別添2 障害のある児童生徒への十分な教育に必要な人的体制・物的条件の整備について(義務教育段階)

【別添○2】

障害のある児童生徒への十分な教育に必要な人的体制・物的条件の整備について
(義務教育段階)

 インクルーシブ教育システムについては、理念だけではなく人的・物的条件整備とセットで検討することが重要である。障害のある子どもと障害のない子どもが共に学ぶ機会を確保しつつ、障害者権利条約に規定された、子どもの「能力を可能な最大限度まで発達させる」との目的を損なわないようにするため、必要な人的体制・物的条件整備の検討について、以下のとおり二つの想定の下に行った。

1.想定A

(1)基本的な考え方

 居住地域の小・中学校の通常学級への就学を原則とし、保護者が希望する場合のみ特別支援学校に就学するものとする。この場合、小・中学校においてどのような障害の子どもにも対応できるよう条件整備を行う必要があるとの考えの下、必要な条件整備として(2)のとおり仮定する。

(2)基本的な考え方を踏まえた想定・必要な条件整備(仮定)

○1 現在、特別支援学級に在籍している子どもは通常学級に移動する。

○2 通常学級には、発達障害を含む障害のある子どもが在籍していることを考慮し、学級編制は25人とする。

○3 特別支援学級に在籍していた子どもが在籍する通常学級には、学級担任に加えて障害の状態に応じた専門性を有する教員を1名配置する。また、個別指導等を確保するためリソースルームを設置する。

○4 現在、特別支援学校に在籍する障害が比較的軽度の子どもはすべて小・中学校に移動し、重度の子どもは1/3が小・中学校を希望するものと想定する。

○5 特別支援学校から小・中学校に移行した子どもは専門的な指導の必要性が大きいことから特別支援学級で対応することとし、特別支援学級の学級編制は6人(重度の子どもは3人編制)とする。
 また、指導には障害の状態に応じた専門性を有する教員が対応するとともに、重複の障害の子どもには更に支援員を配置する。
 さらに、特別支援学校の子どもが小・中学校に移行することから、多様な障害の状態に対応する教育の専門性を特別支援学校が提供するためのセンター的機能を強化する。

○6 医療的ケアが必要な子どものために看護師を配置する。

○7 上記に伴う不足教室を増築する。すべての小・中学校において、校舎内の移動や生活に支障がないように、身障者用エレベーター、スロープ、身障者トイレ等を完備する。

(3)必要なコストの試算

    ア 教員等の増員のために必要なコスト

      教員の増員・・・・・・・・・・322,200人・・・・・2兆1,517億円
      支援員の増員・・・・・・・・・・8,500人・・・・・・・・・・・102億円
      看護師の増員・・・・・・・・・・1,800人・・・・・・・・・・・・36億円

      教員等所要経費の合計・・・・・・・・・・・・・・・2兆1,655億円

    イ 施設・設備の整備のために必要なコスト

      不足教室等の増築・・・・25人学級対応・・・6兆1,160億円
      特別支援学級増築・・・・43,200教室等・・・1兆6,060億円
      バリアフリー設備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2兆2,610億円

      施設・設備所要経費の合計・・・・・・・・・・・・9兆9,830億円

    合計 12兆1,485億円

※以上の試算については、今後詳細な検討が必要である。また、以上のほか障害の状態に応じた教科書の作成(拡大教科書、点字教科書等)、コミュニケーション支援及びこのためのICT環境の整備等を行うためのコストが発生する。

※通級指導のための教員の加配が別途必要。

※特別支援学級は居住地域の学校に設置されているものと仮定している。

※専門性のある教員の確保が課題。

    参考:平成19年度

      • 幼・小・中・高等学校の教諭普通免許状保有者の現職教育による特別支援学校教諭二種免許状の取得・・・1,061件
      • 大学等における直接養成によるもの・・・3,748件

      計 4,809件

2.想定B

(1)基本的な考え方

 特別支援教育体制の一層の充実を図りながらインクルーシブ教育システムに漸進的に移行するものとする。就学先の学校については、保護者に小・中学校と特別支援学校それぞれの教育と提供可能な合理的配慮について十分な情報提供を行い、保護者の希望を踏まえつつ、義務教育の実施に責任を有する教育委員会が総合的に判断する。
 上記の考え方の下、必要な条件整備として(2)のとおり仮定する。なお、この条件についても今後精査するとともに、インクルーシブ教育システムへの漸進的な移行を図るものである。

(2)基本的な考え方を踏まえた想定・必要な条件整備(仮定)

○1 通常学級の学級編制は現行どおり40人とする。現行の就学先の決定においても、実質的には保護者の希望が踏まえられていると考えられることから、特別支援学校に在籍している子ども(保護者)のうち、比較的障害が軽度な子どもの1/3が小・中学校を希望するものと想定する。

○2 特別支援学校から小・中学校に移動した子どもは、専門的な指導が必要なことから特別支援学級に在籍するものとし、特別支援学級の学級編制は6人とする。また、指導には障害の状態に応じた専門性を有する教員が対応する。さらに、特別支援学校の子どもが小・中学校に移行することから、多様な障害の状態に対応する教育の専門性を特別支援学校が提供するためのセンター的機能を強化する。

○3 医療的ケアが必要な子どものために看護師を配置する。

○4 上記に伴う不足教室を増築する。バリアフリー環境の整備のため、すべての小・中学校(平均1校あたり3校舎、1体育館と想定)において1校舎を中心として身障者用エレベーター、スロープ、身障者トイレ等を整備する。

(3)必要なコストの試算

    ア 教員等の増員のために必要なコスト

      教員の増員・・・・・・・・・・・・16,100人・・・・・1,075億円
      看護師の増員・・・・・・・・・・・・・・800人・・・・・・・・16億円

      教員等所要経費の合計・・・・・・・・・・・・・・・1,091億円

    イ 施設・設備の整備のために必要なコスト

      特別支援学級拡充・・・・13,800教室等・・・4,780億円
      バリアフリー設備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7,600億円

      施設・設備所要経費の合計・・・・・・・・・・1兆2,380億円

    合計 1兆3,471億円

※以上の試算は、今後詳細な検討が必要である。また、以上のほかに、障害の状態に応じた教科書の提供(拡大教科書、点字教科書等)、コミュニケーション支援及びこのためのICT環境の整備等を行うためのコストが発生する。

※通級指導のための教員の加配が別途必要。

※専門性のある教員の確保が課題。

    参考:平成19年度

      • 幼・小・中・高等学校の教諭普通免許状保有者の現職教育による特別支援学校教諭二種免許状の取得・・・1,061件
      • 大学等における直接養成によるもの・・・3,748件

    計 4,809件

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)