資料3 教職員給与の在り方等に関する意見

平成18年9月13日

中央教育審議会初等中等教育分科会
 教職員給与の在り方に関するワーキンググループ主査
 田村 哲夫 様

全国連合小学校長会
 会長 寺崎千秋

 現在、様々な角度から教育改革が進められている。中でも、昨年10月の中央教育審議会で、「新しい時代の義務教育を創造する」ための答申が出され、「教育条件の確固たる整備」とりわけ「質の高い教師」を求めている。
 また、学校現場では、新しい義務教育の方向を踏まえ、国民の信頼に応えるべく、教師の力量を高め、主体性と創意に満ちた教育活動の展開に努めている。さらに、「国際的に質の高い教育の実現」が求められている。
 これらの実現のためには、教育界に優秀な人材が必要であり、国家の根幹である義務教育に携わる人材確保の上からも、また、教師のモチベーションを高め、自信と誇りを持って教育を推進するためにも、下記の点に配慮すべきであると考える。

1 人材確保法の必要性と優遇措置について

 人材確保法は、制定以来、教育界に優秀な人材を確保することに大きな役割を果たしてきたことは明確である。さらに、「今日、法制定当時とは教員採用を取り巻く状況は大きく変化している」とはいえ、教員に優秀な人材を確保することの大切さは変わりがない。むしろ、大きく教育改革が進行する現在だからこそ優秀な人材が必要なのである。
 そのような意味で、人材確保法による優遇措置を2.76パーセント分を縮減することが、財務省との協議の中で決定されたことは、極めて遺憾であると受け止める。
 本会としては、教員の給与を一般行政職と一律に比較する考え方には賛同しかねる。教員は教員免許という資格を取得した上で採用試験に合格し、教育の仕事に従事している専門職であり、今後は、免許の更新制までも導入され、より一層専門性が問われる職種だからである。

2  教職員給与の在り方について

 教育の質の向上を図るためには、教員のモチベーションを高めるような給与体系にすることが重要であり、教員の能力や実績等が適切に評価され処遇に反映されることが大切であることは、本会としても今まで主張してきたことである。
 今後は、メリハリのある給与体系について検討が必要であることは十分理解できる。

(1)教職調整額について

 教職調整額は、教員の勤務の特殊性に鑑み、時間外勤務手当を支給しない代わりに、勤務時間の内外を問わず包括的に評価して、4パーセント支給されている、言わば教員の時間外手当にもあたるものである。
 教員の勤務は、その時々の社会状況、保護者・地域の意識などの変化、教育的ニーズの多様化などへの対応のため、時間的・精神的に複雑化している。
 全連小が平成18年2月から3月にかけて実施した調査によれば、圧倒的多数の教員が勤務時間外にも仕事をし、自宅にまで仕事を持ち帰っているという実態がある。職場での勤務時間外に仕事をした時間が、一ヶ月に、最多で140時間を超え、平均でも35時間となっている。これ以外に自宅に持ち帰るという実態である。4パーセントという額が、これらの実態に相応しいものか、甚だ疑問である。
 しかし、一方で、校長、教頭を除くすべての教員に一律に支給されていることへの疑問については理解できるところである。
 今後は、文部科学省で行う勤務実態調査や関係各団体の十分な調査等を基に、教員という職種の勤務様態や勤務時間の管理、勤務の特殊性を踏まえた処遇の在り方について慎重な論議を期待したい。

(2)教員の手当等について

 教職調整額以外に支給されている様々な手当については、それぞれ支給される必要性等があっての制度であり、尊重すべきである。しかし、時代や社会の変化に伴い全く意味がなくなった手当等については見直すべきである。
 逆に、学校や教員を取り巻く状況等の変化から、新たに創設又は拡充すべきものについても検討すべきである。
 全連小は一貫して、教職員の処遇改善と同時に、教育管理職の職責に見合った処遇改善を訴えてきた。
 近年、教育管理職を目指す者が減少している。東京都が新たに導入した「主幹職」についても、一定の処遇の改善を図ったにもかかわらず、受験者が少なく大幅な不足を生じている。教育改革の担い手である教育管理職への期待は益々高まっているが、現在の処遇では、管理職を目指す者の増加は困難である。心身にストレスを抱え定年前に退職する校長の割合も増加している。
 管理職に有能な人材を得て、教育改革を推進し、国民に信頼される教育を創造するためにも、管理職の処遇改善を進めるべきである。

(3)教員評価について

 現在、各県教育委員会において教員評価制度の導入を進めている。平成17年度の全連小の調査によれば、平成18年度までに、33県以上で実施又は試行されている。東京都においては、平成12年度から教育職員の人事考課制度(自己申告・業績評価)が導入され、年々制度上の改善を加えるとともに、管理職の評価者訓練を積み上げて現在に至っている。教員評価の在り方や評価結果の処遇への反映方法等について十分に検討することが必要であるとともに、教員評価制度の趣旨の周知徹底に努めることが大切である。

(4)学校の管理運営や教員の勤務管理について

 学校運営を効率的に進めるためには、主幹職等の新たな職種の導入が効果的であるが、それには、職責に応じた処遇と給与体系が必要である。
 また、教員の勤務に関して、例えば、夏休みのような長期休業期間中は比較的余裕があると考えられているが、実際には、夏休みの補習授業、総合的な学習の指導、部活動指導、夏季水泳指導、各種研修会、近年では、初任者研修他の悉皆研修、職場体験活動、新たな、夏休みを活用した地域行事への参加など、本来の、二学期以降の準備以外に多くの時間を使っているのが現状である。さらに、教員免許更新制にかかる膨大な研修に費やされる可能性もあると聞いている。
 教員の勤務は、授業以外にも、家庭訪問や校外での指導、様々な相談・対応など多岐にわたっていて、気を休めることができない職種である。
 このような実態を踏まえ、教員が安心して、自信と誇りを持って教育に従事できるような処遇と勤務管理が必要であると考える。

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