資料1 教職調整額創設に当たっての考え方等について

 教職調整額創設時において、どのような学校運営が望ましいと考えられたのか、また、その考えを基にして教員の勤務を給与上どのように評価すべきであると考えられたのかについては、人事院の意見の申出に関する説明(昭和46年2月)等によれば以下のように整理できる。

1.教員の勤務の在り方

(1)職務内容
○教員は、極めて複雑、困難、高度な問題を取扱い、専門的な知識、技能を必要とされるなどの職務の特殊性を有している。
○学校の業務処理に当たっては、専門職たる各教員の自発性、創造性に大いに期待された。すなわち、教育に関する専門的な知識や技術を有する教員については、管理職からの命令により勤務させるのではなく、教員の自発性、創造性によって教育の現場が運営されるのが望ましいと考えられた。

(2)放課後・夏休み等の長期休業期間における勤務
○時間的拘束性の強い授業時間以外の、放課後や夏休み等の長期休業期間においては、この時間をどのように有効に活用するのかについて、校長その他の管理職の承認が必要ではあるが、一般の行政職とは異なり、相当程度、教員の自発性、創造性に待つところがあると考えられた。
○そのため、放課後においては、校長等による承認の下に学校外での勤務(図書館での教材研究など)ができるよう運用上配慮することが適当とされた。また、夏休み等においては、研修(承認研修)のために活用することが適当であるとされ、場所は自宅で行うことが想定された。

2.教員の勤務時間の管理の在り方

○学校の業務処理に当たっては、専門職たる各教員の自発性、創造性に大いに期待され、また、夏休み等の長期休業期間における勤務の実態という面においても、通常の指揮命令の下で勤務する一般行政職と異なる面があり、一般行政職と同様の取扱いとすることが不合理ではないかと考えられた。
○教員の勤務時間の管理の在り方については、一般行政職のように厳格な時間的管理を行うことは不適当であり、弾力的な取扱いが望ましいとされた。
○また、学校外での勤務については、管理職が教員の勤務の実態を直接把握することが困難とされた。
※ なお、時間外における職務命令については、無制限な時間外勤務の拡大という懸念に対する歯止めという観点から、いわゆる超勤4項目が導入された。

3.教員の時間外勤務等に関する給与上の評価の在り方

○教員には、一般行政職と同様の厳格な時間的管理を前提とはできないため、時間的計測のもとに支払われる時間外勤務手当制度はとりわけなじまないと考えられた。そのため、実際の労働時間とは関係なく一律支給の給与がふさわしいとされた。
○また、教員の職務と勤務態様の特殊性に基づき、勤務時間の内外を包括的に評価することが適当とされ、本給相当の給与として措置された。 

(参考)
○義務教育諸学校等の教諭等に対する教職調整額の支給等に関する法律の制定についての意見の申出に関する説明(昭和46年2月8日 人事院)(抜粋)

人事院は、昭和39年に行なつた一般職の国家公務員の給与に関する報告の中で、教員の超過勤務に関する問題にふれ、その再検討について言及したところであるが、教員の勤務時間については、教育が特に教員の自発性、創造性に基づく勤務に期待する面が大きいことおよび夏休みのように長期の学校休業期間があること等を考慮すると、その勤務のすべてにわたつて一般の行政事務に従事する職員と同様な時間的管理を行なうことは必ずしも適当でなく、とりわけ超過勤務手当制度は教員にはなじまないものと認められる。よつて、勤務時間の管理について運用上適切な配慮を加えるとともに、教員の超過勤務とこれに対する給与等に関する現行制度を改め、教員の職務と勤務の態様の特殊性に応じたものとする必要がある。

(1)勤務時間の管理
正規の勤務時間内であつても、業務の種類・性質によつては、承認の下に、学校外における勤務により処理しうるよう運用上配慮を加え、また、いわゆる夏休み等の学校休業期間については教育公務員特例法第19条および第20条の規定の趣旨に沿つた活用を図ることが適当であると考える。

(2)教職調整額の支給
教員の勤務は、勤務時間の内外を問わず、包括的に評価することとして、現行の超過勤務手当および休日給の制度は適用しないものとし、これに替えて新たに俸給相当の性格を有する給与として教職調整額を支給することとする。
教職調整額の支給額は、昭和41年度に文部省が行なつた教員の勤務状況調査の結果その他を勘案して、俸給月額の4%とする。
教職調整額は、調整手当、特地勤務手当、期末・勤勉手当、寒冷地手当等の諸手当ならびに退職手当および退職年金等の諸給付の額の算定基礎とする。

(3)時間外勤務の規制
右に関連し、適正な勤務条件を確保するための措置として、正規の勤務時間外における命令による勤務が教員にとつて過度の負担となることのないよう、文部大臣は、人事院と協議して時間外勤務を命ずる場合の基準を定めるべきものとする。

○職務と勤務態様の特殊性について
(「教育職員の給与特別措置法解説」(昭和46年9月)前文部省初等中等教育局長 宮地茂監修 抜粋)

1.職務の特殊性
「教育の仕事に従事する教員の職務はきわめて複雑、困難、かつ、高度な問題を取り扱うものであり、したがって専門的な知識、技能はもとより、哲学的な理念と確たる信念、責任感を必要とし、また、その困難な勤務に対応できるほどに教育に関する研修、専門的水準の向上を図ることが要求される。このように教員の職務は一般の労働者や一般の公務員とは異なる特殊性をもつ職務である。」

2.勤務の態様の特殊性
「通常の教科授業のように学校内で行われるもののほか、野外観察等や修学旅行、遠足等の学校行事のように学校外で行われるものもある。また、家庭訪問のように教員個人の独特の勤務があり、さらに自己の研修においても必要に応じて学校外で行われるものがある。このように、勤務の場所から見ても学校内の他、学校を離れて行われる場合も少なくないが、このような場合は管理・監督者が教員の勤務の実態を直接把握することが困難である。さらに夏休みのように長期の学校休業期間中の勤務は児童生徒の直接指導よりも研修その他の勤務が多いなど一般の公務員とは違った勤務態様の特殊性がある。」

 

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