資料11 教職員給与の在り方に関する意見

平成18年9月13日

教職員給与の在り方に関するワーキンググループ
主査 田村 哲夫 様

全日本中学校長会
会長 高橋 秀美

 「教育は人なり」また「国の繁栄は人にある」。厳しい財政状況の中ではあるが、いかに教育に力を注ぎ、いかに教育に優秀な人材を確保できるかが日本の将来を大きく左右すると考える。

 現代社会の動きの根本は、経済の合理性である。人もまたよい待遇を志向する。崇高な志ある者が、低待遇でも教職を志望することを期待するのは現実的ではない。今や、景気を回復しつつある大企業を中心に優秀な人材は民間へとなびく。教育の危機である。現今の財政状況や5年先10年先のことを考えるのではなく、50年先100年先を見据えた国家戦略として慎重に結論を導いていただきたい。教育はまさに、「国家百年の大計」である。

 給与制度改正が、教員の質の低下、ひいては公教育の質の低下を招くことのないよう切に願うものである。

(1)給与は勤務実態に即したものとしていただきたい。

 現在、文部科学省は教職員勤務実態調査を行っている。4月の試行調査では、教員の超過勤務は一日平均3時間強という結果がでている。しかも、昼食時間も給食指導のため、労働基準法の趣旨にも反する長時間の連続勤務をしているのが実態である。 4パーセントの調整額は、勤務実態に比べはるかに低いものである。

 全日中は、昨年「教職員配置等のあり方に関する調査研究協力者会議」において「教諭一人当たりの授業時数の軽減を視野に入れた教員定数の増員・見直し」の必要性を主張した。これは、学校週5日制、総合的な学習の時間への対応やその他の新しい業務の増加、安全対応や地域対応などの業務の増加のため、授業準備や生徒と直接かかわる時間の確保が困難になってきているとの理由によるものである。ところが、第8次教員定数改善計画の凍結、教職員定数の純減などにより教員一人当たりの業務量はさらに増大する方向にある。教員は一般行政職と違い、授業や生徒指導が主たる業務であるため、合理化可能な業務は非常に少ない。

(2)教員給与は職責に見合う魅力あるものとしていただきたい。

 教員の給与の高低を論じるとき、免許を有しない一般行政職との比較は論になじまない。教員給与は免許を有する専門職に見合うものであるべきである。人材確保法の精神もそこにある。

 教員は、人間づくり、ひいては国づくりを担っている。大学で専門科目を学び、教育実習を経て免許を取得し、さらに採用試験、半年から1年の仮採用期間を経て正式採用となる。そして、新たに免許の更新制が導入されることは、教員の職務に対し高い専門性が求められているからといえる。教員免許の取得が一層困難となることが予想される中で優遇措置をなくすことは、優秀な人材の教員志望の減少につながる。

 「人材確保法」制定時、教員は確かに優遇されていた。しかし、32年が経過し、現在一般行政職よりわずかに優遇されているとされているが、学歴、職階制、退職金、退職後の処遇などを考慮に入れると、実質的にはすでに逆転しているとする考え方もある。 この実態が今後明らかになっていけば、教員志望者の減少は免れない。

(3)メリハリのある給与体系の導入にあたっては、「人材確保法」の堅持が前提である。

 給与体系の見直しに当たっては、給与総額を増やす方向で行っていただきたい。教員給与全体を下げる中で行っていくと、多くの教員が一般行政職より低い給与となる可能性がある。そのようなことになれば、職責・勤務実態に比べ理不尽な待遇となり、大きく士気に影響し、学校力の低下を招く。

 いわゆるメリハリをつけるに当たっては、ミドルリーダーの育成の観点や、担当する職務に応じた処遇の観点に立って検討していただきたい。

 また、教員評価との連動は、各都道府県の実態を踏まえ、慎重に検討していただきたい。

(4)管理職の処遇の改善は学校の教育力向上に不可欠である。

 現在、教育管理職は、教育者として、また経営者としての資質と職務が求められている。数年前と比べ、人事考課・評価その他、職務・責任が倍増し、長時間勤務をやむなくされ激務となっているが、給与や退職金では一般教員とほとんど差がない状態である。特別支援学校の教諭と比べると逆転現象もおきている。このままでは、管理職志望者がどんどん減っていくことが懸念される。全国的な調査はないが、現実に、管理職志望者の不足に悩む都道府県は少なくない。

 昨今、家庭・地域の教育力が低下し、学校に大きな負担が強いられている。家庭および地域社会との対応の中心は、管理職が果たさざるを得ない。管理職の職責は、まさに重責というにふさわしい。それに見合う処遇があってしかるべきである。

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