当たり児童生徒数:

    初等教育平均22.1人(2007年)
    前期中等教育平均24.7人(2007年)

 

豪州

(1)関係法令:

    障害者差別禁止法(1992年)
    障害者教育基準(2005年)
    各州が法律的責任

(2)障害のある児童生徒の就学先/学齢期児童生徒総数に対する在籍率

    [ニューサウスウェールズ州の場合]
    特別支援学校:0.53%
    特別支援学級:1.86%
    通常学級:2.04%
    (2009年)

(3)就学猶予・免除率又は保健医療機関での受入れ状況

    最重度の障害の子どもも基本的に就学させる。

(4)就学先決定者:地域の教育事務所が主宰する「委員会」

(5)就学先決定プロセス:

    • 就学先に係る実質的「決定権」は保護者が保持
    • 決定の主体は地域の教育事務所が主宰する「委員会」
    • 障害のある生徒が在籍する教育環境は、その生徒のニーズや彼らのニーズによって左右されるが、子どもの教育環境は、その生徒のニーズや彼らのニーズに応じられる環境によって、左右されるが、子どもの教育環境について決定を行う権利は保護者が有している。

(6)学級編制基準:

    [ニューサウスウェールズ州の場合]

      (目標値)

    初等教育第

      1学年22人
      第2学年24人
      第3~6学年=30人まで。

    前期中等教育30人まで。ただし、科目によっては1クラスの生徒数は更に少なくなる。

    ※目標値を基本とするものの、最終的には各学校のニーズを考慮した上で決定、例外的に1-2名上回ることもあるとのこと。

(7)1学級当たり児童生徒数:

    初等教育平均23.8人(2007年)
    前期中等教育平均23.8人(2007年)

 

(参考)米国

(1)関係法令:

    連邦法ADA(障害のあるアメリカ人法:2008年改正)
    連邦法IDEA(障害のある個人の教育法:2004年改正)
    ほとんどの教育原則を各州が規定”

(2)障害のある児童生徒の就学先/学齢期児童生徒総数に対する在籍率

    特殊学校(分離学校):0.35%
    通常学級で40%以下の時間:1.82%
    通常学級で41-79%の時間:2.65%
    通常学級で80%以上の時間:6.71%
    (2007年)

(3)就学猶予・免除率又は保健医療機関での受入れ状況

    原則、障害のあるすべての子どもに無償で適切な公教育を提供

    就学率

      7~13歳・・・98.3%(2006年)
      14~17歳・・・96.4%(2006年)

(4)就学先決定者:IEP(個別教育計画)チーム

    ※IEPチーム:特別支援教育が必要な児童生徒のために、教員、保護者その他の関係者で構成。カリキュラムを作成するとともに、必要な支援等を行うもの。

(5)就学先決定プロセス:

    • 障害児童生徒を可能な限り障害のない児童生徒と共に教育
    • 補助機器やサービス等を使っても通常学級では満足のいく教育が達成できない重度の障害については、特殊学校・特殊学級その他を選択
    • 公的機関は、教育・サービスのニーズに適合する教育の場の選択肢の「連続体」を確保
    • 地域の通常学級以外を教育の場とする場合、IEPミーティングにおいてその必然性の説明責任、決定にいたる根拠をIEPに記載
    • IEPチームで、ニーズ、プログラム、目標について合意に至る前に教育の場の決定は行われない

(6)学級編制基準:

    [ケンタッキー州の例]
    第1~3学年・・・・上限24人
    第4学年・・・・・上限28人
    第5、6学年・・・・上限29人
    前期中等教育・・・上限31人

(7)1学級当たり児童生徒数:

    初等教育平均23.1人(2007年)
    前期中等教育平均24.3人(2007年)

 

日本

(1)関係法令:

    障害者基本法(2004年改正)
    教育基本法(2006年改正)
    学校教育法(2007年改正)

(2)障害のある児童生徒の就学先/学齢期児童生徒総数に対する在籍率

    特別支援学校:0.58%
    特別支援学級:1.26%
    通級指導(通常学級):0.50%
    (2009年)

(3)就学猶予・免除率又は保健医療機関での受入れ状況

    1979年の養護学校義務化以降、就学免除・猶予は逓減
    (2009年の障害による就学免除・猶予者:56名[義務教育段階児童数の0.0005%])

(4)就学先決定者:市町村教育委員会

(5)就学先決定プロセス:

    (現行制度)

    • 就学基準に照らし、該当する場合特別支援学校、特別な事情ある場合は地域の小学校へ就学認定
    • 就学先検討・決定に当たり、保護者の意見聴取を義務付け

    (改革案)<文部科学省調査研究協力者会議等による>

    • 就学基準の他、障害の状態・ニーズ、保護者の意見、専門家の意見、地域・学校の状況等を総合的に判断し決定
    • 個別の教育支援計画の作成を通じ、保護者のプロセスへの積極的参画、十分な意向の反映を図る

(6)学級編制基準:上限40人

(7)1学級当たり児童生徒数:

    初等教育:平均28.2人(2007年)
    前期中等教育:平均33.2人(2007年)

 

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)