2‐1 公立学校教員の給与の在り方について(論点整理案)

基本的な考え方

  • 「教育は人なり」といわれるように、学校教育の成否は教員の資質、能力や熱意に負うところがきわめて大きい。また、教員の職務は子どもたちの心身の発達に関わり、その人格形成に大きな影響を与える重要な責任を持っている。
  • このような重要な職責を担う教員が、教員としての使命感や誇り、熱意を持って子どもたちの指導を行っていくためには、教員の職務と責任の特殊性に応じて、適切に給与が定められ、処遇されなければならない。
  • このためには、まず、教員という職業が魅力あるものとなり、教員に優秀な人材が確保されるよう、教員の給与の一定程度の水準が安定的に確保され、安心して教育活動に取り組むことができるようにすることが必要である。
  • 指導力に優れ、熱意や使命感を持って頑張っている教員が適切に評価され、教員の士気が高まり、教育活動が活性化されていくためにも、能力・実績に見合ったメリハリを付けた教員給与体系を構築していくことが必要である。
  • 一方、指導力不足教員や不適格教員などに対する国民や保護者の視線は厳しいものがあり、このような教員に対しては、相応の処遇とするよう毅然とした対応をすることも、教員への信頼性を向上させるために必要である。
  • また、近年の学校を取り巻く環境の変化の中で、学校教育が抱える課題も一層複雑・多様化してきており、学校の管理運営や外部対応に関わる業務が増えてきており、教員が子どもたちと直接接して指導する時間の余裕がなくなってきている。
  • このような状況を踏まえ、学校の組織運営の在り方を見直し、学校事務の効率化を図り、勤務時間の弾力化を図ることなどにより、教員が子どもたちの指導により専念できるような環境を整備していくことが必要である。

教員の校務と学校の組織運営体制の見直し

1.教員の校務と学校事務の見直し

  • 教員勤務実態調査暫定集計の結果によれば、子どもの指導に直接かかわる業務以外の、学校の運営に関わる業務や外部対応などの業務に多くの時間が割かれている。
  • 教育の質の向上を図っていくには、何よりもまず、教員が子どもたちと直接向き合う時間を確保することが重要。
  • このため、教員の校務について見直しを行い、校長、教頭、教諭、助教諭、講師や事務職員などのそれぞれの職に応じた役割分担の明確化を図り、教諭、助教諭、講師(以下「教諭等」という)が子どもたちと直接向き会う時間をしっかりと確保できるようにする。また、校長及び教頭は、学校組織のマネジメントをしっかりと行い、特定の教員に勤務負担が過重にならないよう、教員の勤務時間や勤務負担の適正化等を図る必要がある。
  • 教員の校務を整理をした上で、なお教員が行う必要のある学校事務については、以下のような方策を通じて効率化を図り、業務時間を縮減していくことが必要である。
    1. Eメールや電子掲示板の活用などを通じて会議・打合せの回数・時間を縮減する。このため、教員に1人1台パソコンを整備することやICT活用指導力に優れた教員の確保など学校のICT環境の整備・充実を図る。
    2. 国・都道府県・市町村が行う調査の縮減・統合を図る。
    3. 業務日誌、学校運営関連書類等の様式の簡素化を図る。
  • 教員の事務負担を学校事務職員のサポートにより軽減することができるよう、事務の共同実施の促進、事務職員の質の向上のための研修の充実などを行うとともに、大規模な学校や事務の共同実施組織に事務長を置くことなどを検討し、事務体制の充実を図っていくことが必要である。
  • 学校をより地域に開かれたものとし、学校を地域全体で支えていくため、地域対応に関連する活動や放課後・週休日の活動について、地域住民や教員OB等が積極的に参画し、教員の負担を軽減するサポート体制の構築を図っていくことが必要である。
  • 学校を取り巻く環境は日々変化しており、現在の教員には、いじめ問題、被虐待児童への対応、外国人子女の増加、特別支援教育といった様々な教育課題に取り組むことが求められている。教員の職務の見直しや学校事務の効率化を図りつつ、これらの教育課題に対応するため、教職員の配置の充実が必要である。

2.学校の組織運営体制の見直し

  • 現在の学校はいわゆる鍋蓋型組織となっており、管理職である校長・教頭以外は職位に差がない教諭等が大多数を占めている。
  • 学校をめぐる環境の複雑化に伴い、教頭の学校運営にかかる各種調整のための業務が増大してきており、教員勤務実態調査暫定集計の結果においても教頭のこれらに係る業務時間がかなり大きくなっている。より円滑な学校運営を実施していくためには教頭の業務のサポートが必要となってきている。
  • このような状況を踏まえ、学校の組織運営上の必要性に応じて、教頭の複数配置の促進、特定領域における副校長(仮称)の配置、管理職を補佐して担当する校務をつかさどるなど一定の権限を持つ「主幹(仮称)」の設置など、学校の規模などを踏まえつつ、教育委員会の判断により配置できるように制度の整備を行うことが必要である。
  • 学校によっては、その実情に応じて、校務分掌が複雑であったり、責任の所在が不明確であったりすることにより学校運営が効率的に運用されていない実態がある。このため、教頭の複数配置、副校長(仮称)の配置又は主幹(仮称)の配置を進めることにより、効率的な学校運営組織の構築を図るとともに、学校運営の効率化の観点から校務分掌や役割分担を整理していくことが必要である。

3.指導力に優れた教員の処遇


  • 教育の質の向上を図るためには、指導力に優れた教諭が、他の教諭等に対して教育上の指導助言や研修を行い、学校全体の教員の指導力を高めていくことが必要である。
  • このため、各学校の必要性に応じて、指導力に優れ、他の教諭等への教育上の指導助言や研修に当たる職務を担う「指導教諭(仮称)」を設け、教育委員会の判断により配置できるように制度の整備を行うことが必要である。

能力と実績に見合ったメリハリある教員給与体系の構築

  1. 優秀な人材の確保
  2. 教員の給料の見直し
  3. 教職調整額の見直し
  4. 諸手当等の見直し
  5. 教員評価と処遇への反映

 ※ 「能力と実績に見合ったメリハリある教員給与体系の構築」の具体的な内容については、次回以降のワーキンググループにおいて整理。

教員の勤務時間の弾力化等

1.勤務時間の弾力化
  • 教員勤務実態調査暫定集計によれば、7月の通常期における1日あたりの平均残業時間は、小学校の教諭で1時間47分、中学校の教諭で2時間26分となっており、恒常的な超過勤務の実態が明らかになっている。
  • 一方、同結果によれば、8月の夏季休業期における1日あたりの平均残業時間は、小学校の教諭で14分、中学校の教諭で26分の残業となっている。
  • このように、教員は、一般の公務員と異なり、子どもたちが登校し、授業や学校行事を行う通常期と夏季休業期とで、業務の繁閑にはっきりとした格差が生じている。
  • 通常期においては、授業の始業時間から終業時間まではもとより、放課後においても子どもたちが学校にいる間は、子どもたちの教育指導や安全管理の責任などを負うことになるため、事務の軽減措置や勤務時間の適正な管理の取り組みだけでは対応しきれず、8時間の勤務時間を超えてしまうことがどうしても多くなってしまう。
  • このような通常期における超過勤務の状況を改善するため、通常期と長期休業期とで業務に繁閑が生じる教員の勤務態様の特殊性を勘案して、特に忙しい教員については、通常期の勤務時間を多く割り振り、その分長期休業期の勤務時間を短縮することで、1年間を通じて平均すれば1日あたり8時間労働となることが可能となるよう、1年間の変形労働時間制を導入することを検討する必要がある。
  • また、部活動や学校行事等により週休日や祝日に勤務を行う場合に、代休日の指定を弾力的に行うことにより、繁閑の格差の大きい教員の勤務態様の特殊性を踏まえて、長期休業期などの勤務時間に余裕のある期間の活用を促進する必要がある。
2.部活動に係る勤務体系等の在り方
  • 現在、部活動は、教育課程外に実施される学校において計画する教育活動の一つとされている。部活動指導は、校長から出された「部活動の監督・顧問」という職務命令によって命じられた付加的な職務であり、平日に行われるものについては給与が、週休日等に4時間以上従事した場合には教員特殊業務手当(部活動手当)が支給されている。
  • 教員勤務実態調査暫定集計の結果に見られるように、中学校の教諭にとって部活動指導に従事する時間がかなり多くなっており、今後、中央教育審議会初等中等教育分科会の教育課程部会等における検討も踏まえつつ、部活動の位置付けを整理していくことが必要である。
  • 部活動は、正規の勤務時間内で実施すべきものであるが、勤務時間外においても実施されている実態がある。このような各学校の実情等を勘案し、教員及び子どもたちにとって過度な負担とならないように十分配慮した上で、平日の部活動について、より弾力的に実施できるよう、1年間の変形労働時間制の導入を検討する。
  • 週休日や祝日の部活動指導については、その振替えが可能な期間を長くするなど、より弾力的にすることにより、長期休業期に振替えることなどの工夫も必要である。
  • このような取組により、部活動は正規の勤務時間において行うことを原則とし、正規の勤務時間を超えて勤務させる場合の基準(いわゆる超勤4項目)については、引き続き、臨時又は緊急のやむを得ない必要がある時に限る観点から、部活動に関する業務を加えないこととすることが必要である。
  • このような取組を行いつつ、部活動による時間外勤務が可能な限り生じることがないように、校長が適切に管理・監督するよう指導を行うとともに、必要に応じて、外部指導者の活用を推進する。

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初等中等教育局財務課